(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-149482(P2016-149482A)
(43)【公開日】2016年8月18日
(54)【発明の名称】油入電気機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/02 20060101AFI20160722BHJP
H01F 27/00 20060101ALN20160722BHJP
【FI】
H01F27/02 Z
H01F27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-26225(P2015-26225)
(22)【出願日】2015年2月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】庄司 健一
【テーマコード(参考)】
5E059
【Fターム(参考)】
5E059BB15
(57)【要約】
【課題】タンクに取り付けられた油温計の温度表示部を保護することができるようにした油入電気機器を提供する。
【解決手段】電気機器のタンク2に溶接された台座部20に固定された油温計4の温度表示部6を覆う保護カバー40を設けた。保護カバー40は、台座部20に固定された温度表示部6を取り囲む側板部41と、該側板部の高さ方向の一端を閉じるように設けられて温度表示部6の透明板9に対向させられる端板部42とを有し、端板部42に透明な覆い板43で塞がれた窓部44を有している。保護カバー40は、側板部41の高さ方向の他端を電気機器のタンク2側に向け、かつ端板部42に設けられた窓部44を温度表示部6の透明板9に対向させた状態で、タンク2に溶接された台座部20に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、前記タンク内に絶縁油とともに収容された電気機器の構成要素と、前記タンク内の絶縁油中に挿入された感温部及び該感温部が感知した油温を表示する温度表示部を有する油温計とを備え、前記油温計の温度表示部は、前面に開口部を有して前記タンクの外面に溶接された台座部の上に固定された金属ケースと、該金属ケース内に収容されて前記感温部が感知した油温を表示する温度表示手段と、前記金属ケースの開口部を閉じる透明板とを有して、前記透明板を通して前記温度表示手段を視認するように構成されている油入電気機器において、
前記油温計の温度表示部を覆う保護カバーが前記台座部に対して固定され、
前記保護カバーは、前記温度表示手段の視認を可能にするために、前記温度表示部の透明板に対向する部分に透明な蓋板により塞がれた窓部を有していること、
を特徴とする油入電気機器。
【請求項2】
前記保護カバーは防水性を有するように形成されていて、該保護カバー内に水が浸入するのを防ぐために前記保護カバーと前記タンクの外面との間を液密にシールするシール手段が設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の油入電気機器。
【請求項3】
前記保護カバーは、前記油温計の温度表示部の前記タンクの外面からの突出長よりも大きい高さ寸法を持って前記温度表示部を取り囲む側板部と、該側板部の高さ方向の一端を閉じるように設けられた端板部とを有して、該端板部に前記窓部が形成され、
前記保護カバーは、前記側板部の高さ方向の他端を前記タンク側に向け、かつ前記端板部に設けられた窓部を前記温度表示部の透明板に対向させた状態で前記台座部に対して固定されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の油入電気機器。
【請求項4】
前記タンクの壁部を貫通させて感温部挿入孔が形成されるとともに、前記感温部挿入孔に整合する貫通孔が前記台座部に設けられて、前記台座部の貫通孔と前記感温部挿入孔とを通して前記油温計の感温部が前記タンク内の絶縁油中に挿入され、
前記油温計の温度表示部の金属ケースは、前記台座部の上にパッキンを介して配置されて、該金属ケースが前記台座部に締結されることにより、前記温度表示部が前記台座部に固定され、
前記保護カバーの側板部の前記台座部の側面に対向する部分に軸線を前記保護カバーの側板部と直交させた雌ネジ部が設けられて、該雌ネジ部に螺合されたボルトが前記保護カバー内に導入され、
前記ボルトが前記台座部に対して締め付けられて、該ボルトが前記保護カバーの側板部と前記台座部との間で突っ張ることにより、前記保護カバーを前記タンクの側壁に対して固定していること、
を特徴とする請求項3に記載の油入電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電用の変圧器や配電用自動電圧調整器等の油入電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電系統には、タンクと、該タンク内に絶縁油とともに収容された電気機器の構成要素とを備えた油入電気機器が多く設置されている。配電系統に設置される油入電気機器としては、変圧器本体を絶縁油と共にタンク内に収容した変圧器や、タップ付変圧器と同変圧器のタップを切り換える負荷時タップ切換器とを絶縁油と共にタンク内に収容して構成した配電用自動電圧調整器等がある。
【0003】
特許文献1に示されているように、これらの油入電気機器においては、機器の点検の際にタンク内の絶縁油の温度を確認するために、タンクに油温計を取り付けることがある。油温計は、タンク内の絶縁油中に挿入された感温部と、該感温部が感知した油温を表示する温度表示部とにより構成される。
【0004】
油温計の温度表示部は、油入電気機器のタンクの外面に溶接された台座部に固定される有底の金属ケースと、この金属ケース内に配置されて、感温部により感知された温度を表示する温度表示手段と、金属ケースの開口部を閉じるように配置されて、周縁部が押え板により金属ケースの開口部の周辺部に押えつけられた透明板とを備えていて、金属ケース内の温度表示手段に表示された温度を、金属ケースの開口部を閉じる透明板を通して観察するように構成されている。
【0005】
油入電気機器に取り付けられる油温計としては、上記金属ケースの底部に固定された文字盤と、該文字盤の前方に配置されて感温部により感知された油温に対応する文字盤の目盛りを指示する指針とにより温度表示手段が構成されて、油温をアナログ表示するダイヤル温度計が多く用いられているが、金属ケース内に設けたデジタル表示器により油温をデジタル表示するデジタル式の油温計を用いることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−20030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
油温計を備えた従来の油入電気機器において、油温計の温度表示部がタンクの外面に台座部を介して取り付けられる場合には、温度表示部がタンクの外面から大きく突出した状態で配置されることになるため、保守点検の際などに温度表示部に工具などが当るおそれがある。万一温度表示部に物が当ると、温度表示手段に衝撃が加わって該温度表示手段に狂いが生じたり、温度表示手段の視認を可能にするための透明板が損傷して温度表示手段の視認性が低下する等の問題が生じるおそれがある。また油入電気機器に向けて石を投げる等のいたずらがされた場合にも同様の問題が生じる。このような問題が生じないようにするためには、温度表示部を機械的な衝撃から保護する手段を設けておくことが好ましいが、従来の油入電気機器ではこのような配慮はなされていなかった。
【0008】
本発明の目的は、油温計の温度表示部を機械的な衝撃などから保護する手段を備えた油入電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タンクと、該タンク内に絶縁油とともに収容された電気機器の構成要素と、該タンク内の絶縁油中に挿入された感温部及び該感温部が感知した油温を表示する温度表示部を有する油温計とを備えた油入電気機器を対象とする。本発明が対象とする油入電気機器においては、油温計の温度表示部が、前面に開口部を有してタンクの外面に溶接された台座部の上に固定された金属ケースと、該金属ケース内に収容されて感温部が感知した油温を表示する温度表示手段と、金属ケースの開口部を閉じる透明板とを有して、該透明板を通して温度表示手段を視認するように構成されている。
【0010】
本発明においては、油温計の温度表示部を覆う保護カバーが台座部に対して固定されている。この保護カバーは、温度表示手段の視認を可能にするために、温度表示部の透明板に対向する部分に透明な蓋板により塞がれた窓部を有している。
【0011】
上記のように油温計の温度表示部を取り付けるため油入電気機器のタンクに溶接された台座部に保護カバーを取り付けて、この保護カバーにより油温計の温度表示部を覆うようにしておくと、電気機器の保守点検の際などに油温計の温度表示部に直接物が当るのを防いで、温度表示部の透明板が破損する等の問題が生じるのを防ぐことができる。また上記のように保護カバーを油入電気機器のタンクに溶接された台座部に固定しておくと、保護カバーに物が当った場合に生じる衝撃を台座部で受け止めて、温度表示部に衝撃が直接伝わるのを防ぐことができるため、温度表示部の保護を確実に図ることができる。更に、上記のように構成しておくと、保護カバーの質量を全てタンクに溶接された台座部で受け止めることができ、保護カバーの質量により温度表示部に荷重がかかることがないため、保護カバーが温度表示部の機械的強度に影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0012】
本発明の一態様では、保護カバーが防水性を有するように形成されて、該保護カバー内に水が浸入するのを防ぐために保護カバーとタンクの外面との間を液密にシールするシール手段が設けられる。
【0013】
上記のように構成しておくと、油入電気機器が屋外に設置される場合に、油温計の温度表示部に直接雨水がかかるのを防ぐことができるため、温度表示部の耐候性を高めて、油温計の保護を更に適確に図ることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様では、上記保護カバーが、油温計の温度表示部のタンクの外面からの突出長よりも大きい高さ寸法を持って温度表示部を取り囲む側板部と、該側板部の高さ方向の一端を閉じるように設けられた端板部とを有して、該端板部に窓部が形成される。この保護カバーは、その側板部の高さ方向の他端をタンク側に向け、かつ端板部に設けられた窓部を温度表示部の透明板に対向させた状態で台座部に対して固定される。
【0015】
上記のように保護カバーを構成しておくと、保護カバーの窓部を塞ぐ蓋板と温度表示部の透明板との間に隙間が確保される。保護カバーの窓部を塞ぐ蓋板と温度表示部の透明板との間に隙間を確保しておくと、保護カバーに物が当ってその窓部を塞いでいる蓋板が破損したとしても、温度表示部の透明板にまで害が及ぶことはないため、温度表示部の保護を確実に図ることができる。
【0016】
本発明の一態様では、タンクの壁部を貫通させて感温部挿入孔が形成されるとともに、感温部挿入孔に整合する貫通孔が台座部に設けられて、台座部の貫通孔と感温部挿入孔とを通して油温計の感温部がタンク内の絶縁油中に挿入される。油温計の温度表示部の金属ケースは、台座部の上にパッキンを介して配置されて、該金属ケースが台座部に締結されることにより、温度表示部が台座部に固定される。また保護カバーの側板部の前記台座部の側面に対向する部分に軸線を保護カバーの側板部と直交させた雌ネジ部が設けられて、該雌ネジ部に螺合されたボルトが保護カバー内に導入され、ボルトが台座部に対して締め付けられて、該ボルトが保護カバーの側板部と台座部との間で突っ張ることにより、保護カバーをタンクの側壁に対して固定する。
【0017】
上記のように構成すると、タンクにスタッドボルトを溶接したり、保護カバーの取付具を溶接したりすることなく、保護カバーを簡単に油入電気機器のタンクに取り付けることができる。また温度表示部が台座部を介して電気機器のタンクに取り付けられている既設の油入電気機器にも保護カバーを容易に取り付けて、温度表示部の保護を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、油温計の温度表示部を取り付けるため油入電気機器のタンクに溶接された台座部に保護カバーを取り付けて、この保護カバーにより油温計の温度表示部を覆うようにしたので、電気機器の保守点検の際などに油温計の温度表示部に直接物が当るのを防いで、温度表示部の透明板が破損する等の問題が生じるのを防ぐことができる。
【0019】
また本発明によれば、保護カバーを油入電気機器のタンクに溶接された台座部に固定して、保護カバーに物が当った場合に生じる衝撃を台座部で受け止めるようにしたので、温度表示部に衝撃が直接伝わるのを防いで、温度表示部の保護を確実に図ることができる。
【0020】
本発明によればまた、保護カバーを油入電気機器のタンクに溶接された台座部に固定して、保護カバーの質量により温度表示部に荷重がかかることがないようにしたため、保護カバーが温度表示部の機械的強度に影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)及び(B)はそれぞれ本発明の一実施形態の要部の構成を、一部を断面して示した正面図及び右側面図である。
【
図2】(A)及び(B)はそれぞれ
図1の実施形態において油入電気機器のタンクに取り付けられている油温計の温度表示部付近の構成を示した正面図及び縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して本発明の一実施形態について詳細に説明する。
図1及び
図2は電柱に装着された状態で使用される配電用自動電圧調整器に本発明を適用した実施形態を示したものである。
図1及び
図2において、1は本実施形態に係る配電用自動電圧調整器で、図示の電圧調整器1は、タップ付変圧器及び該タップ付変圧器のタップを切り換える負荷時タップ切換器(何れも図示せず。)を絶縁油3と共にタンク2内に収容することにより構成されている。保守点検時などにタンク内2の絶縁油の温度を確認することができるようにするため、タンク2の側壁に油温計4が取り付けられている。また本実施形態では、タンク内の絶縁油の油面レベルを観察し得るようにするため、油温計4の上方に油面計30が取り付けられている。
【0023】
図2に示すように、油温計4は、タンク2内の絶縁油3中に挿入された感温部5と、感温部5が感知した油温を表示する温度表示手段を備えた温度表示部6とにより構成される。本実施形態においては、油温計4として、感温部5が感知した油温を温度表示部6でダイヤル表示(指針により表示)するダイヤル温度計が用いられている。
【0024】
ダイヤル温度計としては、アルコール等の熱膨張係数が大きい流体を封入した感温部5を用いて、感温部の周囲温度の変化に伴って感温部5内で生じる流体圧力の変化を温度表示部6に設けられた温度表示手段により指針の変位に変換するようにした流体圧力式のものと、バイメタルを管内に収容した感温部5を用いて、感温部の周囲温度の変化に伴って生じるバイメタルの変位を温度表示部6で指針の変位に変換するようにしたバイメタル式のものとがあるが、油温計4としては、何れの型式のダイヤル温度計を用いてもよい。
【0025】
図示の温度表示部6は、前面に開口部を有してタンク2の側壁2aに固定された有底の金属ケース7と、金属ケース7内に収容されて感温部5が感知した油温を表示する温度表示手段8と、金属ケース7の開口部を閉じる透明板9と、透明板9を金属ケース7に押さえつける押さえ板10とを有して、透明板9を通して温度表示手段8を視認するように構成されている。図示の例では、温度表示手段8が、感温部5内のバイメタルの変位に伴って回動する指針8aと、金属ケース7の底部に固定された文字盤8bとからなっていて、文字盤8b上に表示された温度目盛りを指針8aにより指し示すことによって絶縁油の温度を表示する。
【0026】
温度表示部6の金属ケース7は、例えばアルミニュウムにより、横断面の輪郭形状が正方形をなすように形成されている。金属ケース7の中央部には、横断面の輪郭形状が円形をなす凹部7aが形成され、凹部7aの開口端(金属ケースの開口端)の内周に形成された円形の段部内に金属ケース7の前面開口部を閉じる円形の透明板9が嵌合されている。透明板9は、アクリル樹脂等の透明なプラスチック材料又はガラス板により形成されている。金属ケース7内の圧力と大気圧との間に差が生じて透明板9に無理な力がかかるのを防ぐため、金属ケース7には、凹部7a内と外部とを連通させる通気孔7bが形成されている。雨水が金属ケース7内に侵入するのを防ぐため、通気孔7bは、金属ケース7を油入電気機器のタンク2に取り付けた際に下方に開口するように設けられている。
【0027】
透明板9を金属ケース7に押さえつける押さえ板10は、ステンレス鋼板等からなる金属板により、金属ケース7の横断面の輪郭形状と同じ正方形を呈するように形成されていて、その中央部には、円形の透明板9よりも小径の円形窓10aが形成されている。押さえ板10の四隅にはボルト22を貫通させるために貫通孔が形成され、金属ケース7の四隅には押さえ板10の四隅に設けられた貫通孔とそれぞれ整合する貫通孔が形成されている。
【0028】
感温部5は、先端が閉じられた熱伝導性が良好な金属パイプ11内にバイメタルを収容したものからなっていて、金属パイプ11の後端部に、バイメタルの変位を指示軸12の回転に変換する変換機構を収容した円筒状の機構ケース13が接続されている。機構ケース13は、金属パイプ11と中心軸線を共有するように設けられていて、機構ケースの感温部5側の端部には、金属パイプ11の後端部に接続された管状の首下部13aが形成され、この首下部の外周に雄ネジ部が形成されている。機構ケース13の感温部5と反対側の端部にはフランジ13bが一体に形成され、フランジ13bの軸心部から外方に指示軸12が突出させられている。またフランジ13bに文字盤8bが固定され、指示軸12に指針8aが取り付けられている。
【0029】
機構ケース13は、金属ケース7の底部を貫通した孔に嵌合された状態で配置されて、そのフランジ13bが金属ケース7の底部に当接されている。機構ケース13が嵌合された金属ケース7の底部の孔の周囲に形成された凹部内にパッキン(Oリング)15が嵌合され、機構ケース13の首下部13aの外周に形成された雄ネジ部に螺合されたナット16が金属ケース7の底部に対して締め付けられることにより、感温部5が金属ケース7に固定されている。機構ケース13と、該機構ケースが嵌合された金属ケース7の孔との間は、ナット16の締め付けにより圧縮されたパッキン15により、液密にシールされている。
【0030】
タンク2の側壁2aには、感温部5をタンク内に挿入するための貫通孔2bが形成され、タンク2の側壁の外側には、温度表示部の金属ケース7を固定するために、台座部20が溶接されている。台座部20は、金属ケース7の幅寸法と同じ幅寸法を持って上下に伸びる長方形状の輪郭形状を呈するように形成されていて、その下端寄りの部分にタンクの側壁の貫通孔2bと整合する貫通孔20aが形成され、貫通孔20aの開口端に形成された段部にパッキン(Oリング)21が嵌合されている。台座部20の下端寄りの部分には、金属ケース7の四隅にそれぞれ形成された貫通孔に整合するネジ穴が形成されている。
【0031】
油温計4は、その温度表示部6の金属ケース7の底部の外面を台座部20の上に重ね、感温部5を台座部20に設けられた貫通孔20aとタンクの側壁の貫通孔2bとを通してタンク2内の絶縁油3中に挿入した状態で配置されている。油温計の温度表示部6は、その押え板10の四隅と金属ケース7の四隅に設けられた貫通孔とを貫通させて台座部20に設けられたネジ穴に螺合されたボルト22により台座部20に締結されて、タンク2の側壁2aに対して固定されている。
【0032】
油温計4は、タンク2内の絶縁油3の温度変化に伴って生じる感温部5内のバイメタルの変位を回転変位に変換して指示軸12に伝達することにより、指示軸12を指針8aと共に油温に相当する角度だけ回転させ、文字盤8bに表示された目盛りを指針8aで指し示すことにより油温を表示する。観測者は、透明板9を通して指針8aが示している目盛板8b上の目盛りを読み取ることにより油温を読み取る。
【0033】
本実施形態では、
図1に示すように、油温計4の上方に油面計30が取り付けられている。油面計30を構成するため、タンクの側壁2aに上下に伸びるスリット31(
図2参照)が形成され、台座部20を貫通させて、スリット31に整合するスリット20bが形成されている。台座部20のスリット20bと整合するように設けられて透明な板により塞がれたスリット状の覗き窓33を有する蓋板34(
図2には図示せず。)が台座部20の前面に配置され、蓋板34が複数のボルト35により台座部20に締結されている。蓋板34と台座部20との間は、両者の間に介在してボルト35を締め付けた際に圧縮されるパッキンにより液密にシールされている。タンクの側壁2a及び台座部20にそれぞれ設けられたスリット2b及び20aと、台座部20に取り付けられた蓋板34とにより油面計30が構成されている。蓋板34はステンレス鋼板等の耐腐食性を有する材料により形成されている。
【0034】
上記のように、油温計4の温度表示部6がタンク2の外面に台座部20を介して取り付けられる場合、温度表示部6がタンクの外面から大きく突出した状態で配置されることになるため、保守点検の際などに温度表示部6に工具などが当るおそれがある。万一温度表示部6に物が当ると、温度表示手段8に衝撃が加わって該温度表示手段に狂いが生じたり、温度表示手段の視認を可能にするための透明板9が損傷して温度表示手段の視認性が低下する等の問題が生じるおそれがある。また電気機器に向けて石を投げる等のいたずらがされた場合にも同様の問題が生じる。このような問題が生じるのを防ぐため、本実施形態においては、
図1に示したように、油温計4の温度表示部6を覆う防水性の保護カバー40を台座部20に対して固定する。温度表示手段8の視認を可能にするため、保護カバー40の温度表示部の透明板に対向する部分には、透明な蓋板43により塞がれた窓部44を設けておく。
【0035】
本実施形態で用いている保護カバー40は、油温計4の温度表示部6のタンクの側壁2aからの突出長(高さ)h1よりも大きい高さ寸法h2を持って温度表示部6を取り囲む側板部41と、該側板部の軸線方向の一端を閉じるように設けられて温度表示部6の透明板9に対向させられる端板部42とを有して、端板部42に透明な覆い板43で塞がれた円形の窓部44が形成されている。油入電気機器が屋外に設置される場合には、保護カバー40に防水性を持たせるため、側板部41と端板部42とを一体に成形するか、又は側板部41と端板部42とを隙間なく接合して、側板部41と端板部42との間から保護カバー内に水が浸入することがないようにしておく。耐久性を高めるため、保護カバー40の側板部41及び端板部42は、ステンレス鋼板等の耐食性を有する材料により形成するのが好ましい。
【0036】
保護カバー40は、側板部41の高さ方向の他端41eをタンク2の側壁2a側に向け、かつ端板部42に設けられた窓部44を温度表示部6の透明板9に対向させた状態でタンク2の側壁2aに対して固定される。図示の例では、保護カバー40の側板部41の他端41eが、タンクの側壁2aに突き合わされて、側板部41の他端41eとタンクの側壁2aとの突き合わせ部が、シール手段により液密にシールされている。
【0037】
更に詳細に説明すると、図示の保護カバー40の側板部41は、タンク2に固定された際に上下に対向した状態で配置される一対の側板41a及び41bと、タンクに固定された際に横方向に対向した状態で配置される他の一対の側板41c及び41dとの4つの側板41aないし41dにより、横断面の輪郭形状が正方形を呈するように形成されている。図示の例では、台座部20が温度表示部6の上端を越えて上方に延びているため、保護カバー40の上側の側板部41aに台座部20を嵌合させる切り欠き部41a1が設けられ、この切り欠き部41a1に台座部20を嵌合させた状態で、側板部41の高さ方向の他端41eがタンクの側壁2aに突き合わされている。
【0038】
保護カバー40の端板部42に設けられた窓部44を塞ぐ透明な覆い板43は、アクリル樹脂等の、塩分に対して耐食性を有する透明な材料により正方形を呈するように形成されていて、その周辺部がパッキン47を介して保護カバーの端板部42の窓部44の周辺部に当接されている。図示の例では、ステンレス鋼等の耐食性を有する材料により形成された4つのネジ48が覆い板43の四隅をそれぞれ貫通した孔を通して、端板部42に設けられたネジ孔に螺合され、これらのネジ48を締め付けることにより、覆い板43が端板部42に締結されている。
【0039】
保護カバー40の横方向に相対する一対の側板41c,41dのそれぞれの台座部20の側面に対向する部分の内側に、上下方向に間隔をあけて2つのナット45,45を溶接することにより、側板41c,41dに、軸線をそれぞれの側板41c,41dと直交させた雌ネジ部が設けられ、側板41c,41dをそれぞれ貫通させた孔を通してナット45,45により構成された雌ネジ部に螺合されたボルト46,46が保護カバー内に導入されている。そして、各ボルト46が台座部20に対して締め付けられて、保護カバー40の側板部41と台座部20との間で突っ張ることにより、保護カバー40をタンクの側壁2aに対して固定している。
【0040】
保護カバー40内に雨水が浸入するのを防ぐため、保護カバー40の側板部41の他端41eとタンク2の側壁2aとの突き合わせ部がコーキング材などのシール手段によりシールされて、保護カバー40の側板部41とタンクの側壁2aとの間が液密にシールされている。図示の例では、保護カバー40の上側の側板部41aに設けられた切り欠き部41a1に台座20が嵌合しているため、切り欠き部41a1と台座部20との間もシール手段により液密にシールされている。
【0041】
保護カバー40内と外気との間に圧力差が生じるのを防ぐため、保護カバー40をタンクの側壁に取り付けた際に下側に配置される側板41bに通気孔41b1が形成されている。このように通気孔を保護カバーの下部に設けておけば、油入電気機器が屋外に設置される場合に、該通気孔を通して保護カバー40内に雨水が浸入するのを防ぐことができる。
【0042】
上記のように、油温計4の温度表示部6を取り付けるため油入電気機器のタンクに溶接された台座部20に保護カバー40を取り付けて、この保護カバーにより油温計の温度表示部6を覆うようにしておくと、電気機器の保守点検の際などに油温計の温度表示部に直接物が当るのを防いで、温度表示部の透明板が破損する等の問題が生じるのを防ぐことができる。また上記のように保護カバー40を油入電気機器のタンクに溶接された台座部20に固定しておくと、保護カバー40に物が当った場合に生じる衝撃を台座部20で受け止めて、温度表示部6に衝撃が直接伝わるのを防ぐことができるため、温度表示部6の保護を確実に図ることができる。更に、上記のように保護カバー40を台座部20に固定するように構成しておくと、保護カバーの質量を全てタンクに溶接された台座部で受け止めて、保護カバーの質量により温度表示部に荷重がかかるのを防ぐことができるため、保護カバーが温度表示部の機械的強度に影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0043】
また上記のように、各ボルト46を、保護カバー40の側板部41と台座部20との間で突っ張らせることにより、保護カバー40をタンクの側壁2aに対して固定するようにしておくと、タンクの側壁2aにスタッドボルトを溶接したり、保護カバーの取付具を溶接したりすることなく、保護カバーを簡単に油入電気機器のタンク2に取り付けることができる。また温度表示部6が台座部20を介して電気機器のタンクに取り付けられている既設の油入電気機器にも保護カバー40を容易に取り付けて、温度表示部の保護を図ることができる。
【0044】
上記の実施形態では、油温計の感温部5を電気機器のタンク2の側壁2aを貫通させてタンク内の絶縁油中に挿入するとしたが、感温部5として、熱膨張係数が大きいアルコール等の液体を管内に封入した液圧式のものを用いる場合には、感温部5を、タンク2の上蓋を貫通させてタンク内の絶縁油中に挿入して、感温部5とタンク2の側壁に取り付けられた温度表示部6との間を接続管を介して接続することもある。このように構成される場合も、タンクの側壁に取り付けられた温度表示部6を覆うように防水性の保護カバー40を取り付けて、該保護カバーとタンクの側壁との間の突き合わせ部を液密にシールしておくことにより、温度表示部に雨水が直接かかるのを防ぐことができる。
【0045】
上記の実施形態では、油温計4及び油面計30に対して共通の台座20を設けているため、台座部20が油温計の上端を越えて上方に延びているが、油面計が省略される場合、又は油温計を取り付けるための台座部が油面計を構成するための台座部と別個に設けられる場合にも本発明を適用することができる。油温計の温度表示部6を取り付けるために必要な大きさの油温計専用の台座部がタンクの側壁に溶接される場合には、上記の実施形態において保護カバー40の側板41aに設けた切り欠き41a1は不要であり、切り欠きを有しない4つの側板41aないし41dにより保護カバーの側板部41を構成することができる。
【0046】
上記の実施形態では、保護カバー40の側板部41にナット45を溶接することにより、ボルト46を螺合させる雌ネジ部を構成しているが、側板部41が十分な厚さを有している場合には、ボルト46を螺合させる雌ネジ部を側板部41を貫通させて設けたネジ孔により構成することもできる。
【0047】
上記の実施形態では、油温計4をタンク2の側壁に取り付けているが、本発明は、油温計4をタンクの外面に取り付ける場合に広く適用することができる。例えば、屋内に設置される油入電気機器のタンクの上面に油温計を取り付ける場合にも本発明を適用することができる。油入電気機器が屋内に設置される場合、保護カバー40は必ずしも防水性を有している必要はない。
【0048】
上記の実施形態では、油温計としてダイヤル温度計を用いたが、他の形式の温度計、例えば温度をデジタル表示するデジタル式の温度計を用いる場合にも本発明を適用することができる。
【0049】
上記の実施形態では、配電用自動電圧調整器に本発明を適用したが、油入変圧器等の他の油入電気機器にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 配電用自動電圧調整器(油入電気機器)
2 タンク
2a タンクの側壁
2b 貫通孔
3 電気機器の構成要素とともにタンク2内に収容された絶縁油
4 油温計
5 油温計の感温部
6 油温計の温度表示部
8 温度表示手段
8a 指針
8b 文字盤
9 透明板
10 押さえ板
10a 円形窓
11 感温部を構成する金属パイプ
12 指示軸
13 機構ケース
13a 機構ケースの首下部
13b 機構ケースのフランジ
15 パッキン
16 ナット
20 台座部
20a 貫通孔
20b スリット
21 パッキン
22 ボルト
30 油面計
33 覗き窓
34 蓋板
35 ボルト
40 保護カバー
41 側板部
41a〜41d 側板
42 端板部
43 透明な覆い板
44 窓部
45 ナット
46 ボルト
47 パッキン
48 ネジ