【解決手段】屈折率測定装置1は、測定光Lに対応する信号を出力する半導体受光素子部3Aと、半導体受光素子部3A上に配置され、直線状の溝部6Aaが所定ピッチで複数形成された回折格子部6Aと、測定光Lに対応する信号を出力する半導体受光素子部3Bと、半導体受光素子部3B上に配置され直線状の溝部6Baが溝部6Aaと異なるピッチで複数形成された回折格子部6Bと、を有するフォトダイオード3と、所定の波長の測定光Lを回折格子部6A,6Bに向けて出射する光源装置2と、半導体受光素子部3A,3Bから出力された信号のそれぞれの強度を対数変換して出力する対数変換回路21A,21Bと、対数変換回路21A,21Bから出力されたそれぞれの強度の差分を増幅する差動増幅回路22とを備える。
入射した光に対応する信号を出力する第1の半導体受光素子部と、前記第1の半導体受光素子部上の前記光の入射側に配置され、直線状の溝が所定ピッチで複数形成された第1の回折格子部と、前記光に対応する信号を出力する第2の半導体受光素子部と、前記第2の半導体受光素子部上の前記光の入射側に配置され直線状の溝が前記所定ピッチと異なるピッチで複数形成された第2の回折格子部と、を有するフォトダイオードと、
所定の波長の光を前記第1及び第2の回折格子部に向けて出射する光源と、
前記第1の半導体受光素子部から出力された信号と、前記第2の半導体受光素子部から出力された信号とのそれぞれの強度を対数変換して出力する対数変換回路と、
前記対数変換回路から出力されたそれぞれの強度の差分を増幅する差動増幅回路と、
を備える屈折率測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る屈折率測定装置を示す斜視図、
図2は、屈折率測定装置に用いるフォトダイオードの要部断面図である。本実施形態に係る屈折率測定装置1は、
図1に示されるように、被測定物Mに測定光(光)Lを照射することにより被測定物Mの屈折率nを検出する装置である。屈折率測定装置1は、測定光Lの照射により、配置された被測定物Mの屈折率n等に応じた電気信号を出力するフォトダイオード3と、測定光Lを出射する光源装置(光源)2と、を備えている。さらに、屈折率測定装置1は、フォトダイオード3から出力された電気信号を処理及び検出する屈折率算出処理部5を備えている。
【0017】
光源装置2は、所定の帯域に含まれる特定波長の測定光Lを出射するものである。また、光源装置2は、フォトダイオード3に対する測定光Lの入射角度が調整可能であり、本実施形態の光源装置2は、測定光Lがフォトダイオード3上の回折格子部6A,6Bに向けて斜めに入射するように、詳細には、後述する回折格子部6A,6Bの溝部の形成方向に対して垂直な平面内でフォトダイオード3表面に垂直な方向に対して傾斜した方向から入射するように配置されている。
【0018】
フォトダイオード3は、測定光Lの光強度に対応する2つの電気信号をそれぞれ生成する2つの半導体受光素子部3A,3Bと、それぞれの半導体受光素子部3A,3B上に設けられた2つの回折格子部6A,6Bとを備えている。なお、以下の説明においては、フォトダイオード3を構成する各層の積層方向をZ軸方向とし、後述する回折格子部6A,6Bのそれぞれに形成された複数の直線状の溝部6Aa,6Baの配列方向をY軸方向、及びそれらの溝部6Aa,6Baの形成方向をX軸方向とし、各軸は互いに直交するものとする。
【0019】
このフォトダイオード3は、シリコン基板(基板)7と、シリコン基板7上に配置された埋め込み絶縁層8と、埋め込み絶縁層8上にY軸方向に並んで配置された2つの半導体受光素子部3A,3Bと、を有している。半導体受光素子部3Aは、X方向に並んで形成された半導体層9,11A,12と、半導体層9,11A,12上に配置されたゲート絶縁層13Aと、によって構成され、半導体受光素子部3Bは、X方向に並んで形成された半導体層9,11B,12と、半導体層9,11B,12上に配置されたゲート絶縁層13Bと、によって構成される。これらの半導体受光素子部3A,3Bは、シリコン基板7と埋め込み絶縁層8とともに、いわゆるMOS構造の横型pn接合ダイオードを構成する。埋め込み絶縁層8は酸化シリコンからなり、半導体層9,11A,11B,12は所定の不純物を含むシリコンからなり、ゲート絶縁層13A,13Bは酸化シリコンからなる。従って、フォトダイオード3は、シリコン基板7を基板(支持体)としたSOI(Silicon On Insulator)構造を有している。
【0020】
半導体受光素子部3Aの半導体層9,11A,12は、埋め込み絶縁層8上の矩形状の所定領域において、X軸方向に沿って、この順で隣接して設けられている。光導波路及び光吸収層として機能する半導体層11Aは、深さ方向(Z軸方向)の大部分が空乏化し、シリコンに対して低濃度でボロンやリン等のp型不純物又はn型不純物が添加されている。アノード電極及びカソード電極である半導体層9,12は、それぞれ、埋め込み絶縁層8上において半導体層11AをX軸に沿った方向から挟むように、半導体層11Aとほぼ同一の厚さでp
+型半導体層及びn
+型半導体層として形成されている。このp
+型半導体層9及びn
+型半導体層12は、それぞれ、シリコンに対して高濃度(10
19cm
−3以上)でボロン等のp型不純物及びリン等のn型不純物が添加されており、半導体層11Aに並設されることでアノード電極及びカソード電極として機能する。これらの半導体層9,11A,12上には、半導体層9,11A,12を覆うようにゲート絶縁層13Aが形成されている。また、半導体受光素子部3Bも同様な構成を有する。
【0021】
このような半導体受光素子部3A,3Bによって同時に測定光Lを検出する際には、回折格子部6A,6Bにゲート電圧Vgが印加され、シリコン基板7に基板電圧Vsubが印加される。ゲート電圧Vg及び基板電圧Vsubを調整することで、半導体層11A,11Bの上下の界面における電子又は正孔の密度を広範囲で制御することができる。特に、ゲート電圧Vg及び基板電圧Vsubは、ゲート絶縁層13A,13Bに接する半導体層11A,11Bの界面と、埋め込み絶縁層8に接する半導体層11A,11Bの界面における電子又は正孔の密度が半導体層11A,11Bのそれぞれの真性キャリア密度よりも十分に大きくなるように設定されることが好ましい。なお、ゲート電圧Vgは、回折格子部6A,6Bで共通で印加されてもよいし、回折格子部6A,6Bで独立に印加されて、それぞれの電圧を独立に調整可能とされてもよい。
【0022】
光源装置2からの光の入射側のゲート絶縁層13A上の少なくとも半導体層11Aを覆う領域には、回折格子部6Aが配置されている。従って、回折格子部6Aは、ゲート絶縁層13Aを介して半導体層11Aを覆っており、半導体層9,11A,12から電気的に絶縁されている。回折格子部6Aは、平面状の導電部材である金属膜に、半導体層11Aを覆う領域に亘ってX軸方向に沿ってゲート絶縁層13Aの表面まで貫通する複数の直線状の溝部6Aa(
図2参照)が形成されている。これらの複数の溝部6AaはY軸方向に一定の格子ピッチ(周期)P1で並設されている。このような回折格子部6Aの材料としては、例えば、チタン(Ti)の付着力強化層上に形成した金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、等の導電性金属、又は、n型もしくはp型の不純物を高濃度に添加した多結晶シリコン(ポリSi)等の導電性材料が用いられる。この回折格子部6Aは、所定波長を有する測定光Lを半導体層11Aへ導く役割、ゲート電極としての役割、及び被測定物Mを配置するための配置部としての役割を有する。
【0023】
光源装置2からの光の入射側のゲート絶縁層13B上の少なくとも半導体層11Bを覆う領域には、回折格子部6Bが配置されている。回折格子部6Bは、ゲート絶縁層13Bを介して半導体層11Bを覆っており、半導体層9,11B,12から電気的に絶縁されている。回折格子部6Bは、回折格子部6Aと同様な構造を有し、回折格子部6Bの溝部6Baの形成方向が回折格子部6Aの溝部6Aaの形成方向と平行になるように構成され、かつ、複数の溝部6BaのY軸方向の格子ピッチP2が、回折格子部6Aの格子ピッチP1よりも小さくなるように設定されている(
図2)。この回折格子部6Bは、所定波長を有する測定光Lを半導体層11Bへ導く役割、ゲート電極としての役割、及び被測定物Mを配置するための配置部としての役割を有する。
【0024】
フォトダイオード3では、回折格子部6A,6Bに同時に測定光Lが照射されると、半導体層11A,11Bの導波路モードとの間で位相整合条件を満たす特定波長の測定光Lが最も効率よく半導体層11A,11Bに捉えられる。半導体層11A,11Bに捉えられた測定光Lは、半導体層11A,11B中において吸収されて電子・正孔対を生成する。そして、生成され分離された電子と正孔の量に対応する光電流が、それぞれの半導体受光素子部3A,3Bにおいてカソードからアノードへ流れるため、それぞれの半導体受光素子部3A,3Bの半導体層12から電気信号が取り出される。
【0025】
この半導体層11Aにおける導波路モードの伝搬波長λ
gは、式(1)により示される。ここで、λは測定光Lの波長であり、n
sは半導体層11Aの屈折率であり、t
sは半導体層11Aの厚さであり、n
iは埋め込み絶縁層8及びゲート絶縁層13Aの屈折率である。TEモードとは、導波路(すなわち、半導体層11A)を伝搬する光の電界方向が伝搬方向に垂直で導波路平面内にあるモードであり、TMモードとは同じく磁界方向が伝搬方向に垂直で導波路平面内にあるモードであり、各モードに対応して式(1)が異なる。
【数1】
【0026】
位相整合条件について説明する。
図3は測定光と導波路モードとの位相整合条件の関係を示す図である。
図3(a)に示されるように、回折格子部6Aに対して測定光Lが入射角度αで斜めに入射したとき、回折格子部6Aにおける1ピッチP(=P1)あたりに生じる光路長(P×sinα)と屈折率nと波長λとに起因して、位相差Δ(=P(2πn/λ)sinα)が生じる。そして、位相整合条件は、位相差Δを波数k
g(=2π/λ
g)で除した値(Δ/k
g)を半導体層11Aの伝搬波長λ
gに対して加算又は減算した値(=λ
g±Δ/k
g)が、格子ピッチPと等しいとして示される。
図3(b)は加算される場合を示しており、半導体層11Aには前進波が伝搬する。減算される場合は、後進波が伝搬する。従って、式(2−1)及び式(2−2)が得られる。ここで、λは測定光Lの波長であり、nは被測定物Mの屈折率であり、Pは格子ピッチであり、αは測定光Lの入射角度である。また、λ
gfは半導体層11Aにおける前進波の伝搬波長であり、λ
gbは半導体層11Aにおける後進波の伝搬波長である。位相整合条件が満たされる場合とは、式(2−1)及び式(2−2)を満足する場合である。式(2−1)及び式(2−2)によれば、位相整合条件を満たす場合とは、格子ピッチP、屈折率n、測定光Lの波長λ、入射角度αにより規定される値が、導波路モードの伝搬波長λ
gf,λ
gbと一致する場合であるともいえる。
【数2】
【0027】
式(2−1)及び式(2−2)によれば、測定光Lの入射角度αが0度以外、換言すると測定光Lが回折格子部6Aに対して斜めに照射された状態で、屈折率nの変化が生じると位相整合条件を満たすために測定光Lの波長λのシフトが必要になることがわかる。同様に、半導体層11Bにおける位相整合条件も同様の式によって表される。
【0028】
光電流の分光特性について説明する。
図4は屈折率とピーク波長及びピーク値との関係を示すグラフである。
図4に示されるように、光電流の分光特性は、測定光Lの波長λと、その測定光Lを照射したときにフォトダイオード3から出力される電気信号の大きさとの関係であり、波長λごとの電気信号の大きさを示すものである。
図4において、横軸は測定光Lの波長λであり、縦軸は電気信号の大きさを示す光電流である。式(2−1)及び式(2−2)の右辺の値が左辺の伝搬波長λ
gf,λ
gbに近づくほど、電気信号の値が大きくなり、右辺の値と左辺の値が一致したとき(位相整合条件を満たすとき)に電気信号は最大値(ピーク)になる。
【0029】
屈折率nの変化に伴うピーク波長λpのシフトについて更に説明する。
図4(a)は、回折格子部6Aに対する測定光LのY−Z平面内で傾けた入射角度αが10度であるときの光電流の分光特性を示す。
図4(b)は、回折格子部6Aに対する測定光Lの入射角度αが20度であるときの光電流の分光特性を示す。更に、
図4(a)のグラフG1及び
図4(b)のグラフG3は、被測定物Mの屈折率がn=1である場合の光電流の分光特性を示している。グラフG1は2個のピークpk1,pk2を有し、グラフG3はピークpk5,pk6を有している。2個のピークのうち、長波長のピーク(すなわち、pk1、pk3)が後進波に対応し、短波長のピーク(すなわち、pk2、pk4)が前進波に対応する。
図4(a)のグラフG2及び
図4(b)のグラフG4は、被測定物Mの屈折率がn=1.4933である場合の光電流の分光特性を示している。グラフG2は2個のピークpk3,pk4を有し、グラフG4はピークpk7,pk8を有している。同じく、長波長のピーク(すなわち、pk5、pk7)が後進波に対応し、短波長のピーク(すなわち、pk6、pk8)が前進波に対応する。
【0030】
ここで、
図4(a)の後進波のピークpk1,pk3を比較すると、グラフG1(n=1)のピークpk1に対して、グラフG2(n=1.4933)のピークpk3は、ピーク波長λpが長波長側へシフトしていることがわかる。また、前進波のピークに関しては、グラフG1(n=1)のピークpk2に対して、グラフG2(n=1.4933)のピークpk4は、ピーク波長λpが短波長側へシフトしていることがわかる。また、
図4(a)のピークpk1,pk3を比較すると、グラフG1(n=1)のピークpk1に対して、グラフG2(n=1.4933)のピークpk3は、ピーク値が減少していることがわかる。また、グラフG1(n=1)のピークpk2に対して、グラフG2(n=1.4933)のピークpk4も、ピーク値が減少していることがわかる。
【0031】
このように、ピーク波長λpのシフト量と屈折率nとの間には所定の関係があり、ピーク値の減少量と屈折率nとの間にも所定の関係があることがわかる。そこで、本実施形態の屈折率測定装置1では、ピーク波長λpが屈折率nの変化に応じてシフトするという性質を利用して屈折率nを検出する。この検出メカニズムについて、
図5及び
図6を参照しながらさらに説明する。
【0032】
図5は、フォトダイオード3における測定光Lの波長と半導体受光素子部3A,3Bのそれぞれが生成する光電流I
1,I
2の大きさとの関係を示すグラフである。同図中において、各光電流I
1,I
2の実線の特性は、ある基準屈折率n
0を有する被測定物Mが配置された場合の特性を示し、各光電流I
1,I
2の点線の特性は、基準屈折率n
0とは異なる屈折率nを有する被測定物Mが配置された場合の特性を示している。本実施形態の屈折率測定装置1では、実線の特性が示すように、光源装置2から入射角度αで出射された測定光Lの波長λ
Lに対して、基準屈折率n
0を有する被測定物Mが配置された場合の光電流I
1,I
2の値が互いに等しくなるように、回折格子部6Aの格子ピッチP1及び回折格子部6Bの格子ピッチP2が設計されている。これに対して、点線の特性に示すように、屈折率測定装置1では、光源装置2から入射角度αで出射された測定光Lの波長λ
Lに対して、屈折率nを有する被測定物Mが配置された場合の2つの光電流I
1,I
2の差が、屈折率nのn
0からの変化量に応じた大きさで生じる。この性質を利用して、屈折率測定装置1では、2つの光電流I
1,I
2の差を基にして被測定物Mの屈折率nを検出する。
【0033】
図6は、フォトダイオード3における被測定物Mの屈折率nの基準屈折率n
0に対する差と2つの光電流I
1,I
2の差との関係を示すグラフである。同図において、特性G5は、屈折率測定装置1における所定の発光強度の測定光Lに対する屈折率差n−n
0と光電流差I
1−I
2との関係を示し、特性G6は、測定光Lの発光強度を50%に減少させた場合の屈折率差n−n
0と光電流差I
1−I
2との関係を示し、特性G7は、測定光Lの発光強度を10%に減少させた場合の屈折率差n−n
0と光電流差I
1−I
2との関係を示す。こられの特性G5,G6,G7に示すように、それぞれの特性では屈折率差n−n
0に対して光電流差I
1−I
2はほぼ線形に変化しているが、測定光Lの発光強度を減少させるに従って、光電流差I
1−I
2の屈折率差n−n
0に対する変化率(傾き)が小さくなる。従って、光源装置2の発光強度が弱くなると、屈折率nの検出感度が低下することが想定される。
【0034】
屈折率測定装置1は、このような屈折率の検出感度の低下を防止するために、下記のような構成の屈折率算出処理部5を備える。すなわち、屈折率算出処理部5は、
図7に示すように、フォトダイオード3の半導体受光素子部3A,3Bの出力にそれぞれ接続された対数変換回路21A,21Bによって構成された対数変換回路部21と、対数変換回路21A,21Bの出力を差動増幅する差動増幅回路22とを含んでいる。この屈折率算出処理部5は、フォトダイオード3と同一のSOI基板上にオンチップで作製されている。
【0035】
対数変換回路部21は、半導体受光素子部3A,3Bのそれぞれから出力される電気信号を対数変換する回路部である。
図8は、対数変換回路部21の詳細構成を示す回路図、
図9は、半導体受光素子部3A,3Bの出力と対数変換回路部21の出力との関係を示すグラフである。
【0036】
対数変換回路部21の対数変換回路21Aは、第1MOSFET(電界効果トランジスタ)M
11と、第2MOSFETM
12と、抵抗素子R
L1とを含んで構成されている。この対数変換回路21Aにおいては、半導体受光素子部3Aの出力であるカソードが第1MOSFETM
11のソース(電流端子)に接続され、第1MOSFETM
11のソースは第2MOSFETM
12のゲート(制御端子)にさらに接続されると共に、第1MOSFETM
11のドレイン(電流端子)及びゲートが電源に接続されてバイアス電圧が印加されている。さらに、対数変換回路21Aにおいて、第2MOSFETM
12のソースが、差動増幅回路22の反転入力端子に接続されると共に抵抗R
L1を介してグランドに接続され、第2MOSFETM
12のドレインが電源に接続されてバイアス電圧が印加されている。上記構成の対数変換回路21Aは、半導体受光素子部3Aから出力された光電流I
1の電気信号の強度を対数変換して出力する回路である。
【0037】
同様に、対数変換回路部21の対数変換回路21Bは、第1MOSFET(電界効果トランジスタ)M
21と、第2MOSFETM
22と、抵抗素子R
L2とを含んで構成され、対数変換回路21Aと同様な構成を有し、その入力端子が半導体受光素子部3Bの出力に接続され、その出力端子は差動増幅回路22の非反転入力端子に接続される。この対数変換回路21Bは、半導体受光素子部3Bから出力された光電流I
2の電気信号の強度を対数変換して出力する回路である。
【0038】
図9は、対数変換回路21A,21Bに入力される光電流I
1,I
2の対数値と対数変換回路21A,21B出力電圧V
O1,V
O2との関係を示すグラフである。このように、対数変換回路21A,21Bによれば、光電流I
1,I
2の対数値logI
1,logI
2の所定範囲Wにおいては、それぞれの出力電圧V
O1,V
O2として、それぞれの対数値logI
1,logI
2に比例する電圧値が得られる。
【0039】
差動増幅回路22は、対数変換回路21Aの出力電圧V
O1の強度と、対数変換回路21Bの出力電圧V
O2の強度との差分を増幅して出力する。
図10は、被測定物Mの屈折率nに関する屈折率差n−n
0と、差動増幅回路22の出力相当値{logI
1−logI
2}との関係を示すグラフである。このように差動増幅回路22の出力は、屈折率差n−n
0に対して線形変化する特性を有し、この特性は、単に光電流の差I
1−I
2を検出する場合と同様の特性となる。一方で、差動増幅回路22の出力は、実質的に光電流の比I
1/I
2を対数変換したものを表しているので、光源装置2の強度には依存せず、その強度が低下しても屈折率に対する感度(傾き)が一定となる点で光電流の差I
1−I
2を検出する場合とは異なる性質を有している。
【0040】
以上説明した屈折率測定装置1によれば、直線状の溝部6Aaが所定ピッチP1で形成された回折格子部6Aを光入射側に備える半導体受光素子部3Aと、直線状の溝部6Baが回折格子部6Aと異なるピッチで形成された回折格子部6Bを光入射側に備える半導体受光素子部3Bとに対して、光源装置2から光が入射可能とされる。光の入射に応じて、半導体受光素子部3A,3Bから出力された2つの信号の強度が、対数変換回路21A,21Bによってそれぞれ対数変換された後に、差動増幅回路22によってそれらの差分が増幅して出力される。この出力を用いることにより、光源装置2の出力強度が変動したり、光源装置2の出力強度が弱い場合でも、フォトダイオード3上に配置された被測定物Mの屈折率を精度よく測定することができる。すなわち、光源の出力強度の変動に起因する屈折率の検出誤差や、検出信号におけるSN比の低下に起因する検出誤差を低減できる。
【0041】
また、別体の光検出器を用いることなく屈折率を測定できるため、装置構成を簡素化することができる。しかも、フォトダイオード3に入射する光の利用効率が向上することで光の強度の検出精度がさらに向上する。その結果、装置構成を簡素化すると共に屈折率の測定精度を向上させることができる。例えば、屈折率測定装置1を応用することで、アレイ化した多数のセンサを含み、簡素な光学系で実現できる光学式バイオセンサチップが実現できる。これにより、蛍光標識を用いない簡便な方法で、高感度で高スループットな生物医学検査が可能となる。
【0042】
また、回折格子部6Aと回折格子部6Bとは、溝部6Aa,6Baの形成方向が互いに平行となるように構成され、光源装置2は、回折格子部6Aの溝部6Aaの形成方向、及び回折格子部6Bの溝部6Baの形成方向に垂直な平面内で半導体受光素子部3A及び3Bの表面に垂直な方向に対して傾斜した方向から光を出射する構成とされている。このような構成により、フォトダイオード3上に配置された被測定物Mの屈折率の変化に対する、半導体受光素子部3Aの出力と半導体受光素子部3Bの出力との差分の変化率が高くなり、屈折率の検出精度をさらに一層高めることができる。
【0043】
なお、本発明に係る屈折率測定装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、
図11に示すような構成の屈折率算出処理部105を採用してもよい。同図に示す屈折率算出処理部105の屈折率算出処理部5との相違点は、対数変換回路21Aと差動増幅回路22の非反転入力との間に接続されたロックイン検出回路23Aと、対数変換回路21Bと差動増幅回路22の反転入力との間に接続されたロックイン検出回路23Bとを備える点である。
【0044】
同図に示す変形例では、光源装置2は、発光強度が所定の周波数fで変調された光を出射するように構成されている。そして、ロックイン検出回路23Aは、対数変換回路21Aから出力された電気信号を受けて、その強度を周波数fでロックイン検出することによって、電気信号の周波数fの成分だけを抽出して差動増幅回路22に出力する。同様に、ロックイン検出回路23Bは、対数変換回路21Bから出力された電気信号の強度を周波数fでロックイン検出することによって、電気信号の周波数fの成分だけを抽出して差動増幅回路22に出力する。
【0045】
このような構成により、フォトダイオード3の出力に含まれる、暗電流のような直流成分、及びショット雑音等の広い周波数帯域の雑音の影響を減らすことで、屈折率の検出精度を一層高めることができる。