(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-149394(P2016-149394A)
(43)【公開日】2016年8月18日
(54)【発明の名称】電気装置
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20160722BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20160722BHJP
【FI】
H05K5/03 A
H02M7/48 Z
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-24175(P2015-24175)
(22)【出願日】2015年2月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇生
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勲
【テーマコード(参考)】
4E360
5H007
【Fターム(参考)】
4E360AB03
4E360BA01
4E360BC06
4E360BC07
4E360EA18
4E360EB04
4E360EC05
4E360ED02
4E360ED03
4E360ED23
4E360GA41
4E360GA53
4E360GB92
5H007BB07
5H007HA03
5H007HA05
5H007HA07
(57)【要約】
【課題】フロントカバーの取り外しの際にフロントカバーを落下させる虞を少なくし、しかも製造コストの上昇を適切に抑制することが可能な電気装置を提供する。
【解決手段】電気装置Aは、筐体1の前寄り部分の上部に設けられた上向き突出部11aと、フロントカバー2の上端部から筐体1の後方に向けて屈曲するようにフロントカバー2に設けられ、かつ上向き突出部11aの上側に位置して上向き突出部11aに係合可能な上部屈曲片部20aと、フロントカバー2が筐体1に取り付けられているときに、筐体1およびフロントカバー2内の収容空間部においてフロントカバー2によって圧縮され、かつフロントカバー2のうちの上部屈曲片部20aよりも下方の部分を筐体1の前方へ押圧する弾発力を生じさせることが可能な弾発力発生部材6と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口部を有し、かつ内部に電気部品を収容する筐体と、
前記前面開口部を塞ぐようにして前記筐体の前面部に締結部材を用いて取り付けられるフロントカバーと、
を備えている、電気装置であって、
前記筐体の前寄り部分の上部に設けられた上向き突出部と、
前記フロントカバーの上端部から前記筐体の後方に向けて屈曲するように前記フロントカバーに設けられ、かつ前記上向き突出部の上側に位置して前記上向き突出部に係合可能な上部屈曲片部と、
前記フロントカバーが前記筐体に取り付けられているときに、前記筐体および前記フロントカバー内の収容空間部において前記フロントカバーによって圧縮され、かつ前記フロントカバーのうちの前記上部屈曲片部よりも下方の部分を前記筐体の前方へ押圧する弾発力を生じさせることが可能な弾発力発生部材と、
をさらに備えていることを特徴とする、電気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気装置であって、
前記筐体に取り付けられ、かつ前記筐体内に収容されている電気部品の前面側を覆う絶縁シートを、さらに備えており、
前記弾発力発生部材は、この絶縁シートの前面部に取り付けられた弾性部材である、電気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気装置であって、
前記筐体内に収容された電気部品としては、前記電気装置の稼働状況を表示するための表示部を構成する電気部品があり、
前記絶縁シートは前記表示部の前方を覆わないように設けられ、かつ前記フロントカバーには透視窓部が設けられていることにより、この透視窓部を介して前記表示部を前記フロントカバーの前方から目視可能とされており、
前記弾性部材は、前記表示部の上側に位置し、かつ前記絶縁シートからその前方に突出した状態に設けられている、電気装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電気装置であって、
前記筐体内には、前記電気部品の取り付けに利用される少なくとも1つのフレームが組み込まれており、
このフレームとしては、前記絶縁シートのうち、前記弾性部材が取り付けられた部分の後面部に当接することにより、前記弾性部材が後方へ移動することを規制可能なフレームが設けられている、電気装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の電気装置であって、
前記電気部品は、少なくともその一部分が前記筐体の前面開口部からその前方に突出した状態に設けられており、
前記フロントカバーは、前記電気部品の前記突出した部分との干渉を回避するように前記フロントカバーの他の部分よりも前方に膨出した膨出部を有しており、
前記弾発力発生部材は、前記膨出部に当接するように設けられている、電気装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の電気装置であって、
装置全体が屋外設置用の壁掛け型のパワーコンディショナとして構成されている、電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーコンディショナなどの電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、パワーコンディショナは、太陽光パネルなどを用いた発電設備で発電された直流電力を交流電力に変換する電気回路を構成する各種の電気部品が、筐体内に収容された構成とされている。このような構成のパワーコンディショナとして、たとえば
図8(a)に示すようなものがある(
図8は、パワーコンディショナを模式的に示す概略側面断面図であり、図面の上下方向はパワーコンディショナが実際に設置された場合の上下方向である)。
図8(a)に示すパワーコンディショナBは、家屋の外壁などに取り付けて使用される壁掛け型であり、前面開口状の筐体7内に所定の電気部品95が収容され、かつ筐体7の前面開口部はフロントカバー8により塞がれている。筐体7に対するフロントカバー8の取り付けは、筐体7の前面部にフランジ部71を設け、かつこのフランジ部71にフロントカバー8の外周縁部を当接させて、この当接部分の複数箇所をネジ体90により締結する手段が採用されている。フロントカバー8と筐体7との間には、防水性能を高めるためのシール用のパッキン98が適宜介装される。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、従来においては、
図8(b)に示すように、ネジ体90を取り外した際には、フロントカバー8が筐体7に適切に支持されていない状態となり、作業者がフロントカバー8を落とす虞があった。フロントカバー8を落とすと、フロントカバー8に傷が付く。また、
図8とは異なり、電気部品95の一部が筐体7の前方に突出しているような場合には、落下したフロントカバー8の一部が電気部品95に接触し、電気部品95を損傷させる虞もある。
図8に示す構成では、フロントカバー8に上部屈曲片部80が設けられ、この上部屈曲片部80が筐体7のフランジ部71に係合する構造とされているものの、このような係合状態は容易に解除され易い。とくに、パッキン98が設けられている場合には、ネジ体90の締め付けを緩めた際にパッキン98の弾発力によってフロントカバー8の全体が筐体7の前方に押されるために、フロントカバー8が一層落ち易くなる。
【0005】
前記したような不具合を解消するには、たとえば
図9に示すように、フロントカバー8の上部屈曲片部80を、追加の屈曲片部80aを備えたフック状とし、筐体7のフランジ部71の後面側に追加の屈曲片部80aを係止可能な構成とすればよい(たとえば、特許文献1の
図7〜
図9を参照)。
ところが、このような手段によれば、上部屈曲片部80の形状が複雑化し、フロントカバー8の製作に際しての曲げ加工工程数が多くなる。このため、製造コストが上昇する不利を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−169341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、フロントカバーの取り外しの際にフロントカバーを落下させる虞を少なくし、しかも製造コストの上昇を適切
に抑制することが可能な電気装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される電気装置は、前面開口部を有し、かつ内部に電気部品を収容する筐体と、前記前面開口部を塞ぐようにして前記筐体の前面部に締結部材を用いて取り付けられるフロントカバーと、を備えている、電気装置であって、前記筐体の前寄り部分の上部に設けられた上向き突出部と、前記フロントカバーの上端部から前記筐体の後方に向けて屈曲するように前記フロントカバーに設けられ、かつ前記上向き突出部の上側に位置して前記上向き突出部に係合可能な上部屈曲片部と、前記フロントカバーが前記筐体に取り付けられているときに、前記筐体および前記フロントカバー内の収容空間部において前記フロントカバーによって圧縮され、かつ前記フロントカバーのうちの前記上部屈曲片部よりも下方の部分を前記筐体の前方へ押圧する弾発力を生じさせることが可能な弾発力発生部材と、をさらに備えていることを特徴としている。
ここで、「前記筐体および前記フロントカバー内の収容空間部において」とは、弾発力発生部材が、筐体およびフロントカバーを用いて形成されるそれらの内部の収容空間部に位置することを意味しており、たとえば筐体とフロントカバーとの接合箇所に単に介装され、実質的に収容空間部には位置しない部材(たとえば、先の
図8で示したシール用のパッキン98)は、前記弾発力発生部材には含まない趣旨である。
本発明に係る電気装置は、屋外設置用の壁掛け型のパワーコンディショナとして構成することができる。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、フロントカバーの上部屈曲片部を筐体の上向き突出部上に配置した係合状態とし、かつ締結部材を利用して筐体にフロントカバーが取り付けられている状態において、締結部材によるフロントカバーの取り付け状態(締結状態)を解除すると、弾発力発生部材による弾発力によってフロントカバーのうちの上部屈曲片部よりも下方の部分が筐体の前方に押圧される。すると、フロントカバーには、このフロントカバーの上部屈曲片部を筐体の上向き突出部に相対させて筐体の後方側へ移動させようとする力(モーメント)が発生する。
より詳しくは、締結部材によるフロントカバーの取り付け状態(締結状態)を解除すると、フロントカバーの上部屈曲片部は、重力によって筐体の上向き突出部上に載り(接触し)、この接触部分に摩擦力が発生した状態となっている。このような摩擦力が発生している状態で、フロントカバーのうちの上部屈曲片部よりも下方の部分が筐体の前方に押圧されると、前記接触部分を支点としてフロントカバーが回転し、上部屈曲片部には、この上部屈曲片部が筐体の上向き突出部に相対して筐体の後方側へ変移させようとする向きの力が働く。この力は、上部屈曲片部が上向き突出部から離脱する方向とは反対向きの力であり、上部屈曲片部と上向き突出部との係合状態を維持させる力として働くこととなる。このため、フロントカバーの上部屈曲片部と筐体の突出片部との係合状態が維持され、フロントカバーが落下する虞を少なくすることができる。その結果、フロントカバーの落下に起因してフロントカバーが損傷することや、落下したフロントカバーが筐体内の電気機器に当たることなどに起因して電気機器が損傷するといった不具合を適切に解消することが可能となる。
第2に、フロントカバーの上部屈曲片部は、先の
図9で示したフック状に形成する必要はなく、単純な形状でよい。このため、フロントカバーの製造コストが上昇しないようにすることができる。その一方、弾発力発生部材としては、たとえば廉価な発泡樹脂などの樹脂やゴムなどを用いればよく、これらの部品コストおよび組み付けコストは、低く抑えることができる。したがって、装置全体の製造コストが大幅に上昇するといったことも適切に回避することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記筐体に取り付けられ、かつ前記筐体内に収容されている電気部品の前面側を覆う絶縁シートを、さらに備えており、前記弾発力発生部材は、この絶縁シートの前面部に取り付けられた弾性部材である。
【0012】
このような構成によれば、絶縁シートに弾性部材を取り付けた簡易な構成によって本発明の意図する構成が構築されるため、製造の容易化や製造コストの抑制などを図る上で、より好ましいものとなる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記筐体内に収容された電気部品としては、前記電気装置の稼働状況を表示するための表示部を構成する電気部品があり、前記絶縁シートは前記表示部の前方を覆わないように設けられ、かつ前記フロントカバーには透視窓部が設けられていることにより、この透視窓部を介して前記表示部を前記フロントカバーの前方から目視可能とされており、前記弾性部材は、前記表示部の上側に位置し、かつ前記絶縁シートからその前方に突出した状態に設けられている。
【0014】
このような構成によれば、筐体内の表示部をフロントカバーの前方から適切に目視し得ることは勿論のこと、前記弾性部材には、表示部の上側に位置する保護用の庇としての役割をもたせることができる。より具体的には、たとえば筐体内に万一雨水や塵などが進入した場合に、この雨水や塵を弾性部材により遮り、雨水や塵が表示部の位置に到達することを防止することができる。したがって、表示部が雨水で濡れたり、あるいは塵によって汚れるといったことを好適に回避するのに役立つ。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記筐体内には、前記電気部品の取り付けに利用される少なくとも1つのフレームが組み込まれており、このフレームとしては、前記絶縁シートのうち、前記弾性部材が取り付けられた部分の後面部に当接することにより、前記弾性部材が後方へ移動することを規制可能なフレームが設けられている。
【0016】
このような構成によれば、弾性部材が後方へ移動することが規制されているため、弾性部材の圧縮、および圧縮状態が解除された際の弾発力の発生をより的確に行なわせることができる。弾性部材が後方へ移動することの規制は、電気部品の取り付けに利用されるフレームを用いて行なわれているため、それ専用の部材を用いるような必要はなく、その構成は合理的である。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記電気部品は、少なくともその一部分が前記筐体の前面開口部からその前方に突出した状態に設けられており、前記フロントカバーは、前記電気部品の前記突出した部分との干渉を回避するように前記フロントカバーの他の部分よりも前方に膨出した膨出部を有しており、前記弾発力発生部材は、前記膨出部に当接するように設けられている。
【0018】
このような構成によれば、電気部品の収容が効率良く行なえ、筐体の小サイズ化を図る上で好ましいものとなる。また、弾発力発生部材がフロントカバーの膨出部に当接しているため、前記膨出部を弾発力発生部材によって支持し、前記膨出部が筐体側に変形するような不具合を防止することができるといった効果も得られる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る電気装置の一例に相当するパワーコンディショナの斜視図である。
【
図2】
図1に示すパワーコンディショナのフロントカバーを外した状態の斜視図である。
【
図3】
図1に示すパワーコンディショナの筐体内部構造と絶縁シートとを示す分解斜視図である。
【
図4】
図1に示すパワーコンディショナの筐体の背面部に装着された補助筐体およびフロントカバーを外した状態の斜視図である。
【
図5】(a)は、
図1のVa−Va断面図であり、(b)は、(a)の構造においてフロントカバーを取り外す際の状態を示す要部断面図である。
【
図8】(a),(b)は、従来技術の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1に示すパワーコンディショナAは、たとえば家屋の外壁などに壁掛け状態で取り付けられて使用される屋外設置用の壁掛け型であり、本発明でいう電気装置の一例に該当する。このパワーコンディショナAは、既存のパワーコンディショナと同様に、ソーラパネルなどにおいて発電された直流電力を50Hzまたは60Hzなどの所定周波数の交流電力に変換し、商用系統に連系させる機能を有するものである。
【0023】
図2〜
図4によく表われているように、パワーコンディショナAは、前面開口部10を有する略矩形状の金属製の筐体1、この筐体1の前面開口部10を閉塞するためのフロントカバー2、筐体1内の前側部分に取り付けられる絶縁シート4、この絶縁シート4に貼着された弾性部材6(本発明でいう弾発力発生部材の一例に相当する)、および筐体1の背面部に組み付けられる補助筐体5を備えている。
【0024】
筐体1内には、電源回路、インバータ回路、出力回路などを構成する各種の電気部品3が収容されている。
図4に示すように、筐体1の背面部には、複数の電気部品3から熱伝導を受けてその放熱を行なうための複数のフィン39aを有するヒートシンク39が設けられている。補助筐体5は、このヒートシンク39を覆うためのものであり、上壁部50aおよび左右両側壁部50bを有するフレーム50と、背面板部51aおよび下壁部51bを有する背面パネル51とを組み合わせたものである。これらの部材には、複数の通気孔52a〜52cが設けられており、ヒートシンク39を冷却するための空気(外気)が補助筐体5内に流入出可能である。補助筐体5の内部には、通気孔52a〜52cから雨水などが浸入する虞があるため、ヒートシンク39は耐水性に優れた材質とされている。
【0025】
筐体1は、その内部に電気部品3を収容するものであるため、補助筐体5とは異なり、内部への雨水などの浸入ができる限り生じ難い構造とされている。筐体1の内部と補助筐体5の内部との間は、筐体1の背板部19(
図5(a)を参照)や、ヒートシンク39などを介して仕切られており、補助筐体5内に浸入した水が筐体1内にさらに浸入することは適切に防止されている。
【0026】
図2において、フロントカバー2は、たとえば金属製のプレス成形品に樹脂コーティング塗装などを施して形成されたものであり、筐体1の前面部にビスなどの複数のネジ体90(本発明でいう締結部材の一例に相当)を用いて取り付けられる。より具体的には、筐体1の前面部には、筐体1の外面から起立した断面形状をもつ矩形枠状のフランジ部11が設けられている。フロントカバー2は、このフロントカバー2の外周縁部とフランジ部
11との間に防水用のパッキン98を挟むようにしてフランジ部11の前面部に対向し、かつネジ体90を用いてフランジ部11に締結されている。パッキン98は、本発明でいう弾発力発生部材には相当しない。
【0027】
フロントカバー2の外周縁の全周または略全周には、このフロントカバー2の後方に向けて突出するように屈曲した枠状の屈曲片部20が設けられており、かつこの屈曲片部20は、フランジ部11に外嵌するように設定される(
図5(a)を参照)。屈曲片部20は、パッキン98を介して筐体1とフロントカバー2とが当接した部分の全周囲を覆い、筐体1内に雨水などをより浸入し難くする役割を果たす。フランジ部11のうち、筐体1の上部に位置して左右横幅方向に延びる部分は、上向き突出部11aである。これに対し、フロントカバー2の屈曲片部20のうち、上部屈曲片部20aは、上向き突出部11aの上端の上側に位置し、上向き突出部11aに係合可能である。
【0028】
絶縁シート4は、電気部品3の絶縁保護を図るためのものであって、電気絶縁性を有する樹脂製であり、電気部品3の前面側を覆うように筐体1に取り付けられている。筐体1内の適所には、絶縁シート4の取り付けに用いられるネジ体91を螺合装着させるためのネジ孔を設けたブラケット部18などが設けられている(
図5および
図6を参照)。一方、筐体1内に収容された電気部品3としては、パワーコンディショナAの稼働状況を表示する表示部30を構成するものがある。この表示部30は、たとえば8セグメント表示器3(3a)やLEDランプ3(3b)などを用いて構成されている(
図2〜
図4を参照)。表示部30の表示項目としては、たとえば発電の電力KWや電力量KWhの表示、連系・自立・抑制などのオン・オフの表示などがなされる。絶縁シート4は、表示部30の前面側を覆わないように設けられている。フロントカバー2のうち、表示部30の正面に相当する箇所には、透明部材を用いて構成された透視窓部21が設けられている。表示部30の表示は、フロントカバー2の前方から透視窓部21を介して目視可能である。
【0029】
弾性部材6は、たとえば発泡樹脂製またはゴム製の細長なブロック状であり、弾性復元力を伴って圧縮変形可能である。この弾性部材6は、絶縁シート4のうち、表示部30の上側に接着され、かつ絶縁シート4からその前方に突出しており、表示部30の上側に位置する庇状となっている。絶縁シート4の左右横幅方向の長さは、表示部30の全体の左右横幅方向の長さ以上である。図示された構成では、絶縁シート4の長さは、表示部30よりもかなり長い寸法とされている。
【0030】
図5(a)に示すように、フロントカバー2を筐体1に取り付けた状態においては、弾性部材6は、筐体1およびフロントカバー2内の収容空間部に位置し、かつフロントカバー2の内側面に当接して圧縮する。筐体1には、表示部30を構成する電気部品3や他の電気部品3を取り付けるためのフレーム17(内部フレーム)が組み付けられているが、このフレーム17の一部分17aは、筐体1の前方に向けて突出する屈曲状とされ、かつ絶縁シート4のうち、弾性部材6の取り付け箇所の背面部に当接するように設定されている。このことにより、弾性部材6が筐体1の後方へ移動することは規制されている。
【0031】
図6によく表われているように、複数の電気部品3のうち、表示部30を構成する電気部品3や、これ以外の他の電気部品3(3c)などの一部の電気部品は、筐体1の前面開口部10からその前方に適当な寸法(最大突出寸法La)だけ突出した状態に設けられている。このことにより、筐体1の大型化を抑制しつつ、筐体1内への電気部品3の組み込みをスペース効率良く行なうことができる。一方、フロントカバー2の上下高さ方向の中央寄り部分は、このフロントカバー2の上縁部や下縁部よりも適当な寸法Lbだけ前方に膨出した膨出部22とされ、フロントカバー2と電気部品3とが不当に干渉しないようにされている。弾性部材6は、フロントカバー2の膨出部22の内側面に当接するように構成されている。
【0032】
次に、前記したパワーコンディショナAの作用について説明する。
【0033】
まず、
図5(a)に示すように、筐体1にフロントカバー2が取り付けられた通常状態においては、弾性部材6はフロントカバー2によって圧縮された状態にある。このため、同図(b)に示すように、ネジ体90を取り外した際には、フロントカバー2のうち、弾性部材6に接触している部分が弾性部材6の弾発力Fによって前方に押される。ここで、弾発力Fによる押圧位置は、上部屈曲片部20aと上向き突出部11aとの係合箇所よりも低い位置であるため、上部屈曲片部20aには、上向き突出部11aに相対して筐体1の後方に移動しようとする力F1を発生させることができる。その結果、上部屈曲片部20aが上向き突出部11aの前方側へ移動しないようにし、上部屈曲片部20aと上向き突出部11aとの係合状態を適切に維持させることが可能となる。
【0034】
ネジ体90を取り外した際には、パッキン98が弾性復元し、フロントカバー2の全体を前側に押圧する力を発揮する虞があるが、弾性部材6の押圧力Fは、パッキン98の弾性復元力によってフロントカバー2の全体がそのまま前方へ押し出されることを回避し、上部屈曲片部20aの上部と上向き突出部11aとの係合状態を適切に維持させる作用を生じさせる。
このようなことから、パワーコンディショナAのメンテナンス時などにおいて、作業者がフロントカバー2を落下させてしまう虞を無くし、または少なくすることができる。その結果、フロントカバー2が損傷すること、および落下したフロントカバー2が電気部品3に当たって電気部品3が損傷するといった不具合を好適に解消することができる。
【0035】
弾性部材6は、表示部30を保護する役割も果たす。具体的には、弾性部材6は、既述したように、表示部30の上側に位置する庇状に設けられているため、仮に、筐体1内の上部に雨水が浸入し、この雨水が絶縁シート4の表面に沿って下方に流れ落ちてきたとしても、この雨水は弾性部材6によって塞き止められ、表示部30の前面部には到達しないようにすることができる。したがって、表示部30の保護が図られる。なお、弾性部材6に到達した雨水は、弾性部材6の上面上を横向きに流れて弾性部材6の長手方向端部から絶縁シート4の表面に沿って下方に流れ落ち、他の電気部品3も濡れないようになっている。
【0036】
その他、弾性部材6は、フロントカバー2の膨出部22に当接しているため、この膨出部22が弾性部材6によって支持(補強)された状態となる。これは、膨出部22が作業者によって押された際に、筐体1側に押し込まれるように変形することを防止するのに役立つ。
【0037】
図7は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0038】
図7に示す実施形態においては、弾性部材6がフロントカバー2に取り付けられている。このような構成であっても、フロントカバー2を筐体1に取り付けた際には、筐体1およびフロントカバー2内の収容空間部において弾性部材6を圧縮変形させ、本発明が意図する作用を得ることが可能である。
【0039】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る電気装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0040】
本発明でいう電気装置とは、筐体内に電気部品が収容された装置であり、パワーコンディショナに限定されない。本発明は、屋外設置用の壁掛け型の電気装置に好適であるが、
これ以外の屋内設置用の電気装置や、壁掛け型以外の電気装置にも適用することができる。
【0041】
弾性部材6は、絶縁シート4に取り付けることに代えて、たとえば電気部品を支持するフレームや、頑強な電気部品などに取り付けた構成とすることも可能である。本発明でいう弾発力発生部材としては、上述した弾性部材6のように、発泡樹脂やゴム製などのものに代えて、たとえば金属製などのバネを用いることもできる。弾性部材6は、上述した実施形態のように表示部30を保護するための庇として用いることが好ましいものの、そのような態様で設けられていなくてもよい。なお、表示部30を弾性部材6によって保護する場合、弾性部材6を表示部30の上側のみに設けることに代えて、表示部30の周囲(上方、横、下方など)の全周または略全周を囲むように設けた構成とすることもできる。
【0042】
筐体は、前面開口部を有し、かつ前寄り部分の上部に上向き突出部が設けられた構成であればよい。上向き突出部は、必ずしも筐体の左右幅方向に長く延びた形態でなくてもよく、たとえば横幅が小さい上向き突出状とし、これを複数箇所設けた構成とすることもできる。
フロントカバーは、筐体の前面開口部を塞ぐようにして筐体の前面部に締結部材を用いて取り付けられる構成であって、筐体の上向き突出部の上側に位置して上向き突出部に係合可能な上部屈曲片部を有する構成であればよい。上部屈曲片部もについても、筐体の上向き突出部と同様に、左右横幅方向に長く延びた形態でなくてもよく、横幅が小さい形状とすることができる。
本発明でいう締結部材は、ビスなどのネジ体に限らず、フロントカバーと筐体との締結可能なものであればよい。
【符号の説明】
【0043】
A パワーコンディショナ(電気装置)
1 筐体
10 前面開口部
11a 上向き突出部
17 フレーム
2 フロントカバー
20a 上部屈曲片部
21 透視窓部
22 膨出部
3 電気部品
30 表示部
4 絶縁シート
6 弾性部材(弾発力発生部材)
90 ネジ体(締結部材)