(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-146821(P2016-146821A)
(43)【公開日】2016年8月18日
(54)【発明の名称】粉末組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/39 20060101AFI20160722BHJP
A23L 2/38 20060101ALI20160722BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20160722BHJP
【FI】
A23L2/00 Q
A23L2/38 C
A23L1/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2016-10456(P2016-10456)
(22)【出願日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-20791(P2015-20791)
(32)【優先日】2015年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑子 正行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健太
(72)【発明者】
【氏名】唐木 美由紀
【テーマコード(参考)】
4B017
4B018
【Fターム(参考)】
4B017LE01
4B017LG14
4B017LG15
4B017LP18
4B018LB08
4B018LE03
4B018MD59
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF07
(57)【要約】
【課題】ヒハツ抽出物を含有し、流動性を改善した粉末組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
ヒハツ抽出物に対して抹茶を配合すると、ヒハツ抽出物の流動性を改善できることを見出した。
すなわち、本発明は、ヒハツ抽出物1質量部に対して、0.1〜10質量部の抹茶を含有することを特徴とする粉末組成物である。粉末組成物としては、粉末を水や湯に注いで攪拌して飲用に供するようにした茶やコーヒー、青汁などの粉末飲料、及び打錠用顆粒、散剤などが挙げられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒハツ抽出物1質量部に対して、0.1〜10質量部の抹茶を含有することを特徴とする粉末組成物。
【請求項2】
抹茶の配合量が粉末組成物全体に対して10質量%以下である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
ヒハツ抽出物の配合量が粉末組成物全体に対して3.0質量%以上である、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項4】
粉末飲料である、請求項1〜3のいずれかに記載の粉末組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒハツ抽出物の流動性を改善した粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エキス末(ヒハツ抽出物を含む)は、生薬や漢方薬を抽出し、濃縮及び乾燥して得られるものである。一般的にエキス末は、べたつきがあり、吸湿しやすく、粉体の流動性が悪いといった様々な課題を有する。
粉末の流動性改善として、微粒酸化ケイ素の添加が繁用されているが、微粒酸化ケイ素は、水への溶解性が低いため、例えば溶解して飲用する粉末飲料などでは、溶解時に粉浮きし、商品性が低下するといった問題がある。したがって、特に粉末飲料などの粉末組成物においては、微粒酸化ケイ素以外の添加剤による流動性改善が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、流動性を改善したヒハツ抽出物含有粉末組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、ヒハツ抽出物について、製造時の流動性を改善すべく鋭意検討を行った。その結果、ヒハツ抽出物に対して抹茶を配合すると、ヒハツ抽出物の流動性を改善することを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)ヒハツ抽出物1質量部に対して、0.1〜10質量部の抹茶を含有することを特徴とする粉末組成物、
(2)抹茶の配合量が粉末組成物全体に対して10質量%以下である(1)に記載の粉末組成物、
(3)ヒハツ抽出物の配合量が粉末組成物全体に対して3.0質量%以上である(1)に記載の粉末組成物、
(4)粉末飲料である、(1)〜(3)のいずれかに記載の粉末組成物、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明より、ヒハツ抽出物の流動性の問題が解消され、ヒハツ抽出物を配合した粉末組成物を製造する際の製造効率を向上できる。また、スティック型包装、三方シール分包あるいは四方シール分包等の袋からも取り出しやすい、商品性の高いヒハツ抽出物配合の粉末組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の「ヒハツ抽出物」としては、例えばヒハツ果穂を水、アルコール、それらの混合液などの溶媒で抽出したエキスを、ろ過・濃縮し、デキストリンと配合・乾燥したものを利用することができる。本発明において、ヒハツ抽出物の含有量は、粉末組成物全体に対し3.0質量%以上が好ましく、より好ましくは5.0〜72.0質量%である。
【0008】
本発明の「抹茶」は、茶葉を粉砕して得られるものである。一般的な煎茶とは栽培方法や製造方法が異なる。抹茶は茶葉を摘む前に、藁やシートを約20日間被せて日光を遮る「覆下栽培」という栽培技術を用いるため、茶葉の葉緑素が増え、濃い緑色を示す。また、渋味の素とされるカテキンの生成が抑制されるため、まろやかな風味を有する。本発明において、抹茶の配合量は、本発明の効果の点からヒハツ抽出物1質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.4質量部以上である。上限は10質量部であり、好ましくは1質量部未満である。本発明において、ヒハツ抽出物に対して少ない量の抹茶を組み合わせても、ヒハツ抽出物の流動性を十分に改善することができる。また、風味や外観の観点から、抹茶の配合量は粉末組成物に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の粉末組成物としては、粉末を水や湯に注いで攪拌して飲用に供するようにした茶、コーヒー、青汁などの粉末飲料、及び打錠用顆粒、散剤などが挙げられる。
【0010】
本発明の粉末組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。ヒハツ抽出物と抹茶を混合し、必要に応じて食品等に汎用される公知の添加剤(緑茶、玄米、香料、コーヒー、紅茶、青汁粉末等)を配合すればよい。また、デキストリンを配合すると、水中に速やかに分散するので好ましいものとなる。さらに、デキストリンを使用して本発明の粉末組成物を製造する際は、単に混合するだけでも良いが、造粒して製造しても良い。造粒方法としては、例えば撹拌造粒、流動層造粒、押し出し造粒、転動流動造粒、乾式造粒などが挙げられるが、好ましくは流動層造粒である。また、湿式造粒を行う場合は、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコールあるいはそれらの混合溶媒を調製し、ヒハツ抽出物、抹茶を配合した混合粉体に噴霧して湿式造粒を行ったのち、湿粒を乾燥すればよい。
【実施例】
【0011】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
実施例1〜4及び比較例1〜5について各成分を秤量、混合して各粉末組成物を調製した。 表1に、実施例1〜4、比較例1〜5の処方と配合割合を示す。
【0012】
【表1】
【0013】
試験例1
(1)方法
実施例1〜4及び比較例1〜5の粉末組成物の流動性(BFE
※)をパウダーレオメーター(商品名:FT4;Malvern社製)を用いて評価した。評価項目として安定性試験(動的流動性試験)を選択し、流動性(BFE
※)を測定した。
結果を表2に示す。
【0014】
【表2】
※BFE:Basic Flowability Energy(粉体に対して下向きにブレードを挿入した際のエネルギー値であり、静置した粉体を流動させた場合の粉体特性を示す。BFEが小さいほど流動性が高いことを示す。)
【0015】
(2)結果
表2より、抹茶を配合した実施例1〜4の粉末組成物は、ヒハツ抽出物単独(比較例1)と比較し、BFEが小さく、ヒハツ抽出物の流動性を改善することができた。また、その効果はその他の粉末茶である緑茶、ほうじ茶、烏龍茶及び紅茶(比較例2〜5)と比べて顕著であった。この結果から、粉末茶のうち抹茶にだけ認められる特有の効果であることが分かった。
【0016】
製剤例1〜2
以下表3に記載の組成の粉末飲料を調製した(表中の単位はmg)。
製剤例1については各成分を秤量、混合後篩を通して粉末飲料を得た。製剤例2については各成分を秤量、混合し篩を通した後、水にて湿式造粒を行った。造粒顆粒を乾燥させた後再度篩を通し、粉末飲料を得た。得られた製剤例1及び2は共に流動性、風味共に良好であった。
【0017】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明により、ヒハツ抽出物を配合し、ヒハツ抽出物の流動性を改善した粉末組成物の提供が可能となった。