【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0059】
実験例1
[P
4444][Gly]の合成
合成材料として[P
4444][OH](テトラブチルホスホニウム ヒドロキシド)40質量%水溶液とアミノ酸(グリシン)を用いて合成を行った。また、アミノ酸を析出させるための溶媒としてアセトニトリルとメタノールを用いた。一例として、スキーム1に[P
4444][Gly]合成の反応式を示す。
【0060】
【化1】
【0061】
まずアミノ酸0.077molをMilli−Q水100.28gに混合し、アミノ酸水溶液を調製した。アミノ酸水溶液にアミノ酸/[P
4444][OH]=1.05(mol/mol)となるよう40質量%[P
4444][OH]水溶液を滴下し、4時間撹拌しながら反応さ
せた。エバポレータ(40℃)で水を減圧留去させた後、アセトニトリル90mLとメタノール10mLの混合溶液を加え、過剰アミノ酸を析出させた。これを吸引ろ過し、過剰アミノ酸を除去した。再びエバポレータ(40℃)で溶媒を減圧留去させることで[P
4444][
Gly]を得た。
【0062】
実験例2
[P
4444][Ala]の合成
アミノ酸をGlyからAlaに変更した以外は、実験例1と同様にして実験例2を行った。
【0063】
実験例3
[P
4444][Ile]の合成
アミノ酸をGlyからIleに変更した以外は、実験例1と同様にして実験例3を行った。
【0064】
実験例4
[P
4444][Phe]の合成
アミノ酸をGlyからPheに変更した以外は、実験例1と同様にして実験例4を行った。
【0065】
実験例5
[P
4444][Pro]の合成
アミノ酸をGlyからProに変更した以外は、実験例1と同様にして実験例5を行った。
【0066】
実験例6
[P
4444][dmGly]の合成
アミノ酸をGlyからdmGlyに変更した以外は、実験例1と同様にして実験例6を行った。
【0067】
実験例7
[P
6666][Pro]の合成
合成材料としてトリヘキシルホスフィン((a)−1)、1−ブロモヘキサン((b)−1)、プロリン((c)−1)、溶媒としてヘキサン、Milli−Q水、エタノールを用いた。反応式をスキーム2に示す。トリへキシルホスフィンを約20質量%ヘキサン溶液になるよう調製し、窒素置換した耐圧容器内で1.1等量の1−ブロモヘキサンと混合した。これを110℃で72時間、反応させた。生成物を過剰のヘキサンで2回洗浄し、残存溶媒をエバポレータで減圧留去させることによりトリヘキシルホスホニウムブロミド([P
6666][Br])を得た。これを20質量%となるよう水−エタノール混合溶媒(1:
2v/v)に溶解させた。生成したBr量に対し、25質量倍となるようアニオン交換樹
脂を添加し、30分間撹拌後、濾過によって樹脂を取り除き、トリヘキシルホスホニウムヒドロキシド([P
6666][OH])を得た。[P
6666][OH]に対し、1.1等量のプロリンを添加し、1時間撹拌した。その後、エバポレータ(60℃)で水を減圧留去した。アセトニトリル90mLとメタノール10mLの混合溶液を加え、過剰プロリンを析出させ、吸引ろ過で過剰プロリンを除去した。再びエバポレータ(40℃)で溶媒を減圧留去させ、残液をサンプル瓶に保管した。
【0068】
【化2】
【0069】
【化3】
【0070】
実験例8
[P
6668][Pro]の合成
トリヘキシルホスフィン、1−ブロモオクタン、アミノ酸としてプロリン、溶媒としてヘキサン、Milli−Q水、メタノールを用いた。また、アニオン交換樹脂としてIRN−78を用いた。合成は(a)トリヘキシルホスフィンの4級化反応、(b)アニオン交換、(c)中和反応の3段階で行った。
【0071】
(a)トリヘキシルホスフィンの4級化反応
トリヘキシルホスフィンを約20質量%ヘキサン溶液になるよう調製し、窒素置換した耐圧容器内で1.1等量の1−ブロモオクタンと混合した。これを110℃で72時間反応させた。生成物を過剰のヘキサンで2回洗浄し、残存溶媒をエバポレータで減圧留去させることによりトリヘキシルオクチルホスホニウムブロミド([P
6668][Br])を得た。
【0072】
(b)アニオン交換
[P
6668][Br]を20質量%となるよう水−メタノール混合溶媒(1:9 v/v)に溶解させた。生成したBr量に対し、25質量倍となるようアニオン交換樹脂を添加し、30分間撹拌後、濾過によって樹脂を取り除き、トリヘキシルオクチルホスホニウムヒドロキシド([P
6668][OH])を得た。
【0073】
(c)中和反応
[P
6668][OH]に対し、1.1等量のアミノ酸(プロリン)を添加し、1時間撹拌した。その後、エバポレータ(60℃)で水を減圧留去した。アセトニトリル90mLとメタノール10mLの混合溶液を加え、過剰アミノ酸を析出させ、吸引ろ過で過剰アミノ酸を除去した。再びエバポレータ(40℃)で溶媒を減圧留去させることで[P
6668][Pro]を得た。
【0074】
実験例9
[P
4446][Gly]の合成
アルキルホスホニウムブロミドとしてヘキシルトリブチルホスホニウムブロミド([P
4446]Br)、アミノ酸としてグリシン、溶媒としてMilli−Q水、メタノールを用いた。また、アニオン交換樹脂としてIRN−78を用いた。合成は(a)アニオン交換、(b)中和反応の2段階で行った。
【0075】
(a)アニオン交換
[P
4446][Br]を20質量%となるよう水−メタノール混合溶媒(1:9v/v)に溶解させた。生成したBr量に対し、25質量倍となるようアニオン交換樹脂を添加し、30分間撹拌後、濾過によって樹脂を取り除き、アルキルホスホニウムヒドロキシド(ヘキシルトリブチルホスホニウムヒドロキシド([P
4446][OH])を得た。
【0076】
(b)中和反応
[P
4446][OH]に対し、1.1等量のアミノ酸(グリシン)を添加し、1時間撹拌した。その後、エバポレータ(60℃)で水を減圧留去した。アセトニトリル90mLとメタノール10mLの混合溶液を加え、過剰アミノ酸を析出させ、吸引ろ過で過剰アミノ酸を除去した。再びエバポレータ(40℃)で溶媒を減圧留去させ、残液をサンプル瓶に保管した。
【0077】
実験例10
[P
4446][Pro]の合成
アミノ酸としてGlyをProに変更した以外は、実験例9と同様にして実験例10を行った。
【0078】
実験例11
[P
66614][Gly]の合成
アルキルホスホニウムブロミドとしてトリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロミド([P
66614][Br])、アミノ酸としてGly、溶媒としてMilli−Q水、メタノー
ルを用いた。また、アニオン交換樹脂としてIRN−78を用いた。合成は(a)アニオン交換、(b)中和反応の2段階で行った。
【0079】
(a)アニオン交換
[P
66614][Br]を20質量%となるよう水−メタノール混合溶媒(1:9v/v)に溶
解させた。生成したBr量に対し、25質量倍となるようアニオン交換樹脂を添加し、30分間撹拌後、濾過によって樹脂を取り除き、アルキルホスホニウムヒドロキシド(トリヘキシルテトラデシルホスホニウムヒドロキシド([P
66614][OH]))を得た。
【0080】
(b)中和反応
[P
66614][OH])に対し、1.1等量のアミノ酸(Gly)を添加し、1時間撹拌し
た。その後、エバポレータ(60℃)で水を減圧留去した。アセトニトリル90mLとメタノール10mLの混合溶液を加え、過剰アミノ酸を析出させ、吸引ろ過で過剰アミノ酸を除去した。再びエバポレータ(40℃)で溶媒を減圧留去させ、残液をサンプル瓶に保管した。
【0081】
実験例12
[P
66614][Val]の合成
アミノ酸としてGlyをValに変更した以外は、実験例11と同様にして、実験例12を行った。
【0082】
実験例13
[P
66614][Phe]の合成
アミノ酸としてGlyをPheに変更した以外は、実験例11と同様にして、実験例13を行った。
【0083】
実験例14
[P
66614][Pro]の合成
アミノ酸としてGlyをProに変更した以外は、実験例11と同様にして、実験例14を行った。
【0084】
実験例15
テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート([P
4444][CH
3SO
3])の合成
[P
4444][OH]40質量%水溶液、メタンスルホン酸(CH
3SO
3H)を用いた。[P
4444][OH]40質量%水溶液を12.5g秤量し、その同等モル量のメタンスルホン酸(C
H
3SO
3H)を加えた後、1時間以上室温で撹拌した。その後、エバポレータ(40℃)で溶媒を減圧留去することで[P
4444][CH
3SO
3]を調製した。
【0085】
実験例16
テトラブチルホスホニウムクロリド([P
4444][Cl])の合成
酸としてメタンスルホン酸を塩酸(HCl)に変更した以外は、実験例15と同様にして実験例16を行った。
【0086】
実験例17
テトラブチルホスホニウムニトレート([P
4444][NO
3])の合成
酸としてメタンスルホン酸を硝酸(HNO
3)に変更した以外は、実験例15と同様に
して実験例17を行った。
【0087】
実験例18
テトラブチルホスホニウム p−トルエンスルホネート([P
4444][TsO])の合成
酸としてメタンスルホン酸をp−トルエンスルホネートに変更した以外は、実験例15と同様にして実験例18を行った。
【0088】
実験例19
テトラブチルホスホニウム ベンゼンスルホネート([P
4444][BzSO
3])の合成
酸としてメタンスルホン酸をベンゼンスルホネート(BzSO
3)に変更した以外は、
実験例15と同様にして実験例19を行った。
【0089】
実験例20
テトラブチルホスホニウム スチレンスルホネート([P
4444][SS])の合成
[P
4444][OH]40質量%水溶液と6mol/L HCl、sodium p-styrenesulfonate hydrate(Na[SS])を用いて[P
4444][SS]の合成を行った。[P
4444][OH]40質
量%水溶液12.5gに6mol HClを3.01mL添加し、1時間撹拌した後、さ
らにNa[SS]を4.10g添加し、室温で24h撹拌した。ジクロロエタン10mLを加えた後、この溶液を分液ろうとに移し、Milli−Q水10mLで3回、未反応物の抽出精製を行った後、ジクロロエタン相を回収し、エバポレータで溶媒を減圧留去することで[P
4444][SS]を合成した。
【0090】
実験例21
ポリ(テトラブチルホスホニウム スチレンスルホネート)(poly([P
4444][SS])
)の合成
モノマーとして[P
4444][SS]、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、溶媒としてクロロホルム、再沈殿の貧溶媒としてヘキサンを用いた。スキーム3に合成の反応式を示す。
[P
4444][SS]にAIBNを1.0mol%加え、脱気水内で混合させた。これを窒素雰囲気下、80℃で3時間撹拌し、得られた溶液を4時間エバポレーションで溶媒を減圧留去させた。得られた固体をクロロホルム20mLに溶解させ、ヘキサン200mLに滴下した。沈殿物をろ過し、再びヘキサンで洗浄し、これを数回繰り返した。沈殿物を60℃、真空下で乾燥させることでpoly([P
4444][SS])を得た。
【0091】
【化4】
【0092】
実験例22
テトラブチルホスホニウム トリメチルベンゼンスルホネート([P
4444][TMBS])の合成
[P
4444][OH]40質量%水溶液と2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸二水和物(trimethybenzenesulfonic acid dihydrate(TMBS:(a)−2))を用いてイオン液体合成を行った。[P
4444][OH]40質量%水溶液を12.5g秤量し、[P
4444][OH]と同等モル量のTMBSを加え、1時間以上室温で撹拌した。その後、エバポレータ(4
0℃)で溶媒を減圧留去することで[P
4444][TMBS]を合成した。
【0093】
【化5】
【0094】
実験例23
テトラブチルホスホニウム ジメチルベンゼンスルホネート([P
4444][DMBS])の合成
[P
4444][OH]40質量%水溶液と2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸水和物(dimethybenzenesulfonic acid hydrate(DMBS:(b)−2))を用いてイオン液体合成を行
った。[P
4444][OH]40質量%水溶液を12.5g秤量し、[P
4444][OH]と同等モル量のDMBSを加え、1時間以上室温で撹拌した。その後、エバポレータ(40℃)で溶媒を減圧留去することで[P
4444][DMBS]を合成した。
【0095】
実験例24
ポリ(トリブチル−4−ビニルベンジルホスホニウム 1−ペンタンスルホネート)(poly(TVBP−C5S))の合成
モノマーの前駆体イオン液体であるTVBP−Clの原料物質としてトリブチルホスフィン((b)−3)と4−ビニルベンジルクロリド((a)−3)を用いた。また、アニオン交換塩として1−ペンタンスルホネートナトリウム((c)−3)、溶媒としてアセトン及びMilli−Q、再沈殿溶媒としてジエチルエーテル、抽出溶媒としてジクロロメタンを用いた。原料物質の構造式を((a)−3)、(b)−3)、(c)−3))、反応式をスキーム4に示す。
【0096】
【化6】
【0097】
poly(TVBP−C5S)の原料物質として、上記で得られたTVBP−C5Sをモノマーとして用い、開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を用いた。反応式をスキーム5に示す。
【0098】
【化7】
【0099】
【化8】
【0100】
すなわち、4−ビニルベンジルクロリドに対して1.5当量のトリブチルホスフィンを秤量し、これを約3質量倍のアセトンに溶解し、40℃で24時間撹拌させた。得られた溶液をアセトンの10倍量のジエチルエーテルに添加し、再沈殿を行った。沈殿物をジエチルエーテルで洗浄し、ろ過した後、得られた粉末を室温、真空下で乾燥させた。
【0101】
得られた粉末TVBP−Clに対して、1.2当量の1−ペンタンスルホネートナトリウムを秤量し、約10質量倍のMilli−Q水に溶解させ、室温で12時間撹拌した。得られた溶液をジクロロメタンで抽出し、Milli−Q水で3回洗浄した。ジクロロメタン相を取り出し、溶媒をエバポレータで減圧留去させ、TVBP−C5Sを得た。
【0102】
モノマーTVBP−C5Sに対して1mol%のAIBNを、約7質量倍のDMFに溶解させ、窒素置換した後、70℃で48時間重合させた。得られた溶液を冷却した後、Milli−Q水で透析を行った。得られた溶液を冷凍乾燥させ、生成物を得た。
【0103】
上記以外のイオン液体
その他、LCST相分離観察及び浸透圧の測定に用いたイオン液体の構造式を以下に示す。
【0104】
【化9】
【0105】
上記において、[Emin][Tf
2N]は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、[Emin][BF
4]は1−エチル−3−メチルイミ
ダゾリウムテトラフルオロボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate
)、[P
4444][Br]はテトラブチルホスホニウムブロミド(tetrabutylphosphonium bromide)、[P
4444][FAc]はテトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート
(tetrabutylphosphonium trifluoroacetate)を示す。
【0106】
アミノ酸イオン液体又はイオン液体水溶液の浸透圧測定
上記で合成したアミノ酸イオン液体やイオン液体をMilli−Q水により所定濃度に希釈し、蒸気圧法浸透圧測定装置(Vapro5600、WESCOR社製)を用いてその浸透圧測定を行った。各アミノ酸イオン液体水溶液やイオン液体水溶液の浸透圧と濃度の関係を
図1〜5に示す。
【0107】
図1は、各イオン液体濃度に対する浸透圧を評価した結果を示す(●は[P
4444][Br]、○は[P
4444][Cl]、◆は[P
4444][CH
3SO
3]、◇は[P
4444][BzSO
3]、▲は[P
4444][SS]、△はpoly([TVBP][C5S])、■は[
P
4444][DMBS]、□は[P
4444][TMBS]、●は[P
4444][FAc]を示す)。
【0108】
図2は、本発明の各アミノ酸イオン液体濃度に対する浸透圧を評価した結果を示し(●は[P
4444][Gly]、○は[P
4444][Ala]、■は[P
4444][Pro]、□は[P
4444][Phe]、◆は[P
4444][Ile]を示す)、一方でこれらの対照として、◇は[P
4444][Cl]、▲は[P
4444][Br]、△は[P
4444][TsO]のイオン液体を用いた例の結果も示す。
本発明のアミノ酸イオン液体は、[P
4444][Cl]、[P
4444][Br]、[P
4444][TsO]と同等以上の浸透圧を示すことが分かる。
【0109】
図3は、本発明のアミノ酸イオン液体において、アミノ酸をProに固定し、ホスホニウムのアルキル基の炭素数を変化させた場合の各アミノ酸イオン液体濃度に対する浸透圧を評価した結果を示す(●は[P
4444][Pro]、○は[P
4446][Pro]、■は[P
6666][Pro]、□は[P
6668][Pro]、▲は[P
66614][Pro]、△は[
P
4444][TsO]を示す)。
図3の結果によれば、カチオンのアルキル基の炭素数が長くなっても比較的高い浸透圧
を示すことが分かる。
【0110】
図4は、本発明のアミノ酸イオン液体において、カチオンを[P
66614]に固定し、ア
ニオンを[Pro]又は[Gly]に変更した場合(●は[P
66614][Pro]、○は
[P
66614][Gly]を示す)、各アミノ酸イオン液体濃度に対する浸透圧を評価した
結果を示す。
図4の結果によれば、[P
66614][Pro]及び[P
66614][Gly]の両方は、所定の浸透圧を示すことが分かる。
【0111】
図5は、本発明の各アミノ酸イオン液体濃度に対する浸透圧を評価した結果を示す(○は[P
4444][Gly]、△は[P
4444][Ala]、□は[P
4444][Pro]、◇は[P
4444][Ile]、+は[P
4444][Phe]、×は[P
4444][dmGly]、●は[P
4446][Gly]、▲は[P
66614][Gly]、■は[P
4446][Pro]、◆
は[P
6666][Pro]、*は[P
6668][Pro]、□は[P
66614][Pro]を示
す)。
図1〜5の結果によれば、本発明のアミノ酸イオン液体は、浸透圧を発現する為、正浸透膜の溶質として使用できると考えられた。
【0112】
LCST相分離の観察
上記アミノ酸イオン液体を試験管に所定量秤量し、所定濃度となるように所定濃度のMilli−Q水を添加した。ボルテックスミキサーを用いて撹拌した後、それぞれの試験管を100℃の恒温槽にいれ、30分間静置した。その後、試験管を恒温槽から取り出し、室温下で30分間静置したときの溶液状態を目視により観察した。
【0113】
[Emin][Tf
2N]、[P
66614][Phe]は室温、100℃のいずれの温度でも温
度相転移挙動を示さず、液相が2層に分かれていた。一例として加温直後の[P
66614][Phe]を
図6に示す。
【0114】
[Emin][BF
4]、[P
4446][Gly]、[P
66614][Gly]、[P
4444][Pro]、[P
4446][Pro]は100℃のいずれの温度でも温度相転移挙動を示さず、均相であった。一例として加温直後の[P
4446][Pro]、[P
4444][Pro]、[P
66614][Gly]を図
7に示す。
【0115】
[P
4444][FAc]、[P
4444][TMBS]、[P
4444][DMBS]、[P
4444][TsO]、poly([P
4444][SS])、poly(TVBP−C5S)、[P
6668][Pro]、[P
66614][Pro]、[P
66614][Val]は室温で均一な1相の液相、100℃で2相の液相になり、
温度相転移挙動が確認された。一例として加温直後の[P
66614][Pro]、[P
6668][Pro]、[P
6666][Pro]、[P
66614][Val]を
図8に示す。
【0116】
LCSTの測定
LCSTの測定は温調機能付き分光光度計(UV−650、島津製作所)を用いて行った。各濃度(10質量%〜70質量%)に調製した[P
66614][Pro]をセルに入れ、蒸
発を防ぐためにパラフィルムでふたをした。セル内温度センサをとりつけ、測定波長600nm、取り込み温度0.1℃、昇温速度0.1℃として、実験を行い、相転移温度はTransmittanceが90%を下回ったときの温度とした。測定結果は
図9に示す通りである。
【0117】
図9の結果によれば、アミノ酸イオン液体濃度が高い程、室温に近い温度でLCSTを示し、高温で処理せずとも、低エネルギーで溶質のアミノ酸イオン液体と水等とを分離できると考えられた。
【0118】
限外ろ過膜を用いたイオン液体水溶液の濃縮
[P
66614][Pro]10質量%水溶液を限外ろ過用のステンレス製デッドエンド型セル
内に設置し、1MPaの圧力をかけた。用いた膜はMillipore製の公称分画分子量1000、材質は再生セルロースのものを用いた。ろ液は10分ごとに分注し、電気伝導度測定によって得られる溶液内に含まれる炭素濃度からアミノ酸イオン液体濃度を求めた。操作は溶液が初期の半分になるまで続けた。実験操作の模式図を
図10に示す。
【0119】
セル内の残存溶液量(左欄)と透過されたアミノ酸イオン液体量(g)(右欄)の経時変化を
図11(●は阻止率、○は供給残存溶液量を示す)、阻止率を
図12に示す。
阻止率=(1−C
out/C
in)×100 (1)
C
in:原料水溶液中のアミノ酸イオン液体濃度
C
out:透過液中のアミノ酸イオン液体濃度
これらの結果、[P
66614][Pro]の分子量は598であるが、そのカチオンの立体的
な構造のため、公称分画分子量1000のUF膜でもアミノ酸イオン液体は通過することなく、ほとんど阻止され、ほぼ100%の分離回収性が得られると考えられた。
【0120】
以上により、本発明のアミノ酸イオン液体は、正浸透膜処理に適用可能であり、好ましくは浸透圧を発現し、より好ましくは室温に近い温度でLCSTを示し、さらに好ましくは優れた分離回収性を示す。
【0121】
本発明のアミノ酸イオン液体は、海水淡水化等の正浸透膜処理に好適に使用されるのみならず、浸透圧発電やヒートエンジンにも好適に使用され得る。