【実施例】
【0085】
次に、本発明を実施例、参考例、比較例、試験例及び比較試験例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
フェニルエーテル化合物(1)の同定には、以下の分析方法を用いた。
1H−NMR及び
19F−NMRの測定には、Bruker ULTRASHIELD AVANCE II(400MHzおよび376MHz)を用いた。
1H−NMRは、重クロロホルム(CDCl
3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
19F−NMRは、重クロロホルム(CDCl
3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてベンゾトリフルオリドを用いて測定した。
【0087】
本発明の電解液の物性評価には、以下の評価方法を用いた。サイクリックボルタンメトリー(CV)の測定は、マルチチャンネルポテンショスタット/ガルバノスタット(VMP−3)を用いて行った。CV測定は、アルゴン雰囲気下、10mMのフェニルエーテル化合物(1)及び1.0Mの支持電解質(六フッ化リン酸リチウム)を含むエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶液(体積比:3/7)を調製し、これに作用電極として白金、基準電極としてリチウム箔、対極としてリチウム箔を挿入し、25,50,100,200mV/sの各走査速度にて測定を行った。CV測定の結果から、酸化還元電位(E
1/2)及び拡散係数Dを算出した。E
1/2は、可逆なボルタノグラムにおける酸化及び還元ピークの半波電位である。拡散係数D(cm
2/s)は、式(4)
I
p=2.69×10
5n
(3/2)AD
(1/2)v
(1/2)c (4)
(式中、I
pは酸化ピーク電流値(A)、nは移動電子数、Aは作用電極面積(cm
2)、vは電位の走査速度(V/s)及びcは本発明のレドックスシャトル剤の濃度(mol/cm
3)を表す。)に従って算出した。リニアスィープボルタンメトリー(LSV)測定は、マルチチャンネルポテンショスタット/ガルバノスタット(VMP−3)を用いて行った。LSV測定は、アルゴン雰囲気下、10mMのフェニルエーテル化合物(1)及び0.1Mの支持電解質(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)を含むエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶液(体積比:3/7)を調製し、これに作用電極として白金、基準電極としてリチウム箔、対極としてリチウム箔を挿入し、5mV/sの走査速度にて測定を行った。LSV測定の結果から、電流密度が−0.2mA/cm
2の時の電位を、還元分解電位とした。電池試験は、はじめにアルゴン雰囲気下、1.0Mの支持電解質及び0.1Mのフェニルエーテル化合物(1)を含む、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶媒(体積比:3/7)を調整し、本発明の電解液を得た。次にセパレータ6(無機フィラー含有ポリオレフィン、日本板硝子製)を挟んで正極1(活物質:コバルト酸リチウム、単層シートプレス品、パイオトレック製)、負極4(活物質:天然球状グラファイト、単層シートプレス品、パイオトレック製)を対向配置し、負極ステンレス製キャップ3にステンレス製板バネ5を設置し、負極4、セパレータ6および正極1からなる積層体をコイン型セル内に収納した。この積層体に本発明の電解液を注入した後、ガスケット7を配置後、正極ステンレス製キャップ2をかぶせ、コイン型セルケースをかしめることで電池素子を得た(
図1)。 上記電池素子をマルチチャンネルポテンショスタット/ガルバノスタット(VMP−3)を用いて、25℃の恒温条件下、0.1Cの充電電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。この操作を3回行った後に25℃の恒温条件下、0.2Cで定電流充電を行い、4.95Vを上限電圧として、容量が規定の2倍(6mAh)になるまで充電を行い、その後、充電した電池素子を0.2Cで、3.0Vまで定電流放電を行った。
実施例−1
【0088】
【化22】
【0089】
アルゴン雰囲気下、ふた付きテストチューブに2,4−ジ−tert−ブチルフェノール(103mg,0.5mmol)及び炭酸カリウム(104mg,0.8mmol)を取り、DMF(0.5mL)に溶解した。さらにp−トルエンスルホン酸2,2,2−トリフルオロエチル(381mg,1.5mmol)を加え、150℃にて17時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にジエチルエーテルを加え、SiO
2プラグを用いてろ過した。ろ液を減圧留去することで目的の2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンを無色油状物として得た(110mg,76%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.30(s,9H),1.39(s,9H),4.33(q,J=8.2Hz,2H),6.68(d,J=8.5Hz,1H),7.18(dd,J=8.5,2.4Hz,1H),7.36(d,J=2.4Hz,1H)
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ−74.1(t,J=8.2Hz,3F).
実施例−2
【0090】
【化23】
【0091】
窒素雰囲気下、ふた付きテストチューブに4,6−ジ−tert−ブチルー2−フルオロフェノール(The Journal of Organic Chemistry,1981年,46巻,3784−3789頁に従い合成:224mg,1.00mmol)及び炭酸カリウム(159mg,1.15mmol)を取り、アセトン(1.0mL)に溶解した。さらにトリフルオロメタンスルホン酸2,2,2−トリフルオロエチル(267mg,1.15mmol)を加え、80℃にて24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルム及び飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)で精製し、4,6−ジ−tert−ブチルー2−フルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンを白色固体として得た(277mg,収率91%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.29(s,9H),1.39(s,9H),4.46(q,J=8.4Hz,2H),6.98(d,J=14.4Hz,1H),7.10(s,1H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ−130.3(d,J=14.4Hz,1F),−74.9(t,J=8.4Hz,3F).
実施例−3
【0092】
【化24】
【0093】
窒素雰囲気下、ふた付きテストチューブに4−tert−ブチルー2−フルオロフェノール(The Journal of Organic Chemistry,1981年,46巻,3784−3789頁に従い合成:168mg,1.00mmol)及び炭酸カリウム(159mg,1.15mmol)を取り、アセトン(1.0mL)に溶解した。さらに トリフルオロメタンスルホン酸2,2,2−トリフルオロエチル(267mg,1.15mmol)を加え、80℃にて24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルム及び飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)で精製し、4−tert−ブチルー2−フルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンを無色油状物として得た(187mg,収率75%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.29(s,9H),4.39(q,J=8.0Hz,2H),6.96(dd,J=8.8Hz,J=8.8Hz,1H),7.33(d,J=8.8Hz,1H),7.13(d,J=13.6Hz,1H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):−133.3(dd,J=13.6Hz,J=8.8Hz,1F),−74.9(t,J=8.0Hz,3F).
実施例−4
【0094】
【化25】
【0095】
窒素雰囲気下、シュレンク管に4−tert−ブチルー2−フルオロフェノール(1.00g,5.94mmol)を取り、ジメチルスルホキシド(20mL)に溶解し、続いて60%−油分散水素化ナトリウム(262mg,6.54mmol)を加えた。さらに1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(1.85g,7.13mmol)を加え、50℃にて21時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にジエチルエーテル及び飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をシュレンク管に移し、酢酸(20mL)に溶解した。さらに亜鉛(2.55g,39.0mmol)を加え、80℃にて24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にジクロロメタンを加え、セライトろ過を行い、得られたろ液を2%水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水、純水で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、4−tert−ブチルー2−フルオロ−1−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)ベンゼンを無色油状物として得た(717mg,収率44.9%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.32(s,9H),5.96(t,J=53Hz,1H),7.20(m,3H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ−137.2(d,J=53Hz,2F),−130.0(m,1F),−89.4(s,2F).
実施例−5
【0096】
【化26】
【0097】
窒素雰囲気下、テフロン容器に1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(1.91g,6.68mmol)をジクロロメタン(65mL)に溶解した。この混合物を−78℃に冷却し、70%−ピリジン=フッ化水素錯体(4.5g,173mmol)を加え、続いてO−4,6−ジ−tert−ブチル−2−フルオロフェニル S−メチル ジチオカルボネート(700mg,2.23mmol)をジクロロメタン(65mL)に溶解した溶液をゆっくり滴下し、−20℃にて2.5時間撹拌した。反応液に氷水を加え、水層を分離後、有機層を5%−亜硫酸ナトリウム水溶液、2%−水酸化ナトリウム水溶液及び純水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、目的物の4,6−ジ−tert−ブチルー2−フルオロ−1−トリフルオロメトキシベンゼン及び3−ブロモ−4,6−ジ−tert−ブチルー2−フルオロ−1−トリフルオロメトキシベンゼンの混合物を得た。
【0098】
窒素雰囲気下、上記にて合成した4,6−ジ−tert−ブチルー2−フルオロ−1−トリフルオロメトキシベンゼン及び3−ブロモ−4,6−ジ−tert−ブチルー2−フルオロ−1−トリフルオロメトキシベンゼンの混合物をTHF(10mL)に溶解した。これを−78℃に冷却し、n-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.63M,1.1mL
,1.76mmol)を滴下し、30分撹拌した後、0℃に昇温した。反応液にジエチルエーテル及び飽和塩化ナトリウム水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮した。得られた油状物を、窒素雰囲気下、THF(10mL)に溶解した。この溶液を−78℃に冷却し、n-ブチルリチウム/ヘキサ
ン溶液(1.63M,2.0mL,3.26mmol)を滴下し、3時間撹拌した後、0℃に昇温した。反応液にジエチルエーテル及び飽和塩化ナトリウム水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、4,6−ジ−tert−ブチル−2−フルオロ−1−トリフルオロメトキシベンゼンを無色油状物として得た(182mg,収率27.4%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ1.30(s,9H),1.40(s,9H),7.04(d,J=12.4Hz,1H),7.17(s,1H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3)δ−127.6(qd,19.6,12.4Hz,1F),−55.3(d,J=19.6Hz,3F).
実施例−6
【0099】
【化27】
【0100】
アルゴン雰囲気下、ふた付きテストチューブに炭酸セシウム(4.56g,14.0mmol)、ヨウ化銅(190mg,1.0mmol)、4−tert−ブチルヨードベンゼン(2.60g,1.79mL,10.0mmol)、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール(3.00g,1.99mL,20.0mmol)、及び2−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル(340mg,318μL,2.0mmol)を取り、81℃にて17時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルムを加え、シリカゲルを用いてろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製し、目的の4−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ)ベンゼンを無色透明の油状物として得た(1.23g,4.3mmol,43%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.34(d,J=8.9Hz,2H),6.88(d,J=8.9Hz,2H),4.40(t,J=12.4Hz,2H),1.31(s,9H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ-83.41(s,3F),-123.44(s,2F).
実施例−7
【0101】
【化28】
【0102】
アルゴン雰囲気下、ふた付きテストチューブに炭酸セシウム(4.56g,14.0mmol)、ヨウ化銅(190mg,1.0mmol)、4−tert−ブチルヨードベンゼン(2.60g,1.79mL,10.0mmol)、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタノール(4.00g,2.50mL,20.0mmol)、及び2−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル(340mg,318μL,2.0mmol)を取り、98℃にて17時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルムを加え、シリカゲルを用いてろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製し、目的の4−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルオキシ)ベンゼンを無色透明の油状物として得た(2.12g,6.4mmol,64%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.34(d,J=8.9Hz,2H),6.88(d,J=8.9Hz,2H),4.44(t,J=12.9Hz,2H),1.31(s,9H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ-80.74(t,J=9.8Hz,3F),-119.42〜-119.50(m,2F),-121.96(t,J=9.0Hz,4F),-122.70(s,2F),-123.09(s,2F),-126.04〜-126.12(m,3F).
実施例−8
【0103】
【化29】
【0104】
アルゴン雰囲気下、ふた付きテストチューブに炭酸セシウム(456mg,1.4mmol)、ヨウ化銅(19mg,0.1mmol)、4−tert−ブチルヨードベンゼン(260mg,179μL,1.0mmol)、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクタノール(800mg,2.0mmol)、及び2−オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル(34mg,32μL,0.2mmol)を取り、164℃にて10時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルムを加え、シリカゲルを用いてろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製し、目的の4−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルオキシ)ベンゼンを無色透明の油状物として得た(359mg,0.67mmol,67%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.34(d,J=8.9Hz,2H),6.88(d,J=8.9Hz,2H),4.45(t,J=12.9Hz,2H),1.30(s,9H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ-80.86(t,J=9.1Hz,3F),-120.47〜-120.55(m,2F),-127.48(s,2F).
実施例−9
【0105】
【化30】
【0106】
アルゴン雰囲気下、ニトロメタン(5.2mL)に懸濁した塩化亜鉛(2.73g,20.0mmol)に4−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ)ベンゼン(565mg,478μL,2.0mmol)及び塩化tert−ブチル(1.85g,2.18mL,2.0mmol)を加え、室温にて21時間攪拌した。反応終了後、クロロホルムで有機層を抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、及び飽和食塩水で洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え乾燥した後、乾燥剤をろ別し、溶液を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製し、目的の2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ)ベンゼンを無色透明の油状物として得た(427mg,1.26mmol,63%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.38(d,J=2.5Hz,1H),7.20(dd,J=2.5,8.5Hz,1H),6.73(d,J=8.5Hz,1H),4.41(td,J=12.7Hz,2H),1.39(s,9H),1.31(s,9H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ-83.33(s,3F),-122.76(s,2F).
実施例−10
【0107】
【化31】
【0108】
アルゴン雰囲気下、ニトロメタン(5.2mL)に懸濁した塩化亜鉛(2.73g,20.0mmol)に4−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルオキシ)ベンゼン(665mg,536μL,2.0mmol)及び塩化tert−ブチル(1.85g,2.18mL,2.0mmol)を加え、室温にて96時間攪拌した。反応終了後、クロロホルムで有機層を抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、及び飽和食塩水で洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え乾燥した後、乾燥剤をろ別し、溶液を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製し、目的の2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルオキシ)ベンゼンを無色透明の油状物として得た(431mg,1.1mmol,55%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ7.38(d,J=2.5Hz,1H),7.20(dd,J=2.5,8.5Hz,1H),6.73(d,J=8.5Hz,1H),4.45(t,J=13.3Hz,2H),1.39(s,9H),1.31(s,9H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ-80.82(t,J=9.4Hz,3F),-119.87〜-119.80(m,2F),-126.06(q,J=16.1Hz,2F).
実施例−11
【0109】
【化32】
【0110】
アルゴン雰囲気下、ニトロメタン(5.2mL)に懸濁した塩化亜鉛(2.73g,20.0mmol)に4−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルオキシ)ベンゼン(1.07g,739μL,2.0mmol)及び塩化tert−ブチル(1.85g,2.18mL,2.0mmol)を加え、室温にて96時間攪拌した。反応終了後、クロロホルムで有機層を抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、及び飽和食塩水で洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え乾燥した後、乾燥剤をろ別し、溶液を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製し、目的の2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルオキシ)ベンゼンを無色透明の油状物として得た(763mg,1.3mmol,65%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.38(d,J=2.5Hz,1H),7.20(dd,J=2.5,8.5Hz,1H),6.73(d,J=8.5Hz,1H),4.46(t,J=13.4Hz,2H),1.39(s,9H),1.31(s,9H).
19F−NMR(376MHz,CDCl3):δ-80.72(t,J=9.7Hz,3F),-118.78(t,J=6.2Hz,2F),-121.918(t,J=9.0Hz,4F),-122.75(d,J=46.0Hz,4F),-126.06(q,J=16.4Hz,2F).
参考例−1
【0111】
【化33】
【0112】
窒素雰囲気下、60%−油分散水素化ナトリウム(220mg,5.51mmol)を取り、DMF(3.0mL)に懸濁した。0℃まで冷却し、4,6−ジ−tert−ブチルー2−フルオロフェノール(1.03g,4.59mmol)をDMF(6.0mL)に溶解した溶液を滴下し、室温にて1時間撹拌した。この混合物を0℃に冷却し、二硫化炭素(699mg,9.18mmol)を加え同温にて30分、さらに室温で16時間撹拌した。ここにヨウ化メチル(782mg,5.51mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にヘキサン及び飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、O−4,6−ジ−tert−ブチル−2−フルオロフェニル S−メチル ジチオカルボネートを微黄色油状物として得た(967mg,収率66.0%)。
比較例−1
【0113】
【化34】
【0114】
アルゴン雰囲気下、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン(2.75g,12.4mmol)及び炭酸カリウム(5.12g,37.1mmol)を取り、アセトン(30mL)に懸濁した。この混合物に2,2,2−トリフルオロエチル トリフルオロメタンスルホン酸エステル(5.34mL,37.1mmol)を加え、60℃にて24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にクロロホルム及び飽和塩化ナトリウム水を加え、水層を分離後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、ろ液を減圧濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)で精製し、目的の1,2−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼンを白色固体として得た(3.58g,75%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ1.30(s,9H),δ1.39(s,9H),δ4.33(q,J=8.2Hz,2H),δ6.68(d,J=8.5Hz,1H),δ7.18(dd,J=8.5,2.4Hz,1H),δ7.36(d,J=2.4Hz,1H).
19F−NMR(376MHz,CDCl
3):δ−74.1(t,J=8.2Hz,3F).
【0115】
試験例−1
実施例−1にて合成した2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼン用いて電解液を調整し、CV測定を行った。
図2に、走査速度100mV/Sの時のサイクリックボルタモグラムを示した。得られたサイクリックボルタモグラムから、E
1/2=4.7V(vs.Li/Li
+)であり、高い酸化還元電位を
有し、可逆な酸化還元挙動を示す事が分かった。また、拡散係数Dは、2.2×10
−6cm
2/sであった。
【0116】
試験例−2
実施例−2で合成した4,6−ジ−tert−ブチル−2−フルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンを用いて電解液を調整し、CV測定を行った。
図3に、走査速度100mV/Sの時のサイクリックボルタモグラムを示した。得られたサイクリックボルタモグラムから、E
1/2=4.9V(vs.Li/Li
+)であり、高い
酸化還元電位を有し、可逆な酸化還元挙動を示す事が分かった。
【0117】
試験例−3
実施例−3で合成した4−tert−ブチル−2−フルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンを用いて電解液を調整し、CV測定を行った。
図4に、走査速度100mV/Sの時のサイクリックボルタモグラムを示した。得られたサイクリックボルタモグラムから、E
1/2=4.9V(vs.Li/Li
+)であり、高い酸化還元
電位を有し、可逆な酸化還元挙動を示す事が分かった。
【0118】
試験例−4
実施例−4で合成した4−tert−ブチルー2−フルオロ−1−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)ベンゼンを用いて電解液を調整し、CV測定を行った。得られたサイクリックボルタモグラムから、E
1/2=5.3V(vs.Li/Li
+)であり
、高い酸化還元電位を有し、可逆な酸化還元挙動を示す事が分かった。
【0119】
試験例−5
実施例−5で合成した4,6−ジ−tert−ブチルー2−フルオロ−1−トリフルオロメトキシベンゼンを用いて電解液を調整し、CV測定を行った。得られたサイクリックボルタモグラムから、E
1/2=5.3V(vs.Li/Li
+)であり、高い酸化還元
電位を有し、可逆な酸化還元挙動を示す事が分かった。
【0120】
試験例−6
実施例−9で合成した2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ)ベンゼンを用いて電解液を調整し、CV測定を行った。得られたサイクリックボルタモグラムから、E
1/2=4・7V(vs.Li/Li
+)であり、高い酸化還元電位を有し、可逆な酸化還元挙動を示す事が分かった。
【0121】
試験例−7
実施例−10で合成した2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルオキシ)ベンゼンを用いて電解液を調整し、CV測定を行った。得られたサイクリックボルタモグラムから、E
1/2=4・7V(vs.Li/Li
+)であり、高い酸化還元電位を有し、可逆な酸化還元挙動を示す事が分かった。
【0122】
試験例−8
実施例−11で合成した2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルオキシ)ベンゼンを用いて電解液を調整し、CV測定を行った。得られたサイクリックボルタモグラムから、E
1/2=4・7V(vs.Li/Li
+)であり、高い酸化還元電位を有し、可逆な酸化還元挙動を示す事が分かった。
【0123】
試験例−9
実施例−1にて合成した2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンを用いて電解液を調整し、LSV測定を行った。
図5に、リニアスィープボルタモグラムの測定結果を示した。
【0124】
図5より、還元分解電位は−0.09Vであり、還元側に高い電気化学的安定性を有することが確認できた。
試験例−10
支持電解質として六フッ化リン酸リチウム、実施例−1にて合成した2,4−ジ−tert−ブチル−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼン、及びエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶媒(体積比:30/70)を用いて電解液を調整し、コイン型リチウムイオン二次電池素子を得た(
図1)。
【0125】
上記電池素子を0.1Cの充電電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。この操作を3回行った後に25℃の恒温条件下、0.2Cの充電電流で定電流充電を行い、4.95Vを上限電圧として、電池容量が規定の2倍(6mAh)になるまで充電を行った。この時の電圧は4.5Vであった。また充電した素子を0.2Cの放電電流で、3.0Vまで定電流放電を行った時の容量は、3.3mAhであり、過充電電流の消費が確認された(
図6)。
【0126】
比較試験例−1
フェニルエーテル化合物を添加しなかった他は、試験例−7と同様に行った。作成したリチウムイオン電池を5.2mAhまで充電した時、上限電圧(4.95V)に達し、それ以上の充電を行うことはできなかった(
図6)。
【0127】
比較試験例−2
フェニルエーテル化合物の代わりに、参考例−2にて合成した1,4−ビス(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼンを用いて電解液を調整した他は、試験例−7と同様に行った。作成した電池素子は、充電容量が2.5mAhから3.7mAhまで一旦電圧上昇が抑えられ、さらに4.7mAhまで充電した時点から再び電圧上昇が抑えられ、6.0mAhまで充電した時の電圧は4.5Vであった。また充電した素子を3.0Vまで放電した時の容量は、2.8mAhであった(
図6)。
【0128】
本発明のフェニルエーテル化合物を添加した試験例−7より、比較試験例−1に比べて充電に伴う電圧上昇が抑制されており、本発明のフェニルエーテル化合物が過充電防止剤として機能していることがわかる。また、比較試験例−2では、4.0V付近の低電圧領域にて電圧上昇の抑制が開始されており、その放電容量も2.8mAhと試験例−7より0.5mAh小さいものであった。