【解決手段】本発明の一形態に係る積層コンデンサは、素子本体を具備する。上記素子本体は、複数の内部電極層と、複数の誘電体層とを有する。上記複数の内部電極層は、Niを主成分とし、Pt、Ru、Rh、Re、Ir、Os及びPdのうち少なくとも1種の金属を含み、厚み方向に相互に対向して配置される。また、上記複数の内部電極層各々は、50nm以上400nm以下である第1の厚みを有する。上記複数の誘電体層は、誘電体材料からなり上記複数の内部電極層の間にそれぞれ配置される。また、上記複数の誘電体層各々は、200nm以上500nm以下であり、かつ上記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有する。
Niを主成分とし、Pt、Ru、Rh、Re、Ir、Os及びPdのうち少なくとも1種の金属を含み、厚み方向に相互に対向して配置された複数の内部電極層と、誘電体材料からなり前記複数の内部電極層の間にそれぞれ配置された複数の誘電体層とを有する素子本体
を具備し、
前記複数の内部電極層各々は、50nm以上400nm以下である第1の厚みを有し、
前記複数の誘電体層各々は、200nm以上500nm以下であり、かつ前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有する
積層コンデンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、内部電極層をさらに薄型化するためには、上記の連続性が低下する問題のみならず、クラックやデラミネーション等の欠陥が生じ得る。特に、連続性の問題を鑑みて内部電極層をスパッタリング法や蒸着法、メッキ法等の薄膜法により形成しようとした場合、このような問題が顕著になっていた。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、内部電極層の連続性が高く、クラックやデラミネーションを防止し、小型、大容量を実現することが可能な積層セラミックコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層コンデンサは、素子本体を具備する。
上記素子本体は、複数の内部電極層と、複数の誘電体層とを有する。
上記複数の内部電極層は、Niを主成分とし、Pt、Ru、Rh、Re、Ir、Os及びPdのうち少なくとも1種の金属を含み、厚み方向に相互に対向して配置される。また、上記複数の内部電極層各々は、50nm以上400nm以下である第1の厚みを有する。
上記複数の誘電体層は、誘電体材料からなり上記複数の内部電極層の間にそれぞれ配置される。また、上記複数の誘電体層各々は、200nm以上500nm以下であり、かつ上記第1の厚みよりも大きい第2の厚みを有する。
【0009】
上記積層コンデンサによれば、内部電極層がNiの他、上記金属を含むことにより、内部電極層の連続率を高めることができ、かつ、内部電極層の引張強度を低下させ、焼成時の熱収縮による可変形性を高め、誘電体層との界面や素子本体の側面部に生じるクラックやデラミネーションを防止することができる。
また、第1の厚み及び第2の厚みを上記数値範囲とすることで、積層コンデンサの小型化を図ることができる。
さらに、第2の厚みを第1の厚みよりも厚くすることにより、焼結時における誘電体層の収縮力を高め、内部電極層の変形抵抗が誘電体層より高い場合であっても収縮させることができる。これにより、内部電極層内の収縮応力を低下させ、素子本体に生じ得るクラックやデラミネーションを防止することができる。
したがって、内部電極層の連続性が高く、クラックやデラミネーションを防止し、小型、大容量を実現することが可能な積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【0010】
また、上記第2の厚みは、上記第1の厚みの1.2倍以上5倍以下であってもよい。
これにより、クラックやデラミネーションをより効果的に防止することができる。
【0011】
また、上記複数の内部電極層各々は、薄膜法により形成された膜であってもよい。
これにより、内部電極層の密度や平滑性を改善し、内部電極層の連続性をより高めることができる。
【0012】
例えば、上記複数の内部電極層は、Niを主成分とし、Ptを含んでいてもよい。
これにより、内部電極層の引張強度をより低下させ、焼成時の熱収縮による可変形性をより高めることができ、クラックやデラミネーションをより効果的に防止することができる。
【0013】
また、例えば上記複数の内部金属層は、Pt、Ru、Rh、Re、Ir、Os及びPdのうち少なくとも1種の金属を0.5mol%以上5mol%以下含んでいてもよい。
これにより、内部電極層の連続率をより高め、かつクラックやデラミネーションをより効果的に防止することができるとともに、製造コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、内部電極層の連続性が高く、クラックやデラミネーションを防止し、小型、大容量を実現することが可能な積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る積層コンデンサについて説明する。
【0017】
[積層コンデンサの構成]
図1は、本実施形態に係る積層コンデンサ100の斜視図であり、
図2及び
図3は積層コンデンサ100の断面図である。各図において直交する三軸方向をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とし、Z軸方向を、積層コンデンサ100の厚み方向とする。
図2はX−Z平面における断面図、
図3はY−Z平面における断面図である。
【0018】
これらの図に示すように、積層コンデンサ100は、素子本体101、第1端子105及び第2端子106を備え、素子本体101の対向する端面に外部端子である第1端子105及び第2端子106が形成された構成を有する。
【0019】
素子本体101は、素子本体101の一方の主面である第1主面101aと、その反対側の主面である第2主面101bとを有する。また素子本体101は、第1端子105と接続される側の側面を第1側面101cとし、その反対側の側面であって第2端子104と接続される側の側面を第2側面101dとする。なお、素子本体101は、
図1に示すように、直方体形状とすることができるが、この他の形状であってもよい。
素子本体101は、厚み方向に相互に対向して配置された複数の内部電極層102と、複数の内部電極層102の間にそれぞれ配置された複数の誘電体層103と、カバー層104とを有する。素子本体101は、複数の内部電極層102と複数の誘電体層103とが交互に積層された積層体を有し、当該積層体がコンデンサを構成する。カバー層104は、後述するように、この積層体の最外層に配置された内部電極層102を被覆する。
【0020】
複数の内部電極層102は、導電性材料からなり、積層コンデンサ100の内部電極として機能する。
図2に示すように、各内部電極層102は平板状であり、互いに離間し、第1主面101a及び第2主面101bに平行となるように、誘電体層103を介して積層されている。内部電極層102の層数は特に限定されず、数層〜数百層とすることができる。
また複数の内部電極層102は、複数の第1内部電極層102a及び複数の第2内部電極層102bを含む。
各第1内部電極層102aは、一端が第1側面101cに露出して第1端子105に当接し、第1端子105に電気的に接続されている。第1内部電極層102aの他端は、第2側面101dとは離間している。
各第2内部電極層102bは、一端が第2側面101dに露出して第2端子106に当接し、第2端子106に電気的に接続されている。第2内部電極層102bの他端は、第1側面101cとは離間している。
なお、第1内部電極層102a及び第2内部電極層102bは、それぞれ、正極及び負極であってもよく、又は負極及び正極であってもよい。
【0021】
また各内部電極層102は、Niを主成分とし、Pt、Ru、Rh、Re、Ir、Os及びPd(以下、貴金属元素)のうち少なくとも1種の金属を含むものとする。
各内部電極層102は、例えば薄膜法によって形成された膜とすることができる。薄膜法は、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法等、合金からなる金属薄膜を形成することができる成膜法をいうものとする。内部電極層102の製造方法の詳細は、後述する。
内部電極層102における貴金属元素の含有量は特に限定されないが、0.5mol%以上5mol%以下が好適である。内部電極層102が貴金属元素を上記割合で含有することで、連続率を高め、かつ製造コストを抑制することができる。なお、連続率は、素子本体101を任意の断面で見たときに、内部電極層の連続している部分と途切れている部分の長さの合計値に対する連続している部分の長さの合計値の割合を意味する。
【0022】
複数の誘電体層103は、いずれも誘電体材料からなり、積層コンデンサ100の誘電体として機能する。誘電体層103を構成する誘電体材料は、チタン酸バリウム(BaTiO
2)、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)又はジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)等の誘電性セラミック材料であるものとすることができる。誘電体層103は、このような誘電性セラミック材料からなる複数のシート(グリーンシート)を積層し、焼結したものとすることができるが、詳細は後述する。
【0023】
第1端子105は、積層コンデンサ100の一方の端子として機能する。第1端子105は、
図2に示すように第1側面101c上に配設され、第1側面101cに露出する第1内部電極層102に当接し、第1内部電極層102に電気的に接続されている。また、第1端子105は、
図2に示すように一部が第1主面101a及び第2主面101b上に配設されてもよい。
第1端子105は導電性材料からなり、例えばメッキにより配設された金属や導電性ペーストを焼結したものとすることができる。
【0024】
第2端子106は、積層コンデンサ100の他方の端子として機能する。第2端子106は、
図2に示すように第2側面101d上に配設され、第2側面101dに露出する第2内部電極層103に当接し、第2内部電極層103に電気的に接続されている。また、第2端子106は、
図2に示すように一部が第1主面101a及び第2主面101b上に配設されてもよい。
第2端子106は導電性材料からなり、例えばメッキにより配設された金属や導電性ペーストを焼結したものとすることができる。
【0025】
2つのカバー層104は、複数の内部電極層102のうち、第1主面101a及び第2主面101bに最も近い位置に配設された2つの内部電極層102をそれぞれ被覆し、外部から内部電極層102を遮蔽する機能を有する。
各カバー層104は、いずれも誘電体材料からなる。当該誘電体材料は、誘電体層103と同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。具体的には、当該誘電体材料は、チタン酸バリウム(BaTiO
2)、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)又はジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)等の誘電性セラミック材料であるものとすることができる。カバー層104も、誘電体層103と同様に、このような誘電性セラミック材料からなる複数のグリーンシートを積層し、焼結したものとすることができる。
各カバー層102の厚みは、内部電極層102に対する酸素の遮蔽効果や積層コンデンサ100全体の大きさに鑑みて適宜決定できるが、例えば30μm以下が好適である。
【0026】
[内部電極層と誘電体層の厚み]
本実施形態の各内部電極層102及び各誘電体層103は、非常に薄く形成される。
具体的には、複数の内部電極層102各々は、50nm以上400nm以下である第1の厚みを有しており、複数の誘電体層103各々は、200nm以上500nm以下である第2の厚みを有している。
さらに、第2の厚みは、第1の厚みよりも大きく、好適には第1の厚みの1.2倍以上5倍以下であり得る。
【0027】
[積層コンデンサの製造方法]
積層コンデンサ100の製造方法について説明する。
図4は、積層コンデンサ100の製造方法を示す模式図である。
【0028】
図4に示すように、グリーンシートG上に、金属薄膜Fを形成したシート材S1を積層する。
上記のようにグリーンシートGは誘電性セラミック材料からなる。
上記のように金属薄膜Fは、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法等の薄膜法によって形成され得る。スパッタ法としては、例えば2極スパッタリング法(直流(DC)スパッタリング法等を含む)、マグネトロンスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、反応性スパッタリング法等を適用することができる。また、蒸着法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザブレーション等を適用することができる。また、メッキ法としては、電気メッキ法、無電解メッキ法等を適用することができる。
金属薄膜FがDC及びRFスパッタリング法によって形成される場合は、例えばスパッタリングターゲットとして、内部電極層102の組成と同一の合金材料で構成されたものを用いることができる。スパッタリング条件は特に限定されず、所期の金属薄膜Fを形成できるよう、適宜設定することができる。
図4に示すように、金属薄膜Fは、グリーンシートGの一辺上を被覆し、かつ少なくとも対向する他辺を被覆しないパターンで形成され得る。
シート材S1は、金属薄膜Fが形成された辺が交互に配置されるように積層される。さらに、シート材S1の最上層及び最下層には、金属薄膜Fを形成しないグリーンシートGを複数層積層したシート材S2を積層する。
【0029】
続いて、シート材S1及びシート材S2が積層された積層体を圧着する。圧着は、熱圧着法、静水圧プレス法等によってすることができる。
図5は圧着された積層体Aを示す斜視図である。なお、
図4及び
図5では一つの積層コンデンサ100に相当する積層体を示すが、シート材の積層及び圧着によって複数の積層コンデンサ100に相当する積層体を作製し、裁断によって個片化して積層体Aを作製してもよい。
【0030】
続いて、積層体Aを焼成する。焼成は例えば還元雰囲気下において行うことができる。焼成によって、グリーンシートGが素子本体101となり、金属薄膜Fが内部電極層102となる。これにより、積層コンデンサ100が作製される。なお、積層コンデンサ100は他の製造方法によって製造してもよい。
【0031】
[積層コンデンサの効果]
従来、積層コンデンサを小型化及び大容量化しようとした場合、以下のような問題があった。
まず、内部電極層を500nm以下の厚みで形成しようとした場合、連続率が低下し、所望の容量を実現することが難しかった。この主な理由としては、従来電極層の材料として用いられていたNi等の金属の熱安定性が低いことが挙げられる。すなわち、焼成によってこれらの金属結晶粒子が粒成長することで球状化する。球状化は電極材料の存在している内部電極層で起こるため、球状化により内部電極層に空孔が形成され得る。球状化された粒子のサイズは、内部電極層の厚みに比例しないことから、電極層を薄くする程に相対的な粒子サイズが大きくなり、空孔が形成され連続率低下が起こる。したがって、体積/電極面積の比率の小さい電極層に空孔が形成されやすくなる。また、特に印刷法により内部電極層を形成する場合、金属ペースト内に含まれる有機物成分が除去されるため、電極層の密度や平滑性が低下するということも影響すると考えられる。
また、電極層の密度や平滑性を改善するため、金属ペーストを用いない薄膜法によって内部電極層を形成した場合には、内部電極層の密度及び変形抵抗が高くなり当該電極層が焼結時に収縮しにくくなった。これにより、内部電極層と誘電体層との間の収縮に大きな差が生じ、内部電極層と誘電体層の間の応力・歪が高まり、その結果素子本体にクラックやデラミネーションといった欠陥が生じやすかった。
そこで本実施形態によれば、内部電極層102がNiの他、上記貴金属を含むことにより、熱安定性を高め、連続率を高めることができる。さらに、他金属の含有により内部電極層102の引張強度を低下させ、焼成時の熱収縮による可変形性を高めることができる。
したがって、内部電極層102と誘電体層103との間に生じ得るデラミネーションや、内部電極層102とカバー層104との間や第1及び第2側面101c,101d近傍で生じ得るクラックやデラミネーションを防止することができ、素子本体101の欠陥を抑制することができる。
また、第1の厚みと第2の厚みとを上述の数値範囲とすることで、積層コンデンサを小型化することができる。
さらに、第2の厚みを第1の厚みよりも厚くすることにより、焼結時における誘電体層の収縮力を高め、内部電極層の変形抵抗が誘電体層より高い場合であっても収縮させることができる。これにより、内部電極層と誘電体層の間の応力・歪を低下させ、上記クラックやデラミネーションを防止することができる。さらに、第2の厚みを第1の厚みの1.2倍以上5倍以下とすることにより、より効果的にクラックやデラミネーションを防止することができる。
加えて、内部電極層102を薄膜法により形成することで、上述のとおり電極層の密度や平滑性を改善し、連続性をより高めることができる。さらに、この場合であっても、第2の厚みを第1の厚みよりも厚くすることにより、内部電極層内の収縮応力を十分低下させることができることから、上記クラックやデラミネーションを防止することができる。
【0032】
[変形例]
各内部電極層102は、薄膜法のほか、印刷法でも形成することができる。この場合、各内部電極層102は、Niを主成分とする導電体粉末、貴金属元素を含有する有機金属錯体及び有機溶剤等を混合した金属ペーストをグリーンシートG上に塗布することにより形成され得る。
これによっても、上述のように、内部電極層の連続性が高く、クラックやデラミネーションを防止し、小型、大容量を実現することが可能な積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【実施例】
【0033】
(試験例1)
上記実施形態において説明した内部電極層の厚みと誘電体層の厚みとの比率を変更して積層コンデンサを作製し、素子本体の欠陥発生との関係を評価した。
【0034】
まず、BaTiO
3からなるグリーンシート上に金属薄膜を形成した。金属薄膜は、Ni及びPt(3.5mol%)を含む合金薄膜とし、DCスパッタリング法により形成した。スパッタリングターゲットは、後述する内部電極層の組成と同一の合金材料で構成されたものを用い、真空度は1Pa、温度は室温、導入ガスはArとした。続いて、金属薄膜が形成されたグリーンシートを積層、圧着、カット、端子配設、脱バイ及び焼成を行い、内部電極層と誘電体層の厚みの比率がそれぞれ異なる複数の積層コンデンサを作製した。各積層コンデンサの誘電体層の厚み(第2の厚み)はいずれも500nmであり、内部電極層の厚み(第1の厚み)は、それぞれ、第2の厚みに対して以下の表1に示す比率となる厚みとした。
作製した各積層コンデンサの素子本体について、クラックとデラミネーションの発生の有無について評価した。表1に結果を示す。それぞれ、発生した場合は○、発生していない場合は×で示す。
なお、厚み及び欠陥発生の評価は、各積層コンデンサを樹脂に埋め、研磨により積層コンデンサの中央部の断面を露出させ、各積層コンデンサの断面をSEM(scanning electron microscope)により観察することによって行った。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果より、第1の厚みと第2の厚みとが同一である場合、クラックとデラミネーションの双方の発生が認められたが、第2の厚みが第1の厚みより大きい(表1において、第2の厚み/第1の厚みが1よりも大きい)場合、いずれの発生も認められなかった。
【0037】
(試験例2)
続いて、上記内部電極層の厚みと、欠陥発生及び連続率との関係について評価した。
【0038】
試験例1と同様に、内部電極層の厚み(第1の厚み)の異なる複数の積層コンデンサを作製した。第1の厚みは以下の表2に示す厚みであり、第2の厚みは、500nmである。また、厚み、欠陥発生及び連続率の評価も、試験例1と同様にSEM断面の観察により行った。
【0039】
【表2】
【0040】
表2の結果より、第1の厚みが500nmの場合、クラックとデラミネーションの双方の発生が認められたが、第1の厚みが50nm以上400nm以下の場合、いずれの発生も認められなかった。
さらに、表2に示すように、連続率と第1の厚みとの間に相関が見られた。
図10は、第1の厚みと、それに対する内部電極層の連続率の最小値との関係を、近似式(実線)を用いて示したグラフである。この近似式は、以下の(1)式で表される。
y=-43.56*exp(0.00685x)+101.28・・・(1)
但し、式(1)において、xは第1の厚み(nm)、yは内部電極層の連続率(%)を示す。
これにより、第1の厚みxと内部電極層の連続率yとは、
図10の斜線の範囲、すなわち以下の(2)式の関係を満たすことができる。
y≧-43.56*exp(0.00685x)+101.28・・・(2)
同図に示すように、第1の厚みが大きくなるに従い連続率が高まる傾向が確認された。従来、内部電極層が70%以上の高い連続率を有する場合、内部電極層内の焼結応力が高まり、素子本体にクラックやデラミネーションといった欠陥が生じやすかった。一方で、表2の結果より、本発明に係る積層コンデンサは、内部電極層の連続率が70%以上の場合であってもクラックやデラミネーションの発生を抑制することができることが確認された。
【0041】
以上のように、第2の厚みが第1の厚みよりも大きい積層コンデンサ、特に第2の厚みが第1の厚みの1.2倍以上5倍以下の積層コンデンサは、クラックやデラミネーションといった欠陥を防止することができることが確認された。また、内部電極層の厚みが50nm以上400nm以下である場合、70%以上の連続率とすることができることに加え、クラックやデラミネーションといった欠陥を防止することができることが確認された。これらの結果より、本発明に係る積層コンデンサは、小型、大容量を実現することができる。