【解決手段】本発明は、所定の方向に延びる回転軸42周りに回転可能な回転体2であって、回転軸42と直交若しくは略直交する方向に延び且つp型半導体によって構成される第一部位21、及び回転軸42を挟んで第一部位21と反対側に延び且つn型半導体によって構成される第二部位22、を有する回転体2と、回転体2が回転する回転領域の周囲に配置される電極3と、を備え、第一部位21を構成するp型半導体と第二部位22を構成するn型半導体とは接合している。
所定の方向に延びる回転軸周りに回転可能な回転体であって、前記回転軸と直交若しくは略直交する方向に延び且つp型半導体によって構成される第一部位、及び前記回転軸を挟んで前記第一部位と反対側に延び且つn型半導体によって構成される第二部位、を有する回転体と、
前記回転体が回転する回転領域の周囲に配置される電極と、を備え、
前記第一部位を構成するp型半導体と前記第二部位を構成するn型半導体とは接合している、回転装置。
前記回転体は、前記回転軸が挿通される貫通孔を有すると共に、p型半導体とn型半導体とが接合するよう該p型半導体によって構成される第三部位と該n型半導体によって構成される第四部位とを有し、
前記第一部位は、前記第三部位から延びると共に、前記第二部位は、前記第四部位から延びる、請求項1に記載の回転装置。
前記開口部は、前記内部空間に流体を流入させることが可能な複数の流入部と、前記内部空間から流体を流出させることが可能な少なくとも一つの流出部と、を有する、請求項5に記載の回転装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のマイクロ分析チップ100では、第一液と第二液とが、第三流路105を流れながら自然に混ざるため、液体の流速、粘度等の影響によって十分に混合されず、十分な化学反応が得られない場合があった。
【0007】
このため、第三流路105内に例えば回転体等を配置し、該回転体等の回転によって第一液と第二液とを撹拌して混合することが考えられるが、流路幅が0.5mm程度の微少な空間内に回転体等を配置した上で該回転体等を回転駆動させるための複雑な機構(例えば、モータ等の回転駆動源、該モータ等からの回転動力を回転体に伝達する伝達機構等)を該回転体等に接続することは困難であった。また、前記複雑な機構をマイクロ分析チップ100に適用(配置)できたとしても、マイクロ分析チップ100が大型化するため、実用的ではない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、回転体に回転動力を伝達する伝達機構を接続することなく、且つ簡素な構成によって回転体を回転させることができる回転装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る回転装置は、所定の方向に延びる回転軸周りに回転可能な回転体であって、前記回転軸と直交若しくは略直交する方向に延び且つp型半導体によって構成される第一部位、及び前記回転軸を挟んで前記第一部位と反対側に延び且つn型半導体によって構成される第二部位、を有する回転体と、前記回転体が回転する回転領域の周囲に配置される電極と、を備え、前記第一部位を構成するp型半導体と前記第二部位を構成するn型半導体とは接合している。
【0010】
かかる構成によれば、回転体に回転動力を伝達する機構を接続することなく、且つ回転体と電極といった簡素な構成によって、回転体を回転(回動)させることができる。具体的には、以下の通りである。
【0011】
回転体(第一部位及び第二部位)に光が照射されることにより光起電力が生じて第一部位がプラス、第二部位がマイナスに帯電するため、電極が印加されて該電極がプラス又はマイナスに帯電することで、第一部位及び第二部位の少なくとも一方が電極に引き寄せられ又は電極と反発し、これにより、回転体を回転させることができる。即ち、上記構成によれば、光起電力によってプラス又はマイナスに帯電した第一部位及び第二部位の少なくとも一方を、クーロン力を利用して電極に引き寄せ又は反発させることで、回転動力を伝達する伝達機構等を回転体に接続することなく、回転体を回転させることができる。
【0012】
前記回転装置では、前記回転体は、前記回転軸が挿通される貫通孔を有すると共に、p型半導体とn型半導体とが接合するよう該p型半導体によって構成される第三部位と該n型半導体によって構成される第四部位とを有し、前記第一部位は、前記第三部位から延びると共に、前記第二部位は、前記第四部位から延びてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、貫通孔を有する回転体本体と、該回転体本体から延びる第一部位及び第二部位とによって回転体が構成されるため、回転体自体に回転軸を設ける構成に比べて構成を簡素化できる。
【0014】
また、前記回転装置では、前記電極の極性が交互に切り替わるように該電極に電圧を印加する印加部を備えることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、電極の極性が印加部によって交互に切り替えられるため、第一部位と第二部位とが該電極に交互に引き寄せられ(又は交互に反発し)、これにより、回転体を連続して安定的に回転させることができる。
【0016】
また、前記回転装置では、前記電極は、前記回転領域の周囲の所定位置に配置される第一電極と、前記回転領域を挟んで前記第一電極と対向する第二電極と、を有し、前記印加部は、前記第一電極と前記第二電極とが反対の極性となるように該第一電極及び該第二電極のそれぞれの極性を交互に切り替えてもよい。
【0017】
かかる構成によれば、回転軸を挟んで互いに逆方向に延びる第一部位及び第二部位のそれぞれが、回転領域を挟んで対向する一対の電極(第一電極及び第二電極)に同時に引き寄せられ又は同時に反発するため、電極が一つの場合に比べ、回転体の回転トルクが増大する。
【0018】
また、前記回転装置では、前記回転体を回転可能に内部空間に収容するケースを備え、前記電極は、前記内部空間の外側に配置され、前記ケースは、前記内部空間と前記ケースの外部空間とを連通する開口部と、該ケースの外部から前記内部空間に光を透過させる透光部と、を有してもよい。
【0019】
かかる構成によれば、開口部から複数種の流体をケースの内部空間内に流入させた状態で、透光部を通じて回転体に光を照射し且つ電極に印加することで、回転体が回転(回動)し、これにより、内部空間に流入させた複数種の流体を十分に混合(撹拌)することができる。
【0020】
前記開口部は、前記内部空間に流体を流入させることが可能な複数の流入部と、前記内部空間から流体を流出させることが可能な少なくとも一つの流出部と、を有してもよい。
【0021】
かかる構成によれば、回転体を回転させた状態で、各流入部から流体を内部空間に流入させつつ、流出部から内部空間の流体を流出させることで、複数種の流体の混合(撹拌)を連続して行うことができる。
【0022】
前記回転装置は、前記回転体に光を照射可能な照射部を備えてもよい。
【0023】
かかる構成によれば、照射部によって回転体に光を照射することで、光環境(回転体の周囲の光の分布状態)に関わらず、回転体を安定して回転させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上より、本発明によれば、簡素な構成によって回転体を回転させることができる回転装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図14を参照しつつ説明する。
【0027】
本実施形態では、回転装置の一例として、複数種の流体を連続して混合可能な混合装置を説明する。この混合装置は、
図1及び
図2に示すように、所定の方向(
図2における上下方向:以下、単に「軸方向」とも称する。)に延びる回転軸42周りに回転可能な回転体2と、回転体2が回転する領域(回転領域、回転空間)の周囲に配置される電極3と、を備える。具体的に、混合装置1は、回転体2と、電極3と、回転体2を回転可能に内部空間Sに収容するケース4と、電極3の極性が交互に切り替わるように電極3に電圧を印加する印加部5と、を備える。尚、内部空間Sは、前記回転領域を含む。本実施形態の内部空間Sは、前記回転領域と略一致し、回転領域より僅かに大きい。
【0028】
回転体2は、回転軸42と直交若しくは略直交する方向に延び、且つp型半導体によって構成される第一部位21と、回転軸42を挟んで第一部位21と反対側に延び、且つn型半導体によって構成される第二部位22と、を有する。これら第一部位21を構成するp型半導体と、第二部位22を構成するn型半導体とは、接合(詳しくはpn接合又はpin接合)している。また、回転体2は、回転軸42が挿通される貫通孔230を有し、且つ貫通孔230に回転軸42が挿通された状態で回転軸42周りに回転可能な回転体本体23も有する。
【0029】
第一部位21は、回転体本体23から軸方向と直交する方向に真っ直ぐに延びる。本実施形態の第一部位21は、前記直交する方向に延びる角柱状の部位である。この第一部位21は、延びる方向(長手方向)の各位置における断面の大きさが略一定となる角柱形状を有する。
【0030】
第二部位22は、回転体本体23における第一部位21と反対側の位置から第一部位21と反対向きに真っ直ぐに延びる。本実施形態の第二部位22は、第一部位21と同じ形状である。具体的に、第二部位22は、回転体本体23から第一部位21と反対方向に延びる角柱状の部位である。この第二部位22は、延びる方向(長手方向)の各位置における断面の大きさが略一定となる角柱形状を有する。
【0031】
本実施形態の回転体2では、第一部位21の先端から第二部位22の先端までの長さ寸法は、50μm〜500μmである。また、第一部位21及び第二部位22の幅(
図1における短手方向の寸法)は、10μm〜100μmであり、高さ(軸方向の寸法)は、10μm〜100μmである。
【0032】
回転体本体23は、回転軸42が挿通される貫通孔230を有すると共に、p型半導体によって構成される第三部位231とn型半導体によって構成される第四部位232とを有する。これら第三部位231と第四部位232とは、pn接合している。本実施形態の回転体本体23は、回転軸42方向の貫通孔230を有する円筒状の部位であり、所定の直径を挟んで一方側が第三部位231であり、他方側が第四部位232である。この回転体本体23において、第三部位231から第一部位21が延び、且つ第四部位232から第二部位22が延びている。尚、本実施形態の回転体本体23の内径(貫通孔230の直径)は、30μm〜300μmであり、回転体本体23の厚さ(軸方向の長さ寸法)は、10μm〜100μmである。
【0033】
本実施形態の回転体2では、第一部位21と第三部位231とは、連続し、即ち、共通のp型半導体材料によって一体的に形成されている。また、第二部位22と第四部位232とは、連続し、即ち、共通のn型半導体材料によって一体的に形成されている。そして、第三部位231と第四部位232とは、光電効果が生じるように(詳しくは、第三部位231と第四部位232との接合(境界)面近傍に空乏層が形成されるように)接合されている。この回転体2は、その表面に、絶縁性を有する部材によって形成された絶縁膜(保護膜)24を有する。即ち、一体的に形成された第一部位21、第二部位22、及び回転体本体23は、絶縁膜24によって覆われている。
【0034】
以上のように構成される回転体2を構成するp型半導体は、Si、Ge、SiGe等であり、n型半導体は、Si、Ge、SiGe等である。
【0035】
ケース4は、内部空間Sを画定するケース本体41と、内部空間Sにおいて回転体2の貫通孔230に挿通される回転軸42と、内部空間Sとケース4の外部(外部空間)とを連通させる開口部43と、を有する。
【0036】
ケース本体41は、ケース4の外部から内部空間Sに光を透過させる透光部411を含む。本実施形態のケース本体41は、円盤状の内部空間Sを画定する。即ち、ケース本体41は、円盤状の内部空間Sを画定する内壁面412を有する。内壁面412は、内部空間Sの円柱面状の周縁を規定する内周面413と、軸方向(
図2における上下方向)における内部空間Sの端縁を規定する一対の対向面414と、を有する。この内部空間Sの直径(対向面414の直径)は、回転体2の第一部位21の先端から第二部位22の先端までの長さ寸法より僅かに大きい(
図2参照)。また、軸方向における内部空間Sの寸法は、回転体2における軸方向の寸法より僅かに大きい。ここで、本実施形態の内周面413の直径(内径)は、70μm〜520μmであり、一対の対向面414の軸方向の間隔は、30μm〜120μmである。即ち、内部空間Sの体積は、約0.00053mm
3〜0.023mm
3である。
【0037】
また、ケース本体41において、一方の対向面414を含む壁部(
図2における上側の壁部)は、透明であり、透光部411を構成する。
【0038】
回転軸42は、内部空間Sの中心(内周面413の直径方向の中央位置)で該内部空間Sを横断するように延びる円柱状の部位である。本実施形態の回転軸42は、一対の対向面414の中心同士を結ぶように延び、回転体2の貫通孔230の内径よりも僅かに小さな直径(外径)の円柱形状を有する。本実施形態の回転軸42の直径(外径)は、10μm〜100μmである。
【0039】
開口部43は、内部空間Sに流体を流入させることが可能な複数の流入部431と、内部空間Sから流体を流出させることが可能な少なくとも一つの流出部432と、を有する。本実施形他の開口部43は、二つの流入部431と、一つの流出部432と、を有する。二つの流入部431は、内周面413の周方向に所定の間隔(本実施形態の例では、内周面413の周方向の長さ寸法の1/2未満の間隔)をあけて配置されている。一つの流出部432は、二つの流入部431に対して回転軸42を挟んで反対側の位置に配置されている。即ち、二つの流入部431は、軸方向視において、回転軸42と流出部432とを結ぶ線に対して線対称に配置されている。
【0040】
電極3は、一対(一組)の電極(第一電極31及び第二電極32)を有する。これら一対の電極31、32は、回転体2の回転領域を挟んで対向するように配置されている。即ち、第一電極31は、回転体2の回転領域の周囲(周辺)の所定位置に配置され、第二電極32は、回転領域を挟んで第一電極31と対向する位置に配置される。本実施形態の一対の電極31、32は、内部空間Sを挟んで対向するように、ケース本体41における内周面413の外側(直径方向外側)に埋め込まれている。
【0041】
詳しくは、第一電極31は、回転体2が回転軸42周りに回転し続けたときに、第一部位21の先端及び第二部位22の先端(回転体本体23側の端部とは反対の端部)と交互に対向する位置に配置される。また、第二電極32は、回転領域(内部空間S)を挟んで第一電極31と対向し、且つ、回転体2が回転軸42周りに回転し続けたときに、第一部位21の先端及び第二部位22の先端(回転体本体23側の端部とは反対の端部)と交互に対向する位置に配置される。より詳しくは、第一電極31及び第二電極32のそれぞれは、内周面413の外側(直径方向の外側)において該内周面413との距離が一定となるように該内周面413に沿って円弧状に延びている。第一電極31は、一方(
図1における左側)の流入部431と流出部432との間に配置され、第二電極32は、他方(
図1における左側)の流入部431と流出部432との間に配置されている。これら一対の電極31、32は、印加部5と導通可能に接続されている。
【0042】
印加部5は、第一電極31と第二電極32とが反対の極性となるように、第一電極31及び第二電極32のそれぞれの極性を交互に切り換える。即ち、印加部5は、第一電極31の極性と第二電極32の極性とが反対の状態を維持しつつ、第一電極31及び第二電極32のそれぞれの極性が交互に切り替わるように、各電極31、32に印加する。具体的に、印加部5は、回転体2の回転状態を検知する検知部51と、検知部51によって検知された回転体2の回転状態に基づいて各電極31、32に電圧を印加する電極印加部52と、を有する。
【0043】
検知部51は、撮像素子や各種センサ等によって回転体2の回転状態を検知する。本実施形態の検知部51は、第一部位21の先端及び第二部位22の先端の少なくとも一方の位置を検知する。検知部51は、検知した回転体2の回転状態を検知信号として電極印加部52に出力する。
【0044】
電極印加部52は、受信した検知信号に基づいて、第一電極31及び第二電極32の極性を切り換える。即ち、電極印加部52は、回転体2の回転に合わせて第一電極31及び第二電極32の極性が切り替わるよう、各電極31、32に印加する。本実施形態の電極印加部52は、交流電源を有する。この電極印加部52の具体的な印加方法は、以下の通りである。
【0045】
回転体2においてp型半導体とn型半導体とがpn接合しているため、回転体2に光が照射されると、光起電力が生じる。これにより、第一部位21がプラス、且つ第二部位22がマイナスに帯電する(
図3参照)。尚、回転体2を回転させ続ける間、光は、回転体2に照射され続ける。
【0046】
次に、電極印加部52が、第一電極31及び第二電極32に印加する。例えば、電極印加部52は、第一電極31がマイナスに帯電し、且つ第二電極32がプラスに帯電するように、各電極31、32に印加する。これにより、第一部位21が第一電極31に引き寄せられると共に、第二部位22が第二電極32に引き寄せられ、その結果、回転体2が回転し始める(
図3の矢印α参照)。このとき、第一部位21の先端が第二電極32よりも第一電極31に近い位置に移動し、且つ第二部位22の先端が第一電極31よりも第二電極32に近い位置に移動すると、各部位21、22の先端に電荷が集中する(集まる)ため、より強い力で第一部位21の先端が第一電極31に引き寄せられ、且つ、第二部位22の先端が第二電極32に引き寄せられる。
【0047】
続いて、
図4に示すように、検知部51によって第一部位21及び第二部位22の少なくとも一方の先端位置が、回転軸42を通って第一電極31と第二電極32とを結ぶ境界線55と重なったことを検知すると、電極印加部52は、第一電極31と第二電極32の極性がそれぞれ反対に切り替わる(即ち、第一電極31がプラス、第二電極32がマイナスとなる)ように第一電極31及び第二電極32に印加する。このとき、回転体2は、回動しているため、第一電極31及び第二電極32の極性が切り替わっても、慣性力によって第一部位21の先端と第二部位22の先端とが境界線55を超えて同方向に回動し続ける。そして、
図5に示すように、各部位21、22の先端が境界線55を超えると、第一部位21が第二電極32に引き寄せられ、且つ、第二部位22が第一電極31に引き寄せられる。これにより、回転体2は、同方向(
図5の矢印α参照)に回動を続ける。
【0048】
このように、回転している回転体2の第一部位21の先端及び第二部位22の先端が境界線55を超えるタイミングで、第一電極31と第二電極32との極性が切り換えられることで、回転体2は、回転軸42周りに回転(回動)し続ける。
【0049】
本実施形態の混合装置1では、回転体2に光が照射された状態で、上述のように印加部5によって第一電極31及び第二電極32が印加されると、回転体2が回転し続ける。そして、この回転体2が回転した状態で、二つの流入部431のそれぞれから内部空間Sに流体(例えば、液体)を流入させると、二種類の流体は、内部空間Sにおいて回転している回転体2によって十分に混合(撹拌)され、十分に混合された状態で流出部432からケース4の外に流出する。
【0050】
次に、混合装置1の製造方法の一例について、
図2、
図6〜
図14を参照しつつ説明する。尚、混合装置1が完成したときに、上述した混合装置1の各部品(部位)と同じ部品(部位)については、同じ符号を用いて説明する。
【0051】
先ず、
図6に示すように、例えば、単結晶Si基板(以下、単に「基板」と称する。)6に、リソグラフィとエッチング技術によって所定の第一領域61をエッチングし、その後、エッチングした第一領域61に、薬品耐性があり且つ機械的摩耗の生じ難い材料である、例えば、Si
3N
4を堆積させ、基板6等の表面(
図6における上面)を研磨する。これにより、エッチングした領域(第一領域)61内のみにSi
3N
4が残る。
【0052】
次に、
図7及び
図8に示すように、Si
3N
4が堆積した部位(第一領域)61に、リソグラフィとエッチング技術によって、回転体2が配置される第二領域Sをエッチングする。このとき、回転軸42に対応する部位をエッチングすることなく残す。また、開口部43(詳しくは、二つの流入部431と一つの流出部432)に対応する部位もエッチングによって除去する。
【0053】
次に、
図9に示すように、エッチングした第二領域Sに、例えば、SiO
2を堆積し、表面を研磨する。これにより、第二領域S内のみにSiO
2が残る。
【0054】
次に、
図10に示すように、SiO
2が堆積した第二領域Sのうち回転体2と対応する形状の第三領域63をリソグラフィとエッチング技術によって除去し、その後、形成された凹部(エッチングされた部位)の表面に絶縁材料の膜(絶縁膜)24を形成する。
【0055】
次に、
図11に示すように、第三領域63に、多結晶Siを堆積させ、p型不純物、n型不純物を所定の領域に導入する。詳しくは、p型不純物を第一部位21及び第三部位231と対応する領域に導入し、且つ、n型不純物を第二部位22及び第四部位232と対応する領域に導入する。その後、第三領域63に堆積させた堆積物(多結晶Si)2の表面(基板6の表面側の面)を絶縁膜24で被覆する。続いて、基板6等の表面を、例えば、熱酸化法により僅かに酸化させる(
図11の符号62参照)。その後、基板6等の表面(
図10における上側の面)上に、Si
3N
4を堆積させ、Si
3N
4の層65を形成する。
【0056】
次に、
図12に示すように、第一領域61の周辺部に、リソグラフィとエッチング技術によって、導電性材料31、32が配置される第四領域(第一電極31及び第二電極32に対応する部位)64をエッチングし、その後、第四領域64に、導電性材料(例えば、高不純物濃度半導体)31、32を嵌め込む。このとき、導電性材料31、32に電圧を印加するための導線等をケース4の外部まで引き出しておく。
【0057】
次に、
図13に示すように、軸方向視における第二領域Sの周縁部と重なる部位を残すように、第二領域S上に形成されたSi
3N
4の層の一部をリソグラフィによって除去する。続いて、
図14に示すように、第二領域Sに残っているSiO
2をHF酸によって除去する。
【0058】
次に、基板6等の表面をガラス66によって覆い、引き出された導線等に電極印加部52を接続し、検知部51を配置することによって、混合装置1が完成する(
図2参照)。
【0059】
以上の混合装置(回転装置)1によれば、回転体2に回転動力を伝達する機構を接続することなく、且つ回転体2と電極3といった簡素な構成によって、回転体2を回転(回動)させることができる。具体的には、以下の通りである。
【0060】
回転体2(第一部位21及び第二部位22)に光が照射されることにより光起電力が生じて第一部位がプラス、第二部位がマイナスに帯電する。このため、電極3が印加されて該電極3がプラス又はマイナスに帯電することで、第一部位21及び第二部位22の少なくとも一方が電極3に引き寄せられ又は電極3と反発し、これにより、回転体2を回転させることができる。即ち、本実施形態の混合装置1によれば、光起電力によってプラス又はマイナスに帯電した第一部位21及び第二部位22の少なくとも一方を、クーロン力を利用して電極3に引き寄せ又は反発させることで、回転動力を伝達する伝達機構等を回転体2に接続することなく、回転体2を回転させることができる。
【0061】
本実施形態の混合装置1では、回転体2が、貫通孔230を有する回転体本体23と、該回転体本体23から延びる第一部位21及び第二部位22とによって構成されるため、回転体2自体に回転軸42を設ける構成に比べて構成を簡素化できる。
【0062】
本実施形態の混合装置1では、電極3の極性が印加部5によって交互に切り替えられるため、第一部位21と第二部位22とが該電極3に交互に引き寄せられ(又は交互に反発し)、これにより、回転体2を連続して安定的に回転させることができる。
【0063】
本実施形態の混合装置1では、第一電極と第二電極とが内部空間S(回転体2の回転領域)を挟んで配置され、且つ、印加部5によって互いの極性を逆に保ちつつ交互に切り換えられる。このため、回転軸42を挟んで互いに逆方向に延びる第一部位21及び第二部位22のそれぞれが、内部空間S(回転領域)を挟んで対向する一対の電極(第一電極31及び第二電極32)に同時に引き寄せられ又は同時に反発する。その結果、電極3が一つの場合に比べ、回転体2の回転トルクが増大する。
【0064】
本実施形態の混合装置1では、開口部43と透光部411とを有するケース4を備える。このため、開口部43から複数種の流体をケース4の内部空間S内に流入させた状態で、透光部411を通じて回転体2に光を照射し且つ電極3に印加することで、回転体2が回転(回動)する。これにより、内部空間Sに流入させた複数種の流体を十分に混合(撹拌)することができる。
【0065】
また、混合装置1では、開口部43は、複数(本実施形態の例では二つ)の流入部431と少なくとも一つ(本実施形態の例では一つ)の流出部432と、を有する。このため、回転体2を回転させた状態で、各流入部431から流体を内部空間Sに流入させつつ、流出部432から内部空間Sの流体を流出させることで、複数種の流体の混合(撹拌)を連続して行うことができる。
【0066】
尚、本発明の回転装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0067】
上記実施形態では、回転装置の一例として混合装置1を説明したが、これに限定されない。例えば、回転装置は、回転体2をプロペラ形状とし(具体的には、第一部位21及び第二部位22をブレード(羽根)形状にし)、推進力を発生させる装置等であってもよい。この場合、回転軸42を他の部材等によって支持させ、ケース4は不要である。即ち、回転体2が回転する領域(上記実施形態の例では、内部空間S)に流体等を閉じ込める必要がない装置として回転装置1が用いられる場合には、ケース4は、なくてもよい。また、回転体2の形状を変更することによって回転装置を流量計として用いることもできる。また、回転軸42が互いに直交する方向を向くように三つの回転体2を配置する(即ち、回転体2を三次元的に三つ配置する)ことによって、回転装置をジャイロセンサーとして用いることもできる。また、上記のように推進力を発生させる装置として回転装置を用いる場合、例えば、該回転装置を生体の大動脈中を移動する検査ミニロボットの推進力の発生源として用いることができる。
【0068】
上記実施形態の回転装置1では、一対の電極(第一電極31及び第二電極32)が配置されているが、この構成に限定されない。例えば、
図15に示すように、電極3は、一つでもよい。この場合、電極印加部(交流電源)52は、一対の外部端子のうちの一方の外部端子をアース電位とすることで、電極3の極性を交互に切り替えることができる。
【0069】
また、回転装置1は、
図16に示すように、回転体2の回転方向に間隔をあけて配置される三つ以上(
図16に示す例では六つ)の電極3を有してもよい。この場合、隣り合う電極3の極性を異ならせ、詳しくは、回転体2の例えば第一部位21先端の回転方向の前方にある電極3が該先端を引き寄せる極性で、且つ第一部位21先端の回転方向の後方にある電極3が該先端と反発する極性となるように、印加部5によって各電極3の極性が制御される。これにより、回転体2がより滑らかに回転することができる。
【0070】
上記実施形態の回転装置1では、回転軸42がケース4に設けられているが、この構成に限定されない。例えば、回転軸42は、回転体2に設けられてもよい。この場合、回転軸42を受ける凹部等(軸受け部)が、ケース4の内部空間Sを規定する一対の対向面414等に設けられる。
【0071】
回転体2の第一部位21及び第二部位22の具体的な形状は、限定されない。上記実施形態の回転装置1では、第一部位21及び第二部位22は、角柱形状であるが、例えば、円柱形状であってもよく、上述のようにブレード(羽根)形状等であってもよい。また、第一部位21及び第二部位22の長手方向の各位置における断面形状は、同じでなくてもよい。
【0072】
上記実施形態の回転装置1では、印加部5が検知部51を有しているが、無くてもよい。この場合、各電極3は、予め設定された所定の時間間隔で極性が切り替えられる。
【0073】
上記実施形態の回転装置1の印加部5は、交流電源(電極印加部52)を有しているが、この構成に限定されない。印加部5は、例えば、所定の回路を有し、外部(回転装置1以外)の交流電源等が接続されたときに、該回路によって回転体2の回転に適したタイミングで、各電極31、32の極性が切り替わるように、該電極31、32に印加できる構成であってもよい。
【0074】
上記実施形態の回転装置1では、回転体は一つであるが、この構成に限定されない。例えば、回転装置1は、
図17に示すように、複数(
図17に示す例では、二つ)の回転体2を備えてもよい。尚、回転体2の回転領域の周囲に少なくとも一つの電極3があれば、回転体2を回転させることができるため、回転体2の数が増えるのに伴って、回転装置1に設けられる電極3の数も増える。
【0075】
また、回転装置1は、回転体2に光を照射可能な照射部を備えてもよい。かかる構成によれば、照射部によって回転体2に光を照射することで、光環境(回転体の周囲の光の分布状態)に関わらず、回転体2を安定して回転させることができる。