【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年度日本大学工学部生命応用化学科卒業研究発表会講演予稿集、第35頁、日本大学工学部、平成27年2月7日発行 平成26年度日本大学工学部生命応用化学科卒業研究発表会、平成27年2月7日開催、日本大学工学部、7031教室
【解決手段】有効成分として、ガス濃度の変化を検出して色変化を生じる色素化合物が、多孔質基材(ただし、二酸化ケイ素からなるか、又は二酸化ケイ素を主成分とするものを除く)に保持されてなる、ガス濃度の変化の検出材料;有効成分として、ガス濃度の変化を検出して色変化を生じる色素化合物が、膜状の多孔質基材に保持されてなる、ガス濃度の変化の検出材料;前記ガス濃度の変化の検出材料を用いて、前記検出材料中の前記色素化合物が検出可能なガス濃度の変化を、前記色素化合物の色変化によって検出する、ガス濃度の変化の検出方法。
有効成分として、ガス濃度の変化を検出して色変化を生じる色素化合物が、多孔質基材(ただし、二酸化ケイ素からなるか、又は二酸化ケイ素を主成分とするものを除く)に保持されてなる、ガス濃度の変化の検出材料。
前記色素化合物が、イソチオシアナト−ビピリジルルテニウム錯体、フェノチアジン系化合物、キノリニウム系化合物、フルオレセイン系化合物及びロダニンインドリン系化合物からなる群から選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス濃度の変化の検出材料。
前記多孔質基材が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)又は酸化アルミニウムからなるか、あるいは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)又は酸化アルミニウムを主成分とするものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス濃度の変化の検出材料。
請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス濃度の変化の検出材料を用いて、前記検出材料中の前記色素化合物が検出可能なガス濃度の変化を、前記色素化合物の色変化によって検出する、ガス濃度の変化の検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<ガス濃度の変化の検出材料>>
<検出材料(I)>
本発明に係る第1の態様のガス濃度の変化の検出材料(本明細書において「検出材料(I)」と略記することがある)は、有効成分として、ガス濃度の変化を検出して色変化を生じる色素化合物が、多孔質基材(ただし、二酸化ケイ素からなるか、又は二酸化ケイ素を主成分とするものを除く)に保持されてなるものである。
前記検出材料(検出材料(I))は、ガス濃度の変化に対して前記色素化合物が色変化を生じることによって、これを反映して自身も色変化を生じるものである。前記検出材料は、ガス濃度の変化に対して生じる色変化の速度が速く、従来の検出材料とは異なり、急激なガス濃度の変化や、風の吹き付け程度のガス濃度の変化でも色変化を生じる。
【0012】
[多孔質基材]
前記多孔質基材には、二酸化ケイ素(シリカゲル、SiO
2)からなるもの及び二酸化ケイ素を主成分とするものは含まれない。本明細書において、「二酸化ケイ素を主成分とする」とは、二酸化ケイ素と二酸化ケイ素以外の成分を含有するが、二酸化ケイ素からなるものと同等の特性を有する程度に、二酸化ケイ素を主たる構成成分として含有すること、を意味し、二酸化ケイ素の含有量が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上であり、99質量%以上であってもよい。
【0013】
前記多孔質基材は、その構造中に前記色素化合物を保持するものであり、色素化合物を保持する形態は特に限定されず、公知の形態のいずれでもよい。例えば、色素化合物は多孔質基材との間で共有結合を形成して結合していてもよいし、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力による結合、双極子相互作用による結合等、非共有結合を形成して結合していてもよい。色素化合物が多孔質基材との間で共有結合を形成して結合している場合、色素化合物及び多孔質基材のそれぞれが有する官能基同士が直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。
【0014】
前記多孔質基材を構成する成分は、上述の条件を満たし、前記色素化合物を保持できるものであれば、特に限定されない。
多孔質基材を構成する成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0015】
前記多孔質基材を構成する成分としては、金属酸化物、金属硫化物等が例示でき、金属酸化物が好ましい。
前記金属酸化物としては、二酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(IV)(SnO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ニオブ(V)(Nb
2O
5)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化ニッケル(II)(NiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化鉄(III)(Fe
2O
3)、酸化タングステン(VI)(WO
3)、酸化ビスマス(III)(Bi
2O
3)、二酸化鉛(PbO
2)、酸化ストロンチウム(SrO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)等が例示できる。
【0016】
前記多孔質基材は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)又は酸化アルミニウムからなるか、あるいは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)又は酸化アルミニウムを主成分とするものが好ましい。ここで、「主成分とする」とは、上述の二酸化ケイ素の場合と同様のことを意味する。
例えば、多孔質基材が「二酸化チタンを主成分とする」とは、多孔質基材が二酸化チタンと二酸化チタン以外の成分を含有するが、二酸化チタンからなるものと同等の特性を有する程度に、二酸化チタンを主たる構成成分として含有すること、を意味し、二酸化チタンの含有量が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上であり、99質量%以上であってもよい。
同様に、多孔質基材が「酸化亜鉛を主成分とする」とは、多孔質基材が酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の成分を含有するが、酸化亜鉛からなるものと同等の特性を有する程度に、酸化亜鉛を主たる構成成分として含有すること、を意味し、酸化亜鉛の含有量が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上であり、99質量%以上であってもよい。
同様に、多孔質基材が「酸化スズ(IV)を主成分とする」とは、多孔質基材が酸化スズ(IV)と酸化スズ(IV)以外の成分を含有するが、酸化スズ(IV)からなるものと同等の特性を有する程度に、酸化スズ(IV)を主たる構成成分として含有すること、を意味し、酸化スズ(IV)の含有量が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上であり、99質量%以上であってもよい。
同様に、多孔質基材が「酸化アルミニウムを主成分とする」とは、多孔質基材が酸化アルミニウムと酸化アルミニウム以外の成分を含有するが、酸化アルミニウムからなるものと同等の特性を有する程度に、酸化アルミニウムを主たる構成成分として含有すること、を意味し、酸化アルミニウムの含有量が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上であり、99質量%以上であってもよい。
【0017】
前記多孔質基材の空隙部の平均孔径は、前記色素化合物を好適に保持できる限り、特に限定されないが、例えば、1〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。なお、本明細書において、「多孔質基材の空隙部の平均孔径」とは、特に断りのない限り、多孔質基材の任意の断面において、1個の空隙部の表面における異なる二点同士を結ぶ線分の長さのうち、最大のもの(最大値)を求め、前記断面における任意の20個の空隙部における前記最大値から算出した平均値を意味するものとする。
多孔質基材の空隙部の孔径は、後述する多孔質基材の製造方法における製造条件を調節することで、調節できる。
【0018】
前記多孔質基材の形状は特に限定されず、膜状、粒状、並びに膜状及び粒状以外の形状のいずれでもよいが、膜状であることが好ましい。膜状の多孔質基材(多孔質膜)は、保持している色素化合物の露出面を大きくでき、しかも色素化合物の保持量(含有量)が多いものを容易に得られるため、ガス濃度の変化に対してより明りょうに色変化を生じる検出材料とすることができる。また、膜状の多孔質基材(多孔質膜)は、例えば、太陽電池用の素材として幅広く利用されており、表面積が大きいもの、透明度が高い(光透過性が高い)ものを容易に得られるため、より大規模で又は効率的にガス濃度の変化を検出可能な検出材料とすることができる。
【0019】
膜状の多孔質基材(多孔質膜)は、厚さが0.01〜500μmであることが好ましく、0.5〜50μmであることがより好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。前記厚さが前記下限値以上であることで、膜状構造をより安定して維持できると共に、色素化合物をより多く保持(含有)できるため、前記検出材料はガス濃度の変化に対してより明りょうに色変化を生じるものとなる。また、前記厚さが前記上限値以下であることで、色素化合物を過剰に保持(含有)すること、多孔質基材自体の色の影響を受けることが避けられ、前記検出材料はガス濃度の変化に対してより明りょうに色変化を生じるものとなる。
なお、本明細書において「多孔質膜の厚さ」とは、特に断りのない限り、多孔質膜の二つの主面を、この主面に存在する凹部が平坦部となるように充填された平坦面であると見做した場合に、これら主面上の二点間を結ぶ、これら主面に対して垂直な方向の線分の長さのうち、最大のものを意味するものとする。
【0020】
粒状の多孔質基材(多孔質粒子)は、平均粒径が0.001〜100μmであることが好ましく、0.005〜10μmであることがより好ましく、0.007〜1μmであることが特に好ましい。前記平均粒径が前記下限値以上であることで、色素化合物をより多く保持(含有)できるため、前記検出材料はガス濃度の変化に対してより明りょうに色変化を生じるものとなる。また、前記平均粒径が前記上限値以下であることで、色素化合物を過剰に保持(含有)すること、多孔質基材自体の色の影響を受けることが避けられ、前記検出材料はガス濃度の変化に対してより明りょうに色変化を生じるものとなる。
なお、本明細書において「平均粒径」とは、特に断りのない限り、XRD(X線回折)による回折線の半値幅を求め、その値をシェラーの式に適用して算出した値を意味する。
【0021】
前記多孔質基材は、その形状によらず、無色透明なものが好ましい。このような多孔質基材を用いることで、前記検出材料はガス濃度の変化に対してより明りょうに色変化を生じるものとなる。このような観点では、前記多孔質基材は、二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化スズ(IV)からなるか、あるいは二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化スズ(IV)を主成分とするものが好ましい。
【0022】
[色素化合物]
前記色素化合物は、ガス濃度の変化に対して色変化を生じ、前記多孔質基材で保持可能なものであれば特に限定されず、天然物及び人工合成物のいずれでもよいし、例えば、染料及び顔料のいずれでもよく、有機化合物(有機色素化合物)及び無機化合物(無機色素化合物)のいずれでもよく、有機化合物である場合、有機金属錯体であってもよい。
【0023】
前記色素化合物のうち、非有機金属錯体である有機化合物としては、
下記式(1)−101で表される化合物(フェノチアジン)及びその誘導体等のフェノチアジン系化合物;
下記式(2)−101で表される化合物(キノリニウム)及びその誘導体等のキノリニウム系化合物;
下記式(3)−101で表される化合物(フルオレセイン)及びその誘導体等のフルオレセイン系化合物;
下記一般式(4)−1で表される化合物及びその誘導体、下記一般式(4)−2で表される化合物及びその誘導体、下記一般式(4)−3で表される化合物及びその誘導体等のロダニンインドリン系化合物
等が例示できる。
【0024】
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に1個以上の水素原子がカルボキシ基で置換されていてもよいアルキル基又はアラルキル基である。)
【0025】
式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に1個以上の水素原子がカルボキシ基(−C(=O)−OH)で置換されていてもよいアルキル基又はアラルキル基である。
R
1〜R
3における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記アルキル基は、炭素数が1〜12であることが好ましい。
【0026】
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1〜12であることが好ましく、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が例示できる。
【0027】
環状の前記アルキル基は、炭素数が3〜12であることが好ましく、前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示でき、さらに、これら環状のアルキル基の1個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換されたものが例示できる。ここで、水素原子を置換する直鎖状、分岐鎖状及び環状のアルキル基としては、R
1〜R
3におけるアルキル基として例示した上記のものが挙げられる。
【0028】
R
1〜R
3における前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0029】
R
1〜R
3における前記アラルキル基(アリールアルキル基)としては、R
1〜R
3における前記アルキル基の1個の水素原子がアリール基で置換されてなる一価の基が例示できる。
前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、好ましいものとしては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が例示でき、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基や、前記アルキル基で置換されたものも例示できる。前記アリール基は、置換基を有する場合にはこの置換基も含めて炭素数が6〜20であることが好ましい。
【0030】
R
1〜R
3における前記アルキル基及びアラルキル基は、いずれも1個以上の水素原子がカルボキシ基で置換されていてもよく、その置換位置は特に限定されない。ただし、前記アルキル基の場合には、少なくとも末端の炭素原子に結合している水素原子がカルボキシ基で置換されていることが好ましく、前記アラルキル基の場合には、少なくとも芳香環に結合している水素原子がカルボキシ基で置換されていることが好ましい。
R
1〜R
3における前記アルキル基及びアラルキル基のカルボキシ基で置換されている水素原子の数は、1〜3個であることが好ましく、1又は2個であることがより好ましい。
【0031】
なお、本明細書において「誘導体」とは、特に断りのない限り、元の化合物の1個以上の水素原子若しくは水素イオンがこれら以外の基(置換基)で置換されてなる化合物、元の化合物の1個以上の水素原子以外の原子(例えば、窒素原子等の非共有電子対を有する化合物)に新たに基が結合してなる化合物、又は元の化合物がイオン化されてなる化合物を意味する。そして、「基」とは、複数個の原子から構成される原子団及びそのイオンだけでなく、1個の原子及びそのイオンも包含するものとする。
【0032】
本明細書における「置換基」は、特に限定されないが、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が例示できる。
【0033】
前記置換基であるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。そして、前記アルキル基は、炭素数が1〜12であることが好ましく、上述のR
1〜R
3におけるアルキル基と同様のものが例示できる。
前記置換基であるアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、上述のR
1〜R
3におけるアリール基と同様のものが例示できる。
前記置換基であるアラルキル基(アリールアルキル基)としては、上述のR
1〜R
3におけるアラルキル基と同様のものが例示できる。
【0034】
前記置換基であるアルコキシ基としては、前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
前記置換基であるアリールオキシ基としては、前記アリール基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
前記置換基であるアラルキルオキシ基としては、前記アラルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
【0035】
前記置換基であるアルキルカルボニル基としては、前記アルキル基がカルボニル基の炭素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
前記置換基であるアリールカルボニル基としては、前記アリール基がカルボニル基の炭素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
前記置換基であるアラルキルカルボニル基としては、前記アラルキル基がカルボニル基の炭素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
【0036】
前記置換基であるアルキルカルボニルオキシ基としては、前記アルキル基がカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)の炭素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
前記置換基であるアリールカルボニルオキシ基としては、前記アリール基がカルボニルオキシ基の炭素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
前記置換基であるアラルキルカルボニルオキシ基としては、前記アラルキル基がカルボニルオキシ基の炭素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
【0037】
前記置換基であるアルキルオキシカルボニル基としては、前記アルキル基が、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)のカルボニル基を構成していない酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
前記置換基であるアリールオキシカルボニル基としては、前記アリール基が、オキシカルボニル基のカルボニル基を構成していない酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
前記置換基であるアラルキルオキシカルボニル基としては、前記アラルキル基が、オキシカルボニル基のカルボニル基を構成していない酸素原子に結合してなる一価の基が例示できる。
【0038】
前記誘導体における、水素原子以外の原子に新たに結合する基としては、上述の置換基のうち、水素原子以外の原子に結合可能なものが例示できる。
【0039】
前記フェノチアジン系化合物で好ましいものとしては、下記式(1)−102で表される化合物(メチレンブルー)及びその誘導体、下記式(1)−103で表される化合物(チオニン)及びその誘導体等が例示できる。
【0041】
前記キノリニウム系化合物で好ましいものとしては、下記式(2)−102で表される化合物(NK1046)及びその誘導体等が例示できる。
【0043】
前記フルオレセイン系化合物で好ましいものとしては、下記式(3)−102で表される化合物(エオシンY)及びその誘導体等が例示できる。
【0045】
前記一般式(4)−1で表される化合物及びその誘導体は、ロダニン骨格及びインドリン骨格を有するロダニンインドリン化合物であり、これらの中でも好ましいものとしては、下記式(4)−101で表される化合物(D102)及びその誘導体等が例示できる。
【0047】
式(4)−101で表される化合物以外の、一般式(4)−1で表される化合物及びその誘導体は、例えば、使用する一部の原料が異なる点以外は、式(4)−101で表される化合物と同様の方法で製造できる。
【0048】
前記一般式(4)−2で表される化合物及びその誘導体は、ダブルロダニン骨格及びインドリン骨格を有するダブルロダニンインドリン化合物であり、これらの中でも好ましいものとしては、下記式(4)−201で表される化合物(D149)及びその誘導体、下記式(4)−202で表される化合物(D205)及びその誘導体、下記式(4)−203で表される化合物(D358)及びその誘導体等が例示できる。
【0050】
式(4)−201〜(4)−203で表される化合物以外の、一般式(4)−2で表される化合物及びその誘導体は、例えば、使用する一部の原料が異なる点以外は、式(4)−201〜(4)−203で表される化合物と同様の方法で製造できる。
【0051】
前記一般式(4)−3で表される化合物及びその誘導体は、トリプルロダニン骨格及びインドリン骨格を有するトリプルロダニンインドリン化合物であり、これらの中でも好ましいものとしては、下記式(4)−301で表される化合物(D150)及びその誘導体等が例示できる。
【0053】
式(4)−301で表される化合物以外の、一般式(4)−3で表される化合物及びその誘導体は、例えば、使用する一部の原料が異なる点以外は、式(4)−301で表される化合物と同様の方法で製造できる。
【0054】
前記色素化合物のうち、有機金属錯体である有機化合物としては、ルテニウム錯体が例示でき、好ましい前記ルテニウム錯体としては、イソチオシアナト基(−N=C=S)及び置換基を有していてもよいビピリジンを有するイソチオシアナト−ビピリジルルテニウム錯体が例示できる。
そして、前記イソチオシアナト−ビピリジルルテニウム錯体は、イソチオシアナト基及び置換基を有していてもよい2,2’−ビピリジンを有するものが好ましく、下記一般式(5)−1で表される化合物がより好ましい。
ここで、「置換基」とは、先に説明したものである。
【0055】
【化8】
(式中、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシ基、スルホ基又はホスホノ基であり、前記カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基は塩を形成していてもよく;n4、n5、n6及びn7は、それぞれ独立に0〜4の整数である。)
【0056】
式中、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシ基(−C(=O)−OH)、スルホ基(−S(=O)
2−OH)又はホスホノ基(−P(=O)(−OH)
2)である。
R
4〜R
7における前記アルキル基及びアラルキル基は、R
1〜R
3における前記アルキル基及びアラルキル基と同様のものである。
R
4〜R
7における前記アリール基は、R
1〜R
3における前記アラルキル基を構成するものとして説明した前記アリール基と同様のものである。
【0057】
R
4〜R
7における前記カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基は、酸基であり、塩を形成していてもよい。そして、ホスホノ基1個あたりの塩の形成部位は、1箇所でもよいし、2箇所でもよい。
このときのカルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基と塩を形成する塩基は、無機塩基及び有機塩基のいずれでもよい。
【0058】
カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基が前記無機塩基と共に形成する塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;銅塩、銀塩等の遷移金属塩;アンモニウム塩(アンモニア(NH
3)が反応してなる塩)等が例示できる。
【0059】
前記塩が、アルカリ土類金属、遷移金属等の、価数が2以上の金属の塩である場合、この塩を形成している複数個の酸基は、同一分子内のものであってもよいし、異なる分子内のものであってもよい。そして、これら複数個の酸基は、カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基から選択される1種以上であり、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同じであってもよい。
【0060】
カルボキシ基、スルホ基及びホスホノ基が前記有機塩基と共に形成する塩としては、
テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラ−n−プロピルアンモニウム塩、テトラ−n−ブチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム塩;
トリエチルアンモニウム塩、N,N−ジエチルメチルアンモニウム塩、N,N−ジイソプロピルエチルアンモニウム塩、トリ−n−プロピルアンモニウム塩、トリ−n−ブチルアンモニウム塩等のトリアルキルアンモニウム塩;
ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、ジ−n−プロピルアンモニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩、ジ−n−ブチルアンモニウム塩等のジアルキルアンモニウム塩;
メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、n−プロピルアンモニウム塩、イソプロピルアンモニウム塩、n−ブチルアンモニウム塩、イソブチルアンモニウム塩、sec−ブチルアンモニウム塩、tert−ブチルアンモニウム塩等のモノアルキルアンモニウム塩;
ピリジニウム塩等の芳香族複素環式塩(塩の形成部位に芳香族複素環を有するもの)等が例示できる。
【0061】
式中、n4、n5、n6及びn7は、それぞれ独立に0〜4の整数である。
n4が2以上である場合、2個以上のR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべてのR
4が同一であってもよいし、すべてのR
4が異なっていてもよく、一部のR
4のみが同一であってもよい。
同様にn5、n6又はn7が2以上である場合、対応する2個以上のR
5、R
6又はR
7は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0062】
n4が1以上である場合、R
4のピリジン環骨格における結合位置は、特に限定されない。
同様にn5、n6又はn7が1以上である場合、対応するR
5、R
6又はR
7のピリジン環骨格における結合位置は、特に限定されない。
ただし、n4、n5、n6又はn7が1である場合、対応するR
4、R
5、R
6又はR
7のピリジン環骨格における結合位置は、ピリジン環骨格を形成している窒素原子に対してパラ位の炭素原子である(ビピリジン骨格における5位又は5’位の炭素原子である)ことが好ましい。
また、n4、n5、n6及びn7が1以上である場合、R
4、R
5、R
6及びR
7のピリジン環骨格における結合位置は、すべて同じであることが好ましい。
【0063】
n4、n5、n6及びn7は、それぞれ独立に0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
そして、n4、n5、n6及びn7は、すべて同じ数であることが好ましい。
【0064】
前記一般式(5)−1で表される化合物(イソチオシアナト−ビピリジルルテニウム錯体)で好ましいものとしては、下記式(5)−101で表される化合物(N719)及びその誘導体、下記式(5)−102で表される化合物(Z907)及びその誘導体等が例示できる。
【0066】
式(5)−101及び(5)−102で表される化合物以外の、一般式(5)−1で表される化合物は、例えば、使用する一部の原料が異なる点以外は、式(5)−101及び(5)−102で表される化合物と同様の方法で製造できる。
【0067】
なお、前記色素化合物としてここまでに説明した、具体的に式(一般式)で表されたものの中には、立体異性体が存在するものがあるが、本発明における色素化合物には、すべての立体異性体が包含される。
【0068】
また、前記色素化合物としては、上述の有機化合物(有機色素化合物)において、1個以上の水素原子(H)が重水素原子(D)で置換されたものも例示できる。このような有機化合物が有する重水素原子の数は、1個でもよいし、2個以上でもよく、重水素原子の結合位置は特に限定されない。
【0069】
前記多孔質基材が含有(保持)する前記色素化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0070】
前記多孔質基材が含有(保持)する前記色素化合物は、イソチオシアナト−ビピリジルルテニウム錯体、フェノチアジン系化合物、キノリニウム系化合物、フルオレセイン系化合物及びロダニンインドリン系化合物からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0071】
前記多孔質基材の前記色素化合物の含有量(保持量)は、特に限定されないが、多孔質基材100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましい。
【0072】
前記色素化合物が、ガス濃度の変化に対して色変化を生じる理由は定かではないが、色素化合物がガスの分子と相互作用し、このときの相互作用するガスの分子数によって、色素化合物の多孔質基材における保持状態(例えば、吸着状態)や集合状態に変化が生じるからではないかと推測される。
【0073】
<検出材料(II)>
本発明に係る第2の態様のガス濃度の変化の検出材料(本明細書において「検出材料(II)」と略記することがある)は、有効成分として、ガス濃度の変化を検出して色変化を生じる色素化合物が、膜状の多孔質基材に保持されてなるものである。
検出材料(II)は、多孔質基材の必須の構成が異なる点以外は、先に説明した検出材料(I)と同じものであり、検出材料(I)に相当するものも一部包含される。
検出材料(II)も、検出材料(I)と同様に、ガス濃度の変化に対して生じる色変化の速度が速く、従来の検出材料とは異なり、急激なガス濃度の変化や、風の吹き付け程度のガス濃度の変化でも色変化を生じる。
【0074】
検出材料(II)における多孔質基材も、検出材料(I)における前記多孔質基材と同様に、その構造中に前記色素化合物を保持するものである。
検出材料(II)における多孔質基材は、膜状(多孔質膜)であり、かつ構成成分が限定されない点以外は、検出材料(I)における前記多孔質基材と同じものである。
【0075】
すなわち、検出材料(II)における多孔質基材の形状は、検出材料(I)における膜状の前記多孔質基材の形状と同じである。
【0076】
そして、検出材料(II)における多孔質基材を構成する成分としては、検出材料(I)における前記多孔質基材を構成する成分と、二酸化ケイ素(シリカゲル)と、二酸化ケイ素を主成分とするものが例示できる。
ただし、検出材料(II)における多孔質基材を構成する成分で好ましいものとしては、検出材料(I)における前記多孔質基材を構成する成分と同様に、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)、酸化アルミニウム等が例示できる。すなわち、検出材料(II)における多孔質基材は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)又は酸化アルミニウムからなるか、あるいは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ(IV)又は酸化アルミニウムを主成分とするものが好ましい。二酸化ケイ素からなるか、又は二酸化ケイ素を主成分とする多孔質基材よりも、これら(二酸化チタン等)からなるか、これら(二酸化チタン等)を主成分とする多孔質基材の方が、色素化合物を容易に保持させることが可能な孔径の空隙部を形成し易い。
【0077】
検出材料(II)における色素化合物は、検出材料(I)における前記色素化合物と同じである。
【0078】
前記検出材料(検出材料(I)及び(II))においては、ガス濃度の変化によって、色素化合物が色変化を生じる。そして、この色変化を反映して、前記検出材料はガス濃度の変化に対して生じる色変化の速度が速く、微量の濃度変化でも大きな色変化を生じる。前記色素化合物を用いた検出材料がこのように、優れたベイポクロミズムを示すことは、従来知られていない。
【0079】
前記検出材料(検出材料(I)及び(II))が、色変化によって濃度の変化を検出するガスの種類としては、水蒸気;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトンの蒸気;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール(sec−ブチルアルコール)、2−メチル−1−プロパノール(イソブチルアルコール)、2−メチル−2−プロパノール(tert−ブチルアルコール)等のアルコールの蒸気;
1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル(エーテル結合を有する化合物)の蒸気;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルの蒸気;
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン等の飽和炭化水素の蒸気;
ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン(o−ジクロロベンゼン)、1,3−ジクロロベンゼン(m−ジクロロベンゼン)、1,4−ジクロロベンゼン(p−ジクロロベンゼン)等のハロゲン化炭化水素(置換基としてハロゲン原子を有する炭化水素)の蒸気;
ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素の蒸気;
アセトニトリル等のニトリルの蒸気;
ピリジン等の芳香族複素環化合物の蒸気;
トリエチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン等のアルキルアミン(トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、モノアルキルアミン)の蒸気;
二酸化硫黄、硫化水素、二硫化炭素、メタンチオール、エタンチオール等の含硫黄化合物の蒸気等が例示できる。
【0080】
上記の中でも、濃度変化の検出対象のガスは、水、ケトン、ニトリル又は芳香族炭化水素の蒸気であることが好ましく、水、アセトン、アセトニトリル又はトルエンの蒸気であることがより好ましい。
【0081】
本発明に係る検出材料は、前記色素化合物が多孔質基材に保持されているという極めて単純な構成であり、それ以外の成分を必要としないにも関わらず、ガス濃度の変化に対して生じる色変化の速度が速いという、極めて顕著な効果を奏する。また、本発明に係る検出材料は、このように単純な構成であり、後述するように容易に製造できるという利点を有する。
【0082】
本発明に係る検出材料は、食品包装等に封入される、特定のガスの濃度の高低を検知する材料;特定のガスの濃度の空間分布や、特定のガスを含む風の流れの空間分布等を連続的に検知する各種計測装置における構成材料等として、利用可能である。ただし、本発明に係る検出材料の用途は、これらに限定されない。
【0083】
<<ガス濃度の変化の検出材料の製造方法>>
前記検出材料(検出材料(I)及び(II))は、多孔質基材に色素化合物を保持させる公知の方法で製造でき、例えば、前記多孔質基材に、前記色素化合物を含有する液体(以下、「色素化合物含有液」と略記することがある)を接触させる工程(以下、「接触工程」と略記することがある)と、前記液体(色素化合物含有液)を接触させた前記多孔質基材を乾燥させる工程(以下、「乾燥工程」と略記することがある)と、を有する方法で製造できる。
【0084】
<接触工程>
前記色素化合物含有液は、前記多孔質基材に保持させる色素化合物を含有する液体であり、すべての色素化合物が溶解している溶液であってもよいし、一部又はすべての色素化合物が溶解せずに分散している分散液であってもよい。
【0085】
前記色素化合物含有液は、前記色素化合物及び溶媒(分散媒)を混合することで得られる。
前記溶媒は、色素化合物の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール(sec−ブチルアルコール)、2−メチル−1−プロパノール(イソブチルアルコール)、2−メチル−2−プロパノール(tert−ブチルアルコール)等のアルコール;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;
1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル(エーテル結合を有する化合物);
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;
ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン等の飽和炭化水素;
ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン(o−ジクロロベンゼン)、1,3−ジクロロベンゼン(m−ジクロロベンゼン)、1,4−ジクロロベンゼン(p−ジクロロベンゼン)等のハロゲン化炭化水素(置換基としてハロゲン原子を有する炭化水素);
トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;
水等が例示できる。
前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0086】
前記色素化合物含有液における色素化合物の濃度は、特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると、例えば、0.001〜10mMであることが好ましく、0.1〜5mMであることがより好ましい。
なお、本明細書において、濃度の単位「M」は、モル/Lを意味する。
【0087】
前記多孔質基材に前記色素化合物含有液を接触させる方法は、特に限定されず、多孔質基材に色素化合物含有液を滴下する方法、多孔質基材に色素化合物含有液を塗布する方法、多孔質基材を色素化合物含有液に浸漬する方法等が例示できる。
【0088】
前記多孔質基材に前記色素化合物含有液を接触させる時間及び温度は、上述の色素化合物含有液を接触させる方法、色素化合物の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、接触させる時間は、色素化合物を多孔質基材に保持させ易い場合には、5秒以上であることが好ましく、色素化合物を多孔質基材に保持させ難い場合には、1時間以上であることが好ましい。そして、色素化合物の種類によらず、接触させる時間の上限値は、通常24時間程度であれば十分である。一方、接触させる色素化合物含有液の温度は15〜40℃であることが好ましい。
【0089】
前記多孔質基材は、市販品を用いてもよいし、公知の方法で製造したものを用いてもよい。例えば、膜状の多孔質基材は、これを構成するための原料化合物と溶媒(分散媒)とを含む組成物を調製し、この組成物を支持体上に塗工した後、得られた塗膜を加熱処理して、乾燥させると共に焼成することで、製造できる。例えば、多孔質基材が二酸化チタン等の金属酸化物からなるものである場合には、前記原料化合物として、二酸化チタン等の対応する金属酸化物を用いることができる。
【0090】
前記原料化合物は、粒子状(微粒子状)であることが好ましく、その粒子径は、多孔質基材の目的とする空隙部の孔径の大きさを考慮して、適宜調節すればよい。
【0091】
また、膜状の多孔質基材で金属酸化物からなるものは、例えば、その材質に対応した金属を用い、これを電気化学的に陽極酸化することでも製造できる。例えば、酸化アルミニウムからなる多孔質基材であれば、アルミニウムを陽極酸化することで製造できる。
【0092】
前記色素化合物含有液における溶媒(分散媒)は、原料化合物の種類に応じて適宜選択すればよい。
前記支持体は、特に限定されず、多孔質基材の製造後は、この支持体を備えたまま、前記検出材料の製造までを行ってもよく、得られた検出材料は、この支持体を備えたまま用いてもよい。
【0093】
<乾燥工程>
前記色素化合物含有液を接触させた前記多孔質基材を乾燥させる方法は、色素化合物や多孔質基材が劣化しない限り特に限定されず、公知の方法を適宜適用すればよい。例えば、乾燥は、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。
【0094】
<その他の工程>
前記検出材料は、前記接触工程及び乾燥工程以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、これら以外のその他の工程を行って製造してもよい。
前記その他の工程としては、前記接触工程後に多孔質基材を洗浄する洗浄工程が例示できる。前記洗浄工程で用いる洗浄液としては、前記接触工程で用いる溶媒と同様のものが例示できる。
【0095】
<<ガス濃度の変化の検出方法>>
本発明に係るガス濃度の変化の検出方法は、上述の本発明に係る検出材料を用いて、前記検出材料中の前記色素化合物が検出可能なガス濃度の変化を、前記色素化合物の色変化によって検出するものである。
本発明において、前記検出材料の色変化は、目視により確認可能であり、検出材料の吸光スペクトルを測定し、例えば、吸光度の極大値を示す波長の変化など、吸光スペクトルのパターンの変化を観測することによって、より高精度に確認できる。本発明においては、上述の吸光度の極大値を示す波長の変化は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上で観測できる。
【0096】
検出対象であるガスの濃度変化は、検出対象の空間において、前記検出材料の色変化を観測することで検出できる。このとき、例えば、検出材料と、この検出材料の吸光度を測定する測定手段と、この測定手段で取得した測定データ(検出材料の吸光度)を比較して、ガスの濃度変化を検出する解析手段とを備えた検出装置を用いて、ガスの濃度変化を自動で検出することもできる。
【0097】
また、検出対象のガスが特定の濃度の場合に前記検出材料が示す色を、ガスの一以上の濃度で特定しておき、この色と同色でかつ変色が防止された比較用材料を用意し、検出対象の空間において、この比較用材料の色の特定に用いた前記検出材料と同じもので検出対象の同じガスを検知すると共に、このときの前記検出材料の色を、比較用材料の色と比較することで、検出対象のガスの濃度や、検出対象のガスの濃度変化を、簡便に検出することもできる。
【0098】
前記比較用材料は、目的の色に呈色し、この状態で変色が防止されているものであれば、特に限定されず、例えば、変色防止処理された、本発明に係る検出材料及びそれ以外の材料のいずれであってもよい。変色防止処理としては、例えば、ガス非透過性のフィルム又はシート(例えば、ガスバリアフィルム)等を用いて、処理対象の材料をその周囲の雰囲気から隔離する処理等が例示できる。
【0099】
用意する比較用材料の色は1種でもよいし、2種以上でもよく、目的に応じて適宜設定すればよい。通常は、比較用材料の色の種類が多いほど、より簡便かつ高精度に、ガスの濃度や濃度変化を検出できる。なお、本発明においては、比較用材料の吸光スペクトルのパターンを比較したときに、これらパターンが相互に異なることを明確に特定できる場合に、比較に供したこれら比較用材料は相互に色が異なっているものと定義する。
【0100】
上述の比較用材料を用いる検出方法では、例えば、ガス濃度の変化を検出するための前記検出材料と、前記比較用材料と、これら検出材料と比較用材料の吸光度を測定する測定手段と、この測定手段で取得した測定データ(検出材料の吸光度及び比較用材料の吸光度)を比較して、ガスの濃度又は濃度変化を検出する解析手段とを備えた検出装置を用いて、ガスの濃度又は濃度変化を自動で検出することもできる。
【0101】
また、上述の比較用材料を用いる検出方法では、少なくとも前記検出材料と、前記比較用材料と、を備えた検出キットを用いることで、ガスの濃度又は濃度変化をより容易に検出することもできる。前記検出キットは、例えば、基材上に前記検出材料及び比較用材料を備えて構成され、前記基材としては、前記検出材料及び比較用材料を安定して保持できるものであれば、合成樹脂、紙、金属等、公知のものを適宜選択して用いればよい。
【0102】
本発明に係る検出方法は、上述の本発明に係る検出材料を用いることで、ガス濃度の変化に対して生じる色変化の速度が速く、検出時間を大幅に短縮できる。例えば、本発明においては、前記検出時間を容易に1秒以内とすることが可能である。また、このように色変化の速度が速いことで、急激なガス濃度の変化や、風の吹き付け程度のガス濃度の変化でも、明りょうに検出できる。
【実施例】
【0103】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
なお、本明細書において、「湿度」とは、特に断りのない限り「相対湿度」を意味する。
【0104】
[実施例1]
<検出材料の製造>
(多孔質基材の製造)
150メッシュのスクリーン版を用いたスクリーン印刷法により、二酸化チタンペースト(SOLARONIX社製)をスライドガラス(厚さ2mm)の表面に塗布した。
次いで、この塗布済みのスライドガラスを527℃の電気炉内で1時間加熱処理することにより、有機物成分を熱分解して、多孔質基材として、厚さが約5μmの二酸化チタンの多孔質膜をスライドガラス上に作製した。
【0105】
(検出材料の製造)
濃度が1mMであるメチレンブルー(下記式(1)−102で表される化合物)のアセトニトリル溶液に、上記で得られた二酸化チタンの多孔質膜をスライドガラスごと10秒間浸漬した。このとき、二酸化チタンの多孔質膜は、その全体が前記溶液中に浸るようにした。
次いで、二酸化チタンの多孔質膜をスライドガラスごと前記溶液中から取り出した後、アセトンで洗浄し、室温(15〜25℃)で乾燥させることで、色素化合物としてメチレンブルーが二酸化チタンの多孔質膜中に担持された検出材料を得た。
【0106】
【化10】
【0107】
<ガス濃度の変化の検出(水蒸気の検出)>
上記で得られた検出材料について、湿度が45〜55%である大気中(室内)において、下記条件により吸光度を測定した。結果を
図1に示す。
次いで、この検出材料を、湿度が0〜10%に調節された乾燥空気中に封入し、この状態のままこの検出材料について、上記と同じ方法で吸光度を測定した。結果を
図1に示す。
なお、吸光度の測定時には、大気中では大気以外のガスが混入しないように調節した。
【0108】
(吸光度の測定条件)
吸収分光光度計(日本分光社製「V670型」)を用いて、透過法により吸収スペクトルを計測した。
【0109】
検出材料の色は、大気中では赤紫色であったが、乾燥空気中への封入後1秒以内に水色に変化したことが、目視により確認できた。
図1からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では550nm程度であったが、乾燥空気中では630nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中と乾燥空気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、湿度(水蒸気の濃度)の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0110】
[実施例2]
<ガス濃度の変化の検出(湿度と色との関係についての解析)>
湿度が5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、43%及び48%の9とおりに調節された空気をそれぞれ密封した箱の中に、実施例1で得られた検出材料を置き、この箱の中に光ファイバーを導入し、マルチチャンネル型分光光度計(BWTEK社製「Quest」)を用いて、この検出材料について吸光度を測定した。結果を
図2に示す。
図2中、「%」表示している数値は、いずれも湿度である。
【0111】
図2から明らかなように、前記検出材料は、湿度の減少に伴って、波長560nm付近での吸光度(極大値)が減少する共に、波長650nm付近の吸光度(極大値)が増大して、吸光スペクトルが変化することを確認できた。なお、湿度が10%の場合のスペクトルは、湿度が5%の場合のスペクトルとほぼ同じであったため、図を見易くするために、ここでは湿度が10%の場合のスペクトルの記載を省略した。
また、このときの波長560nmでの吸光度の値と湿度との関係を示すグラフを
図3に示す。
図3から明らかなように、波長560nmでの吸光度の値と湿度とは、ほぼ比例関係にあった。
【0112】
[実施例3]
<ガス濃度の変化の検出(色変化の速度についての解析)>
実施例1で得られた検出材料を、湿度が50%である大気中(室内)に置き、この状態の前記検出材料に、乾燥アルゴンガスを吹き付けた場合と、吹き付けていない場合とで、検出材料とスライドガラスを共に透過した波長560nmの光について、その強度(透過光強度)を測定した。その結果から、乾燥アルゴンガスの吹き付けの有無に伴う湿度の変化に対して、検出材料の色変化が生じる時間を確認した。このときの透過光強度の変化を示すグラフを
図4に示す。
なお、透過光強度の測定時には、大気及び乾燥アルゴン以外のガスが混入しないように調節した。
【0113】
図4から明らかなように、透過光強度の測定開始(時間0秒)から約40秒間は、検出材料が乾燥アルゴンガスの吹き付けなし、すなわち大気中に曝された状態であって、透過光強度が低い状態であった。
次いで、検出材料が乾燥アルゴンガスを吹き付けた、すなわち湿度が約0%という乾燥条件下に置かれたことによって、1秒以内という短時間で瞬時に透過光強度が増大し、測定開始から約80秒間までの吹き付けを継続している間は、透過光強度が高い(最大値0.105)状態が維持された。
次いで、検出材料が再度乾燥アルゴンガスの吹き付けなし、すなわち大気中に曝された状態となって、1秒以内という短時間で瞬時に透過光強度が減少し、測定開始から約90秒間以降は、透過光強度が低い状態が維持された。
このように、前記検出材料は、湿度の変化に対して瞬時に色変化が生じ、その速度は極めて速かった。
【0114】
[実施例4]
<ガス濃度の変化の検出(アセトン蒸気の検出)>
実施例1で得られた検出材料を大気中(室内)に置いて、実施例1の場合と同様に吸光度を測定した。結果を
図5に示す。
次いで、この検出材料をアセトンの蒸気が満たされた環境下に置き、この状態のままこの検出材料について、上記と同じ方法で吸光度を測定した。結果を
図5に示す。
なお、吸光度の測定時において、アセトン蒸気を用いていない場合には大気以外のガスが、アセトン蒸気を用いている場合には大気及びアセトン蒸気以外のガスが、それぞれ検出材料に接触しないように調節した。
【0115】
検出材料の色は、大気中では赤紫色であったが、アセトン蒸気中に置いたところ1秒以内に水色に変化したことが、目視により確認できた。
図5からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では550nm程度であったが、アセトン蒸気中では580nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中とアセトン蒸気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、アセトン蒸気の濃度の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0116】
[実施例5]
<ガス濃度の変化の検出(アセトニトリル蒸気の検出)>
検出材料をアセトンの蒸気が満たされた環境下に置くのに代えて、アセトニトリルの蒸気が満たされた環境下に置いた点以外は、実施例4と同じ方法で、検出材料の吸光度を測定した。結果を
図6に示す。
なお、吸光度の測定時において、アセトニトリル蒸気を用いていない場合には大気以外のガスが、アセトニトリル蒸気を用いている場合には大気及びアセトニトリル蒸気以外のガスが、それぞれ検出材料に接触しないように調節した。
【0117】
検出材料の色は、大気中では赤紫色であったが、アセトニトリル蒸気中に置いたところ1秒以内に水色に変化したことが、目視により確認できた。
図6からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では550nm程度であったが、アセトニトリル蒸気中では570nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中とアセトニトリル蒸気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、アセトニトリル蒸気の濃度の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0118】
[実施例6]
<ガス濃度の変化の検出(トルエン蒸気の検出)>
検出材料をアセトンの蒸気が満たされた環境下に置くのに代えて、トルエンの蒸気が満たされた環境下に置いた点以外は、実施例4と同じ方法で、検出材料の吸光度を測定した。結果を
図7に示す。
なお、吸光度の測定時において、トルエン蒸気を用いていない場合には大気以外のガスが、トルエン蒸気を用いている場合には大気及びトルエン蒸気以外のガスが、それぞれ検出材料に接触しないように調節した。
【0119】
検出材料の色は、大気中では赤紫色であったが、トルエン蒸気中に置いたところ1秒以内に水色に変化したことが、目視により確認できた。
図7からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では550nm程度であったが、トルエン蒸気中では590〜640nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中とトルエン蒸気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、トルエン蒸気の濃度の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0120】
[実施例7]
<検出材料の製造>
濃度が1mMであるメチレンブルーのアセトニトリル溶液に代えて、濃度が0.5mMとなるようにN719(下記式(5)−101で表される化合物)をアセトニトリル及びtert−ブチルアルコールの混合溶媒(1/1(体積比))に溶解させた溶液を用い、浸漬時間を10秒間に代えて12時間とした点以外は、実施例1と同じ方法で、色素化合物としてN719が二酸化チタンの多孔質膜中に担持された検出材料を得た。
【0121】
【化11】
【0122】
<ガス濃度の変化の検出(水蒸気の検出)>
上記で得られた検出材料を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、この検出材料について吸光度を測定した。結果を
図8に示す。
【0123】
検出材料の色は、乾燥空気中に封入後1秒以内に、大気中での場合よりも濃い赤色に変化したことが、目視により確認できた。
図8からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では525nm程度であったが、乾燥空気中では545nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中と乾燥空気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、湿度(水蒸気の濃度)の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0124】
[実施例8]
<ガス濃度の変化の検出(湿度と色との関係についての解析)>
湿度が0%、5%及び50%の3とおりに調節された空気を用い、実施例7で得られた検出材料を用いた点以外は、実施例2と同じ方法で、この検出材料について吸光度を測定した。結果を
図9に示す。
図9中、「%」表示している数値は、いずれも湿度である。
【0125】
図9から明らかなように、前記検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、湿度が50%の場合は波長510nm付近、湿度が5%の場合は波長520nm付近、湿度が0%の場合は波長525nm付近であり、湿度の減少に伴って、吸光度が極大値を示す波長は、長波長側へ移動しており、吸光スペクトルが変化することを確認できた。
【0126】
[実施例9]
<ガス濃度の変化の検出(色変化の速度についての解析)>
実施例7で得られた検出材料を、湿度が50%である大気中(室内)に置き、この状態の前記検出材料に、乾燥アルゴンガスを吹き付けた場合と、吹き付けていない場合とで、検出材料とスライドガラスを共に透過した波長600nmの光について、その強度(透過光強度)を測定した。その結果から、乾燥アルゴンガスの吹き付けの有無に伴う湿度の変化に対して、検出材料の色変化が生じる時間を確認した。このときの透過光強度の変化を示すグラフを
図10に示す。
なお、透過光強度の測定時には、大気及び乾燥アルゴン以外のガスが混入しないように調節した。
【0127】
図10から明らかなように、透過光強度の測定開始(時間0秒)から約4.3秒間は、検出材料が乾燥アルゴンガスの吹き付けなし、すなわち大気中に曝された状態であって、透過光強度が高い(0.0755程度)状態であった。
次いで、検出材料が乾燥アルゴンガスを吹き付けた、すなわち湿度が約0%という乾燥条件下に置かれたことによって、0.5秒以内という短時間で瞬時に透過光強度が減少し、測定開始から約10秒間までの吹き付けを継続している間は、透過光強度が低い(0.0710程度)状態が維持された。
このように、前記検出材料は、湿度の変化に対して瞬時に色変化が生じ、その速度は極めて速かった。
【0128】
[実施例10]
<検出材料の製造>
濃度が1mMであるメチレンブルーのアセトニトリル溶液に代えて、濃度が1mMであるZ907(下記式(5)−102で表される化合物)のエタノール溶液を用い、浸漬時間を10秒間に代えて12時間とした点以外は、実施例1と同じ方法で、色素化合物としてZ907が二酸化チタンの多孔質膜中に担持された検出材料を得た。
【0129】
【化12】
【0130】
<ガス濃度の変化の検出(水蒸気の検出)>
上記で得られた検出材料を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、この検出材料について吸光度を測定した。結果を
図11に示す。
【0131】
検出材料の色は、乾燥空気中に封入後1秒以内に、大気中での場合よりも濃い色に変化したことが、目視により確認できた。
図11からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では520nm程度であったが、乾燥空気中では540nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中と乾燥空気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、湿度(水蒸気の濃度)の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0132】
[実施例11]
<検出材料の製造>
(多孔質基材の製造)
スピンコート法により、酸化アルミニウムのスラリー溶液(NanoTek社製「ALAP15WT%−X480」)をスライドガラス(厚さ1mm)上に塗布した。
次いで、この塗布済みのスライドガラスを527℃の電気炉内で1時間加熱処理することにより、有機物成分を熱分解して、多孔質基材として、厚さが約1μmの酸化アルミニウムの多孔質膜をスライドガラス上に作製した。
【0133】
(検出材料の製造)
濃度が1mMであるメチレンブルーのアセトニトリル溶液に代えて、濃度が1mMであるD149(下記式(4)−201で表される化合物)のエタノール溶液を用い、上記で得られた酸化アルミニウムの多孔質膜を用いて、浸漬時間を10秒間に代えて12時間とした点以外は、実施例1と同じ方法で、色素化合物としてZ907が酸化アルミニウムの多孔質膜中に担持された検出材料を得た。
【0134】
【化13】
【0135】
<ガス濃度の変化の検出(水蒸気の検出)>
上記で得られた検出材料を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、この検出材料について吸光度を測定した。結果を
図12に示す。
【0136】
検出材料の色は、乾燥空気中に封入後1秒以内に、大気中での場合よりも薄い色に変化したことが、目視により確認できた。
図12からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では525nm程度であったが、乾燥空気中では515nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中と乾燥空気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、湿度(水蒸気の濃度)の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0137】
[実施例12]
<検出材料の製造>
濃度が1mMであるメチレンブルーのアセトニトリル溶液に代えて、濃度が1mMであるエオシンY(下記式(3)−102で表される化合物)のエタノール溶液を用い、浸漬時間を10秒間に代えて12時間とした点以外は、実施例1と同じ方法で、色素化合物としてエオシンYが二酸化チタンの多孔質膜中に担持された検出材料を得た。
【0138】
【化14】
【0139】
<ガス濃度の変化の検出(水蒸気の検出)>
上記で得られた検出材料を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、この検出材料について吸光度を測定した。結果を
図13に示す。
【0140】
検出材料の色は、乾燥空気中に封入後1秒以内に、大気中での場合よりも濃い色に変化したことが、目視により確認できた。
図13からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では525nm程度であったが、乾燥空気中では530nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中と乾燥空気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、湿度(水蒸気の濃度)の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0141】
[実施例13]
<検出材料の製造>
濃度が1mMであるメチレンブルーのアセトニトリル溶液に代えて、濃度が1mMであるNK1046(下記式(2)−102で表される化合物)の水溶液を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、色素化合物としてNK1046が二酸化チタンの多孔質膜中に担持された検出材料を得た。
【0142】
【化15】
【0143】
<ガス濃度の変化の検出(アセトン蒸気の検出)>
上記で得られた検出材料を用いた点以外は、実施例4と同じ方法で、この検出材料について吸光度を測定した。結果を
図14に示す。
【0144】
アセトン蒸気中に置いたところ、検出材料の色は大気中での場合に比べて、1秒以内に薄くなったことが、目視により確認できた。
図14からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では520nm程度であったが、アセトン蒸気中では530nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中とアセトン蒸気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、アセトン蒸気の濃度の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。
【0145】
[実施例14]
<検出材料の製造>
濃度が1mMであるメチレンブルーのアセトニトリル溶液に代えて、濃度が1mMであるチオニン(下記式(1)−103で表される化合物)の水溶液を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、色素化合物としてチオニンが二酸化チタンの多孔質膜中に担持された検出材料を得た。
【0146】
【化16】
【0147】
<ガス濃度の変化の検出(水蒸気の検出)>
上記で得られた検出材料を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、この検出材料について吸光度を測定した。結果を
図15に示す。
【0148】
検出材料の色は、乾燥空気中に封入後1秒以内に、大気中での場合よりも濃い色に変化したことが、目視により確認できた。
図15からも明らかなように、検出材料の吸光度が極大値を示す波長は、大気中では520nm程度であったが、乾燥空気中では540nm程度であり、検出材料の吸光スペクトルは、大気中と乾燥空気中とでは明らかに異なっていた。
このように、前記検出材料は、湿度(水蒸気の濃度)の変化に対応して、極めて速い速度で明りょうに色変化を生じた。