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特開2016-1453292,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとの組成物
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  • 特開2016145329-2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとの組成物 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-145329(P2016-145329A)
(43)【公開日】2016年8月12日
(54)【発明の名称】2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとの組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20160715BHJP
   C09K 21/08 20060101ALI20160715BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20160715BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20160715BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20160715BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20160715BHJP
【FI】
   C09K5/04 F
   C09K21/08
   C09K3/00 111B
   C09K3/30 T
   C09K3/30 J
   C11D7/50
   F25B1/00 396Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-248330(P2015-248330)
(22)【出願日】2015年12月21日
(62)【分割の表示】特願2014-517874(P2014-517874)の分割
【原出願日】2012年5月15日
(31)【優先権主張番号】1155952
(32)【優先日】2011年7月1日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラシェッド, ウィサム
【テーマコード(参考)】
4H003
4H028
【Fターム(参考)】
4H003DA15
4H003ED26
4H003FA04
4H028AA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一般的な熱伝達流体に代替するような、オゾン層への有害性がより少なく、相対的に低いGWPを示す熱伝達流体を提供する。
【解決手段】2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとを含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとを含む組成物。
【請求項2】
2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとの混合物からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
− 1%〜99%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと1%〜99%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン、
− 好ましくは、5%〜70%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと30%〜95%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン、
− 好ましくは、20%〜65%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと35%〜80%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン、
− 好ましくは、25%〜60%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと40%〜75%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン、
− 好ましくは、28%〜51%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと49%〜72%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン
を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
熱伝達流体としての請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項5】
前記組成物が、共沸様、好ましくは共沸である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が、不燃性である、請求項4または5に記載の使用。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物と、潤滑剤、安定化剤、界面活性剤、トレーサー、蛍光剤、着臭剤、可溶化剤、およびそれらの混合物から選択される1種または複数の添加剤とを含む熱伝達組成物。
【請求項8】
熱伝達流体として請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物を含むか、または請求項6に記載の熱伝達組成物を含む蒸気圧縮回路を備える熱伝達設備。
【請求項9】
遠心圧縮機、好ましくは直接駆動遠心圧縮機を備える、請求項8に記載の設備。
【請求項10】
満液式蒸発器を備える、請求項8または9に記載の設備。
【請求項11】
ヒートポンプ加熱、空調、特に、自動車の空調、もしくは集中型の据付け式空調、冷蔵もしくは冷凍、およびランキンサイクルのための移動式または据付け式の設備から選択され、好ましくは空調設備である、請求項8ないし10のいずれか一項に記載の設備。
【請求項12】
熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路により、液体または物体を加熱または冷却するための方法であって、熱伝達流体の蒸発と、熱伝達流体の圧縮と、熱伝達流体の凝縮と、熱伝達流体の減圧とを逐次的に含み、熱伝達流体が請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物である方法。
【請求項13】
初期熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路を備える熱伝達設備の環境に対する影響を軽減するための方法であって、蒸気圧縮回路中の初期熱伝達流体を、初期熱伝達流体よりも低いGWPを示す最終熱伝達流体と取り替える段階を含み、最終熱伝達流体が請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物である方法。
【請求項14】
初期熱伝達流体が、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶剤としての請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
発泡剤としての請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
好ましくはエアロゾルのための、噴射剤としての請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
洗浄剤としての請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
共沸様、好ましくは共沸である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとの組成物、および、特に熱伝達流体としての、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロカーボン化合物をベースにした流体は、蒸気圧縮による熱伝達システム、特に、空調装置、ヒートポンプ装置、冷蔵装置、または冷凍装置において広く使用されている。これらの装置には、装置が、流体の低圧での蒸発(流体はこのとき、熱を吸収する)と、蒸発した流体の高圧への圧縮と、液体を与えるための、高圧での蒸発した流体の凝縮(流体はこのとき、熱を放出する)と、サイクルを完了するための、流体の減圧とを含む熱力学サイクルに基づいているという共通点がある。
【0003】
熱伝達流体(純粋化合物、または化合物の混合物であってもよい)の選択は、一方で、流体の熱力学的特性、他方で、追加的な制約によって決まる。したがって、特に重要な基準は、検討中の流体の環境に対する影響である。特に、塩素化合物(クロロフルオロカーボンおよびヒドロクロロフルオロカーボン)は、オゾン層を破壊するという欠点を示す。それ故に、これから先は、塩素化合物より、ヒドロフルオロカーボン、フルオロエーテル、およびフルオロオレフィンなどの非塩素化合物が、一般的に好ましい。
【0004】
現在使用されている熱伝達流体よりも低い地球温暖化係数(GWP)を示し、かつ、同等のまたは改善された性能を示す他の熱伝達流体を開発することも、依然として必要である。
【0005】
文献US5076064は、遠心圧縮機における、他の冷媒によるトリクロロフルオロメタン(CFC−11)の代替を記載している。特に、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(HCFC−123)の使用が、この文献において提供されている。しかし、オゾン層への有害性がさらに少なく、HCFC−123よりも低いGWPを示す冷媒を使用することが依然として望ましい。
【0006】
文献WO2010/141669は、冷媒としての、特に、CFC−11およびHCFC−123の代替としてのcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン(またはZ−HFO−1336mzz)の使用を記載している。しかし、この化合物の性能は、不十分である。特に、その容積は、HCFC−123のものよりも著しく小さい。
【0007】
文献WO2010/141527は、Z−HFO−1336mzzと、別の化合物(それは、エタノール、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、メタノール、trans−1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロペンタ−2−エン、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン、酢酸メチル、アセトン、クロロホルム、n−ヘキサン、または1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり得る)とを含む共沸または共沸様組成物を記載している。これらの混合物は、高引火性であり、および/または、HCFC−123などの冷媒の代替に適していない。
【0008】
文献WO2010/100254は、一般的に、HFO−1354およびHFO−1336タイプのフルオロオレフィンの混合物の使用を記載している。HFO−1354は、2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンであり得、HFO−1336は、HFO−1336mzzであり得る。しかし、後者の化合物の異性体は、特定されていない。
【0009】
一般的な熱伝達流体に代替するような、オゾン層への有害性がより少なく、相対的に低いGWPを示す他の熱伝達流体を開発する必要性が依然として存在する。
【0010】
特に、既存の設備またはそれらの作動パラメーターを修正することなく代替が行われることを可能にする、類似した、実際は、改善されたエネルギー性能を示しつつ、HCFC−123に代替できる、低いGWPを有する熱伝達流体を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、第1に、2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとを含む組成物に関する。
【0012】
一実施形態によれば、該組成物は、2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エンとの混合物からなる。
【0013】
一実施形態によれば、該組成物は、
− 1%〜99%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと1%〜99%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン、
− 好ましくは、5%〜70%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと30%〜95%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン、
− 好ましくは、20%〜65%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと35%〜80%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン、
− 好ましくは、25%〜60%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと40%〜75%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン、
− 好ましくは、28%〜51%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと49%〜72%のcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタ−2−エン
を含む。
【0014】
一実施形態によれば、該組成物は、共沸様、好ましくは共沸である。
【0015】
本発明はまた、熱伝達流体としての上述の組成物の使用に関する。
【0016】
一実施形態によれば、該組成物は、共沸様、好ましくは共沸である。
【0017】
一実施形態によれば、該組成物は、不燃性である。
【0018】
本発明はまた、上述の組成物と、潤滑剤、安定化剤、界面活性剤、トレーサー、蛍光剤、着臭剤、可溶化剤、およびそれらの混合物から選択される1種または複数の添加剤とを含む熱伝達組成物に関する。
【0019】
本発明はまた、熱伝達流体としての上述の組成物を含む、または上述の熱伝達組成物を含む蒸気圧縮回路を備える熱伝達設備に関する。
【0020】
一実施形態では、該設備は、遠心圧縮機、好ましくは、直接駆動遠心圧縮機を備える。
【0021】
一実施形態によれば、該設備は、満液式蒸発器を備える。
【0022】
一実施形態によれば、該設備は、ヒートポンプ加熱、空調、特に、自動車の空調、もしくは集中型の据付け式空調、冷蔵もしくは冷凍、およびランキンサイクルのための移動式または据付け式の設備から選択され、好ましくは空調設備である。
【0023】
本発明はまた、熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路により、液体または物体を加熱または冷却するための方法であって、熱伝達流体の蒸発と、熱伝達流体の圧縮と、熱伝達流体の凝縮と、熱伝達流体の減圧とを逐次的に含み、熱伝達流体が上記の組成物である方法に関する。
【0024】
本発明はまた、初期熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路を備える熱伝達設備の環境に対する影響を軽減するための方法であって、蒸気圧縮回路中の初期熱伝達流体を、初期熱伝達流体よりも低いGWPを示す最終熱伝達流体と取り替える段階を含み、最終熱伝達流体が上記の組成物である方法に関する。
【0025】
一実施形態によれば、初期熱伝達流体は、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタンである。
【0026】
本発明はまた、溶剤としての上述の組成物の使用に関する。
【0027】
本発明はまた、発泡剤としての上述の組成物の使用に関する。
【0028】
本発明はまた、好ましくはエアロゾルのための、噴射剤としての上述の組成物の使用に関する。
【0029】
本発明はまた、洗浄剤としての上述の組成物の使用に関する。
【0030】
本発明は、現技術水準において感じられる必要性を満たすことを可能にする。より詳細には、本発明は、オゾン層に無害であり、かつ、(とりわけ)熱伝達流体として、特に、一般的な熱伝達流体、非常に特定的にはHCFC−123の代替として使用できる、新規の低GWP組成物を提供する。
【0031】
特に、本発明は、いくつかの実施形態において、共沸または共沸様組成物を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明は、一般的な熱伝達流体と比較して、とりわけ、HCFC−123と比較して優れたエネルギー性能、特に、類似した、実際には、改善さえされた容積、および/または、類似した、実際には、改善さえされた性能係数を示す熱伝達流体を提供する。いくつかの実施形態によれば、HCFC−123の代替は、熱伝達設備またはそれらの作動パラメーターを修正することなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】Z−HFO−1336mzz/2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エン混合物におけるZ−HFO−1336mzzの質量分率(横軸)の関数として、その混合物の標準沸点(℃)(縦軸)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
これから、本発明を、以下の記述において、より詳細に、および暗黙的に限定することなく説明する。
【0035】
特に言及がない限り、本特許出願全体を通して、化合物の割合は、モル百分率で示す。
【0036】
本特許出願によれば、地球温暖化係数(GWP)を、「The Scientific Assessment of Ozone Depletion,2002,a Report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project」に示された方法に従って、二酸化炭素を基準にして、および100年間を基準にして定める。
【0037】
用語「熱伝達化合物」、「熱伝達流体」(もしくは冷媒)は、それぞれ、蒸気圧縮回路において、低温および低圧で蒸発する際に熱を吸収でき、高温および高圧で凝縮する際に熱を放出できる化合物、流体を意味すると理解する。一般に、熱伝達流体は、1種、2種、3種、または3種以上の熱伝達化合物を含むことができる。
【0038】
用語「熱伝達組成物」は、熱伝達流体と、場合により、企図する用途のための、熱伝達化合物ではない1種または複数の添加剤とを含む組成物を意味すると理解する。
【0039】
添加剤は、特に、潤滑剤、安定化剤、界面活性剤、トレーサー、蛍光剤、着臭剤、および可溶化剤から選択することができる。
【0040】
安定化剤(複数可)は、存在する場合、好ましくは、熱伝達組成物において最大で5重量%を占める。安定化剤の中でも、特に、ニトロメタン、アスコルビン酸、テレフタル酸、アゾール、例えば、トルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、フェノール化合物、例えば、トコフェロール、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、または2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、エポキシド(場合によりフッ素化またはペルフルオロ化されたアルキル、もしくはアルケニル、または芳香族)、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルまたはブチルフェニルグリシジルエーテル、ホスファイト、ホスホナート、チオール、およびラクトンを挙げることができる。
【0041】
潤滑剤として、特に、鉱物油、シリコーン油、天然パラフィン、ナフタレン、合成パラフィン、アルキルベンゼン、ポリ(α−オレフィン)、ポリアルケングリコール、ポリオールエステル、および/またはポリビニルエーテルを使用することができる。
【0042】
トレーサー(検出できる物質)として、重水素化または非重水素化ヒドロフルオロカーボン、重水素化炭化水素、ペルフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨード化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。トレーサーは、熱伝達流体を構成する熱伝達化合物(複数可)とは異なる。
【0043】
可溶化剤として、炭化水素、ジメチルエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル、アミド、ケトン、ニトリル、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル、および1,1,1−トリフルオロアルカンを挙げることができる。可溶化剤は、熱伝達流体を構成する熱伝達化合物(複数可)とは異なる。
【0044】
蛍光剤として、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン(phenanthracene)、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、およびフルオレセイン、ならびに、これらの誘導体およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0045】
着臭剤として、アクリル酸アルキル、アクリル酸アリル、アクリル酸、アクリル酸エステル、アルキルエーテル、アルキルエステル、アルキン、アルデヒド、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、イソチオシアン酸アリル、アルカン酸、アミン、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、シクロヘキセン、複素環芳香族化合物、アスカリドール、o−メトキシ(メチル)フェノール、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0046】
本発明による熱伝達方法は、熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路を備える設備の使用に基づく。熱伝達方法は、流体または物体を加熱または冷却する方法であり得る。
【0047】
熱伝達流体を含む蒸気圧縮回路は、少なくとも1つの蒸発器と、1つの圧縮機と、1つの凝縮器と、1つの膨張装置と、これらの構成部分間の流体の輸送ラインとを備える。蒸発器および凝縮器は、熱伝達流体と別の流体または物体との間の熱交換を可能にする、熱交換器を備える。
【0048】
圧縮機として、特に、単段または多段遠心圧縮機、または遠心小型圧縮機を使用することができる。回転式、ピストン式、またはスクリュー式圧縮機も使用することができる。圧縮機は、電気モーター、ガスタービン(例えば、自動車または自動車用途の排気ガスが供給される)、または伝動装置により駆動させることができる。
【0049】
該設備は、発電するためのタービンを備えることもできる(ランキンサイクル)。
【0050】
該設備はまた、熱伝達流体回路と、加熱または冷却されることになる流体または物体との間で、(状態を変化させてまたは変化させずに)熱を送るために使用される、少なくとも1つの熱交換流体回路を場合により備えることもできる。
【0051】
該設備はまた、同一のまたは異なる熱伝達流体を含む、2つ(またはそれ以上)の蒸気圧縮回路を場合により備えることもできる。例えば、それらの蒸気圧縮回路は、互いに連結させることができる。
【0052】
蒸気圧縮回路は、従来の蒸気圧縮サイクルに従って作動する。そのサイクルは、熱伝達流体の比較的低圧での液相(または液体/蒸気二相系)から蒸気相への状態変化と、その後の、蒸気相での流体の比較的高圧への圧縮と、熱伝達流体の比較的高圧での蒸発相から液相への状態変化(凝縮)と、サイクルを再び始めるための減圧とを含む。
【0053】
冷却プロセスの場合には、(熱交換流体によって直接的または間接的に)冷却される流体または物体から生じた熱は、周囲に対して相対的に低い温度で、熱伝達流体の蒸発の間に熱伝達流体に吸収される。冷却プロセスは、空調プロセス(移動式設備(例えば、自動車における)、または据付け式設備による)、冷蔵および冷凍プロセス、または極低温プロセスを含む。
【0054】
加熱プロセスの場合には、熱は、周囲に対して相対的に高い温度で、熱伝達流体の凝縮の間に、熱伝達流体から、加熱される流体または物体に(熱交換流体によって直接的または間接的に)与えられる。この場合、熱伝達を行うことを可能にする設備は、「ヒートポンプ」として知られている。
【0055】
本発明による熱伝達流体の使用のために、任意のタイプの熱交換器、特に、並流熱交換器、好ましくは、向流熱交換器を用いることが可能である。
【0056】
本発明の関連で使用される熱伝達流体は、Z−HFO−1336mzzと2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンとを含む組成物である。
【0057】
一実施形態によれば、これらの熱伝達流体は、1種または複数の追加の熱伝達化合物を含むことができる。
【0058】
これらの追加の熱伝達化合物は、特に、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、エーテル、ヒドロフルオロエーテル、およびフルオロオレフィンから選択することができる。
【0059】
これらの特定の実施形態によれば、本発明による熱伝達流体は、本発明による熱伝達組成物を形成するために潤滑油と組み合わされる、(3種の熱伝達化合物からなる)三元組成物、または(4種の熱伝達化合物からなる)四元組成物であり得る。
【0060】
追加の熱伝達化合物が存在する場合、前述の熱伝達流体におけるそれら総割合は、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または2%以下であることが好ましい。
【0061】
一実施形態によれば、熱伝達流体は、本質的にZ−HFO−1336mzzおよび2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンの混合物で構成され、実際には、それらの混合物からなりさえする(二元組成物)。
【0062】
そのような熱伝達流体には、1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.01%未満の割合で、不純物が存在し得る。
【0063】
特定の実施形態によれば、熱伝達流体におけるZ−HFO−1336mzzの割合は、0.1%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、15%〜20%、20%〜25%、25%〜30%、30%〜35%、35%〜40%、40%〜45%、45%〜50%、50%〜55%、55%〜60%、60%〜65%、65%〜70%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、または95%〜99.9%であり得る。
【0064】
特定の実施形態によれば、熱伝達流体における2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンの割合は、0.1%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、15%〜20%、20%〜25%、25%〜30%、30%〜35%、35%〜40%、40%〜45%、45%〜50%、50%〜55%、55%〜60%、60%〜65%、65%〜70%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、または95%〜99.9%であり得る。
【0065】
前述の熱伝達流体の中には、共沸または共沸様であるという利点を示すものもある。
【0066】
用語「共沸様」は、一定温度下で、飽和液圧力および飽和蒸気圧力が実質的に同一である(圧力の最大差が、飽和液圧力に対して、10%、実際には、有利に5%でさえある)組成物を意味する。
【0067】
「共沸」組成物については、一定温度下で、圧力の最大差がほぼ0%である。
【0068】
そのような熱伝達流体は、使用しやすいという利点を示す。著しい滑りの非存在下で、循環している組成物の大きな変化は存在せず、漏れの場合において、組成物の大きな変化は存在しない。
【0069】
図1は、混合物におけるZ−HFO−1336mzzの質量割合の関数として、熱伝達流体の標準沸点を表す。組成物の関数としての標準沸点の計算は、研究室で測定したデータ(温度、圧力、臨界点、気液平衡など)、またはグループ寄与もしくは対応状態による推算の方法により推算したデータに基づく。これらの方法は、著作物「The Properties of Gases and Liquids」、第5版、Bruce E.Polingに記載され、また、ASPENまたはThermoDataEngine(NIST)などのソフトウェアで利用可能である。
【0070】
有利なことに、本発明による組成物は、ASHRAE規格34−2007の意味内で、好ましくは、100℃ではなく60℃の温度で不燃性である。
【0071】
加えて、本発明によるいくつかの組成物は、特に、ほどほどの温度の冷却プロセス、すなわち、冷却された流体または物体の温度が、−15℃〜15℃、好ましくは−10℃〜10℃、より特に好ましくは−5℃〜5℃(理想的には約0℃)であるプロセスについて、いくつかの既知の熱伝達流体と比較して改善された性能を示す。
【0072】
さらに、本発明によるいくつかの組成物は、特に、ほどほどの温度の加熱プロセス、すなわち、加熱された流体または物体の温度が、30℃〜80℃、好ましくは35℃〜55℃、特に好ましくは40℃〜50℃(理想的には45℃)であるプロセスについて、いくつかの既知の熱伝達流体と比較して改善された性能を示す。
【0073】
上述の「ほどほどの温度で冷却または加熱する」プロセスにおいて、蒸発器での熱伝達流体の入口温度は、好ましくは、−20℃〜10℃、特に、−15℃〜5℃、より特に好ましくは−10℃〜0℃、例えば、約5℃であり、凝縮器での熱伝達流体の凝縮開始温度は、好ましくは、25℃〜90℃、特に、30℃〜70℃、より特に好ましくは35℃〜55℃、例えば、約50℃である。これらのプロセスは、冷蔵、空調、または加熱プロセスであり得る。
【0074】
いくつかの組成物はまた、高温加熱プロセス、すなわち、加熱された流体または物体の温度が、90℃超、例えば、110℃以上または130℃以上、好ましくは160℃以上であるプロセスにも適している。
【0075】
本発明によるいくつかの組成物は、特に、低温冷蔵プロセス、すなわち、冷却された流体または物体の温度が、−40℃〜−10℃、好ましくは−35℃〜−25℃、より特に好ましくは−30℃〜−20℃(理想的には−25℃)であるプロセスについて、いくつかの既知の熱伝達流体と比較して改善された性能を示す。
【0076】
上述の「低温冷蔵」プロセスにおいて、蒸発器での熱伝達流体の入口温度は、好ましくは−45℃〜−15℃、特に、−40℃〜−20℃、より特に好ましくは、−35℃〜−25℃、例えば、約−30℃であり、凝縮器での熱伝達流体の凝縮開始温度は、好ましくは、25℃〜80℃、特に、30℃〜60℃、より特に好ましくは35℃〜55℃、例えば、約40℃である。
【0077】
本発明による組成物は、様々な熱伝達用途、例えば、空調における様々な熱伝達流体を代替するために使用することができる。例えば、本発明による組成物は、以下のものを代替するために使用することができる:
− 1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、
− 1,1−ジフルオロエタン(R152a)、
− 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(R245fa)、
− ペンタフルオロエタン(R125)と1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)とイソブタン(R600a)との混合物、すなわち、R422製品、
− クロロジフルオロメタン(R22)
− 51.2%のクロロペンタフルオロエタン(R115)と48.8%のクロロジフルオロメタン(R22)との混合物、すなわち、R502、
− 任意の炭化水素、
− 20%のジフルオロメタン(R32)と40%のペンタフルオロエタン(R125)と40%の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)との混合物、すなわち、R407A、
− 23%のジフルオロメタン(R32)と25%のペンタフルオロエタン(R125)と52%の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)との混合物、すなわち、R407C、
− 30%のジフルオロメタン(R32)と30%のペンタフルオロエタン(R125)と40%の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)との混合物、すなわち、R407F、
− R1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)、
− R1234ze(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)。
【0078】
加えて、以下の好ましい組成物は、HCFC−123の代替に非常に特定的に適している:
− 5%〜70%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと30%〜95%のZ−HFO−1336mzz、
− 好ましくは、20%〜65%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと35%〜80%のZ−HFO−1336mzz、
− 好ましくは、25%〜60%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと40%〜75%のZ−HFO−1336mzz、
− 好ましくは、28%〜51%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと49%〜72%のZ−HFO−1336mzz。
【0079】
例として、約28%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと、約72%のZ−HFO−1336mzzとを含む組成物を使用することができる。
【0080】
その理由は、この場合、熱伝達流体の平均モル質量ならびに沸点が、HCFC−123の平均モル質量および沸点に非常に近いからである。したがって、28%の2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エンと、約72%のZ−HFO−1336mzzとを含む組成物は、(HCFC−123の場合の152.93g/molに対して)152.09g/molという平均モル質量、およびHCFC−123の温度と等しい沸点を示す。
【0081】
したがって、前述の好ましい組成物は、熱伝達設備またはその作動パラメーターを修正または実質的に修正することなく、HCFC−123を代替することが可能である。
【0082】
それに対応して、これらの好ましい組成物は、HCFC−123が一般的に使用されているすべての用途に特に適している。したがって、それは、これらの好ましい組成物が、遠心圧縮機、とりわけ、直接駆動遠心圧縮機を備える熱伝達設備において、熱伝達流体として使用するのに特に適しているということである。これらの圧縮機は、変速ボックスを有する圧縮機よりも効率的で安い。
【0083】
遠心圧縮機は、電気モーター、蒸気タービン、ガスタービン、加熱エンジンまたはその他のものにより駆動させることができる。
【0084】
好ましくは、得られる音速は、HCFC−123により得られる音速に近く、および/または、得られる容積は、HCFC−123により得られる容積に近く、および/または、圧縮機における作動圧力は、HCFC−123により得られる作動圧力に近い。
【0085】
したがって、前述の好ましい組成物は、HCFC−123の代替の間、圧縮機の一定の回転速度を保持することを可能にし得る。
【0086】
さらに、これらの好ましい組成物は、満液式蒸発器を備える熱伝達設備において、熱伝達流体として使用することに特に適している。
【0087】
さらに、これらの好ましい組成物は、例えば、約7℃という蒸気器内温度、および約35℃という凝縮器内温度を有する空調において、ならびに、250kW〜35MWの範囲の平均電力を有する設備において使用することに特に適している。
【0088】
本発明による組成物はまた、熱伝達流体としての使用に加えて、発泡剤、噴射剤(例えば、エアロゾルのための)、洗浄剤、または溶剤として使用することもできる。
【0089】
噴射剤として、本発明による組成物は、単独で、または既知の噴射剤と組み合わせて使用することができる。噴射剤は、本発明による組成物を含む、好ましくは、それからなる。放出させなければならない活性物質は、放出させる組成物を形成するために、噴射剤および不活性化合物、溶剤、または他の添加剤と混合することができる。好ましくは、放出させる組成物は、エアロゾルである。
【0090】
発泡剤として、好ましくは、本発明による組成物は、発泡組成物に含めることができ、発泡組成物は、当業者が既知であるような、適切な条件下で反応し、泡または気泡構造を形成できる1種または複数の化合物を含む。
【0091】
特に、本発明は、第1にポリマー発泡組成物の作製を含む、発泡性熱可塑性製品を作製するための方法を提供する。典型的には、ポリマー発泡組成物は、ポリマー樹脂を可塑化すること、および、初期の圧力で発泡組成物の化合物において混合することにより作製される。ポリマーの可塑化は、熱の作用下で行うことができ、ポリマー樹脂は、発泡剤組成物において混ぜるのに十分に軟らかくするために加熱される。一般的に、可塑化温度は、結晶性ポリマーのガラス転移温度または融点に近い。
【0092】
本発明による組成物の他の使用は、溶剤、洗浄剤、またはその他のものとしての使用を含む。例えば、蒸気脱脂、精密洗浄、電子回路の洗浄、ドライクリーニング、研磨洗浄、潤滑剤および離型剤の堆積に対する溶剤、ならびに他の溶剤または表面処理を挙げることができる。
図1
【外国語明細書】
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