【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のアゾ系二色性色素は、下記式(1)で表わされるものである。
【0026】
【化13】
[式(1)中、Bzはベンゼン環を表わし、mは1〜5の整数である。R
1〜R
4は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、R
1とR
3又はR
2とR
4は、結合してベンゼン環を形成していてもよい。ただし、m個のBzの内の少なくとも一つのBzにおいて、R
1及びR
2はアルキル基であり、R
3及びR
4は水素原子である。Bは下記式(2)で表わされる芳香環基であり、Aは下記式(3)又は(4)で表わされる芳香環基である。]
【0027】
【化14】
[式(2)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基又はビニルカルボニルオキシ基であり、それらアルコキシ基及びビニルカルボニルオキシ基は置換基を有していてもよく、R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、それらアルキル基は置換基を有していてもよく、R
9は、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はモルホリノ基であり、それらアルコキシ基、ジアルキルアミノ基及びモルホリノ基は置換基を有していてもよく、ジアルキルアミノ基における各アルキル基は、R
7及びR
8とそれぞれ独立して環状構造を形成していてもよい。]
【0028】
【化15】
[式(3)中、R
10は、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であり、それらフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。ただし、上記式(2)におけるR
9がアルコキシ基である場合、R
10は置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基である。]
【0029】
【化16】
[式(4)中、R
11〜R
14は、それぞれ独立して水素原子、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であり、それらフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。]
【0030】
上述のように、式(1)において、Bは式(2)で表わされる芳香環基であり、Aは式(3)又は(4)で表わされる芳香環基であるが、本発明のアゾ系二色性色素は、分子の電子密度を考慮すると、Aの芳香環基は電子吸引性基として機能し、Bの芳香環基は電子供与性基として機能するという構造的特徴を有する。すなわち、電子密度は、Bの芳香環基からAの芳香環基に向かって大きくなっており、このような電子密度の勾配を有する化合物において、m個のBzの内の少なくとも一つのBzが有するR
1及びR
2がアルキル基であり、R
3及びR
4が水素原子であることが本発明の重要な特徴であると本発明者らは推察している。このような特徴を付与することで、可視光領域に幅広い吸収特性を有するとともに、有機溶媒への溶解性が良好な本発明のアゾ系二色性色素を得ることができる。
【0031】
電子密度の勾配に関して、以下、具体的な置換基を例示して説明する。式(2)におけるR
9がアルコキシ基である場合、式(3)におけるR
10は、アルコキシ基よりも電子吸引性が強いと考えられるフェノキシカルボニル基であるため、Aの芳香環基は電子吸引性基として機能し、Bの芳香環基は電子供与性基として機能すると考えられる。また、式(2)におけるR
9がジアルキルアミノ基又はモルホリノ基である場合、式(3)におけるR
10は、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であるが、これら置換基はR
9よりも電子吸引性が強いと考えられるため、Aの芳香環基は電子吸引性基として機能し、Bの芳香環基は電子供与性基として機能すると考えられる。一方、Aが式(4)で表わされる芳香環基である場合、R
5〜R
9を有する式(2)で表わされる芳香環基よりも電子吸引性が強いと考えられるため、Aの芳香環基は電子吸引性基として機能し、Bの芳香環基は電子供与性基として機能すると考えられる。
【0032】
上記式(1)において、R
1〜R
4は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、R
1とR
3又はR
2とR
4は、結合してベンゼン環を形成していてもよい。ただし、m個のBzの内の少なくとも一つのBzにおいて、R
1及びR
2はアルキル基であり、R
3及びR
4は水素原子である。
【0033】
R
1〜R
4に用いられるアルキル基としては、直鎖や分岐鎖のアルキル基であってもよいし、環状のシクロアルキル基であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の直鎖や分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基等のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、R
1〜R
4に用いられるアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好適であり、炭素数1〜2のアルキル基がより好適であり、メチル基が更に好適である。R
1〜R
4に用いられるアルキル基は、それぞれ同じアルキル基であってもよいし、異なるアルキル基であってもよい。
【0034】
上記式(1)において、m個のBzの内の少なくとも一つのBzが有するR
1及びR
2がアルキル基であり、R
3及びR
4が水素原子であることが本発明の重要な構成である。上記説明したように、電子密度は、Bの芳香環基からAの芳香環基に向かって大きくなっていると考えられる。そして、m個のBzの内の少なくとも一つのBzにおいて、より電子密度が大きい側のR
1及びR
2がアルキル基であり、R
1及びR
2よりも電子密度が小さい側のR
3及びR
4が水素原子である構成を有することが重要であると本発明者らは推察しており、このことにより、可視光領域に幅広い吸収特性を有するとともに、有機溶媒への溶解性が良好な本発明のアゾ系二色性色素を得ることができる。また、後述する実施例と比較例との対比からも分かるように、式(1)中のBzにおいて、より電子密度が大きい側のR
2のみがアルキル基であり、R
1、R
3及びR
4が水素原子である化合物E3では、有機溶媒への溶解性が良好ではなかった。したがって、式(1)において、m個のBzの内の少なくとも一つのBzが有するR
1及びR
2がアルキル基であり、R
3及びR
4が水素原子であることが重要であることが分かる。
【0035】
上記式(1)において、R
1とR
3又はR
2とR
4が結合してベンゼン環を形成する場合、本発明のアゾ系二色性色素は、ナフタレン環を一部含む構造となる。
【0036】
上記式(1)において、mは1〜5の整数である。mとしては、1〜3の整数であることが好適であり、1〜2の整数であることがより好適である。例えば、mが1の場合は、本発明のアゾ系二色性色素はジスアゾ化合物であり、mが2の場合はトリスアゾ化合物であり、mが3の場合はテトラキスアゾ化合物である。上記説明したように、式(1)において、m個のBzの内の少なくとも一つのBzが有するR
1及びR
2がアルキル基であり、R
3及びR
4が水素原子であるため、本発明のアゾ系二色性色素は、例えば、mが1の場合は下記式(1’)で表わされる化合物であり、mが2の場合は下記式(1’’)で表わされる化合物である。
【0037】
【化17】
[式(1’)中、R
1及びR
2はアルキル基であり、A及びBは前記式(1)におけると同義である。]
【0038】
【化18】
[式(1’’)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、R
1とR
3又はR
2とR
4は、結合してベンゼン環を形成していてもよい。ただし、2個のベンゼン環の内の一つのベンゼン環において、R
1及びR
2はアルキル基であり、R
3及びR
4は水素原子である。A及びBは前記式(1)におけると同義である。]
【0039】
上記式(1)において、Bは下記式(2)で表わされる芳香環基である。
【0040】
【化19】
[式(2)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基又はビニルカルボニルオキシ基であり、それらアルコキシ基及びビニルカルボニルオキシ基は置換基を有していてもよく、R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、それらアルキル基は置換基を有していてもよく、R
9は、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はモルホリノ基であり、それらアルコキシ基、ジアルキルアミノ基及びモルホリノ基は置換基を有していてもよく、ジアルキルアミノ基における各アルキル基は、R
7及びR
8とそれぞれ独立して環状構造を形成していてもよい。]
【0041】
上記式(2)において、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基又はビニルカルボニルオキシ基であり、それらアルコキシ基及びビニルカルボニルオキシ基は置換基を有していてもよい。R
5及びR
6に用いられる置換基は、それぞれ同じ置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0042】
R
5及びR
6に用いられるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。中でも、R
5及びR
6に用いられるアルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好適であり、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好適であり、メトキシ基が更に好適である。
【0043】
R
5及びR
6に用いられるアルコキシ基及びビニルカルボニルオキシ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の直鎖や分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラジニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等の複素芳香環基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基;tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基等の三置換シリルオキシ基;アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル基等のアリールスルフィニル基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基等のスルフォン酸エステル基;アミノ基;水酸基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;などが挙げられる。
【0044】
R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基であり、それらアルキル基は置換基を有していてもよい。R
7及びR
8に用いられるアルキル基としては、R
1〜R
4の説明のところで例示されたアルキル基と同様のものを用いることができる。これらアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R
5及びR
6の説明のところで例示されたアルキル基以外の置換基を同様に用いることができる。後述するR
9がジアルキルアミノ基である場合には、R
7及びR
8は、それぞれ独立してジアルキルアミノ基における各アルキル基と環状構造を形成していてもよい。R
7及びR
8に用いられる置換基は、それぞれ同じ置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0045】
上記式(2)において、R
9は、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はモルホリノ基であり、それらアルコキシ基、ジアルキルアミノ基及びモルホリノ基は置換基を有していてもよく、ジアルキルアミノ基における各アルキル基は、R
7及びR
8とそれぞれ独立して環状構造を形成していてもよい。
【0046】
R
9に用いられるアルコキシ基としては、R
5及びR
6の説明のところで例示されたアルコキシ基と同様のものを用いることができる。中でも、R
9に用いられるアルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好適であり、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好適であり、メトキシ基が更に好適である。R
9に用いられるジアルキルアミノ基は、−NR
18R
19(R
18及びR
19はアルキル基であり、それらアルキル基は置換基を有していてもよく、R
18とR
19は結合してモルホリン環を形成していてもよい。)で示されるジ置換アミノ基であり、R
18及びR
19は互いに同じでも異なっていてもよい。ジアルキルアミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられる。R
18及びR
19としては、炭素数1〜4のアルキル基が好適であり、炭素数2〜4のアルキル基がより好適である。前記ジアルキルアミノ基における各アルキル基であるR
18及びR
19は、R
7及びR
8とそれぞれ独立して環状構造を形成していてもよい。R
9に用いられるアルコキシ基、ジアルキルアミノ基及びモルホリノ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R
5及びR
6の説明のところで例示された置換基を同様に用いることができる。
【0047】
上記式(2)で表わされる芳香環基の好適な具体例としては、以下に示されるものが挙げられる。
【0048】
【化20】
[式(6)中、R
6は前記式(2)におけると同義である。]
【0049】
【化21】
[式(7)中、R
6は前記式(2)におけると同義であり、R
18及びR
19は、それぞれ独立してアルキル基であり、それらアルキル基にはビニルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、R
18とR
19は結合してモルホリン環を形成していてもよい。]
【0050】
【化22】
[式(8)中、R
20はアルキル基であり、該アルキル基は置換基を有していてもよい。]
【0051】
上記式(7)におけるR
18及びR
19は、それぞれ独立してアルキル基であり、それらアルキル基にはビニルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、R
18とR
19は結合してモルホリン環を形成していてもよい。R
18及びR
19に用いられるアルキル基は、R
9の説明のところで例示されたアルキル基と同様である。R
18及びR
19としては、炭素数1〜4のアルキル基が好適であり、炭素数2〜4のアルキル基がより好適である。
【0052】
上記式(8)におけるR
20に用いられるアルキル基としては、R
1〜R
4の説明のところで例示されたアルキル基と同様のものを用いることができる。これらアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R
5及びR
6の説明のところで例示されたアルキル基以外の置換基を同様に用いることができる。
【0053】
上記式(1)において、Aは下記式(3)又は(4)で表わされる芳香環基である。
【0054】
【化23】
[式(3)中、R
10は、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であり、それらフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。ただし、上記式(2)におけるR
9がアルコキシ基である場合、R
10は置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基である。]
【0055】
上記式(3)において、R
10は、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であり、それらフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。ただし、上記式(2)におけるR
9がアルコキシ基である場合、R
10は置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基である。
【0056】
R
10に用いられるフッ素化アルキル基としては、アルキル基が有する水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置換したものであれば特に限定されず、フッ素化メチル基、フッ素化エチル基等が挙げられる。中でも、R
10に用いられるフッ素化アルキル基としては、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好適であり、炭素数1〜2のフッ素化アルキル基がより好適であり、トリフルオロメチル基が更に好適である。
【0057】
R
10に用いられるアルキルスルフォニル基としては、メチルスルフォニル基、エチルスルフォニル基、プロピルスルフォニル基、ブチルスルフォニル基、プロピルスルフォニル基、ヘキシルスルフォニル基等が挙げられる。中でも、R
10に用いられるアルキルスルフォニル基としては、炭素数1〜6のアルキルスルフォニル基が好適であり、炭素数1〜4のアルキルスルフォニル基がより好適である。
【0058】
R
10に用いられるアルコキシ基としては、R
5及びR
6の説明のところで例示されたアルコキシ基と同様のものを用いることができる。中でも、R
10に用いられるアルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好適であり、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好適であり、メトキシ基が更に好適である。
【0059】
R
10に用いられるフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R
5及びR
6の説明のところで例示された置換基を同様に用いることができる。
【0060】
R
10が置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基である場合、Aは好適には下記式(3’)で表わされる芳香環基である。
【0061】
【化24】
[式(3’)中、R
21はアルキル基である。]
【0062】
上記式(3’)におけるR
21に用いられるアルキル基としては、R
1〜R
4の説明のところで例示されたアルキル基と同様のものを用いることができる。中でも、R
21に用いられるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好適であり、炭素数3〜6のアルキル基がより好適であり、炭素数4〜6のアルキル基が更に好適である。
【0063】
Aとして好適に用いられる式(4)で表わされる芳香環基は、以下に示されるものである。
【0064】
【化25】
[式(4)中、R
11〜R
14は、それぞれ独立して水素原子、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であり、それらフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。]
【0065】
上記式(4)において、R
11〜R
14は、それぞれ独立して水素原子、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であり、それらフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。R
11〜R
14に用いられる置換基は、それぞれ同じ置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0066】
R
11〜R
14に用いられるフッ素化アルキル基としては、R
10の説明のところで例示されたフッ素化アルキル基と同様のものを用いることができる。中でも、R
11〜R
14に用いられるフッ素化アルキル基としては、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好適であり、炭素数1〜2のフッ素化アルキル基がより好適であり、トリフルオロメチル基が更に好適である。
【0067】
R
11〜R
14に用いられるアルキルスルフォニル基としては、メチルスルフォニル基、エチルスルフォニル基、プロピルスルフォニル基、ブチルスルフォニル基、プロピルスルフォニル基、ヘキシルスルフォニル基等が挙げられる。中でも、R
11〜R
14に用いられるアルキルスルフォニル基としては、炭素数1〜6のアルキルスルフォニル基が好適であり、炭素数1〜4のアルキルスルフォニル基がより好適である。
【0068】
R
11〜R
14に用いられるアルコキシ基としては、R
5及びR
6の説明のところで例示されたアルコキシ基と同様のものを用いることができる。中でも、R
11〜R
14に用いられるアルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好適であり、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好適であり、メトキシ基が更に好適である。
【0069】
R
11〜R
14に用いられるフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R
5及びR
6の説明のところで例示された置換基を同様に用いることができる。
【0070】
本発明のアゾ系二色性色素は、好適には下記式(5)で表わされる化合物である。
【0071】
【化26】
[式(5)中、R
15〜R
17は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、m
1は0又は1の整数であり、Bは下記式(6)、(7)又は(8)で表わされる芳香環基であり、Aは下記式(3)又は(4)で表わされる芳香環基である。]
【0072】
【化27】
[式(6)中、R
6は前記式(2)におけると同義である。]
【0073】
【化28】
[式(7)中、R
6は前記式(2)におけると同義であり、R
18及びR
19は、それぞれ独立してアルキル基であり、それらアルキル基にはビニルカルボニルオキシ基が結合していてもよく、R
18とR
19は結合してモルホリン環を形成していてもよい。]
【0074】
【化29】
[式(8)中、R
20はアルキル基であり、該アルキル基は置換基を有していてもよい。]
【0075】
【化30】
[式(3)中、R
10は、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であり、それらフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。ただし、Bが上記式(8)で表わされる芳香環基である場合、R
10は置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基である。]
【0076】
【化31】
[式(4)中、R
11〜R
14は、それぞれ独立して水素原子、フッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基又はフェノキシカルボニル基であり、それらフッ素化アルキル基、アルキルスルフォニル基、アルコキシ基及びフェノキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。]
【0077】
上記式(5)で表わされるアゾ系二色性色素においても、式(1)と同様に、電子密度は、Bの芳香環基からAの芳香環基に向かって大きくなっていると考えられる。そして、上記式(5)では、Aの芳香環基に最も近い位置にあるベンゼン環が、より電子密度が大きい側にメチル基を2つ有する構造を有している。このことにより、可視光領域に幅広い吸収特性を有するとともに、有機溶媒への溶解性が良好な本発明のアゾ系二色性色素を得ることができると本発明者らは推察している。したがって、このような構成を採用する本発明の意義は大きい。
【0078】
以下、本発明のアゾ系二色性色素の具体例を例示するが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0084】
式(1)で表わされる本発明のアゾ系二色性色素は、下記式(9)で表わされる化合物と下記式(10)で表される化合物とを亜硝酸塩存在下で反応させることにより好適に製造することができる。
【0085】
【化37】
[式(9)中、Bz、m、R
1〜R
4及びAは、前記式(1)におけると同義である。]
【0086】
【化38】
[式(10)中、R
5〜R
9は、前記式(2)におけると同義である。]
【0087】
すなわち、上記式(9)で表わされる化合物と上記式(10)で表される化合物とを亜硝酸塩存在下でアゾカップリング反応させる方法が好適に採用される。具体的には、上記式(9)で表わされる化合物を含む溶液に亜硝酸塩を加えることによりジアゾニウム塩を調製し、得られたジアゾニウム塩と上記式(10)で表される化合物とを反応させることにより本発明のアゾ系二色性色素を得る方法が好適に採用される。反応温度としては特に限定されず、−30〜30℃であることが好適であり、−20〜20℃であることがより好適である。反応時間としては特に限定されず、30分から12時間であることが好適であり、30分から6時間であることがより好適である。
【0088】
上記式(9)で表わされる化合物は、下記式(9’)で表わされる末端アニリン化合物をN,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に希釈して濃塩酸等の酸を加えることにより好適に得ることができる。
【0089】
【化39】
[式(9’)中、Bz、m、R
1〜R
4及びAは、前記式(1)におけると同義である。]
【0090】
本発明のアゾ系二色性色素は、有機溶媒への溶解性が良好であるため、偏光膜分野などの幅広い用途に用いることが可能となる。後述する実施例と比較例との対比からも分かるように、各色素の濃度が1質量%(以下、「質量%」を「wt%」と表記する)になるように調製し、25℃で攪拌した際のトルエン及びシクロペンタノンに対する溶解性が良好であった。したがって、トルエン又はシクロペンタノンに対する25℃における溶解度が1wt%以上であるアゾ系二色性色素であることが本発明の好適な実施態様である。
【0091】
本発明のアゾ系二色性色素は、可視光領域に幅広い吸収特性を有するものである。380〜780nmの波長領域に2つの吸収ピークを有するものであることが本発明の好適な実施態様であり、最大吸収波長の吸光度を1とした際の副吸収極大波長の吸光度が、通常、0.5以上であるものが好適であり、0.6以上であるものがより好適であり、0.7以上であるものが更に好適な本発明の実施態様である。また、本発明のアゾ系二色性色素としては、吸収半値幅が、通常、120nm以上であるものが好適であり、125nm以上であるものがより好適であり、130nm以上であるものが更に好適である。通常、吸収半値幅は、350nm以下である。
【0092】
本発明のアゾ系二色性色素は、高いオーダーパラメーター(S)値を有するものであり、液晶組成物等に好適に使用することができる。オーダーパラメーター(S)値は、通常、0.70以上であることが好適であり、0.75以上であることがより好適である。
【0093】
本発明のアゾ系二色性色素は、可視光領域に幅広い吸収特性を有し、オーダーパラメーター(S)の値が高く、有機溶剤への溶解性が良好である。本発明のアゾ系二色性色素は単独で使用してもよいし、複数の色素を組み合わせてもよい。複数の色素を組み合わせる場合、本発明のアゾ系二色性色素を複数組み合わせてもよいし、本発明のアゾ系二色性色素と他の公知の二色性色素を組み合わせてもよい。本発明のアゾ系二色性色素は、可視光領域に幅広い吸収特性を有するため、色素混色して黒色組成物を構成する用途において、黒色表現がより容易になり、混色する他の公知の色素の数を大幅に減らすことが可能となる。また、本発明のアゾ系二色性色素は、有機溶剤への溶解性が良好であるため、偏光膜分野などの用途に好適に用いることが可能となる。したがって、本発明のアゾ系二色性色素によれば、従来のアゾ系二色性色素を用いる場合と比べ、下記各種物品を容易かつ低コストで安価に提供できる。また、本発明のアゾ系二色性色素は、表示分野等において要求される高いコントラスト比を達成できるとともに、建材分野等で要求される高い遮光性を達成できることから、調光剤;遮光剤;液晶組成物;液晶素子;電子光学シャッター;電子光学絞り;光通信光路切替スイッチ;光変調器;コンピューター、携帯電話、携帯端末、時計、自動車(オートバイ、電動自転車、電動車椅子を含む)、電車、船舶、航空機、農機具、道路/航路/鉄道標識、掲示板、表示板、医療機器、健康器具、家電、玩具、電卓等における表示部材、更には建材用又は車/船舶/電車/航空機用の遮光ガラス等に好適に用いることができる。中でも、本発明のアゾ系二色性色素を1つ又は複数含有する調光剤及び遮光剤がより好適な実施態様である。
【0094】
本発明のアゾ系二色性色素を1つ又は複数含有する遮光剤または調光剤とは、例えば、光学フィルムなど薄膜状フィルムに配合して使用されるもの全般を意味する。それらは、本発明のアゾ系二色性色素の1つ又は複数と、必要に応じて、斯界において汎用される、例えば、アミニウム塩系化合物、アミノ化合物、アミノチオールニッケル錯体系化合物、アントラキノン系化合物、イモニウム系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、ジチオールニッケル錯体系化合物、トリアリルメタン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロソ化合物及びその金属塩、フタロシアニン系化合物、カーボンブラック、酸化インジウム錫、酸化アンチモン錫などを含有する近赤外線吸収剤、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、ヒドロキシベンゾエート化合物、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウムなどを含有する紫外線吸収剤、さらには、酸化防止剤、難燃化剤、安定剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱老化防止剤、離型剤の1つ又は複数とともに、バインダーの存在下、例えば、トルエン、クロロホルム、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトンなどのケトン系;ハロゲン化炭化水素系、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどのエーテル系、エステル系などの適宜有機溶剤に溶解又は分散させ、例えば、適用対象物の形状に応じて、フィルム状、シート状、パネル状などに成形しておいた透明基材の片面又は両面へ直接塗布するか、あるいは、前記透明基材と同様の材質のフィルム又はシートへ塗布した後、そのフィルム又はシートを予め適用対象物の形状に応じて成形しておいた透明基材の片面又は両面へ貼合することにより製造することができる。
【0095】
前記バインダーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、酢酸セルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ナイロン、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などを例示でき、必要に応じて、それらの1つ又は複数を適宜組み合わせて用いることができる。斯かるバインダーは、本発明のアゾ系二色性色素に対して、質量比で、通常、10乃至1,000倍、好ましくは、50乃至500倍用いられる。本発明のアゾ系二色性色素を分散液にして塗布する場合には、当該アゾ系二色性色素を、通常、粒子径0.1乃至10μm、好ましくは、0.5乃至5μmの微粒子としたものが好適に用いられる。
【0096】
また、本発明のアゾ系二色性色素を含有する溶液や分散液を透明基材などへ塗布する場合には、斯界において汎用される、例えば、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法などの1つ又は複数を適宜組み合わせて用いることができる。
【0097】
斯くして得られる本発明のアゾ系二色性色素を含有する遮光剤または調光剤を、例えば、光学フィルムなどに適用すると、遮断したい所望の可視光領域の波長の光を効率よく吸収させることができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0099】
[オーダーパラメーター(S)の測定]
あらかじめ配向処理を施したギャップ8μmのセル(株式会社イーエッチシー製:KSRO−08/A507PNSS)に、下記実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた各色素を0.5wt%となるように溶解したホスト液晶を封入する。このホスト液晶封入セルに対し、分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製:U−3010)を用いて、配向方向に平行及び垂直な直線偏光を入射し、その時の極大吸収波長における吸収量をそれぞれA‖、A⊥とし、液晶中における二色性色素のオーダーパラメーター(S)を下記の式より算出する。
【0100】
(数1)
S=(A‖−A⊥)/(A‖+2×A⊥)
なお、A‖、A⊥値はガラス基板および液晶の吸収を考慮して補正したものを使用する。
【0101】
[吸収特性の評価]
分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製:U−4100)を用いて、下記実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた各色素の吸収特性を以下のようにして測定する。すなわち、ジクロロメタン溶媒(和光純薬工業株式会社製:一級)で光学濃度(O.D.値)が0.4〜0.8になるように濃度を調整する。前記分光光度計を用いて、得られた色素溶液の各波長におけるO.D.値を測定する。その際、極大吸収波長における最大O.D.値を1.0と定め(以下、「基準値」と言う。)、それぞれの色素溶液の吸収波形を求める。また、極大吸収波長を含む波長域であって、かつ、基準値に基づいて定められたO.D.値(O.D.[normalized])が0.5以上である波長域の幅を算出して半値幅とする。
【0102】
[溶解度測定]
トルエン、シクロペンタノン及びメチルエチルケトン(東京化成工業株式会社製:特級)それぞれに対して、下記実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた各色素の濃度が1wt%あるいは3wt%になるように調製し、室温(25℃)にて1時間攪拌する。攪拌終了後、目視にて、不溶物がない場合を「○」、不溶物が認められる場合を「×」と判定する。
【0103】
実施例1
[式(1a)で表わされるアゾ系二色性色素の合成]
【0104】
【化40】
【0105】
2−アミノベンゾチアゾール(10.0g、66.5mmol、東京化成工業株式会社製)を氷酢酸(50ml)と85wt%リン酸水溶液(50ml)の混液に溶解させ、氷浴で冷却した。40wt%のニトロシル硫酸(21.1g)を添加し、氷浴冷却下、1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に3,5−ジメチルアニリン(8.06g、66.5mmol、東京化成工業株式会社製)をアセトニトリル(150ml)に溶解させ、氷浴で冷却下に前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物1−a(15.0g、収率79.8%)を得た。
【0106】
【化41】
【0107】
得られた中間生成物1−a(10.0g、35.4mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(200ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(8.85ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(2.56g、37.1mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器にm−トルイジン(3.79g、35.4mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(200ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(11.6g、141.6mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物2−a(5.7g、収率40.1%)を得た。
【0108】
【化42】
【0109】
得られた中間生成物2−a(5.0g、12.5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(3.12ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(0.90g、13.0mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に式(10a)で表わされるN,N−ジブチルアニリン(3.08g、15.0mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(100ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(4.1g、50.0mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶法により精製し、式(1a)で表わされる本発明のアゾ系二色性色素(4.3g、収率55.8%)を得た。式(1a)で表わされるアゾ系二色性色素の
1H−NMRスペクトルを
図8に示す。上述した各測定方法により、オーダーパラメーター(S)の測定、吸収特性の評価、溶解度測定を行った。得られた結果を
図1及び表1にまとめて示す。
【0110】
このように、本発明の式(1a)で表わされるアゾ系二色性色素は、可視光領域に幅広い吸収特性を有し、オーダーパラメーター(S)の値が高く、各種有機溶剤への溶解性が良好であることから、とりわけ、調光剤、遮光剤などに好適に用いることができる。
【0111】
実施例2
[式(1b)で表わされるアゾ系二色性色素の合成]
【0112】
【化43】
【0113】
実施例1で得られた中間生成物1−a(10.0g、35.4mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(200ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(8.85ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(2.56g、37.1mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に3,5−ジメチルアニリン(4.29g、35.4mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(200ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(11.6g、141.6mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物2−b(11.2g、収率76.2%)を得た。
【0114】
【化44】
【0115】
得られた中間生成物2−b(5.0g、12.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(3.01ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(0.87g、12.6mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下、1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に式(10a)で表わされるN,N−ジブチルアニリン(2.95g、14.4mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(100ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(3.9g、48.0mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、式(1b)で表わされる本発明のアゾ系二色性色素(2.3g、収率30.2%)を得た。式(1b)で表わされるアゾ系二色性色素の
1H−NMRスペクトルを
図9に示す。上述した各測定方法により、オーダーパラメーター(S)の測定、吸収特性の評価、溶解度測定を行った。得られた結果を
図2及び表1にまとめて示す。
【0116】
このように、本発明の式(1b)で表わされるアゾ系二色性色素は、可視光領域に幅広い吸収特性を有し、オーダーパラメーター(S)の値が高く、各種有機溶剤への溶解性が良好であることから、とりわけ、調光剤、遮光剤などに好適に用いることができる。
【0117】
実施例3
[式(1c)で表わされるアゾ系二色性色素の合成]
【0118】
【化45】
【0119】
p−アニシジン(10.0g、81.2mmol、東京化成工業株式会社製)をアセトニトリル(10ml)と水(20ml)の混液に分散させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(20.3ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(5.88g、85.2mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に3,5−ジメチルアニリン(19.7g、162.4mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(180ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(7.3g、89.0mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物1−c(14.1g、収率68.0%)を得た。
【0120】
【化46】
【0121】
得られた中間生成物1−c(5.0g、19.5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)に分散させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(4.89ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(1.42g、20.5mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下、1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に式(10c)で表わされるN,N−ジエチルアニリン(3.19g、21.4mmol)をメタノール(100ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(6.4g、78.0mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、式(1c)で表わされる本発明のアゾ系二色性色素(4.3g、収率52.8%)を得た。式(1c)で表わされるアゾ系二色性色素の
1H−NMRスペクトルを
図10に示す。上述した各測定方法により、オーダーパラメーター(S)の測定、吸収特性の評価、溶解度測定を行った。得られた結果を
図3及び表1にまとめて示す。
【0122】
このように、本発明の式(1c)で表わされるアゾ系二色性色素は、可視光領域に幅広い吸収特性を有し、オーダーパラメーター(S)の値が高く、各種有機溶剤への溶解性が良好であることから、とりわけ、調光剤、遮光剤などに好適に用いることができる。
【0123】
実施例4
[式(1d)で表わされるアゾ系二色性色素の合成]
【0124】
【化47】
【0125】
8−ヒドロキシジュロリジン(10.0g、52.8mmol、東京化成工業株式会社製)、水酸化カリウム(2.9g、52.8mmol)、炭酸カリウム(7.3g、52.8mmol)、ジメチル硫酸(8.0g、63.4mmol)及びアセトニトリル(75ml)の混合物を加熱環流下で4時間撹拌を行った。室温に冷却後、不溶物をセライト濾過で除去し、濾液を減圧濃縮した。イソプロピルエーテル及び水を加えて撹拌後、有機層を分離した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮し、式(10d)で表わされる化合物(6.6g、収率61.4%)を得た。
【0126】
【化48】
【0127】
4−ペンチルフェニル−4−アミノベンゾアート(20.0g、70.5mmol、明和化学工業株式会社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(120ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(17.6ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(5.11g、74.0mmol)の水溶液を加え、氷浴冷却下、1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に3,5−ジメチルアニリン(8.54g、70.5mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(120ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(23.1g、282.0mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物1−d(18.3g、収率62.4%)を得た。
【0128】
【化49】
【0129】
得られた中間生成物1−d(10.0g、24.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(6.0ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(1.74g、25.2mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器にm−トルイジン(2.57g、24.0mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(100ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(7.8g、96.0mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物2−d(8.4g、収率65.4%)を得た。
【0130】
【化50】
【0131】
得られた中間生成物2−d(5.0g、9.3mmol)をN−メチルピロリドン(150ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(2.34ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(0.68g、9.8mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下、1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に式(10d)で表わされる化合物(2.07g、10.2mmol)をN−メチルピロリドン(25ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(3.0g、37.2mmol)を加えて30分撹拌後、メタノール(175ml)を加え、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、式(1d)で表わされる本発明のアゾ系二色性色素(4.2g、収率59.9%)を得た。式(1d)で表わされるアゾ系二色性色素の
1H−NMRスペクトルを
図11に示す。上述した各測定方法により、オーダーパラメーター(S)の測定、吸収特性の評価、溶解度測定を行った。得られた結果を
図4及び表1にまとめて示す。
【0132】
このように、本発明の式(1d)で表わされるアゾ系二色性色素は、可視光領域に幅広い吸収特性を有し、オーダーパラメーター(S)の値が高く、各種有機溶剤への溶解性が良好であることから、とりわけ、調光剤、遮光剤などに好適に用いることができる。
【0133】
比較例1
[式(E1)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素の合成]
【0134】
【化51】
【0135】
特公昭63−1357号公報に記載されたアゾ化合物の合成方法に準じて調製した中間生成物1−e(5.0g、12.3mmol)をピリジン(24.5ml)と酢酸(122.5ml)との混合液に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(1.3ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(0.78g、11.3mmol)の水溶液を加えた。氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に式(10c)で表わされるN,N−ジエチルアニリン(2.02g、13.5mmol、東京化成工業株式会社製)を酢酸(20ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、メタノール(73.5ml)とトリエチルアミン(3.9ml)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、式(E1)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素(2.1g、収率28.6%)を得た。式(E1)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素の
1H−NMRスペクトルを
図12に示す。
【0136】
比較例2
[式(E2)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素の合成]
【0137】
【化52】
【0138】
p−アニシジン(10.0g、81.2mmol、東京化成工業社株式会社製)をアセトニトリル(10ml)と水(20ml)との混合液に分散させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(20.3ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(5.88g、85.2mmol)の水溶液を加え、更に氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器にアニリン(15.1g、162.4mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(180ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(7.3g、89.0mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物1−f(6.8g、収率36.9%)を得た。
【0139】
【化53】
【0140】
次いで、中間生成物1−f(5.0g、22.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)に分散させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(5.5ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(1.59g、23.1mmol)の水溶液を加え、更に、氷浴冷却下、1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に式(10c)で表わされるN,N−ジエチルアニリン(3.61g、24.2mmol)をメタノール(100ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(7.2g、88.0mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、式(E2)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素(5.4g、収率63.3%)を得た。式(E2)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素の
1H−NMRスペクトルを
図13に示す。
【0141】
比較例3
[式(E3)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素の合成]
【0142】
【化54】
【0143】
2−アミノベンゾチアゾール(10.0g、66.5mmol、東京化成工業株式会社製)を氷酢酸(50ml)と85wt%リン酸水溶液(50ml)との混合液に溶解させ、氷浴で冷却した。40wt%のニトロシル硫酸(21.1g)を添加し、氷浴冷却下、1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器にm−トルイジン(7.12g、66.5mmol、東京化成工業株式会社製)をアセトニトリル(150ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物1−g(10.1g、収率56.4%)を得た。
【0144】
【化55】
【0145】
次いで、中間生成物1−g(10.0g、37.2mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(200ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(9.31ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(2.69g、39.0mmol)の水溶液を加え、更に、氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器にm−トルイジン(3.98g、37.2mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(200ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(12.2g、148.8mmol)を加えて30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶法により精製し、中間生成物2−g(6.9g、収率48.0%)を得た。
【0146】
【化56】
【0147】
更に、中間生成物2−g(5.0g、12.9mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)に溶解させ、氷浴で冷却し、濃塩酸(3.23ml)を添加した後、亜硝酸ナトリウム(0.93g、13.5mmol)の水溶液を加え、更に、氷浴冷却下で1時間撹拌しジアゾ液を得た。別容器に式(10a)で表わされるN,N−ジブチルアニリン(3.18g、15.5mmol、東京化成工業株式会社製)をメタノール(100ml)に溶解させ、氷浴冷却下、前記ジアゾ液を加えた。得られた混合液を1時間撹拌後、酢酸ナトリウム(4.2g、51.6mmol)を加え、30分撹拌後、沈殿物を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび再結晶法により精製し、式(E3)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素(1.7g、収率21.8%)を得た。式(E3)で表わされる比較対象のアゾ系二色性色素の
1H−NMRスペクトルを
図14に示す。
【0148】
式(E1)〜(E3)で表わされる比較対象化合物についても前記実施例と同様にして、オーダーパラメーター(S)の測定、吸収特性の評価、溶解度測定を行った。得られた結果を
図5〜7及び表1にまとめて示す。
【0149】
【表1】