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特開2016-142631放射線照射装置、その線量分布測定方法、および、ファントム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-142631(P2016-142631A)
(43)【公開日】2016年8月8日
(54)【発明の名称】放射線照射装置、その線量分布測定方法、および、ファントム
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/02 20060101AFI20160711BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20160711BHJP
   A61N 5/10 20060101ALN20160711BHJP
【FI】
   G21K5/02 X
   G01T7/00 C
   A61N5/10 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-18707(P2015-18707)
(22)【出願日】2015年2月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健拓
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇一
【テーマコード(参考)】
2G188
4C082
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB17
2G188DD23
2G188DD24
2G188DD25
2G188DD28
2G188EE36
4C082AC02
4C082AN03
4C082AP03
(57)【要約】
【課題】X線照射範囲の線量率の分布測定および線量計プローブの位置調整時の操作者の負担を軽減する。
【解決手段】照射対象を搭載するための搭載部に、線量計プローブを所定の軌跡で移動させるためのガイド孔を備えたファントムを配置する。線量計プローブを送り出し機構により搭載部に送り出して、ガイド孔に挿入し、ファントムの内部を移動させながら、X線の線量をモニターさせることにより、搭載部の所定のX線照射範囲内の線量分布を測定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射対象を搭載するための搭載部と、
前記照射対象にX線を照射するX線管装置と、
前記搭載部の近傍に配置され、前記照射対象に照射されるX線の線量をモニターする線量計プローブと、
前記搭載部の所定のX線照射範囲内の線量分布を測定するために、前記線量計プローブを前記X線照射範囲内に送り出して移動させる送り出し機構と、を備えることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線照射装置であって、前記送り出し機構は、前記線量計プローブを所定の軌跡で移動させるためのガイド孔を備え、前記搭載部に搭載されたファントムに、前記線量計プローブを挿入し、前記ガイド孔の長手方向に沿って移動させる機構を有することを特徴とする放射線照射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線照射装置であって、前記線量計プローブに着脱可能なファントムと、前記ファントムを退避位置から前記線量計プローブに装着するための位置まで移動させる駆動部をさらに有することを特徴とする放射線照射装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線照射装置であって、前記送り出し機構は、長手方向に沿って前記線量計プローブのケーブルが固定され、巻回されたバネと、前記ケーブルが固定された前記バネを挟んで送り出す一対のローラーとを含むことを特徴とする放射線照射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線照射装置であって、前記送り出し機構は、前記巻回されたバネの中心に配置されたスリップリングをさらに含み、
前記スリップリングは、固定部と、前記固定部と電気的な接触を維持しながら回転する回転部とを有し、前記固定部には、前記ケーブルの一端が接続され、前記回転部には、線量計プローブの検出信号から線量を計測する線量計が電気的に接続されていることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項6】
請求項1に記載の放射線照射装置であって、前記送り出し機構は、径の異なる複数の筒を伸縮可能に連結した伸縮ポールを含むことを特徴とする放射線照射装置。
【請求項7】
請求項2に記載の放射線照射装置であって、前記ファントムは、前記搭載部に搭載される照射対象を収容するトレイと同等の外形を有するリング状であり、厚さ方向の中心に周方向に沿って厚さ方向の中心に前記ガイド孔が設けられていることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項8】
請求項2に記載の放射線照射装置であって、前記ファントムは、前記搭載部に搭載される照射対象を収容するトレイの径と同等の長さを有する直方体であり、厚さ方向の中心に直線状のガイド孔が設けられていることを特徴とする放射線照射装置。
【請求項9】
照射対象を搭載するための搭載部に、線量計プローブを所定の軌跡で移動させるためのガイド孔を備えたファントムを配置し、
線量計プローブを送り出し機構により前記搭載部に送り出して、前記ガイド孔に挿入し、前記ファントムの内部を移動させながら、X線の線量をモニターさせることにより、
前記搭載部の所定のX線照射範囲内の線量分布を測定することを特徴とする放射線照射装置の線量分布測定方法。
【請求項10】
線量計プローブにファントムを装着し、
線量計プローブを送り出し機構により、照射対象物を搭載するための搭載部に送り出して、前記搭載部の所定のX線照射範囲内を移動させながらX線の線量をモニターさせることにより、前記X線照射範囲内の線量分布を測定することを特徴とする放射線照射装置の線量分布測定方法。
【請求項11】
放射線照射装置の線量分布測定用ファントムであって、
線量計プローブをX線照射範囲内で所定の軌跡で移動させるための、前記軌跡に沿ったガイド孔を備えることを特徴とするファントム。
【請求項12】
請求項11に記載のファントムであって、照射対象を収容するトレイと同等の外形を有するリング状であり、厚さ方向の中心に周方向に沿って厚さ方向の中心に前記ガイド孔が設けられていることを特徴とするファントム。
【請求項13】
請求項11に記載のファントムであって、前記ファントムは、前記搭載部に搭載される照射対象を収容するトレイの径と同等の長さを有する直方体であり、厚さ方向の中心に、直線状のガイド孔が設けられていることを特徴とするファントム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線照射装置に係り、特に輸血用血液を封入する血液バッグ(以下、血液製剤という)等にX線またはγ線を含む放射線を照射する放射線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
輸血には、GVHD(Graft Versus Host Disease)と呼ばれる副作用が生じることがある。これを予防するため、血液バッグ内の輸血用血液や血液製剤に対して、予め放射線を照射し、血液や血液製剤内のリンパ球を不活性化する処理が行われる。放射線としては、放射性同位元素137Cs(セシウム)を利用したγ線とX線とが用いられる。
【0003】
血液バッグ内の輸血用血液や血液製剤へ放射線を照射する装置として、例えば特許文献1に開示された二方向照射装置が知られている。この放射線照射装置は、第一および第二のX線管装置を、血液バッグを搭載するトレイを挟んで上下に対向配置し、二つのX線管装置によって試料の上下からX線の照射を行う構成である。また、照射線量をモニタリングするための線量計プローブが、トレイの近傍に配置されている。これにより、トレイを回転させることなく、大線量のX線を均一に血液バッグに照射を行うことができる。また、X線照射線量を線量計プローブがモニターすることにより、規定の積算線量に到達したら自動的にX線照射を停止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−43679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射線照射装置は、トレイ(X線照射範囲)内に置かれた血液バッグ等の照射対象に、既定の線量以上のX線が照射されることを担保する必要がある。このため、トレイの近傍に配置される線量計プローブの位置は、以下のように調整されている。まず、トレイの照射対象が配置される領域に相当するX線照射範囲において、照射される線量率(単位時間当たりのX線照射線量)の分布を測定する。測定した線量率のうち、最小の線量率を求める。線量計プローブに照射される線量率が、X線照射範囲の最小の線量率以下になるように、線量計プローブの位置を調整する。この位置の線量計プローブによって積算線量をモニターし、積算線量が規定値に到達するまでX線照射を継続することにより、X線照射範囲内に置かれた照射対象には必ず線量計プローブの検出した積算線量以上のX線が照射される。
【0006】
上述のX線照射範囲の線量率の分布の測定は、線量計プローブを一旦トレイ近傍位置から取り外して、ファントムに挿入し、ファントムごとX線照射範囲内に配置し、X線を照射して線量を測定した後、線量計プローブをX線照射範囲の異なる位置に移動させ、再びX線を照射して線量を測定する、という動作を繰り返すことにより行われる。線量計プローブの取り外し、および、X線照射範囲への配置は、操作者によって手作業で行われる。X線照射範囲内の線量率の分布を測定した後は、再び手作業によって所定の位置へ線量計プローブを取り付け、線量率が、X線照射範囲の最小の線量率以下になるように、取り付け位置の微調整がX線照射を繰り返しながら行われる。X線照射装置は、X線が外部に漏れるのを防ぐための重い防護カバーで覆われており、線量計プローブが取り付けられている位置は、防護カバーを取り外さなければ触ることができない領域にある。そのため、操作者は、線量計プローブを取り外す際、ならびに、線量計プローブの位置の微調整のたびに、重い防護カバーを取り外す必要がある。
【0007】
X線管装置から放射されるX線の線量は、陽極ターゲット表面が熱電子の衝突により荒れる等の経時劣化により低減するため、線量計プローブの位置調整は、定期的に行う必要がある。操作者は、定期的な調整のたびに重い防護カバーの取り外しを繰り返す必要があり、負担が大きく、防護カバーの取り外し取り付けに時間がかかる。また、X線照射範囲の複数箇所に、ファントムに挿入した線量計プローブを配置してX線を照射し、線量率を計測する作業にも時間がかかる。
【0008】
本発明の目的は、X線照射範囲の線量率の分布測定および線量計プローブの位置調整時の操作者の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の放射線照射装置は、照射対象を搭載するための搭載部と、照射対象にX線を照射するX線管装置と、搭載部の近傍に配置され、照射対象に照射されるX線の線量をモニターする線量計プローブと、搭載部の所定のX線照射範囲内の線量分布を測定するために、線量計プローブをX線照射範囲内に送り出して移動させる送り出し機構を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、線量計プローブを送り出し機構で送り出して線量分布を自動測定できるため、X線照射範囲の線量率の分布測定および線量計プローブの位置調整時の操作者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の放射線照射装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態1の放射線照射装置の断面図。
図3】実施形態1の線量計プローブの送り出し機構の構造を示す説明図。
図4】実施形態1のファントムの上面図。
図5図2の放射線照射装置にファントムを配置した状態を示す断面図。
図6】ヒール効果による線量分布を示すグラフ。
図7図5のファントムに線量計プローブが挿入された状態を示す断面図。
図8】実施形態1の線量分布測定動作を示すフローチャート。
図9】実施形態2の放射線照射装置の断面図。
図10】実施形態2の線量計プローブの送り出し機構の(a)伸縮ポールを縮めた状態、(b)延ばした状態をそれぞれ示す斜視図。
図11】(a)実施形態2のファントムの斜視図、(b)実施形態2のファントムホルダーの斜視図。
図12】実施形態2の放射線照射装置にファントムを配置した状態を示す断面図。
図13図12のファントムに線量計プローブが挿入された状態を示す断面図。
図14】実施形態3の線量計プローブにファントムが装着されることを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の放射線照射装置の概略構成図である。図1に示す放射線照射装置は、照射対象13aの上下二方向からそれぞれX線を照射する二方向照射装置である。照射対象13aは、血液バッグに入った輸血用血液や血液製剤等である。
【0014】
図1の放射線照射装置は、照射対象13aを収容し、所定のX線照射範囲内に配置するためのトレイ13と、トレイ13を支持するトレイ搭載部10とを備えている。トレイ搭載部10を挟んで上下に対向するようにX線管装置2、3が配置されている。X線管装置2,3は、トレイ13内の照射対象13aに上下二方向からX線線束2a,3aを照射する。X線管装置2,3とトレイ搭載部10との間には、X線フィルター11,12が配置されている。
【0015】
トレイ13の側面近傍には、線量計プローブ7aが配置されている。線量計プローブ7aは、線量計7に接続されている。線量計7は、線量計プローブ7aに照射されたX線量を計測する。線量計プローブ7aの位置は、その位置でX線管装置2,3から照射される線量率が、トレイ13内(X線照射範囲内)のX線照射分布のうち最小の線量率以下になるように、調整されている。これにより、線量計プローブ7aに照射される積算線量を線量計7でモニターし、積算線量が規定値に到達するまでX線管装置2,3からX線照射を継続することにより、トレイ13内(X線照射範囲内)に置かれた照射対象13aには線量計プローブ7aが検出した積算線量以上のX線を照射できる。
【0016】
また、線量計プローブ7aの上下には、照射対象13aの厚みに応じて、線量計プローブ7aが検出する線量を補正するための補正フィルター25が、着脱可能に備えられている。補正フィルター25を線量計プローブ7aにかぶせた場合には、線量計プローブ7aが検出する線量が低下し、厚い照射対象13aの中心部と同等の線量を線量計プローブ7aにより検出することができる。
【0017】
トレイ13、トレイ搭載部10、線量計プローブ7aおよびX線管装置2,3は、X線の遮蔽体1aにより覆われている。これにより、外部へX線が漏れ出るのを防いでいる。線量計プローブ7a周辺の遮蔽体1aは取り外し可能であり、その部分の遮蔽体1aを防護カバー30と呼ぶ。
【0018】
トレイ13およびトレイ搭載部10が配置され、X線フィルター11と12で挟まれた空間は、X線照射室1bを構成している。トレイ搭載部10は、X線照射室1bからトレイ13を搭載した状態で引き出し可能に構成されている。
【0019】
トレイ13は、厚い照射対象13aを内装するための厚いものと、薄い照射対象13aを内装するための薄いものの2種類以上が用意されていることがある。その場合、トレイ13には各々バーコードが取り付けられている。放射線照射装置は、バーコードを読み取るためのバーコードリーダー14を備えている。放射線照射装置は、制御装置6を備え、制御装置6は、バーコードリーダー14の読み取ったバーコード情報を受け取ってトレイの厚みを認識する。
【0020】
X線管装置2、3には、高電圧発生ユニット4が接続されている。高電圧発生ユニット4は、2つの高電圧発生装置4a,4bを含み、上部のX線管装置2は高電圧発生装置4aによって高電圧が印加され、下部のX線管装置3は高電圧発生装置4bによって高電圧が印加される。また、X線管装置2,3には、冷却装置5が接続され、冷却装置5からの冷却油の供給によって陽極が冷却される。冷却装置6には、循環式冷却装置9もしくは水道が接続され、X線管装置2および3によって温められた冷却油を冷却する。
【0021】
制御装置6には、操作盤(パットパネル)8が接続され、X線管装置2、3の線量、トレイ13の厚さ等のX線照射条件の設定、各種データの登録等を操作者から受け付ける。また、操作盤8は、表示装置を含み、制御装置6は操作者へのメッセージを表示する。
【0022】
遮蔽体1aに覆われたX線管装置2,3、トレイ13、トレイ搭載部10等と、制御装置6、操作盤8、線量計7および冷却装置5は、防護ボックス1内に収納されている。
【0023】
本実施形態の放射線照射装置は、線量計プローブ7aを用いたX線照射範囲内の線量率分布の自動測定と、測定した線量率に基づいて線量計プローブ7aの位置調整を自動で行うことを可能にするため、以下のような構造を備えている。
【0024】
(実施形態1)
以下、本実施形態の放射線照射装置において、線量率分布の自動測定と、線量計プローブ7aの自動位置調整を可能にする構成について説明する。
【0025】
まず、線量計プローブ7aの送り出し機構40について説明する。実施形態1の線量計プローブ7aの送り出し機構40は、図2のように遮蔽体1aの防護カバー30内に配置されている。送り出し機構40は、図3のように、線量計プローブ7aと線量計7を電気的に接続するケーブル31を巻き取る巻き取り機構32と、ケーブル31をX線照射範囲(トレイ13)の方向に送り出す送り機構33とを備えている。
【0026】
巻き取り機構32は、巻回されたバネの長手方向に沿ってケーブル31を固定した構造であり、バネが巻き戻ることにより、ケーブル31がバネと共に巻きとられる。巻回されたバネの中心には、スリップリング133が配置されている。スリップリング133は、固定部と、固定部と電気的な接触を維持しながら回転する回転部とを有する。スリップリング133の回転部の端子にはケーブル31の一端が電気的に接続されている。スリップリング133の固定部の端子には、配線を介して線量計7が電気的に接続されている。これにより、ケーブル31と線量計7が電気的に接続されている。
【0027】
ケーブル31の他端は、線量計プローブ7aに接続されている。送り機構33は、ケーブル31をバネとともに両側から挟み込んで長手方向に送り出すように配置された一対のローラーを含む。これにより、不図示の駆動部によってローラー33aを回転させることにより線量計プローブ7aをトレイ13の方向に送り出すことができる。また、ローラー33aを逆方向に回転させることにより、線量計プローブ7aをトレイ13から離れる方向に巻き取ることができる。もしくは、ローラー33aに内蔵されているブレーキを緩めることにより、ケーブル31が固定されたバネの巻き戻る力によって、線量計プローブ7aをトレイ13から離れる方向に巻き取ることができる。ローラー33aの駆動部およびブレーキは、制御装置6によりその動作を制御されている。
【0028】
つぎに、X線照射範囲の線量率分布の測定するために用いるファントム50について説明する。本実施形態では、線量計プローブ7aをX線照射範囲内で所定の軌跡で移動させるため、線量計プローブ7aを導くガイド孔51を備えたファントム50を用いる。
【0029】
具体的には、ファントム50は、図4図5のように、所定の厚さの樹脂製のリング状であり、その厚さ方向の中心には、周方向に沿って、線量計プローブ7aが挿入できる径のガイド孔51が設けられている。リング状のファントム50の外周面の一か所には、ガイド孔51に線量計プローブ7aを導いて挿入するため開口52が設けられている。開口52は、線量計プローブ7aを環状のガイド孔51に線量計プローブ7aを滑らかに挿入可能にするため、ガイド孔51の接線方向に設けられている。
【0030】
ファントム50の厚さと材質は、予め定められた厚さの照射対象13aの中心と同程度のX線が線量計プローブ7aによって検出されるように、材質および厚さが設計されている。例えば、ファントム50の材質としては、アクリル樹脂を用いることができる。
【0031】
実施形態1において、リング状のファントム50を用いるのは次のような理由による。図6に示すように、X線管装置2,3から照射される線量は、ヒール効果によりアノード側の方がカソード側よりも小さくなることが知られている。このため、本実施形態の放射線照射装置では、2つのX線管装置2とX線管装置3は、アノード側とカソード側を互い違いになるように対向配置され、線量分布を打ち消しあうように構成されている。これにより、図6のように、X線照射範囲のアノードとカソードの方向のX線照射範囲については、2つのX線管装置2、3からの線量分布を重畳した線量が照射され、2つのX線管装置2,3の線量が互いに同等である場合には、X線照射範囲の中心軸が最も大きく、両端が最も小さい対称な線量分布となる。また2つのX線管装置2,3のいずれかが劣化して線量が低下したり、陽極の荒れにより線量分布が変化した場合には、非対称な線量分布となる。本実施形態では、アノード−カソード方向は、X線照射範囲の線量計プローブ7aに近い図2の位置Bと、それと向かい合うAの方向に対応している。また、A−B方向に直交するC−D方向の線量分布は、X線照射範囲の中心軸が最も大きく、両端が最も小さいほぼ対称な線量分布となる。
【0032】
上述のように、X線照射範囲の線量分布は、劣化がない場合には、A−B方向およびC−D方向いずれについても中心軸付近が最も大きく、周縁部に最小の線量となる領域が存在する。また、劣化が生じた場合にも、最大線量の位置は、中心軸からずれる可能性があるが、最小線量となる領域は、X線照射範囲の周縁部に存在する。
【0033】
よって、実施形態1では、リング状のファントム50を用い、線量計プローブ7aをファントム50内でガイド孔51に沿って移動させることにより、X線照射範囲の周縁にそって線量分布を測定する。
【0034】
以下、制御装置6が、X線照射範囲の線量率分布の自動測定を行う動作について説明する。制御装置6は、制御装置6は、操作者から線量率分布測定の指示を操作盤8を介して受けた場合、もしくは、予め定めたタイミング(例えば、所定の期間や所定のX線照射時間ごと)に、内蔵するメモリに予め格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、図8のフローのように動作する。
【0035】
まず、操作盤8の表示装置に予め定めておいた表示を表示させる。この表示により、操作者に対して、トレイ搭載部10を引き出し、トレイ13を取り外し、トレイ13が配置されていたX線照射範囲にファントム50を位置合わせして配置するように促す(ステップ41)。さらに、補正フィルター25を退避位置まで退避させるように促す。この表示を見た操作者は、図5のように、ファントム50をX線照射範囲に配置する。ファントム50の開口52は、線量計プローブ7aに向けて位置合わせして配置する。また、操作者は、補正フィルター25が線量計プローブ7aに被さっている場合には、不図示の機構部を操作して退避位置まで移動させる。なお、位置合わせを容易にするために、ファントム50の下部に、トレイ搭載部10と係合する凹凸等を設けておくことも可能である。
【0036】
操作者が、トレイ搭載部10を元の位置に戻したならば、X線管装置2,3からX線照射を開始する(ステップ42)。これにより、ファントム50にはX線が照射される。
【0037】
制御装置6は、送り出し機構40のローラー33aを回転させ、線量計プローブ7aをファントム50の方向に送り出す(ステップ43)。ケーブル31が固定されているバネの弾性により、線量計プローブ7aはファントム50の方向に進み、開口52に挿入される。さらに制御装置6が、ローラー33aを所定の回転速度で回転させ、線量計プローブ7aを送り出すと、線量計プローブ7aは、図7のようにガイド孔51に挿入されて、ガイド孔51に沿ってファントム50の内部を一定の速度で進む。
【0038】
制御装置6は、線量計プローブ7aを移動させながら連続して、もしくは、ファントム50内の複数箇所において線量計プローブ7aを停止させながら、線量計プローブ7aの検出線量を線量計7により計測する(ステップ44)。これにより、X線照射範囲の周縁部に沿った環状のファントム50内の線量を、周方向の複数箇所で測定することができる。
【0039】
予め定めたファントム50を一周する長さだけ線量計プローブ7aを送り出したならば、制御装置6は送り出しを停止する。そして制御装置6は、測定結果から線量率を求め、最小の線量率を求める(ステップ45)。
【0040】
制御装置6は、送り出し機構40のローラー33aを駆動部により逆回転させるか、ローラー33aのブレーキを解除する。これにより、ケーブル31の固定されたバネをケーブル巻き取り機構32に巻き取る。これにより、線量計プローブ7aをファントム50から脱出させ、元の位置に引き戻す(ステップ46)。
【0041】
制御装置6は、元の位置で線量計プローブ7aが検出する線量を線量計7に計測させ、線量率がステップ45で求めた最小の線量率以下となるように、ローラー33aを回転駆動し、線量計プローブ7aの位置を調整する(ステップ47)。これにより、X線照射範囲内の最小の線量率以下の位置に、線量計プローブ7aを位置調整して配置することができる。
【0042】
制御装置6は、X線管装置2,3のX線照射を停止させ、ファントム50の取り外しを操作者に促す表示を操作盤8の表示装置に表示させる(ステップ48)。このとき、計測した線量分布を、表示装置に表示することも可能である。操作者は、表示を見て、ファントム50をトレイ搭載部10から取り外し、トレイ13を取り付ける。
【0043】
以上により、X線照射範囲の線量分布の測定と、線量計プローブ7aの位置調整を制御装置6の制御下で自動で行うことができる。上記測定方法では、リング状のファントム50を用いてX線照射範囲の周縁部の線量を、1周にわたって計測することができるため、X線照射範囲の周縁のどの位置で線量率が低下した場合であっても確実に最も低い線量率を求めることができる。
【0044】
また、操作者は、通常の照射対象13aをセットする場合と同様に、トレイ搭載部10を引き出して、トレイ13を取り外し、ファントム50を配置するだけでよく、重い防護カバー30を着脱する必要がない。よって、X線照射範囲の線量率の分布測定および線量計プローブの位置調整を、操作者の負担を最小限にして、しかも、短時間で精度よく行うことができる。
【0045】
また、実施形態1では、環状のファントムを用いたが、円盤状のファントムを用い、円盤状のファントム内に所望の軌跡のガイド孔51を設けることも可能である。例えば、らせん状等にガイド孔51を設けることができる。これにより、X線照射領域の所望の位置で線量率を測定することができるため、操作者の望む位置で線量率を測定することができる。
【0046】
(実施形態2)
実施形態2の線量計プローブ7aの送り出し機構70と、ファントム60について説明する。
【0047】
本実施形態では、図9図10(a),(b)のように、径の異なる筒を連結した伸縮ポールを送り出し機構70として用いる。すなわち、実施形態2の送り出し機構70は、線量計プローブ7aを直動させる機構である。伸縮ポールの径の異なる筒と筒の間には、ラックとピニオン等の送り出し機構が配置されている。ケーブル31は、連結された外側筒の内壁面と、内側の筒の外壁面が接触する位置に配置され、筒が伸縮しても電気的接続が維持されるように構成されている。
【0048】
ラックとピニオン等の筒の送り出し機構の代わりに、筒の内部に実施形態1の送り出し機構40を配置してもよい。この構成の場合、複数の筒は、直動ガイドとして用いられる。
【0049】
ファントム60は、図11(a)のように、直方体であり、厚さ方向の中心部に中心軸が直線状のガイド孔61が設けられているものを用いる。ガイド孔61は、線量計プローブ7aが挿入できる径を有し、線量計プローブ7aをガイドする。ファントム60の材質や厚さは、実施形態1と同様である。
【0050】
また、ファントム60を、X線照射範囲のA−B方向に沿って配置するために、図11(b)のようにファントムホルダー63を用いる。ファントムホルダー63は、ファントム60の外形に対応した溝64を備えている。
【0051】
このように線量計プローブ7aを直動させる送り出し機構70と、直線状のガイド溝を備えたファントム60を用いるのは、X線照射範囲内で最も線量率が小さくなるのが、X線管装置2,3のヒール効果により、カソードおよび/またはアノードに対応する位置AまたはBであるためである。すなわち、ヒール効果により、アノード側の線量が小さい線量分布を、2つのX線発生装置2,3を互い違いに向かい合わせることにより補いあっているため、一方のX線発生装置が劣化すると、線量分布は、位置AまたはBにおいて大きく低下し、最小となる。他方、位置C、Dの方向は、ヒール効果がないため、劣化により一様に線量が低減し、X線照射範囲の最小の線量にはならない。よって、実施形態2では、位置A−B方向に沿った線量を測定することにより、最小の線量率を測定する。
【0052】
放射線照射装置の他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0053】
制御装置6が、X線照射範囲の線量率分布の測定および線量計プローブ7aの位置調整を行う動作は、実施形態1の図8の動作と同様であるので、実施形態1と異なる部分のみ説明する。
【0054】
図8のステップ41において、操作者はファントム60を配置する際に、まず、図12のように、溝64の軸方向をA−B方向に一致させてファントムホルダー63を配置し、溝64内にファントム60を配置する。ステップ43において、制御装置6は、線量計プローブ7aを送り出すために、送り出し機構70の駆動部を動作させ(例えば、ピニオンを回転させ)、図13のように、伸縮ポールを伸長させる。これにより、線量計プローブ7aを、ファントム60の開口62からガイド孔61内に挿入する。ステップ44において、ファントム60内のガイド孔61に沿って線量の分布を計測する。これにより、A−B方向の線量率分布が求められ、最小の線量率が、位置Aまたは位置Bにおいて検出される。ステップ46において、線量計プローブ7aを引き戻す際には、制御装置6は、伸縮ポールを縮める。他のステップは、実施形態1と同様である。
【0055】
実施形態2においても、実施形態1と同様に、重い防護カバー30を着脱することなく、X線照射範囲の線量率の分布測定および線量計プローブの位置調整を短時間で行うことができ、操作者の負担を最小限にできる。
【0056】
なお、本実施形態では、ファントムホルダー63を用いて、直方体のファントム60をA−B方向に容易に位置合わせして配置しているが、ファントムホルダー63を用いず、直方体のファントム60を直接、トレイ搭載部10aに配置することも可能である。
【0057】
(実施形態3)
実施形態3では、図14のように、線量計プローブ7aの先端にファントム80を装着する構成とする。線量計プローブ7aの送り出し機構70は、実施形態2と同様のものを用いる。
【0058】
具体的には、ファントム80は、直方体であって、線量計プローブ7aの先端が挿入可能な挿入穴81が設けられている。ファントム80の挿入穴81方向の長さは、線量計プローブ7aが挿入できる大きさがあればよく、線量計プローブ7aに装着されて、X線照射範囲を移動可能な重さになるように、最小限の大きさに形成されている。ファントム80の材質および厚さは、実施形態1,2と同様である。
【0059】
ファントム80の挿入穴81の開口の周囲には、金属片82が配置され、線量計プローブ7aに金属片82と電磁力により吸着するための電磁石83が配置されている。
【0060】
また、ファントム80には、通常の放射線照射時に退避位置にファントム80を退避させ、線量分布測定時には、線量計プローブ7aの前方まで移動させる駆動部が接続されている。
【0061】
実施形態3の、線量分布測定動作では、図8のステップ41において、操作者は、トレイ13を外すだけでよく、制御装置6が、ファントム80の駆動部を動作させて、ファントムを退避位置から線量計プローブ7aの前方に移動させる。これにより、ステップ43において、送り出し機構70が線量計プローブ7aを直動させて送り出すと、線量計プローブ7aが前方に配置されたファントム80の挿入穴81に挿入される。また、制御装置6が、電磁石83を動作させることにより、電磁石83が金属片82を吸引する。これにより、線量計プローブ7aにファントム80が装着された状態となる。よって、送り出し機構70により線量計プローブ7aをまっすぐに送り出すと、ファントム80が装着された状態で線量計プローブ7aは移動する。その状態で、ステップ44において線量を計測することにより、実施形態2と同様にA−B方向の線量の測定を行うことができる。
【0062】
図8のステップ46では、送り出し機構70により、線量計プローブ7aを引き戻し、所定の位置まで戻ったならば、制御装置6は、電磁石83をオフにし、さらに線量計プローブ7aを引き戻す。これにより、線量計プローブ7aからファントム80が外れる。制御装置6は、ファントム80の駆動部を動作させて、退避位置までファントム80を退避させる。他の動作は、実施形態2と同様である。
【0063】
実施形態3では、操作者がファントム80をトレイ搭載部10上に配置する必要がなく、操作者の負担を実施形態1、2よりもさらに軽減することができる。
【0064】
なお、実施形態3において、実施形態2のファントムホルダー63をX線照射範囲に配置して、ファントム80をガイドすることも可能である。
【0065】
上述してきた実施形態1〜3では、巻き取り機構と直動機構の送り出し機構について説明したが、本発明は、これらの機構に限定されるものではなく、ステッピングモータ等他の機構を用いることも可能である。
【0066】
なお、本実施形態では、放射線照射装置として、X線を照射する装置について説明したが、ガンマ線等他の種類の放射線を照射する装置についても同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 防護ボックス
la 遮蔽体
lb 照射室
2 上部X線管装置
2a 上部X線線束
3 下部X線管装置
3a下部X線線束
4 高電圧発生ユニット
4a高電圧発生装置
4b高電圧発生装置
5 冷却装置
6 制御装置
7 線量計
7a線量計プローブ
8 操作盤(タッチパネル)
9 循環式冷却装置もしくは水道水
10 トレイ部
1l X線フィルター
12 X線フィルター
13 バーコード付トレイ
14 バーコードリーダー
25 補正フィルター
30 防護カバー
40、70 送り出し機構
50、60 ファントム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14