【解決手段】撮像画像を取り込む画像取込み工程SP1と、撮像画像に現れている各細胞の良否をそれぞれ判別し、良好判別細胞を得る良否判別工程SP2と、コロニーに対して良好判別細胞が占める面積の割合を求め、当該割合が閾値未満と判断したコロニー全体を除去領域に設定する第1の除去領域設定工程SP3と、良好判別細胞に基づいて良好な状態で継続的な培養が可能でないコロニーを判別し、当該コロニー全体を除去領域に設定する処理を含む第2の除去領域設定工程SP4と、第1の除去領域設定工程及び第2の除去領域設定工程で除去領域に設定されなかったコロニーの一部分に除去領域を設定可能な第3の除去領域設定工程SP5とを有する除去領域設定方法。
前記第2の除去領域設定工程では、複数の良好判別細胞が集まって形成される良好判別範囲の面積が閾値以上か否か判断し、面積が閾値以上と判断された良好判別範囲を1つも有さないコロニーを、良好な状態で継続的な培養が可能でないと判断して、当該コロニー全体を除去領域に設定する一方、面積が閾値以上と判断された良好判別範囲に対して膨張および収縮させるための画像処理を行い、当該画像処理後の良好判別範囲のうち少なくとも一部を良好細胞領域に設定可能とし、
前記第3の除去領域設定工程では、前記良好細胞領域に基づいて除去領域を設定する請求項1記載の除去領域設定方法。
前記第2の除去領域設定工程では、前記除去領域の設定に加えて、良好判別範囲内の穴の合計面積、良好判別範囲の凸面度、良好判別範囲の真円度、良好判別範囲の円形度または良好判別範囲の丸み度の少なくとも何れか1つを利用して前記良好判別範囲の形状を算出し、算出した良好判別範囲の形状が所定の条件を満たすか否か判断して、所定の条件を満たす良好判別範囲を良好細胞領域に設定する請求項2記載の除去領域設定方法。
前記第3の除去領域設定工程では、前記良好細胞領域を膨張させるための画像処理を行い、良好細胞領域を膨張させたコロニーに対して、当該良好細胞領域をコロニーから除いた残りの領域の少なくとも一部を除去領域に設定し、当該除去領域を膨張させるための画像処理を行う、または、コロニーから前記良好細胞領域を除いた残りの領域の少なくとも一部を除去領域に設定し、当該除去領域を膨張および収縮させるための画像処理を行う請求項2又は3記載の除去領域設定方法。
コンピュータに呼び込まれることによって、複数の細胞からなるコロニーが撮像された撮像画像に基づき、コロニーの少なくとも一部を培地から除去すべき除去領域として設定するための除去領域設定装置として前記コンピュータを動作させるためのプログラムであって、
前記撮像画像を取り込む画像取込ステップと、
前記撮像画像に現れている各細胞の良否をそれぞれ判別し、良好判別細胞を得る良否判別ステップと、
コロニーに対して前記良好判別細胞が占める面積の割合を求め、当該割合が閾値未満と判断したコロニー全体を除去領域に設定する第1の除去領域設定ステップと、
前記良好判別細胞に基づいて、良好な状態で継続的な培養が可能でないコロニーを判別し、当該コロニー全体を除去領域に設定する処理を少なくとも含む第2の除去領域設定ステップと、
第1の除去領域設定ステップおよび第2の除去領域設定ステップで除去領域に設定されなかったコロニーの一部分に除去領域を設定可能な第3の除去領域設定ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、コロニーを形成する細胞は種々の集合状態を取り得るものであり、例えば、
図2(a)に示すように、未分化細胞からなる未分化領域10と分化細胞からなる分化領域11によって二分されるコロニー1aや、
図2(b),(c)に示すように、未分化領域10又は分化領域11の一方の内部に他方が存在するコロニー1b,1cなどが挙げられる。このうち、
図2(a),(b)に示すコロニー1a,1bは、分化領域11を除去すれば、残りの未分化領域10が不良に変化する可能性は低く、良好な状態で継続して培養を行うことができる。一方、
図2(c)に示すコロニー1cは、未分化領域10をある程度含んでいることから、分化領域11を培地上から除去して培養を継続することも考えられるが、残した未分化細胞が培養中に意図せず分化(悪化)する可能性が高く、同一のコロニー1に対して再度の除去操作が必要となる可能性が高いので、コロニー1全体を除去することが好ましいものである。
【0009】
特許文献1に開示の判別システムは、各細胞の良否を判別しているにすぎず、コロニーを形成する細胞の集合状態が考慮されていない。そのため、例えばiPS細胞の管理に前記判別システムを利用したとしても、分化と判断された細胞を培地上から除去する程度にとどまり、
図2(c)に示すようなコロニー1cの全体を除去できず、継続培養により分化する可能性が高い未分化細胞を残すことになるので、同一のコロニーに対して再度の除去操作が必要となり、除去操作の回数が多くなるおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に開示の方法は、細胞の品質として細胞の増殖率や残存分裂回数などを予測しており、コロニーの部分的な除去が考慮されていない。そのため、予測結果をそのまま細胞の除去に適用すると、
図2(a),(b)に示すようなコロニー1a,1b全体が除去対象となることが考えられ、良好な状態で継続培養が可能な未分化領域10の細胞まで除去して、除去対象となる細胞が多くなるおそれがある。また逆に、
図2(c)に示すような、不良に変化する可能性が高いコロニー1cを除去せずそのまま全て残してしまうおそれがあり、再度の除去操作が必要になることがある。
【0011】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、除去対象とする細胞を少なくしつつ、同一のコロニーに対して再度の除去操作が必要となる状態になりにくくして、除去操作の回数を少なく抑えることが可能な除去領域設定方法、除去領域設定装置およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以上のような問題点を鑑み、次のような手段を講じたものである。
【0013】
すなわち、本発明の除去領域設定方法は、複数の細胞からなるコロニーが撮像された撮像画像に基づき、コロニーの少なくとも一部を培地から除去すべき除去領域として設定可能であり、前記撮像画像を取り込む画像取込み工程と、前記撮像画像に現れている各細胞の良否をそれぞれ判別し、良好判別細胞を得る良否判別工程と、コロニーに対して前記良好判別細胞が占める面積の割合を求め、当該割合が閾値未満と判断したコロニー全体を除去領域に設定する第1の除去領域設定工程と、前記良好判別細胞に基づいて、良好な状態で継続的な培養が可能でないコロニーを判別し、当該コロニー全体を除去領域に設定する処理を少なくとも含む第2の除去領域設定工程と、第1の除去領域設定工程および第2の除去領域設定工程で除去領域に設定されなかったコロニーの一部分に除去領域を設定可能な第3の除去領域設定工程とを有することを特徴とする。
【0014】
このような構成であると、画像取込み工程で取得した前記撮像画像に基づいて、良否判別工程で各細胞の良否を判別し、第1の除去領域設定工程において、良好判別細胞が占める面積の割合が閾値未満と判断され、略全体が不良と判別された細胞からなるコロニー全体を除去領域に設定することができる。また、第2の除去領域設定工程では、良好な状態での継続的な培養が可能でないと判断されたコロニー全体を除去領域に設定できるので、良好判別細胞の占める面積の割合が閾値よりも多いものの、培養を継続した場合に不良に変化する可能性が高い細胞を含むコロニー全体を除去領域に設定することができる。さらに、第3の除去領域設定工程では、第1の除去領域設定工程および第2の除去領域設定工程で除去領域に設定されなかったコロニーの一部分に除去領域を設定できるので、不良な一部分を除去することで、良好な状態で継続的に培養できる可能性が高い細胞を培地上に残すことができる。したがって、除去領域に設定する範囲を抑えつつ、培養を継続した場合に不良に変化する可能性が高い細胞を含むコロニー全体を除去領域に設定することができるので、除去対象とする細胞を少なくできるとともに、同一のコロニーに対して再度の除去操作が必要となる状態になりにくくして、除去操作の回数を少なく抑えることが可能となる。なお、「コロニー全体」には「コロニーの略全体」も含まれる。
【0015】
上記の効果に加えて、人が感覚で行った場合と同じような範囲に除去領域を設定できるとともに除去領域内に形成される穴を減少させ、培地から除去しやすい除去領域を設定するためには、前記第2の除去領域設定工程で、複数の良好判別細胞が集まって形成される良好判別範囲の面積が閾値以上か否か判断し、面積が閾値以上と判断された良好判別範囲を1つも有さないコロニーを、良好な状態で継続的な培養が可能でないと判断して、当該コロニー全体を除去領域に設定する一方、面積が閾値以上と判断された良好判別範囲に対して膨張および収縮させるための画像処理を行い、当該画像処理後の良好判別範囲のうち少なくとも一部を良好細胞領域に設定可能とし、前記第3の除去領域設定工程では、前記良好細胞領域に基づいて除去領域を設定することが好ましい。
【0016】
とりわけ、継続的に培養した場合に不良に変化する可能性が高い細胞をより適切に除去領域に設定するためには、前記第2の除去領域設定工程で、前記除去領域の設定に加えて、良好判別範囲内の穴の合計面積、良好判別範囲の凸面度、良好判別範囲の真円度、良好判別範囲の円形度または良好判別範囲の丸み度の少なくとも何れか1つを利用して良好判別範囲の形状を算出し、算出した良好判別範囲の形状が所定の条件を満たすか否か判断して、所定の条件を満たす良好判別範囲を良好細胞領域に設定することが好ましい。
【0017】
特に、除去領域の輪郭に細かい凹凸がなく、除去しやすい除去領域を設定するためには、前記第3の除去領域設定工程では、前記良好細胞領域を膨張させるための画像処理を行い、良好細胞領域を膨張させたコロニーに対して、当該良好細胞領域をコロニーから除いた残りの領域の少なくとも一部を除去領域に設定し、当該除去領域を膨張させるための画像処理を行う、または、コロニーから前記良好細胞領域を除いた残りの領域の少なくとも一部を除去領域に設定し、当該除去領域を膨張および収縮させるための画像処理を行うことが好ましい。
【0018】
一方、上記の効果が発揮される除去領域設定装置は、複数の細胞からなるコロニーを撮像する撮像手段と、上記の除去領域設定方法を実行する除去領域設定手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
さらに、上記の効果を発揮させるためのプログラムは、コンピュータに呼び込まれることによって、複数の細胞からなるコロニーが撮像された撮像画像に基づき、コロニーの少なくとも一部を培地から除去すべき除去領域として設定するための除去領域設定装置として前記コンピュータを動作させるものであり、前記撮像画像を取り込む画像取込ステップと、前記撮像画像に現れている各細胞の良否をそれぞれ判別し、良好判別細胞を得る良否判別ステップと、コロニーに対して前記良好判別細胞が占める面積の割合を求め、当該割合が閾値未満と判断したコロニー全体を除去領域に設定する第1の除去領域設定ステップと、前記良好判別細胞に基づいて、良好な状態で継続的な培養が可能でないコロニーを判別し、当該コロニー全体を除去領域に設定する処理を少なくとも含む第2の除去領域設定ステップと、第1の除去領域設定ステップおよび第2の除去領域設定ステップで除去領域に設定されなかったコロニーの一部分に除去領域を設定可能な第3の除去領域設定ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明した本発明によれば、除去領域に設定する範囲を抑えつつ、培養を継続した場合に不良に変化する可能性が高い細胞を含むコロニー全体を除去領域に設定することができるので、除去対象とする細胞を少なくできるとともに、同一のコロニーに対して再度の除去操作が必要となる状態になりにくくして、除去操作の回数を少なく抑えることが可能な除去領域設定方法、除去領域設定装置およびプログラムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
図1に示す本発明の一実施形態である除去領域設定装置100は、複数のiPS細胞からなるコロニーが撮像された撮像画像に基づき、コロニーの少なくとも一部を培地から除去すべき除去領域として設定可能なものである。
図1に示すように、除去領域設定装置100は、撮像画像を取得する撮像手段3と、撮像手段3が取得した撮像画像に基づいて除去領域を設定する除去領域設定手段としてのコンピュータ(制御手段)2とで構成される。
【0024】
図2に示すように、複数のiPS細胞が集まって形成されるコロニー1は、未分化の細胞(未分化細胞)と分化した細胞(分化細胞)の集合状態によって、いくつもの形態を取り得る。例えば、同図(a)に示すように、未分化細胞からなる未分化領域10と、分化細胞からなる分化領域11とによって二分されるコロニー1aや、同図(b)に示すように分化領域11内に1つの未分化領域10が存在するコロニー1bがあり、これらを混合コロニー1と呼ぶ。また、同図(c)に示すように分化領域11内に複数の未分化領域10が点在するコロニー1cや、同図(d)に示すように、未分化領域10内に1つの分化領域11が存在するコロニー1d、同図(e)に示すように分化領域11内に歪(いびつ)な形状の未分化領域10が存在するコロニー1eがあり、これらを分化中のコロニー1と呼ぶ。さらに、同図(f)に示すように歪な形状の未分化領域10からなるコロニー1fがある。
【0025】
このうち、同図(a),(b)に示す混合コロニー1は、分化領域11を除去すれば、良好な状態(未分化の状態)を維持して培養を継続できる可能性が高い。一方、同図(c)〜(f)に示す分化中のコロニー1は、分化領域11を除去したとしても、継続して培養した場合に、残りの未分化細胞が意図せず分化(不良に変化)する可能性が高い。そのため、混合コロニー1は、分化領域11を除去して未分化領域10を残すことが好ましく、分化中のコロニー1は、全体をまとめて除去領域に設定して培地から除去することが好ましい。
【0026】
図1に示すコンピュータ2は、図示しないCPU、メモリ及びインターフェース等を具備し、CPUは、メモリに予め記憶されている後述の除去領域設定方法を行うためのプログラム等を呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して、良否判別部21aと第1の除去領域設定部21bと第2の除去領域設定部21cと第3の除去領域設定部21dとを実現する。
【0027】
良否判別部21aは、撮像画像中でコロニー1を構成する各iPS細胞が良好(未分化)または不良(分化や癌化)のどちらであるか判別し、良好と判断した良好判別細胞と、良好と判断しなかった(不良と判別した)不良判別細胞とを得る。このような各細胞の良否判別の処理は既存の技術であり、詳細な手法は省略する。
【0028】
ここで、例えば
図2(a)に示すコロニー1aに対して、良否判別部21aが上記処理を行うと、
図3(a)に示すようなデータが得られる。なお、
図3(a)では、データを模式的に示しており、良好判別細胞10aを白べた、不良判別細胞11aに斜線を引いて示す。良否判別部21aによる処理を行うと、概ね良好判別細胞10aと不良判別細胞11aとがそれぞれ分かれた位置に現れるものの、ところどころ、良好判別細胞10aの集まりの中に不良判別細胞11aが現れ、不良判別細胞11aの集まりの中に良好判別細胞10aが現れたデータが得られる。
【0029】
図1に示す第1の除去領域設定部21bは、良否判別部21aの判別結果を用いて、コロニー1に対して良好判別細胞10a(
図3(a)参照)が占める面積の割合を求めるとともに、その割合が閾値未満か否か判断し、前記割合が閾値未満であると判断すると、そのコロニー1全体を除去領域に設定する。すなわち、第1の除去領域設定部21bは、全体又は大部分が不良判別細胞11a(
図3(a)参照)によって構成されているコロニー1全体を除去領域に設定することができる。
【0030】
第2の除去領域設定部21cは、第1の除去領域設定部21bが除去領域に設定しなかったコロニー1がある場合、後に詳述するように、良好判別細胞10aに基づき、良好な状態で継続的な培養が可能でないコロニー1を判別する処理を少なくとも行うものであり、このような培養が可能でないと判断したコロニー1全体を除去領域に設定する。良好な状態で継続的な培養が可能でないと判断されるコロニー1としては、
図2(c)に示す分化中のコロニー1が挙げられる。なお、除去領域の設定の対象とする細胞の種類によっては、良好な状態で継続培養が可能でないと判断されるコロニーの形態が変わる場合がある。
【0031】
具体的に、第2の除去領域設定部21cは、まず、複数の良好判別細胞10aが集まって形成される良好判別範囲の面積が閾値以上かどうか判断する。もし、コロニー1内に良好判別範囲が複数存在する場合、第2の除去領域設定部21cは、同一の閾値を用いて、各良好判別範囲が閾値以上かどうかそれぞれ判断する。そして、前記面積が閾値以上と判断された良好判別範囲を1つも有しないコロニー1を、良好な状態で継続的な培養が可能でないものと判断し、当該コロニー1全体を除去領域に設定する。例えば、
図3(a)に示すコロニー1aでは、最も大きい良好判別範囲10bの面積は閾値以上と判断される。そのため、最も大きい良好判別範囲10bの周囲に存在する複数の良好判別範囲10bの面積が閾値未満と判断されたとしても、コロニー1a全体としては、良好な状態で継続的な培養が可能でないものと判断されることはない。一方、
図2(c)に示す分化領域11中に複数の未分化領域10が点在するコロニー1cは、各未分化領域10があまり大きな面積で存在しないことから、全ての良好判別範囲10bの面積が閾値未満となり、良好な状態で継続的な培養が可能でないと判断され、全体が除去領域に設定される。
【0032】
また、第2の除去領域設定部21cは、面積が前記閾値以上の良好判別範囲10bに対して、膨張後に収縮させる1回目の画像処理(close操作)を行うとともに、このような画像処理を行った良好判別範囲10bに対して、収縮後に膨張させる2回目の画像処理(open操作)を行う。これら膨張および収縮の画像処理は、コロニー1の全ての輪郭に対して特定の比率で行われる。このような膨張および収縮の画像処理は既存の技術であり、詳細な手法は省略する。
【0033】
1回目の画像処理では、膨張によって良好判別範囲10bを変形させ、良好判別範囲10b内に形成された不良判別細胞11aなどからなる比較的小さい穴を埋めたり、細かい突起を無くすことができる。また、収縮によって、前述の比較的小さい穴が塞がれた状態で良好判別範囲10bをほぼ元の大きさまで戻すことができる。2回目の画像処理では、収縮によって、不良判別細胞11aなどからなる比較的大きな穴や輪郭の凹凸を強調することができる。また、膨張によって、比較的大きな穴や輪郭の凹凸が強調された状態で良好判別範囲10bをほぼ元の大きさまで戻すことができる。
【0034】
例えば
図3(b)には、1回目の画像処理で膨張させた良好判別範囲10bを実線、当該膨張前の良好判別範囲10bを二点鎖線で示しており、膨張によって、良好判別範囲10b内に形成された、不良判別細胞11aからなる面積の小さい穴が塞がれる。良否判別部21aによって得られるデータでは、前述のように、ところどころ良好判別細胞10a又は不良判別細胞11aの何れか一方の集まりの中に他方が少数現れるものの、このように局所的な現れは誤差である可能性が高く、仮に良否判別部21aが得たデータを用いて人が感覚で除去領域を設定する場合には、良好判別細胞10aの集まりの中で少数しか現れていない不良判別細胞11aは、本来、良好な細胞であるとみなされることが多い。そのため、1回目の画像処理によって、不良判別細胞11aからなる面積の小さい穴を塞いで良好判別範囲10bに組み込むことで、良否判別部21aによる判別誤差を訂正できるとともに、2回目の画像処理によって良好判別範囲10bの形状を明確にし、ひいては除去しやすい除去領域を設定することができる。
【0035】
さらに、第2の除去領域設定部21cは、後述するような良好判別範囲10bの形状に関する指標に基づいて良好判別範囲10bの形状を算出し、算出した形状が後述する所定の条件を満たすかどうか判断する(形状の解析)。そして、形状が所定の条件を満たす良好判別範囲10bを、良好な状態で継続的に培養できる可能性が高い細胞が集まった領域である良好細胞領域として設定する。良好判別範囲10bの形状に関する指標としては、例えば、良好判別範囲10b内の穴の合計面積、良好判別範囲10bの凸面度、良好判別範囲10bの真円度、良好判別範囲10bの円形度(コンパクト性)または良好判別範囲10bの丸み度(丸み)が挙げられ、これらの少なくとも何れか1つが用いられる。
【0036】
ここで、穴の合計面積は、良好判別範囲10b内において不良判別細胞11aなどで形成される穴の合計面積である。
【0037】
また、凸面度は、下記式1に基づいて求められ、良好判別範囲10bの形状が凸図形であれば値が1となり、良好判別範囲10bに凹みが存在したり、穴が存在すると、値が1未満となる。なお、下記の凸包とは、その図面を含む最小の凸図形である。
【0038】
凸面度=良好判別範囲10bの面積/良好判別範囲10bの凸包の面積・・・(式1)
【0039】
また、真円度は、下記式2に基づいて求められ、良好判別範囲10bが真円であれば値が1となり、良好判別範囲10bが長細い形状、あるいは、良好判別範囲10bに穴が存在すると値が1未満となる。
【0040】
真円度=(良好判別範囲10bの面積)/
{π×(良好判別範囲10bの中心から輪郭までの最大距離)
2}・・・(式2)
【0041】
また、円形度(コンパクト性)は、下記式3に基づいて求められ、良好判別範囲10bが真円であれば値が1となり、良好判別範囲10bに凹みや穴が存在すると値が1よりも大きくなる。
【0042】
円形度=
(良好判別範囲10bの輪郭の長さ)
2/(4π×良好判別範囲10bの面積)
・・・(式3)
【0043】
さらに、丸み値(丸み)は、下記式4に基づいて求められ、良好判別範囲10bが真円であれば値が1となり、良好判別範囲10bが長細い形状、あるいは、良好判別範囲10b内に穴が存在すると値が1未満となる。すなわち、良好判別範囲10bの重心から輪郭までの距離にばらつきがあるほど値が小さくなる。
【0044】
丸み=
1−(良好判別範囲10bの重心から輪郭までの距離の標準偏差/前記距離の平均)
・・・(式4)
【0045】
良好な状態で継続的に培養できる可能性が高い良好判別範囲10bの形状は、例えば、内部に大きな穴のない略円形状であり、本実施形態では所定の条件を、内部に大きな穴のない略円形状であることとする。そして、内部に大きな穴がない形状、或いは略円形の形状かどうか判断するための閾値を上記指標ごとに予め設定しておき、第2の除去領域設定部21cは、当該閾値に基づいて、良好判別範囲10bの形状を上記指標で算出した値が、内部に大きな穴がない形状、或いは略円形状を示す値かどうか判断することで、良好判別範囲10bの形状が所定の条件を満たすかどうか判断する。したがって、内部に穴がない略円形状の良好判別範囲10bは、算出される上記指標の値が、内部に穴がない形状、或いは略円形状を示す値となり、所定の条件を満たすと判断されるとともに、このような良好判別範囲10bを除去領域に設定しないようにする(除去の対象から外す)ために良好細胞領域に設定することができる。一方、内部に大きな穴が空いていたり、形状が歪な良好判別範囲10bは、算出される上記指標の値が、内部に大きな穴のない形状、或いは略円形状を示す値にならず、所定の条件を満たさないと判断されないことから、良好細胞領域に設定されず、後述するように除去領域に設定される。
【0046】
例えば、
図2(d)に示すような未分化領域10内に分化領域11が存在するコロニー1dの場合、上記の指標のうち、穴の合計面積、真円度や円形度などに基づくことで、良好判別範囲10bの形状が所定の条件を満たさないと判断され、コロニー1dには良好細胞領域が設定されない。また、
図2(e)に示すような歪な形状の未分化領域10を含むコロニー1eや、
図2(f)に示すような歪な形状の未分化領域10からなるコロニー1fの場合、凸面度、真円度、丸み度等に基づくことで、良好判別範囲10bの形状が所定の条件を満たさないと判断され、コロニー1e,1fには良好細胞領域が設定されない。なお、上記のような指標を用いて形状を算出する手法は、数学的な手法としては既知である。
【0047】
第3の除去領域設定部21dは、後述するように、良好細胞領域が設定されたコロニー1の一部分に除去領域を設定することができるとともに、第1の除去領域設定部21bおよび第2の除去領域設定部21cで除去領域に設定されなかったコロニー1のうち、良好細胞領域が設定されていないコロニー1全体を除去領域に設定することができる。具体的に、第3の除去領域設定部21dは、良好細胞領域を膨張させるための画像処理を行うとともに、コロニー1から当該画像処理後の良好細胞領域を除いた残りの領域である仮除去領域のうち、面積が所定値以上のものを除去領域に設定し、除去領域を膨張させるための画像処理を行う。良好細胞領域を膨張させることで、良好細胞領域内の比較的小さい穴を塞いで良好細胞領域の輪郭を滑らかにすることができるとともに、除去領域を膨張させることで、良好細胞領域を膨張させた分を補うことができる。また前述のように、このような膨張および収縮の画像処理は既存の技術である。なお、良好細胞領域が設定されていないコロニー1に対しては、良好細胞領域を膨張させるための画像処理が行われたとしても、良好細胞領域を有しないために画像データが変化することはなく、当該コロニー1全体が仮除去領域、ひいては除去領域に設定される。この場合、除去領域を膨張させる画像処理については、前述のように良好細胞領域の膨張がないことから、行われなくてもよい。
【0048】
例えば、
図3(c)に示すコロニー1aに対して上記処理を行った場合、二点鎖線で示す膨張前の良好細胞領域14は、実線で示すような範囲まで膨張される。また、同図(c)において斜線を引いた範囲が、コロニー1eから膨張後の良好細胞領域14を除いた残りの領域である仮除去領域15aとなる。また、同図(d)において二点鎖線で示す仮除去領域15a(膨張前の除去領域15)を膨張させると、斜線を引いて示すような範囲の除去領域15となる。
【0049】
このように良好細胞領域14を膨張させる画像処理を行って良好細胞領域14の輪郭を滑らかにすることで、良好細胞領域14の形状に対応する除去領域15の形状も滑らかにし、除去しやすい除去領域15を設定することができる。また、面積が所定値以上の仮除去領域15aを除去領域15に設定することも、除去しやすい除去領域15を設定することに繋がる。
【0050】
また、
図2(d)〜(f)に示すように、良好細胞領域が設定されないコロニー1d〜1fは、全体が仮除去領域15a、ひいては除去領域15に設定される。これにより、継続して培養した場合に不良に変化する可能性が高いコロニー1d〜1f全体を除去領域15に設定することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態の除去領域設定装置100は、第1の除去領域設定部21b、第2の除去領域設定部21cおよび第3の除去領域設定部21dの少なくとも何れかで除去領域15を設定することができ、混合コロニー1に対しては、主として分化領域11からなる一部分のみを除去領域15に設定し、分化中のコロニー1に対しては、全体を除去領域15に設定することができる。
【0052】
以下、
図4〜11を用いて本実施形態の除去領域設定方法について具体的に説明する。本実施形態の除去領域設定方法は、
図4に示すように、画像取込み工程SP1と、良否判別工程SP2と、第1の除去領域設定工程SP3と、第2の除去領域設定工程SP4と、第3の除去領域設定工程SP5とを有する。
【0053】
まず、画像取込み工程SP1では、コンピュータ2が、複数のiPS細胞からなるコロニー1が撮像された撮像画像を取り込み(ステップSP1)、例えば
図5に示すような撮像画像を得る。その後、
図4に示す良否判別工程SP2で、良否判別部21aが、撮像画像に現れている各細胞の良否をそれぞれ判別し、良好判別細胞10aおよび不良判別細胞11aを得る。
図5に示す撮像画像に対して良否の判別を行うと、
図6に示すように、良好判別細胞10aと不良判別細胞11aとがコロニー1中で異なる色で表示されたデータが得られる。なお、
図5では培地16上に存在するコロニー1の大まかな輪郭を二点鎖線で示し、
図6では、良好判別細胞10aを白べた、不良判別細胞11aを黒べたで示している。
【0054】
図7に示すように、第1の除去領域設定工程SP3では、第1の除去領域設定部21bが、コロニー1に対して良好判別細胞10aの占める面積の割合が閾値未満かどうか判断する(ステップSP3a)。前記割合が閾値未満と判断すると(ステップSP3a:YES)、当該コロニー1全体を除去領域15に設定し(ステップSP3b)、本フローを終了する。前記割合が閾値未満でないと判断すると(ステップSP3a:NO)、除去領域15を設定することなく本フローを終了する。
【0055】
図8に示すように、第2の除去領域設定工程SP4では、第2の除去領域設定部21cは、コロニー1において、面積が閾値以上の良好判別範囲10b(複数の良好判別細胞10aが集まって形成されるもの)があるか判断する(ステップSP4a)。このような良好判別範囲10bがない、すなわち面積が閾値以上の良好判別範囲10bを1つも有さないと判断すると(ステップSP4a:NO)、当該コロニー1が良好な状態で継続的な培養が可能でないものと判断して、当該コロニー1全体を除去領域15に設定し(ステップSP4h)、本フローを終了する。面積が閾値以上の良好判別範囲10bがあると判断すると(ステップSP4a:YES)、当該閾値以上の面積を有する良好判別範囲10bを膨張および収縮させる画像処理を行う(ステップSP4b,ステップSP4c)。その後、第2の除去領域設定部21cは、良好判別範囲10bを1つ選択し、選択した良好判別範囲10bの形状を前記指標を用いて算出するとともに(ステップSP4d)、当該形状が前記所定の条件を満たすかどうか判断する(ステップSP4e)。形状が条件を満たすと判断すると(ステップSP4e:YES)、選択した良好判別範囲10bを良好細胞領域14に設定し(ステップSP4f)、ステップSP4gに進む。一方、形状が条件を満たさないと判断すると(ステップSP4e:NO)、選択した良好判別範囲10bを良好細胞領域14に設定することなく、ステップSP4gに進む。第2の除去領域設定部21cは、ステップSP4cの処理を行った全ての良好判別範囲10bに対して、ステップSP4eの形状に関する判定を行ったかどうか判断する(ステップSP4g)。全ての良好判別範囲10bについて判定を行っていないと判断すると(ステップSP4g:NO)、ステップSP4dに戻り、その処理を繰り返す。全ての良好判別範囲10bについて判定を行ったと判断すれば(ステップSP4g:YES)、本フローを終了する。
【0056】
図5に示す撮像画像に対して第2の除去領域設定工程SP4の処理を行うと、
図6に示す良好判別範囲10bのうち面積が前記閾値以上の良好判別範囲10bが膨張し、不良判別細胞11aからなる穴が埋まることで、
図9において実線で囲んで示すような良好細胞領域14が1つだけ設定される。
図6の下部に存在する複数の良好判別範囲10bは、面積が前記閾値未満であることから、良好細胞領域14として設定されない。
【0057】
図10に示すように、第3の除去領域設定工程SP5では、第3の除去領域設定部21dが良好細胞領域14を膨張するための画像処理を行うとともに(ステップSP5a)、所定の面積以上の仮除去領域15aを除去領域15に設定する(ステップSP5b)。その後、除去領域15を膨張させる画像処理を行い(ステップSP5c)、本フローを終了する。
図5に示す撮像画像に対して第3の除去領域設定工程SP5の処理を行うと、
図11において黒べたで示すような除去領域15が設定され、コロニー1の左下の部分のみが除去領域15に設定される。
【0058】
以上のように本実施形態の除去領域設定方法は、複数の細胞からなるコロニー1が撮像された撮像画像に基づき、コロニー1の少なくとも一部を培地16から除去すべき除去領域15として設定可能であり、撮像画像を取り込む画像取込み工程SP1と、撮像画像に現れている各細胞の良否をそれぞれ判別し、良好判別細胞10aを得る良否判別工程SP2と、コロニー1に対して良好判別細胞10aが占める面積の割合を求め、当該割合が閾値未満と判断したコロニー1全体を除去領域15に設定する第1の除去領域設定工程SP3と、良好判別細胞10aに基づいて、良好な状態で継続的な培養が可能でないコロニー1を判別し、当該コロニー1全体を除去領域15に設定する処理を少なくとも含む第2の除去領域設定工程SP4と、第1の除去領域設定工程SP3および第2の除去領域設定工程SP4で除去領域15に設定されなかったコロニー1の一部分を除去領域15として設定可能な第3の除去領域設定工程SP5とを有する。
【0059】
このような構成であると、画像取込み工程SP1で取得した前記撮像画像に基づいて、良否判別工程SP2で各細胞の良否を判別し、第1の除去領域設定工程SP3において、良好判別細胞10aが占める面積の割合が閾値未満と判断され、略全体が不良と判別された細胞からなるコロニー1全体を除去領域15に設定することができる。また、第2の除去領域設定工程SP4では、良好な状態での継続的な培養が可能でないと判断されたコロニー1全体を除去領域15に設定できるので、良好判別細胞10aの占める面積の割合が閾値よりも多いものの、培養を継続した場合に不良に変化(分化や癌化)する可能性が高い未分化細胞を含むコロニー1全体を除去領域15に設定することができる。さらに、第3の除去領域設定工程SP5では、第1の除去領域設定工程SP3および第2の除去領域設定工程SP4で除去領域15に設定されなかったコロニー1の一部分に除去領域15を設定できるので、分化した部分を除去することで、良好な状態で継続的に培養できる可能性が高い未分化細胞を培地16に残すことができる。したがって、除去領域15に設定する範囲を抑えつつ、培養を継続した場合に不良に変化する可能性が高い細胞を含むコロニー1全体を除去領域15に設定することができるので、未分化細胞が過度に除去されることを避けることができるとともに、同一のコロニー1に対して再度の除去操作が必要となる状態になりにくくして、細胞の培養中に悪化した細胞が発生する度に当該細胞を除去する場合よりも除去操作の回数を少なく抑えることが可能となる。
【0060】
加えて、第2の除去領域設定工程SP4では、複数の良好判別細胞10aが集まって形成される良好判別範囲10bの面積が閾値以上か否か判断し、面積が閾値以上と判断された良好判別範囲10bを1つも有さないコロニー1を、良好な状態で継続的な培養が可能でないと判断して、当該コロニー1全体を除去領域15に設定する一方、面積が閾値以上と判断された良好判別範囲10bを膨張及び収縮させるための画像処理を行って、当該画像処理後の良好判別範囲10bのうち少なくとも一部、具体的には形状が前記所定の条件を満たす良好判別範囲10bを良好細胞領域14に設定可能とし、第3の除去領域設定工程SP5では、良好細胞領域14に基づいて除去領域15を設定するように構成している。
【0061】
良好判別範囲10bとして面積が閾値未満のもののみを含むコロニー1は、
図2(c)に示すように分化領域11中に未分化領域10が点在するコロニー1cである可能性が高く、悪化した細胞の集まりに未分化細胞が混在するコロニー1全体を除去対象とすることができる。また、面積が閾値以上と判断された良好判別範囲10bを膨張させる画像処理を行うことで、良否判別工程SP2で不良判別細胞11aと判断されたものの、本来未分化細胞である可能性が高い細胞を、良好判別範囲10bに組み込み、人の感覚で判断した場合と同じような範囲に除去領域15を設定できる。さらに、良好判別範囲10bを収縮することで、良好判別範囲10b内での穴や、良好判別範囲10bの輪郭の凹凸を強調でき、第3の除去領域設定工程SP5で、除去しやすく除去操作に時間が掛かりにくい除去領域15を設定することができる。
【0062】
とりわけ、第2の除去領域設定工程SP4では、上述したような除去領域15の設定に加えて、良好判別範囲10bの穴の合計面積、良好判別範囲10bの凸面度、良好判別範囲10bの真円度、良好判別範囲10bの円形度または良好判別範囲10bの丸み度の少なくとも何れか1つを利用して良好判別範囲10bの形状を算出し、算出した良好判別範囲10bの形状が前記所定の条件を満たすか否か判断して、前記所定の条件を満たす良好判別範囲10bを良好細胞領域14に設定する。
【0063】
良好な状態で継続培養が可能な良好判別範囲10bは内部に大きな穴のない略円形状をしているので、良好判別範囲10bの形状に関する上記指標に基づくことで、不良判別細胞11aからなる大きな穴が内部に形成された良好判別範囲10b(
図2(d)のコロニー1dに対応)や、歪な形状の良好判別範囲10b(
図2(e),(f)のコロニー1e,1fに対応)など、継続して培養した場合に意図せず分化する可能性が高い良好判別範囲10bを容易に判別することができ、凹凸や穴が少なく比較的丸い形状の良好判別範囲10bのみを除去対象から外すことができる。
【0064】
特に、第3の除去領域設定工程SP5では、良好細胞領域14を膨張させるための画像処理を行い、良好細胞領域14を膨張させたコロニー1に対して、当該良好細胞領域14をコロニー1から除いた残りの領域としての仮除去領域15aの少なくとも一部を除去領域15に設定し、当該除去領域15を膨張させるための画像処理を行うことから、良好細胞領域14とその周辺が除去領域15に含まれないようにできるとともに、除去領域15の輪郭に細かい凹凸がなく、除去しやすい除去領域15を設定することができる。このように一部にまとまった範囲で除去領域15を設定することで、除去操作を単純にでき、除去領域15の除去に掛かる時間を短縮することができる。
【0065】
一方、本実施形態の除去領域設定装置100は、複数の細胞からなるコロニー1を撮像する撮像手段3と、前述の除去領域設定方法を実行する除去領域設定手段としてのコンピュータ2とを備えることから、除去領域15に設定する範囲を少なく抑えつつ、培養を継続した場合に不良に変化する可能性が高いコロニー1全体を除去領域15に設定できる装置を実現することができ、同一のコロニー1に対して再度の除去操作を行うことを抑制し、除去操作の回数の増加を抑制することができる。
【0066】
さらに、本実施形態のプログラムは、コンピュータ2に呼び込まれることによって、複数の細胞からなるコロニー1が撮像された撮像画像に基づき、コロニー1の少なくとも一部を培地16から除去すべき除去領域15として設定するための除去領域設定装置100としてコンピュータ2を動作させるものであり、撮像画像を取り込む画像取込ステップと、撮像画像に現れている各細胞の良否をそれぞれ判別し、良好判別細胞10aを得る良否判別ステップと、コロニー1に対して良好判別細胞10aが占める面積の割合を求め、当該割合が閾値未満と判断したコロニー1全体を除去領域15に設定する第1の除去領域設定ステップと、良好判別細胞10aに基づいて、良好な状態で継続的な培養が可能でないコロニー1を判別し、当該コロニー1全体を除去領域15に設定する処理を少なくとも含む第2の除去領域設定ステップと、第1の除去領域設定ステップおよび第2の除去領域設定ステップで除去領域15に設定されなかったコロニー1の一部分に除去領域15を設定可能な第3の除去領域設定ステップとをコンピュータ2に実行させるものである。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0068】
例えば、本実施形態は、iPS細胞からなるコロニー1に対して除去領域15を設定するものであるが、他の種類の細胞からなるコロニー1に対して除去領域15を設定するものであってもよい。
【0069】
また、
図10に示す第3の除去領域設定工程SP5の代わりに、
図12に示す第3の除去領域設定工程SP5Aが行われてもよい。第3の除去領域設定工程SP5Aでは、第3の除去領域設定部21dが、コロニー1から良好細胞領域14を除いた残りの領域を仮除去領域15aに設定し、仮除去領域15aのうち所定の面積以上のものを除去領域15に設定する(ステップSP5Aa)。その後、除去領域15を膨張させるための画像処理を行い(ステップSP5Ab)、除去領域15内の穴を埋めるとともに、除去領域15を収縮させるための画像処理を行うことで(ステップSP5Ac)、穴を塞いだまま、膨張させた分をほぼ元に戻すことができる。なお、良好細胞領域が設定されていないコロニー1に対しては、当該コロニー1全体が仮除去領域15a、ひいては除去領域15に設定された後、当該除去領域15を膨張および収縮させる画像処理が行われる。
【0070】
このように、コロニー1から前記良好細胞領域14を除いた残りの領域としての仮除去領域15aの少なくとも一部を除去領域15に設定し、当該除去領域15を膨張および収縮させるための画像処理を行う第3の除去領域設定工程SP5Aは、除去領域15となる不良領域の間に比較的面積の大きい良好細胞領域14が存在する場合、当該良好細胞領域14を除去領域15に含めることができ、
図10に示す第3の除去領域設定工程SP5に比べて、除去を優先した制御を行うことができる。換言すると、
図10に示す第3の除去領域設定工程SP5は、
図12に示す第3の除去領域設定工程SP5Aと比べて、細胞を培地16上からできるだけ残すことを優先した処理を行うことができ、同一の撮像画像を用いた場合に除去領域15を狭く抑えることができる。
【0071】
具体的に、
図10に示す第3の除去領域設定工程SP5で、例えば、
図13に黒べたで示すような互いに離間した2つの除去領域15が設定されるとすると、
図12に示す第3の除去領域設定工程SP5Aでは、
図13に示す2つの除去領域15の間に存在する面積の大きい良好細胞領域14をも除去領域15に含み、
図14に示すような除去領域15を設定することができる。
【0072】
このように、第3の除去領域設定工程では、コロニー1から良好細胞領域14を除いた残りの領域としての仮除去領域15aを膨張および収縮する画像処理を行って除去領域15を設定した場合でも、除去領域15の輪郭に細かい凹凸がなく、除去しやすい除去領域15を設定することができる。
【0073】
また、除去領域設定方法での工程順は
図4に示すものに限定されず、例えば第1の除去領域設定工程SP3の前に第2の除去領域設定工程SP4が行われてもよい。さらに、他の工程を含んでいてもよい。またさらに、第2の除去領域設定工程SP4において、ステップSP4a〜4c及び4hの制御のみが行われ、ステップSP4d〜4gの制御が行われない構成であってもよい。この場合、ステップSP4b,SP4cで膨張および収縮の画像処理が行われた良好判別範囲10bの全てが、良好細胞領域14に設定される。
【0074】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。