【実施例1】
【0020】
図1は、路面電車の分岐の一例であるシーサス(シーサスクロッシング、ダブルクロッシング)に本発明を適用した進路制御システムの概略構成図である。シーサスとは、特に、並列する2つの軌道(線路)の間に、両方の軌道に渡ることができるダイヤモンドクロッシングを配置し、2つの軌道とダイヤモンドクロッシングとの4つの接点部に転轍機を備える両渡りの軌道構造を言う。本発明は、車両が走行する軌道を複数有し、軌道間を乗り継いで走行する(渡る)ことができる軌道構成の場合に、車両の進路によっては、当該車両の走行に影響を受けない軌道が存在する点に着目し、運行の効率化を図るものである。
【0021】
図1において、進路制御システムは、ディテクションループ20と、信号機30、31と、転轍機40、41、42、43と、地上装置50と、表示端末51と、短小軌道回路60、61、62、63と、軌道回路装置64を有する。ディテクションループ20は、路面電車10の走行路を構成する軌道12、13間に配置されて、地上装置50に接続され、軌道12、13上を走行する路面電車10に搭載された車上装置11から送信される進路制御情報を受信アンテナ(図示せず)で受信し、受信した進路制御情報を地上装置50に伝送する狭域無線伝送手段として構成される。この際、車上装置11は、ディテクションループ20直上に加えて前後数メートルの範囲で、地上装置50側へ進路制御情報の伝達が可能となる。なお、ディテクションループ20の代わりに、無線LAN(Local Area Network)を用いることができる。
【0022】
信号機30、31は、路面電車10の走行路を構成する軌道12、13のうち各転轍機40、41、42、43を含む区間であって、当該区間を中心部とするてっ査鎖錠区間14近傍の領域のうち路面電車進入側又は路面電車退出側にそれぞれ設置されている。各転轍機40、41、42、43は、軌道12、13のうち、各軌道12、13と複数の分岐用軌道(てっ査鎖錠区間14の中心部で互いに交差する分岐用軌道)とを接続するための複数の分岐点にそれぞれ設置されている。地上装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェース等の情報処理資源を備えたコンピュータ装置で構成され、表示端末51と接続されており、CPUの処理による地上装置50の状態や制御結果を表示端末51に表示すると共に、ログの蓄積機構を有しており、仮に事故などが発生した場合、過去に遡って、地上装置50の制御結果を検証し、検証結果を表示端末51に表示することができる。
【0023】
地上装置50は、てっ査鎖錠区間14近傍の路面電車進入側又は路面電車退出側に設置された信号機30、31と、てっ査鎖錠区間14内の分岐点(軌道12、13の分岐点)に設置された転轍機40〜43と接続され、信号機30、31と転轍機40〜43の制御が可能である。地上装置50は、車上装置11から送信された進路制御情報に記録された指示に従って、転轍機40〜43の転換を実施する。てっ査鎖錠区間14の進入端に設置された信号機30、31は、路面電車10へてっ査鎖錠区間14への進入可否を現示する為の信号を点灯する。このとき、信号機30、31が、青信号を点灯して、進行可を現示する為には、転轍機40〜43の鎖錠(ロック)が条件となる。例えば、路面電車10に搭乗した運転士は、信号機30の現示に従い、路面電車10を運転し、信号機30が、青信号を点灯した場合に、路面電車10をてっ査鎖錠区間14内に進入させる。
【0024】
地上装置50は、軌道回路装置64を介して短小軌道回路60〜63と接続しており、てっ査鎖錠区間14における路面電車10の在線検知を実施する。短小軌道回路60〜63は、2本のレールで構成される各軌道12、13のうちてっ鎖錠区間14内の小区間軌道(4か所の小区間軌道)と、各小区間軌道両端(小区間軌道を構成する各レールの両端)に挿入された電気絶縁物から構成される。軌道回路装置64は、路面電車10の車軸と、短小軌道回路60を構成する小区間軌道(2本のレール)との間にループ電流が流れた場合、短小軌道回路60上に路面電車10が在線していることを検知し、この在線検知(検知情報)を地上装置50に送信する。以下同様に、軌道回路装置64は、短小軌道回路61〜63上の各々に路面電車10が在線していることを検知し、各在線検知(在線情報)を地上装置50に送信する。この際、軌道回路装置64と短小軌道回路60〜63は、てっ査鎖錠区間14における路面電車10の在線の有無を検知する在線検知装置を構成し、短小軌道回路60〜63は、在線検知手段を構成する。
【0025】
この際、短小軌道回路60、61は、てっ査鎖錠区間14内であって、軌道12上に設置される転轍機40、41を挟むように配置され、同様に短小軌道回路62、63は、てっ査鎖錠区間14内であって、軌道13上に設置される転轍機42、43を挟むように配置される。このようにして、短小軌道回路60〜63の各々は、路面電車のてっ査鎖錠区間14への進入または退出を検知する第1〜第4在線検知手段として構成される。
【0026】
各在線検知手段としては、てっ査鎖錠区間14に敷設されたループコイルやアクセルカウンタなどの他の在線検知手段を使用してもよい。てっ査鎖錠区間14に敷設されたループコイルは、路面電車10が、てっ査鎖錠区間14を走行する場合、磁場の変化から、てっ査鎖錠区間14における路面電車10の在線を検知することができる。アクセルカウンタは、てっ査鎖錠区間14内の軌道12、13に敷設され、路面電車10の車軸が、てっ査鎖錠区間14内の軌道12、13上を通過するのをカウントし、このカウント値から、てっ査鎖錠区間14における路面電車10の在線を検知することができる。なお、在線検知手段の検知結果を基に、転轍機40〜43のてっ査鎖錠が実施される。
【0027】
図2は、てっ査鎖錠区間と地上装置のデータ構造との関係を説明するための図であって、
図2(A)は、てっ査鎖錠区間における短小軌道回路と構成ブロックとの関係を示す構成図であり、
図2(B)は、地上装置で管理される管理テーブルの構成図である。
【0028】
図2(A)において、地上装置50では、てっ査鎖錠区間14における路面電車10の進路に関して、短小軌道回路60を開始点とし、短小軌道回路61を終了点とする進路1と、短小軌道回路63を開始点とし、短小軌道回路62を終了点とする進路2と、短小軌道回路60を開始点とし、短小軌道回路63を終了点とする進路3と、短小軌道回路63を開始点とし、短小軌道回路60を終了点とする進路4として管理されている。この際、シーサスとなるてっ査鎖錠区間14における短小軌道回路60〜63は、論理的に2つのブロック70、71に分かれて管理される。短小軌道回路60、61は、ブロック(第1ブロック)70に属し、短小軌道回路62、63は、ブロック(第2ブロック)71に属する。また、短小軌道回路60〜63は、路面電車10又は15が、てっ査鎖錠区間14外からてっ査鎖錠区間14内に進入する際に、路面電車10又は15が、在線したことを検知する場合、チェックイン軌道回路として機能し、路面電車10又は15が、てっ査鎖錠区間14内からてっ査鎖錠区間14外へ走行する際に、路面電車10又は15が、在線したことを検知する場合、チェックアウト軌道回路として機能する。
【0029】
図2(B)において、管理テーブル100は、地上装置50のメモリに格納されるテーブルであって、進路名称フィールド110と、チェックイン軌道回路フィールド120と、チェックアウト軌道回路フィールド130と、第1構成ブロックフィールド140と、第2構成ブロックフィールド150から構成される。管理テーブル100に記録される情報(データ)は、後述するように、強制在線判定と在線判定に使用される。
【0030】
進路名称フィールド110の各レコードには、てっ査鎖錠区間14における路面電車10又は15の進路を特定する名称に関する情報が記録される。例えば、進路名称フィールド110の各レコードには、「進路1」〜「進路4」が記録される。
【0031】
チェックイン軌道回路フィールド120の各レコードには、進路名称フィールド110のレコードに記録された「進路1」〜「進路4」に対応したチェックイン軌道回路の名称が記憶される。例えば、「進路1」と「進路3」にそれぞれ対応したチェックイン軌道回路として、「短小軌道回路60」が記録され、「進路2」と「進路4」にそれぞれ対応したチェックイン軌道回路として、「短小軌道回路63」が記録される。
【0032】
チェックアウト軌道回路フィールド130の各レコードには、進路名称フィールド110のレコードに記録された「進路1」〜「進路4」に対応したチェックアウト軌道回路の名称が記憶される。例えば、「進路1〜4」の各々に対応したチェックアウト軌道回路として、順に「短小軌道回路61、62、63、60」が記録される。
【0033】
第1構成ブロックフィールド140の各レコードには、進路名称フィールド110のレコードに記録された「進路1」〜「進路4」に属する第1構成ブロックの名称が記録される。例えば、「進路1」と「進路3」は、属する第1構成ブロックとして、「ブロック70」が記録され、「進路2」と「進路4」は、属する第1構成ブロックとして、「ブロック71」が記録される。
【0034】
第2構成ブロックフィールド150の各レコードには、進路名称フィールド110のレコードに記録された「進路1」〜「進路4」に属する第2構成ブロックの名称が記録される。例えば、「進路1」と「進路2」は、属する第2構成ブロックは存在しないので、「無し」が記録され、一方、「進路3」、「進路4」は、属する第2構成ブロックとして、各々「ブロック71」、「ブロック70」が記録される。
【0035】
図3は、てっ査鎖錠区間における進路と各設備の状態との関係を説明するための図であって、
図3(A)は、てっ査鎖錠区間における短小軌道回路と構成ブロックとの関係を示す構成図であり、
図3(B)は、てっ査鎖錠区間における各設備の状態を管理するための管理テーブルの構成図である。
【0036】
図3(A)は、路面電車10に対する進路として、「進路1」が設定され、路面電車10が、てっ査鎖錠区間14内の短小軌道回路60上に在線している状態を示す。
【0037】
管理テーブル200は、てっ査鎖錠区間14における各設備の状態を管理するためのテーブルであって、設備フィールド210と、状態フィールド220から構成される。設備フィールド210の各レコードには、てっ査鎖錠区間14における各設備の名称が記録される。例えば、設備フィールド210の各レコードには、「短小軌道回路60」〜「短小軌道回路63」、「ブロック70」〜「ブロック71」、「進路1」〜「進路4」が記録される。
【0038】
状態フィールド220の各レコードには、設備フィールド210の各レコードに記録された設備の状態を示す情報であって、進路に対応した、各短小軌道回路60〜63の状態として規定された在線検知情報が記録される。例えば、進路として、「進路1」が構成され、路面電車10が短小軌道回路60を含む領域に在線する場合、短小軌道回路60の状態として、「在線」が記録され、短小軌道回路61〜63の状態として、「非在線」が記録される。また、路面電車10に対する進路として、「進路1」が構成される場合、ブロック70、71に対する在線管理情報として、ブロック70には、「在線」が記録され、ブロック71には、「非在線」が記録される。さらに、路面電車10に対する進路として、「進路1」が構成される場合、状態フィールド220のレコードのうち、「進路1」に対応したレコードには、「設定有り」が記録され、「進路2」〜「進路4」に対応したレコードには、「設定無し」が記録される。
【0039】
路面電車10に対する進路として、「進路1」が設定され、「ブロック70」に対して「在線」が記録され、「ブロック71」に対して「非在線」が記録されている場合、開始点が短小軌道回路63で、終了点が短小軌道回路62となる「進路2」は、構成可能である。この場合、てっ査鎖錠区間14において、「進路1」と「進路2」は、互いに競合する進路ではないため、同時に設定することができ、複数路線(「進路1」を走行する路線と「進路2」を走行する路線)での路面電車のすれ違い運転が可能になる。
【0040】
路面電車10に対する進路として、「進路1」が設定される場合、地上装置50のCPUは、路面電車10がてっ査鎖錠区間14に進入する前に、ディテクションループ20から伝送された進路制御情報で指示された進路に従って転轍機40、43を制御して、進路制御情報で指示された進路1(第1進路)を構成し、進路1が構成されたことを条件に、進路制御情報で指示された「進路1」に対応して、在線検知装置の状態、即ち、各短小軌道回路60〜63の状態として規定された情報であって、管理テーブル200に記録された在線管理情報(「在線」又は「非在線」)と、各短小軌道回路60〜63から伝送された検知情報(「在線有り(在線)」又は「在線無し(非在線)」)とを比較し、両者の内容が一致し、比較結果が正常である場合、信号機30、31に対する制御を進行可とし、両者の内容が不一致であって、比較結果が異常である場合、信号機30、31に対する制御を進行不可とする。
【0041】
また、路面電車10に対する進路として、「進路1」が設定される場合、地上装置50のCPUは、路面電車10のてっ査鎖錠区間14内への進入時における短小軌道回路(第1在線検知手段)60に対する在線管理情報として、在線を記録し、他の短小軌道回路61、62、63に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10のてっ査鎖錠区間14からの退出時における短小軌道回路61に対する在線管理情報として、在線を記録し、他の短小軌道回路60、62、63に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10が、「進路1」に沿って走行する過程で、管理テーブル200に記録された在線管理情報と、各短小軌道回路60〜63の検知情報とを比較し、両者の内容が一致するか否かを判定する。
【0042】
図4は、てっ査鎖錠区間における進路と各設備の状態との関係を説明するための図であって、
図4(A)は、てっ査鎖錠区間における短小軌道回路と構成ブロックとの関係を示す構成図であり、
図4(B)は、てっ査鎖錠区間における各設備の状態を管理するための管理テーブルの構成図である。
【0043】
図4(A)において、路面電車10に対する進路として、「進路3」が設定され、路面電車10が、てっ査鎖錠区間14内の短小軌道回路60上に在線している状態にある。
【0044】
管理テーブル200は、てっ査鎖錠区間14における各設備の状態を管理するためのテーブルであって、設備フィールド210と、状態フィールド220から構成される。設備フィールド210の各レコードには、てっ査鎖錠区間14における各設備の名称が記録される。例えば、設備フィールド210の各レコードには、「短小軌道回路60」〜「短小軌道回路63」、「ブロック70」〜「ブロック71」、「進路1」〜「進路4」が記録される。
【0045】
状態フィールド220の各レコードには、設備フィールド210の各レコードに記録された設備の状態を示す情報であって、進路に対応した、各短小軌道回路60〜63の状態として規定された在線検知情報が記録される。例えば、進路として、「進路3」が構成され、路面電車10が短小軌道回路60を含む領域に在線する場合、短小軌道回路60の状態として、「在線」が記録され、短小軌道回路61〜63の状態として、「非在線」が記録される。また、路面電車10に対する進路として、「進路3」が構成される場合、ブロック70、71に対する在線管理情報として、ブロック70には、「在線」が記録され、ブロック71には、「在線」が記録される。さらに、路面電車10に対する進路として、「進路3」が構成される場合、状態フィールド220のレコードのうち、「進路1」〜「進路2」に対応したレコードには、「設定無し」が記録され、「進路3」に対応したレコードには、「設定有り」が記録され、「進路4」に対応したレコードには、「設定無し」が記録される。
【0046】
路面電車10に対する進路として、「進路3」が設定され、「ブロック70」に対して「在線」が記録され、「ブロック71」に対して「在線」が記録される場合、開始点が短小軌道回路63で、終了点が短小軌道回路62となる「進路2」又は、開始点が短小軌道回路63で、終了点が短小軌道回路60の「進路4」は、第1構成ブロック140又は第2構成ブロック150の中に、「在線」が記録された「ブロック70」又は「ブロック71」が存在するので、構成不可となる。また、「進路1」に対して、「進路2」と「進路4」は、互いに競合する進路であるので、同時設定することを不可とすることで、「進路1」も構成不可となる。なお、「進路1」は、第1構成ブロック140の中に、「在線」が記録された「ブロック70」が存在するので、構成不可となる。このように、路面電車10に対する進路として、「進路3」が設定され、「ブロック70」と「ブロック71」に対して「在線」が記録された場合、「進路3」のみを構成可とし、「進路1」、「進路2」及び「進路4」を構成不可とすることで、路面電車10が他の路面電車と衝突する可能性がある進路の構成を回避し、路面電車10の走行の安全性を確保することができる。
【0047】
この際、路面電車10に対する進路として、「進路3」が設定される場合、地上装置50のCPUは、路面電車10のてっ査鎖錠区間14内への進入時における短小軌道回路60に対する在線管理情報として、在線を記録し、他の短小軌道回路61、62、63に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10のてっ査鎖錠区間14からの退出時における短小軌道回路63に対する在線管理情報として、在線を記録し、他の短小軌道回路60、61、62に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10が、「進路3」に沿って走行する過程で、管理テーブル200に記録された在線管理情報と、各短小軌道回路60〜63の検知情報とを比較し、両者の内容が一致するか否かを判定する。
【0048】
なお、路面電車10に対する進路として、「進路2」が設定される場合、地上装置50のCPUは、路面電車10のてっ査鎖錠区間14内への進入時における短小軌道回路63に対する在線管理情報として、在線を記録し、他の短小軌道回路60、61、62に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10のてっ査鎖錠区間14からの退出時における短小軌道回路62に対する在線管理情報として、在線を記録し、他の短小軌道回路60、61、63に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10が、「進路2」に沿って走行する過程で、管理テーブル200に記録された在線管理情報と、各短小軌道回路60〜63の検知情報とを比較し、両者の内容が一致するか否かを判定する。
【0049】
また、路面電車10に対する進路として、「進路4」が設定される場合、地上装置50のCPUは、路面電車10のてっ査鎖錠区間14内への進入時における短小軌道回路63に対する在線管理情報として、在線を記録し、他の短小軌道回路60、61、62に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10のてっ査鎖錠区間14からの退出時における短小軌道回路60に対する在線管理情報として、在線を記録し、他の短小軌道回路61、62、63に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10が、「進路4」に沿って走行する過程で、管理テーブル200に記録された在線管理情報と、各短小軌道回路60〜63の検知情報とを比較し、両者の内容が一致するか否かを判定する。
【0050】
また、地上装置50のCPUは、短小軌道回路60と短小軌道回路61を含むブロック70を第1ブロックとし、短小軌道回路62と短小軌道回路63を含むブロック71を第2ブロックとして管理し、路面電車10に対する進路として、「進路1(第1進路)」が構成された場合、路面電車10のてっ査鎖錠区間14内への進入時及び路面電車10のてっ査鎖錠区間14からの退出時におけるブロック70に対する在線管理情報(管理テーブル200に記録される在線管理情報)として、在線を記録し、ブロック71に対する在線管理情報として、非在線を記録し、路面電車10に対する進路として、「進路2(第2進路)」が構成された場合、路面電車10のてっ査鎖錠区間14内への進入時及び路面電車10のてっ査鎖錠区間14からの退出時におけるブロック70に対する在線管理情報として、非在線を記録し、ブロック71に対する在線管理情報として、在線を記録し、路面電車10に対する進路として、「進路3(第3進路)」が構成された場合、路面電車10のてっ査鎖錠区間14内への進入時及び路面電車10のてっ査鎖錠区間14からの退出時におけるブロック70に対する在線管理情報として、在線を記録し、ブロック71に対する在線管理情報として、在線を記録し、路面電車10に対する進路として、「進路4(第4進路)」が構成された場合、路面電車10のてっ査鎖錠区間14内への進入時及び路面電車10のてっ査鎖錠区間14からの退出時におけるブロック70に対する在線管理情報として、在線を記録し、ブロック71に対する在線管理情報として、在線を記録し、路面電車10がてっ査鎖錠区間14内を走行する過程で、管理テーブル200に記録された在線管理情報と、各短小軌道回路60〜63の検知情報とを比較する。
【0051】
つまり、路面電車10は、自身の進路上の論理ブロックが非在線となっており、いわゆる「占有権」を全て取得できた場合に、進路制御が認められ、自身の進路上のいずれか1つの論理ブロックでも、既に「在線」となっており、占有権を取得できなかった場合は、構成不可となり、てっ査鎖錠区間への進入を禁止することで、安全性を担保できる。よって、並列する軌道の各々を通過しあうような、論理ブロックが互いに重複しない進路が設定される場合は、てっ査鎖錠区間に同時に2台の車両が存在しても安全上問題なく、効率よく車両運行を行うことができる。
【0052】
図5は、表示端末の表示例を示す構成図である。
図5において、表示端末51の表示画面52上には、軌道回路装置64から入力された情報が表示される。例えば、軌道回路装置64から、短小軌道回路60の状態が、「非在線」から「在線」に変化したことを示す情報が入力された場合、表示端末51の表示画面52上には、「20:56:38.618 軌道回路(入力) 設備種別(短小軌道回路60)変化(非在線→在線」が表示され、また、軌道回路装置64から、論理ブロック70で、強制在線が発生した旨の警報を示す情報が入力された場合、表示端末51の表示画面52上には、「20:56:38.625 警報 強制在線発生 発生設備(論理ブロック70)」が表示される。
【0053】
図6は、地上装置の強制在線判定処理の流れを表すフローチャートである。この処理は、地上装置50のCPUが、メモリに格納された強制在線判定処理プログラムを起動することによって開始される。
【0054】
ここで、地上装置50は、車上装置11が送信する進路制御情報の指示内容に従って進路を構成する。進路の構成が完了した後は、予め決められたチェックイン軌道回路以外の短小軌道回路が在線を検知した場合、車上装置11を搭載した路面電車10以外の進入、または、短小軌道回路の故障、あるいは、軌道回路装置64の故障が考えられるので、いずれにしても、システムとしては異常の状態である。このため、進路の構成が完了した後は、予め決められたチェックイン軌道回路以外の短小軌道回路が在線を検知した場合、てっ査鎖錠区間14に於ける安全を確保するために、強制的にてっ査鎖錠区間14を在線状態として、進路が構成されていても、信号機30及び信号機31を進行現示としない制御を実施する。この機能を強制在線判定と呼ぶ。
【0055】
まず、地上装置50のCPUは、車上装置11から送信された進路制御情報をディテクションループ20から受信した場合、受信した進路制御情報に進路の設定が有るか否かを判定する(S11)。ステップS11で進路の設定無しと判定した場合、地上装置50のCPUは、短小軌道回路60〜63のいずれかが、在線検知(在線有り)したか否かを判定する(S12)。地上装置50のCPUは、ステップS12で短小軌道回路60〜63のいずれも在線検知していない(在線無し)と判定した場合、てっ査鎖錠区間14における在線が無いとして、このルーチンの処理を終了し、ステップS12で短小軌道回路60〜63のいずれかが在線検知(在線有り)と判定した場合、進路の設定が無いのに、在線が検知されたことは異常であるので、強制在線有りの設定を行う(S13)。この際、地上装置50のCPUは、てっ査鎖錠区間14の構成ブロック(ブロック70、71)を強制在線有りの状態にし、その後、このルーチンでの処理を終了する。これにより、強制在線有りの状態に設定されたブロック70、71を含む進路を進行現示としない制御を実現する。例えば、地上装置50のCPUは、進路制御情報で指示された進路を構成する前に、短小軌道回路60〜63のいずれかが在線検知した場合、信号機30、31に対する制御を強制的に進行不可とする。
【0056】
一方、ステップS11で進路の設定有りと判定した場合、地上装置50のCPUは、受信した進路制御情報の指示内容に従って進路を構成し、不正な短小軌道回路によって在線検知が行われたか否かを判定(不正な短小軌道回路の在線有無の判定)する(S14)。ここで、不正な短小軌道回路の在線とは、チェックイン軌道回路が進路構成後、一度も在線検知していない時に、チェックイン軌道回路以外の短小軌道回路が在線した場合、または、チェックイン軌道回路が、進路構成後、1度は在線となり、非在線に変化した後、再度在線に変化した場合、または、チェックアウト軌道回路が在線から非在線へ変化した時に、チェックアウト軌道回路が非在線から在線と変化した場合、または、チェックイン軌道回路でもチェックアウト軌道回路でもない短小軌道回路が在線となった場合である。
【0057】
ステップS14で不正な在線無しと判定した場合、地上装置50のCPUは、てっ査鎖錠区間14における在線は進路に対して正常であるとして、このルーチンでの処理を終了する。
【0058】
一方、ステップS14で不正な在線有りと判定した場合、地上装置50のCPUは、てっ査鎖錠区間14における在線は進路に対して異常であるとして、強制在線有りの設定を行う(S15)。この際、地上装置50のCPUは、てっ査鎖錠区間14の構成ブロック(ブロック70、71)を強制在線有りの状態にし、その後、このルーチンでの処理を終了する。これにより、強制在線有りの状態に設定されたブロック70、71を含む進路を進行現示としない制御を実現する。
【0059】
図7は、地上装置の在線判定処理の流れを表すフローチャートである。この処理は、強制在線判定処理で強制在線無しの判定結果で処理を終了した場合(ステップS12で在線無しと判定された場合、又はステップS14で不正在線無しと判定された場合)に、地上装置50のCPUが、メモリに格納された在線判定処理プログラムを起動することによって開始される。
【0060】
まず、地上装置50のCPUは、管理テーブル220のブロック70、71の状態を参照して、前回在線無しか否かを判定し(S21)、このステップS21で前回在線無しと判定した場合、設定された進路に属するいずれかのチェックイン軌道回路の検知情報が非在線から在線に変化したか否かを判定する(S22)。このステップS22で変化無しと判定した場合、前回に続いて今回も在線がないので、地上装置50のCPUは、在線無しを設定し(S23)、その後、このルーチンでの処理を終了する。
【0061】
一方、ステップS22で変化有りと判定した場合、地上装置50のCPUは、設定された進路に属するいずれかのチェックイン軌道回路で路面電車10の在線を検知したとして、在線有りを設定し(S24)、その後、このルーチンでの処理を終了する。
【0062】
また、ステップS21で前回在線有りと判定した場合、即ち、前回チェックイン軌道回路で路面電車10の在線を検知した場合、地上装置50のCPUは、設定された進路に属するいずれかのチェックアウト軌道回路の検知情報が在線から非在線に変化したか否かを判定する(S25)。ステップS25で変化無しと判定した場合、路面電車10が、チェックイン軌道回路とチェックアウト軌道回路との間に在線しているとして、地上装置50のCPUは、在線有りを設定し(S26)、その後、このルーチンでの処理を終了する。
【0063】
一方、ステップS25で変化有りと判定した場合、即ち、設定された進路に属するいずれかのチェックアウト軌道回路の検知情報が在線から非在線に変化した場合、路面電車10が、チェックアウト軌道回路を介して、てっ査鎖錠区間14外に走行したことになるので、地上装置50のCPUは、在線無しを設定する(S27)。この場合、路面電車10が、すでにチェックイン軌道回路の領域とチェックアウト軌道回路の領域を通過し、チェックイン軌道回路とチェックアウト軌道回路の検知情報がそれぞれ非在線になっているので、地上装置50のCPUは、非在線を設定し、その後、このルーチンでの処理を終了する。
【0064】
この際、路面電車に対する進路として「進路1」が構成された場合、地上装置50のCPUは、ブロック70(第1ブロック)に対する在線管理情報として、在線を記録し、ブロック71(第2ブロック)に対する在線管理情報として、非在線を記録し、短小軌道回路60又は短小軌道回路61の検知情報が在線有りの場合、路面電車がてっ査鎖錠区間14内に在線しているとして管理する。
【0065】
また、路面電車に対する進路として「進路2」が構成された場合、地上装置50のCPUは、ブロック70に対する在線管理情報として、非在線を記録し、ブロック71に対する在線管理情報として、在線を記録し、短小軌道回路63又は短小軌道回路62の検知情報が在線有りの場合、路面電車がてっ査鎖錠区間14内に在線しているとして管理する。
【0066】
さらに、路面電車に対する進路として「進路3」又は「進路4」が構成された場合、地上装置50のCPUは、ブロック70、71に対する在線管理情報として、それぞれ在線を記録し、短小軌道回路60又は短小軌道回路61の検知情報が在線有りであって、短小軌道回路62又は短小軌道回路63の検知情報が在線有りの場合、路面電車がてっ査鎖錠区間14内に在線しているとして管理する。
【0067】
本実施例によれば、一対の軌道12、13の分岐点に設置される複数の転轍機40〜43を含むてっ査鎖錠区間14に対して、一方の軌道を走行する路面電車に対する進路が構成された場合、構成された進路と少なくともその一部が重複する部分を含む進路が、他方の軌道を走行する路面電車に対する進路として構成されるのを防止することができる。
【0068】
また、本実施例によれば、シーサスがある軌道12、13に於いて、一方の軌道を直進する路面電車がある場合でも、他方の軌道の路面電車の運行を妨げず、また、一方の軌道から他方の軌道へ路面電車を入れ換える場合、てっ査鎖錠区間14内に対して他の路面電車の進路の構成を防ぐことができ、てっ査鎖錠区間14に於ける路面電車の走行の安全性を高めることができる。
【0069】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、
図2において、路面電車10、13は、互いに逆向きに走行する例を示しているが、同じ向きに走行する場合にも適用可能である。その場合、てっ査鎖錠区間14に進入する側の短小軌道回路をチェックイン軌道回路、退出する側の短小軌道回路をチェックアウト軌道回路とした管理テーブル100を作成すればよい。
【0070】
その他、てっ査鎖錠区間14の中心部において、軌道12と軌道13にそれぞれ分岐点が1か所ずつ配置され、軌道12と軌道13が、1つの分岐用軌道を介して接続される構成のもの(片渡り線)にも本発明を適用することができる。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0071】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録して置くことができる。