【解決手段】絞り装置10は、弁ポート21を有する弁座部材2と、弁ポート21の開度を可変にするニードル弁4と、ニードル弁4を進退案内する筒状のガイド部材3と、を備え、ニードル弁4及びガイド部材3には、所定の隙間を介して対向するとともに互いに摺接可能な摺接面34,46がそれぞれ形成され、隙間は、弁ポート21から二次側に向かって流体を流通させる中間流路45とされ、ニードル弁4の摺接面46には、ガイド部材3の摺接面34から離れる方向に凹んで中間流路45の幅寸法を拡大する流路拡大部である凹溝47が形成されている。
前記流路拡大部は、前記弁体及び前記ガイド部材の周方向に連続する凹溝によって構成されるか、又は、前記弁体及び前記ガイド部材の周方向に沿って等間隔で形成される複数の凹部によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させて減圧する請求項1〜3のいずれか一項に記載の絞り装置と、減圧した冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の減圧装置では、弁体の孔を通った冷媒がガイドスカート内部に導入されて二次側へ流通するようになっているものの、ガイドスカートの外周面とハウジングの内周面とが互いに摺接する構成であるため、その隙間にも冷媒が流れ込む可能性がある。このような減圧装置では、弁口と弁体との隙間やガイドスカートとハウジングとの隙間を冷媒が通過すると、その狭い隙間を通過した直後の位置で冷媒内にキャビテーションが発生することがある。冷媒内にキャビテーションが発生すると、弁体が微振動を起こしてハウジングと接触することにより、異音が発生するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、異音の発生を抑制することができる絞り装置及び冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の絞り装置は、一次側からの高圧の流体を減圧して二次側に送り出す絞り装置であって、弁ポートを有するとともに一次側の空間と二次側の空間とを仕切って設けられる弁座部材と、前記弁座部材よりも二次側から前記弁ポートに臨んで該弁ポートの開度を可変にする弁体と、前記弁体を内挿するとともに前記弁座部材に対して該弁体を進退案内する筒状のガイド部材と、を備え、前記弁体及び前記ガイド部材には、所定の隙間を介して対向するとともに互いに摺接可能な摺接面がそれぞれ形成され、前記隙間は、前記弁ポートから二次側に向かって流体を流通させる流路とされ、前記弁体及び前記ガイド部材の少なくとも一方における前記摺接面には、他方の摺接面から離れる方向に凹んで前記流路の幅寸法を拡大する流路拡大部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、弁体とガイド部材とが摺接する摺接面に流路拡大部が形成されることで、この流路拡大部に流入した流体に乱流が形成され、乱流の圧力によって弁体が軸方向(進退方向)の中心側(ガイド部材から離れる側)に付勢されるという求心作用を得ることができる。従って、弁体の微振動が抑えられ、ガイド部材と接触しにくくなることから、異音の発生を抑制することができる。
【0009】
この際、前記流路拡大部は、前記弁体及び前記ガイド部材の周方向に連続する凹溝によって構成されるか、又は、前記弁体及び前記ガイド部材の周方向に沿って等間隔で形成される複数の凹部によって構成されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、凹溝が周方向に連続して形成されるか、又は、複数の凹部が周方向に沿って等間隔で形成されることによって流路拡大部が構成されているので、弁体の周方向に沿った各位置に作用する乱流の圧力を均等化させることができ、弁体とガイド部材との隙間を周方向で均一化させることができる。
【0011】
また、前記ガイド部材内に配置されて前記弁体を前記弁ポート側に付勢するばね部材をさらに備え、一次側の高圧の流体と二次側の低圧の流体との圧力差によって前記ばね部材を変形させつつ前記弁体を移動させることで、前記弁ポートの開度が変更されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、弁体を弁ポート側に付勢するばね部材を備えた差圧式の絞り装置(差圧式膨張弁)において、前述のように異音の発生を抑制することができる。ここで、差圧式の絞り装置は、弁体を進退駆動する駆動手段を備えておらず、流体の圧力とばね部材の付勢力とのバランスによって受動的に弁体が進退移動することから、弁体が微振動を起こしやすくなる傾向がある。このような差圧式の絞り装置においても、前述したように、流路拡大部で形成した乱流の圧力による求心作用が得られることで、弁体の微振動を効果的に抑えることができる。
【0013】
さらに、前記弁座部材及び前記ガイド部材を内挿するとともに、該弁座部材よりも一次側の一次室と該弁座部材よりも二次側の二次室とを構成する本体ケースをさらに備え、前記本体ケースと前記ガイド部材との間には、前記弁ポートから前記二次室に向かって流体を流通させる本体側流路が形成されていることが好ましい。この構成によれば、弁座部材及びガイド部材を内挿する本体ケースを備え、この本体ケースとガイド部材との間に本体側流路が形成されていることで、本体側流路を通して二次室(二次側)に向かってスムーズに流体を流通させることができる。従って、流路拡大部に生じる乱流の影響を受けずに、本体側流路によって制御したい流量を確保することができる。また、本体ケースに内挿されて保護されることで、システムに組み込む際に配管等からの応力が作用したとしても、弁座部材やガイド部材の変形が防止できるので、進退移動する弁体とガイド部材との接触による異音をさらに抑制することができる。
【0014】
この際、前記ガイド部材は、前記弁座部材の二次側に連続して一体形成されるとともに、該ガイド部材における前記弁座部材に隣接する位置には、前記弁ポートと前記本体側流路とを連通する連通孔が形成されていることが好ましい。この構成によれば、ガイド部材が弁座部材と一体形成されているので、本体ケースの内部においてガイド部材の設置状態を安定させることができ、その内部の弁体を安定して進退案内することができる。さらに、ガイド部材に連通孔が形成されているので、弁ポートから本体側流路に向かってスムーズに流体を流通させることができる。
【0015】
また、前記ガイド部材における二次側の端部は蓋部材によって塞がれており、該ガイド部材における前記蓋部材に隣接する位置には、該ガイド部材内部と前記本体側流路とを連通する第二連通孔が形成されていることが好ましい。この構成によれば、ガイド部材における二次側の端部が蓋部材で塞がれるとともに、それに隣接する位置に第二連通孔が形成されているので、第二連通孔の開口面積に応じてガイド部材内部を流通する流体の流量が適宜に調節される。従って、ガイド部材内部における弁体との隙間の流路を通過する流体、即ち、流路拡大部に流入して乱流を形成する流体の流量を適宜に調節することで、前述した求心作用を効果的に実現することができる。この際、流体の主たる流路はガイド部材外部の本体側流路であることから、ガイド部材内部の流体の流量が調節されたとしても、絞り装置を流通する流体の流れが阻害されることはなく、二次側に向かって流体をスムーズに流通させることができる。
【0016】
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮した冷媒を膨張させて減圧する前記絞り装置と、減圧した冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
このような本発明の冷凍サイクルシステムによれば、前述と同様に、絞り装置における異音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の絞り装置及び冷凍サイクルシステムによれば、弁体とガイド部材との摺接面に流路拡大部が設けられたことで、この流路拡大部で形成された乱流の圧力によって弁体の求心作用が得られ、弁体とガイド部材との接触による異音の発生を抑制することができ、静音化を促進させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る絞り装置を示す断面図であって、同図中(A)は縦断面図、(B)は(A)におけるA−A線断面図である。
図3は、絞り装置の要部を拡大して示す断面図であり、同図中(B)は(A)におけるA部拡大図である。
【0021】
本実施形態の絞り装置10は、
図2に示す冷凍サイクルで利用される。この冷凍サイクルは、圧縮機100と、凝縮器110と、絞り装置10と、蒸発器120とを有し、図中の矢印で示す方向に冷媒が循環される。例えばこの冷凍サイクルを空気調和機として構成した場合、圧縮機100で圧縮された冷媒は凝縮器110に供給され、この凝縮器110で凝縮された冷媒は絞り装置10に送られる。絞り装置10は後述のように冷媒を膨張させるとともに減圧して蒸発器120に送る。そして、蒸発器120により蒸発させた冷媒と室内の空気との間で熱交換を行うことで室内が冷却され、冷房の機能が得られる。蒸発器120で蒸発した冷媒は圧縮機100にて再び圧縮され、以上のサイクルが繰り返し実行される。
【0022】
図1(A)に示すように、絞り装置10は、金属管からなる本体ケース1と、金属製の弁座部材2と、ガイド部材3と、弁体としてのニードル弁4と、抵抗部材5と、ばね部材としてのコイルばね6と、蓋部材7と、ストッパ部材8と、を備えている。なお、弁座部材2とガイド部材3とは、金属材の切削等により一体に形成されている。
【0023】
本体ケース1は、軸線Lを中心とする円筒状の形状で、前記凝縮器110に接続される一次室11と前記蒸発器120に接続される二次室12とを構成している。
【0024】
弁座部材2は、本体ケース1の内面に整合する略円柱形状である。弁座部材2の外周面の全周(軸線L廻りの全周)には、かしめ溝2aが形成されており、このかしめ溝2aの位置で本体ケース1をかしめることにより、弁座部材2(及びガイド部材3)が本体ケース1内に固定されている。これにより、弁座部材2は一次室11と二次室12との間に配設されている。また、弁座部材2には、軸線Lを中心とする円柱孔をなす弁ポート21が形成されるとともに、その一次室11側には、弁座部材2と同軸にして弁ポート21から一次室11側に開口する筒部22が形成されている。
【0025】
ガイド部材3は、円筒状の形状であり弁座部材2から二次室12内に立設されており、このガイド部材3と本体ケース1との隙間は本体側流路13となっている。ガイド部材3は軸線Lを中心とする円柱状のガイド孔31を有するとともに、弁座部材2に隣接する位置にガイド孔31内部と外部(本体側流路13)とを連通する複数の連通孔32が形成されている。また、ガイド部材3における二次室12側の端部近傍には、ガイド孔31内部と外部(本体側流路13)とを連通する複数の第二連通孔33が形成され、これらの第二連通孔33の合計開口面積は連通孔32よりも小さく形成されている。
【0026】
ニードル弁4は、先端部41aの端面を略平坦にした円錐状のニードル部41と、ガイド部材3のガイド孔31内に挿通される挿通部42と、挿通部42の二次側端部に形成されたボス部43と、を有している。挿通部42は、略円柱状の形状をしており、この挿通部42がガイド孔31に挿通されることで、ニードル弁4は軸線Lに沿って進退移動するようにガイドされる。そして、ガイド孔31におけるニードル弁4の背空間は、中間圧力室44となっている。ニードル部41は、弁ポート21に挿通され、ニードル弁4の進退移動に伴って弁ポート21との隙間が変更され、これによって弁開度が可変制御されるようになっている。
【0027】
図3に示すように、挿通部42の外周面とガイド孔31の内周面とは、互いに所定の隙間を介して対向し、この隙間は、弁ポート21から中間圧力室44に向かって冷媒を流通させる中間流路(流路)45とされている。そして、挿通部42の外周面には摺接面46が形成され、ガイド孔31の内周面には摺接面34が形成され、これらの摺接面34,46同士が互いに摺接するようになっている。摺接面34,46同士の隙間寸法L1は、例えば、0.1mm程度以下に設定され、ニードル弁4ががたつきなくガイド部材3に進退案内されるようになっている。
【0028】
抵抗部材5は、ニードル弁4のボス部43に取り付けられ、挿通部42から二次側に延びて設けられている。この抵抗部材5は、板ばね等から形成され、ガイド孔31の内周面に摺接する複数の羽根部51を有している。抵抗部材5は、羽根部51をガイド孔31の内周面に摺接させることにより、ニードル弁4の進退移動に対して摺動抵抗を付与するものである。即ち、弁ポート21の開閉に伴い冷媒の圧力が変動すると、ニードル弁4が細かく開閉を繰り返してしまうハンチングが生じる可能性があるが、抵抗部材5によってニードル弁4に摺動抵抗を付与することで、ハンチングが防止される。
【0029】
コイルばね6は、ガイド孔31内で抵抗部材5を介してニードル弁4と蓋部材7との間に圧縮した状態で配設されている。蓋部材7は、その外周のかしめ溝の位置でガイド部材3をかしめることにより、ガイド部材3に固定されている。コイルばね6は、ニードル弁4を一次室11側に付勢しており、この付勢力によりニードル部41が弁ポート21を閉じる閉位置側にニードル弁4が移動され、一次室11と二次室12の差圧による押圧力がコイルばね6の付勢力を超えた場合には、ニードル部41が弁ポート21を開く開位置側(二次側)にニードル弁4が移動することとなる。
【0030】
ストッパ部材8は、略円柱状の形状で、その外周にかしめ溝8aが形成され、かしめ溝8aの位置で弁座部材2の筒部22をかしめることにより、弁座部材2に固定されている。また、このストッパ部材8には、
図1(B)に示すように、その外周面の2箇所を切り欠いた断面D字状の切欠き部81が形成され、これらの切欠き部81を通して一次室11から弁ポート21に向かって冷媒が流通可能になっている。このストッパ部材8には、ニードル弁4のニードル部41の先端部41aが当接しており、このニードル部41と弁ポート21との間には隙間が形成されている。即ち、ニードル弁4は、その先端部41aがストッパ部材8により位置決めされ、弁座部材2に対して着座していない状態で支持されている。
【0031】
以上の構成により、凝縮器110からの高圧冷媒は一次室11に流入すると、
図1、3に矢印で示すように、一次室11の冷媒は、ストッパ部材8の切欠き部81から弁ポート21とニードル部41との隙間を通ってガイド孔31内に流出する。このガイド孔31に流出した冷媒は分流され、一方の流れの冷媒はガイド部材3の連通孔32から本体側流路13に流れ、他方の流れの冷媒は中間流路45を通って中間圧力室44に流入する。本体側流路13の冷媒はそのまま二次室12に流れ込むが、中間圧力室44の冷媒は、ガイド部材3の第二連通孔33を介して二次室12に流れ出す。このように膨張し減圧され二次室12に流れ込んだ冷媒は蒸発器120に送られる。
【0032】
以上の絞り装置10において、ニードル弁4の挿通部42における摺接面46と、ガイド部材3の内周面における摺接面34と、のうち摺接面46には、
図3に示すように、軸線Lを中心とした周方向に沿って連続する凹溝47が形成されている。この凹溝47は、ガイド部材3の摺接面34から離れる方向(軸線Lに向かう方向)に凹んで形成されており、摺接面34,46同士の隙間寸法L1よりも、凹溝47の底部と摺接面34との間の寸法L2の方が大きく形成されている。即ち、凹溝47によって、中間流路45の幅寸法を拡大する流路拡大部が構成されている。
【0033】
ここで、
図3(B)に示すように、摺接面34,46同士の隙間寸法L1が0.1mm程度以下であるのに対し、凹溝47の深さ寸法(摺接面46から凹溝47の底までの寸法)L3は、0.4mm〜1.5mm程度であることが好ましい。また、軸線Lに沿った凹溝47の幅寸法L4は、その深さ寸法L3と同等以上であることが好ましい。また、凹溝47は、摺接面46から連続する斜面の角度が略45°であり、その底部分が円弧状の曲面形状とされたV溝となっている。
【0034】
このような流路拡大部としての凹溝47がニードル弁4の摺接面46に形成されていることで、中間流路45を二次側に流れる冷媒が凹溝47に流入し、凹溝47内に渦を巻くような乱流が形成される。この乱流が凹溝47の内面に衝突する際の圧力によって、ニードル弁4を軸線Lの中心側に付勢する求心作用が得られ、ニードル弁4及びガイド孔31の摺接面34,46同士の隙間寸法L1が維持されるようになっている。また、凹溝47が形成されたことで、挿通部42の摺接面46は、軸線Lに沿った一次側と二次側とに二分割され、それぞれの摺接面46がガイド部材3の摺接面34と摺接するように構成されている。
【0035】
なお、流路拡大部としての凹溝47は、
図1〜3に示したものに限らず、
図4(A),(B)、
図5(A),(B)に示す形態であってもよい。
図4(A)に示す絞り装置10において、ニードル弁4の挿通部42には、軸線Lに沿った一次側及び二次側に2つの凹溝47が並んで設けられている。換言すると、挿通部42の摺接面46は、軸線Lに沿った一次側と中間部と二次側とに三分割され、それぞれの摺接面46がガイド部材3の摺接面34と摺接するように構成されている。従って、2つの凹溝47によって挿通部42の一次側と二次側の二箇所に乱流による求心作用を生じさせることで、ニードル弁4の傾きを防止することができるようになっている。
【0036】
図4(B)に示す絞り装置10において、ニードル弁4の挿通部42には、軸線Lに沿って長く形成された凹溝47が設けられている。この凹溝47の幅寸法L4は、その深さ寸法L3の5倍(5L3)程度に設定されている。従って、摺接面46は、軸線Lに沿って一次側と二次側とに離れた挿通部42の端部に設けられ、それぞれの摺接面46がガイド部材3の摺接面34と摺接するように構成されている。
図4(B)に示す凹溝47は、摺接面46から略直角に凹んだ角溝となっており、摺接面34,46同士の隙間を通ってきた冷媒に急激な流速変化をもたらすことから、摺接面46と凹溝47とのエッジ部において乱流が発生しやすくなっている。
【0037】
図5(A)に示す絞り装置10において、ニードル弁4の挿通部42には、周方向に沿って等間隔で形成される複数の凹部48が設けられ、これら複数の凹部48によって流路拡大部が構成されている。複数の凹部48は、例えば、軸線Lを中心として60°ごとに設けられた6個で構成され、各凹部48は、挿通部42の摺接面46を切削等により半球状に凹ませて形成されている。各凹部48の深さ寸法L3は、凹溝47と同様に、0.4mm〜1.5mm程度であることが好ましい。また、各凹部48の大きさL4は、その深さ寸法L3と同等以上であることが好ましい。
【0038】
図5(B)に示す絞り装置10において、ニードル弁4の挿通部42は円柱状に形成されて、その外周面の略全体が摺接面46とされ、一方、ガイド部材3の内周面における摺接面34には、周方向に連続する凹溝35が形成されている。この凹溝35は、ガイド部材3の摺接面34を切削等により凹ませて形成され、この凹溝35によって流路拡大部が構成されている。凹溝35の深さ寸法L3は、凹溝47と同様に、0.4mm〜1.5mm程度であることが好ましい。また、凹溝35の軸線Lに沿った幅寸法L4は、その深さ寸法L3と同等以上であることが好ましい。この凹溝35は、摺接面34から略直角に凹んだ角溝となっており、摺接面34と凹溝35とのエッジ部において乱流が発生しやすくなっている。
【0039】
以上の本実施形態によれば、ガイド部材3のガイド孔31とニードル弁4との間に形成された中間流路45を冷媒が流通する際に、この冷媒が凹溝47(又は凹部48、凹溝35)に流入して乱流を形成し、この乱流がニードル弁4を軸線Lの中心側に付勢することで、ニードル弁4の微振動が抑えられ、ガイド部材3と接触しにくくなることから、異音の発生を抑制することができる。
【0040】
また、凹溝47(又は凹溝35)がニードル弁4(又はガイド部材3)の周方向に連続して形成されるか、凹部48がニードル弁4の周方向に沿って等間隔で形成されているので、ニードル弁4の周方向に沿った各位置に作用する乱流の圧力を均等化させることができ、ニードル弁4とガイド部材3との隙間寸法L1を周方向で均一化させることができる。
【0041】
また、絞り装置10が弁座部材2及びガイド部材3を内挿する本体ケース1を備え、この本体ケース1とガイド部材3との間に本体側流路13が形成されているので、本体側流路13を通して二次室12に向かってスムーズに冷媒を流通させることができる。また、本体ケース1に内挿されて保護されるとともに、ガイド部材3が弁座部材2と一体形成されているので、弁座部材2やガイド部材3の変形が防止でき、進退移動するニードル弁4とガイド部材3との接触による異音をさらに抑制することができる。さらに、ガイド部材3に連通孔32が形成されているので、弁ポート21から本体側流路13に向かってスムーズに冷媒を流通させることができる。
【0042】
また、ガイド部材3における二次側の端部が蓋部材7で塞がれるとともに、それに隣接する位置に第二連通孔33が形成されているので、第二連通孔33の開口面積に応じてガイド部材3内部を流通する冷媒の流量が適宜に調節される。従って、ガイド部材3内部の中間流路45において凹溝47(又は凹部48、凹溝35)に流入して乱流を形成する冷媒の流量を適宜に調節することで、ニードル弁4に作用する求心作用を効果的に実現することができる。この際、冷媒の主たる流路は本体側流路13であることから、中間流路45の冷媒の流量が調節されたとしても、絞り装置10を流通する冷媒の流れが阻害されることはなく、二次側に向かって冷媒をスムーズに流通させることができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態に係る絞り装置を
図6に基づいて説明する。本実施形態の絞り装置10Aは、前記絞り装置10に対して、本体ケース1及びガイド部材3が省略され、冷凍サイクルにおいて冷媒を循環させる配管Pをガイド部材として利用する点が大きく相違している。以下、第1実施形態との相違点について詳しく説明し、第1実施形態と同一又は同様な構成については同符号を付して説明を省略することがある。
【0044】
絞り装置10Aは、配管Pの内部に設けられるものであって、弁座部材2Aと、ニードル弁4Aと、抵抗部材5Aと、コイルばね6Aと、ストッパ部材8Aと、調整部材9と、を備えている。
【0045】
弁座部材2Aは、配管Pの内面に整合する略円柱形状であり、その外周面の全周には、かしめ溝2aが形成されており、このかしめ溝2aの位置で配管Pをかしめることにより、弁座部材2Aが配管P内に固定されている。これにより、弁座部材2Aは、配管P内部を一次側(凝縮器110)と二次側(蒸発器120)とに仕切っている。また、弁座部材2Aには、軸線Lを中心とする円柱孔をなす弁ポート21が形成されるとともに、その一次側には、弁ポート21から一次側に開口する雌ねじ部23が形成されている。
【0046】
ニードル弁4Aは、その挿通部42が配管Pの内面に摺接案内されることで、軸線Lに沿って進退移動するようにガイドされる。挿通部42の外周面と配管Pの内周面とは、互いに所定の隙間を介して対向し、この隙間は、弁ポート21から二次側に向かって冷媒を流通させる流路45Aとされている。そして、挿通部42の外周面には摺接面46が形成され、配管Pの内周面には摺接面P1が形成され、これらの摺接面46,P1同士が互いに摺接するようになっている。挿通部42の摺接面46には、軸線Lを中心とした周方向に沿って連続する凹溝47が2本形成されている。これらの凹溝47は、配管Pの摺接面P1から離れる方向に凹んで形成されており、凹溝47によって、流路45Aの幅寸法を拡大する流路拡大部が構成されている。
【0047】
抵抗部材5Aは、配管Pの内面に摺接する複数の羽根部51を有し、ニードル弁4Aの進退移動に対して摺動抵抗を付与するものであって、ニードル弁4Aのハンチングを防止する。コイルばね6Aは、配管P内で抵抗部材5Aを介してニードル弁4Aと調整部材9との間に圧縮した状態で配設されている。調整部材9は、全体雄ねじ状に形成された調整部材本体91と、配管Pにかしめ固定されて調整部材本体91を螺合する固定部材92と、を有し、調整部材本体91には、冷媒を二次側(蒸発器120)に流通させる導通孔93が貫通して形成されている。調整部材本体91には、その二次側の端部にマイナスドライバを嵌合するスリットが形成され、この調整部材本体91の固定部材92に対するねじ込み量を変更することで、ニードル弁4Aに対するコイルばね6Aの付勢力が調整できるようになっている。
【0048】
ストッパ部材8Aは、全体雄ねじ状に形成され、弁座部材2Aの雌ねじ部23に螺合することで取り付けられている。このストッパ部材8Aには、冷媒を一次側(凝縮器110)から弁ポート21に向かって流通させる図示しない導通孔が貫通して形成されている。ストッパ部材8は、ニードル弁4Aのニードル部41の先端部を当接させることで位置決めするものであって、弁座部材2Aの雌ねじ部23に対するねじ込み量を変更することで、ニードル弁4Aのニードル部41と弁ポート21との隙間を調整し、この隙間を流れる冷媒の流量(ブリード流量)が調整できるようになっている。このようにストッパ部材8Aの位置調整をした後は、ストッパ部材8Aは、例えば接着、ろう付け、かしめ等により弁座部材2Aに固定される。
【0049】
本実施形態の絞り装置10Aによれば、ニードル弁4Aの摺接面46と配管Pの摺接面P1との間に形成された流路45Aを冷媒が流通する際に、この冷媒が凹溝47に流入して乱流を形成し、この乱流がニードル弁4Aを軸線Lの中心側に付勢することで、ニードル弁4Aの微振動が抑えられ、配管Pと接触しにくくなることから、異音の発生を抑制することができる。さらに、前記第1実施形態における本体ケース1及びガイド部材3が省略され、配管Pをガイド部材として利用することで、部品点数を削減するとともに絞り装置10Aの構造を簡単化することができる。
【0050】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、一次側と二次側の冷媒の差圧によって弁体が移動し、弁ポートの開度が調整される差圧式の絞り装置(差圧式膨張弁)を例示したが、本発明の絞り装置は、差圧式のものに限らず、弁体を駆動する駆動手段を有したもの(例えば、電動弁、電磁弁等)であってもよい。また、前記実施形態では、弁体がニードル弁である例について説明したが、これに限らず、ガイド部材に挿通する挿通部を有するボール弁や頂角の大きな円錐形状の弁などでもよい。また、本発明の絞り装置は、冷凍サイクルにおける膨張弁に利用されるものに限らず、気体や液体などの様々な流体を流通させる各種の配管システムに利用可能である。
【0051】
また、前記第1実施形態では、弁座部材2が本体ケース1にかしめ固定され、蓋部材7がガイド部材3にかしめ固定され、ストッパ部材8が弁座部材2の筒部22にかしめ固定されていたが、これらの各部材はかしめ固定に限らず、溶接や接着、ろう付け等、適宜な固定方法によって固定されていてもよい。これと同様に、前記第2実施形態では、弁座部材2Aが配管Pにかしめ固定され、調整部材9の固定部材92が配管Pにかしめ固定されていたが、これらの各部材が溶接や接着、ろう付け等の適宜な固定方法によって固定されていてもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、弁体の外周面において周方向に連続する凹溝47、又は弁体の周方向に沿って等間隔で形成される複数の凹部48、あるいはガイド部材の内周面において周方向に連続する凹溝35によって流路拡大部が形成されていたが、本発明における流路拡大部は、前記凹溝35,47や凹部48に限られるものではない。即ち、流路拡大部は、弁体及びガイド部材の少なくとも一方に形成され、他方から離れる方向に凹んで流路の幅寸法を拡大するものであればよく、螺旋溝や文目溝などのように、周方向に沿うとともに軸方向に傾斜して形成されていてもよい。弁体及びガイド部材のいずれか一方のみに限らず、両方に形成されていてもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、凹部48がニードル弁4の挿通部42において軸線Lを中心として60°ごとに設けられた6個で構成されていたが、凹部の個数は特に限定されない。ただし、凹部は、周方向に等間隔で設けられていることが好ましい。さらに、前記実施形態では、各凹部48は、挿通部42の摺接面46を半球状に凹ませて形成されていたが、凹部の形状は半球状に限らず、正方形や長方形、その他の多角形などの角型でもよいし、楕円形状や長円形状でもよい。この際、凹部が長方形状や楕円形状、長円形状の場合には、その長手方向が弁体の軸方向に沿って設けられていることが好ましい。
【0054】
また、前記実施形態では、凹溝35,47や凹部48の寸法として、その幅寸法L4が深さ寸法L3と同等以上、あるいは幅寸法L4が深さ寸法L3の5倍程度のもの(即ち、L3≦L4≦5L3)を例示したが、凹溝や凹部の幅寸法L4としては、深さ寸法L3と同等以上かつ2倍程度以下(即ち、L3≦L4≦2L3)であることが好ましい。このように凹溝や凹部の幅寸法L4を設定することで、乱流を発生させやすくするとともに、摺接面の面積を確保して耐久性を維持することができる。また、凹溝の断面形状としては、前記実施形態のように底部分に曲面を有したV溝でもよいが、底部分に曲面のない鋭角なV溝でもよく、その斜面と摺接面とのなす角度を大きくするほど乱流を発生させやすくできる。また、凹溝や凹部の断面形状としては、V溝よりも摺接面とのなす角度が大きい角溝の方が好ましく、摺接面とのエッジ部において冷媒に急激な流速変化をもたらし乱流が発生しやすくできる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。