特開2016-153551(P2016-153551A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-153551(P2016-153551A)
(43)【公開日】2016年8月25日
(54)【発明の名称】建造物の基礎杭とその設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20160729BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20160729BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20160729BHJP
【FI】
   E02D5/28
   E02D5/80 102
   A01G9/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-31243(P2015-31243)
(22)【出願日】2015年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】503184924
【氏名又は名称】嶋田 正義
(71)【出願人】
【識別番号】514166540
【氏名又は名称】藤田 利親
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 正義
【テーマコード(参考)】
2B029
2D041
【Fターム(参考)】
2B029BA03
2D041AA02
2D041BA21
2D041DB02
2D041GA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比較的簡単な構造で強固な基礎を形成することができる建造物の基礎杭とその施工方法を提供する。
【解決手段】上方に設けられる建造物を支持するために土壌41に設置される基礎杭10である。中空の基礎筒11と、これに挿入される挿入体31とを備える。基礎筒11は、側壁12に形成された開口部14と、拡開する腕部21とを備える。腕部21は、側壁12に連続部20を介して設けられており、その内側に当接部25を備える。挿入体31を軸方向へ押し込んで、挿入体31に設けられた作用部33によって当接部25を押圧することで、腕部21を外側に拡開させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に設けられる建造物を支持するために土壌に設置される基礎杭において、
土壌に打ち込まれる中空部を有する基礎筒と、前記基礎筒の中空部内に挿入される挿入体とを備え、
前記基礎筒は、その側壁に形成された開口部と、前記基礎筒の外側に拡開する腕部とを備え、
前記腕部は、前記開口部の周縁の一部における前記側壁に、連続部を介して設けられており、
前記腕部は、土壌に打ち込まれる前の状態で前記基礎筒の内側に突出する当接部を備え、
前記挿入体は、前記基礎筒の軸方向に移動可能であり、
前記挿入体は、前記基礎筒の軸方向への移動に伴い前記当接部を押圧することによって前記腕部を拡開状態にさせる押圧部を備えていることを特徴とする基礎杭。
【請求項2】
前記開口部及び前記腕部は、前記基礎筒の軸方向へ異なる位置に、複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の基礎杭。
【請求項3】
前記挿入体は、前記拡開状態で前記当接部の内側に位置する保持部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の基礎杭。
【請求項4】
前記挿入体は中空の筒状をなし、前記挿入体の周壁に受容開口が形成され、
前記押圧部は、前記周壁から前記開口内に伸びる斜面であり、
前記保持部は、前記斜面の付け根付近の前記周壁又は前記斜面であり、
前記挿入体は、土壌に打ち込まれる前の状態で前記基礎筒内に配置され、
前記腕部は、土壌に打ち込まれる前の状態で前記基礎筒の前記開口部と前記受容開口とを通って、径内方向に連続部から折り曲げられて挿入されていることを特徴とする請求項3記載の基礎杭。
【請求項5】
前記押圧部及び前記保持部を備えた作用部が、前記挿入体に複数設けられ、
前記挿入体は、土壌に打ち込まれる前の状態で前記基礎筒内に配置され、前記複数の腕部のそれぞれに対応して前記作用部が配置され、
前記複数の腕部同士の軸方向への間隔よりも大きな間隔で前記複数の作用部が配置されたことを特徴とする請求項3又は4記載の基礎杭。
【請求項6】
前記建造物は温室であり、前記基礎筒の下端は尖った尖端部を備え、前記腕部が前記基礎筒の外側に突出しない状態に前記開口部内に納まった形態で、前記基礎筒は前記土壌に1m以上が打ち込まれることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の基礎杭。
【請求項7】
前記腕部は、上腕部と、前記上腕部の先端に設けられた腕先部とを備え、
前記連続部が塑性変形することによって、前記腕部が前記拡開状態となるように、前記上腕部は、前記開口部の上辺の前記側壁から前記連続部を介して一体に延設されており、
前記拡開状態で、前記腕先部は前記上腕部から上方に向いて伸びることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の基礎杭。
【請求項8】
上方に設けられる建造物を支持するために土壌に基礎杭を設置する方法において、
基礎筒の側壁に形成された開口部と、前記基礎筒の外側に拡開する腕部とを備えた基礎筒を、その先端から前記土壌に打ち込む工程と、
前記基礎筒内に配置された挿入体を、前記基礎筒の軸方向に移動させる工程とを備え、
前記腕部は、前記開口部の周縁の一部における前記側壁に、連続部を介して設けられており、
前記腕部は、前記土壌への打ち込み前の状態で、前記基礎筒の内側に突出する当接部を備え、
前記挿入体の移動に伴い、前記挿入体が前記当接部を押圧して、前記腕部を前記土壌中で拡開状態させることを特徴とする基礎杭の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基礎杭、特に温室などの比較的軽量な建造物の基礎杭と、その設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温室、特に農業分野で多用されるパイプ式農業用温室は、鋼管パイプをアーチ状に曲成して両端部を略直線形状の支柱とし、アーチ状の鋼管パイプを奥行方向に所定間隔で複数個配置し、これらのアーチ状の鋼管パイプを直管パイプで繋いで骨格を形成し、その上部からフィルム材などで被覆し、フィルム材の裾端を地中に埋設して構成されている(特許文献1参照)。
このパイプ式農業用温室は、一般にアーチ状の鋼管パイプの下端を地面に突き刺して固定するという工法が採用されているため、軟弱な土壌ではその確実な固定が困難である。
【0003】
これに対して、特許文献2にあっては、土壌に対して相互の間隔が下方に行くに従って広くなるように打ち込まれた複数の杭と、これらの複数の杭と各杭の軸芯に沿った仮想線が負荷される鉛直荷重の作用線上で交差するように、各杭の上端部を結束するヘッド部(基礎ブロック)から構成された農業用温室の基礎構造を開示している。
この農業用温室の基礎構造は、確実な固定が可能である反面、支柱下部にコンクリート製のブロックが必要であり、基礎構造が複雑となり施工に時間がかかるなどの課題を有する。
【0004】
そこで、特許文献3や4は、農業用温室の支柱の下部の地中に、列状に所定間隔にて螺旋杭を埋設する構造を備えた農業温室の基礎構造が提案されている。この構造では、螺旋状のリブを杭の周囲に備えた螺旋杭を回転させて土壌に埋設するものであり、螺旋状のリブを、螺旋杭の打ち込み後に螺旋杭の軸部から突出させるものではない。
【0005】
なお、特許文献5などに示されたアンカーボルトにあっては、先端に複数の拡開部を備えたものが知られているが、アンカーボルトはコンクリートなどの比較的均質で硬質の素材に対する固定手段であり、また、アンカーの先端のみに複数の拡開部を備えたものであるため、不均質な土壌に対して用いることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−77347号公報
【特許文献2】特開2002−3069号公報
【特許文献3】特許4846378号公報
【特許文献4】特開2013−169200号公報
【特許文献5】特開2009−24477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、比較的簡単な構造で強固な基礎を形成することができる新たな構造を有する建造物の基礎杭とその施工方法を提案することにある。
また、本発明の他の目的は、比較的安価に製造でき、その施工も複雑な工程を必要としない建造物の基礎杭とその施工方法の提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上方に設けられる建造物を支持するために土壌に設置される基礎杭に関するものである。本発明に係る基礎杭は、土壌に打ち込まれる中空部を有する基礎筒と、基礎筒の中空部内に挿入される挿入体とを備える。
前記基礎筒は、その側壁に形成された開口部と、前記基礎筒の外側に拡開する腕部とを備える。前記腕部は、前記開口部の周縁の一部における前記側壁に、連続部を介して設けられており、さらに、前記腕部は、土壌に打ち込まれる前の状態で、前記基礎筒の内側に突出する当接部を備える。
【0009】
他方、前記挿入体は、前記基礎筒の軸方向に移動可能であり、前記挿入体は、前記基礎筒の軸方向への移動に伴い前記当接部を押圧することによって前記腕部を拡開状態にさせる押圧部を備えている。
【0010】
これによって、前記挿入体を予め前記基礎筒内に挿入しておくか、挿入しない状態で、前記基礎筒を土壌中に打ち込んだ後、前記挿入体を前記軸方向へ前進させることによって、土壌中で前記腕部を拡開させることができる。
前記開口部及び前腕部は、1つでも良いが、複数設ける方が望ましい。複数設ける場合には、個前記基礎筒の軸方向へ異なる位置に設けることが望ましい。
【0011】
前記挿入体は、軸方向への移動(降下又は上昇)によって、腕部を拡開させるものであれば、円筒体などの種々の形態として実施することができる。
また、前記挿入体は、前記拡開状態で前記当接部の内側に位置する保持部を有するものとして実施することができ、この保持部によって、前記腕部が拡開状態に維持され易いものとなる。
例えば、前記挿入体は中空の筒状をなし、その周壁に受容開口が形成されたものとして実施することができる。その際、前記押圧部は、前記周壁から前記開口内に伸びる斜面として実施することができ、前記保持部は、前記斜面の付け根付近の前記周壁又は前記斜面として実施することができる。前記挿入体は、土壌に打ち込まれる前の状態で前記基礎筒内に配置され、前記腕部は、土壌に打ち込まれる前の状態で前記基礎筒の前記開口部と前記受容開口とを通って、径内方向に連続部から折り曲げられて挿入されているものとすることができる。
前記挿入体は、土壌に打ち込まれる前の状態で前記基礎筒内に配置されるものとすることができ、前記複数の腕部のそれぞれに対応して前記作用部が配置されるものとすることができる。この場合、前記複数の腕部同士の軸方向への間隔と、前記複数の作用部同士の軸方向への間隔とを等しく設定すると、軸方向へ前記挿入体を移動させる際に、複数の腕部が一度に拡開するため大きな力を必要とする。これに対して、前記複数の腕部同士の軸方向への間隔よりも大きな間隔で前記複数の作用部を配置すると、軸方向へ前記挿入体を移動させる際、一度に複数の腕部が一度に拡開しないため、比較的少ない力で腕部を拡開させることができる。
【0012】
前記建造物は種々のものとして実施することができるが、例えば農業用の温室として実施することもできる。その際、前記基礎筒の下端は尖った尖端部を備え、前記腕部が前記基礎筒の外側に突出しない状態に前記開口部内に納まった形態で、前記基礎筒は前記土壌に1m以上が打ち込まれるものとすることが適当である。
【0013】
また、前記腕部は、上腕部と、前記上腕部の先端に設けられた腕先部とを備え、前記連続部が塑性変形することによって、前記腕部が前記拡開状態となるように、前記上腕部は、前記開口部の上辺の前記側壁から前記連続部を介して一体に延設されており、前記拡開状態で、前記腕先部は前記上腕部から上方に向いて伸びるものとすることによって、より強固な固定構造を得ることができる。
【0014】
また、本発明は、上方に設けられる建造物を支持するために土壌に基礎杭を設置する方法において、基礎筒の側壁に形成された開口部と、前記基礎筒の外側に拡開する腕部とを備えた基礎筒を、その先端から前記土壌に打ち込む工程と、前記基礎筒内に配置された挿入体を、前記基礎筒の軸方向に移動させる工程とを備え、前記腕部は、前記開口部の周縁の一部における前記側壁に、連続部を介して設けられており、前記腕部は、前記土壌への打ち込み前の状態で、前記基礎筒の内側に突出する当接部を備え、前記挿入体の移動に伴い、前記挿入体が前記当接部を押圧して、前記腕部を前記土壌中で拡開状態させることを特徴とする基礎杭の設置方法を提供する。
本発明の実施に際して、前記基礎筒を前記土壌に打ち込む前に、前記挿入体を前記基礎筒内に挿入しておくことができる。また、前記基礎筒を前記土壌に打ち込んだ後に、前記挿入体を前記基礎筒内に挿入してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、基礎杭を土壌中に打ち込んだ後に腕部を拡開させることができる新規な構造で強固な基礎を形成することができる建造物の基礎杭とその施工方法を提案することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る基礎杭の一部切欠斜視図。
図2】同基礎杭の要部拡大縦断面図であって(A)は腕部が拡開する前の断面図、(B)は腕部が拡開した後の断面図。
図3】同基礎杭の縦断面図。
図4】同基礎杭の地上の施工状態を示す斜視図。
図5】(A)同基礎杭の挿入体の斜視図、(B)挿入体の変更例を示す斜視図、(C)挿入体の他の変更例を示す斜視図。
図6】(A)他の変更例を示す挿入体の要部正面図、(B)同挿入体の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
(全体構成)
この実施の形態に係る基礎杭10は、土壌41内に打ち込まれる基礎筒11と、基礎筒11の中空部の中に挿入される挿入体31とから構成されている。挿入体31は、基礎筒11の腕部21を拡開させるものであり、この腕部21の拡開によって基礎杭10が土壌41内に所定の引き抜き耐荷重(例えば9800N以上)に耐えるものとなる。
基礎筒11の上端には上端開口15が設けられ、その上にH型鋼などの建造物42が載置されて、上端開口15に形成された固定穴17を利用してボルト・ナットなどによって固定される。
【0018】
(基礎筒11について)
基礎筒11は、円筒や角筒状をなす金属製の筒体であり、その上端にフランジ16を備え、その下端に先の尖った尖端部13を備える。基礎筒11の側壁には、複数の開口部14が上下に適宜間隔を置いて形成されている。複数の開口部14は、基礎筒11の周方向に同一の位置でもよいが、周方向に異なる位置に形成する方が好ましい。
【0019】
開口部14には腕部21が配置されている。開口部14は、矩形状をなし、開口部14の周縁の一部(この例では上辺)にて、基礎筒11の側壁から連続部20を介して腕部21が連続して伸ばされている。製造に際しては、側壁12を上辺の全部又は一部の連続部20を残して他の3辺を略コ字上に切断することにより、腕部21を形成することができる。腕部21の下部の先端には腕先部23を溶接などで取り付けることにより、腕部21は、上端が連続部20となった上腕部22と、その下部に設けられた腕先部23とを備えたものとなる。腕先部23は必要に応じて補強部24で曲がりにくいように補強しておくことも望ましい。図1〜3に示すように、腕部21は上腕部22と腕先部23とが一体に形成されたものであってもよいが、上腕部22は側壁12で形成される一方、上腕部22とは別体の腕先部23及び補強部24をボルトや溶接で固定する方が効率的に製造できる。
【0020】
この腕部21は、図2(A)に示すように、基礎筒11が土壌41に打ち込まれる際には、開口部14から基礎筒11の中空内部に収納され、基礎筒11の側壁12より外側には突出していない。
そして、図2(B)に示すように、基礎筒11が土壌41内に打ち込まれた後に、挿入体31が押し込まれることによって外側に突出した拡開状態になる。そのために腕部21は、拡開前の段階で基礎筒11の内部に突出する当接部25を備える。当接部25は、板状の上腕部22のみで構成することもできるが、上腕部22よりもさらに内方に突出する突起を、上腕部22の内側に形成しておく方が、腕部21を大きく外側に突出させることができる。この当接部25は下方に向かうに従って漸次突出高さが大きくなる楔状のものとしておくことが望ましい。
【0021】
(挿入体31について)
挿入体31は、基礎筒11の軸方向に移動可能であって、その軸方向への移動に伴い当接部25を押圧することによって腕部21を拡開状態にさせるものである。図1図3の例では、挿入体31は、中空又は中実の中央軸32と、中央軸32から突出する作用部33とを備えている。中央軸32は側壁12と平行に伸びるもので、基礎筒11が土壌41内に打ち込まれる前にあるいは打ち込まれた後に挿入体31が基礎筒11内に挿入される。
【0022】
作用部33は、下方の押圧部34と、押圧部34の上方に連続して、もしくは連続せずに形成された保持部35とを備える。押圧部34は、挿入体31を下方に移動させる際に、当接部25に当たって、当接部25を拡開状態とする部位である。保持部35は拡開状態の腕部21の当接部25の内側に位置して(望ましくは当接して)、保持部35の拡開状態を確実に維持する部位であり、押圧部34の最大径と略同径の筒状をなす。押圧部34は、保持部35の先端が当接部25と当たって腕部21を押し広げて拡開状態とするものであってもよいが、円滑に当接部25を押すためには、押圧部34と当接部25との少なくともいずれか一方をテーパ状としておくほうが好ましい。また、拡開状態となるために腕部21の付け根の連続部20が塑性変形するが、この塑性変形を容易になすために、連続部20は焼鈍しておく方が望ましい。
【0023】
基礎杭10を土壌41に打ち込む前に、基礎筒11の内部に挿入体31を挿入するには、腕部21を拡開状態(図2(B)の状態)にしておき、腕先部23や当接部25を形成するなどの加工を施した後、基礎筒11内部に挿入体31を挿入し、その後、腕部21を基礎筒11の内部に押し込むように塑性変形させればよい。
【0024】
複数の腕部21と作用部33とは、軸方向に同じ間隔(ピッチ)で設けることもできるが、同じ間隔で設けた場合には、挿入体31を押し込んで腕部21を拡開させる際に、全ての腕部21を同時に拡開させることになるため大きな力が必要になる。そこで作用部33(特に押圧部34)同士の間隔を、腕部21同士の間隔よりも大きな間隔で設けることによって、下方の腕部21から順に開かせることができる。具体的には、腕部21同士の間隔に当接部25の上下長さを加えた長さを、作用部33同士の間隔とすればよく、例えば腕部21を25cm間隔で設け、当接部25の長さが5cmであるとすると、作用部33を30cm以上の間隔で設ければよい。なお、作用部33を押圧部34と保持部35とで構成する場合、拡開させる押圧部34と拡開後に腕部21の当接部25が当接する保持部35の位置との間隔は、下方の腕部21ほど大きくなるため、これに対応する位置や大きさに保持部35を設定することが望ましい。
【0025】
(施工方法)
図4に示すように、上部を残して埋め込まれた基礎筒11の上端開口15にはH型鋼などの建造物42が載せられて、上端開口15に設けられたフランジ16を利用してボルトなどで固定することができ、これにより強固な温室などの基礎を簡単に施工することができる。基礎筒11を土壌41に打ち込むにも特殊な機械装置は必要とせず、油圧ショベルなどの建設機械を利用して基礎筒11の上端を押し込めばよい。油圧ショベルに油圧ブレーカーを取り付けて、下穴を明けるようにしてもよい。また、必要に応じてフランジ16を利用して、上端開口15を建設機械に取り付けてもよく、上端開口15に回転力を加えてもよい。
【0026】
基礎筒11の打ち込みが所定深さまで完了した後、挿入体31を下方に押し込む。その際、完成状態では挿入体31の上端が基礎筒11よりは突出していない方が望ましいため、打ち込みジグ40を挿入体31の上端に配置して押し込み作業を行えばよく、作業終了後は打ち込みジグ40を取り外して次の作業に移ればよい。
【0027】
これにより、前述のように、腕部21が拡開し、土壌41内に張り出す。拡開完了時、腕先部23は斜め上方を向いており、上方の土壌41に突き刺された状態となる。
土壌41は、複数の層をなしているのが一般的であり、それらの硬さは均一ではないが、基礎筒11の軸方向(施工状態では土壌41の深さ方向)の複数箇所に腕部21が設けられている。その結果、一つの層が比較的柔らかいものであっても、他の層が強固であることによって、基礎杭10の全体としては、目標の引き抜き耐荷重を得ることが容易となる。
【0028】
また、前述の特許文献3や4の場合、螺旋状のリブが回転することによって容易に螺旋杭は土壌に浸入できる反面、螺旋状のリブは、杭の周囲の土壌を上方に持ち上げるように作用するため、杭の周囲の土壌は施工前の状態よりも弱い状態とならざるを得ない。これに対して、この実施の形態では、螺旋状のリブを基礎筒11の外周に設けていないため、基礎筒11の周囲の土壌41は硬い状態を保ち、これに対して腕部21が拡開するため、強固な固定構造を実現することができる。但し、本発明の要旨は、打ち込み後の基礎杭10の基礎筒11から腕部21を突出させることにあり、基礎杭10の打ち込み際して、基礎筒11を回転させてもよく、回転させずともよく、或いは螺旋状のリブを基礎筒11に設けて特許文献3や4と併用した構造で、打ち込むものであってもよい。このように、本発明における基礎筒11の打ち込みとは、軸方向にのみ力を加えて基礎筒11を土壌41内に浸入させる場合に限らず、回転力、ねじ構造、ドリル機能で基礎筒11を土壌41内に浸入させる場合をも含むものである。
【0029】
基礎筒11の上端には上端開口15が設けられ、その上にH型鋼などの建造物42が載置されて、上端開口15に形成された固定穴17を利用してボルト・ナットなどによって固定される。建造物42は、特許文献4に示された温室用の架設基礎材など、種々の建造物の基礎材や柱材として実施することができる。これらの建造物42は、基礎杭10によって、土壌41から所定の離間距離(例えば50cm)を置いて配置されるが、建造物の種類や構造などによって、その離間距離や基礎杭10同士の間隔は種々変更することができるものであり、基礎杭10の全体を土壌41内に埋め込んでしまうものであってもよい。
【0030】
(変更例)
基礎筒11の打ち込みのためには、その先端に尖端部13を設けることが有利であるが、建設機械などで十分な大きさの穴を予め形成した場合には、尖端部13を設けずに基礎筒11を単なる筒体として実施することもできる。尖端部13にドリル刃などの回転穿孔機能を有する部分を設けることを妨げるものではない。また側壁12に螺旋状のネジ機能を果たす部位を設けることを妨げるものではない。
【0031】
基礎杭10を土壌41に打ち込んだ後に、基礎筒11の内部に挿入体31を挿入する場合では、挿入体31は、上方の腕部21から順に拡開状態としていく。そのため、押圧部34を設ける場合でも挿入体31の下端にのみ設ければ足りる。従って、上述の例では図5(A)に示したような先端に押圧部34を有する円筒体を複数個設けるものの他、図5(B)に示したような先端に押圧部34を有する1つの円筒体で実施することもできる。さらに図示は省略するが、円錐形状の押圧部34を設けないのであれば、単純な筒体で実施することもできる。この単純な筒体で実施する場合、筒体の先端の外周端辺が押圧部34として機能する。
【0032】
また、図5(C)に示すように、周方向に異なる位置に作用部33を部分的に設けることもできる。さらに図示はしないが、基礎杭10を土壌41に打ち込む前に基礎筒11の内部に挿入体31を挿入する場合であれば、当接部25の下方に作用部33を配置し、挿入体31を基礎筒11に対して引き上げるように移動させることで腕部21を拡開させることもできる。
【0033】
さらに、図6(A)(B)に示すように、挿入体31を円筒や角筒などのパイプを用いて形成することもできる。具体的には、挿入体31の周壁に開口(受容開口36)を形成し、その一辺(この例では上辺)を周壁に連続させた状態で径内方向に折り曲げたものであり、これによって傾斜した押圧部34が形成される。また、受容開口36は、腕部21を受け入れることができる大きさとされており、腕部21は、基礎筒11の開口部14と挿入体31の受容開口36とを通って、径内方向に連続部20から折り曲げられて挿入される。
【0034】
製造に際しては、受容開口36及び押圧部34を必要数形成した挿入体31を、基礎筒11内に挿入する。この段階では、基礎筒11の腕部21は、未だ径内側に折り曲げられておらず、挿入体31は基礎筒11内に抵抗なく軸方向に挿入される。
なお、当接部25を取り付けるなどの必要な加工を施すためには、腕部21を外側に折り曲げた状態で行う方が能率的であり、その場合には、腕部21を外側に折り曲げた状態の基礎筒11内に、挿入体31を挿入すればよい。
次に、受容開口36を開口部14及び腕部21に位置合わせして、腕部21を連続部20から折り曲げて、基礎筒11の開口部14と挿入体31の受容開口36とを通して、図示のように、内側に傾斜させる。
【0035】
打ち込みについては先の例と同様であり、挿入体31を打ち込むなどして、挿入体31を基礎筒11内にて軸方向に移動させることにより、押圧部34が当接部25を外側に押し出して、腕部21が拡開する。その際、挿入体31の内径以上であって基礎筒11の内径よりも小さな打ち込みジグ40を、必要に応じて用いることができる。
上記の加工及び拡開を行い易くするために、連続部20付近は焼鈍しておくことが望ましい。
押し込みの程度にもよるが、拡開状態では、当接部25は、押圧部34の付け根の付近か挿入体31の外周面に当接した状態となり、この部分(押圧部34の付け根の上下付近)が保持部35となる。押圧部34は、当接部25を押すことで腕部21を拡開させ得るものであればよく、図6(B)の上側に図示したように、反対側の内周面に達しないものでよい。また、図6(B)の下側に図示したように、反対側の内周面に達するものであってもよく、これによって保持部35の強度を増すことができる。
【0036】
この図6(B)の例では、当接部25として、傾斜していないピンなどの突起を形成したため、押圧部34は傾斜した斜面を形成するようにしたが、当接部25を先の例のように傾斜した楔状として実施する場合には、受容開口36を開口するだけであってもよい。その場合には、受容開口36の開口縁が楔状の当接部25に当接して腕部21を拡開させることできるものであり、受容開口36の開口縁が押圧部34となる。
【符号の説明】
【0037】
10 基礎杭
11 基礎筒
12 側壁
13 尖端部
14 開口部
15 上端開口
16 フランジ
17 固定穴
20 連続部
21 腕部
22 上腕部
23 腕先部
24 補強部
25 当接部
31 挿入体
32 中央軸
33 作用部
34 押圧部
35 保持部
36 受容開口
40 打ち込みジグ
41 土壌
42 建造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6