【課題】本発明は、従来必要とされた工程を不要としつつ、安価な工法により、電極パッドを露出させることができ、且つ、クリーン度を高くできる熱式フローセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の熱式フローセンサは、センサ側基材の一方の面に形成される、ヒータ、上流側温度センサ、下流側温度センサ、並びに、電極パッドを含む回路パターンを含む少なくとも1枚のセンサ形成ウェハと、流路側基材の一方の面に形成される、流路溝と、電極露出用溝とを備える少なくとも1枚の流路形成ウェハとを備え、センサ形成ウェハの回路パターンが形成された面と、流路形成ウェハの流路溝と電極露出用溝が形成された面とを接合し、ダイシングによりチップ形状に切断するとともに、電極露出用溝に対応する部分である除去部を切断し、前記電極パッドを露出させることを特徴とする。
前記ダイシングは、前記流路形成ウェハの前記電極露出用溝に対応する部分である除去部と、前記流路溝が形成される前記除去部以外の部分を切断する第1のダイシングと、前記流路形成ウェハ及び前記センサ形成ウェハを切断しチップ形状にする第2のダイシングとを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱式フローセンサ。
前記センサ形成ウェハと前記流路形成ウェハとを保護膜同士を接合する低温プラズマ接合により接合することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱式フローセンサ。
前記第1のダイシングは、前記センサ形成ウェハ側に第1のダイシングテープを接着して実施され、前記第2のダイシングは、前記流路形成ウェハ側に第2のダイシングテープを接着して実施されることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の熱式フローセンサ。
センサ側基材の一方の面には、ヒータ、上流側温度センサ、下流側温度センサ、並びに、前記ヒータ、前記上流側温度センサ、及び、前記下流側温度センサに接続される電極パッドを含む回路パターンを形成し、少なくとも1枚のセンサ形成ウェハを作製する工程と、
流路側基材の一方の面には、前記ヒータ、前記上流側温度センサ、及び、前記下流側温度センサに対応する部分に、流路溝と、前記電極パッドに対応する部分に、電極露出用溝とを形成し、少なくとも1枚の流路形成ウェハを作製する工程と、
前記センサ形成ウェハの前記回路パターンが形成された面と、前記流路形成ウェハの前記流路溝と前記電極露出用溝が形成された面とを接合する工程と、
前記流路形成ウェハの前記電極露出用溝に対応する部分である除去部と、前記流路溝が形成される前記除去部以外の部分を切断する第1のダイシングを実施する工程と、
前記流路形成ウェハ及び前記センサ形成ウェハを切断しチップ形状にし、前記除去部を取り外し、前記電極パッドを露出させる第2のダイシングを実施する工程と
を備えることを特徴とする熱式フローセンサの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体あるいは気体のいずれかである流体が移動する量を測定する流量計として、カルマン渦流量計、タービン式流量計など、様々な種類のものが知られている。流量計は、フローセンサとも呼ばれる。流体の量として体積を考えた場合には、体積流量といい、質量を考えた場合には、質量流量という。流量計のうち、熱式フローセンサが知られている。熱式フローセンサは、管路にヒータを巻きつけ、その上流と下流に温度センサを配置し、流体の流れにより、上流と下流の温度センサの出力バランスが流体の質量流量に比例して崩れることを利用して、流体の流量を測定する流量計である。熱式フローセンサは、質量流量を直接測定でき、可動部がなくメンテナンスが不要であり、微少流量まで測定でき、流量ゼロ付近まで測定でき、高温低温でも使用できるなどの長所があり、逆に、汚れに弱く主にクリーンな流体しか測定できず、流体毎に特性が変わるため流体毎に換算係数を校正する必要があるなどの短所がある。
【0003】
一般に、熱式フローセンサでは、センサ感度の関係から流体に近い部分に温度センサを配置する構造が望ましい。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の製造工程上、流体内にセンサを配置するには、流路形成ウェハとセンサ形成ウェハとを接合する必要がある。このため、熱式フローセンサでは、センサ形成ウェハと流体形成ウェハを形成し、これら各ウェハを接合し、2層構造のセンサチップが従来から使用されている。しかし、センサチップと基板とを導通させる電極パッドは、接合後に露出させる必要がある。
【0004】
従来技術では、特許文献1に示すように、ウェハに予めドリルやサンドブラスト等の機械加工により、電極パッド部分を露出させるだけの大きさの貫通穴を設け、接合後に電極パッドを露出させる技術が開示されている。また、特許文献2には、チップ小型化などの目的で、サンドブラストや深堀エッチング等で微細穴を設け、そこにスパッタやメッキ等で導電部材を埋め込んだ貫通電極を作成することにより、接合した後に電極パッドを露出する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、電極パッドを露出させるためだけに、半導体工程の前にウェハに機械加工を行う必要があり、また、特殊な半導体工程を複数増加する必要があるため、加工費が高くなり、安価なMEMSセンサチップを製作できないという課題があった。
【0007】
また、センサ部のPt薄膜を形成する前に、ウェハを削る加工(機械加工や反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE))や、貫通電極で行うメッキ後のCMP等、パーティクルの発生源となる工程があるため、クリーン度を上げることができないという問題もあった。
【0008】
従って、本発明の目的は、従来必要とされた余計な工程を不要としつつ、安価な工法により、電極パッドを露出させることができ、且つ、クリーン度を高くできる熱式フローセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の熱式フローセンサは、センサ側基材と、当該センサ側基材の一方の面に形成される、ヒータ、上流側温度センサ、下流側温度センサ、並びに、上記ヒータ、上記上流側温度センサ、及び、上記下流側温度センサに接続される電極パッドを含む回路パターンとを備える少なくとも1枚のセンサ形成ウェハと、流路側基材と、当該流路側基材の一方の面に形成される、上記ヒータ、上記上流側温度センサ、及び、上記下流側温度センサに対応する部分に形成される流路溝と、上記流路側基材の上記流路溝と同じ側の面に形成される、上記電極パッドに対応する部分に形成される電極露出用溝とを備える少なくとも1枚の流路形成ウェハとを備え、上記センサ形成ウェハの上記回路パターンが形成された面と、上記流路形成ウェハの上記流路溝と上記電極露出用溝が形成された面とを接合し、ダイシングによりチップ形状に切断するとともに、前記電極露出用溝に対応する部分である除去部を切断し、前記電極パッドを露出させることを特徴とする。
【0010】
上記ダイシングは、上記流路形成ウェハの上記電極露出用溝に対応する部分である除去部と、上記流路溝が形成される上記除去部以外の部分を切断する第1のダイシングと、上記流路形成ウェハ及び上記センサ形成ウェハを切断しチップ形状にする第2のダイシングとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、上記流路溝と上記電極露出用溝は、エッチング加工により形成されるものとしてもよい。
【0012】
また、上記回路パターンは、さらに2つの流体温度センサをさらに含むものとしてもよい。
【0013】
また、上記回路パターンは、TiとPtにより形成されるものとしてもよい。
【0014】
また、上記センサ側基材及び流路側基材の材質は、Siまたはガラスであるものとしてもよい。
【0015】
また、上記センサ形成ウェハと上記流路形成ウェハとを保護膜同士を接合する低温プラズマ接合により接合するものとしてもよい。
【0016】
また、上記第1のダイシングは、上記センサ形成ウェハ側に第1のダイシングテープを接着して実施され、上記第2のダイシングは、上記流路形成ウェハ側に第2のダイシングテープを接着して実施されるものとしてもよい。
【0017】
上記課題を解決するために、熱式フローセンサの製造方法は、センサ側基材の一方の面には、ヒータ、上流側温度センサ、下流側温度センサ、並びに、上記ヒータ、上記上流側温度センサ、及び、上記下流側温度センサに接続される電極パッドを含む回路パターンを形成し、少なくとも1枚のセンサ形成ウェハを作製する工程と、流路側基材の一方の面には、上記ヒータ、上記上流側温度センサ、及び、上記下流側温度センサに対応する部分に、流路溝と、上記電極パッドに対応する部分に、電極露出用溝とを形成し、少なくとも1枚の流路形成ウェハを作製する工程と、上記センサ形成ウェハの上記回路パターンが形成された面と、上記流路形成ウェハの上記流路溝と上記電極露出用溝が形成された面とを接合する工程と、上記流路形成ウェハの上記電極露出用溝に対応する部分である除去部と、上記流路溝が形成される上記除去部以外の部分を切断する第1のダイシングを実施する工程と、上記流路形成ウェハ及び上記センサ形成ウェハを切断しチップ形状にし、上記除去部を取り外し、上記電極パッドを露出させる第2のダイシングを実施する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱式フローセンサ及びその製造方法によれば、従来必要とされた余計な工程を不要としつつ、安価な工法により、電極パッドを露出させることができ、且つ、クリーン度を上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱式フローセンサ100を組み込んだ流路系の一例10を示す図である。
【0022】
図1において、流路系10は、本体11と、流体の大部分が流れる主流路12と、流体を測定するための流路であるバイパス流路13と、パッキン14と、熱式フローセンサ100とを備える。
【0023】
本体11は、液体あるいは気体のいずれかである流体が流れ、チップ形状の熱式フローセンサ100により流体を測定する構造を形成する。材質は、特に限定しないが、腐食性の流体を流す場合には、耐腐食性能を有する材質を使用する必要がある。
【0024】
主流路12とバイパス流路13は、特定の比率で分流するように構成され、バイパス流路13に設けられた熱式フローセンサ100によりバイパス流路を流れる流量を測定し、その測定した値に上述の特定の比率を掛け合わせることにより流路系10を流れる全体の流量を測定することができる。
【0025】
パッキン14は、本体11と、バイパス流路13に設けられた熱式フローセンサ100との間に設けられ、バイパス流路13を流れる流体が漏れるのを防止する効果を有する。
【0026】
熱式フローセンサ100は、後述するようにセンサ形成ウェハ200と流路形成ウェハ400を接合し、チップ形状に形成される。熱式フローセンサ100は、バイパス流路13にヒータRhを設け、その上流側に上流温度センサRuと、その下流側に下流温度センサRdを配置し、流体の流れにより、上流と下流の温度センサの出力バランスが流体の質量流量に比例して崩れることを利用して、流体の流量を測定する流量計である。本実施形態では、ヒータ駆動回路として後述する定温度差駆動方式を使用するため、左側から右側へ流体が流れる時の流体温度センサRr1と、右側から左側へ流体が流れる時の流体温度センサRr2とをバイパス流路13の経路上の上流温度センサRuと下流温度センサRdの外側に配置している。しかしながら、他の駆動方式、例えば、定電圧駆動方式、定電流駆動方式、定電力駆動方式などを使用する場合には、流体温度センサRr1、Rr2等を設ける必要はない。
【0027】
なお、本実施形態の熱式フローセンサ100では、センサ形成ウェハ200と流路形成ウェハ400を一枚ずつ接合し、センサ検出部であるバイパス流路13を一箇所だけ設ける構成としたが、これには限定されず、センサ形成ウェハ200を複数枚設けても、流路形成ウェハ400を複数枚設けても、パイパス流路13を複数個所設けてもよい。
【0028】
図2は、本発明に係る熱式フローセンサ100のセンサ形成ウェハ200の製造工程の一例を示す図である。
【0029】
図2(a)は、センサ形成ウェハ200を形成するセンサ側基材201を形成する工程を示す図である。センサ側基材201の材質は、シリコンやガラス等が使用できる。
【0030】
図2(b)は、センサ側基材201に酸化膜202を形成する工程を示す図である。酸化膜202は、後述する導体層204の絶縁膜として使用される。酸化膜202の形成は、高温炉の中にセンサ側基材201を挿入し、酸素または水蒸気をシリコンと反応させることにより、センサ側基材201に酸化膜202を成長させることにより形成される熱酸化法が使用できるが、これには、限定されない。
【0031】
図2(c)は、酸化膜202の上にレジスト203を形成する工程を示す図である。レジスト203は、フォトレジストが塗布されたセンサ側基材201に回路パターンが描写されたフォトマスクを重ねて光を照射し、照射した部分が変質し、この部分が溶け出し、残りの部分がセンサ側基材201にレジスト203として残るフォトレジスト法が使用できるが、これには限定されない。
【0032】
図2(d)は、酸化膜202及びレジスト203の上に導体層204を形成する工程を示す図である。ここでは、導体層204として、白金(Pt)被膜チタン(Ti)電極を使用するが、これには限定されない。
【0033】
図2(e)は、レジスト203をリフトオフし、センサ側基材201の導体層204を形成する工程を示す図である。リフトオフとは、レジスト203で形成したパターンに金属を蒸着し、その後、レジスト203を取り去ると、レジスト203がなかった部分にだけ金属のパターンが残るという手法である。
【0034】
図2(f)は、センサ側基材201と導体層204の上に酸化膜205を形成する工程を示す図である。酸化膜205は、導体層204の絶縁膜として使用される。
【0035】
図2(g)は、酸化膜205を化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)する工程を示す図である。CMPは、研磨剤(砥粒)自体が有する表面化学作用または研磨液に含まれる化学成分の作用により、研磨剤と研磨対象物の相対運動による機械的研磨(表面除去)効果を増大させ、高速かつ平滑な研磨面を得る技術である。CMPを行うことにより、酸化膜205の表面が平滑なセンサ形成ウェハ200が形成される。
【0036】
図2(h)は、レジスト206を形成する工程を示す図である。レジスト206は、導体層204のうち電極パッドとして導通を確保する必要のある部分の酸化膜205を除去するために、導通を確保する部分以外の部分に形成される。レジスト206の種類は、様々あるが、センサ側基材201の材質等に合わせて選択すればよい。
【0037】
図2(i)は、ドライエッチング工程を示す図である。ドライエッチング工程により、酸化膜205のうち、レジスト206が形成されていない部分を除去し、導体層204のうち、電極パッドとして使用される導通を確保する部分が露出される。なお、本実施形態では、ドライエッチング工程により酸化膜205を除去したが、これには限定されず、ウェットエッチング等、その他の手法を用いてもよい。
【0038】
図2(j)は、レジスト206を除去する工程を示す図である。レジスト206を除去する方法は、レジスト206の材料に合わせて選択すればよく、どのような方法でもかまわない。この工程によりセンサ形成ウェハ200が形成される。
【0039】
図3は、センサ形成ウェハ200の構成の一例を示す図であり、
図3(a)は、センサ形成ウェハ200の導体層204が設けられた側の面を示す図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すIIIb断面を示す図である。
【0040】
図3(a)、
図3(b)に示すように、センサ形成ウェハ200の一方の面には、導体層204と、酸化膜205が現れる。回路パターンの形状については、後述の
図8を使用して説明する。
【0041】
図4は、本発明に係る熱式フローセンサ100の流路形成ウェハ400の製造工程を示す図である。
【0042】
図4(a)は、流路形成ウェハ400を形成する流路側基材401を形成する工程を示す図である。流路側基材401の材質は、シリコンやガラス等が使用できる。
【0043】
図4(b)は、流路側基材401にマスク402を形成する工程を示す図である。マスク402は、後述する流路溝403、及び、電極露出用溝404を形成する部分以外に形成される。マスク402には、様々な手法があるが、流路溝403、及び、電極露出用溝404を形成する方法に合わせて、いずれかの手法を選択すればよく、特に限定はない。
【0044】
図4(c)は、流路溝403、及び、電極露出用溝404を形成する工程を示す図である。流路溝403、電極露出用溝404を形成する方法としては、ドライエッチング、ウェットエッチング、サンドブラスト等、様々な工法が適用可能であるが、特に限定はない。
【0045】
図4(d)は、マスク402を除去する工程を示す図である。この工程もマスク402の種類に合わせて選択すればよく、特に限定はない。
【0046】
図4(e)は、流路側基材401に酸化膜405を形成する工程を示す図である。酸化膜405は、流路801として使用される流路溝403等が流路801を流れる流体により腐食されることなどを保護する効果がある。この工程により流路形成ウェハ400が形成される。
【0047】
図5は、流路形成ウェハ400の構成の一例を示す図である。
図5(a)は、流路形成ウェハ400の流路溝403、及び、電極露出用溝404が設けられた側の面を示す図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示すVb断面を示す図である。
【0048】
図5(a)、
図5(b)に示すように、流路形成ウェハ400の一方の面には、流路溝403と、電極露出用溝404が形成される。流路溝403は、後述するように流路801として使用され、電極露出用溝404は、後述するように、流路側基材401のうち除去部605として取り除かれる部分に形成される。
【0049】
図6は、本発明に係る熱式フローセンサ100のセンサ形成ウェハ200及び流路形成ウェハ400の接合及びダイシング工程の一例を示す図である。
【0050】
図6(a)は、センサ形成ウェハ200及び流路形成ウェハ400を接合する前の状態を示す図である。センサ形成ウェハ200の導体層204が形成された面と、流路形成ウェハ400の流路溝403及び電極露出用溝404が形成された面とが向い合うように配置される。
【0051】
図6(b)は、センサ形成ウェハ200及び流路形成ウェハ400を接合する工程を示す図である。接合する工法としては、接着材による接合、イオン接合、保護膜同士を接合する直接接合(例えば、低温プラズマ接合等)があるが、特に限定はなく、基材として使用される材質に合わせて選択すればよい。
【0052】
図6(c)は、第1のダイシング工程を示す図である。第1のダイシング工程は、センサ形成ウェハ200側に第1のダイシングテープ601を接着し、その後流路形成ウェハ400のみを切断する。第1のダイシング切断面602は、後述する除去部605を取り除くために、電極露出用溝404の流路溝403側の端に対応する部分とする。
【0053】
図6(d)は、第2のダイシング工程を示す図である。第2のダイシング工程は、流路形成ウェハ400側に第2のダイシングテープ603を接着し、その後センサ形成ウェハ200及び流路形成ウェハ400の両方を切断する。第2のダイシング切断面604は、チップ形状に切断するために、電極露出用溝404の流路溝403の反対側の端の部分とする。第1のダイシング工程及び第2のダイシング工程により、流路形成ウェハ400の第1のダイシング切断面602と第2のダイシング切断面604に挟まれた、電極露出用溝404に対応する部分は、他の部分と接合する部分がなくなり、除去部605として取り除かれる。
【0054】
図6(e)は、接合及びダイシング工程が終わり、チップ形状の熱式フローセンサ100が複数個並んだ状態を示す図である。
図6(e)に示すように、チップの取り数は、センサ側基材201、及び、流路側基材401の大きさ、チップ形状の大きさにより決定される。チップの大きさ、及び、厚さは、流路801を流れる流体の種類あるいは、これに必要とされる強度などにより決定される。センサ側基材201、及び、流路側基材401の大きさ、及び、チップ形状の大きさ、及び、厚さなどは、使用される流体、コスト等に合わせて選択すればよい。
【0055】
図7は、
図6(b)の矢視VIIに示す方向から見た、センサ形成ウェハ200及び流路形成ウェハ400の接合及びダイシングの対応関係を示す図である。
【0056】
図7に示すように、流路形成ウェハ400の流路溝403は、センサ形成ウェハ200のヒータ及びセンサ部702に対応する位置に配置され、流路形成ウェハ400の電極露出用溝404は、センサ形成ウェハ200の電極パッド701に対応する位置に配置される。また、電極露出用溝404の流路溝403側の端に対応する部分には、第1のダイシング切断面602が示され、電極露出用溝404の流路溝403の反対側の端の部分と、電極パッド701に平行し、隣り合うチップの間の部分には、第2のダイシング切断面604が示される。
【0057】
図8は、本発明に係る熱式フローセンサ100のチップ形状の一例を示す図であり、
図8(a)は、熱式フローセンサ100の電極パッド701が現れている方向からみた上面図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示すVIIIb断面を示す図であり、
図8(c)は、
図8(b)に示すVIIIc断面を示す図であり、
図8(d)は、
図8(b)に示すVIIId断面を示す図である。
【0058】
図8(a)、
図8(b)に示すように、除去部605が取り除かれた部分に電極パッド701が現れ、電源、駆動回路などと熱式フローセンサ100とを電気接続が可能になる。また、
図8(b)、
図8(d)に示すように、流路形成ウェハ400の流路溝403に酸化膜405が被さっている部分と、センサ形成ウェハ200の酸化膜205が被さっている部分により、流路801が形成される。酸化膜205及び酸化膜405は、流路801を流れる流体の腐食性などを保護する効果がある。また、
図8(c)、
図8(d)に示すように、ヒータ及びセンサ部702は、流路801に対して上流側から流体温度センサRr1、上流温度センサRu、ヒータRh、下流温度センサRd、流体温度センサRr2として形成される。
【0059】
図9は、本発明に係る熱式フローセンサ100の回路構成の一例を示す図であり、
図9(a)は、ヒータ定温度差制御回路900を示す図である。
図9(b)は、センサ出力回路を示す図である。
【0060】
ヒータ素子Rhの温度上昇とセンサ出力は比例するため、ヒータ駆動方式にセンサの流量特性は大きく影響を受ける。このため、どのような駆動方式を選択するかが重要となる。ヒータ駆動方式には、ヒータ素子に一定の電圧を印加する定電圧駆動方式、ヒータ素子に一定の電流を流す定電流駆動方式、ヒータ素子に印加する電圧と電流をモニタし、一定の電力を印加する定電力駆動方式、定温度差駆動方式の4つの方式が考えられ、これらのどの方式を採用することも可能であるが、ここでは、定温度差駆動方式を使用して説明する。
【0061】
図9(a)に示すように、ヒータ定温度差制御回路900は、流体温度センサRrと、ヒータ素子Rhと、2つの抵抗Rによりブリッジ回路が構成され、流体温度センサRrとヒータ素子Rhからの出力の差がコンパレータCOMP1に入力され、コンパレータCOMP1の出力ブリッジ回路の電源回路に接続されたトランジスタTr1のベースに接続される。このような回路構成により、流体温度センサRrとヒータ素子Rhの抵抗比が一定になるように制御される。ヒータ素子Rhの周囲温度からの温度差は、この抵抗比に比例するため、結果的にある一定のヒータ温度上昇になるように制御される。このため、流量特性カーブは他の3つの方式に比較して、高流速側での飽和度が最も少なく、流量計測範囲を広く取ることができる。なお、本実施形態においては、
図1に示すように、流体温度センサRr1は、左側から右側へ流体が流れる時の流体温度センサとして設けられ、流体温度センサRr2は、右側から左側へ流体が流れる時の流体温度センサとして設けられている。このため、
図9(a)の流体温度センサRrは、流体温度センサRr1として算出される。
【0062】
図9(b)に示すように、センサ出力回路910は、2つの同一の抵抗Rを直列に接続したその中点の出力と、上流温度センサRuと下流温度センサRdを直列に接続したその中点の出力をコンパレータCOMP2に入力し、COMP2の出力をセンサ出力として出力する回路である。
【0063】
以上説明したように、本発明の熱式フローセンサ及びその製造方法によれば、従来必要とされた余計な工程を不要としつつ、安価な工法により、電極パッドを露出させることができ、且つ、クリーン度を上げることができる。