特開2016-148209(P2016-148209A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-148209(P2016-148209A)
(43)【公開日】2016年8月18日
(54)【発明の名称】ロープ連結材
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/06 20060101AFI20160722BHJP
【FI】
   E01F15/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-26079(P2015-26079)
(22)【出願日】2015年2月13日
(11)【特許番号】特許第5837242号(P5837242)
(45)【特許公報発行日】2015年12月24日
(71)【出願人】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】神鋼建材工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鐵住金建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】平澤 匡介
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】永石 充
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌克
(72)【発明者】
【氏名】大森 伯万
(72)【発明者】
【氏名】柴田 公茂
(72)【発明者】
【氏名】田代 元司
(72)【発明者】
【氏名】檜 弥生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義悟
(72)【発明者】
【氏名】山田 慶太
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA06
2D101DA04
2D101FA13
2D101FA25
2D101FB12
2D101FB15
2D101GA17
2D101HA14
(57)【要約】
【課題】ワイヤロープ間の間隔が押し広げられることを抑止しつつ、且つ、一部のワイヤロープに対して押し下げ若しくは押し上げの力が作用した場合においても、その力がワイヤロープ全体に即座に影響してしまうことを抑止することが可能なロープ連結材の提供。
【解決手段】ロープ連結材1を、ケーブル式防護柵100が有する複数のワイヤロープの何れかのワイヤロープ101に対して取り付ける取付部12と、取付部12が取り付けられるワイヤロープ以外を、上下方向の所定範囲内において遊嵌状態で保持するワイヤロープ遊嵌保持部11と、を備えることにより、ワイヤロープ遊嵌保持部11の高さhの範囲内において、ワイヤロープ101が比較的自由に動けると同時に、高さhの範囲以上にワイヤロープ間の間隔が押し広げられることを抑止する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル式防護柵に使用するロープ連結材であって、
前記ケーブル式防護柵の全てのワイヤロープ若しくは一部のワイヤロープを、上下方向の所定範囲内において遊びを持って保持するワイヤロープ遊嵌保持部を備えることを特徴とするロープ連結材。
【請求項2】
ケーブル式防護柵に使用するロープ連結材であって、
当該ロープ連結材を、前記ケーブル式防護柵が有する複数のワイヤロープの何れかのワイヤロープに対して取り付ける取付部と、
前記取付部が取り付けられるワイヤロープ以外の全てのワイヤロープ若しくは一部のワイヤロープを、上下方向の所定範囲内において遊びを持って保持するワイヤロープ遊嵌保持部と、
を備えることを特徴とするロープ連結材。
【請求項3】
前記取付部が、らせん状の鋼線で形成され、当該らせん状部分を前記ケーブル式防護柵のワイヤロープに対して巻き付けることで取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のロープ連結材。
【請求項4】
前記らせん状の鋼線の螺旋のピッチが、前記ケーブル式防護柵のワイヤロープの撚りピッチと略同一であることを特徴とする請求項3に記載のロープ連結材。
【請求項5】
前記ワイヤロープ遊嵌保持部が鋼線で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のロープ連結材。
【請求項6】
両端部分をらせん状に形成した1本の鋼線に対し、その中央部分をU字型に折り曲げることで前記ワイヤロープ遊嵌保持部を形成し、全体視としてT字型にすることで前記らせん状の両端部分によって前記取付部を形成したことを特徴とする請求項5に記載のロープ連結材。
【請求項7】
前記ワイヤロープ遊嵌保持部がらせん状の鋼線によって形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のロープ連結材。
【請求項8】
前記ワイヤロープ遊嵌保持部が、複数の空間部を有し、当該各空間部において前記ワイヤロープが遊嵌状態で保持されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のロープ連結材。
【請求項9】
前記取付部が取り付けられる前記ワイヤロープより上側のワイヤロープを、前記ワイヤロープ遊嵌保持部によって遊嵌状態で保持することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れかに記載のロープ連結材。
【請求項10】
前記ワイヤロープに対して所定以上の押し下げ力若しくは押し上げ力が加わった際に、前記取付部が前記ワイヤロープから外れることを特徴とする請求項2乃至請求項9の何れかに記載のロープ連結材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル式防護柵に使用するロープ連結材に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の交通安全対策としてガードケーブルなどのケーブル式の道路防護柵が汎用されている。
ケーブル式の防護柵では、ケーブルの柔軟性を利用して車両への衝撃を緩和するようにしているが、ケーブルの柔軟性ゆえに、車両衝突時に、所定の間隔を有する複数本のケーブルがバラバラに上下に動き、ケーブル間の間隔が押し広げられる場合がある。
ケーブル間の間隔が押し広げられると、そこからの飛び出し(突破事故)等が生じる危険性が高くなるため、ケーブル間隔の拡大を抑止するため等の目的で、各支柱間あたり1〜2箇所に、ケーブルの上下間隔を保持するための間隔保持材を設けることが行われている。ケーブル間隔が保持されることにより、衝突車両を面として受け止めることができる。
このような間隔保持材に関する従来技術が、特許文献1によって開示されている。
【0003】
また、ケーブル式の防護柵の一種として、車輌が衝突した際、防護柵が破壊されることでその衝突エネルギーを吸収し、車輌を安全に誘導できるようにした「ワイヤロープ式防護柵」がある。このようなワイヤロープ式防護柵を、例えば中央分離帯として使用する場合には、所定の衝突条件下において、反対車線へのはみ出し量を所定値以下とすることが求められている。
ワイヤロープ式防護柵は、通常、数百mを1スパンとして、複数のワイヤロープを一定長延展し、両端末を索端金具を介して端末支柱に繋止して張力を与えると共に、端末支柱間に所定の間隔で中間支柱を設置し、ワイヤロープの中間部を支持する構造になっている。
このようなワイヤロープ式防護柵に関する従来技術が、特許文献2によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−270467号公報
【特許文献2】特許第5156845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の間隔保持材は、特許文献1の図1図3にも示されているように、各ケーブルの間隔を保持・固定するものであった。
具体的には、従来の間隔保持材は、丸パイプにケーブル間隔に応じた切り欠きを設け、その切り欠きに各ケーブルを設置し、ピンで固定するものであり、従って、当該間隔保持材が取り付けられる部分においては、各ケーブルの間隔が固定されるものである。
【0006】
図5に、このような従来の間隔保持材30が取り付けられたガードケーブル200の概略説明図を示した。
間隔保持材30が取り付けられることにより、ケーブル201間の間隔が押し広げられることは抑止されるが、各ケーブル201の間隔が固定されることで、逆にマイナス作用が生じる場合があり得る。
例えば、図5に示されるように、大型車のタイヤTが接触した際、タイヤTの回転に巻き込まれる形で、ケーブル201を下に押し下げる力が作用する。このような場合、ガードケーブル200の設置高さ及びタイヤTの大きさ等の関係により、5段のケーブル201の内の下3段分のケーブル201にタイヤTが接触する場合が多い。即ち、タイヤTの回転に巻き込まれる下3段分のケーブル201に対して、下に押し下げる力が作用するものであるが、間隔保持材30が取り付けられていると、図6(a)、(b)に示されるように、タイヤTが接触していない上段のケーブル201も間隔保持材30によって下に押し下げられてしまう結果となる。これにより、ケーブル全体が下に押し下げられ、結果、下方に押し下げられて衝突車両の下方に入り込んでしまうため、下方のケーブル201は衝突車両の受け止めにあまり寄与せず、上側の数本のケーブル201のみで衝撃を受け止めることとなり、防護柵としての能力が低下するおそれがある。また、ケーブル全体が下に押し下げられることにより、ケーブル201を乗り越えた飛び出し(突破事故)が生じる危険性が高くなってしまうこともあり得るものであった。
【0007】
ワイヤロープ式防護柵の場合、このような問題がより顕著となり得る。上述のごとく、ワイヤロープ式防護柵では、防護柵が破壊されることでその衝突エネルギーを吸収するという設計思想であるため、車両の衝突時には、特許文献2の図16(a)〜(c)などで示されるように、中間支柱が破壊されるものである。
即ち、図7(a)、(b)に示したように、中間支柱102の破壊等により、ワイヤロープ101の中間部を支持する中間支柱102からワイヤロープ101が外れることになり、結果、ワイヤロープ101の支持間隔(スパンL)が非常に長くなり、タイヤの巻き込みによる押し下げが働くと、より容易にワイヤロープ101が押し下げられることとなる。
例えば、図7(b)、(c)に示したように、下段の2本のワイヤロープ101がタイヤに巻き込まれた際に、間隔保持材30によって上段の3本も引きずられるように押し下げられ、これにより、本来はタイヤに触れていなかった上段の3本についてもタイヤに接触・巻き込まれて、さらに押し下げられてしまうことが生じ得る。なお、図7(c)において、中央部の付近の間隔保持材30が短縮することを示しているものではなく、タイヤに巻き込まれることに伴って、間隔保持材30が紙面奥行き方向に倒れた状態を示しているものである。
このように、ワイヤロープ式防護柵100に対して従来の間隔保持材30を使用した場合、より容易にケーブル全体が下に押し下げられてしまうおそれがあり、防護柵としての能力の低下がより顕著となるおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、ワイヤロープ間の間隔が押し広げられることを抑止しつつ、且つ、一部のワイヤロープに対して押し下げ若しくは押し上げの力が作用した場合においても、その力がワイヤロープ全体に即座に影響してしまうことを抑止することが可能なロープ連結材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(構成1)
ケーブル式防護柵に使用するロープ連結材であって、前記ケーブル式防護柵の全てのワイヤロープ若しくは一部のワイヤロープを、上下方向の所定範囲内において遊びを持って保持するワイヤロープ遊嵌保持部を備えることを特徴とするロープ連結材。
【0010】
(構成2)
ケーブル式防護柵に使用するロープ連結材であって、当該ロープ連結材を、前記ケーブル式防護柵が有する複数のワイヤロープの何れかのワイヤロープに対して取り付ける取付部と、前記取付部が取り付けられるワイヤロープ以外の全てのワイヤロープ若しくは一部のワイヤロープを、上下方向の所定範囲内において遊びを持って保持するワイヤロープ遊嵌保持部と、を備えることを特徴とするロープ連結材。
【0011】
(構成3)
前記取付部が、らせん状の鋼線で形成され、当該らせん状部分を前記ケーブル式防護柵のワイヤロープに対して巻き付けることで取り付けられることを特徴とする構成2に記載のロープ連結材。
【0012】
(構成4)
前記らせん状の鋼線の螺旋のピッチが、前記ケーブル式防護柵のワイヤロープの撚りピッチと略同一であることを特徴とする構成3に記載のロープ連結材。
【0013】
(構成5)
前記ワイヤロープ遊嵌保持部が鋼線で形成されていることを特徴とする構成1乃至構成4の何れかに記載のロープ連結材。
【0014】
(構成6)
両端部分をらせん状に形成した1本の鋼線に対し、その中央部分をU字型に折り曲げることで前記ワイヤロープ遊嵌保持部を形成し、全体視としてT字型にすることで前記らせん状の両端部分によって前記取付部を形成したことを特徴とする構成5に記載のロープ連結材。
【0015】
(構成7)
前記ワイヤロープ遊嵌保持部がらせん状に形成されていることを特徴とする構成5又は構成6に記載のロープ連結材。
【0016】
(構成8)
前記ワイヤロープ遊嵌保持部が、複数の空間部を有し、当該各空間部において前記ワイヤロープが遊嵌状態で保持されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のロープ連結材。
【0017】
(構成9)
前記取付部が取り付けられる前記ワイヤロープより上側のワイヤロープを、前記ワイヤロープ遊嵌保持部によって遊嵌状態で保持することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れかに記載のロープ連結材。
【0018】
(構成10)
前記ワイヤロープに対して所定以上の押し下げ力若しくは押し上げ力が加わった際に、前記取付部が前記ワイヤロープから外れることを特徴とする請求項2乃至請求項9の何れかに記載のロープ連結材。
【発明の効果】
【0019】
本発明のロープ連結材によれば、ワイヤロープを所定範囲内において遊嵌状態で保持するワイヤロープ遊嵌保持部を備えているため、ワイヤロープ間の間隔が押し広げられることを“所定範囲内”で収めつつ、且つ、遊嵌状態であることにより、一部のワイヤロープに対して押し下げ若しくは押し上げの力が作用した場合においても、その力がワイヤロープ全体に即座に影響してしまうことを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態のロープ連結材を示す図
図2】実施形態のロープ連結材をワイヤロープ式防護柵に取り付けた状態を示す図であり、(a):単体部分を拡大した図、(b):全体概略図
図3】実施形態のロープ連結材の使用状態を説明する図
図4】ロープ連結材のバリエーションを示す図
図5】従来の間隔保持材が取り付けられたガードケーブルの概略説明図
図6】従来の間隔保持材の使用状態を説明する図
図7】従来の間隔保持材をワイヤロープ式防護柵に使用した状態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0022】
図1は、本実施形態のロープ連結材1を示す図である。
同図に示されるように、本実施形態のロープ連結材1は、ロープ連結材をケーブル式の防護柵が有する複数のワイヤロープの何れかのワイヤロープに対して取り付ける取付部12と、取付部12が取り付けられるワイヤロープ以外の全てのワイヤロープ若しくは一部のワイヤロープを、上下方向の所定範囲内において遊嵌状態で保持するワイヤロープ遊嵌保持部11と、を備える。
【0023】
本実施形態のロープ連結材1における取付部12とワイヤロープ遊嵌保持部11は、らせん状に形成された鋼線によって形成されるものである。図1に示されるように、ロープ連結材1は、1本のらせん状の鋼線に対し、その中央部分をU字型に折り曲げることでワイヤロープ遊嵌保持部11を形成し、U字型部分の上端で左右に略直角に折り曲げることで全体視としてT字型にすることで、らせん状の鋼線の両端部分によって取付部12が形成される。
【0024】
図2(a)、(b)は、ロープ連結材1をケーブル式の防護柵であるワイヤロープ式防護柵100に取り付けた状態を示す図である。
ワイヤロープ式防護柵100へのロープ連結材1の取り付けは、先ず、ワイヤロープ式防護柵100のワイヤロープ101の下方から、各ワイヤロープ101を、ワイヤロープ遊嵌保持部11のU字型部分の上端の開口部分に通すことで、ワイヤロープ遊嵌保持部11の空間内に各ワイヤロープ101をおさめる。 次に、図2(a)に示されるように、らせん状に形成された取付部12を、ワイヤロープ101(本実施形態では最上段のワイヤロープ101)に対して巻き付けることで、ロープ連結材1をワイヤロープ式防護柵100に取り付ける。
これにより、取付部12が取り付けられる最上段のワイヤロープ101以外の全てのワイヤロープ101が、ワイヤロープ遊嵌保持部11内に納まるように取り付けられる。
本実施形態では、図2(a)に示されるように、ワイヤロープ遊嵌保持部11が、最下段のワイヤロープ101よりさらに下側まで延設されたものを例としている。これにより、最上段のワイヤロープ101に対し、ワイヤロープ遊嵌保持部11の上下方向の寸法h内において遊嵌状態に下側4本のワイヤロープ101が保持される。即ち、ワイヤロープ遊嵌保持部11は、ワイヤロープ101が、ワイヤロープ遊嵌保持部11内において上方向または下方向へ移動することを可能とすると共に、ワイヤロープ101の上方向または下方向への移動が所定範囲を超える場合に、ワイヤロープ101に対し移動を制限する力を加えるものである。
図2(b)に示されるように、本実施形態では、ワイヤロープ式防護柵100の中間支柱102の間に1つのロープ連結材1を取り付けたものを例としている。
なお、ワイヤロープ式防護柵100は、図2(b)に示されるように、数百mを1スパンとして、複数のワイヤロープを一定長延展し、両端末を索端金具を介して端末支柱103に繋止して張力を与えると共に、端末支柱103の間に所定の間隔で中間支柱102を設置し、ワイヤロープの中間部を支持する構造になっている。本実施形態では、ワイヤロープが5段のものを用いている。
【0025】
図3(a)〜(c)は、本実施形態のロープ連結材1の使用状態を説明する概略図である。
図3(a)は、前述のごとく、ロープ連結材1がワイヤロープ式防護柵100に取り付けられた状態を示し、図3(b)は、車両衝突時の中間支柱102の破壊等により、ワイヤロープ101が中間支柱102から外れ、中間支柱102の間隔が広くなってしまっている状態を示している。
【0026】
このように、中間支柱102の間隔が広くなってしまっている状態において、例えば、図3(b)に示したように、下段の2本のワイヤロープ101がタイヤに巻き込まれた際、図3(c)に示されるように、下段の2本のワイヤロープ101が押し下げられる。
この際、本実施形態のロープ連結材1では、ワイヤロープ101を上下方向の所定範囲(寸法h)内において遊嵌状態で保持するワイヤロープ遊嵌保持部11を有するため、ワイヤロープ遊嵌保持部11内において、ワイヤロープ101は拘束されずに上下に移動することができる。なお、本実施形態では、ワイヤロープ遊嵌保持部11が、らせん状の鋼線によって形成されているため、ワイヤロープ遊嵌保持部11に張力がかかった図3(c)の状態では、張力がかかっていない図3(a)の状態より寸法hの長さが長くなる。
従って、図3(c)からも理解されるように、下段の2本のワイヤロープ101が押し下げられても、これによって即座に上段側のワイヤロープ101が押し下げられることはなく、且つ、ワイヤロープ遊嵌保持部11によって、所定間隔(寸法h)以上ワイヤロープ101の間隔が広がることが抑止されているため、衝突車両を面として受け止めることができるものである。
【0027】
図7(c)で説明したように、ワイヤロープ式防護柵100に対して従来の間隔保持材30を使用した場合、より容易にケーブル全体が下に押し下げられてしまうおそれがあったが、本実施形態のロープ連結材1によれば、上記のごとく、ワイヤロープ101の間隔が押し広げられることを抑止しつつ、且つ、一部のワイヤロープ101に対して押し下げ力が作用した場合においても、その力がワイヤロープ全体に即座に影響してしまうことを抑止することが可能であるため、衝突車両を面として受け止めることができ、防護柵としての能力低下を抑止することができる。
【0028】
(実験例及び比較例)
次に、本発明に係るロープ連結材に関する実験結果を示す。当該実験は、ワイヤロープ式防護柵の性能確認試験のために、苫小牧寒地試験道路においてテストドライバーによる実車衝突実験を行ったものである。
【0029】
実験は、Bm種(一般道路)のワイヤロープ式防護柵の仕様検討のための実験として、ロープ連結材を使用せずに行ったBm種実験1と、Am種対応の分離帯としてのワイヤロープ式防護柵の仕様検討のための実験として、ロープ連結材を使用せずに行ったAm種実験1、ロープ連結材Aを使用して行ったAm種実験2、ロープ連結材Bを使用して行ったAm種実験3を行った。
衝突実験に使用したワイヤロープ式防護柵の仕様(各実験に共通する条件)は以下の通りである。
支柱径 :89.1mm
支柱板厚 :4.2mm
支柱埋込長 :700mm
ロープ段数 :5段
最上段ロープ高さ:970mm
最下段ロープ高さ:530mm
各ロープの間隔 :110mm
【0030】
各実験の衝突条件は表1の通りである。
【0031】
【表1】
【0032】
また、各実験条件は表2の通りである。
【0033】
【表2】

Am種実験2で使用したロープ連結材Aは、ワイヤロープ遊嵌保持部11の長さが620mmであり、図2(a)に示したごとく、最下段のワイヤロープ101よりさらに下側までワイヤロープ遊嵌保持部11が延設されたものである。一方、Am種実験3では、ワイヤロープ遊嵌保持部11の長さが460mmであり、図4(a)に示したごとく、ワイヤロープ遊嵌保持部11の下端が、最下段のワイヤロープ101とほぼ同等の位置となるロープ連結材Bを使用した。
【0034】
各実験結果を表3に示す。なお、進入行程とは、反対側へのはみ出し量のことである。ただし、タイヤ幅は計上しないため、進入行程=はみ出し量−タイヤ幅である。また、離脱とは、衝突後に衝突車両がワイヤロープ式防護柵から離れることであり、離脱速度、離脱角度は、それぞれ、衝突車両がワイヤロープ式防護柵から離れる際の速度と角度である。
【0035】
【表3】
【0036】
上記各実験は、ワイヤロープ式防護柵の仕様検討のための実験として行ったものであり、本発明に係るロープ連結材のためだけに行ったものではなく、限られた実験回数(テストドライバーによる実車衝突実験であり、破壊試験であること及び危険な試験であることから回数が限られる)の中で、様々な要因を検討する必要があったため、ロープ連結材の有無だけを対比できるデータとはなっていないが、本発明に係るロープ連結材を使用したAm種実験2とAm種実験3では、明らかに進入行程が小さな値となった。
即ち、同じAm種の実験結果として、ロープ連結材を使用しなかったAm種実験1では、進入行程が1.18mであったのに対して、本発明に係るロープ連結材を使用したAm種実験2とAm種実験3では、それぞれ、0.69mと0.96mであった。
Bm種実験とAm種実験では、衝撃度において2倍以上の差があるが、ロープ連結材を使用しなかったBm種実験1と、本発明に係るロープ連結材を使用したAm種実験2において、同程度の進入行程であった。
【0037】
これらの結果は、下段の一部のワイヤロープに対して押し下げ力が作用した場合においても、本発明に係るロープ連結材によって、その力が上段のワイヤロープに即座に影響してしまうことが抑止され、その間に上段のワイヤロープが衝突車両の車体にくい込み、下段のロープが下げられる力に対して、上段のロープと連結して抵抗する力が生じたため、衝突車両を面として受け止めることができ、車両を押し留める能力が維持されたことを示唆した。
【0038】
なお、実施形態及び各実験では、1本のらせん状の鋼線を折り曲げることによってロープ連結材1を形成したものを例としたが本発明をこれに限るものではない。
例えば、取付部12は、ロープ連結材1をワイヤロープ101に対して取り付けることができるものであればよい。即ち、ワイヤロープ遊嵌保持部11内にワイヤロープ101をおさめた上で、その範囲内(図3(c)におけるh内)において遊嵌的、且つ、hの範囲以上に広がらないように保持することができるように、取り付けることができるものであればよい。例えば、各種取付金具(クリップ金具やカシメ金具等)によって、取付部12が構成されてもよいが、本実施形態のものによれば、簡便な構造で部品点数の増加等も無く、好適である。
実験例としては、取付部12の長さが300mmのものを使用しているが、取付力や作業性の観点から適宜その長さを変更してもよい。また、図4(a)に示したように、端部等において結束バンド13を使用する等してもよい。
本実施形態のごとく、取付部12をらせん状の鋼線で形成する場合には、そのピッチをワイヤロープ101の撚りのピッチと同じにしてもよい。これにより、ワイヤロープ101の撚りの谷部に、取付部12であるらせん状の鋼線を這わせて取り付けることができ、ワイヤロープ101と取付部12の間の摩擦力が増大されると共に、外観的にもすっきりとした施工が可能となる。
【0039】
ワイヤロープ遊嵌保持部11についても、実施形態ではらせん状の鋼線によって形成するものを例としているが、これに限るものではなく、ワイヤロープ101をおさめた上で、その範囲内(図3(c)におけるh内)において遊嵌的、且つ、hの範囲以上に広がらないように保持することができるものであればよい。例えば、ストレート状の鋼線によって形成されるものであってもよく、鋼線以外の鋼材で形成されてもよい。ただし、所定の強度を有しつつ、なるべく軽量にするためには鋼線が有利である。また、らせん状に形成することにより、上記説明したごとく、図3(c)におけるhの長さが弾性的に伸び縮みするように形成ことができ、“遊嵌的”の遊び範囲を確保しつつも、平常時において、ワイヤロープ101の最下段からワイヤロープ遊嵌保持部11があまり延設しないようにすることができる。
実施形態では、ワイヤロープ遊嵌保持部11が1つの空間であり、その中に下段側の4本のワイヤロープ101が全ておさめられるものを例としたが、ワイヤロープ遊嵌保持部11が複数の空間で形成され、それぞれの空間に1本または複数のワイヤロープ101がおさめられるものであってもよい。例えば、図4(b)に示したように、ワイヤロープ遊嵌保持部11のU字部分をツイストすることにより、ワイヤロープ遊嵌保持部11を2つの空間11A、11Bに分割し、それぞれに2本ずつワイヤロープ101を通すようなものであってもよいし、ワイヤロープ遊嵌保持部11を4つの空間に分割し、それぞれにワイヤロープ101を通すようなものであってもよい。これにより、各ワイヤロープの上下方向に動ける自由度を調節することも可能であり、その自由度の個別設定も可能である。
また、実験例では、ワイヤロープ遊嵌保持部11の長さが620mmと460mmのものを使用しているが、取付対象であるワイヤロープ式防護柵の仕様等に応じて適宜その長さを変更してよい。ここまでの説明から明らかなように、ワイヤロープ遊嵌保持部11を短くすると、各ワイヤロープの間隔が押し広げられることを抑止する力が強くなるが、一部のワイヤロープに対して押し下げ若しくは押し上げの力が作用した場合に、その力が他のワイヤロープ影響し易い傾向となる。一方、ワイヤロープ遊嵌保持部11を長くすると、各ワイヤロープの間隔が押し広げられることを抑止する力が弱くなるが、一部のワイヤロープに対して押し下げ若しくは押し上げの力が作用した場合に、その力が他のワイヤロープ影響し難い傾向となる。これらのトレードオフを考慮し、ワイヤロープ式防護柵の仕様や設置環境等を考慮した上で、適宜ワイヤロープ遊嵌保持部11の長さを定めればよい。
【0040】
実施形態では、最上段のワイヤロープ101に対して取付部12を取り付け、残りのワイヤロープ101を全てワイヤロープ遊嵌保持部11におさめるものを示したが、これに限るものではない。
例えば、図4(c)に示したごとく、2段目のワイヤロープ101に取付部12を取り付けるようなものであってもよく(任意のワイヤロープ101に取り付けることができる)、ワイヤロープ遊嵌保持部11におさめるワイヤロープ101の数も任意に設定してよい。例えば、上側の2〜4本をワイヤロープ遊嵌保持部11におさめるものや、下側の2〜4本をワイヤロープ遊嵌保持部11におさめるもの等であってよい。
また、図4(d)に示したごとく、下段側のワイヤロープ101に対して取付部12を取り付け、上段側に向けたワイヤロープ遊嵌保持部11によってワイヤロープ101を収めるものであってもよい。
図4(e)には、下段側のワイヤロープ101に対して取付部12を取り付け、上段側に向けたワイヤロープ遊嵌保持部11によってワイヤロープ101を収めるものであって、ワイヤロープ101に対して所定以上の押し下げ力が加わった際に、取付部12がワイヤロープ101から外れるように構成されたものを示した。 ここではらせん状に形成される取付部12の長さを適宜短くすることにより、所定の押し下げ力が加わった際に、取付部12がワイヤロープ101から外れるようにしたものを示している。
図4(f)は、図4(e)に対し、ワイヤロープ遊嵌保持部11をツイストすることにより、ワイヤロープ遊嵌保持部11を4つの空間に分割し、それぞれに1本ずつワイヤロープ101を通すようにしたものである。これにより、図4(e)に対し、各ワイヤロープの連動性が高くなり、押し下げ力に対する抵抗力が強くなる。
図4(g)には、図4(f)に対し、取付部12を、ワイヤロープ101に対して巻き付けるのではなく、取付部12どうしを撚り合わせることによって、ワイヤロープ101に対して取り付けるものを示した。これにより、ワイヤロープ101に対して押し下げ力が加わった際に、取付部12がより外れやすくなる。
【0041】
実施形態では、各中間支柱102の間に1つのロープ連結材1を取り付けるものを例としたが、複数のロープ連結材1を取り付けるようにしてもよい。この際に、図4(a)と図4(c)のように取り付けるワイヤロープの段を変えて取り付けたり、図4(a)と図4(d)のように取付方向を変えて取り付けるようにしてもよい。
【0042】
以上のごとく、ワイヤロープ式防護柵の仕様や設置環境、想定する衝突車両や状況等に応じて、適宜効果的な取付方法を選択することができる。
【符号の説明】
【0043】
1...ロープ連結材
11...ワイヤロープ遊嵌保持部
12...取付部
100...ワイヤロープ式防護柵(ケーブル式防護柵)
101...ワイヤロープ
102...中間支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2015年8月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突車両の受け止めのためのケーブル式防護柵に取り付けるロープ連結材であって、
前記ケーブル式防護柵の全てのワイヤロープ若しくは一部のワイヤロープを、上下方向の所定範囲内において遊びを持って保持するワイヤロープ遊嵌保持部を備えることを特徴とするロープ連結材。
【請求項2】
衝突車両の受け止めのためのケーブル式防護柵に取り付けるロープ連結材であって、
当該ロープ連結材を、前記ケーブル式防護柵が有する複数のワイヤロープの何れかのワイヤロープに対して取り付ける取付部と、
前記取付部が取り付けられるワイヤロープ以外の全てのワイヤロープ若しくは一部のワイヤロープを、上下方向の所定範囲内において遊びを持って保持するワイヤロープ遊嵌保持部と、
を備えることを特徴とするロープ連結材。
【請求項3】
前記取付部が、らせん状の鋼線で形成され、当該らせん状部分を前記ケーブル式防護柵のワイヤロープに対して巻き付けることで取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のロープ連結材。
【請求項4】
前記らせん状の鋼線の螺旋のピッチが、前記ケーブル式防護柵のワイヤロープの撚りピッチと略同一であることを特徴とする請求項3に記載のロープ連結材。
【請求項5】
前記ワイヤロープ遊嵌保持部が鋼線で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のロープ連結材。
【請求項6】
両端部分をらせん状に形成した1本の鋼線に対し、その中央部分をU字型に折り曲げることで前記ワイヤロープ遊嵌保持部を形成し、全体視としてT字型にすることで前記らせん状の両端部分によって前記取付部を形成したことを特徴とする請求項5に記載のロープ連結材。
【請求項7】
前記ワイヤロープ遊嵌保持部がらせん状の鋼線によって形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のロープ連結材。
【請求項8】
前記ワイヤロープ遊嵌保持部が、複数の空間部を有し、当該各空間部において前記ワイヤロープが遊嵌状態で保持されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のロープ連結材。
【請求項9】
前記取付部が取り付けられる前記ワイヤロープより上側のワイヤロープを、前記ワイヤロープ遊嵌保持部によって遊嵌状態で保持することを特徴とする請求項乃至請求項8の何れかに記載のロープ連結材。
【請求項10】
前記ワイヤロープに対して所定以上の押し下げ力若しくは押し上げ力が加わった際に、前記取付部が前記ワイヤロープから外れることを特徴とする請求項2乃至請求項9の何れかに記載のロープ連結材。