【解決手段】工具基材14に形成された固着層12に多数のダイヤモンド砥粒11が固着された板ガラス用工具であって、互いに隣接する第1の砥粒11aと第2の砥粒11bと板ガラスAとに囲まれてクーラント流路CLが形成されており、前記クーラント流路の流路方向視において、前記第1の砥粒の頂部110aを通って前記固着層の厚み方向に延びる第1の仮想線L1と、前記第2の砥粒の頂部110bを通って前記固着層の厚み方向に延びる第2の仮想線L2と、前記第1及び前記第2の頂部を結ぶ第3の仮想線L3と、前記第1の砥粒の底部111a及び前記第2の砥粒の底部111bを結ぶ第4の仮想線L4とによって囲まれた領域の面積をS、前記クーラント流路に対応した領域の面積をS1としたときに、S1/S≧0.35を満足する。
前記固着層は、前記砥粒の下端部が個々に埋設される複数の第1のメッキ層と、これらの第1のメッキ層を覆って前記工具先端部全体に延在する第2のメッキ層とからなり、
前記砥粒の下端部は、前記第1のメッキ層の下端面よりも上側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の板ガラス用工具。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、板ガラス用工具としてのシャンク1の概略図である。このシャンク1は、大径部1Aと、小径部1Bと、テーパ部1Cとからなる。大径部1A及び小径部1Bの径は一定である。テーパ部1Cは上端部が大径部1Aの下端部に繋がっており、下端部が小径部1Bの上端部に繋がっている。シャンク1は板ガラスに穴を形成するために用いることができる。板ガラスは、例えば、携帯電話のカバーガラスであってもよい。携帯電話のカバーガラスに向かってシャンク1を回転させながら降下させることで、スピーカー用の開口部などを形成することができる。
【0022】
シャンク1のハッチングした領域はダイヤ接合部10であり、このダイヤ接合部10には多数のダイヤモンド砥粒11が固着されている。ダイヤモンド砥粒11には、人工ダイヤモンド砥粒を用いることができる。
図2は、ダイヤ接合部10の一部における拡大断面図である。ダイヤモンド砥粒11は、工具基材14の上に形成された固着層12に固着されている。固着層12は、ダイヤモンド砥粒11に這い上がるように形成されている。つまり、固着層12の厚みは、ダイヤモンド砥粒11に近接した領域が相対的に厚く、ダイヤモンド砥粒11から離隔した領域が相対的に薄く形成されている。なお、工具基材14には、ステンレス鋼、炭素鋼、モリブデン鋼又はこれらの合金を用いることができる。
【0023】
ダイヤモンド砥粒11の表面積を100%としたとき、ダイヤモンド砥粒11が固着層12に埋没する割合は、好ましくは、65%以上である。つまり、ダイヤモンド砥粒11の表面積全体の65%以上が固着層12に固着されるように、固着層12の厚みを制御しておくことが好ましい。固着層12に固着されるダイヤモンド砥粒11の固着割合が65%未満になると、ダイヤモンド砥粒11を固着する固着力の低下により、工具寿命が短くなる。
【0024】
ダイヤモンド砥粒11の粒径は、好ましくは2μm以上150μm以下である。ダイヤモンド砥粒11の粒径が2μm未満になると、加工速度が不足する。ダイヤモンド砥粒11の粒径が150μm超になると、加工後のチッピングが大きくなりすぎる。以上の理由から、ダイヤモンド砥粒11の好ましい粒径を2μm以上150μm以下とした。加工後のチッピングの大きさを重視する場合には、ダイヤモンド砥粒11の粒径範囲を更に限定し、5μm以上50μm以下にしておくことが望ましい。
【0025】
固着層12には、ろう材を用いることができる。ろう材及びダイヤモンド砥粒11は親和性が高いため、ろう材がダイヤモンド砥粒11に這い上がり、ダイヤモンド砥粒11に近接した領域が相対的に厚く、ダイヤモンド砥粒11から離隔した領域が相対的に薄い凹凸形状の固着層12を容易に形成することができる。固着層12の厚みが大きい領域は、表面が屈曲している。これにより、ダイヤモンド砥粒11の近接領域に設けられる固着層12の放熱面積を増大させることができる。したがって、より効果的に切削領域を抜熱することができる。
【0026】
ダイヤモンド砥粒11の先端は、板ガラスAに当接しており、固着層12、固着層12から突出したダイヤモンド砥粒11の突き出し部分及び板ガラスAによって囲まれた領域によって、クーラント流路CLが形成される。上述の通り、ろう材を用いることで、ダイヤモンド砥粒11を避けた板ガラスAの直下領域に大きな隙間が形成され、この隙間をクーラント流路CLとして用いることができる。これにより、ダイヤモンド砥粒11を強固に固着層12に固定した状態で、研削領域を十分に冷却することができる。
【0027】
図3を参照しながら、クーラント流路CLの面積について詳細に説明する。
図3は、
図2に対応しており、クーラント流路CLの面積を説明するための説明図である。実線で示す矩形の領域は、隣接する砥粒11の間に形成されたクーラント流路CLの流路断面積Slの割合を定量的に表すために比較される基準領域である。
【0028】
便宜上、隣接するダイヤモンド砥粒11a及び11bをそれぞれ第1のダイヤモンド砥粒11a及び第2のダイヤモンド砥粒11bと称するものとする。また、便宜上、第1のダイヤモンド砥粒11aの頂部110aを通って固着層12の厚み方向に延びる線を第1の仮想線L1、第2のダイヤモンド砥粒11bの頂部110bを通って固着層12の厚み方向に延びる線を第2の仮想線L2、第1のダイヤモンド砥粒11aの頂部110a及び第2のダイヤモンド砥粒11bの頂部110bを結ぶ線を第3の仮想線L3、第1のダイヤモンド砥粒11aの底部111a及び第2のダイヤモンド砥粒11bの底部111bを結ぶ線を第4の仮想線L4と称するものとする。第1のダイヤモンド砥粒11aの頂部110a(第2のダイヤモンド砥粒11bの頂部110b)とは、第1のダイヤモンド砥粒11a(第2のダイヤモンド砥粒11b)のうち板ガラスAに当接する部分のことである。第1のダイヤモンド砥粒11aの底部111a(第2のダイヤモンド砥粒11bの底部111b)とは、第1のダイヤモンド砥粒11a(第2のダイヤモンド砥粒11b)における工具基材14側の端部のことである。
【0029】
ここで、第1の仮想線L1、第2の仮想線L2、第3の仮想線L3及び第4の仮想線L4によって囲まれた矩形領域の面積(以下、基準面積という)をS、クーラント流路CLに対応した領域の面積(以下、クーラント面積という)をS1としたときに、S1/Sは0.35以上であり、好ましくは0.45以上である。
【0030】
基準面積とクーラント面積の割合であるS1/Sを0.35以上に設定することで、クーラント量が増大するため、加工速度を増速することができる。また、加工速度を増速しても、研削領域をクーラントで十分に冷却できるため、工具寿命の低下を抑制できる。S1/Sを0.45以上に設定することで、加工速度の高速化と工具の高寿命化への効果がより顕著に高くなる。
【0031】
次に、ダイヤ接合部10の製造方法について説明する。ダイヤ接合部10は、ろう付け法によって形成することができる。ろう付け法について詳細に説明する。
【0032】
ろう材には、例えば、チタン、クロム及びジルコニウムから選ばれた1種以上の金属を0.5〜20wt%含む融点650℃〜1200℃のニッケル基合金を用いることができる。この場合、ダイヤモンド砥粒11と固着層12との界面に、チタン、クロム及びジルコニウムから選ばれた1種以上の金属からなる炭化物層を形成することができる。
【0033】
ダイヤモンド砥粒11及びろう材を、糊を用いて工具基材14に付着させる。ダイヤモンド砥粒11は単層で付着させる。ろう材の使用量は、ダイヤモンド砥粒11の粒径が大きくなるのに応じて増加させ、上限はダイヤモンド砥粒11が埋まることのない量に設定することができる。ろう材の使用量を変えることで、固着層12の厚みが変化して、基準面積とクーラント面積の割合であるS1/Sを制御することができる。
【0034】
次に、ダイヤモンド砥粒11及びろう材が付着した工具基材14を、10
−5Torr程度の圧力で真空引きした後、ろう材が溶融する温度まで加熱する。ろう材を加熱する温度は、ろう材の融点以上であるが、できるだけ低温であることが好ましく、例えば、液相線温度+20℃以内が好ましい。ろう材の加熱温度が高すぎると、工具基材14の熱変形が大きくなるからである。また、加熱時間は、好ましくは、5〜30分間である。上述の加熱処理によって、ダイヤモンド砥粒11にろう材が這い上がった凹凸構造の固着層12を構成することができる。
【0035】
本実施形態の構成によれば、クーラント面積S1の基準面積Sに対する割合が0.35以上であるため、クーラント量を増大させることができる。これにより、加工速度を増速することができる。また、加工速度を増速しても、研削領域をクーラントで十分に冷却できるため、工具寿命の低下を抑制できる。さらに、研削時に発生する屑(板ガラスの切り子、工具の屑)を、クーラント流路CLを介して容易に排出することができる。
【0036】
本実施形態の板ガラス用工具を使って、携帯電話用カバーガラスの加工を試みたが、
図7に示す従来工具と比較して、同一の加工条件で加工速度は3倍以上、工具寿命は20倍以上であった。
【0037】
(第2実施形態)
次に、
図4及び
図5を参照しながら、板ガラス用工具の第2実施形態について説明する。
図4は、ダイヤ接合部10の一部における拡大断面図である。
図5は、
図4に対応しており、クーラント流路CLの面積を説明するための説明図である。第1実施形態と同一の機能を有する要素には、同一符号を付している。
【0038】
固着層12は、複数の下地メッキ層12a(第1のメッキ層に相当する)及び埋め込みメッキ層12b(第2のメッキ層に相当する)からなる。ダイヤモンド砥粒11の下端部は、下地メッキ層12aの内部に埋没しており、下地メッキ層12aの下端面よりも上側に位置する。埋め込みメッキ層12bは、下地メッキ層12aを覆うとともに、ダイヤ接合部10全体に延在している。
【0039】
また、埋め込みメッキ層12bのうち、下地メッキ層12aの略直上部分は凸状に形成されており、それ以外の領域は凹状に形成されている。つまり、下地メッキ層12aが設けられることで、埋め込みメッキ層12bに段差が形成されるため、板ガラスAと埋め込みメッキ層12bとの間に形成されるクーラント流路CLの流路断面積を大きくすることができる。
【0040】
図5を参照して、第1の仮想線L1、第2の仮想線L2、第3の仮想線L3及び第4の仮想線L4によって囲まれた矩形領域の面積(以下、基準面積という)をS、クーラント流路CLに対応した領域の面積(以下、クーラント面積という)をS1としたときに、S1/Sは0.35以上であり、好ましくは0.45以上である。第1の仮想線L1、第2の仮想線L2、第3の仮想線L3及び第4の仮想線L4の意味は、第1実施形態と同様であるから、説明を繰り返さない。
【0041】
基準面積とクーラント面積の割合であるS1/Sを0.35以上に設定することで、クーラント量が増大するため、加工速度を増速することができる。また、加工速度を増速しても、研削領域をクーラントで十分に冷却できるため、工具寿命の低下を抑制できる。S1/Sを0.45以上に設定することで、加工速度の高速化と工具の高寿命化への効果がより顕著に高くなる。
【0042】
ダイヤモンド砥粒11の下部は下地メッキ層12aによって覆われており、それ以外の部分(ただし、ダイヤモンド砥粒11の頂部を除く)は埋め込みメッキ層12bによって覆われている。個々のダイヤモンド砥粒11の表面積を100%としたとき、ダイヤモンド砥粒11が固着層12に埋没する割合は、好ましくは、65%以上である。固着層12に固着されるダイヤモンド砥粒11の固着割合が65%未満になると、ダイヤモンド砥粒11を固着する固着力の低下により、工具寿命が短くなる。
【0043】
固着層12はニッケルストライクメッキ層16の上に形成されており、このニッケルストライクメッキ層16はベースニッケルメッキ層17の上に形成され.ており、このベースニッケルメッキ層17は工具基材14の上に形成されている。
【0044】
本実施形態のダイヤ接合部10は、2段ニッケル電着法により製造することができる。すなわち、工具基材14に対して、ノズルからメッキ液を噴流させてベースニッケルメッキ層17を形成する。ベースニッケルメッキ層17の厚みは、30μmであってもよい。次に、ベースニッケルメッキ層17に対して、ノズルからメッキ液を噴流させてニッケルストライクメッキ層16を形成する。ニッケルストライクメッキ層16の厚みは、0.5μmであってもよい。
【0045】
次に、下地メッキ層12aをニッケルストライクメッキ層16の上に形成して、ダイヤモンド砥粒11を仮固着した後、ノズルからメッキ液を噴流させて埋め込みメッキ層12bを形成する。
【0046】
本実施形態の板ガラス用工具を使って、携帯電話用カバーガラスの加工を試みたが、
図7に示す従来工具と比較して、同一の加工条件で加工速度は2倍以上、工具寿命は5倍以上であった。
【0047】
(変形例)
上述の実施形態では、穴開け用のシャンク1について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、
図6のシャンク30にも適用することができる。シャンク30は、大径部30A、テーパ部30B、小径部30Cからなる。大径部30Aの径寸法は一定である。テーパ部30Bは、大径部30Aの下端部に連設されており、下側に向かって徐々に縮径している。小径部30Cはテーパ部30Bの下端部に形成されている。小径部30Cの途中には、径方向内側に屈曲した面取り溝部301Cが形成されている。大径部30Aの下端部、テーパ部30B及び小径部30Cにはハッチングで示すダイヤ接合部40が形成されている。このダイヤ接合部40に、上述の実施形態1及び2の構成を適用することができる。
【0048】
以下、実施例を示しながら、本発明について詳細に説明する。
(実施例1)
実施例No.1では、
図1のシャンク1に対してロウ付け法によりダイヤ接合部10を形成した。ダイヤモンド砥粒11の粒径は40μmとした。工具基材14には、ステンレス鋼を使用した。固着層12に用いられるろう材として、Cr、Fe、Si、B、Pを含むNiベースの合金を用いた。ダイヤモンド砥粒11及びろう材が付着した工具基材14を、10
−5Torrの圧力で真空引きするとともに、真空中で20分間加熱した。加熱温度は、1000℃に設定した。
【0049】
実施例No.2では、
図1のシャンク1に対して2段ニッケル電着法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒11の粒径は40μmとした。工具基材14には、ステンレス鋼を使用した。ダイヤ接合部10の構成は、実施形態2と同様であるから、説明を繰り返さない。
【0050】
比較例No.1では、
図1のシャンク1に対してニッケル電着法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒101の粒径は40μmとした。工具基材には、ステンレス鋼を使用した。
図7に図示するように固着層102の上端面はフラットであった。
【0051】
比較例No.2では、
図1のシャンク1に対してメタルボンド法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒101の粒径は40μmとした。工具基材には、ステンレス鋼を使用した。
図7に図示するように固着層102の上端面はフラットであった。
【0052】
これらの異なる板ガラス用工具を用いて、携帯用カバーガラスの孔あけ加工を行った。加工条件は以下の通りである。
ガラスサイズ:50mm×100mm×0.55mm
ガラス材質:化学強化ガラス
孔形状:1.0mm×9.8mmの長孔
工具回転数:30000rpm
工具送り速度:60mm/分
板厚方向切込量:0.05mm
【0053】
同一加工条件で穴あけ加工できた孔の数を評価し、工具寿命の比較を行なった。工具寿命に達するまでに形成された孔の数が900個以上の場合には、長寿命性能が非常に良好であるとして「very good」で評価した。孔の数が350個以上900個未満の場合には、長寿命性能が良好であるとして「good」で評価した。孔の数が350個未満の場合には、長寿命性能が不良であるとして「poor」で評価した。これらの結果を表1に示した。
【表1】
携帯用カバーガラスの孔あけ加工において、実施例No.1の板ガラス用工具は比較例No.1、No.2の工具よりも、寿命が20倍以上長くなった。実施例No.2の板ガラス用工具は比較例No.1、No.2の工具よりも、寿命が5倍以上長くなった。また、実施例No.1、No.2から被覆割合(個々のダイヤモンド砥粒の表面積を100%としたとき、ダイヤモンド砥粒が固着層に埋没する割合)を65%以上に設定することで、寿命がより効果的に長くなることがわかった。一方、比較例No.1、No.2から被覆割合を65%以上に設定しても、S1/Sが0.35に満たないため、寿命低下を抑制できないことがわかった。
【0054】
(実施例2)
実施例No.3では、
図6のシャンク30に対してロウ付け法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒11の粒径は9μmとした。工具基材には、ステンレス鋼を使用した。固着層12に用いられるろう材として、Cr、Fe、Si、B、Pを含むNiベースの合金を用いた。ダイヤモンド砥粒11及びろう材が付着した工具基材を、10
−5Torrの圧力で真空引きするとともに、真空中で20分間加熱した。加熱温度は、1000℃に設定した。
【0055】
実施例No.4では、
図6のシャンク30に対して2段ニッケル電着法によりダイヤ接合部40を形成した。ダイヤモンド砥粒11の粒径は9μmとした。工具基材には、ステンレス鋼を使用した。ダイヤ接合部40の構成は、実施形態2と同様であるから、説明を繰り返さない。
【0056】
比較例No.3では、
図6のシャンク30に対してニッケル電着法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒101の粒径は9μmとした。工具基材には、ステンレス鋼を使用した。
図7に図示するように固着層102の上端面はフラットであった。
【0057】
比較例No.4では、
図6のシャンク30に対してメタルボンド法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒101の粒径は9μmとした。工具基材には、ステンレス鋼を使用した。
図7に図示するように固着層102の上端面はフラットであった。
【0058】
これらの異なる板ガラス用工具を用いて、携帯用カバーガラスに形成された長孔の面取加工を行った。加工条件は以下の通りである。
ガラスサイズ:50mm×100mm×0.55mm
ガラス材質:化学強化ガラス
孔形状:1.0mm×9.8mmの長穴を面取し、1.2mm×10.0mmの長孔に加工
工具回転数:30000rpm
工具送り速度:60mm/分
切込量:0.10mm
【0059】
同一加工条件で穴あけ加工できた孔の数を評価し、工具寿命の比較を行なった。評価基準は実施例1と同様にした。これらの結果を表2に示した。
【表2】
携帯用カバーガラスの面取り加工において、実施例No.3の板ガラス用工具は比較例No.3、No.4の工具よりも、寿命が20倍以上長くなった。実施例No.4の板ガラス用工具は比較例No.3、No.4の工具よりも、寿命が5倍以上長くなった。また、実施例No.3、No.4から被覆割合(個々のダイヤモンド砥粒の表面積を100%としたとき、ダイヤモンド砥粒が固着層に埋没する割合)を65%以上に設定することで、寿命がより効果的に長くなることがわかった。一方、比較例No.3、No.4から被覆割合を65%以上に設定しても、S1/Sが0.35に満たないため、寿命低下を抑制できないことがわかった。
【0060】
(実施例3)
実施例No.5では、
図1のシャンク1に対してロウ付け法によりダイヤ接合部10を形成した。ダイヤモンド砥粒11の粒径は30μmとした。工具基材14には、ステンレス鋼を使用した。固着層12に用いられるろう材として、Cr、Fe、Si、B、Pを含むNiベースの合金を用いた。
【0061】
実施例No.6では、
図1のシャンク1に対して2段ニッケル電着法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒11の粒径は30μmとした。工具基材14には、ステンレス鋼を使用した。
【0062】
比較例No.5では、
図1のシャンク1に対してニッケル電着法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒101の粒径は30μmとした。工具基材には、ステンレス鋼を使用した。
図7に図示するように固着層102の上端面はフラットであった。
【0063】
比較例No.6では、
図1のシャンク1に対してメタルボンド法によりダイヤ接合部を形成した。ダイヤモンド砥粒101の粒径は30μmとした。工具基材には、ステンレス鋼を使用した。
図7に図示するように固着層102の上端面はフラットであった。
【0064】
これらの異なる板ガラス用工具を用いて、携帯用カバーガラスの孔あけ加工を行った。加工条件は以下の通りである。
ガラスサイズ:50mm×100mm×0.55mm
ガラス材質:化学強化ガラス
孔形状:1.0mm×9.8mmの長孔
工具回転数:30000rpm
板厚方向切込量:0.05mm
同一加工条件で穴あけ加工の工具送り速度を評価し、加工速度の比較を行なった。工具送り速度の限界は、それ以上送り速度をあげると、砥石が焼きつき、加工できなくなるか、もしくはチッピングが100um以上に粗大化する場合に限界の工具送り速度とした。加工速度が250mm/以上の場合には、加工速度性能が非常に良好であるとして「very good」で評価した。加工速度が150mm/分以上250mm/分未満の場合には、加工速度性能が良好であるとして「good」で評価した。加工速度が150mm/分未満の場合には、加工速度性能が不良であるとして「poor」で評価した。これらの結果を表3に示した。
【表3】
【0065】
携帯用カバーガラスの孔あけ加工において、実施例No.5の板ガラス用工具は比較例No.5、No.6の工具よりも、加工速度が3倍以上速くなった。実施例No.6の板ガラス用工具は比較例No.5、No.6の工具よりも、加工速度が2倍以上速くなった。