【課題】制御装置による処理、信号の伝送等による遅延時間の影響がなく、複数の機能モジュール(LED、センサ等)の動作を正確に同期させることが可能なモジュールシステムを提供する。
【解決手段】コントローラ1と2以上の制御装置2を含み、コントローラと各制御装置は直列に接続している。各制御装置は、コントローラから各制御装置に送信される信号を制御装置の配列に従って順次受信し、各制御装置は、制御装置間の信号受信の遅延時間Aを補正してそれぞれの機能モジュール3を制御する機能を有する。数百個以上の多数のLED3の発光を同期することが可能である。
各制御装置が、各制御装置において発生する信号受信の遅延時間に基づいて補正遅延時間を算出し、該補正遅延時間により制御装置間の信号受信の遅延時間を補正するモジュールシステムであって、前記補正遅延時間を各制御装置の信号処理時間を含む遅延時間、または各制御装置の信号処理時間およびコントローラからの伝送時間を含む遅延時間に基づいて算出する、請求項1に記載のモジュールシステム。
各制御装置とコントローラの間で双方向通信機能を有し、各制御装置がコントローラからの信号を受信するとともに、各制御装置からの信号をコントローラに送信する、請求項1または2に記載のモジュールシステム。
コントローラから送信された信号を各制御装置が順次受信し、各制御装置が受信完了信号を前記コントローラに送信することにより、各制御装置における信号受信の遅延時間を計測し、前記コントローラは、計測された遅延時間に基づいて、前記各制御装置において制御タイミングを補正するための補正遅延時間を算出し、算出した補正遅延時間を各制御装置に送信し、各制御装置は、送信された補正遅延時間に基づいて、制御装置間の信号受信の遅延時間を補正して制御する、請求項3に記載のモジュールシステム。
コントローラから送信された信号を各制御装置が順次受信し、最後に受信した制御装置または各制御装置が受信完了信号をコントローラヘ送信することにより、システムの異常を検知する、請求項3または4に記載のモジュールシステム。
機能モジュールが少なくとも1つの情報収集モジュールを含み、コントローラからの指令により制御装置が前記情報収集モジュールを制御し、前記情報収集モジュールからの情報をコントローラに送信する、請求項3〜5のいずれかに記載のモジュールシステム。
機能モジュールが、照明モジュール、情報収集モジュール、音響モジュールおよびディスプレイモジュールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7に記載のモジュールシステム。
モジュールシステムが、照明システム、検知システム、セキュリティシステム、撮影システム、表示システム、または制御システムである、請求項1〜8のいずれかに記載のモジュールシステム。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、長寿命、高信頼性、低消費電力、低発熱性等の特徴を有し、近年、各種イルミネーションや展示用、広告用の照明に広く使用されている。イルミネーション等の光の時系列変化を利用した芸術性の高い装飾を目的としたシステムでは、コントローラ(例えばプロセッサ)等の機器より点灯制御データをデータバスやシリアルデータ伝送により各制御装置(例えばマイクロプロセッサ)に送信する方式が一般的である。
【0003】
図10は、マイクロプロセッサ2と複数のLED3(制御回路を含む)とをアドレスバス31およびデータバス32によって繋ぐ従来のシステムである。アドレスバス31によりマイクロプロセッサ2のメモリの読み出し場所のアドレスを送信し、データバス32によりマイクロプロセッサ2のメモリ内のデータを各LEDの制御回路に送信する。しかし、この方式では、アドレスバスおよびデータバスの信号線は、それぞれ8ビットであれば8本、16ビットであれば16本必要になる。また、電気的特性により信号線の長さを長くすることができず、使用するLEDの数にも制限がある。
【0004】
少ない配線数で効率的にLEDを制御する手段として複数のマイクロプロセッサを直列に接続する方式が知られている。例えば、特表2005−510007号の
図3には、入力端子32Aおよび出力端子32Bを介してコントローラ26A、26B、26Cを直列に接続した照明システムが開示されている。しかし、一般にマイクロプロセッサを直列に接続すると、信号線によって信号を伝送するときの伝送遅延およびマイクロプロセッサで信号を処理するときの処理遅延により、マイクロプロセッサがコントローラからの信号を受信する際に遅延が発生する。
【0005】
マイクロプロセッサを直列に接続したモジュールシステムの模式図を
図11に示す。コントローラ1にn個のマイクロプロセッサ2が信号線を介して直列に接続しており、コントローラからのデータ信号Dが、n個のマイクロプロセッサ2に送信される。その際、1番目のマイクロプロセッサ(1)では、プロセッサからマイクロプロセッサ(1)までの距離に伴う伝送遅延d1−1、およびマイクロプロセッサ(1)の入力端子で受信し、出力端子から送信するまでの間のマイクロプロセッサの処理に伴う遅延d2−1が発生する。2番目のマイクロプロセッサ(2)においては、マイクロプロセッサ(1)からマイクロプロセッサ(2)までの距離に伴う伝送遅延d1−2が発生し、マイクロプロセッサの処理に伴う遅延d2−2が発生する。マイクロプロセッサ(3)〜(n)についても同様の遅延が発生する。このように、多くのマイクロプロセッサを直列に接続すると発生する遅延時間は無視し得ない程度に大きくなる。したがって、多数の制御装置を直列に接続した場合には、各制御装置の信号の受信に伴い発生する遅延により各LEDの発光を同時に制御する(同期させる)のが困難になる。
【0006】
LEDの発光を制御する別の方式としてDMX512プロトコルによる方式が知られている。特開2011−175976号には、2次元アレイ状に配列したLEDをDMX512プロトコルにより制御するパネル照明装置が記載されている。しかし、この方式では、LED間を送信する間に信号の波形が次第に劣化していくという問題がある。したがって、512チャンネルを超える多数のLEDを接続する場合には不向きである。
【0007】
また、従来のモジュールシステムでは、使用環境の照度、人の接近、温度、ドア開閉等の外部からの情報により、機能モジュールの出力等(例えば、LEDの輝度、色彩、発光時間)を制御する場合に、情報源となる外部データを出力する別の機器が必要であり、モジュールシステムのコントローラには、予めインタフェース仕様を満たす入力機能が必要であった。また、データを変換、転送処理等する電子回路を付加しなければ、外部からの情報をモジュールシステムに反映させることができなかった。
【0008】
さらに、モジュールシステムは、センサ等を備えた検知システム等として用いる場合があり、複数のセンサ等を使用して同時に測定する場合、センサ等を互いに離れた位置に配置する場合もある。このような場合に多数の信号線を配線するのでは不便である。そこで、1本のケーブル線で多機能を果たすモジュールシステムが望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、用語「モジュールシステム」は、目的とする機能を実現するための、複数のモジュールを含む構成要素の集合体を意味する。用語「モジュール」はシステムを構成する要素となる機能単位を意味し、コントローラ、制御装置、機能モジュール等を含む。用語「コントローラ」は、システムの他の要素を制御する機能を持った要素を意味し、プロセッサ、電子回路、制御プログラム等のソフトウェア、外部機器とのコネクタ等を包含する。用語「機能モジュール」は、制御装置によって制御されるモジュールを意味する。用語「制御装置」は、コントローラからの指示に基づいて機能モジュールまたは外部機器を制御する装置を意味し、マイクロプロセッサ、集積回路、電子回路、制御プログラム等のソフトウェア等を包含する。
【0026】
本発明のモジュールシステムは、モジュールシステムが接続する機能モジュールまたは外部機器によって特徴付けられる機能を実現するためのシステムであり、例えば、
図1に示すように各制御装置が時計機能を有し、制御装置の時計機能により、コントローラから各制御装置へ送信される信号の信号受信に伴う遅延時間を補正して機能モジュール等を制御することができる。モジュールシステムは、本発明の構成を満たすものであればよく、特定の用途のものに限定されない。例えば、本発明のモジュールシステムには、照明システム、検知システム、セキュリティシステム、撮影システム、表示システム、制御システム等が含まれる。照明システムは、LEDバー、LEDケーブル、イルミネーション等を含み、表示システムは、各種ディスプレイ、広告パネル、交通標識等を含む。
【0027】
本発明において、機能モジュールは、制御装置(マイクロプロセッサ等を含む)によって制御され、独立した機能を有するものであればよく、特に限定されない。機能モジュールは、例えば、照明モジュール、情報収集モジュール、音響モジュール、ディスプレイモジュール等を含む。照明モジュールとしては、LED、有機EL、白熱電球、蛍光灯等の光源が挙げられ、情報収集モジュールとしては、各種センサ、ビデオカメラ、写真カメラ等のカメラ、各種計測器等が挙げられる。また、ディスプレイモジュールとしては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ等が挙げられる。
【0028】
本発明の照明システムに用いる光源はLEDに限られず、電球、蛍光灯等であってもよく、LEDとこれらを組み合わせたものであってもよい。光源としてLEDを使用する場合、各制御装置により制御されるLEDは1種であっても、2種以上であってもよい。例えば、1つの制御装置によって制御されるLEDが赤色のLED、青色のLED、および緑色のLEDを含んでいてもよい。LEDモジュールに含まれるLEDは、色ごとに適宜その数を選択して構成することができる。制御装置は各色のLEDをそれぞれ独立に制御することができ、例えば、各色のLEDに対する電流を制御することにより、放射する光の強度を制御することができる。本発明の照明システムは、制御装置によりLEDの発光を制御することにより、所望の輝度および色調の光を生成することができる。
【0029】
本発明に用いる機能モジュールはLED等の照明モジュールに限られず、センサ、カメラ等の情報収集モジュールであってもよいし、オーディオ、ステレオ、レコードプレーヤー、CDプレーヤー、カセットレコーダー、マイクロホン、スピーカー等の音響モジュール、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクタ等のディスプレイモジュールであってもよい。センサは、物理、化学、時間等の情報を計測または判別し、信号に置き換えることができるものであればよく、例えば、温度、圧力、加速度、ひずみ、振動、流量、磁場、電場、電流、電圧、光線、放射線、ガス、煙、イオン、人感、開閉、湿度等を検知するセンサが挙げられる。また、本発明のモジュールシステムは、種類、機能が異なる複数の機能モジュールを含んでいてもよい。モジュールシステムに含まれる各制御装置は、種類が異なる複数の機能モジュールを独立に制御することが可能である。例えば、1つの制御装置にLEDと光センサが接続し、センサにより周囲の明るさを検知し、この情報を基に制御装置内のプログラムによりLEDの輝度や点灯を制御することが可能である。
【0030】
本発明のモジュールシステムに用いる制御装置は、情報収集モジュール(センサ等)、照明モジュール(LED等)等の機能モジュールを制御するだけでなく、モジュールシステムと接続する外部機器、例えば、空調システム、計測機器、工作機械、製造装置等を制御してもよい。
【0031】
本発明の第1のモジュールシステムは、コントローラと、機能モジュール等を制御する2以上の制御装置を含み、コントローラと2以上の制御装置が直列に接続している。各制御装置は、コントローラから各制御装置に送信される信号を制御装置の配列に従って順次受信し、制御装置間の信号受信の遅延時間を補正して機能モジュール等を制御することができる。本発明の第1のモジュールシステムの一形態を
図1に示す。
図1に示す形態は照明システムであり、n個のマイクロプロセッサ2が信号線4を介しコントローラ1と直列に接続している。また、各マイクロプロセッサ2は時計機能を有し、マイクロプロセッサにより遅延時間を補正してLED光源3の点灯を制御することができる。
【0032】
直列に多段接続された各マイクロプロセッサ2は、電源投入時にコントローラ1からの指令により、コントローラから何番目に位置するかを把握する機能を有しており、コントローラ1から各マイクロプロセッサ2にそれぞれ何番目に該当するかを示すID番号が付与される。次にコントローラ1より、各マイクロプロセッサ2宛てのLEDの制御データ(D1〜Dn)を連続して送信し、コントローラから最も近い第1段のマイクロプロセッサ(1)は、受信したデータから当該マイクロプロセッサに宛てられたデータD1のみを取り込み、他のデータ列は次段のマイクロプロセッサ(2)に送信する。次段のマイクロプロセッサ(2)は、当該マイクロプロセッサに宛てられたデータD2のみを取り込み、他のデータ列はさらに次段のマイクロプロセッサ(3)に送信する。この手順を最終段のマイクロプロセッサ(n)まで繰り返し、制御データの送受信を終了する。
【0033】
複数のマイクロプロセッサを直列に接続した場合には、コントローラからの伝送に伴う伝送遅延(コントローラからの距離に比例する)と各マイクロプロセッサの処理に伴う処理遅延が発生する。本発明のモジュールシステムでは、各マイクロプロセッサにおいて遅延時間を補正して機能モジュールを制御することができる。以下に、本発明の第1のモジュールシステムの遅延時間の補正メカニズムを
図1を参照しながら説明する。
図1に示すモジュールシステムでは、コントローラ1からマイクロプロセッサ2までの距離と各マイクロプロセッサ2間の距離はいずれも同じであり、また、各マイクロプロセッサの処理遅延も同じである。この場合、第1段のマイクロプロセッサ(1)において発生する遅延時間A
1は、伝送遅延d
t+マイクロプロセッサの処理遅延d
pであり、第2段のマイクロプロセッサ(2)において発生する遅延時間A
2は2×(d
t+d
p)であり、第3段のマイクロプロセッサ(3)において発生する遅延時間は3×(d
t+d
p)であり、第n段のマイクロプロセッサ(n)において発生する遅延時間A
nはn×(d
t+d
p)である。
【0034】
各マイクロプロセッサは遅延時間を補正する時計機能を備えており、各マイクロプロセッサは、取り込んだデータを所望の制御タイミングでLEDに更新させるタイミング信号を内部で生成する。各マイクロプロセッサは、ID番号ごとに遅延時間に応じて補正した制御タイミングを設定する。
図1に示すモジュールシステムにおいて、第1〜n段のマイクロプロセッサと接続するすべてのLEDを同時に制御する(同期させる)場合、第1段のマイクロプロセッサ(1)から最終段のマイクロプロセッサ(n)までの間の信号受信の遅延時間を補正すればよい。第1段のマイクロプロセッサ(1)と第2段のマイクロプロセッサ(2)の間の遅延時間(時間差)はd
t+d
pであり、第1段のマイクロプロセッサ(1)と第3段のマイクロプロセッサ(3)の間の遅延時間は2×(d
t+d
p)であり、第1段のマイクロプロセッサ(1)と第4段のマイクロプロセッサ(4)の間の遅延時間は3×(d
t+d
p)であり、第1段のマイクロプロセッサ(1)と第2段のマイクロプロセッサ(n)の間の遅延時間は、(n−1)×(d
t+d
p)である。したがって、第1段からn段までのすべてのマイクロプロセッサを時間T間隔で同期させる場合、制御装置間の遅延時間を補正する1つの態様は、各マイクロプロセッサにおいて、時間Tから当該マイクロプロセッサの遅延時間を差し引くことにより、各マイクロプロセッサの遅延時間を補正する。すなわち、最初に受信するマイクロプロセッサ(1)の遅延時間は0であり、したがって、マイクロプロセッサ(1)はコントローラからの信号を受信してから時間T(補正遅延時間)後にLEDを制御する。マイクロプロセッサ(2)の補正遅延時間は、マイクロプロセッサ(1)からの遅延時間d
t+d
pであり、したがって、マイクロプロセッサ(2)はコントローラからの信号を受信してから時間T−(d
t+d
p)後にLEDを制御する。マイクロプロセッサ(3)の補正遅延時間は、マイクロプロセッサ(1)からの遅延時間2×(d
t+d
p)であり、したがって、マイクロプロセッサ(3)はコントローラからの信号を受信してから時間T−2×(d
t+d
p)後にLEDを制御する。同様にして、マイクロプロセッサ(n)の補正遅延時間は、マイクロプロセッサ(1)からの遅延時間(n−1)×(d
t+d
p)であり、したがって、マイクロプロセッサ(n)はコントローラからの信号を受信してから時間T−(n−1)×(d
t+d
p)後にLEDを制御する。
【0035】
総接続段数がn段で、各段の遅延時間が等しい場合、各制御装置の機能モジュールへデータ更新する間隔(T)は、下記式に示すように(d
t+d
p)×nまたはこれ以上の間隔で可能となる。
【0037】
式中、Tは各制御装置のデータ更新周期時間を表し、nは制御装置の接続段数を表す。
【0038】
図1に示すモジュールシステムでは、コントローラに直列に配列したマイクロプロセッサの列(例えばLEDバー)が1本接続しているが、コントローラが複数のポートを有し、複数のLEDバーが接続している(コントローラから各LEDバーまでの距離がそれぞれ異なる)場合も考えられる。このような場合には、複数のLEDバーのすべてのマイクロプロセッサを同期させるために、コントローラの各ポートから各LEDバーの第1番目のマイクロプロセッサまでの伝送遅延についても考慮する必要がある。例えば、2つのポートに接続された2本のLEDバーのマイクロプロセッサを時間T間隔で同期させる場合、第1のポートに接続された第1のLEDバーの第1番目のマイクロプロセッサ(1)の遅延時間はコントローラからの伝送遅延(dt1)であり、補正遅延時間はT−dt1となる。第2番目のマイクロプロセッサ(2)の遅延時間は、dt1+d
t+d
pであり、補正遅延時間はT−(dt1+d
t+d
p)となる。第3番目のマイクロプロセッサ(3)の遅延時間は、dt1+2×(d
t+d
p)であり、補正遅延時間はT−dt1−2×(d
t+d
p)となる。同様に、第n番目のマイクロプロセッサ(n)の遅延時間は、dt1+(n−1)×(d
t+d
p)であり、補正遅延時間はT−dt1−(n−1)×(d
t+d
p)となる。また、第2のポートに接続された第2のLEDバーにおいて、第1番目のマイクロプロセッサ(1)の遅延時間はコントローラからの伝送遅延(dt2)であり、補正遅延時間はT−dt2となる。第2番目のマイクロプロセッサ(2)の遅延時間は、dt2+d
t+d
pであり、補正遅延時間はT−(dt2+d
t+d
p)となる。第3番目のマイクロプロセッサ(3)の遅延時間は、dt2+2×(d
t+d
p)であり、補正遅延時間はT−dt2−2×(d
t+d
p)となる。同様に、第n番目のマイクロプロセッサ(n)の遅延時間は、dt2+(n−1)×(d
t+d
p)であり、補正遅延時間はT−dt2−(n−1)×(d
t+d
p)となる。
【0039】
上記の補正方法において、マイクロプロセッサ間の伝送遅延d
t、マイクロプロセッサの処理遅延d
p、コントローラの各ポートごとに接続されたマイクロプロセッサの、各ポートからマイクロプロセッサ(1)への伝送遅延(dt1、dt2、・・・)は予め求められており、これらの遅延時間を各マイクロプロセッサに予め設定しておくことが可能である。各マイクロプロセッサはコントローラから与えられたID番号により、自分が何段目に位置するかを知ることができ、それにより補正遅延時間を算出することができる。また、各制御装置間で伝送遅延が異なる場合、または各制御装置の処理遅延が異なる場合にも、これらの値を個々の制御装置に設定することにより補正可能である。さらに、上記の補正方法では、各制御装置において伝送遅延d
tとマイクロプロセッサの処理遅延d
pの両方を補正しているが、制御装置間の間隔が短い等、伝送遅延d
tを実質的に無視できる場合もある。このような場合には、マイクロプロセッサの処理遅延d
pのみを考慮して補正遅延時間を設定することも可能である。
【0040】
本発明の第1のモジュールシステムの別の形態は、センサ等の情報収集モジュールを備えた検知システムである。モジュールシステムが検知システムである場合、各制御装置の遅延時間に基づいて補正遅延時間を求めることにより各観測点の情報を正確に同時に検出することができる。例えば、本発明の検出システムを反応装置または燃焼装置に用いた場合、各部位の温度、圧力等の情報を正確に同時に測定することができ、得られた情報に基づいて反応または燃焼を精密に制御することができる。また、地震活動や火山活動の観測のように、離れた地点の情報を同時に測定したい場合にも有用である。
【0041】
本発明の第2のモジュールシステムは、コントローラと2以上の制御装置が直列に接続しており、コントローラと各制御装置との間で相互に通信可能な双方向通信機能を有する。本発明の第2のモジュールシステムは、例えば、コントローラから各制御装置へデータ信号を送信する信号線と、各制御装置の情報をコントローラへ送信する信号線と有し、コントローラと各制御装置は信号線を通して双方向通信できる。
【0042】
図2Aおよび
図2Bは、片方向通信のモジュールシステムの模式図であり、
図2Aは、コントローラ1から各制御装置(マイクロプロセッサ)2へのデータ信号Dが正常に伝送される場合である。各マイクロプロセッサ2はコントローラ1から送信されるデータ信号D1〜Dnから当該マイクロプロセッサに割り当てられたデータのみを取り込み、それ以外を次段のマイクロプロセッサ2に送信する。最終的に第n段までのすべてのマイクロプロセッサが割り当てられたデータを取り込む。一方、
図2Bでは、コントローラ1からのデータの流れが途中で障害のために途絶え、後段のマイクロプロセッサ2はデータ信号を取り込むことができない。このように、伝送障害や外部からのノイズによるデータの擾乱、マイクロプロセッサの故障等の要因により正常な送信データが最終段まで到達しない場合でも、片方向通信のモジュールシステムでは、送信側のコントローラは異常を検知することができない。
【0043】
これに対し、本発明の第2のモジュールシステムは双方向通信機能を有する。
図3に示す形態では、コントローラから各マイクロプロセッサへLED制御のデータ信号を送信する信号線とは別に、直列された最終段のマイクロプロセッサより、受信完了信号をコントローラ側に送信する信号線を有し、これによりコントローラと各マイクロプロセッサの間で双方向通信が可能である。例えば、コントローラ1から各マイクロプロセッサ2へデータ信号Dを送信する場合、各マイクロプロセッサ2は、コントローラ1から送信されるデータ信号D1〜Dnから各IDのマイクロプロセッサに割り当てられたデータを順次取り込み、IDnの最終のマイクロプロセッサは受信完了信号DCをコントローラへ送信する。したがって、伝送障害や外部からのノイズによるデータの擾乱、マイクロプロセッサの故障等の要因により正常な送信データが最終段まで到達せず、コントローラが最終段のマイクロプロセッサから送信される受信完了信号DCを受信することができない場合には、コントローラは、システム異常と判断し、異常検出が可能となる。また、各マイクロプロセッサが回路情報等を送信できるように設定されている場合には、各マイクロプロセッサは異常が生じたときの回路情報等をコントローラへ送信し、コントローラは、どの箇所で障害が生じたかを診断することも可能である。なお、
図3に示す形態では、説明の便宜上コントローラから各マイクロプロセッサへ送信する信号線と、各マイクロプロセッサからコントローラへ送信する信号線の2本の信号線を用いているが、1本の信号線によりコントローラとマイクロプロセッサの間で双方向通信を行うことも可能である。
【0044】
第2のモジュールシステムの別の形態は、コントローラと各制御装置との間の双方向通信機能により、システム自身が各制御装置の信号受信の遅延時間を計測し、各制御装置において補正する補正遅延時間を生成する機能を有する。すなわち、各制御装置は計測された遅延時間を補正して機能モジュールまたは外部機器を制御することができる。例えば、電源立ち上げ時にコントローラから直列に接続した各制御装置へ測定コマンドを送信し、各制御装置はコントローラからの信号を受信し、受信完了コマンドをコントローラに送信する。コントローラは各制御装置からの受信完了信号を受信し、これにより各制御装置の遅延時間を計測する。コントローラは計測した遅延時間に基づいて各制御装置の補正遅延時間を算出し、これを各制御装置に送信する。各制御装置は送信された補正遅延時間に基づいて制御タイミングを生成し、機能モジュール(例えばLED)または外部機器を制御する。
【0045】
上述の第1のモジュールシステムでは、各制御装置において発生する信号受信の遅延時間に基づいて補正遅延時間を各制御装置に算出し、各制御装置は算出された補正遅延時間に基づいて機能モジュールを制御する。この方式では、コントローラから第1番目の制御装置までの距離と連続した各制御装置の間隔が等しく、かつ各制御装置の処理時間が等しい場合には、n段目の制御装置の遅延時間は、第1番目の制御装置の遅延時間に制御装置の数nを掛けた値により容易に求まる。しかし、各制御装置間の長さが均等ではなく、途中に長い伝送線路(ケーブル線)等がある場合、または各制御装置の処理時間が異なる場合には、遅延時間を制御装置毎に求める必要があり、制御装置の数が多い場合には操作が煩雑になる。これに対し、モジュールシステム自身がシステム内の各制御装置の遅延時間を自動的に計測する場合には、各制御装置を任意の位置に配置しても、または一連のモジュール列(例えばLEDバー)を任意の位置に、任意の本数を連結して配置しても、モジュールシステムによる計測により補正遅延時間が簡単に求まり、機能モジュールを全体として同期させることが容易になる。
【0046】
遅延時間をモジュールシステム自身の遅延時間計測により補正する補正メカニズムの一例を、
図4を参照しながら以下に説明する。まず、
図4Aに示すように、コントローラに1つの制御装置(例えばマイクロプロセッサ)が接続している場合は、コントローラ1より制御装置2に対し測定コマンドを送信し、制御装置2はそのコマンド受信後に受信完了コマンドをコントローラ1に送信する。例えば、コントローラ1は送信コマンドを時刻t
1に送信し、制御装置2は制御装置内部でコマンドを処理した後、受信完了コマンドをコントローラ1に送信する。コントローラがその受信完了コマンドを受信する時刻をt
2とすると、制御装置内部での処理時間は一定量の固定値として把握可能であるため、下記式に示すように、t
1とt
2の差分(NDt
1)からそのプロセッサ処理時間tdを差し引いた時間の1/2が制御装置までの伝送遅延時間となる。遅延時間の測定は、実際には、受信タイミングのばらつき等による変動要素を考慮して、この計測動作を数回〜数十回繰り返し、各回数のばらつき時間を平均化して実遅延量に近い遅延時間を算出するのが望ましい。
【0048】
式中、NDt
1は制御装置1段接続時の合計遅延時間を表し、t
1aはコントローラから制御装置へ送信するときの伝送遅延時間を表し、t
1bは制御装置からコントローラへ送信するときの伝送遅延時間を表し、tdは制御装置の処理時間を表し、d
1はコントローラと制御装置の間の補正遅延時間を表す。
【0049】
上式に示すように、コントローラに1つの制御装置を接続した場合は、コントローラから制御装置へ時刻t
1にデータ信号を送信してからd
1の時間が経過した後に制御装置での制御が可能になる。
【0050】
図4Bに複数の制御装置を接続した場合の遅延時間計測の概念図を示す。まず、制御装置を2段接続する場合、コントローラより制御装置(1)および制御装置(2)に対し測定コマンドを送信し、制御装置(1)および制御装置(2)はそれぞれコマンド受信後に受信完了コマンドをコントローラに送信する。コントローラは制御装置(1)および制御装置(2)からの受信完了コマンドを受信し、制御装置(1)の合計遅延時間(NDt
1)および制御装置(2)の合計遅延時間(NDt
2)を計測する。コントローラは下記式に基づいて、各制御装置の遅延時間から制御装置(1)と制御装置(2)の間の信号受信の補正遅延時間(d
2)を求める。コントローラは、この遅延時間(時間差)を補正遅延時間として制御装置(1)へ送信し、制御装置(1)は送信された補正遅延時間に基づいて制御タイミングを生成する。したがって、モジュールシステムが制御装置(1)および制御装置(2)の制御を同期させる場合、制御装置(1)および制御装置(2)はコントローラから送信されるデータ信号をそれぞれ受信し、制御装置(1)は、制御装置(1)内部の時計機能により、コントローラからのデータ信号を受信してから、例えば、補正遅延時間(d
2)が経過した後に機能モジュール(例えばLED)に制御信号を送信する。制御装置(2)は、コントローラからのデータ信号を受信した後、直ちに機能モジュールに制御信号を送信することにより(補正遅延時間0)、制御装置(1)と制御装置(2)の制御を同期させることができる。
【0052】
式中、NDt
1は制御装置1段接続時の合計遅延時間を表し、t
2aは制御装置(1)から制御装置(2)へ送信するときの伝送遅延時間を表し、t
2bは制御装置(2)から制御装置(1)へ送信するときの伝送遅延時間を表し、tdは制御装置(2)の処理時間を表し、NDt
2は制御装置2段接続時の合計遅延時間を表し、d
2は制御装置(1)と制御装置(2)の間の補正遅延時間を表す。
【0053】
制御装置をn段接続する場合は、コントローラより制御装置(1)〜制御装置(n)の各制御装置に対し測定コマンドを送信し、制御装置(1)〜制御装置(n)はそれぞれコマンド受信後に受信完了コマンドをコントローラに送信する。コントローラは制御装置(1)〜制御装置(n)からの受信完了コマンドを受信し、制御装置(1)〜制御装置(n)の各合計遅延時間(NDt
1〜NDt
n)を計測する。コントローラは下記式に基づいて、制御装置(n−1)と制御装置(n)の間の信号受信の補正遅延時間(d
n)を求める。
【0055】
NDt
nは制御装置n段接続時の合計遅延時間を表し、NDt
n−1は制御装置n−1段接続の合計遅延時間を表し、t
naは制御装置(n−1)から制御装置(n)へ送信するときの伝送遅延時間を表し、t
nbは制御装置(n)から制御装置(n−1)へ送信するときの伝送遅延時間を表し、tdは制御装置(n)の処理時間を表し、d
nは制御装置(n−1)と制御装置(n)の間の補正遅延時間を表す。
【0056】
制御装置(1)と制御装置(2)の間の遅延時間、またはそれ以降の各制御装置間の遅延時間については、同様の方法で実測が可能となるが、上記式で示されるように制御装置(2)以降については、前段までの制御装置の合計遅延時間が加算されるため、その値を差し引くことにより制御装置(n−1)と制御装置(n)の間の補正遅延時間を求めることができる。コントローラは、上記手順により計測された各制御装置の合計遅延時間から、各制御装置における補正遅延時間を算出し、補正コマンドと共に各制御装置に送信する。各制御装置は補正コマンド受信時に当該制御装置までの遅延時間を内部タイミング時間の補正値として記憶し、データ信号(例えば点灯データ)受信後、その補正値分の時間補正をして制御タイミングを設定する。
【0057】
例えば、制御装置n段接続時において、制御装置(1)から制御装置(n)のすべての制御装置の制御を同期させる場合、コントローラからのデータ信号を最終段のマイクロプロセッサ(n)が受信したときに合わせて各制御装置を制御するように補正するとすると(各マイクロプロセッサの待ち時間を補正遅延時間とする)、制御装置(1)は、次段以降の制御装置(2)から制御装置(n)で発生する遅延時間を補正し、制御装置(2)は次段以降の制御装置(3)〜制御装置(n)で発生する遅延時間を補正する。したがって、n個の制御装置を同期させるときの、制御装置(1)から制御装置(n−1)において補正する補正遅延時間(nd
1〜nd
n−1)は下記式で示される。
【0059】
総接続段数n段の各制御装置の機能モジュールへデータ更新する間隔(T)は、下記式に示すようにd
1+d
2+d
3+・・・+d
n−1+d
nまたはこれ以上の間隔で可能となる。
【0061】
上記説明では、各制御装置の処理時間を一定(td)としたが、各制御装置の処理時間が異なる場合でも、同様に遅延時間を計測することにより補正遅延時間を求めることが可能である。本発明の第2のモジュールシステムでは、コントローラにより各制御装置の遅延時間を計測することが可能であるため、適宜、任意の制御装置間で制御のタイミングを同期させることも可能である。例えば、n個の制御装置を数個のグループに分け、グループごとに機能モジュール(例えばLED)の作動を同期させることも可能である。また、時系列的に同期させる制御装置の組み合わせを変えることも可能である。補正遅延時間をデータ信号毎に生成してデータ信号とともに各制御装置へ送信することも可能である。なお、上記説明ではモジュールシステム自身の遅延時間計測により補正する方式について説明したが、双方向通信機能を有する場合であっても、システム自身の遅延時間計測によらずに、予め求めた伝送遅延および制御装置の処理遅延に基づいて補正遅延時間を算出し、それにより制御装置の制御タイミングを補正してもよい。
【0062】
本発明のモジュールシステムでは、各制御装置のデータ受信に伴う遅延時間を補正することができるため、各制御装置の正確な同期が可能であり、従来のシステムにはない機能モジュール等に対するより高度の制御を行うことが可能である。例えば、モジュールシステムがLEDを備えた照明システムである場合、LEDの輝度、色彩等の変化タイミングをすべてのLEDに対し時系列的に一致させることができる。また、一部またはすべてのLEDを同時に点滅させたり、色を連続的に変化させてグラデーションを演出したりすることができ、各LEDの点灯のタイミングをずらして、光が流れるような効果を演出したりすることもできる。さらに、外部機器と接続することにより、例えば音楽に合わせてLEDの発光を変化させる等の演出も可能である。
【0063】
本発明の第2のモジュールシステムのさらに別の形態は、少なくとも1つの情報収集モジュールを含む。コントローラと2以上の制御装置が直列に接続しており、コントローラと制御装置は双方向通信が可能である。各制御装置は、コントローラからの指令により情報収集モジュールを制御し、適切なタイミングで情報収集モジュールに情報を収集させ、得られた情報をコントローラに送信する。制御装置は、制御装置に入力する情報収集モジュール(センサ等)の情報、デジタル入力信号等のインプット側の情報データ生成機能を有しており、インプット側に該当するセンサデバイス類を付加することにより、各種情報データ(照度、人の接近、温度、ドア開閉等)を生成し、コントローラに情報データを伝送することができる。制御装置はインプット側の機能ばかりでなく、照明モジュール(LED等)、撮影モジュール(カメラ等)等の機器を制御するアウトプット側の機能を有していてもよい。コントローラは、制御装置から送信された情報収集モジュールからの情報に基づいて、制御装置へさらに指令を送ることができる。
【0064】
情報収集モジュールを備えた、本発明の第2のモジュールシステムの模式図を
図5に示す。
図5の模式図では、コントローラ1とn個の制御装置(マイクロプロセッサ)2が直列に接続しており、各マイクロプロセッサ2はセンサ等の情報収集モジュール5と接続している。各マイクロプロセッサ2は、コントローラに近い側から順にID番号が付されている。コントローラ1から各マイクロプロセッサ2へ情報要求信号を送信すると、各マイクロプロセッサは初段から最終段まで順次信号を受信し、当該マイクロプロセッサに宛てられた情報要求信号を取り込む。各マイクロプロセッサ2は情報要求信号に基づいて情報収集モジュール5に制御信号を送信する。その際、各マイクロプロセッサは受信した信号の遅延時間を補正して制御することができる。それにより、マイクロプロセッサの制御を同期させ、センサ等の情報を同時に得ることができる。各マイクロプロセッサ2は取得した情報を取り込み、最終段から順にDn〜D1までの情報をコントローラ1まで転送する。コントローラ1はプロセッサにより得られた情報を処理し、それに基づいて他のモジュールを作動させる等のさらなる信号をマイクロプロセッサに送信することも可能である。
【0065】
本発明で用いる情報収集モジュールは、温度、圧力、加速度、ひずみ、振動、流量、磁場、電場、電流、電圧、光線、放射線、ガス、煙、イオン、人感、ドア開閉、湿度等を検知するセンサまたは計測機器、ビデオカメラ、写真用カメラ、録画装置等の撮影機器、各種録音機器、監視カメラ、防犯カメラ、赤外線センサ等のセキュリティ機器等を含むが、これらに限定されない。本発明のモジュールシステムは、各制御装置がそれぞれセンサ等の情報収集モジュールと接続し、コントローラとの間で信号をやりとりして情報収集を行うので、外部の情報収集機器と接続する必要がない。したがって、従来のシステムにおいて見られるような、コントローラが外部の情報収集機器と接続するためのインタフェースを備える必要がなく、また、外部からのデータを変換、転送処理等をする電子回路を付加する必要もない。
【0066】
本発明のモジュールシステムの一実施形態は、情報収集モジュール(例えば、照度センサ)を備え、情報収集モジュールからの情報に基づいて照明モジュールを制御する照明システムである。コントローラと2以上の制御装置が直列に接続しており、コントローラと各制御装置の間で双方向通信機能を有し、制御装置および照度センサのユニットが、例えば建物内の各部に配置される。コントローラから制御装置に情報要求信号を送信すると、制御装置は照度センサに信号を送信し、建物の各部の照度を計測する。制御装置は計測した照度情報をコントローラに送信する。コントローラは、送信された照度情報をプロセッサにより処理し、指示信号を生成して各制御装置に送信する。制御装置は、指示信号に基づいて照明モジュールを制御し、建物の各部の照度を調節する。本発明の照明システムは他の情報収集モジュールと組み合わせて用いることもできる。例えば、人感センサ、ドア開閉センサ等により人の接近を検知し、制御装置により人を検知した箇所または区域の照度を調節することもできる。
【0067】
本発明のモジュールシステムを応用した別の実施形態は、赤外線センサ、マイクロ波センサ等のセンサを有するセキュリティシステムである。例えば、赤外線センサにより人の侵入を検知すると、制御装置は検知情報をコントローラへ送信し、コントローラからの指令により、制御装置は、警報装置、照明装置等を同時に作動させることができる。
【0068】
本発明のモジュールシステムを応用したさらに別の実施形態は、撮影タイミングの制御が可能な撮影システムである。コントローラと2以上の制御装置が直列に接続しており、各制御装置はそれぞれ撮影用カメラと接続している。カメラは、被写体を所望の位置、角度で撮影できるよう、ケーブル線で繋いで任意の位置に配置することができる。センサが被写体を検知すると、制御装置は検知情報をコントローラに送信する。コントローラは検知情報に基づいて各制御装置に指示信号を送信し、各制御装置は遅延時間を補正してカメラに撮影信号を送信する。本発明のモジュールシステムによれば、被写体を様々な位置、角度から複数のカメラによりそれぞれ任意のタイミングで撮影することができる。
【0069】
本発明のモジュールシステムを応用したさらに別の例は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクタ等の映像機器が接続されている表示システムである。コントローラと2以上の制御装置が直列に接続しており、各制御装置はそれぞれ映像機器と接続している。コンサート会場、サッカー場、野球場等に複数のディスプレイを配置し、映像を同時に映し出すことができる。本発明のモジュールシステムによれば、各ディスプレイの映像を正確に同期させることができる。
【0070】
本発明のモジュールシステムを応用したさらに別の例は、温度、圧力等のセンサを備えた制御システムである。コントローラと2以上の制御装置が直列に接続しており、各制御装置は温度、圧力等のセンサと接続している。本発明の制御システムを反応装置または燃焼装置に用いた場合、装置の各部の温度、圧力等の情報を正確に同時に測定することができ、そのため、反応または燃焼の状態を正確に把握することが可能である。したがって、温度、圧力等の情報に基づいてコントローラから制御装置に指示信号を送信し、制御装置により、例えば反応物質(または燃料)の供給量を制御することにより、反応または燃焼を精密に制御することができる。また、本発明の制御システムをロボット、工作機械等に適用することもできる。コントローラと直列に接続した2以上の制御装置を、ロボットや工作機械のアームや関節部分に配置し、複数のアームや関節の動きを正確に同期させることができる。
【0071】
本発明のモジュールシステムは外部機器と接続してもよい。外部機器は接続用コネクタ等を介し制御装置と接続してもよいし、コントローラと接続してもよい。本発明のモジュールシステムの制御装置はコントローラから指令により外部機器を制御することができる。コントローラまたは制御装置により外部情報を処理して、外部情報に基づいて機能モジュールを制御することもできる。外部機器は、特に限定されず、計測器等の情報収集機器、音響機器(オーディオ、ステレオ、レコードプレーヤー、CDプレーヤー、カセットレコーダー、楽器、マイクロホン、スピーカー等)、映像機器等を含むことができる。外部機器をコントローラに接続する場合、コントローラは外部機器と接続するためのインタフェースを備えたコネクタを有し、内部の変換プログラムにより、外部機器から入力された信号(例えば音響信号)をモジュールシステムの制御信号に変換する。変換した制御信号を各制御装置に送信することにより、例えば、イルミネーションや映像を音楽に同期させることができる。
【0072】
上記の本発明のモジュールシステムの実施形態は、いずれもコントローラと各制御装置が信号線を介して接続するものとして説明しているが、本発明のモジュールシステムは信号線により接続するものに限定されない。例えば、無線LANモジュール等の無線モジュールを用い、一部またはすべての制御装置間の通信を無線システムにより行うこともできる。無線システムに基づく遅延が発生する場合には、この遅延を含めて遅延時間を補正することも可能である。
【0073】
本発明の第3のモジュールシステムは、コントローラと2以上の制御装置を含むモジュールシステムであって、2以上の制御装置がケーブル線内に収容されている。2以上の制御装置は直列に接続しており、各制御装置は、コントローラから各制御装置に送信される信号を制御装置の配列に従って順次受信し、各制御装置は、制御装置間の信号受信の遅延時間を補正して各機能モジュールを制御することができる。遅延時間を補正する方法は、本発明の第1のモジュールシステムのように、補正遅延時間を予め求めた遅延時間に基づいて算出してもよいし、本発明の第2のモジュールシステムのように、コントローラと各制御装置の間で双方向通信し、各制御装置の信号受信の遅延時間を計測することにより制御装置間の補正遅延時間を求めてもよい。本発明の第3のモジュールシステムは好ましくは双方向通信機能を有する。
【0074】
2以上の制御装置がケーブル線内に収容されているモジュールシステムの実施形態を
図7に示す。
図6Aに示す実施形態は、コントローラ1と、ケーブル線7が信号線4を介して接続しており、ケーブル線7のコントローラ1側の末端には、接続用コネクタ23が設けられており、接続用コネクタ23に信号線4の一方の末端を接続し、信号線4の他の末端をコントローラ1の接続用コネクタ23に接続している。モジュールシステムの2以上の制御装置はケーブル線7の被覆の内側に直列に接続している。ケーブル線7の被覆の外側には、機能モジュールと制御装置を接続するためのモジュール実装用端子6が設けられており、モジュール実装用端子6には、LED3、センサ5等の機能モジュールを着脱可能に装着することができる。また、モジュール実装用端子6には計測器等の外部機器16を接続することができ、外部機器16からの情報を受信することができる。コントローラは、電池等の供給電源(図示せず)を収容できるようになっており、屋外でもモジュールシステムを容易に使用することができる。
【0075】
図6Bに示す実施形態は、複数のケーブル線をコネクタを介して連結したモジュールシステムである。ケーブル線7の端部には接続端子9が設けられており、ケーブル線7の接続端子9を延長用コネクタ21に挿着することにより、延長用コネクタ21を介して2本のケーブル線を連結することができる。また、ケーブル線7を分岐させて使用することもできる。分岐用コネクタ22を用い、3本以上のケーブル線7をそれぞれ分岐用コネクタ22に挿着し、分岐用コネクタ22を介してケーブル線を分岐させることができる。これによりモジュールシステムを2次元または3次元に配置することができる。
【0076】
図6Cに示す実施形態は、無線LANモジュール等の無線モジュールを用いるモジュールシステムであり、2以上のケーブル線の間を接続せずに用いることができる。この方式では、2本のケーブル線の間が接続されていない場合でも、それぞれのケーブル線に無線モジュール15を装着することにより、無線モジュール間で信号を送受信し、それにより制御装置間で片方または双方向通信することができる。
【0077】
図6Dに示す実施形態では、2以上の制御装置2がフレキシブル基板20上に実装され、ケーブル線の被覆10の内側に収容されている。フレキシブル基板は、一般に樹脂フィルムからなる基板上に導体となる電子回路が形成されており、電子回路に従って制御装置(マイクロプロセッサ)2等の電子部品類が実装されている。フレキシブル基板の樹脂フィルムは、ポリイミド、ポリエステル、フッ素樹脂、液晶ポリマー等の一般的な材料からなるものであってよい。フレキシブル基板の使用はケーブル線に柔軟性を与え、ケーブル線の敷設が容易になるという利点がある。なお、本発明の第3のモジュールシステムに用いるケーブル線はフレキシブル基板を用いる構成に限られず、制御装置を信号線で繋いでケーブル線内に収容する構成等であってもよい。
【0078】
本発明の第3のモジュールシステムは、双方向通信機能を備えることにより、コントローラによりケーブル線に装着されている複数の機能モジュールを統括して制御することができる。例えば、ケーブル線に装着されているセンサ(例えば、温度センサ、照度センサ)からの情報を制御装置がコントローラへ送信し、コントローラはプロッセサによりセンサ情報を処理して指示信号を制御装置へ送信し、ケーブル線に装着されている別の機能モジュール(例えば、LED等の照明モジュール)を制御することができる。また、空調システム等の外部機器と接続してこれを制御することもできる。本発明の第3のモジュールシステムを実施するためには、1本のケーブル線を敷設するだけでよく、目的に応じて機能モジュールを選択することにより、多様な機能を発現し、制御することができる。
【0079】
次に、本発明のモジュールシステムを以下の実施形態(照明システム)によりさらに詳細に説明する。
図7に示す照明システムは、集積回路(FPGA)111を備えたコントローラ101と、複数の制御装置(CPU)102が直列に接続したLEDバー100とから構成されている。コントローラ101にはインタフェース変換用IC(RS485)112および接続ポートを介して10本のLEDバー100A〜Jが接続している。また、コントローラ101にはSDカード挿入部113、SDカードのデータを読み出すCPU114、電源JACK115、電源SW116、電源回路117、8ビットDIPスイッチ118、およびプッシュスイッチ(リセット用スイッチ)119が備えられている。コントローラとは別のアプリケーションにより作成したLEDの点灯制御データを格納したSDカードを挿入部113に挿入すると、CPU114の制御によりLEDの点灯制御データを順次読み出し、読み出したデータをFPGA111に送信する。FPGA111では、送信されたデータを該当するポートおよびLEDごとに区分けして、点灯制御コマンドを付加し、シリアルデータとして各LEDバーに順次送信する。
【0080】
FPGA111は、
図8に示すようにその内部にCPU114モード制御インタフェース120A、CPU114外部バスインタフェース120B、制御データ送受信部121、仮想メモリ122、制御データ処理部123、データ保管部124、受信データ処理部125、データ送信部126、データ受信部127、LEDモジュール制御インタフェース128、および100ミリ秒タイマ部129、さらに外部スイッチインタフェース130、モード制御部131を備えている。制御データ送受信部121は、CPU114からFPGA111に送信されたSDカードからの制御データをCPU114モード制御インタフェース120AおよびCPU114外部バスインタフェース120Bを介して受信する。仮想メモリ122は受信した制御データを一時保管し、制御データ処理部123は制御データをLED別に分別する。また、制御データ処理部123は100ミリ秒タイマ部129で生成した100ミリ秒タイミング信号を付加することができる。データ保管部124は制御データをさらにポート別に分解し、データ送信部126からLEDモジュール制御インタフェース128を介して各LEDバー100A〜Jに送信する。
【0081】
LEDバー100の各制御装置(CPU)102は、コントローラ101より送信された制御データのうち各LEDバーに搭載された各制御装置の該当ID番号のデータのみを受信し、他のデータ信号は次段の制御装置に送信する。各ポートのLEDバーは同様の手順で最終段のCPUまで点灯制御データを送信し、最終段の制御装置は、データ受信後に受信完了信号をコントローラ101に返信する。各制御装置は、自ID番号のデータを更新させるタイミング信号を内部で生成し、遅延時間を補正する。遅延時間を補正することによりすべての制御装置は同一のタイミングで受信データを更新することができ、その場合、制御データに従いLEDの輝度、色調を変化させる動作を100ミリ秒周期で連続的に制御することができる。
【0082】
図9にLEDバーの一例を示す。LEDバー100は、LED実装面100aに6個のLEDを1つの単位とするLEDのブロック(LEDモジュール)110が6個実装されており、背面側100bにはLEDモジュール110のLED160Aおよび160Bを制御するマイクロプロセッサ102が実装されている。LEDモジュール110は、マイクロプロセッサ102と、マイクロプロセッサ102を駆動するための電源インタフェース(RS485を含む)141と、マイクロプロセッサ102からの信号によりLEDの所望の輝度、色調を構成する表示部142A、142Bとを備えている。マイクロプロセッサ102は、UART送受信部151においてコントローラ101からのデータ信号を受信し、受信したデータをデータ処理部152で処理し、タイミング部153で補正遅延時間を生成する。次に、データバッファ部154を介しPWM155において、LED160Aおよび160Bに対する赤、緑、青の3色の制御データを同期したタイミングでパルス幅変調制御し、表示部142A、142Bの各LEDに送信し、所望の輝度、色調を構成して点灯させる。
【0083】
上記照明システムでは以下の手順により100ミリ秒ごとに同時点滅(同期)するように設定されている。LEDバーがLEDブロック1(CPU1)、LEDブロック2(CPU2)、・・・、LEDブロックn(CPUn)の順で連結し、コントローラからの開始コマンドがLEDブロック1、LEDブロック2、・・・、LEDブロックnの順で送信されるとすると、(1)各LEDブロックは開始コマンドにより、自分のLEDブロックが先頭からどの位置にあるかをまず認識する。次に(2)100ミリ秒ごとにコントローラからタイマ開始コマンドと点灯データが送信される。(3)各LEDブロックは、先頭からの自分の位置とCPUの処理時間により、順次送られてくるデータの遅延時間を計算する。遅延時間(伝送遅延およびCPUの処理遅延)は、先頭のCPUであれば遅延時間0であり、2番目のCPUであれば1×CPUの処理時間、3番目のCPUであれば2×CPUの処理時間、n番目のCPUであれば(n−1)×CPUの処理時間となる。(4)開始コマンドから90ミリ秒後にLEDを点灯させるとすると、各CPUは、コマンドを受信後90ミリ秒から各CPUにおける遅延時間を差し引いた時間が経過したときにLEDを点灯させればよい。