特開2016-147058(P2016-147058A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-147058登録されたカテーテル画像を用いるインピーダンスに基づく位置検出システムの訓練
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-147058(P2016-147058A)
(43)【公開日】2016年8月18日
(54)【発明の名称】登録されたカテーテル画像を用いるインピーダンスに基づく位置検出システムの訓練
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/095 20060101AFI20160722BHJP
【FI】
   A61M25/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-24467(P2016-24467)
(22)【出願日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】14/621,581
(32)【優先日】2015年2月13日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル−タル
(72)【発明者】
【氏名】ドロン・モシェ・ルドウィン
【テーマコード(参考)】
4C167
【Fターム(参考)】
4C167AA01
4C167BB43
4C167CC07
4C167HH11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】登録されたカテーテル画像を用いるインピーダンスに基づくカテーテル位置検出システムを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの電極64を有するカテーテル44を患者48の身体器官46の腔42内に挿入することと、患者の皮膚上に位置づけられた複数のパッチ68との間のそれぞれの電流セットを時間系列で記録することとを含む、方法。この方法は更に、それらの電流セットを記録する一方で、その少なくとも1つの電極のX線画像を取得することと、それらの画像からカテーテルの位置を決定することを含んでいる。電流セット及び画像に基づいて、前記位置と、前記それぞれの電流セットとの間の関係が導出される。この方法はまた、少なくとも1つの電極とパッチとの間の後続電流セットを記録することと、前記関係に基づいて、後続電流セットに応じてカテーテルの後続位置を決定することも含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
患者の身体器官の腔内に挿入されるように構成されている少なくとも1つの電極を有するカテーテルと、
プロセッサであって、
前記少なくとも1つの電極と前記患者の皮膚上に位置づけられた複数のパッチとの間のそれぞれの電流セットを時間系列で記録し、
前記電流セットを記録する一方で、前記少なくとも1つの電極と前記複数のパッチとのX線画像を取得し、前記画像から前記カテーテルの位置を決定し、
前記電流セット及び前記画像に基づいて、前記位置と前記それぞれの電流セットとの間の関係を導出し、
前記少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の後続電流セットを記録し、かつ
前記関係に基づいて、前記後続電流セットに応じて前記カテーテルの後続位置を決定するように構成されている、プロセッサと、を含む、装置。
【請求項2】
前記身体器官が前記患者の心臓を含み、かつ前記腔が前記心臓の冠状静脈洞を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記後続電流セットを記録する間は、X線画像が取得されない、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記患者の呼吸周期における相を特定するために前記X線画像を解析するように構成されており、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記患者の呼吸周期における相を特定するために前記電流セットを解析するように構成されており、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記身体器官が心臓を含み、前記プロセッサが、前記心臓から心電図(ECG)信号を取得し、前記信号を解析して前記患者の心拍周期における相を特定するように構成されており、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記身体器官が心臓を含み、前記プロセッサが、前記心臓から心電図(ECG)信号を取得し、前記信号を解析して前記患者の心拍周期の相を特定するように構成されており、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係の平均を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記関係を導出した後に、前記身体器官の前記腔に近接する更なる腔内に挿入されるように構成されている、更なるカテーテルの少なくとも1つの電極を有する更なるカテーテルを含み、かつ前記プロセッサが、前記更なるカテーテルの少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の更なる電流セットを記録し、かつ前記関係に基づいて、前記更なる電流セットに応じて前記更なるカテーテルの位置を決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記電流セットを記録する一方で、前記複数のパッチのX線画像を取得するように前記プロセッサを構成することを含み、前記位置を決定することが、前記複数のパッチと前記少なくとも1つの電極との前記X線画像から前記カテーテルの位置を決定することを含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、本願と同一日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる「Compensation for Heart Movement using Coronary Sinus Catheter Images」と題された米国特許出願に関連する。
【0002】
(発明の分野)
本発明はプローブの追跡に概して関し、特に身体器官内のカテーテルプローブの追跡に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの体内のカテーテルの位置の追跡は、今日行われている外科手術の多くで必要である。この追跡は、カテーテル自体の位置の提供に加えて、器官の表面に触れることによって、カテーテルが位置する器官の形状などのその他の情報の提供にもまた使用される場合がある。器官内で動かないようなやり方で器官内にカテーテルが挿入されている場合、器官の全体としての動きがカテーテルの位置の追跡によって決定できる場合がある。
【0004】
参考により本特許出願に組み込まれた文書は、これらの組み込まれた文書内のどんな用語でも、本明細書で明示的又は暗黙的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本出願の一体部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが検討されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、方法を提供するものであり、その方法は、
患者の身体器官の腔内に、少なくとも1つの電極を有するカテーテルを挿入することと、
前記少なくとも1つの電極と患者の皮膚上に位置づけられた複数のパッチとの間のそれぞれの電流セットを時間系列で記録することと、
前記電流セットを記録する一方で、前記少なくとも1つの電極のX線画像を取得し、前記画像から前記カテーテルの位置を決定することと、
前記電流セット及び前記画像に基づいて、前記位置と、前記それぞれの電流セットとの間の関係を導出することと、
前記少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の後続電流セットを記録することと、
前記関係に基づいて、前記後続電流セットに応じて前記カテーテルの後続位置を決定することと、を含む。
【0006】
典型的には、前記身体器官は患者の心臓を含み、かつ前記腔は前記心臓の冠状静脈洞である。
【0007】
開示の実施形態では、後続電流セットを記録する間は、X線画像は取得されない。
【0008】
更なる開示の実施形態では、本方法は、患者の呼吸周期における相を特定するために前記X線画像を解析することを含み、かつ前記関係は前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む。
【0009】
更なる開示の実施形態では、本方法は、患者の呼吸周期における相を特定するために前記電流セットを解析することを含み、かつ前記関係は前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む。
【0010】
身体器官が心臓である場合があり、本方法は、前記心臓からの心電図(ECG)信号を取得すること、及び前記信号を解析して患者の心拍周期における相を特定することを、更に含み、かつ前記関係は前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む。あるいは又は加えて、前記関係は前記相にそれぞれ基づく複数の関係の平均を含む、場合がある。
【0011】
代替実施形態では、本方法は、関係を導出することの後に、更なるカテーテルの少なくとも1つの電極を有する更なるカテーテルを前記身体器官の前記腔に近接する更なる腔内に挿入することと、前記更なるカテーテルの少なくとも1つの電極とパッチとの間の更なる電流セットを記録することと、前記関係に基づいて、前記更なる電流セットに応じて、前記更なるカテーテルの位置を決定することと、を含む。
【0012】
更なる代替実施形態では、本方法は、前記電流セットを記録する一方で複数のパッチのX線画像を取得することを含み、かつ前記位置を決定することが、典型的には、前記複数のパッチと前記少なくとも1つの電極との前記X線画像から前記カテーテルの前記位置を決定することを含む。
【0013】
本発明の一実施形態により、次の工程を含む方法が更に提供され、本方法は、
患者の身体器官の腔内に、少なくとも1つの電極及び少なくとも1つのコイルを有する第1のカテーテルを挿入することと、
前記少なくとも1つの電極と前記患者の皮膚上に位置づけられた複数のパッチとの間のそれぞれの電流セットを時間系列で記録することと、
前記電流セットを記録する一方で、前記少なくとも1つの電極と前記複数のパッチとのX線画像を取得し、かつ前記画像から前記カテーテルの位置を決定することと、
前記電流セットを記録する一方で、前記カテーテルを照射している磁場に応じて前記少なくとも1つのコイルにおいて生成された信号を記録し、かつ前記信号に応じて前記位置の測定値を決定することと、
前記電流セット、前記信号、及び前記画像に基づいて、前記位置と前記電流セットとの間の関係を導出することと、
前記第1のカテーテルを取り出し、第2のカテーテルの少なくとも1つの電極を有しコイルを有さない第2のカテーテルを前記身体器官に挿入することと、
前記第2のカテーテルの少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の後続電流セットを記録することと、
前記関係に基づいて、前記後続電流セットに応じて前記第2のカテーテルの後続位置を決定することと、を含む。
【0014】
本発明の一実施形態により、装置が更に提供され、本装置は、
患者の身体器官の腔内に挿入されるように構成されている少なくとも1つの電極を有するカテーテルと、
プロセッサであって、
前記少なくとも1つの電極と前記患者の皮膚上に位置づけられた複数のパッチとの間のそれぞれの電流セットを時間系列で記録し、
前記電流セットを記録する一方で、前記少なくとも1つの電極と前記複数のパッチとのX線画像を取得し、前記画像から前記カテーテルの位置を決定し、
前記電流セット及び前記画像に基づいて、前記位置と前記それぞれの電流セットとの間の関係を導出し、
前記少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の後続電流セットを記録し、かつ
前記関係に基づいて、前記後続電流セットに応じて前記カテーテルの後続位置を決定するように構成されている、プロセッサと、を含む。
【0015】
以下の本開示の発明を実施するための形態を、図面と併せ読むことによって、本開示のより深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による、ハイブリッド追跡システムを示す概略図である。
図2A】カテーテルの遠位端部を示す概略図である。
図2B】本発明の実施形態による、心臓に挿入された遠位端部の概略図である。
図3】本発明の実施形態にしたがった、図1のシステムの操作において行われる工程のフローチャートである。
図4】本発明の代替実施形態による、ハイブリッド追跡システムを示す概略図である。
図5】本発明の代替実施形態による、図4のシステムに使用されるカテーテルの遠位端部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概観
本発明の実施形態は、患者の身体器官の腔に挿入される、典型的にはカテーテルの遠位端部であるカテーテルの位置を決定するためのシステムを提供する。カテーテルはその遠位端部に取り付けられた少なくとも1つの電極を有する。典型的には、腔は、カテーテルを挿入することが可能な身体器官の任意の空洞であり得る。いくつかの実施形態では、身体器官は患者の心臓であり、以下の説明において腔は心臓の冠状静脈洞であると仮定されている。
【0018】
電極パッチは患者の心臓の近くの皮膚に取り付けられ、カテーテルの少なくとも1つの電極とパッチの間の電流が記録される。電流は、それぞれの電流セットを生成するように時間系列にわたって記録される。
【0019】
電流セットが記録されている間に、システムの訓練段階において、少なくとも1つの電極及び複数のパッチのX線画像が取得され、それらの画像をもとにカテーテルの位置が決定される。システムのプロセッサが、電流セット及び画像に基づいて、それらの位置とそれぞれの電流セットとの間の関係を導出する。
【0020】
システムの動作段階で、少なくとも1つの電極とパッチとの間の後続の電流セットが記録され、その間、X線画像は取得されない。その動作段階で、それらの後続電流セットに応じて、カテーテルの後続位置が決定される。
【0021】
本発明の実施形態では、カテーテルの少なくとも1つの電極は、カテーテルに組み込まれる、カテーテルの位置を決定することを可能にする唯一の手段であり得る。訓練段階において決定される、電流セットとカテーテルの位置(X線画像から見出される)との間の関係は、カテーテルの位置を決定するためのその他の手段がカテーテルにないにもかかわらず、動作段階における後続電流セットをもとにカテーテルの後続位置を正確に決定するための優れた方法を提供する。
【0022】
(詳細な説明)
以下の説明において、図面中の同様の要素は同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別数字に文字を添えることにより区別される。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による、ハイブリッド追跡システム20を示す概略図である。
【0024】
システム20は、以下により詳細に説明される、インピーダンスに基づく位置検出コントローラ26により動作されるインピーダンスに基づく位置検出設備24を含む。システム20は、X線透視装置コントローラ32によって動作されるX線透視装置30もまた含む。簡易に示すために例として図1は「Cアーム」X線透視装置を備えるものとして設備30を示しているが、このX線透視設備は当該技術分野で既知の任意のX線透視装置及び/又は、X線透視画像を生成することができるコンピュータ断層撮影(CT)X線装置を含むことができる。
【0025】
以下により詳細に説明するように、システム20の初期の「訓練」セッション中、インピーダンスに基づく位置検出設備及びX線透視装置の両方が動作する。システムの後続の動作セッション中は、インピーダンスに基づく位置検出設備のみが動作に必要とされる。この動作段階で、システムは患者48の身体器官46の腔42内のカテーテル44の遠位端部40の位置を決定する。この決定は、以下により詳細に説明するように、遠位端部の電極64からの電流を使用する。
【0026】
本開示及び「特許請求の範囲」における身体器官の腔への言及は、カテーテルの遠位端部を挿入することが可能な身体器官の任意の空洞を指すものと理解されたい。例として、及び説明をわかりやすくするために、以下の説明においての身体器官46は患者48の心臓と仮定し、本明細書では、この身体器官が心臓46とも呼ばれる。また、例として、及び説明をわかりやすくするために、以下の説明においての腔42は心臓46の冠状静脈洞と仮定し、本明細書では、この腔が冠状静脈洞42とも呼ばれる。当業者は、心臓、左右心房、及び左心室並びに右心室の場合のような他の身体器官及び他の腔について、前記説明に必要な変更を加えて適合させることができるであろう。
【0027】
図2Aは、遠位端部40を示す概略図であり、図2Bは、本発明の実施形態による、心臓46に挿入される遠位端部を示す概略図である。これらの図は、冠状静脈洞42内に挿入された後の遠位端部40を図示している。
【0028】
システム20はシステムプロセッサ50によって動作され、このシステムプロセッサは、コントローラ26及び32によって提供されるデータと画像を統合するためにソフトウェアを使用する。システムプロセッサ50及びコントローラ26並びに32は、通常は、システム20の制御装置52に組み込まれる。プロセッサは遠位端部の位置を決定し、通常、前記位置を身体器官の画像に組み込み、その画像が、制御装置と連結している画面60上でシステム20の操作者に表示される。そのプロセッサのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードされてもよく、あるいは、それに代わって、若しくはそれに加えて、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形媒体上に提供及び/又は保管されてもよい。
【0029】
インピーダンスに基づく位置検出設備のコントローラ26は、カテーテルの遠位端部の電極64と、患者48の心臓46の近くの皮膚に位置づけられた、本明細書でパッチとも呼ばれる複数の概して類似したパッチ電極68との間の電流を測定する。(説明を分かりやすくするため、図1には制御装置52とパッチ68の間の接続は示していない。遠位端部の電極と異なるパッチとの間のインピーダンスの相違が、パッチから遠位端部までの距離の相違によって引き起こされるので、電極64とパッチとの間の電流は、電極の位置に応じて変化する。コントローラ26は異なる電流からの位置の指示を生成するように構成される。設備24と類似した設備の動作の詳細が、Bar−Talらへ付与された米国特許第8,456,182号に記載されており、この米国特許は、本出願の譲受人らに付与されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0030】
遠位端部電極とパッチの間のインピーダンス、及びパッチ間のインピーダンスは、患者48の呼吸周期とともに変化し、したがって、時間とともに変化する。コントローラ26はまた、インピーダンスの解析のために、及び、それぞれの時間で測定されたインピーダンスのセットの解析から患者の呼吸周期の呼気終末点に相当するインピーダンスセットの指示を導出するためにも、構成されている。この解析は呼気終末点までのその周期の他のインピーダンスセットのそれぞれの段階もまた参照する。上記の解析に類似した、インピーダンスを用いた呼吸の解析のためのシステムの態様が、Bar−Talらへ付与された米国特許出願第2012/0172712号に記載されており、この米国特許出願は、本出願の譲受人らに付与されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0031】
心臓46の近くで患者48の皮膚に位置づけられるおかげで、パッチ68は、心臓が鼓動するにつれて、心臓によって生成される心電図(ECG)信号もまた受信する。コントローラ26は、ECG信号の取得し、かつ患者の心拍周期の相に対応する時間で取得されたインピーダンスセットを参照するための基準としてその取得された信号を用いように、更に構成される。
【0032】
設備30のX線透視コントローラ32は、心臓46、電極64、及び一部の実施形態ではパッチ68の画像を含む、患者48の画像を取得する。X線透視コントローラ32はそれらの画像から、X線透視参照枠内の心臓及び電極のそれぞれの位置を推測することができる。パッチが撮像されたところで、コントローラはX線透視参照枠内のパッチの位置を推測することができる。設備30がCT設備を備えている場合、CT画像は、通常、十分な三次元情報を組み込み、その結果、コントローラ32はそれらの画像を解析して位置を導出することができる。設備30がCT設備を備えていない場合、設備が2つ以上の配向であるときに取得された画像の解析によって位置を導出することができる。上記の「Compensation for Heart Movement using Coronary Sinus Catheter Images」と題する米国特許出願は、複数の配向におけるX線透視装置から生成されたX線透視画像を用いた冠状静脈洞カテーテルの位置を検出するためのシステムを記載している。
【0033】
パッチ68は患者の呼吸とともに動くので、パッチの位置は時間とともに変化する。各X線透視画像について、それぞれの時間で取得したパッチ68の位置セットの解析によってパッチの位置がX線透視装置画像から決定され得る実施形態では、コントローラ32が、患者の呼吸周期の呼気終末点に相当するパッチの位置のセット(すなわち画像のセット)を識別することができる。コントローラは、呼気終末点までのその周期の他のパッチ位置セットのそれぞれの相もまた参照することができる。呼吸周期における相及び呼気終末点の識別は、インピーダンスに基づく位置検出設備を用いて行う識別から独立して行うことができる。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態にしたがった、動作システム20で実施される工程のフローチャートである。フローチャートの初期工程200で、患者の心臓46の近くの皮膚にパッチ68が取り付けられ、そのパッチは制御装置52に導電性ケーブルで接続される。加えて、カテーテルの遠位端部40が冠状静脈洞42に挿入される。
【0035】
フローチャートの訓練段階が始まるX線透視撮像工程202で、X線透視装置コントローラ32が設備30を動作し、その結果、コントローラが、画像内に、心臓46、遠位端部電極64、及びパッチ68のそれぞれのサブ画像を含む患者48のX線画像を取得する。
【0036】
撮像工程202と通常は実質的に同時に行われる電流測定工程204で、インピーダンスに基づくコントローラ26が、各パッチ68と遠位端部電極64との間のそれぞれの「訓練」電流を、電流セット{I}として記録する。
【0037】
矢印206が示すように、工程202及び204は通常は約10秒の期間で連続的に繰り返されるが、この繰り返し時間は10秒より長い場合又は短い場合があり得る。患者の呼吸及び患者の心臓の鼓動による遠位端部及びパッチの動きを調整するために、それぞれのコントローラが各工程の時間を記録する。
【0038】
解析工程208で、X線透視装置コントローラが、工程202で取得された各画像のサブ画像を解析して、設備30によって画定されるX線透視参照枠内で、心臓46、遠位端部電極64、及び各パッチ68のそれぞれの推定位置を決定する。パッチの位置を比較することによって、X線透視装置コントローラは連続画像を患者48の呼吸周期に登録し、呼気終末点及び周期中の他の相に対応する画像を識別する。
【0039】
電極及びパッチの推定位置から、コントローラは、各パッチ68からの遠位端部電極の変位を表す「訓練」変位ベクトルのセット{D}を各画像に関して生成する。ベクトル{D}の各セットが、患者の呼吸周期及び心拍(後者はECG信号から決定される)におけるその対応する相に応じて更に分類され、その結果、X線透視装置コントローラがベクトルのセット
【数1】
(式中、Rは呼吸周期の相を表す指数、Hは心拍の相を表す指数)を生成する。
【0040】
また、解析工程で、インピーダンスに基づくコントローラが、患者の呼吸周期及び心拍の相に応じて工程204で取得された各電流セット[I]を分類して、電流ベクトルセット
【数2】
を生成する。
【0041】
関係組立て工程210で、システムプロセッサが、変位ベクトルセット
【数3】
と電流ベクトルセット
【数4】
との間の関係を式(1)により生成する行列
【数5】
を見出し、保存する。
【数6】
【0042】
工程202〜210は、フローチャートの訓練段階を含み、工程210で行列
【数7】
を保存する工程は、訓練段階の終わりに相当する。
【0043】
フローチャートの動作段階の初期工程212で、X線透視設備の電源はオフである。カテーテル44は冠状静脈洞42内に残されてもよく、あるいは、以下に説明するように追跡される別の同様のカテーテルで冠状静脈洞内のカテーテルを後で交換してもよい。X線透視設備はもはや動作していないが、インピーダンスに基づく位置検出設備は動作し続ける。その動作中、インピーダンスに基づくコントローラ26がパッチ68から動作電流ベクトル[I]セットを取得し、また、ECG信号を受信し続ける。
【0044】
工程212で取得した動作電流ベクトル[I]の各セットに関して行われる動作解析工程214で、コントローラ26がそれらのベクトルセットを解析して呼吸周期Rの相を決定し、また、ECG信号を解析して、患者の心拍Hの相を決定する。電流ベクトルの各セットは、したがって、
【数8】
として定めることができる。
【0045】
遠位端部位置検出工程216では、工程214で決定されたR値及びH値に関する行列
【数9】
が引き出され、式(2)により、遠位端部に関する変位ベクトルセット
【数10】
を決定するために用いられる。
【数11】
【0046】
遠位端部が冠状静脈洞内にある場合は、冠状静脈洞と心臓の残りの部分の間の動き(すなわち変位の変化)が比較的少ないので、遠位端部に関して式(2)から決定された変位ベクトルを心臓の位置の指標として直接に用いることができる。あるいは、工程208で生成された心臓の位置及び遠位端部電極の推定を用いるために、(冠状静脈洞内の)遠位端部と心臓の間の動きを計算に入れてもよい。幾つかの実施形態においては、実質的には遠位端部変位ベクトルに関して上述したように、その動きのための調整が、患者の心拍及び/又は呼吸周期にゲートされる場合がある。
【0047】
いくつかの実施形態では、心拍相指標Hにしたがってデータを測定及び/又はゲートするのでなく、むしろ、完全な心拍にわたってデータを平均化する。当業者は、必要な変更を加えて、データのそのような平均が導出される場合に適合させることが可能であろう。
【0048】
上記の説明は、システム20の訓練段階の後に、カテーテル44又はその置換物が冠状静脈洞42内にあり、したがってカテーテル44又はその置換物が動作段階で追跡されると仮定している。代替実施形態では、カテーテル44に類似した代替カテーテル、すなわち、電極を有するがコイルを有さない(そのようなコイルの説明は以下で図4及び5を参照して行う)カテーテルが、カテーテル44の訓練段階中に使用される冠状静脈洞の近くの腔内に位置づけられる。例えば、代替カテーテルを心臓46の右心室に位置づけることができる。代替カテーテルに関する電流ベクトルのセットが、工程212に関して上述したように取得され、代替カテーテルに関する変位ベクトルが式(2)を用いて導出される。
【0049】
図4は、本発明の代替実施形態による、ハイブリッド追跡システム320を示す概略図である。以下に説明する差異を除き、システム320の動作はシステム20(図1〜3)の動作とほぼ同様であり、システム20及び320の双方において同じ参照番号によって示される要素はほぼ同様に構成され、かつ動作される。
【0050】
システム320は磁気追跡システム322を含み、これは一般に、位置パッド326上に固定的に装着されたほぼ同様のコイルの3つのセット324を有する。コイルの各組324は、一般に、直角に配向した3つのコイルを含むため、パッド326には合計で9個のコイルが固定的に取り付けられている。パッド326は患者48が静止しているテーブル330の下面に固定的に取り付けられ、コイルは、磁気システムコントローラ336の制御下で、心臓46に近接した領域340内に交流磁場を伝達する。システム320はカテーテル44を使用せず、カテーテル344を使用する。
【0051】
図5は、本発明の代替実施形態による、カテーテル344の遠位端部342の概略断面図である。遠位端部342はカテーテル44の遠位端部40とほぼ同様であり、その遠位端部の表面に電極64を有する。加えて、先端部342はその先端部内に1つ以上のコイル350を備えている。
【0052】
1つ又は2つ以上のカテーテルコイルは、該コイルにより受信された磁場(セット324からの)に応じて信号を生成し、コントローラ336は、コイル350から該信号を取得し、信号を処理して、位置パッド326に対するカテーテルコイルの位置を決定する。パッチ68は、パッチに組み込まれたコイルもまた有し、コントローラ336はコイルからの信号を処理して、位置パッドに対するパッチの位置を決定することができる。磁気追跡システム322に類似したシステムは、カリフォルニア州Diamond BarのBiosense Webster Inc.製のCarto(商標)システムであり、また、上記で参照した米国特許第8,456,182号にも記載されている。
【0053】
本発明の代替実施形態では、上記の訓練段階においてハイブリッド追跡システム320及びカテーテル344が使用される。しかしながら、その動作段階では、カテーテル344を使用せず、むしろ、その遠位端部にコイル350を有さないカテーテル44を使用する。以下に述べる差異を除いて、図3のフローチャートは、この代替実施形態の動作において行われる工程を記載している。
【0054】
この代替実施形態の訓練段階の工程208では、パッチ68に対するカテーテル遠位端部342の変位ベクトルのセットの推定は、上述のように透視画像のみに基づいて行われるか、又は、磁気追跡システム322のみに基づいて行われる。いくつかの実施形態では、X線透視画像及び磁気追跡システムの両方を用いて、通常はX線透視システムによって決定されたベクトルを磁気追跡システムから決定されたベクトルと平均することによって、変位ベクトルを推定する。以下の説明において、代替実施形態の解析工程208の推定が変位ベクトルのセット
【数12】
を生成すると仮定する。
【0055】
代替実施形態では、セット
【数13】
を関係工程210で使用して、式(3)により生成される行列
【数14】
を見出し、保存する。
【数15】
【0056】
代替実施形態の動作段階で、カテーテル344を冠状静脈洞42から取り出すことができ、カテーテル44をその冠状静脈洞又は別の心臓46の腔に配置することができる。行列
【数16】
を用いて、式(4)にしたがって、カテーテル44の遠位端部の変位ベクトルのセット
【数17】
を決定する。
【数18】
【0057】
上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上に具体的に示し、記載した内容に限定されるものではないということが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には想到されるであろうものであり、従来技術では開示されていないものである。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
患者の身体器官の腔内に、少なくとも1つの電極を有するカテーテルを挿入することと、
前記少なくとも1つの電極と前記患者の皮膚上に位置づけられた複数のパッチとの間のそれぞれの電流セットを時間系列で(at a sequence of times)記録することと、
前記電流セットを記録する一方で、前記少なくとも1つの電極のX線画像を取得し、前記画像から前記カテーテルの位置を決定することと、
前記電流セット及び前記画像に基づいて、前記位置と、前記それぞれの電流セットとの間の関係を導出することと、
前記少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の後続電流セットを記録することと、
前記関係に基づいて、前記後続電流セットに応じて前記カテーテルの後続位置を決定することと、を含む、方法。
(2) 前記身体器官が前記患者の心臓を含み、かつ前記腔が前記心臓の冠状静脈洞を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記後続電流セットを記録する間は、X線画像が取得されない、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記患者の呼吸周期における相を特定するために前記X線画像を解析することを含み、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記患者の呼吸周期における相を特定するために前記電流セットを解析することを含み、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、実施態様1に記載の方法。
【0059】
(6) 前記身体器官が心臓を含み、前記方法が、前記心臓からの心電図(ECG)信号を取得すること、及び前記信号を解析して前記患者の心拍周期における相を特定することを、更に含み、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記身体器官が心臓を含み、前記方法が、前記心臓からの心電図(ECG)信号を取得すること、及び前記信号を解析して前記患者の心拍周期における相を特定することを、更に含み、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係の平均を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記関係を導出することの後に、更なるカテーテルの少なくとも1つの電極(further-catheter-at-least-one-electrode)を有する更なるカテーテルを前記身体器官の前記腔に近接する更なる腔内に挿入することと、前記更なるカテーテルの少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の更なる電流セットを記録することと、前記関係に基づいて、前記更なる電流セットに応じて、前記更なるカテーテルの位置を決定することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記電流セットを記録する一方で前記複数のパッチのX線画像を取得することを含み、かつ前記位置を決定することが、前記複数のパッチと前記少なくとも1つの電極との前記X線画像から前記カテーテルの前記位置を決定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 方法であって、
患者の身体器官の腔内に、少なくとも1つの電極及び少なくとも1つのコイルを有する第1のカテーテルを挿入することと、
前記少なくとも1つの電極と前記患者の皮膚上に位置づけられた複数のパッチとの間のそれぞれの電流セットを時間系列で記録することと、
前記電流セットを記録する一方で、前記少なくとも1つの電極と前記複数のパッチとのX線画像を取得し、かつ前記画像から前記カテーテルの位置を決定することと、
前記電流セットを記録する一方で、前記カテーテルを照射している磁場に応じて前記少なくとも1つのコイルにおいて生成された信号を記録し、かつ前記信号に応じて前記位置の測定値を決定することと、
前記電流セット、前記信号、及び前記画像に基づいて、前記位置と前記電流セットとの間の関係を導出することと、
前記第1のカテーテルを取り出し、第2のカテーテルの少なくとも1つの電極を有しコイルを有さない第2のカテーテルを前記身体器官に挿入することと、
前記第2のカテーテルの少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の後続電流セットを記録することと、
前記関係に基づいて、前記後続電流セットに応じて前記第2のカテーテルの後続位置を決定することと、を含む、方法。
【0060】
(11) 装置であって、
患者の身体器官の腔内に挿入されるように構成されている少なくとも1つの電極を有するカテーテルと、
プロセッサであって、
前記少なくとも1つの電極と前記患者の皮膚上に位置づけられた複数のパッチとの間のそれぞれの電流セットを時間系列で記録し、
前記電流セットを記録する一方で、前記少なくとも1つの電極と前記複数のパッチとのX線画像を取得し、前記画像から前記カテーテルの位置を決定し、
前記電流セット及び前記画像に基づいて、前記位置と前記それぞれの電流セットとの間の関係を導出し、
前記少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の後続電流セットを記録し、かつ
前記関係に基づいて、前記後続電流セットに応じて前記カテーテルの後続位置を決定するように構成されている、プロセッサと、を含む、装置。
(12) 前記身体器官が前記患者の心臓を含み、かつ前記腔が前記心臓の冠状静脈洞を含む、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記後続電流セットを記録する間は、X線画像が取得されない、実施態様11に記載の装置。
(14) 前記プロセッサが、前記患者の呼吸周期における相を特定するために前記X線画像を解析するように構成されており、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、実施態様11に記載の装置。
(15) 前記プロセッサが、前記患者の呼吸周期における相を特定するために前記電流セットを解析するように構成されており、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、実施態様11に記載の装置。
【0061】
(16) 前記身体器官が心臓を含み、前記プロセッサが、前記心臓から心電図(ECG)信号を取得し、前記信号を解析して前記患者の心拍周期における相を特定するように構成されており、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係を含む、実施態様11に記載の装置。
(17) 前記身体器官が心臓を含み、前記プロセッサが、前記心臓から心電図(ECG)信号を取得し、前記信号を解析して前記患者の心拍周期の相を特定するように構成されており、かつ前記関係が前記相にそれぞれ基づく複数の関係の平均を含む、実施態様11に記載の装置。
(18) 前記関係を導出した後に、前記身体器官の前記腔に近接する更なる腔内に挿入されるように構成されている、更なるカテーテルの少なくとも1つの電極を有する更なるカテーテルを含み、かつ前記プロセッサが、前記更なるカテーテルの少なくとも1つの電極と前記パッチとの間の更なる電流セットを記録し、かつ前記関係に基づいて、前記更なる電流セットに応じて前記更なるカテーテルの位置を決定するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(19) 前記電流セットを記録する一方で、前記複数のパッチのX線画像を取得するように前記プロセッサを構成することを含み、前記位置を決定することが、前記複数のパッチと前記少なくとも1つの電極との前記X線画像から前記カテーテルの位置を決定することを含む、実施態様11に記載の装置。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
【外国語明細書】
2016147058000001.pdf