本発明に係るラック軸の押し付け機構10は、ハウジング11と、圧縮コイルばね12と、ラック軸6をピニオン軸4cに押し付ける押し付け部材13と、押し付け部材13に外嵌される第1弾性体16及び第2弾性体17と、を備え、第2弾性体17は、第1弾性体16よりも収容室の底面側に位置し、ハウジング11の内周面には、押し付け部材13の外周面13eとで第1弾性体16を圧縮し、軸方向に同一径に形成された第1内周面11aと、押し付け部材13の外周面13eとで第2弾性体17を圧縮し、収容室Sの底面S1側に向って次第に拡径するテーパ状の第2内周面11bと、が形成されていることを特徴とする。
前記軸方向において前記第1内周面と前記第2内周面との境界から組み付け位置にある前記第1弾性体までの距離は、前記組み付け位置にある前記押し付け部材が前記収容室の底面に突き当たるまでの距離よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のラック軸の押し付け機構。
前記第2弾性体の自然長における断面形状の径は、前記第1弾性体の自然長における断面形状の径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラック軸の押し付け機構。
【背景技術】
【0002】
車両用ステアリング装置には、ピニオンギヤとラックギヤとを噛合させ、ステアリング操作に伴うピニオン軸の回転運動をラック軸の往復運動に変換するラックアンドピニオン式のものがある。
このようなラックアンドピニオン式のステアリング装置では、ピニオンギヤとラックギヤとのバックラッシュを低減させるため、ラック軸をピニオン軸に押し付けるラック軸の押し付け機構(ラックガイド機構)が設けられている(下記特許文献1の「ラック軸支持装置」を参照)。
なお、従来のラック軸の押し付け機構は、ラック軸に向って開口する収容室が形成されたハウジングと、収容室に収容された圧縮コイルばねと、圧縮コイルばねに付勢されてラック軸をピニオン軸に押し付ける押し付け部材(ラックガイド)と、を備えている。
【0003】
また、従来のラック軸の押し付け機構では、押し付け部材の外周面とハウジングの内周面とが接触して接触音が発生することを防止するため、押し付け部材の外周面に、例えばOリングなど、環状の弾性体が外嵌されている。
また、弾性体とハウジングの内周面との摩擦力を所定値に設定するため、押し付け部材の外周面とハウジングの内周面との間で圧縮される弾性体の圧縮量(締め代)を調整している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タイロッドを介してラック軸と車輪とが連結していることから、車輪に入力された外力がラック軸に伝達し、ラック軸がピニオン軸から離間する場合がある。このような場合、押し付け部材は、組み付け位置から収容室の底面側に移動し、その後、圧縮コイルばねの弾性力によってピニオン側に戻る。そして、押し付け部材がピニオンギヤ側に戻るとき、押し付け部材に押圧されるラックギヤがピニオンギヤに強く衝突し、比較的大きな打音が発生することがある。
【0006】
これに対し、弾性体の圧縮量(締め代)を大きくし、摩擦力を大きくすることが考えられるものの、押し付け部材がピニオン側に戻る際の速度(以下、「戻り速度」と称する)を大きく低減し、ラック軸に対する押し付け部材の追従性が損なわれる。よって、押し付け部材が収容室の底面側から組み付け位置に戻る場合に、押し付け部材の戻り速度が次第に低減するラック軸の押し付け機構の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、押し付け部材の戻り速度が次第に低減するラック軸の押し付け機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記する課題を解決するため、本発明に係るラック軸の押し付け機構は、ラック軸に向って開口する収容室が形成されたハウジングと、前記収容室に収容される圧縮コイルばねと、前記収容室に収容され、前記圧縮コイルばねに付勢されて前記ラック軸をピニオン軸に押し付ける押し付け部材と、前記押し付け部材に外嵌される環状の第1弾性体及び環状の第2弾性体と、を備え、前記第2弾性体は、前記第1弾性体よりも前記収容室の底面側に位置し、前記ハウジングの内周面には、前記押し付け部材の外周面とで前記第1弾性体を圧縮し、軸方向に同一径に形成された第1内周面と、前記押し付け部材の外周面とで前記第2弾性体を圧縮し、前記収容室の底面側に向って次第に拡径するテーパ状の第2内周面と、が形成されている。
【0009】
前記発明によれば、第2内周面がテーパ状になっていることから、第2弾性体の圧縮量(締め代)は、収容室の底面側から組み付け位置に向って次第に大きくなる。つまり、押し付け部材が組み付け位置に戻る場合、第2弾性体の弾性力が次第に大きくなり、第2弾性体と第2内周面との摩擦力も次第に大きくなる。このため、押し付け部材の戻り速度が次第に低減する。
【0010】
さらに、前記発明によれば、第2内周面がテーパ状になっていることから、第2弾性体に作用する第2内周面の抗力(反力)の向きは、第2内周面から押し付け部材の中心軸に向って収容室の底面側に傾倒している。
この抗力(反力)を押し付け部材の径方向と軸方向とに分解すると、第2弾性体が環状になっていることから径方向の分力は相殺され、軸方向(収容室の底面側)の分力が残り、押し付け部材に軸方向(収容室の底面側)に向う分力が作用する。
そして、押し付け部材が組み付け位置に戻る場合、第2弾性体に作用する第2内周面の抗力(反力)が次第に大きくなることから、押し付け部材に作用する軸方向(収容室の底面側)に向う分力も次第に大きくなる。このため、押し付け部材の戻り速度が次第に低減する。
以上から、摩擦力以外に軸方向(収容室の底面側)に向う分力も作用するため、押し付け部材の戻り速度は、組み付け位置に近接するにつれて大きく低減する。
【0011】
また、前記発明は、前記軸方向において前記第1内周面と前記第2内周面との境界から組み付け位置にある前記第1弾性体までの距離は、前記組み付け位置にある前記押し付け部材が前記収容室の底面に突き当たるまでの距離よりも長いことが好ましい。
【0012】
前記構成によれば、押し付け部材が収容室の底面側に移動しても、第1弾性体が第1内周面に当接している。よって、押し付け部材が組み付け位置に戻る場合、径方向外側にガタ付くことなく、スムーズに移動する。
【0013】
また、前記発明は、前記第2弾性体の自然長における断面形状の径は、前記第1弾性体の自然長における断面形状の径よりも大きくしてもよい。
【0014】
また、前記発明は、前記押し付け部材の外周面には、前記第1弾性体が嵌合する第1凹部と、前記第2弾性体が嵌合する第2凹部とが形成され、前記第2凹部の底面は、前記第1凹部の底面よりも径方向外側に位置してもよい。
【0015】
また、前記発明は、前記第2弾性体の断面形状は、矩形状であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、押し付け部材の戻り速度が次第に低減するラック軸の押し付け機構を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、実施形態では、本発明のラックガイド機構(ラック軸の押し付け機構)を電動パワーステアリング装置に適用した例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、油圧式のパワーステアリング装置や、マニュアルのステアリング装置に適用してもよい。
【0019】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール4a側の第1ラックギヤ5b及びアシスト側の第2ラックギヤ5cが形成されたラック軸6を有するステアリング機構2と、ラック軸6に補助操舵力を与える補助トルク機構3と、を備えたラックアシスト式の装置である。
【0020】
ステアリング機構2は、運転者が操作するステアリングホイール4aと、ステアリングホイール4aの操作により回転するステアリング軸4bと、ステアリング軸4bの下部側に図示しないトーションバーを介して設けられる第1ピニオン軸4cと、両端にタイロッド7,7を介して左右の操舵車輪8、8が連結されるラック軸6と、を備えている。
また、第1ピニオン軸4cの第1ピニオンギヤ5aは、ラック軸6の第1ラックギヤ5bに噛合している。そして、運転者がステアリングホイール4aを回転させると、ラック軸6が左方又は右方へ移動して操舵車輪8,8が操舵される。
【0021】
補助トルク機構3は、アシスト用モータ30と、ウォームギヤ機構31と、第2ピニオンギヤ32aが形成された第2ピニオン軸32と、を備え、第2ピニオン軸32の第2ピニオンギヤ32aがラック軸6の第2ラックギヤ5cに噛合している。
ウォームギヤ機構31は、アシスト用モータ30に軸着されたウォーム33と、ウォーム33に噛合するウォームホイール34と、を備えている。ウォームホイール34は第2ピニオン軸32に軸着されている。補助トルク機構3は、前記トーションバーに発生したトルクが図示しないトルクセンサで検出され、その検出したトルクに応じて図示しない制御装置によりアシスト用モータ30が駆動制御される。これにより、ウォームギヤ機構31および第2ピニオン軸32を介して、アシスト用モータ30の発生トルクが、補助操舵力としてラック軸6に伝達される。
【0022】
また、
図2、
図3に示すように、電動パワーステアリング装置1は、ステアリング機構2における第1ピニオンギヤ5aと第1ラックギヤ5bとのバックラッシュを低減させるために、ラックガイド機構10を備えている。
なお、本実施形態では、ラックガイド機構10をステアリング機構2における第1ピニオンギヤ5aと第1ラックギヤ5bとに適用した例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されない。補助トルク機構3における第2ピニオンギヤ32aと第2ラックギヤ5cとに対し、本発明に係るラックガイド機構10を適用しても良く、又は、ステアリング機構2と補助トルク機構3との両方に本発明に係るラックガイド機構10を適用しても良い。
【0023】
ラックガイド機構10は、ラック軸6に向かって開口する収容室Sが形成されたハウジング11と、収容室Sに収容される圧縮コイルばね12と、収容室Sに収容され、圧縮コイルばね12に付勢されてラック軸6を第1ピニオン軸4cに押し付けるラックガイド(押し付け部材)13と、収容室Sに収容される皿ばね14と、ラックガイド13に外嵌される第1Oリング16及び第2Oリング17と、を備える。
以下、方向を説明する場合、収容室Sが延在する方向を「軸方向」と称し、軸方向でラック軸6が配置された側を「一端側」と称し、その反対側を「他端側」と称する。
【0024】
ハウジング11は、第1ピニオン軸4cやラック軸6等の各種の構成部品を収納するためのものである。
ハウジング11の内周面には、一端側から他端側に向って、軸方向に同一径に形成された円筒状の第1内周面11aと、一端側から他端側に向って拡径するテーパ状の第2内周面11bと、ねじ溝面11cと、が形成されている。
【0025】
第1内周面11aは、ラックガイド13の外周面13eと協働して第1Oリング16を径方向に圧縮するための面である。
第2内周面11bは、ラックガイド13の外周面13eと協働して第2Oリング17を径方向に圧縮するための面である。
ねじ溝面11cは、ねじ溝が形成された面である。そして、ねじ溝面11cのねじ溝には、収容室Sの底壁を構成するスクリュー15が螺合している。
【0026】
スクリュー15は、ハウジング11のねじ溝面11cのねじ溝に螺合していることから、回転させるとねじ溝に案内されて一端側又は他端側に移動するようになっている。なお、スクリュー15の他端面に、スクリュー15を回転させるための治具(不図示)が係合可能な係合穴15aに形成されている。
【0027】
スクリュー15の組み付けにおいて、スクリュー15の一端面(以下、収容室Sの底面S1と称する)とラックガイド13の後述する穴部13bの底面13cとの距離(以下、「セット長」と称する)L1が、圧縮コイルばね12の自然長よりも短くなるように調整されている。
【0028】
圧縮コイルばね12は、一端がラックガイド13の底面13cに当接し、他端が収容室Sの底面S1に当接し、圧縮コイルばね12の軸方向の長さがセット長L1に圧縮されている。このため、圧縮コイルばね12の弾性力がラックガイド13に常時作用している。
【0029】
ラックガイド13は、略円柱状の部材であり、中心軸Oが軸方向に延びるように収容室Sに収容されている。
ラックガイド13の一端面13dは、ラック軸6に当接している。また、ラックガイド13の一端面13dは、ラック軸6の外周面に対応して略半円弧状に形成され、ラック軸6が上下方向に移動しないように規制されている。
【0030】
ラックガイド13の他端面13aには、スクリュー15に向って開口し、圧縮コイルばね12の一部が収容される穴部13bが形成されている。
ラックガイド13の穴部13bの底面13cには、圧縮コイルばね12が当接し、ラックガイド13が圧縮コイルばね12により一端側に付勢されている。このため、ラックガイド13は、ラック軸6を第1ピニオン軸4cに押し付け、第1ピニオンギヤ5aと第1ラックギヤ5bとのバックラッシュが低減される。以下、この状態におけるラックガイド13の位置をラックガイド13の組み付け位置と称する。
【0031】
皿ばね14は、一端がラックガイド13の他端面13aに当接し、他端が収容室Sの底面S1に当接している。ラックガイド13が組み付け位置にある場合において、皿ばね14は、自然長の状態となっている。
よって、
図3に示すように、ラックガイド13が収容室Sの底面S1側に移動した場合に皿ばね14が軸方向に圧縮し、ラックガイド13には、圧縮コイルばね12の弾性力の他に皿ばね14の弾性力も作用する。
また、ラックガイド13が組み付け位置から一端側にL2(
図2参照)分だけ移動すると、皿ばね14が押し潰されて平らになる。このため、皿ばね14を介してラックガイド13が収容室Sの底面S1に突き当たり、ラックガイド13の他端側への移動が規制される。
【0032】
第2Oリング17は、第1Oリング16よりも他端側(収容室Sの底面S1側)に位置している。
第1Oリング16と第2Oリング17は、組み付け前の断面形状が円形を呈する円環状のゴムである。また、第1Oリング16と第2Oリング17とは、組み付け前の断面形状の径が同一に形成されている。
【0033】
第1Oリング16と第2Oリング17との軸方向の位置ずれを防止するため、ラックガイド13の外周面13eには、径方向内側に窪み第1Oリング16が嵌合する第1凹部18と、径方向内側に窪み第2Oリング17が嵌合する第2凹部19と、が形成されている。
【0034】
第1凹部18は、ラックガイド13が組み付け位置にある場合において、第1内周面11aに対向する位置に形成されている。
図4に示すように、第1凹部18の底面18aと第1内周面11aとの距離L3は、組み付け前の第1Oリング16の断面形状の径よりも小さく、第1Oリング16が圧縮されている。
【0035】
また、ラックガイド13が組み付け位置にある場合において、第1凹部18の他端側の側面18bは、第1内周面11aと第2内周面11bとの境界Pよりも距離L4分だけ一端側に離れている。
ここで、距離L4は、組み付け位置にあるラックガイド13が収容室Sの底面S1側に向って移動できる距離L2よりも大きい(L4>L2)。よって、ラックガイド13が収容室Sの底面S1側に距離L2分だけ移動しても(
図4の破線を参照)、第1Oリング16が第1内周面11aに当接する。
【0036】
図2に示すように、第2凹部19は、ラックガイド13が組み付け位置にある場合において、第2内周面11bに対向する位置に形成されている。第2凹部19の底面19aは、第1凹部18の底面18aよりも径方向外側に位置している(
図2の補助線H参照)。
【0037】
図5に示すように、ラックガイド13が組み付け位置にある場合において、第2凹部19の底面19aと第2内周面11bとの距離L5は、組み付け前の第2Oリング17の断面形状の径よりも小さく、第2Oリング17が圧縮されている。
また、ラックガイド13が他端側に距離L2分だけ移動しても(
図5の破線を参照)、第2凹部19の底面19aと第2内周面11bとの距離L6は、組み付け前の第2Oリング17の断面形状の径よりも小さく、第2Oリング17が圧縮されている。
【0038】
つぎに、
図5を用いて、第2Oリング17の圧縮量(締め代)と第2Oリング17の弾性力の向きについて説明する。
【0039】
第2内周面11bがテーパ状に形成されていることから、第2内周面11bと第2凹部19の底面19aとの距離(L5、L6)は、収容室Sの底面S1から組み付け位置に向って次第に小さくなり、第2Oリング17の圧縮量(締め代)が次第に大きくなる。
このため、第2内周面11bに作用する第2Oリング17の弾性力(F11、F21)は次第に大きくなり、第2Oリング17に作用する第2内周面11bの抗力(F12、F22)も次第に大きくなる。
【0040】
また、第2内周面11bがテーパ状になっていることから、第2Oリング17の弾性力(F11、F21)の向きは、第2内周面11bに対して垂直方向であり、径方向外側に向って一端側に傾倒している。このため、第2Oリング17に作用する第2内周面11bの抗力(F12、F22)の向きは、第2内周面11bからラックガイド13の中心軸Oに向って他端側に傾倒している。
ここで、抗力(F12、F22)を、径方向内側に向う第1分力(F13、F23)と、軸方向に向う第2分力(F14、F24)とに分解すると、第1分力(F13、F23)は、第2Oリング17が環状を呈し、ラックガイド13の全周に作用していることから相殺され、第2分力(F14、F24)が残る。
この結果、ラックガイド13には、第2分力(F14、F24)が作用している。
なお、ラックガイド13が組み付け位置にある場合の第2分力(F24)は、圧縮コイルばね12の弾性力よりも小さくなるように設定されている。また、ラックガイド13に作用する第2分力(F24)を小さくする方法としては、弾性力の小さいOリングを使用することが挙げられる。
【0041】
つぎに、操舵車輪8,8に外力が入力され、ラック軸6が第1ピニオン軸4cから離間した場合について説明する。
【0042】
第1ピニオン軸4cからラック軸6が離間すると、ラックガイド13は、ラック軸6に押圧されて収容室Sの底面S1側に移動する。そして、
図3に示すように、ラックガイド13と収容室Sの底面S1との間に介在する圧縮コイルばね12及び皿ばね14が軸方向に圧縮され、圧縮コイルばね12の弾性力及び皿ばね14の弾性力がラックガイド13に作用する。
【0043】
ここで、
図4に示すように、ラックガイド13が収容室Sの底面S1側に距離L2移動しても、第1Oリング16が第1内周面11aに当接している。このため、ラックガイド13が圧縮コイルばね12等の弾性力によって組み付け位置に戻る場合、第1Oリング16が第1内周面11aを摺動し、ラックガイド13が径方向外側にガタ付くおそれがない。
【0044】
また、
図5に示すように、圧縮コイルばね12等の弾性力によってラックガイド13が組み付け位置に戻る場合、第2Oリング17が第2内周面11bを摺動し、第2Oリング17の圧縮量(締め代)は次第に増加する。このため、第2Oリング17に作用する第2内周面11bの抗力(F12、F22)が次第に大きくなる。
ここで、摩擦力(F15、F25)は、抗力(F12、F22)の大きさに比例するため(F=μN:Fは摩擦力、μは摩擦係数、Nは抗力)、第2内周面11bと第2Oリング17の摩擦力も次第に大きくなる(F25>F15)。よって、ラックガイド13の戻り速度が次第に低減する。
【0045】
さらに、圧縮コイルばね12等の弾性力によってラックガイド13が組み付け位置に戻る場合、第2Oリング17に作用する第2内周面11bの抗力(F12、F22)が次第に大きくなることから、第2分力(F14、F24)も次第に大きくなる(F24>F14)。よって、摩擦力(F15、F25)以外に、第2分力(F14、F24)も作用するため、ラックガイド13が組み付け位置に近接するにつれて、ラックガイド13の戻り速度は大きく低減する。
【0046】
以上、実施形態によれば、ラックガイド13が組み付け位置に戻る場合に、言い換えれば、ラック軸6が第1ピニオン軸4cに近接するにつれて、ラックガイド13の戻り速度が大きく低減するため、ラック軸6と第1ピニオン軸4cとの接触による打音の大きさが小さくなる。
また、ラックガイド13の戻り速度が次第に低減することから、ラックガイド13が組み付け位置に戻る場合にラック軸6と離間し難い。よって、ラック軸6に対するラックガイド13の追従性も確保できる。
【0047】
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
たとえば、実施形態では、第1弾性体及び第2弾性体として、ゴム製のOリングを使用しているが樹脂製のものであってもよい。
【0048】
また、実施形態では、第2凹部19の底面19aを、第1凹部18の底面18aよりも径方向外側に位置するように形成しているが、
図6、
図7に示すように、第1凹部(18A、18B)と第2凹部(19A、19B)を同じ深さに形成し、第2Oリング(17A、17B)の自然長における断面形状の径が、第1Oリング16の自然長における断面形状の径よりも大きいものを使用してもよい。また、
図6に示すように、第2Oリング17Aの断面形状が矩形状のものを使用しても良い。
【0049】
また、実施形態では、ラックガイド13が収容室Sの底面側に移動した場合であっても、常に第2Oリング17が第2内周面11bに当接しているが、本発明はこれに限定されない。
本発明において、ラックガイド13が組み付け位置に戻る場合、第2Oリング17の圧縮量(締め代)を次第に大きくできればよく、ラックガイド13が組み付け位置に戻る途中から第2内周面11bに当接するようにしてもよい。
【0050】
また、ラックガイド13が組み付け位置にある場合において、第2凹部19の底面19aと第2内周面11bとの距離L5を、第1凹部18の底面18aと第1内周面11aとの距離L3よりも小さくしてもよい。これによれば、ラックガイド13が組み付け位置に戻った場合において、抵抗力F11と第2分力(F14、F24)とが大きくなり、ラック軸6と第1ピニオン軸4cとの接触による打音の大きさをより小さくすることができる。