特開2016-147846(P2016-147846A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-147846有機エレクトロルミネセント装置用の化合物及びこの化合物を用いる有機エレクトロルミネセント装置
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  • 特開2016147846-有機エレクトロルミネセント装置用の化合物及びこの化合物を用いる有機エレクトロルミネセント装置 図000084
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-147846(P2016-147846A)
(43)【公開日】2016年8月18日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセント装置用の化合物及びこの化合物を用いる有機エレクトロルミネセント装置
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/88 20060101AFI20160722BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160722BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20160722BHJP
   C07D 403/10 20060101ALI20160722BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20160722BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160722BHJP
【FI】
   C07D209/88CSP
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   C07D403/04
   C07D403/10
   C07D487/04 137
   C09K11/06 660
   C09K11/06 690
   C09K11/06 620
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2016-1699(P2016-1699)
(22)【出願日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】14/591,006
(32)【優先日】2015年1月7日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】516008349
【氏名又は名称】機光科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】顏 豐文
(72)【発明者】
【氏名】張 正▲浩▼
【テーマコード(参考)】
3K107
4C050
4C063
4C204
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC14
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD64
3K107DD66
3K107DD67
3K107DD68
3K107DD69
3K107DD75
3K107DD76
3K107DD78
3K107DD80
3K107DD86
4C050AA01
4C050AA08
4C050BB04
4C050CC04
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH04
4C063AA01
4C063BB02
4C063BB06
4C063CC43
4C063DD08
4C063EE05
4C204BB04
4C204BB05
4C204CB26
4C204EB01
4C204FB08
4C204FB16
4C204GB03
4C204GB32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な性能を表す有機エレクトロルミネセント装置を与える化合物の提供。
【解決手段】式(I)又は式(II)で示す化合物。

(Aはフェニル或いはナフチル;X〜XはO、S、C(R)(R)、N(Ar)等の2価基;pは0〜10の整数;qは0〜4の整数;R〜R及びArはH、アルキル、アリール、ヘテロアルール等。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)又は式(II)で示す構造を有する化合物において、
【化1】
ただし、Aが置換又は非置換のフェニル基、或いは置換又は非置換のナフチル基であり、X〜XがそれぞれO、S、C(R)(R)、N(Ar)、Si(R)(R)からなる群から選ばれた原子又は基の2価の架橋(bridge)であり、pが0〜10の整数であり、qが0〜4の整数であり、R〜R及びArがそれぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアリール基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアラルキル基、炭素数3〜50の置換又は非置換のヘテロアリール基からなる群から選ばれたものである化合物。
【請求項2】
下記の式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(I-4)、式(II-1)、式(II-2)、式(II-3)又は式(II-4)で示す構造を含み、
【化2】
【化3】
ただし、R〜R48がそれぞれ水素原子、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアリール基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアラルキル基、炭素数3〜50の置換又は非置換のヘテロアリール基からなる群から選ばれたものであり、pが0〜10の整数であり、qが0〜4の整数であり、Ar〜Ar12の構造が下記の式(III)で表され、
【化4】
ただし、Lが単結合であり、環構成炭素数6〜30の置換又は非置換のアリーレン基、或いは環構成炭素数3〜30の置換又は非置換のヘテロアリーレン基であり、Yが置換又は非置換のフェニル基、置換又は非置換のナフチル基、置換又は非置換のビフェニル基、置換又は非置換のカルバゾール基、置換又は非置換のビスカルバゾール基、置換又は非置換のジベンゾフラン基、置換又は非置換のビスベンゾチアゾール基、置換又は非置換のトリアジン基、置換又は非置換のジアジン基、置換又は非置換のフェナントロリン基、置換又は非置換のジヒドロアクリジン基、置換又は非置換のフェノチアジン基、置換又は非置換のフェノキサジン基又は置換又は非置換のジヒドロフェナジン基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(III)の化合物のLは、以下からなる群から選ばれたものを含む請求項2に記載の化合物。
【化5】
【請求項4】
前記式(III)化合物のYは、以下からなる群から選ばれたものを含む請求項2又は3に記載の化合物。
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項5】
前記化合物は、下記構造の化合物からなる群から選ばれたものを含む請求項1〜4の何れか1項に記載の化合物。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【請求項6】
陰極及び陽極からなる1対の電極を含み、前記1対の電極の間に、請求項1に記載の化合物を含有する少なくとも1つの材料層を含む有機エレクトロルミネセント装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの材料層は、発光層である請求項6に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【請求項8】
前記発光層は、請求項1に記載の化合物を燐光ホスト材料又はウォームスタート遅延蛍光ホスト材料とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【請求項9】
前記発光層は、更に、燐光ドープ剤又はウォームスタート遅延蛍光ドープ剤を含む請求項7又は8に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【請求項10】
前記燐光ドープ剤は、イリジウム(Ir)錯体である請求項9に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの材料層は、正孔遮断層である請求項6〜10の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの材料層は、正孔遮断・電子輸送層である請求項6〜11の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【請求項13】
前記発光層は、下記化合物を含む請求項7〜10の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【化18】
【請求項14】
前記少なくとも1つの材料層は、下記化合物を含む電子輸送層である請求項6〜13の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【化19】
【化20】
【請求項15】
前記電子輸送層は、リチウム又は8-ヒドロキシキノリンリチウムを含む請求項14に記載の有機エレクトロルミネセント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びこの化合物を用いる有機エレクトロルミネセント(本明細書で「有機EL」という)装置に関し、特に、式(I)又は式(II)の化合物を有し、及びこの化合物を燐光発光ホスト(phosphorescent emitting host)、正孔遮断層(hole blocking layer;HBL)又は正孔遮断・電子輸送層(hole blocking electron transport layer;HBETL)とする有機EL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセント(有機EL)は、発光層が有機化合物からなるフィルムであり、対応する電流で光を発する発光ダイオード(LED)である。有機化合物の発光層が2つの電極の間に挟まれる。有機ELは、高照明、低重量、超薄形、バックライト必要なくて自己照明でき、低消費、広視野角、高コンタクト、製造方法が簡単で、また反応が速い特性を具備しているので、フラットパネルディスプレイに適用される。
【0003】
有機材料エレクトロルミネセントに対する初めての観察は、1950年代初期に、アンドレベナノース(Andre Bernanose)が同僚と共にフランスのナンシー大学(Nancy-University)で行われていた。ニューヨーク大学(New York University)のマーティン・ポープ(Martin Pope)が同僚と共に、1963年に、初めて真空下でアントラセンテトラセンのドープした単一の純粋な結晶体において直流電気(DC)によるエレクトロルミネセントを観察した。
【0004】
初めてのダイオード装置は、1987年にイーストマン・コダック(Eastman Kodak)の▲とう▼青雲(Ching W.Tang)及びスティーブン・ヴァン・スライク(Steven Van Slyke)により発表される。この装置は、離間して設けられる正孔輸送層及び電子輸送層を有する二重構造を使用するため、作動電圧が低下し、効率が改善され、現代の有機ELの検討及び装置の生産を牽引している。
【0005】
典型的には、有機ELは、2つの電極の間にある有機材料層からなり、正孔輸送層(hole transporting layer;HTL)、発光層(emitting layer;EML)、電子輸送層(electron transporting layer;ETL)を含む。有機ELの基本的なメカニズムとしては、キャリア(carrier)の注入、キャリアの輸送、再結合及び発光用の励起子(exciton)の形成に関わる。外部電圧が有機発光装置に印加されると、電子及び正孔は、それぞれ陰極及び陽極から注入され、電子が陰極から最低空軌道(lowest unoccupied molecular orbital;LUMO)に注入され、正孔が陽極から最高被占軌道(highest occupied molecular orbital;HOMO)に注入される。電子と正孔とが発光層において再結合すると、励起子を形成してから発光する。発光分子がエネルギーを吸収して励起状態に達すると、電子と正孔とのスピン組み合せによって、励起子は、一重項状態又は三重項状態となる。75%の励起子は、電子と正孔との再結合によって、三重励起状態に達する。三重項状態減衰は、スピン禁制(self forbidden)である。そのため、蛍光エレクトロルミネセント装置は、25%の内部量子効率しか有さない。蛍光エレクトロルミネセンス装置に比べ、燐光有機発光ダイオードは、スピン軌道相互作用(spin-orbit interaction)によって、一重項状態と三重項状態との項間交差(intersystem crossing)を促進できるので、一重項状態及び三重項状態の両者からの発光を取得し、エレクトロルミネセント装置の内部量子効率が25%から100%まで上昇する。
【0006】
安達教授(Adachi)及び同僚は、逆項間交差(reverse intersystem crossing;RISC)メカニズムによって、スピン禁制の三重項状態の励起子を一重項状態のエネルギー準位に転化して、励起子形成を高効率化させる将来性のある手段である、熱活性化遅延蛍光(thermally activated delayed fluorescence;TADF)メカニズムに合わせた新規の蛍光有機EL装置を開発した。
【0007】
三重項状態及び一重項状態の励起子が何れも有機ELに利用されることができる。一重項状態の励起子に比べると、三重項状態の励起子は、長いライフタイムや拡散距離を有するので、燐光有機ELは、一般的に、発光層(emitting layer;EML)と電子輸送層(electron transporting layer;ETL)との間に、非典型的なETLではなく、正孔遮断層(HBL)又は正孔遮断力を有する電子輸送層(つまり、HBETL)を別に設ける必要がある。HBL又はHBETLの使用は、注入された正孔と電子との再結合を限制し、EML内で発生した励起子を弛緩(relaxation)させて、装置の効率を改善することを目的とする。これらの作用を達成するために、正孔遮断材料には、正孔のEMLからETLへの輸送、及び電子のETLからEMLへの伝送を遮断できるHOMOとLUMOエネルギー準位を有さなければならず、また材料には良好な熱安定性及び電化学安定性が必要である。
【0008】
電子又は正孔を効果的に輸送し、正孔を遮断し、また良好な熱安定性及び高発光効率を有する有機EL材料は、いつまでも必要である。上記の原因で、本発明の目的は、従来技術の前記問題を解決し、熱安定性、高輝度及び長い半減期時間等の点でもかなり優れた有機EL装置を提供することにある。本発明は、式(I)又は式(II)で示す有機材料を開示し、燐光発光ホスト、電子輸送層又は正孔遮断・電子輸送層の材料として用いられ、良好な電荷キャリア移動性と良い操作耐用性を有し、駆動電圧及び消費パワーを低下させ、有機EL装置の効率及び半減期時間を改善する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有機EL装置の燐光発光ホスト、正孔遮断層又は正孔遮断・電子輸送層として用いられる化合物を提供する。この化合物は、例えば、効率が低く、半減期時間が短く、及び高消費のような、従来技術の材料の欠点を解決できる。
【0010】
本発明の一目的は、有機EL装置の燐光発光ホスト、正孔遮断層又は正孔遮断・電子輸送層として用いられる化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、工業での実際適用が経済的利点を有する。本発明によると、有機EL装置に用いられる有機材料を開示する。前記有機材料は、下記の式(I)又は式(II)で示す化合物を含む。
【0012】
【化1】
【0013】
ただし、Aが置換又は非置換のフェニル基(phenyl group)、又は置換又は非置換のナフチル基(naphthyl group)を表し、X〜Xがそれぞれ独立してO、S、C(R)(R)、N(Ar)及びSi(R)(R)からなる群から選ばれた原子又は基の2価の架橋(divalent bridge)を表し、pが0〜10の整数を表し、qが0〜4の整数を表し、R〜R及びArがそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基(alkyl group)、炭素数6〜50の置換又は非置換のアリール基(aryl group)、炭素数6〜50の置換又は非置換のアラルキル基(aralkyl group)、及び炭素数3〜50の置換又は非置換のヘテロアリール基(heteroaryl group)からなる群から選ばれたものを表す。
【0014】
好ましくは、本発明の化合物は、下記の式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(I-4)、式(II-1)、式(II-2)、式(II-3)又は式(II-4)で示す構造を含む。
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
ただし、R〜R48がそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアリール基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアラルキル基、及び炭素数3〜50の置換又は非置換のヘテロアリール基からなる群から選ばれたものを表し、pが0〜10の整数であり、qが0〜4の整数であり、Ar〜Ar12の構造が下記の式(III)で表される。
【0018】
【化4】
【0019】
ただし、Lが単結合であり、環構成炭素数6〜30の置換又は非置換のアリーレン基、或いは環構成炭素数3〜30の置換又は非置換のヘテロアリーレン基であり、Yが置換又は非置換のフェニル基、置換又は非置換のナフチル基、置換又は非置換のビフェニル基、置換又は非置換のカルバゾール基、置換又は非置換のビスカルバゾール基、置換又は非置換のジベンゾフラン基、置換又は非置換のビスベンゾチアゾール基、置換又は非置換のトリアジン基、置換又は非置換のジアジン基、置換又は非置換のフェナントロリン基、置換又は非置換のジヒドロアクリジン基、置換又は非置換のフェノチアジン基、置換又は非置換のフェノキサジン基又は置換又は非置換のジヒドロフェナジン基である。
【0020】
好ましくは、Lが以下からなる群から選ばれたものを含んでもよい。
【0021】
【化5】
【0022】
好ましくは、Yが以下からなる群から選ばれたものを含んでもよい。
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
本発明の別の目的は、陰極及び陽極からなる1対の電極を含み、前記1対の電極の間に少なくとも1つの材料層を含み、前記少なくとも1つの材料層が式(I)又は式(II)で示す化合物を含有する有機エレクトロルミネセント装置を提供することにある。
【0027】
好ましくは、前記有機エレクトロルミネセント装置の少なくとも1つの材料層は、正孔遮断層である。
【0028】
好ましくは、前記有機エレクトロルミネセント装置の少なくとも1つの材料層は、正孔遮断・電子輸送層である。
【0029】
好ましくは、前記有機エレクトロルミネセント装置の少なくとも1つの材料層は、発光層である。
【0030】
好ましくは、前記発光層は、式(I)又は式(II)で示す化合物を燐光ホスト材料又はウォームスタート遅延蛍光ホスト材料とする。
【0031】
好ましくは、前記発光層は、下記化合物を含む。
【0032】
【化9】
【0033】
好ましくは、前記発光層は、更に、燐光ドープ剤、ウォームスタート遅延蛍光ドープ剤、又は他の代わりのドープ剤を含む。
【0034】
好ましくは、前記燐光ドープ剤は、イリジウム(Ir)錯体、又は他の代替可能な物質であってもよい。
【0035】
好ましくは、前記少なくとも1つの材料層は、下記化合物を含む電子輸送層であってもよい。
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
好ましくは、前記少なくとも1つの材料層は、リチウム、8-ヒドロキシキノリンリチウムやその組み合わせ、又は他の代替可能な物質を含む電子輸送層であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明に係る有機EL装置の一実施例の模式図である。6は透明電極であり、13は金属電極であり、7は6に堆積された正孔注入層であり、8は7に堆積された正孔輸送層であり、9は8に堆積された蛍光又は燐光発光層であり、10は9に堆積された正孔遮断層であり、11は10に堆積された電子輸送層であり、12は11に堆積された電子注入層である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、前記化合物及びこの化合物を使用した有機EL装置を研究しようとする。以下、本発明を十分に理解させるために、生産、構造及び要素の詳細を提供する。もちろん、本発明の適用は、当業者の熟知する特定な細部に限定されない。一方、一般的に周知される常用元素や過程は、本発明で詳しく説明されず、特に必要しない限り、本発明を制限するものでもない。以下、本発明のある好適な実施例をより詳しく説明する。しかし、認識すべきなのは、本発明は、明確に述べられた実施例以外に、様々な他の実施例に広く実践されることができる。つまり、本発明は、他の実施例にも広く適用される。特許請求の範囲で特に指定されない以外、本発明の範囲が明確に制限されない。
【0041】
本発明の第1の実施例において、有機EL装置とする燐光発光ホスト、正孔遮断層又は正孔遮断電子輸送層の化合物を開示する。前記材料は、下記の式(I)又は式(II)で示される。
【0042】
【化12】
【0043】
ただし、Aが置換又は非置換のフェニル基、又は置換又は非置換のナフチル基を表す。X〜Xが独立してO、S、C(R)(R)、N(Ar)及びSi(R)(R)からなる群から選ばれた原子又は基の2価の架橋を表す。pが0〜10の整数を表す。qが0〜4の整数を表す。R1〜R、及びArがそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアリール基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアラルキル基、及び炭素数3〜50の置換又は非置換のヘテロアリール基からなる群から選ばれたものを表す。
【0044】
本発明によると、好適な実施例において、この化合物は、下記の式(I-1)〜式(I-4)又は式(II-1)〜式(II-4)で示してもよい。
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
ただし、R〜R48がR1と同様に定義され、p、qが上記の式(I)及び式(II)について述べられたものと同様に定義され、Ar〜Ar12が下記の式(III)で表す。
【0048】
【化15】
【0049】
ただし、Lが単結合を表し、環構成炭素数6〜30の置換又は非置換のアリーレン基(arylene group)、或いは環構成炭素数3〜30の置換又は非置換のヘテロアリーレン基(heterarylene group)である。Yが置換又は非置換のフェニル基、置換又は非置換のナフチル基、置換又は非置換のビフェニル基(biphenyl group)、置換又は非置換のカルバゾール基(carbazolyl group)、置換又は非置換のビスカルバゾール基(biscarbazolyl group)、置換又は非置換のジベンゾフラン基(dibenzofuranyl group)、置換又は非置換のビスベンゾチアゾール基(dibenzothiophenyl group)、置換又は非置換のトリアジン基(triazinyl group)、置換又は非置換のジアジン基(diazinyl group)、置換又は非置換のフェナントロリン基(phenanthroline group)、置換又は非置換のジヒドロアクリジン基(dihydroacridine group)、置換又は非置換のフェノチアジン基(phenothiazine group)、置換又は非置換のフェノキサジン基(phenoxazine group)、置換又は非置換のジヒドロフェナジン基(dihydrophenazine group)を表す。
【0050】
好適な実施例において、上記の式(III)化合物によると、Lは、下記のように示す基からなってもよい。
【0051】
【化16】
【0052】
好適な実施例において、上記の式(III)化合物によると、Yは、下記のように示す基からなってもよい。
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
一実施例において、本発明の材料が下記のように示される。
【0057】
【化20】
【0058】
【化21】
【0059】
【化22】
【0060】
【化23】
【0061】
【化24】
【0062】
【化25】
【0063】
【化26】
【0064】
【化27】
【0065】
【化28】
【0066】
【化29】
【0067】
【化30】
【0068】
【化31】
【0069】
本発明に係る化合物の詳細な調製については、例示的な実施例によって説明することができるが、本発明はこれらに制限されない。実施例1〜5に本発明の化合物のある実施例の調製形態が示される。実施例6〜7に有機EL装置の製造や有機EL装置のテスト報告のI-V-B、半減期時間が示される。
【0070】
実施例1
2-(ビフェニル-2-イル)-7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン(2-(biphenyl-2-yl)-7-bromo-9,9-dimethyl-9H-fluorene)の合成
【0071】
【化32】
【0072】
35.2g(100mmol)の2,7-ジブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン(2,7-dibromo-9,9-dimethyl-9H-fluorene)、21.8g(110mmol)のビフェニル-2-イルボロン酸(biphenyl-2-yl boronicacid)、2.31g(2mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(tetrakis(triphenylphosphine)palladium;Pd(PPh)、75mlの2M炭酸ナトリウム(NaCO)、150mlのエタノール(EtOH)及び300mlのトルエン(toluene)の混合物に対して脱気処理を行って窒素ガスに置き、その後で、100℃で12時間加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。有機層を酢酸エチル(ethylacetate)及び水で抽出し、無水硫酸マグネシウム(anhydrous magnesium sulfate)で乾燥させ、溶剤を除去し、シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで残物を精製させて、白い固体の生産物(26.8g、63.0mmol、収率63%)を得た。
【0073】
12-ブロモ-10,10-ジメチル-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン(12-bromo-10,10-dimethyl-10H-indeno[2,1-b]triphenylene)の合成
【0074】
【化33】
【0075】
脱気処理され且つ窒素ガスの充填された3000mlの三つ口フラスコにおいて、26.8g(60mmol)の2-(ビフェニル-2-イル)-7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレンを無水ジクロロメタン(anhydrous dichloromethane)(1500ml)に溶解させ、その後で97.5g(600mmol)の塩化鉄(III)(Iron(III)chloride)を加え、混合物を1時間攪拌した。混合物に500mlのメタノールを加え、有機層を分離させて、真空中で溶剤を除去した。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(へキサン-ジクロロメタン)で残物を精製させ、白い固体(10.7g、25.3mmol、収率40%)を得た。HNMR(CDCl,400MHz):化学シフト(ppm)8.95(s,1H),8.79〜8.74(m,2H),8.69〜8.68(m,3H),7.84(d,J=8.0Hz,1H),7.72〜7.65(m,5H),7.57(d,J=8.0Hz,1H),1.66(s,6H)。
【0076】
2-(10,10-ジメチル-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン-12-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2-(10,10-dimethyl-10H-indeno[2,1-b]triphenylen-12-yl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane)の合成
【0077】
【化34】
【0078】
10.7g(25.3mmol)の12-ブロモ-10,10-ジメチル-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン、7.7g(30.3mmol)のビス(ピナコラト)ジボロン(bis(pinacolato)diboron)、0.3g(0.26mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、7.4g(75.4mmol)の酢酸カリウム(potassiumacetate)及び300mlの1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)の混合物に対して脱気処理を行って窒素ガスに置き、その後で90℃で16時間加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。有機相を分離させ、酢酸エチル及び水によって洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後で、真空中で溶剤を除去した。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(へキサン-ジクロロメタン)で残物を精製させ、薄い黄色い固体の生産物(9.5g、20.2mmol、収率80%)を得た。HNMR(CDCl,400MHz):化学シフト(ppm)9.03(s,1H),8.81(d,J=7.84Hz,1H),8.77(d,J=7.88Hz,1H),8.70〜8.67(m,3H),8.02〜7.93(m,3H),7.71〜7.67(m,4H),1.69(s,6H),1.42(s,12H)。
【0079】
10,10-ジメチル-12-(2-ニトロフェニルスルフェニル)-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン(10,10-dimethyl-12-(2-nitrophenyl)-10H-indeno[2,1-b]triphenylene)の合成
【0080】
【化35】
【0081】
9.5g(20.2mmol)の2-(10,10-ジメチル-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン-12-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2-(10,10-dimethyl-10H-indeno[2,1-b]triphenylen-12-yl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane)、4.3g(21mmol)の1-ブロモ-2-ニトロベンゾール(1-bromo-2-nitrobenzene)、0.44g(0.4mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、30mlの2M炭酸カルシウム、40mlのエタノール及び80mlのトルエンの混合物に対して脱気処理を行って窒素ガスに置き、その後で90℃で一夜加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。溶液を250mlの酢酸エチル及び1000mlの水で抽出した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、減圧で溶剤を蒸発させた。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(Hx-EA)で残物を精製させることで、5.5g(収率58%)の生産物を得た。
【0082】
中間物Iの合成
【0083】
【化36】
【0084】
5.5g(11.8mmol)の10,10-ジメチル-12-(2-ニトロフェニルスルフェニル)-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン、30mlの亜りん酸トリエチル(triethylphosphite)、15mlの1,2-ジクロロベンゼン(1,2-dichloro-benzene)の混合物を窒素ガスに置き、その後で160℃で一夜加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。その後で200mlのメタノール(MeOH)を加えると共に、攪拌し沈殿物を吸引濾過した。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(Hx-CHCl)で精製させて、1.9g(収率37%)の黄色い生産物を得た。
【0085】
実施例1の合成
【0086】
【化37】
【0087】
窒素ガスの条件で、1.9g(4.4mmol)の中間物I及び50mlのジメチルホルムアミド(N,N-Dimethylmethanamide;DMF)を混合させ、混合物に0.85g(35.2mmol)の水素添加ナトリウム(NaH)を緩やかに加えた。室温で混合物を30分間攪拌した。その後で混合物に3.5g(13.2mmol)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(2-chloro-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine)を緩やかに加えた。室温で混合物を24時間攪拌した。反応が終了すると、200mlの冷水を加えると共に、攪拌し沈殿物を吸引濾過した。酢酸エチルで再結晶を行って、1.4g(収率48%)の黄色い生産物を得た。MS(m/z,FAB+):664.5;HNMR(CDCl,400MHz):化学シフト(ppm)9.02(s,1H),8.83〜8.75(m,5H),8.54〜8.48(m,4H),8.42〜8.23(m,2H),8.07〜7.98(m,6H),7.87〜7.81(m,2H),7.76〜7.51(m,5H),7.38〜7.28(d,J=8.0Hz,1H),1.83(s,6H)。
【0088】
実施例2
中間物IIの合成
【0089】
【化38】
【0090】
15.7g(36.2mmol)の中間物I、10.2g(36.2mmol)の1-ブロモ-3-ヨードベンゼン(1-bromo-3-iodobenzene)、17.1g(90mmol)のヨウ化銅(I)(copper(I)iodide)、19.1g(90mmol)のリン酸カリウム(potassium phosphate)、10.3g(90mmol)のトランス-1,2-シクロヘキサンジアミン(trans-1,2-cyclohexanediamine)及び700mlの1,4-ジオキサンの混合物を窒素ガス下で約一夜回流させた。その後で110℃で溶液を濾過して濾過液を得、減圧で濾過液から1,4-ジオキサンを除去した。500mlのジクロロメタン及び2000mlの水で濾過液を抽出し、無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、溶剤を除去し、シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(へキサン-酢酸エチル)で残物を精製させ、12.1g(収率57%)の生産物を得た。
【0091】
中間物IIIの合成
【0092】
【化39】
【0093】
12.1g(20.6mmol)の中間物II、7.8g(31mmol)のビス(ピナコラト)ジボロン、0.48g(0.4mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、4.1g(41.2mmol)の酢酸カリウム及び200mlの1,4-ジオキサンの混合物に対して脱気処理を行って窒素ガスに置き、その後で90℃で24時間加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。酢酸エチル及び水で有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶剤を除去し、フラッシング液としてへキサンと酢酸エチルとの混合溶液を選用し、カラムクロマトグラフィーによって生産物を精製させ、8.2gの薄い黄色い生産物(収率63%)を得た。
【0094】
実施例2の合成
【0095】
【化40】
【0096】
6.4g(10.1mmol)の中間物III、5.4g(20mmol)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、0.22g(0.2mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、15mlの2M炭酸ナトリウム、20mlのエタノール及び40mlのトルエンの混合物に対して脱気処理を行って窒素ガスに置き、その後で90℃で一夜加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。その後で100mlのメタノールを加えると共に、攪拌し沈殿物を吸引濾過した。トルエンによって再結晶を行って、4g(収率53%)の黄色い生産物を得た。MS(m/z,FAB+):740.4HNMR(CDCl,400MHz):化学シフト(ppm)9.02(s,1H),8.81〜8.72(m,6H),8.52〜8.43(m,8H),8.42〜8.23(m,2H),8.07〜7.98(m,6H),7.87〜7.83(m,2H),7.66〜7.51(m,5H),1.79(s,6H)。
【0097】
実施例3
3-(ビフェニル-2-イル)-6-ブロモ-9-フェニル-9H-カルバゾール(3-(biphenyl-2-yl)-6-bromo-9-phenyl-9H-carbazole)の合成
【0098】
【化41】
【0099】
40.1g(100mmol)の3,6-ジブロモ-9-フェニル-9H-カルバゾール(3,6-dibromo-9-phenyl-9H-carbazole)、21.8g(110mmol)のビフェニル-2-イルボロン酸、2.31g(2mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、75mlの2M炭酸ナトリウム、150mlのエタノール及び300mlのトルエンの混合物に対して脱気処理を行って窒素ガスに置き、その後で100℃で12時間加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。酢酸エチル及び水で有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶剤を除去し、シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで残物を精製させて、白い固体の生産物(19.9g、42.0mmol、収率42%)を得た。
【0100】
13-ブロモ-10-フェニル-10H-フェナントロ[9,10-b]カルバゾール(13-bromo-10-phenyl-10H-phenanthro[9,10-b]carbazole)の合成
【0101】
【化42】
【0102】
脱気処理され且つ窒素ガスの充填された3000mlの三つ口フラスコにおいて、19.9g(42mmol)の3-(ビフェニル-2-イル)-6-ブロモ-9-フェニル-9H-カルバゾール(3-(biphenyl-2-yl)-6-bromo-9-phenyl-9H-carbazole)を無水ジクロロメタン(1000ml)に溶解させ、その後で68.2g(420mmol)の塩化鉄(III)を加え、混合物を10分間攪拌した。混合物に300mlのメタノールを加え、有機層を分離させ、真空中で溶剤を除去した。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(へキサン-ジクロロメタン)で残物を精製させ、白い固体(14.5g、30.7mmol、収率73%)を得た。
【0103】
10-フェニル-13-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-10H-フェナントロ[9,10-b]カルバゾール(10-phenyl-13-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-10H-phenanthro[9,10-b]carbazole)の合成
【0104】
【化43】
【0105】
14.5g(30.7mmol)の13-ブロモ-10-フェニル-10H-フェナントロ[9,10-b]カルバゾール、11.8g(46mmol)のビス(ピナコラト)ジボロン、0.46g(0.4mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、11.3g(115.4mmol)の酢酸カリウム及び300mlの1,4-ジオキサンに対して脱気処理を行い窒素ガスに置き、その後で120℃で16時間加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。有機相を分離させ、酢酸エチル及び水によって洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した後で、真空中で溶剤を除去した。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(へキサン-酢酸エチル)で残物を精製させ、薄い黄色い固体の生産物(11.5g、22.1mmol、収率72%)を得た。
【0106】
13-(2-ニトロフェニルスルフェニル)-10-フェニル-10H-フェナントロ[9,10-b]カルバゾール(13-(2-nitro-phenyl)-10-phenyl-10H-phenanthro[9,10-b]carbazole)の合成
【0107】
【化44】
【0108】
11.5g(22.1mmol)の10-フェニル-13-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-10H-フェナントロ[9,10-b]カルバゾール、5.4g(26.5mmol)の1-ブロモ-2-ニトロベンゾール、0.44g(0.4mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、30mlの2M炭酸ナトリウム、40mlのエタノール及び80mlのトルエンの混合物に対して脱気処理を行って窒素ガスに置き、その後で90℃で一夜加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。溶液を250mlの酢酸エチル及び500mlの水で抽出した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、減圧で溶剤を蒸発させた。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(Hx-EA)で残物を精製させ、7.8g(収率69%)の生産物を得た。
【0109】
中間物Aの合成
【0110】
【化45】
【0111】
7.8g(15.2mmol)の12-(2-ニトロフェニルスルフェニル)-10-フェニル-10H-フェナントロ[9,10-b]カルバゾール(12-(2-nitrophenyl)-10-phenyl-10H-phenanthro[9,10-b]carbazole)、50mlの亜りん酸トリエチル、20mlの1,2-ジクロロベンゼンの混合物を窒素ガスに置きその後で160℃で一夜加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。その後で200mlのメタノールを加えると共に、攪拌し沈殿物を吸引濾過した。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(Hx-CHCl)で精製させて、4.3g(収率59%)の黄色い生産物を得た。
【0112】
実施例3の合成
【0113】
【化46】
【0114】
窒素ガスの条件で、4.3g(8.9mmol)の中間物Aと50mlのジメチルホルムアミドとを混合させ、混合物に0.86g(35.6mmol)の水素添加ナトリウムを緩やかに加えた。室温で混合物を30分間攪拌した。その後で混合物に3.5g(13.2mmol)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを緩やかに加えた。室温で混合物を24時間攪拌した。反応が終了すると、200mlの冷水を加えると共に、攪拌し沈殿物を吸引濾過した。酢酸エチルで再結晶を行って、2.7g(収率43%)の黄色い生産物を得た。MS(m/z,FAB+):713.6;HNMR(CDCl,400MHz):化学シフト(ppm)9.12(s,1H),8.89〜8.83(m,2H),8.76(d,J=8.00Hz,2H),8.61〜8.56(m,4H),8.45(d,J=9.20Hz,2H),8.03〜7.92(m,6H),7.89〜7.83(m,2H),7.78〜7.64(m,6H),7.50〜7.44(m,4H),7.36〜7.29(m,2H)。
【0115】
実施例4
3,8-ジブロモ-11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール(3,8-dibromo-11,12-dihydro-indolo[2,3-a]carbazole)の合成
【0116】
【化47】
【0117】
脱気処理され且つ窒素ガスの充填された1000mlの三つ口フラスコにおいて、44.7g(200mmol)の4-ブロモフェニルヒドラジン塩酸塩(4-Bromophenylhydrazinehydrochloride)、11.2g(100mmol)のシクロへキサン-1,2-ジオン(cyclohexane-1,2-dione)を500mlのエタノールに溶解させ、室温で溶液に5mlの硫酸(sulfuricacid;HSO)を一滴ずつ加え、その後で80℃で4時間加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。得られた固体を濾過し、エタノールで洗浄して38gの赤い粉末を得た。38gの赤い粉末を380mlの氷酢酸に溶解させ、その後で38gのトリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid;TFA)を加え、その後で100℃で24時間加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。得られた固体を濾過し、へキサン(hexane)及びエタノールで洗浄し、15.3g(収率37%)の生産物を得た。
【0118】
3,8-ジ(ビフェニル-2-イル)-11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール(3,8-di(biphenyl-2-yl)-11,12-dihydroindolo[2,3-a]carbazole)の合成
【0119】
【化48】
【0120】
15.3g(37mmol)の3,8-ジブロモ-11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール(3,8-dibromo-11,12-dihydroindolo[2,3-a]carbazole)、18.3g(92.4mmol)のビフェニル-2-イルボロン酸、0.86g(0.8mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、55mlの2M炭酸ナトリウム、100mlのエタノール及び200mlのトルエンの混合物に対して脱気処理を行って窒素ガスに置き、その後で100℃で24時間加熱した。反応が終了すると、混合物を室温まで冷却させた。酢酸エチル及び水で有機層を抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶剤を除去し、シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで残物を精製させて、生産物(12.2g、21.8mmol、収率59%)を得た。
【0121】
中間物Bの合成
【0122】
【化49】
【0123】
脱気処理され且つ窒素ガスの充填された2000mlの三つ口フラスコにおいて、12.2g(21.8mmol)の3,8-ジ(ビフェニル-2-イル)-11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾールを無水ジクロロメタン(500ml)に溶解させ、その後で34.1g(210mmol)の塩化鉄(III)を加え、混合物を10分間攪拌した。混合物に100mlのメタノールを加え、有機層を分離させ、真空中で溶剤を除去した。シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(へキサン-ジクロロメタン)で残物を精製させ、黄色固体(4.3g、収率36%)を得た。
【0124】
中間物Cの合成
【0125】
【化50】
【0126】
窒素ガスで、4.3g(7.7mmol)の中間物Bと1.73g(8.5mmol)ヨードベンゼン(iodobenzene)、8.5g(62mmol)の炭酸カリウム(potassium carbonate)、3.9g(62mmol)の銅及び50mlのジメチルホルムアミドを共にフラスコに加えた。反応物を160℃に加熱し48時間続けた。混合物を室温まで冷却させ、300mlのジクロロメタン(dichloromethane;CHCl)で希釈し、混合物に300mlの水を加えた。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮した後で得られた粗生産物を、更にクロマトグラフィーで精製させて、1.8gの生産物(収率37%)を得た。
【0127】
実施例4の合成
【0128】
【化51】
【0129】
窒素ガスの条件で、1.8g(2.9mmol)の中間物C及び30mlのジメチルホルムアミドを混合させ、混合物に0.56g(23.2mmol)の水素添加ナトリウムを緩やかに加えた。室温で混合物を30分間攪拌した。その後で混合物に2.4g(8.7mmol)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンを緩やかに加えた。室温で混合物を24時間攪拌した。反応が終了すると、200mlの冷水を加えると共に、攪拌し沈殿物を吸引濾過した。酢酸エチルで再結晶を行って、1.3g(収率51%)の黄色い生産物を得た。MS(m/z,FAB+):864.2;HNMR(CDCl,400MHz):化学シフト(ppm)9.09(s,2H),8.97〜8.93(m,4H),8.57〜8.41(m,7H),8.23(d,J=8.0Hz,2H),8.13〜7.92(m,8H),7.89〜7.83(m,2H),7.78〜7.64(m,6H),7.45〜7.39(m,4H),7.36〜7.29(m,2H)。
【0130】
実施例5
実施例5の合成
【0131】
【化52】
【0132】
4.3g(10mmol)の中間物I、4.8g(15mmol)の3-ブロモ-9-フェニル-9H-カルバゾール(3-bromo-9-phenyl-9H-carbazole)、0.05g(0.2mmol)の酢酸パラジウム(II)(palladium(II)acetate)、0.15g(0.4mmol)の2-(ジシクロヘキシルホスフィン)ビフェニル(2-(dicyclohexylphosphino)-biphenyl)、2g(20mmol)のナトリウムt-ブトキシド(sodiumtert-butoxide)及び100mlのo-キシレン(o-xylene)を窒素ガスで一夜回流させた。反応が終了すると、100℃で溶液を濾過し、濾過液を得、濾過液を1Lのメタノールに加えるすると共に、攪拌し沈殿物を吸引濾過した。トルエンによって再結晶を行って、3.2g(収率48%)の黄色い生産物を得た。MS(m/z,FAB+):674.5;HNMR(CDCl,400MHz):化学シフト(ppm)9.11(s,1H),8.76〜8.71(m,6H),8.51〜8.46(m,8H),8.21〜8.14(m,6H),7.87〜7.83(m,2H),7.64〜7.54(m,5H),1.73(s,6H)。
【0133】
有機EL装置を製造する一般的な方法
本発明によると、インジウムスズ酸化物(indiumtinoxide;ITO)により塗布されたガラス(以下、ITO基材)を提供し、電気抵抗が9Ω/sq(ohm/square)〜12Ω/sqで厚さが120nm〜160nmであり、超音波バスにおいて複数の洗浄工程(例えば、洗浄剤、脱イオン水)によって洗浄する。有機層の気相堆積過程を行う前に、UV及びオゾンによって、洗浄されたITO基材を更に処理する。ITO基材に用いられるすべての前処理の過程は、何れもクリーンルーム(100クラス)の雰囲気で行う。
【0134】
気相堆積によって高真空ユニット(10-7torr)(例えば、電気抵抗加熱用石英ボート(resistively heated quartz boats))において、これらの有機層を順次にITO基材に塗布する。石英結晶モニタ(quartz-crystal monitor)によって対応する層の厚さ及び気相堆積速度(0.1nm/sec〜0.3nm/sec)を正確に監視又は設定する。上記のように、1種以上の化合物からなる層もあり、つまり、一般的にはドープ剤材料のホスト材料がドープされる。このような材料は、2つ以上の来源による共気化(co-vaporization)で達成される。
【0135】
ジピラジノ[2,3-f:2,3-]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(Dipyrazino[2,3-f:2,3-]quinoxaline-2,3,6,7,10,11-hexacarbonitrile,HAT-CN)は、この有機EL装置において、正孔注入層として用いられる。N,N-ビス(ナフタリン-1-イル)-N,N-ビス(フェニル)-ベンジジン(N,N-Bis(naphthalene-1-yl)-N,N-bis(phenyl)-benzidine;NPB)は、よく正孔輸送層として用いられる。10,10-ジメチル-12-(4-(ピレン-1-イル)フェニル)-10H-インデノ[1,2-b]トリフェニレン(10,10-Dimethyl-12-(4-(pyren-1-yl)phenyl)-10H-indeno[1,2-b]triphenylene、モデルPT-312、米国第20140175384号特許出願参照)は青色光発光ホスト(blue emitting host)として用いられ、N1,N1,N6,N6-テトラ-m-トリルピレン-1,6-ジアミン(N1,N1,N6,N6-tetram-tolylpyrene-1,6-diamine)(D1)は青色光客体(blue guest)として用いられる。有機EL装置において、2-(10,10-ジメチル-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン-13-イル)-9-フェニル-1,10-フェナントロリン(2-(10,10-dimethyl-10H-indeno[2,1-b]triphenylen-13-yl)-9-phenyl-1,10-phenanthroline)は電子輸送材料(ET1)として5%のリチウム金属(Li)と共に共堆積(codeposition)を行い、2-(10,10-ジメチル-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン-12-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(2-(10,10-dimethyl-10H-indeno[2,1-b]triphenylen-12-yl)-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine)は電子輸送材料(ET2)として8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(8-hydroxyquinolato-lithium;LiQ)と共に共堆積を行う。ビス(2-メチル-8-キノリン)-4-(フェニル基フェノラート)アルミニウム(Bis(2-methyl-8-quinolinolate)-4-(phenylphenolato)aluminium,BAlq)は正孔遮断材料(holeblockingmaterial;HBM)及び燐光系の燐光ホスト(phosphorescent host)として用いられ、ビス(2-フェニルピリジナト)(2,4-ジフェニルピリジナト)イリジウム(III)(Bis(2-phenyl-pyridinato)(2,4-diphenylpyridinato)iridium(III))(D2)は燐光ドープ剤として用いられる。4-(10,10-ジメチル-10H-インデノ[2,1-b]トリフェニレン-13-イル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(4-(10,10-dimethyl-10H-indeno[2,1-b]triphenylen-13-yl)dibenzo[b,d]thiophene)(H1)は燐光発光ホストとして、本発明の実施例1〜4と共に共堆積を行う。基準有機EL装置制御ユニットを発生するための従来技術のOLED材料及び本発明の従来技術と比較するための材料は、化学構造が下記である。
【0136】
【化53】
【0137】
【化54】
【0138】
【化55】
【0139】
【化56】
【0140】
【化57】
【0141】
典型的な有機EL装置は、低仕事関数の金属(例えば、Al、Mg、Ca、Li及びK)からなり、熱蒸着によって陰極となり、低仕事関数の金属によって電子が陰極から電子輸送層に注入される。また、電子注入の障害を減少させ、有機EL装置の性能を改善するために、陰極と電子輸送層との間に薄膜電子注入層が導入される。電子注入層の普通の材料は、例えば、LiF、LiQ、MgO又はLiOのような、低仕事関数を有する金属ハロゲン化物又は金属酸化物である。一方、有機EL装置の製造後、PR50スペクト走査分光計(PR50 spectra scan spectrometer)によってELスペクト(EL spectra)及びCIE座標(CIE coordination)を測定する。また、ケースレー2400プログラマブル電圧-電流源(Keithley 2400 programmable voltage-current source)によって電流/電圧(current/voltage)、発光/電圧(luminescence/voltage)及び歩留まり/電圧(yield/voltage)の特性を取得する。上記設備は、室温(約25℃)及び大気圧の雰囲気で操作される。
【0142】
実施例6
図1を参照する。上記方法と同様なプロセスによって、下記装置構造を有する青色蛍光発出(fluorescent blue-emitting)の有機EL装置を発生させた。ITO/HAT-CN(20nm)/NPB(130nm)/ドープ5%D1のPT-312(30nm)/HBM(正孔遮断材料(5nm)/ET1 共堆積5%Li/Al(160nm)。青色蛍光発出の有機EL装置のテスト報告におけるI-V-B(1000ニト(nit)の場合)及び半減期時間は、表1に示す。半衰期は、1000cd/mの初期輝度が半分の輝度に低下する場合に必要な時間と定義される。
【0143】
【表1】
【0144】
実施例7
図1を参照する。上記方法と同様なプロセスによって、下記装置構造を有する燐光発出(phosphorescent emitting)の有機EL装置を発生させた。ITO/HAT-CN(20nm)/NPB(130nm)/燐光ホスト(PHhost)+15%D2(30nm)/HBM(15nm)/ET2 共堆積LiQ(ET2:LiQ、比率=1:1)(40nm)/LiQ(1nm)/Al(160nm)。燐光発出の有機EL装置のテスト報告におけるI−V−B(1000ニトの場合)及び半減期時間は、表2に示す。半衰期は、3000cd/mの初期輝度の輝度の場合に必要な時間と定義される。
【0145】
【表2】
【0146】
表1及び表2に示すものを参照されたい。上記有機EL装置のテスト報告の具体的な好適な実施例において、本発明に係る式(I)及び式(II)化合物は、従来技術のOLED材料と比べると、確かに良好な性能を持つことが判明された。
【0147】
以上をまとめると、本発明は、有機EL装置に用いられる化合物を開示する。より詳しくは、本発明の化合物を燐光発光ホスト、正孔遮断層又は正孔遮断電子輸送層として使用する有機EL装置である。前記化合物は、下記の式(I)又は式(II)で示す。
【0148】
【化58】
【0149】
ただし、Aが置換又は非置換のフェニル基、置換又は非置換のナフチル基を表す。X〜Xそれぞれ独立して表示から選ばれたO、S、C(R)(R)、N(Ar)及びSi(R)(R)からなる群中の原子又は基の2価の架橋;pが0〜10の整数を表す。qが0〜4の整数を表す。R〜R及びArそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアリール基、炭素数6〜50の置換又は非置換のアラルキル基、及び炭素数3〜50の置換又は非置換のヘテロアリール基からなる群から選ばれたものである。
【符号の説明】
【0150】
6 透明電極
7 正孔注入層
8 正孔輸送層
9 蛍光又は燐光発光層
10 正孔遮断層
11 電子輸送層
12 電子注入層
図1
【外国語明細書】
2016147846000001.pdf