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特開2016-142709熱式フローセンサ用チップ、熱式フローセンサ用チップの製造方法、および、熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-142709(P2016-142709A)
(43)【公開日】2016年8月8日
(54)【発明の名称】熱式フローセンサ用チップ、熱式フローセンサ用チップの製造方法、および、熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/692 20060101AFI20160711BHJP
   G01F 1/684 20060101ALI20160711BHJP
【FI】
   G01F1/68 104A
   G01F1/68 101A
   G01F1/68 101B
   G01F1/68 104C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-21139(P2015-21139)
(22)【出願日】2015年2月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 展之
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035AA06
2F035EA01
2F035EA05
2F035EA08
(57)【要約】
【課題】熱式フローセンサ用チップの成膜工程において、レジスト膜にむらが生じることがなく、従って、センサ抵抗値のばらつきを抑制でき、しかも、熱式フローセンサ用チップの歩留まりを向上させることができること。
【解決手段】シリコンウェハ(シリコン基板)40とシリコンウェハ(シリコン基板)52とが、回路パターン40SGiが形成されたシリコンウェハ40の裏面に形成される接合面と溝52Giとが向かい合うように位置合わせされた後、溝52Giが形成されたシリコンウェハ(シリコン基板)52の表面とシリコンウェハ(シリコン基板)40の裏面に形成される接合面とが、低温プラズマ接合により、貼り合わされるもの。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる管路内に開口する開口端部を両端に有する流路を備える流路形成基板と、
前記流路形成基板の接合面に接合される接合面を有し、前記流体の温度を検出する温度検出素子、および、該流体を加熱するヒータを表層部に備えるヒータ/温度検出素子基板と、
を具備して構成される熱式フローセンサ用チップ。
【請求項2】
流体の温度を検出する温度検出素子、および、該流体を加熱するヒータに対応した複数の回路パターンが表層部に形成された第1の基板素材を形成する工程と、
前記回路パターンに対し位置合わせがなされる複数の溝、および、該各溝の両端に連通する孔が形成された第2の基板素材を形成する工程と、
前記得られた第1の基板素材における表層部に向かい合う接合面と前記第2の基板素材における前記複数の溝が形成された表面とを接合し複合基板を形成する工程と、
得られた前記複合基板を各回路パターンごとに分割し熱式フローセンサ用チップを得る工程と、
を含む熱式フローセンサ用チップの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱式フローセンサ用チップと、
流体が流れる管路に配され、該管路内および前記熱式フローセンサ用チップの流路内に連通する一対の通路を有し前記熱式フローセンサ用チップを収容するチップ収容部を有するハウジングと、
前記熱式フローセンサ用チップからの検出出力に基づいて流量を演算する流量演算部と、
を具備して構成される熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱式フローセンサ用チップ、熱式フローセンサ用チップの製造方法、および、熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の微小な流量を測定できる熱式流量計が実用に供されている。熱式流量計に用いられる熱式フローセンサ用チップ(特許文献1においては、流量計チップと呼称されている)は、例えば、特許文献1にも示されるように、測定される流体が通過される流入口および流出口を両端に有するガラス製の第1の基板と、第1の基板に貼り合わされ、流入口を介して導入され測定される流体を流出口に導く流路としての溝が形成されるガラス製の第2の基板と、第1の基板の一方の表面に形成される複数の温度検出部、ヒータからなる加熱部とを含んで構成されている。熱式フローセンサ用チップは、複数の温度検出部からの検出出力に基づいて流体の流量を求める流体情報検出部に接続されている。複数の温度検出部、および、ヒータからなる加熱部等は、第1の基板の表面に蒸着、スパッタリング等により形成される。
【0003】
第1の基板における中央部に設けられる加熱部の両脇に、所定の間隔をもって隣接して複数の温度検出部が、形成されている。従って、第1の基板における流入口と流出口との間に、複数の温度検出部、および、ヒータからなる加熱部が、所定の間隔をもって配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−276264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、流入口および流出口が第1の基板に形成された後、その第1の基板と第2の基板が張り合わされる場合、例えば、第1の基板におけるレジスト成膜のとき、既に形成された流入口および流出口により、流入口および流出口の周りの成膜の形成が妨げられ、レジスト膜にむらが生じる虞がある。このようなむらが生じた場合、抵抗膜パターンを形成する工程において、パターン寸法に不所望な誤差が生じ、得られた熱式フローセンサ用チップは、大きなばらつきのあるセンサ抵抗値を有するものとなる。また、仮に、第1の基板におけるレジスト成膜後、流入口および流出口が第1の基板に形成される場合、流入口および流出口の穴加工のとき、生じるパーティクルにより、熱式フローセンサ用チップの欠陥に繋がる虞がある。
【0006】
以上の問題点を考慮し、本発明は、熱式フローセンサ用チップ、熱式フローセンサ用チップの製造方法、および、熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータであって、成膜工程において、レジスト膜にむらが生じることがなく、従って、センサ抵抗値のばらつきを抑制でき、しかも、熱式フローセンサ用チップの歩留まりを向上させることができる熱式フローセンサ用チップ、熱式フローセンサ用チップの製造方法、および、熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明に係る熱式フローセンサ用チップは、流体が流れる管路内に開口する開口端部を両端に有する流路を備える流路形成基板と、流路形成基板の接合面に接合される接合面を有し、流体の温度を検出する温度検出素子、および、流体を加熱するヒータを表層部に備えるヒータ/温度検出素子基板と、を備えて構成される。
【0008】
また、本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法は、流体の温度を検出する温度検出素子、および、該流体を加熱するヒータに対応した複数の回路パターンが表層部に形成された第1の基板素材を形成する工程と、回路パターンに対し位置合わせがなされる複数の溝、および、各溝の両端に連通する孔が形成された第2の基板素材を形成する工程と、得られた第1の基板素材における表層部に向かい合う接合面と第2の基板素材における複数の溝が形成された表面とを接合し複合基板を形成する工程と、得られた複合基板を各回路パターンごとに分割し熱式フローセンサ用チップを得る工程と、を含んでなる。
【0009】
さらに、本発明に係る熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータは、上述の熱式フローセンサ用チップと、流体が流れる管路に配され、管路内および熱式フローセンサ用チップの流路内に連通する一対の通路を有し、熱式フローセンサ用チップを収容するチップ収容部を有するハウジングと、熱式フローセンサ用チップからの検出出力に基づいて流量を演算する流量演算部と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る熱式フローセンサ用チップ、熱式フローセンサ用チップの製造方法、および、熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータによれば、流路形成基板が、流体が流れる管路内に開口する開口端部を両端に有する流路を備えるのでヒータ/温度検出素子基板の成膜工程において、レジスト膜にむらが生じることがなく、従って、センサ抵抗値のばらつきを抑制でき、しかも、熱式フローセンサ用チップの歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る熱式フローセンサ用チップを備えるフローメータの一例を、管路の一部とともに示す断面図である。
図2図1に示されるフローメータに備えられるヒータの温度制御回路を示す回路図である。
図3図1に示されるフローメータに備えられるセンサ出力回路を示す回路図である。
図4】(A)、(B)、(C)、および、(D)は、それぞれ、本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法の一例におけるヒータ/温度検出素子基板の製造工程の説明に供される図である。
図5】(A)および(B)は、それぞれ、本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法の一例におけるヒータ/温度検出素子基板の製造工程の説明に供される図である。
図6】(A)および(B)は、それぞれ、本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法の一例における流路形成基板の製造工程の説明に供される図である。
図7】(A)および(B)は、それぞれ、本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法の一例における流路形成基板の製造工程の説明に供される図である。
図8】(A)、(B)、(C)、および、(D)は、それぞれ、本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法の一例における複合基板および熱式フローセンサ用チップの製造工程の説明に供される図である。
図9】本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法の一例における熱式フローセンサ用チップの製造工程の説明に供される図である。
図10】本発明に係る熱式フローセンサ用チップの一例を示す平面図である。
図11図10におけるXI−XI線に沿って示される断面図である。
図12図10に示される例における下面図である。
図13図11におけるXIII−XIII線に沿って示される断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る熱式フローセンサ用チップの一例を備えるフローメータを、管路の一部とともに示す。
【0013】
フローメータ10は、例えば、測定されるべき流体としての液体が矢印の示す方向に通過する管路Duの中間部分に接続されている。フローメータ10は、後述するように、その両端の内側に形成される雌ねじ孔12FSに管路Duの管継手の雄ねじ部が捩じ込まれることにより、管路Duの中間部分に接続されている。
【0014】
フローメータ10は、後述する熱式フローセンサ用チップ16ai(以下、センサ用チップ16aiともいう)を収容するチップ収容部12Dを有するハウジング12と、センサ用チップ16aiとを主な要素として含んで構成されている。また、フローメータ10は、後述するように、センサ用チップ16aiにおけるヒータ部の温度を制御する温度制御回路20(図2参照)、および、センサ用チップ16aiからの検出出力を送出するセンサ出力回路26(図3参照)を備えている。
【0015】
ハウジング12は、管路Duにより形成される流路に連通する貫通路を内側に有している。その貫通路は、液体の流れる方向に沿ってハウジング12の一方の端から他方の端まで延びている。貫通路の両端には、それぞれ、雌ねじ部12FSが形成されている。雌ねじ部12FS相互間には、小径部12C1,連通路12C3、および、小径部12C2が、貫通路の上流側から下流側に向けて順次、形成されている。連通路12C3の内径は、測定したい流体の流量範囲に応じて適宜、設定される。また、小径部12C1,連通路12C3、および、小径部12C2は、斯かる例に限られることなく、流体が絞られないように、例えば、互いに同一の内径を有するように形成されてもよい。
【0016】
なお、測定される流体の流量範囲が微小流量である場合、例えば、連通路12C3が栓により閉塞されてもよい。これにより、流体が上流側の雌ねじ部12FSから小径部12C1、後述するセンサ用チップ16ai内の迂回路、小径部12C2を通じて下流側の雌ねじ部12FSに流れることとなる。このような場合、流体が流れる流路は、雌ねじ部12FS、小径部12C1、センサ用チップ16ai内の迂回路、小径部12C2により形成されることとなる。
【0017】
小径部12C1および12C2には、それぞれ、チップ収容部12Dに連通するポート12P1、および、ポート12P2が形成されている。ポート12P1、および、ポート12P2の一端は、それぞれ、小径部12C1および12C2内に向けて開口している。これにより、雌ねじ部12FSを通じて導入された液体の一部は、矢印の示す方向に沿ってポート12P1、後述するセンサ用チップ16ai内の迂回路に導かれた後、ポート12P2を通じて小径部12C2内に戻される。チップ収容部12Dの底部におけるポート12P1、および、ポート12P2の他端の周縁には、それぞれ、その迂回路およびポート12P1、および、ポート12P2を密封するOリング14が設けられている。
【0018】
このようにOリング14がポート12P1、および、ポート12P2の他端の周縁に設けられるので例えば、Oリングが後述する押さえプレートPLに当接するセンサ用チップ16aiの上面の周縁に設けられる場合に比してセンサ用チップ16aiがOリングの弾性力により破損する虞がない。
【0019】
チップ収容部12D内に挿入されたセンサ用チップ16aiは、例えば、ハウジング12に固定される押さえプレートPLにより、チップ収容部12D内に保持されている。
【0020】
センサ用チップ16aiは、図10乃至図13に示されるように、ヒータ/温度検出素子基板16Aと、流路形成基板16Bと、ヒータ/温度検出素子基板16Aに形成されるヒータ素子16H、温度検出素子16TS1,16TS2,16TS3,16TS4とを含んで構成されている。
【0021】
ヒータ/温度検出素子基板16Aは、例えば、厚さ約0.1mm程度のシリコンで作られている。ヒータ/温度検出素子基板16Aにおける一方の表層部の中央部には、ヒータ素子16Hが形成されている。ヒータ素子16Hの両脇の隣接した所定の位置には、それぞれ、貫通路の上流側の周囲温度を検出する温度検出素子16TS3,貫通路の下流側の周囲温度を検出する温度検出素子16TS2が形成されている。温度検出素子16TS3に対し貫通路の上流側に離隔した位置には、迂回路内の液体の温度を検出する温度検出素子16TS4が形成されている。また、温度検出素子16TS2に対し貫通路の下流側に離隔した位置には、迂回路内の液体の温度を検出する温度検出素子16TS1が形成されている。
【0022】
流路形成基板16Bは、例えば、厚さ約0.9mmのシリコン、または、ガラスで作られている。流路形成基板16Bは、ヒータ/温度検出素子基板16Aのヒータ素子16H、温度検出素子16TS1,16TS2,16TS3,16TS4の配列方向に沿って延びる流路16PA3を有している。流路16PA3における上流側の端部には、流路形成基板16Bの厚さ方向に延びる流路16PA1の一端に連通されている。また、流路16PA3における下流側の端部には、流路形成基板16Bの厚さ方向に延びる流路16PA2の一端に連通されている。流路16PA1および流路16PA2は、それぞれ、流路16PA3に直交するように所定の間隔をもって形成されている。流路16PA1および流路16PA2の下端は、それぞれ、上述のハウジング12のポート12P1,12P2に向けて開口している。これにより、センサ用チップ16ai内の迂回路が、流路16PA1および流路16PA2、流路16PA3により形成されることとなる。
【0023】
流路形成基板16Bがシリコンで作られる場合、ヒータ/温度検出素子基板16Aと流路形成基板16Bとは、例えば、低温プラズマ接合により、貼り合わされ接合される。また、流路形成基板16Bがガラスで作られる場合、ヒータ/温度検出素子基板16Aと流路形成基板16Bとは、例えば、陽極接合により、貼り合わされ接合される。
【0024】
ヒータの温度制御回路20は、例えば、図2に示されるように、トランジスタ24と、オペアンプ22とを含んで構成されている。トランジスタ24のコレクタは、所定の基準電源E1に接続され、トランジスタ24のベースは、オペアンプ22の出力端子に接続されている。トランジスタ24のエミッタは、並列に接続される抵抗体Rrおよび抵抗体Rhの接続端に接続されている。抵抗体Rrおよび抵抗体Rhには、それぞれ、直列に抵抗体R2およびR1が接続されている。抵抗体R2およびR1の接続端は、接地されている。抵抗体Rrと抵抗体R2との接続端は、オペアンプ22の入力端子(−)に接続されている。また、抵抗体Rhと抵抗体R1との接続端は、オペアンプ22の入力端子(+)に接続されている。その際、図1に示されるように、流体が矢印の示す方向に流れる場合、抵抗体Rrは、上述の温度検出素子16TS4に相当し、抵抗体Rhは、ヒータ素子16Hに相当する。なお、流体が矢印の示す方向とは逆方向に流れる場合、抵抗体Rrは、上述の温度検出素子16TS1に相当する。
【0025】
センサ出力回路26は、例えば、図3に示されるように、オペアンプ28、抵抗体R3,および、抵抗体R4を含んで構成されている。並列に接続される抵抗体R3と抵抗体Ruとの接続端は、所定の基準電源E1に接続されている。抵抗体R3および抵抗体Ruには、それぞれ、直列に抵抗体R4および抵抗体Rdが接続されている。抵抗体R4と抵抗体Rdとの接続端は、接地されている。抵抗体R3および抵抗体R4の接続端は、オペアンプ28の入力端子(−)に接続されている。抵抗体Ruおよび抵抗体Rdの接続端は、オペアンプ28の入力端子(+)に接続されている。なお、抵抗体Ruおよび抵抗体Rdは、それぞれ、上述の温度検出素子16TS3、16TS2に相当する。これにより、入力電圧に応じたオペアンプ28の出力端子から出力電圧が、図示が省略される流量演算部に供給される。流量演算部は、温度検出素子16TS1、16TS2、16TS3、16TS4の検出出力に基づいて流量を演算する。流量演算部は、例えば、温度検出素子16TS3と温度検出素子16TS2により測定された温度差を下記の指数関数となる実験式(1)により流量に変換している。
【0026】
y=ae-bx (1)
但し、yは、流量、xは、温度差、a,bは、それぞれ、係数である。
【0027】
温度検出素子16TS4、および、温度検出素子16TS1は、それぞれ、流体温度が変化した時の温度補正およびヒータの定温度差制御の時、基準温度を演算する際に使用される。
【0028】
温度検出素子16TS1,16TS2,16TS3,16TS4からの出力電圧に基づいて温度検出素子16TS4または温度検出素子16TS3からの出力電圧があらわす温度と温度検出素子16TS2または温度検出素子16TS1からの出力電圧があらわす温度との温度差が液体の流量に依存することを利用して流量を演算ものとされる。流量演算部は、例えば、そのような温度差と流量との関係をあらわすマップが予め制御部の記憶部に記憶されるもとで、そのマップを参照し温度差に基づき流量を演算するものとされる。
【0029】
上述のセンサ用チップ16aiは、本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法の一例により、以下のように製造される。
【0030】
ヒータ/温度検出素子基板16Aは、例えば、リフトオフ法により、形成される。先ず、図4(A)、(B)に示されるように、洗浄された略円形のシリコンウェハ(シリコン基板)30(厚さ約0.1mm程度)の一方の表面に、フォトレジスト34によりパターニングされる。次に、図4(C)に示されるように、スパッタリング等により、チタン層とプラチナ層で成膜される。これにより、チタン層とプラチナ層とからなる金属膜38が、フォトレジスト34の表面およびシリコンウェハ30の一方の表面に蒸着され形成される。その際、プラチナ層がチタン層上に積層されるように蒸着される。続いて、図4(D)に示されるように、レジスト38のある部分だけが、溶解される。これにより、レジストが無かった部分だけが、上述の各センサ用チップにおけるヒータ素子16H、温度検出素子16TS1,16TS2,16TS3,16TS4に対応するチタン層とプラチナ層とからなる導体パターンが複数個、残り、その結果、図5(A)および(B)に示されるように、各センサ用チップにおける回路パターン40SGi(i=1〜9)が、例えば、9箇所に、形成される。回路パターン40SGiは、ヒータ素子16H、温度検出素子16TS1,16TS2,16TS3,16TS4にそれぞれ対応する導体40H,導体40TS1,40TS2,40TS3,40TS4からなる。これにより、回路パターン40SGiが形成されたシリコンウェハ(シリコン基板)40が得られる。
【0031】
続いて、センサ用チップ16aiにおける流路形成基板16Bを製造するにあたっては、図6(A)、(B)に示されるように、互いに平行な表面50Aおよび50Bを有する略円形のシリコンウェハ(シリコン基板)50(厚さ約0.9mm程度)が洗浄された後、各センサ用チップ16aiの流路16PA3に対応する複数の溝52Gi(i=1〜9)が、シリコンウェハ(シリコン基板)50の一方の表面50Aにおける所定位置に形成されるとともに、流路16PA1,16PA2に対応する孔52Gaが、例えば、機械加工、または、深堀RIEにより溝52Giの両端に形成される。その際、各溝52Giの位置は、上述のシリコンウェハ(シリコン基板)40における各回路パターン40SGiの導体40H,導体40TS1,40TS2,40TS3,40TS4の中央を通過する共通の直線上にあるように設定されている。これにより、図7(A)および(B)に示されるように、溝52Giおよび孔52Gaが一方の表面50Aに形成されたシリコンウェハ(シリコン基板)52が得られる。
【0032】
続いて、図8(A)に示されるように、シリコンウェハ(シリコン基板)40とシリコンウェハ(シリコン基板)52とが、回路パターン40SGiが形成されたシリコンウェハ40の裏面に形成される接合面と溝52Giとが向かい合うように位置合わせされた後、図8(B)に示されるように、溝52Giが形成されたシリコンウェハ(シリコン基板)52の表面とシリコンウェハ(シリコン基板)40の裏面に形成される接合面とが、例えば、低温プラズマ接合により、貼り合わされる。これにより、シリコンウェハ(シリコン基板)52とシリコンウェハ(シリコン基板)40とが合体された複合基板54が得られる。このように回路パターン40SGiが形成されたシリコンウェハ40の表面が押さえプレートPL側にあるので配線設計が容易となる。
【0033】
なお、シリコンウェハ(シリコン基板)52の表面とシリコンウェハ(シリコン基板)40の裏面に形成される接合面とが、「直接接合」により接合されてもよい。また、保護層により被覆された回路パターン40SGiが形成されたシリコンウェハ40の表面と溝52Giが形成されたシリコンウェハ(シリコン基板)52の表面とが接合されてもよい。
【0034】
得られた複合基板54は、所定のダイシングソーにより、ダイシングされる。
【0035】
ダイシングは、図8(C)および図9に示されるように、格子状に形成される縦線56R1,56R2,56R3,56R4、横線56L1、56L2,56L3,56L4に沿って行われる。これにより、複合基板54は、図8(D)に示されるように、9個のセンサ用チップ16aiが、一度に得られるように、分割される。従って、センサ用チップ16aiの製造が完了する。
【0036】
本発明に係る熱式フローセンサ用チップの製造方法の一例によれば、回路パターン40SGiが形成されたシリコンウェハ(シリコン基板)40が作製されるとき、流体通過穴等を設ける必要がなくなるのでフォトレジストのムラが発生しない。即ち、均一なレジスト膜に対しフォトリソグラフィ工程を行うことができるのでセンサ部の抵抗膜を寸法精度が良く形成できる。これにより、抵抗値のばらつきの少ない熱式フローセンサ用チップが製造できることとなる。即ち、熱式フローセンサの感度調整工程の調整時間を短縮又は調整工程自体を省くことができる。
【0037】
回路パターン40SGiが形成されたシリコンウェハ(シリコン基板)40が作製されるとき、ドリル、サンドブラスト・エッチングなどで穴加工をしないので熱式フローセンサをよりクリーンな環境で製造できる。即ち、機械加工により発生するパーティクルに起因した抵抗線の欠陥発生を抑制できる。回路パターン40SGiが形成されたシリコンウェハ(シリコン基板)40が作製されるとき、薄いシリコンウェハの穴加工がなくなるのでウエハ破損の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0038】
10 フローメータ
12 ハウジング
12D チップ収容部
16ai センサ用チップ
16A ヒータ/温度検出素子基板
16B 流路形成基板
16PA1,16PA2,16PA3 流路
16TS1,16TS2,16TS3,16TS4 温度検出素子
16H ヒータ素子
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