【課題】着用者に不快感を与えない、すっきりとした外観を得ることができると共に、加齢などにより握力の低下した人でも容易に着脱を行うことができるパンツ型吸収性物品を提供する。
【解決手段】パンツ型吸収性物品は、吸収部材を含む内装体と、上記内装体が固着された表面を有し、ウエスト開口部が定義された外装体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、上記外装体は、ウエスト開口部周りの少なくとも一部が、伸縮性フィルムと第1の不織ウェブとが積層された伸縮シートで形成されており、上記外装体は、上記表面側に折り返された折返部を上記ウエスト開口部周りに備え、上記折返部には弾性伸縮部材が配置されていることを特徴とする。
前記伸縮シートは、さらに、第2の不織ウェブを有し、前記伸縮性フィルムは、前記第1の不織ウェブと前記第2の不織ウェブとに挟持されていることを特徴とする請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
前記折返部は、複数の伸縮シート層を含み、前記複数の伸縮シート層が相互に接合された第1の接合部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
前記第1の接合部は、前記パンツ型吸収性物品の短手方向の長さが2mm以上10mm以下となり、前記パンツ型吸収性物品の長手方向の長さが10mm以上30mm以下となるように設けられ、
前記第1の接合部と前記第2の接合部との離間距離は20mm以上100mm以下となるように設けられることを特徴とする請求項5記載のパンツ型吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
パンツ型吸収性物品は、着脱がしやすく、着用者の身体へのフィット性が高くなるように、使用者の腹回りの部位や脚周りの部位等に、ギャザーが付設されることが多い。これらのギャザーは、例えば、
図6に示すように、パンツ型吸収性物品100の腹側領域および背側領域の広範囲に亘って、弾性部材の糸ゴム110を伸長状態で不織ウェブに接着した部材を準備し、パンツ型吸収性物品100に接着することにより、形成することができる。これにより、パンツ型吸収性物品100の伸縮特性が向上し、着用者の身体へのフィット性を高め、さらには、尿や血液等の体液がパンツ型吸収性物品100の外部に漏れ出ることも防止することとなる。
【0003】
パンツ型吸収性物品として、例えば、特許文献1には、ウエスト開口部及び一対の該レッグ開口部それぞれの周縁部に、各周縁部の略全周にわたって連続したギャザーを形成する弾性部材を備え、ウエスト開口部の周縁部及びレッグ開口部の周縁部における、腹側部の側縁部と背側部の側縁部との溶着接合部は、溶着接合部の長さ1cm以上が、溶着接合部の幅方向における略中央部に非溶着部を有する間歇接合部とし、良好な装着感や風合いを保持しながら良好なフィット性を目指したものが開示されている。
【0004】
しかしながら、このような従来の吸収性物品は、その嵩高く特徴的な外観によって、着用者に布製下着とは異なった違和感及び着用時の不快感を与えるものであった。また、着用時のフィット性のさらなる向上を目的とした場合、糸ゴムの本数を増やしたギャザーを使用することが多く、その場合、糸ゴムを増やすために不織ウェブと接着する為の接着剤も多量に必要となり、結果として、質感が硬く、肌触りの悪いものとなってしまっていた。また、着用時のフィット性を維持しつつ、着脱し易くするためには、パンツ型吸収性物品は、適応するウエストサイズ以上に伸縮可能であることが重要である。従来のパンツ型吸収性物品では、腹回りの部位を200%程度伸張させると、その素材が破れてしまい、これ以上に伸縮率を大きくするためには、より多くの糸ゴムが必要となり、やはり、肌触りの悪化を引き起こしていた。さらに、積層した不織ウェブは、糸ゴムの配設方向に伸張するだけでなく、糸ゴムの配設方向以外の方向にもわずかではあるが伸張するため、指先が腹回りの部位に纏わりついて、着脱しにくいことがあった。さらに、従来のパンツ型吸収性物品は、構造上ウエスト周りが滑りやすく、着脱時に指で把持しにくいため、加齢などにより握力の低下した人にとって着脱を容易に行うことができないという問題点があった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1ないし
図4を参照して、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品およびその製造方法について詳細に説明する。なお、本実施形態の説明は、全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
図1は、本実施形態に係るパンツ型吸収性物品1を示す概略図であり、
図2(a)〜(d)は、
図1におけるX−X’断面の断面図を用いて、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1の製造方法を説明する工程図であり、
図3は、
図1の一点鎖線部で囲まれた矩形領域における部分拡大図であり、
図4は、
図3の一点鎖線部で囲まれた矩形領域における部分拡大図である。
【0011】
本明細書の説明において、パンツ型吸収性物品1の長手方向は、パンツ型吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、パンツ型吸収性物品1の短手方向は、長手方向に対して横切り又は直交する方向を意味する。また、本明細書の説明において、体液とは、尿、血液や軟便中の水分などの体内から体外に排出された液体をいう。さらにまた、本明細書の説明において、パンツ型吸収性物品1の内側とは、その肌当接面側であって、
図1から
図3中のA側をいい、パンツ型吸収性物品1の外側とは、その非肌当接面側をいい、
図1から
図3中のB側をいう。そして、パンツ型吸収性物品1の着用時とは、パンツ型吸収性物品1の着用している間をいう。本実施形態のパンツ型吸収性物品1は、例えば、使い捨ておむつ、小児用トレーニングパンツ、失禁用物品、女性の生理用物品として用いることができる。また、不織ウェブとは、繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものを意味する。
【0012】
まず、本発明におけるパンツ型吸収性物品1の一実施形態について、
図1から
図4を用いて説明する。
図1から
図4に示すように、パンツ型吸収性物品1は、ウエスト開口部Wが定義された外装体10と、肌当接面側において外装体10の表面に固着された内装体20とを備える。そして、パンツ型吸収性物品1には、着用者の腹部に位置する腹側領域31、着用者の背部に位置する背側領域32、腹側領域31と背側領域32とを相互に結合する股部領域33とが定義される。
【0013】
(内装体)
本実施形態の内装体20は、少なくとも吸収部材を備え、体液を吸収するために配置される。内装体20は、肌当接面側に配置された液透過性のトップシートと、トップシートに対向して配置された非肌当接面側の液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収部材とを備える。これにより、吸収部材は、トップシートとバックシートとの間に挟まれた構造となっている。内装体20は、少なくとも股部領域33上において、外装体10の内側に配置されており、ホットメルト等の接着剤、熱融着、あるいは超音波接着等により、外装体10の表面に固着されている。内装体20は、腹側領域31から背側領域32にかけて、設けられていてもよい。
【0014】
本実施形態のトップシートの基材は、体液が吸収部材へと移動するように液透過性を備えていればよく、例えば、サーマルボンド不織ウェブ等の不織ウェブ、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織ウェブ、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシートは、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施すことが好ましい。その加工方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。また、肌への刺激を低減させるために、トップシートに、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させることも好ましい。さらに、強度および加工性の点から、トップシートの坪量は、14g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシートの形状としては、特に制限はないが、尿等の体液を吸収部材に誘導するため、吸収部材を覆う形状であればよい。
【0015】
なお、トップシートの肌当接面側には、内装体20の長手方向の両側縁部に沿って、体液の漏れを防止する立体ギャザーを設けることが好ましい。内装体20の短手方向における立体ギャザーの外端部は、バックシートに固定され、同短手方向における立体ギャザーの内端部は、長手方向前後部がトップシートに固着され、前後部間の中央部はトップシートに固定されない自由端となっており、内装体の長手方向に沿って糸ゴム等の立体ギャザー用弾性部材と不織ウェブ等のシートによって形成されることで、起立性を有し、使用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能になっている。
【0016】
本実施形態のバックシートの基材は、吸収部材が保持している体液が漏れないような液不透過性を備えたものであればよく、不織ウェブ、樹脂フィルム、あるいはこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。不織ウェブは、製法が特に限定されることはなく、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織ウェブ、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織ウェブ、及びこれらの複合材料が考えられる。また、樹脂フィルムとして、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等がある。また、装着時の蒸れを防止するために、バックシートは、透湿性を持たせることが好ましい。透湿性を備えさせるために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合することや、バックシートに穿孔のためのエンボス加工を施すことがあげられる。
【0017】
本実施形態の吸収部材の基材は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シートといった材料から形成される。フラッフパルプとして、例えば、木材パルプ及び合成繊維、ポリマー繊維等の非木材パルプを綿状に解繊したものがある。また、高吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系、親水性シートとしては、ティシュ、吸収紙、親水性不織ウェブがあげられる。
【0018】
吸収部材は、上記の基材を用いて、単層あるいは複層のシート状で構成される。これらの中でも、木材パルプフラッフのような、フラッフパルプのウェブの親水性繊維マトリックスをSAP粒子と混合して形成したものが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収部材の形状を安定させるために、吸収部材をティシュのような親水性シート(図示せず)に包むことが好ましい。さらに、吸収部材の表面にエンボス加工を施すと、体液の拡散をコントロールすると共に、使用者の体型に応じて吸収部材が容易に変形するので好ましい。
【0019】
(外装体)
パンツ型吸収性物品1は、腹側領域31と背側領域32に位置する部分を重ね合わせて、腹側領域31の側端に位置する側端部11aと背側領域32の側端に位置する側端部11bとを相互に固着することで、パンツ状に形成された外装体10を有する。これにより、外装体10には、ウエスト開口部Wが定義される。腹側領域31及び背側領域32に位置する部分は、ウエスト開口部Wの周りの少なくとも一部が、少なくとも1枚の不織ウェブ14と伸縮性フィルム15とを積層し、伸縮可能とした伸縮シート12で構成されている。伸縮シート12は、不織ウェブ14と伸縮性フィルム15とを、それぞれ2枚以上の複数枚積層したものであってもよい。不織ウェブ14と伸縮性フィルム15とは熱融着又は超音波接着などにより一体化されている。外装体10のうち、少なくとも腹側領域31及び背側領域32に位置し、ウエスト開口部Wの周りの少なくとも一部を伸縮シート12で構成することによって、パンツ型吸収性物品1に良好なフィット性を与えることができる。
【0020】
図2に示すように、本実施形態のパンツ型吸収性物品1には、ウエスト開口部Wの周りに、パンツ型吸収性物品1の内側、つまり、内装体20が固着された表面側に折り返された折返部13が設けられている。折返部13には、弾性伸縮部材19が配置され、固着されている。これにより、伸縮シート12を含む外装体10による収縮力によって、折返部13に指をかけて引き上げやすくなり、加齢などにより握力が低下した人でも容易にパンツ型吸収性物品1の着脱を行うことができる。また、本実施形態のパンツ型吸収性物品1は、パンツ型吸収性物品1の外側から弾性伸縮部材19を視認しづらくなり、外観上、布製下着に近い印象を着用者に与えることができるから、着用者のパンツ型吸収性物品1に対する違和感や抵抗感を低減することができる。
【0021】
好ましくは、
図2(c)または(d)に示すように、伸縮シート12は、少なくとも第1の不織ウェブ14及び第2の不織ウェブ16と、第1の不織ウェブ14と第2の不織ウェブ16との間に挟持された伸縮性フィルム15と、を複合一体化した伸縮シート12である。そして、このような不織ウェブ14/伸縮性フィルム15/不織ウェブ16の積層構造を有する伸縮シート12は、各層が熱融着又は超音波接着などにより複合一体化されており、ホットメルトタイプ等の接着剤を使用せずに複合一体化されていることが好ましい。これによって、伸縮性フィルム15を不織ウェブ14、16が覆い、糸ゴムおよび接着剤を低減することで、風合いを良好としたパンツ型吸収性物品を得ることができる。なお、伸縮性フィルム15は、不織ウェブ14、16によって、その全面が覆われていてもよい。そして、折返部13は、
図2(c)に示すように、一重に折り返されて、一重折返部13aと一重折返部13a以外の外装体10の部分とによって、弾性伸縮部材19が挟持されるものであってもよいし、
図2(d)に示すように、二重に折り返されて、二重折返部13bと二重折返部13b以外の外装体10の部分とによって、弾性伸縮部材19が挟持されるものであってもよい。
【0022】
パンツ型吸収性物品1の側端部11は、腹側領域31の側端に位置する側端部11aと背側領域32の側端に位置する側端部11bとが、エンボス加工などにより相互に固着されている。側端部11は、着用者からパンツ型吸収性物品1を除去しやすいように、破断可能に形成されていてもよい。
【0023】
次に、本実施形態のパンツ型吸収性物品1を製造する方法の一例を、
図2(a)〜(d)を用いて説明する。まず、
図2(a)に示すように、第2の不織ウェブ16および伸縮性フィルム15の少なくともいずれか一方の上縁端部を超えて延びる延出部14aを有する第1の不織ウェブ14と、を有する伸縮シート12を含むものを供する。この伸縮シート12を含むものは、例えば、展開したパンツ形状にカットされた伸縮シート12と、伸縮シート12の肌当接面側に固着された内装体20とを有する。または、この伸縮シート12を含むものは、展開したパンツ形状にカットされた伸縮シート12の腹側領域31と背側領域32に相当する部分を重ね合わせて、腹側領域31の側端に位置する側端部11aと背側領域32の側端に位置する11bとを相互に固着したものであってもよい。
【0024】
次に、
図2(b)に示すように、伸縮シート12の第2の不織ウェブ16の表面に、糸ゴムなどの弾性伸縮部材19を固着する。弾性伸縮部材19は、熱溶着、超音波接着、接着剤を用いた接着などによって、第2の不織ウェブ16の表面に固着することができる。弾性伸縮部材19は、伸長状態で、伸縮シート12に固着することで、外装体10のウエスト周りとなる部分の全周または一部に配される。
【0025】
そして、
図2(c)に示すとおり、弾性伸縮部材19を覆うように、第1の不織ウェブ14の延出部14aをパンツ型吸収性物品1の内側となる方向、つまり、外装体10の内装体20が固着された表面側に折り返すことで、折返部13として一重折返部13aを形成する。弾性伸縮部材19は、延出部14aと第2の不織ウェブ16との間に挟みこまれて固着される。これにより、延出部14aの少なくとも一部を含む折返部13は、第2の不織ウェブの上縁端部が延出部14aに覆われるように形成される。このような工程を含むことによって、パンツ型吸収性物品1を形成する。
【0026】
さらに、
図2(d)に示すように、一重折返部13aを覆うように、外装体10の端部をパンツ型吸収性物品1の内側となる方向に折り返して、折返部13として二重折返部13bを形成することで、パンツ型吸収性物品1を形成してもよい。この折返部13は、三重、四重などの任意の複数折返部とすることもできる。
【0027】
上記製造方法では、延出部14aを有する第1の不織ウェブ14を用いて、説明をしたが、延出部14aを有さない第1の不織ウェブ14を用いてもよく、この場合には、延出部14aの代わりに第1の不織ウェブ14の上縁部を折り返して、一重折返部13aを形成することで実現可能である。
【0028】
これによって、本実施形態のパンツ型吸収性物品1は、ウエスト開口部Wにおいてその内側に折返部13が設けられているから、伸縮シート12を含む外装体10による収縮力によって、折返部13に指をかけてパンツ型吸収性物品1を引き上げやすく、加齢などにより握力が低下した人でも容易に装着をすることができる。そして、本実施形態のパンツ型吸収性物品1は、折返部13において、伸縮シート12と弾性伸縮部材19との二重のサポートが得られるから、ウエスト周りのフィット性が向上すると共に、それ以外の領域においては、弾性伸縮部材19やその固定用の接着剤が設けられないことで肌触りを良好にすることができる。
【0029】
さらに、折返部13の上部13cに弾性伸縮部材19を設けた配置領域と、折返部13の下部13dには弾性伸縮部材19を設けない非配置領域と、を配設することによって、折返部13の下縁部18をフレア状としてもよい。これによって、さらに、折返部13に指をかけてパンツ型吸収性物品1を引き上げやすくすることができる。
【0030】
図3は、
図1の一点鎖線部で囲まれた矩形領域における部分拡大図である。これに示すように、パンツ型吸収性物品1は、折返部13の形成領域において、折返部13を構成する複数層の伸縮シート12(複数の伸縮シート層)が接合されて一体化された接合部17を有することが好ましい。接合部17は、折返部13を形成した後に、接合部形成領域を熱溶着、超音波接合および接着剤による接着のいずれか、または、これらの組合せによって形成することができるが、パンツ型吸収性物品1の肌触りを良好とするためには接着剤を用いない熱溶着または超音波接合による接合方法を採用することが好ましい。
図3に示すように、接合部17は、外形が細長楕円形状、円形状、細長矩形状などのいずれの形状となるように設けられてもよい。
【0031】
図4は、
図3に示す本実施形態のパンツ型吸収性物品1の一点鎖線部を、さらに拡大した拡大図である。
図4に示すように、吸収性物品1の長手方向における接合部17の長さL1は10mm以上30mm以下であって、吸収性物品1の短手方向における接合部17の長さL2は2mm以上10mm以下となるように設けられることが好ましい。
【0032】
そして、隣り合った接合部17間は、間隔Dだけ離間して、間欠的に設けられている。隣り合った接合部17、第1の接合部17aと第2の接合部17bとの離間距離Dは、20mm以上100mm以下であることが好ましい。なお、上記接合部17の長さL1、L2および接合部17間の離間距離Dは、それぞれのうちの最大長または最大間隔をいうものとする。そして、第1の接合部17aと第2の接合部17bとの離間距離Dは、第1の接合部17aの中央から第2の接合部17bの中央までの間隔をいう。
【0033】
股部領域33に位置する外装体10は、腹側領域31及び背側領域32に位置する部分と同様に伸縮シート12で構成してもよいし、不織ウェブなどの非伸縮性シートを用いて構成してもよいし、腹側領域31及び背側領域32に位置する部分と同様に伸縮シート12で構成してもよい。
【0034】
本実施形態の伸縮シート12を構成する不織ウェブ14としては、製法は特に限定されず、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織ウェブ、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織ウェブ、及びこれらの複合材料が例示される。また、伸縮性フィルム15は、伸縮性を備えたものであればよく、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂等から形成されたフィルムがあげられる。なかでも、コスト及び伸縮性能の観点から、ポリウレタン系樹脂フィルムが好ましい。
【0035】
弾性伸縮部材19は、弾性伸縮部材19を伸張した状態で伸縮シート12に固着することで、外装体10を含むパンツ型吸収性物品1を着用者のウエストに対して引っ張って保持するように構成されたものである。弾性伸縮部材19は、糸状、ストリップ状、ウエストベルト状などの如何なる形状でもよいが、細長形状を有し、パンツ型吸収性物品の長手方向よりも短手方向に略沿って細長く配置され、パンツ型吸収性物品の伸縮特性を制御するものである。弾性伸縮部材19としては、例えば、単数または複数の糸ゴム、不織ウェブに糸ゴムが固着されたウエストベルト、エラストマーフィルム、弾性発泡材、エラストマー布などの任意の弾性収縮材料を用いることができる。
【0036】
伸縮シート12は、非伸縮状態において、20cm
3/cm
2・秒以上のJIS L 1096−A(フラジール法):1990に基づいて測定される通気度を有する。通気度が20cm
3/cm
2・秒未満であると、着用時に蒸れ易くなる。通気度は、伸縮シート12を構成する不織ウェブ14の繊維や糸の太さ、織り密度、単位面積当たりの重さや、伸縮シート12に設けられた開口部の開口面積率等により、自由に変えることができる。
【0037】
また、伸縮シート12は、伸縮方向に150%伸長したときに、50cm
3/cm
2・秒以上のJIS L 1096−A(フラジール法):1990に基づいて測定される通気度を有する。ここで、伸縮方向に150%伸長したとは、非伸縮状態の伸縮シート12の自然長L1に対する、特定の方向(伸縮方向)に伸縮シート12を伸長して伸長状態としたときの長さL2の伸長率を示すものであって、伸長率=L2/L1×100[%]で計算されたものである。すなわち、例えば、非伸縮状態の自然長10cmの伸縮シート12を伸長方向に伸長させて15cmとした場合、伸縮方向に150%(=15/10×100)伸長したものとなる。通気度が50cm
3/cm
2・秒未満であると、伸長された状態で使用する部位、例えば、おしり周りの部位に対して、着用時に蒸れ易くなる。
【0038】
伸縮シート12は、パンツ型吸収性物品1の長手方向および短手方向の二軸方向の両方において伸縮特性を有するものであることが好ましい。そして、伸縮シート12は、パンツ型吸収性物品1の短手方向の伸縮性は、パンツ型吸収性物品1の長手方向の伸縮性よりも大きいことが好ましい。
【0039】
パンツ型吸収性物品1には、腹側領域31から股部領域33を経て背側領域32に渡って、左右一対のレッグギャザーを設けることもできる。レッグギャザーは、例えば、糸ゴムなどの弾性部材と不織ウェブ等のシートによって形成される。レッグギャザーを設けることにより、股下周りの部位におけるフィット感が向上する。
【0040】
伸縮性フィルム15には複数の開口部が形成されていてもよい。これらの複数の開口部は、パンツ型吸収性物品1の外装体10における通気性を向上し、かつ、伸縮性フィルム15の開口による耐久性の低下を緩和するために、平面視において千鳥状に配置されていてもよい。また、これらの複数の開口部の形状は特に限定されず、例えば、長方形、楕円形、ひし形等であってもよい。
【0041】
次に、
図5を参照して、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品1に使用される伸縮シート12の形成方法を説明する。ここでは、伸縮シート12の連続体を長手方向に搬送しながら、形成する方法について説明する。まず、
図5(a)に示すように、第1工程として、伸縮性フィルム15となる連続体を回転ローラ51から給送し、伸縮性フィルム15となる連続体に所定の張力をかけて上下に伸張する。所定の張力とは、伸縮性フィルム15を200%以上、より好ましくは250±30%伸張した状態をいう。そして、第2工程では、回転ローラ52aから供給された不織ウェブ14となる連続体及び回転ローラ52bから供給された不織ウェブ16となる連続体を、伸張した状態の伸縮性フィルム15となる連続体の上下に積層する。次に、第3工程では、積層された伸縮性フィルム15と不織ウェブ14と不織ウェブ16となる連続体を伸縮方向と直行する縦方向に実質的に連続したシール線を、伸縮方向に対して0.5mm以上2.0mm以下の間隔で全領域にわたって熱融着又は超音波接着することによって形成し、伸縮性フィルム15と不織ウェブ14と不織ウェブ16となる連続体を固着することで、伸縮シート12を形成する。具体的に、
図5(b)に示すように、積層された伸縮性フィルム15と不織ウェブ14と不織ウェブ16とを接合ローラ53と他方の接合ローラ54で狭圧し、接合ローラ53の先端の端部55と、他方の接合ローラ54の側面56との接点を熱融着又は超音波接着によって、シール線を形成する。このように、シール線を所定の間隔に形成し、不織ウェブ14と伸縮性フィルム15と不織ウェブ16とを一体化することによって、外装体10の表面のシワが緩和され、滑らかな肌触りとすることができる。
【0042】
伸縮シート12は、腹側領域31の少なくとも非肌当接面側において、600μm以上、1200μm以下の算術平均粗さRaと、60μm以上、250μm以下の粗さ曲線の最大断面高さRtと、600μm以上、8500μm以下の粗さ曲線要素の平均長さRSmと、を有することが好ましい。また、伸縮シート12は、伸縮方向に150%伸長したときに、400μm以上、1000μm以下の算術平均粗さRaと、50μm以上、200μm以下の粗さ曲線の最大断面高さRtと、を有することが好ましい。算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2001)に準拠されるものであり、上記範囲にすることにより、平坦になりすぎず、表面が滑らかで、意匠性が良好となる。また、粗さ曲線の最大断面高さRtは、JIS B 0601(2001)に準拠されるものであり、上記範囲にすることにより、適度な摩擦力を有する表面となる。さらに、粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS B 0601(2001)に準拠されるものであり、上記範囲にすることにより、高級感のある触感を得ることができる。よって、パンツ型吸収性物品1の表面は、下着により近い外観を得ることができる。また、伸縮方向に150%伸長したときに、算術平均粗さRaと粗さ曲線の最大断面高さRtを上記範囲とすることで、パンツ型吸収性物品1を脱着する際に、指触りの良さを与えることができる。算術平均粗さRa、粗さ曲線の最大断面高さRt及び粗さ曲線要素の平均長さRSmは、例えば、(株)KEYENCE社製のワンショット3D測定マクロスコープ(商品名:VR−3100)を用いて測定することができる。
【0043】
伸縮シート12は、伸縮方向に120%伸長したときに、0.8N/50mm以上2.0N/50mm以下の伸長荷重を有し、かつ、伸縮方向に150%伸長したときに、2.0N/50mm以上3.5N/50mm以下の伸長荷重を有することが好ましい。なお、着用者の体型によって、伸長率が変化するため、120%及び150%の伸張荷重を規定した。このようにすることで、体型によってフィット感の差異が生じない。また、伸縮シート12は、伸縮方向と交差する方向に3.0N/50mmの荷重を施したときに、30%以下の伸び率を有することが好ましい。このようにすることで、配設方向以外の方向には伸張しないため、パンツ型吸収性物品1の着脱がし易くなる。また、伸縮シート12は、200%以上270%以下の伸縮方向の伸び率を有する。このため、従来と比較して200%以上の伸張が可能となったため、着用者にとって、はき易く、かつ脱ぎ易いパンツ型吸収性物品1が提供できる。ここで、伸縮方向の伸び率とは、伸縮方向に120%伸長したときと同様、非伸縮状態の自然長に対する、伸長した長さの割合である。伸長荷重は、例えば、島津製作所製のオートグラフを用いて測定することができる。
【0044】
また、伸縮シート12は、伸縮方向に210%以上280%以下の破断伸度を有することが好ましい。ここで、破断伸度とは、非伸縮状態の自然長にある伸縮シート12の元の長さをL1とし、伸長したときの長さをL2としたとき、特定の方向(伸縮方向)に伸縮シート12を伸長して破断させたときの伸長率(L2/L1×100)をいう。この範囲に破断伸度を有することにより、着脱の際にパンツを大きく広げても突っ張ったり破れたりしにくくなるという効果が生じる。破断伸度は、例えば、島津製作所製のオートグラフを用いて測定することができる。
【0045】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。