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特開2016-145414MnBiナノ粒子およびそれを合成するための方法、ならびにMnBiバルク磁石を形成するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-145414(P2016-145414A)
(43)【公開日】2016年8月12日
(54)【発明の名称】MnBiナノ粒子およびそれを合成するための方法、ならびにMnBiバルク磁石を形成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20160715BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20160715BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20160715BHJP
   B22F 3/00 20060101ALI20160715BHJP
   H01F 1/06 20060101ALI20160715BHJP
【FI】
   B22F9/24 A
   C22C12/00
   B22F1/00 Y
   B22F3/00 F
   H01F1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-2649(P2016-2649)
(22)【出願日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】14/593,583
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】516011154
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・マニトバ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANITOBA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ポール・ロー
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス・マリー・スコロパタ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスラフ・スティーブン・ウロシズンスキジ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・アレクサンダー・バン・リーロップ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA10
4K017BB07
4K017CA08
4K017DA04
4K017EJ02
4K017FB08
4K018AD02
4K018BA20
4K018BB05
4K018BD01
4K018KA45
5E040AA20
5E040CA01
5E040HB17
5E040NN18
(57)【要約】
【課題】バルク磁石の磁気特性を向上させる磁性ナノ粒子からバルク磁石を製造するための方法は、望まれる。
【解決手段】強磁性マンガン−ビスマス(MnBi)ナノ粒子を合成するための方法およびこの方法により合成されたMnBiナノ粒子が提供される。この方法は、マンガン系陰イオン元素試薬錯体(Mn−LAERC)と呼ばれる新規試薬を使用している。また、合成されたMnBiナノ粒子からMnBiバルク磁石を形成するためのプロセスが提供される。このプロセスは、ナノ粒子に高温高圧を同時に適用するステップを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MnBiナノ粒子を合成するための方法であって、
式Iを有する錯体に陽イオン性ビスマスを添加するステップを含み、
Mn・X・L
式中、Mnは、ゼロ価マンガンであり、Xは、水素化物分子であり、Lは、ニトリル化合物であり、yは、ゼロより大きい整数または分数であり、zは、ゼロより大きい整数または分数であり、
MnBiナノ粒子を形成するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記ニトリル化合物は、ウンデシルシアン化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記錯体を遊離界面活性剤と接触させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記添加ステップおよび前記接触ステップは、同時に行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記陽イオン性ビスマスは、ビスマス塩の一部として存在し、
前記ビスマス塩は、アシル陰イオンを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アシル陰イオンは、ネオデカン酸基である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化物分子は、水素化ホウ素である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化物分子は、水素化ホウ素リチウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式Iを有する錯体に陽イオン性ビスマスを添加するステップを含み、
Mn・X・L
式中、Mnは、ゼロ価マンガンであり、Xは、水素化物分子であり、Lは、ニトリル化合物であり、yは、ゼロより大きい整数または分数であり、zは、ゼロより大きい整数または分数であり、
MnBiナノ粒子を形成するステップを含む方法によって合成されたMnBiナノ粒子。
【請求項10】
前記ニトリル化合物は、ウンデシルシアン化物である、請求項9に記載のMnBiナノ粒子。
【請求項11】
前記試薬錯体は、溶媒と懸濁接触している、請求項9に記載のMnBiナノ粒子。
【請求項12】
前記溶媒は、トルエンである、請求項11に記載のMnBiナノ粒子。
【請求項13】
前記方法は、錯体を遊離界面活性剤と接触させるステップをさらに含む、請求項9に記載のMnBiナノ粒子。
【請求項14】
陽イオン金属の添加および遊離界面活性剤の添加は、同時に行われる、請求項13に記載のMnBiナノ粒子。
【請求項15】
前記陽イオン性ビスマスは、ビスマス塩の一部として存在し、
前記ビスマス塩は、アシル陰イオンを有する、請求項9に記載のMnBiナノ粒子。
【請求項16】
前記アシル陰イオンは、ネオデカン酸基である、請求項15に記載のMnBiナノ粒子。
【請求項17】
前記水素化物分子は、水素化ホウ素リチウムである、請求項9に記載のMnBiナノ粒子。
【請求項18】
バルクMnBi磁石を形成するためのプロセスであって、
MnBiナノ粒子の試料に高温および高圧を同時に適用するステップを備え、
前記MnBiナノ粒子は、式Iを有する錯体に陽イオン性ビスマスを添加することにより、MnBiナノ粒子を形成するステップを含む方法によって合成され、
Mn・X・L
式中、Mnは、ゼロ価マンガンであり、Xは、水素化物分子であり、Lは、ニトリル化合物であり、yは、ゼロより大きい整数または分数であり、zは、ゼロより大きい整数または分数である、プロセス。
【請求項19】
前記高温は、100〜200℃の範囲にあり、
前記高圧は、10〜100MPaの範囲にある、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記高温は、約150℃であり、前記高圧は、約40MPaであり、
前記適用ステップは、約6時間行われる、請求項18に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般的に、合金化された強磁性金属ナノ粒子を合成するための方法および合成されたナノ粒子からバルク磁石を形成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
強磁性材料、すなわち、厳格な平行度で原子磁気双極子を整列する傾向が強い材料は、幅広い小売業装置および産業装置の動作に不可欠である。このような材料は、印加された磁場に強く反応するため、安定なバルク磁場を発するように製造されることができる。応用例としては、たとえば、医学および科学診断装置、電子データ記憶媒体、および電子または電磁ビーム指向装置などの幅広い電子装置は、強磁性材料に依存して機能する。特に興味深いのは、電気モータおよび発電機などの強磁性コアを有するコアソレノイド装置である。
【0003】
従来の強磁性材料は、主に、鉄、ニッケルおよびコバルトなどの固有強磁性元素および希土類金属の特定組成物からなる合金または組成物である。これらの元素が比較的高い密度、典型的には約8g/cmまたは500lb/ftの密度を有するため、かなりの量の強磁性材料を使用した装置は、非常に重くなる傾向がある。
【0004】
自動車は、さまざまな形で、特にコアソレノイド装置において、強磁性材料を使用している。これらの装置は、比較的小量の強磁性材料を使用する交流発電機または電動窓を作動する電動モータから、比較的大量の強磁性材料を使用するハイブリッド自動車または電気自動車の駆動系を含む。固有強磁性元素の密度よりもはるかに低い密度を有する強磁性(フェリ磁性を含む)材料または組成物の開発は、車両の重量を大幅に減少するため、車両の効率を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来には、新規試薬錯体のファミリを用いて、MnBi磁性ナノ粒子のようなナノ粒子の製造が開示されている。磁性ナノ粒子からバルク磁石の製造は、一般的に、個々のナノ粒子を互いに結合させ、融合させ、または焼結させ、さもなければ付着させることによってバルク組成物を形成するステップを含む。このようなステップを達成する特定のプロセスは、バルク磁石の磁気特性を影響することができる。バルク磁石の磁気特性を改善するように、磁性ナノ粒子からバルク磁石を製造するための方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本発明の技術は、一般的に、強磁性MnBiナノ粒子を合成するための方法、この方法により合成されたナノ粒子、およびナノ粒子からMnBiバルク磁石を形成するためのプロセスを提供する。
【0007】
一局面において、MnBiナノ粒子を合成するための方法が開示される。この方法は、式Iを有する錯体に陽イオン性ビスマスを添加するステップを含み、
Mn・X・L
式中、Mnは、ゼロ価マンガンであり、Xは、水素化物分子であり、Lは、ニトリル化合物であり、yは、ゼロより大きい整数または分数であり、zは、ゼロより大きい整数または分数である。いくつかの特定例において、水素化物分子は、水素化ホウ素リチウムであり、ニトリル化合物は、ウンデシルシアン化物であり、またはその両方である。
【0008】
本開示は、前述した方法により合成されたMnBiナノ粒子をさらに教示する。
さらに別の局面において、MnBiナノ粒子からMnBiバルク磁石を形成するプロセスが開示されている。このプロセスは、MnBiナノ粒子の試料に高熱および高圧を同時に適用するステップを含む。MnBiナノ粒子は、式Iを有する錯体に陽イオン性ビスマスを添加するステップを含む方法によって製造され、
Mn・X・L
式中、Mnは、ゼロ価マンガンであり、Xは、水素化物分子であり、Lは、ニトリル化合物であり、yは、ゼロより大きい整数または分数であり、zは、ゼロより大きい整数または分数である。いくつかの特定例において、水素化物分子は、水素化ホウ素リチウムであり、ニトリル化合物は、ウンデシルシアン化物であり、またはその両方である。
【0009】
本発明のさまざまな局面および利点は、添付の図面に関連して理解される以下の実施形態に関する以下の詳細な説明からより明らかになり、より容易になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】開示された方法により合成されたMnBiナノ粒子の試料のX線回折強度を示すグラフである。
図2図1のMnBiナノ粒子の磁気ヒステリシスループを示す図である。
図3】開示された方法によりさまざまな条件の下で形成された図1および2のMnBiナノ粒子を含む試料およびMnBiバルク磁石の一連の磁気ヒステリシスループを示す図である。
図4】開示された方法によりさまざまな条件の下で形成された図1および2のMnBiナノ粒子を含む試料およびMnBiバルク磁石の温度に対する保磁力(H)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本開示は、MnBiナノ粒子を合成するための方法、この方法により合成されたMnBiナノ粒子、および合成されたMnBiナノ粒子からMnBiバルク磁石を形成するためのプロセスを記載している。
【0012】
この方法は、容易かつ再現可能であり、得られたナノ粒子は、所望の強磁性特性を有し、これらの強磁性特性は、バルク磁石において強化されている。
【0013】
MnBiナノ粒子を合成するための1つの方法は、その全体が本明細書に組込まれた同時係属中の米国特許出願番号第14/593371号に開示されたMn−LAERC(マンガン系結合型陰イオン元素試薬)と呼ばれる新規の試薬を利用する。この方法は、500Oeを超える保磁力を有する低温相(LTP)MnBi強磁性ナノ粒子を迅速かつ再現可能に生成する。ナノ粒子からMnBiバルク磁石を形成するためのこのプロセスは、たとえば、25°Cの環境温度で0.5kOeを超える保磁力を有する磁石を迅速かつ再現可能に生成する。
【0014】
上述したように、MnBiナノ粒子を合成するための方法が開示される。この方法は、式Iを有する錯体に陽イオン性ビスマスを添加するステップを含み、
Mn・X・L
式中、Mnは、ゼロ価マンガンであり、Xは、水素化物分子であり、Lは、ニトリル化合物であり、yは、ゼロより大きい整数または分数であり、zは、ゼロより大きい整数または分数である。
【0015】
式Iを有する錯体は、「マンガン系結合型陰イオン元素試薬錯体」またはMn−LAERCとも呼ばれる。「ゼロ価マンガン」という用語は、本明細書に使用される場合、元素状態のマンガンを指し、ゼロ価酸化状態のマンガン金属とも呼ばれる。
【0016】
交換可能な用語「水素化物分子」は、本明細書に使用される場合、水素陰イオンドナーとして機能することができる任意の分子種を指す。異なる例において、水素化物は、本明細書に言及される場合、二元の金属水素化物または「水素化物塩」(たとえば、NaHまたはMgH)、二元のメタロイド水素化物(たとえば、BH)、複合金属水素化物(たとえば、LiAlH)、または複合メタロイド水素化物(たとえば、LiBHまたはLi(CHCHBH)であってもよい。いくつかの例において、水素化物は、LiBHである。いくつかの変形例において、上述した用語水素化物は、対応する重水素化物またはトリチウム化物を含む。
【0017】
「ニトリル化合物」という用語は、本明細書に使用される場合、式R−CNを有する分子を指す。異なる実現例において、Rは、置換されたアルキル基またはアリール基もしくは非置換のアルキル基またはアリール基であってもよい。これらのアルキル基またはアリール基は、直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアルコキシ基、もしくは単環または多環のアリール基またはヘテロアリール基を含むがこれらに限定されない。いくつかの実現例において、ニトリル化合物のR基は、直鎖アルキル基である。1つの特定の実現例において、ニトリル化合物は、ドデカンニトリルまたはウンデシルシアン化物とも呼ばれるCH(CH10CNである。
【0018】
式I中のyの値は、錯体中のゼロ価マンガン原子に対する水素化物分子の化学量論比を規定する。yの値は、ゼロより大きい任意の整数または分数を含むことができる。いくつかの例において、yが1に等しい場合の化学量論比1:1は、有用であり得る。他の例において、ゼロ価マンガン原子に対する水素化物分子のモル過剰量、たとえばyが2または4に等しい場合のモル過剰量は、好ましい。いくつかの例において、ゼロ価マンガンに対する水素化物のモル過剰量は、その後に適用される水素が十分に存在することを保証することができる。いくつかの具体例において、yは、3に等しくしてもよい。
【0019】
式I中のzの値は、錯体中のゼロ価元素原子に対するニトリル分子の化学量論比を規定する。zの値は、ゼロより大きい任意の整数または分数を含むことができる。いくつかの例において、zが1に等しい場合の化学量論比1:1は、有用であり得る。他の例において、ゼロ価マンガン原子に対する水素化物分子のモル過剰量、たとえばzが2または4に等しい場合のモル過剰量は、好ましい。いくつかの具体例において、zは、3に等しくしてもよい。
【0020】
本発明の錯体は、任意の超分子構造を有してもよく、超分子構造を有しなくてもよい。任意の特定の構成に拘束および限定されることなく、錯体は、水素化物分子および/またはニトリル化合物により散在させられた多くのゼロ価マンガン原子の超分子クラスタとして存在することができる。錯体は、ゼロ価マンガン原子のクラスタとして存在し、クラスタの表面が水素化物分子および/またはニトリル化合物により被覆されることができる。錯体は、個体のゼロ価マンガン原子として存在し、これらのゼロ価マンガン原子の各々は、互いに分子間の結合がほとんどなくまたは全くないが、これらのゼロ価元素原子の各々は、互いに分子間の結合がほとんどなくまたは全くないが、式Iを有する水素化物分子およびニトリル化合物に結合されている。これらの微細構造または式Iと一致する他の微細構造のいずれかが本開示の範囲に含まれるように意図される。
【0021】
MnBiナノ粒子を合成する方法のいくつかの変形例において、錯体は第1の溶媒と溶媒化するまたは懸濁接触することができ、陽イオン性ビスマスは第2の溶媒と溶媒化するまたは懸濁接触することができ、またはその両方である。錯体が第1の溶媒と溶媒化または懸濁接触し、陽イオン性ビスマスが第2の溶媒と溶媒化または懸濁接触する変形例において、第1の溶媒と第2の溶媒とは、同一の溶媒であってもよく、異なる溶媒であってもよい。第1の溶媒は、存在する場合、一般的に錯体に存在する水素化物分子と非反応的な溶媒であり、第2の溶媒は、存在する場合、一般的錯体に存在する水素化物分子が実質的に可溶な溶媒である。
【0022】
第1の溶媒、第2の溶媒またはその両方として使用できる適当な溶媒の非限定的な例は、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、1−ブタノール、2−ブタノール、2−ブタノン、t−ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジグリム(ジエチレングリコール,ジメチルエーテル)、1,2−ジメトキシエタン(グリム、DME)、ジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、エチレングリコール、グリセリン、ヘプタン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、ヘキサン、メタノール、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、メチレンクロライド、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ニトロメタン、ペンタン、石油エーテル(リグロイン)、1−プロパノール、2−プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、トリエチルアミン、o−キシレン、m−キシレン、またはp−キシレンを含む。
【0023】
いくつかの特定の例において、トルエンは、第1の溶媒および第2の溶媒として使用される。
【0024】
いくつかの変形例において、MnBiナノ粒子を合成するための方法は、式Iを有する錯体を遊離界面活性剤と接触させるステップを含むことができる。式Iを有する錯体を遊離界面活性剤と接触させるステップを含む変形例において、接触ステップは、陽イオン性ビスマスを添加するステップの前に、または陽イオン性ビスマスを添加するステップと同時に、または陽イオン性ビスマスを添加するステップの後に行うことができる。
【0025】
任意の特定のメカニズムに拘束されることなく、陽イオン性ビスマスを錯体(Mn−LAERC)に添加すると、錯体に結合された水素化物分子が陽イオン性ビスマスを元素状態のビスマスに還元することができ、還元された元素状態のビスマスがその後マンガンと合金を形成することができると考えられている。MnBiナノ粒子を合成する方法のいくつかの局面において、添加陽イオンビスマスをゼロ価酸化状態に還元するために、十分な当量量の水素化物分子が試薬錯体に存在することを保証することは、望ましい。場合によって、陽イオン性ビスマスを添加する前にまたは陽イオン性ビスマスを添加すると同時に、試薬錯体に追加当量の水素化物分子を添加することは、望ましい。
【0026】
当技術分野に知られている任意の遊離界面活性剤は、MnBiナノ粒子を合成するための方法に用いられることができる。好適な遊離界面活性剤の非限定的な例としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、ポリマ界面活性剤およびそれらの組み合わせを含むことができる。これらの界面活性剤は、一般的に炭化水素系親油性部分、有機シラン系親油性部分、またはフッ化炭素系親油性部分を有する。適切な種類の界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル硫酸塩およびアルキルスルホン酸塩、石油およびリグニンスルホン酸塩、リン酸エステル、スルホコハク酸エステル、カルボン酸塩、アルコール、エトキシル化アルコールおよびアルキルフェノール、脂肪酸エステル、エトキシル化酸、アルカノールアミド、エトキシル化アミン、アミンオキシド、ニトリル、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、カルボキシベタイン、スルホベタイン、またはポリマ界面活性剤を含む。いくつかの変形例において、ビスマス陽イオンは、アシル陰イオンなどの陰イオン性界面活性剤を有するビスマス塩の一部として存在してもよい。このような変形例におけるビスマス塩の非限定的な例として、ビスマスネオデカン酸塩が挙げられる。
【0027】
遊離界面活性剤が使用されるいくつかの例において、遊離界面活性剤は、錯体に結合された水素化物分子を酸化可能、プロトン化可能、そうでなければ共有結合可能、配位結合可能、またはイオン修飾可能なものである。
【0028】
いくつかの変形例において、MnBiナノ粒子を合成するための方法は、無酸素環境、無水環境、または無水無酸素環境の下で行うことができる。たとえば、MnBiナノ粒子を合成するための方法は、アルゴンガスまたは真空下で行うことができる。
【0029】
また、上述したMnBiナノ粒子を合成するための方法によって作られたMnBiナノ粒子、合金化マンガンおよびビスマスから実質的に構成されるナノ粒子が開示される。図1は、合金化MnBiから形成された本開示のMnBiナノ粒子を特定するためのX線回折(XRD)強度を示すグラフである。図1のMnBiナノ粒子は、陽イオン性ビスマスおよび遊離界面活性剤の両方を含むと考えられるビスマスネオデカン酸塩を結合型陰イオン性マンガン錯体Mn・Li(BH・[CH(CH10CH]に添加することによって製造された。
【0030】
いくつかの実現例において、本開示のMnBiナノ粒子は、唯一の強磁性を示すMnBi結晶構造である低温相(LTP)MnBiを含む。図2は、図1のMnBiナノ粒子の強磁性ヒステリシスループを示している。この強磁性ヒステリシスループによって、ナノ粒子がLTP MnBiを含むことが確認される。
【0031】
さらに、開示されたナノ粒子を合成するための方法により製造されたMnBiナノ粒子からMnBiバルク磁石を形成するためのプロセスも開示されている。MnBiバルク磁石を形成するプロセスは、MnBiナノ粒子を合成するための方法によって作られMnBiナノ粒子の試料に高温および高圧を同時に適用するステップを含む。「高温」という用語は、本明細書に使用される場合、100〜600℃範囲内の温度を指してもよい。いくつかの例において、「高温」という用語は、100〜200℃範囲内の温度を指してもよい。「高圧」という用語は、本明細書に使用される場合、10〜1000MPa範囲内の圧力を指してもよい。いくつかの例において、「高圧」という用語は、10〜100MPa範囲内の圧力を指してもよい。いくつかの特定の例において、高圧は、40MPaであってもよい。いくつかの変形例において、高温は、150℃であってもよい。
【0032】
一般的に、高温および圧力を適用するステップは、一定の期間で行われる。いくつかの特定の変形において、一定の期間は、12時間までの任意の非ゼロ期間であってもよい。より特定の変形形態において、一定の期間は、4〜6時間の範囲内の期間であってもよい。
【0033】
図3は、図1および図2の「未加圧」ナノ粒子の強磁性ヒステリシス曲線と、開示されたMnBiバルク磁石を製造するための方法により製造された3つのバルク磁石の強磁性ヒステリシス曲線とを重ねた曲線を示す図である。3つのバルク磁石は、40MPaおよび150℃をMnBiナノ粒子の試料にそれぞれ1時間、4時間および5時間適用するステップによって作られた。図3から分かるように、40MPaの高圧および150℃の高温を同時に適用する時間をゼロから1時間または4時間に増加すると、試料の保磁力および飽和度の両方が増加する。具体的には、試料の保磁力は、約0.6kOeから6.0kOeまたは8.4kOeに増加する。一例において、高温および高圧を適用する時間を4時間から6時間に増加すると、飽和度は10倍以上増加するが、保磁力は約8.4kOeから2.3kOeに減少する。
【0034】
図4は、6つの異なる試料に対する解析温度の関数としての保磁力を示すグラフである。この文脈における用語「解析温度」とは、保磁力を測定した温度を指しており、MnBiバルク磁石を製造するためのプロセスに使用された「高温」とは異なるまたは無関係である。
【0035】
第1の「未加圧」試料は、MnBiバルク磁石を製造するためのプロセスにまだ供されていない図1および2のMnBiナノ粒子からなる。他の4つの試料は、MnBiバルク磁石を製造するためのプロセスにより40MPaの高圧下で製造されたバルク磁石である。図4に示されたように、高温は、150°Cまたは160°Cであり、高温および高圧を同時に適用した期間は、1時間、2時間または4時間であった。
【0036】
一番注目すべきことは、図4のすべての5つのMnBiバルク磁石は、4ショーは温度上昇とともに保磁力が増加するというLTP MnBiの独特な特徴を示しており、LTP MnBiの存在をさらに確認した。
【0037】
いずれかの特定の理論に拘束されないが、合成されたMnBiナノ粒子に高温および高圧を同時に適用するステップは、LTP結晶相の形成および試料内の個々のMnBi結晶の磁気モーメントの整列を促進する塑性変形の発生を引き起こすことができると考えられる。適用ステップの時間または高温が大きすぎる場合、多くの磁気モーメントが反対方向に整列される可能性がある。
【0038】
本発明は、以下の実施例に関連して示される。理解すべきことは、これらの実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことである。
【0039】
実施例1 Mn・Li(BH・[CH(CH10CN]の合成
0.496gのマンガン粉末、0.592gの水素化ホウ素リチウム、4.912gのドデカンニトリル、および6mLのトルエンをアルゴン環境下でボールミル瓶に添加する。混合物を300rpmで4時間粉砕することによって、マンガン系結合型陰イオン元素試薬錯体(Mn−LAERC)を製造する。
【0040】
実施例2 MnBiナノ粒子の合成
12gの実施例1からのMn−LAERCを320mLのトルエンに添加する。これとは別に、112.984gのビスマスネオデカン酸塩を333mLのトルエンに溶解することによって、陽イオン性ビスマス溶液を調製する。Mn−LAERC溶液および陽イオン性ビスマス溶液を合併して、MnBiナノ粒子を自発的に形成する。
【0041】
実施例3 MnBiバルク磁石の形成
実施例2からのMnBiナノ粒子は、アルゴン雰囲気下で、石墨のパンチおよび鋳型において、40MPaの圧力および160℃の温度で6時間、高温加圧される。
【0042】
実施例4 保磁力の測定
10K、100K、200K、300Kおよび400Kの解析温度で、実施例1および2に製造されたナノ粒子およびバルク磁石のM(H)曲線をそれぞれ測定する。各々の温度において、試料の保磁力は、ゼロ磁化が生じるxインターセプトから決定される。結果は、図2〜4に示される。
【0043】
上記の説明は、現在最も実用的な実施形態であると考えられるものに関連する。しかしながら、理解すべきことは、本開示は、これらの実施例に限定されず、すべての修正および等価な構造を包含するように法律上許可される最も広い解釈に従った添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる種々の修正および等価な構成を含むように意図されている。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】
2016145414000001.pdf