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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-154703(P2016-154703A)
(43)【公開日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】洗濯機用モータユニット
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/40 20060101AFI20160805BHJP
【FI】
   D06F37/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-34684(P2015-34684)
(22)【出願日】2015年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】林 勝彦
【テーマコード(参考)】
3B155
【Fターム(参考)】
3B155BB05
3B155BB18
3B155CA06
3B155CA16
3B155CB06
3B155HB02
3B155HB03
3B155HB10
3B155HB19
3B155HB25
3B155HB27
3B155HB28
3B155HB29
3B155HB30
3B155MA01
3B155MA02
(57)【要約】
【課題】簡易な構造により狭小な配置スペースにも配置可能なクラッチ機構を内部に収容した洗濯機用モータユニットを提供する。
【解決手段】円筒状のロータおよびステータを有する第一のモータと、前記第一のモータから洗濯機の回転槽への駆動力の伝達を継断するクラッチ機構と、を備え、前記クラッチ機構が、前記ロータおよびステータの内側に配置されていることを特徴とする洗濯機用モータユニットにより解決する。また、クラッチ機構の備える第二のモータをステッピングモータとし、さらにクラッチ機構の備える減速輪列を周方向に並べることによりクラッチ機構を小型化し、第一のモータの内部への配置に好適化する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のロータおよびステータを有する第一のモータと、
前記第一のモータから洗濯機の回転槽への駆動力の伝達を継断するクラッチ機構と、を備え、
前記クラッチ機構は、前記ロータおよびステータの内側に配置されていることを特徴とする洗濯機用モータユニット。
【請求項2】
前記第一のモータは、該第一のモータにより回転駆動される第一の回転体を備え、
前記クラッチ機構は、
前記第一の回転体と同軸上に配置され、該第一の回転体と係合可能な第二の回転体と、
前記第二の回転体を軸方向に変位させ、該第二の回転体と前記第一の回転体との係合・離間を切り替えるリフト機構と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機用モータユニット。
【請求項3】
前記リフト機構は、
前記第二の回転体を回転可能に支持するフレーム部材と、
前記フレーム部材を回動させるフレーム回動機構と、
前記フレーム部材の回動方向に応じて、該フレーム部材を軸方向に変位させるカム機構と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の洗濯機用モータユニット。
【請求項4】
前記フレーム回動機構は、
両方向に回転可能な第二のモータと、
前記第二のモータの駆動力を前記フレーム部材に伝達する減速輪列と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の洗濯機用モータユニット。
【請求項5】
前記第二のモータはステッピングモータであることを特徴とする請求項4に記載の洗濯機用モータユニット。
【請求項6】
前記減速輪列を構成する各歯車は、前記フレーム部材の外周に沿って周方向に並べられることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の洗濯機用モータユニット。
【請求項7】
前記第一の回転体の回転中心には、該第一の回転体と一体に回転する回転軸が立設され、
前記回転軸は、外周面にスプライン部が形成された筒状軸に挿通され、
前記回転軸の先端部は前記筒状軸から露出し、
前記第二の回転体は、前記スプライン部に嵌合されることにより、該スプライン部の軸方向に摺動可能であり、かつ、該筒状軸と周方向に一体に回転し、
前記第一の回転体と前記第二の回転体の係合時には、前記第一のモータの駆動力により前記回転軸および前記筒状軸が回転し、
前記第一の回転体と前記第二の回転体の離間時には、前記第一のモータの駆動力により前記回転軸のみが回転することを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の洗濯機用モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗濯機用モータユニットに関し、さらに詳しくは、モータから回転槽への駆動力の伝達を継断するクラッチ機構を備える洗濯機用モータユニットの小型化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1および2には、モータから回転槽への駆動力の伝達を継断するクラッチ機構を備えた洗濯機用モータユニットが開示されている。
【0003】
特許文献1のクラッチアセンブリ300は、クラッチカプラ310をクラッチレバー320により昇降させ、クラッチカプラ310をロータアセンブリ250のセレーション254と係合・離間させることにより、駆動モータ200から内槽30への駆動力の伝達を継断する。クラッチカプラ310はクラッチレバー320の水平部321に回転可能に支持されており、本体の外部に配設されたクラッチモータ340がクラッチレバー320を揺動させることにより、クラッチカプラ310が上下方向に移動する。
【0004】
特許文献2のクラッチ機構4は、脱水軸アセンブリ3のクラッチスライダ41の径方向位置をクラッチカムプレート43により変位させ、脱水軸アセンブリ3を洗濯軸アセンブリ2に係合・離間させることにより、モータ5から洗濯兼脱水槽への駆動力の伝達を継断する。クラッチカムプレート43は、引っ張りばね45の付勢力により、常時、クラッチスライダ41を係合位置に移動させるよう作用し、クラッチレバー44によりその回転が係止されることにより、クラッチスライダ41を離間位置に移動させる。クラッチレバー44は位相合わせ部材102に連結されており、位相合わせ部材102は本体の外部に配設された切替モータ103により制御される。
【0005】
特許文献3のクラッチ機構7は、第2回転体20が回転可能に支持された支持部材34を支持部材移動機構35により昇降させ、第2回転体20を第1回転体13と係合・離間させることにより、モータ5から洗濯漕3への駆動力の伝達を継断する。支持部材34は、支持部材移動機構35の同期モータ37とその減速輪列63により周方向に回動され、さらにカム機構39が作用することにより、第2回転体20とともに上下方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−034552号公報
【特許文献2】特開2014−108274号公報
【特許文献3】特開2014−068853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のクラッチアセンブリ300は、本体の外部に配設されたクラッチモータ340によりクラッチレバー320を揺動させることから、動力伝達装置100全体としての取り付けスペースが広く必要となり、また、取り付け作業も煩雑となる。
【0008】
特許文献2のクラッチ機構4も同様に、本体の外部に配設された切替モータ103により位相合わせ部材102を制御することから、固定部アセンブリ1全体としての取り付けスペースが広く必要となり、また、取り付け作業も煩雑となる。さらに、クラッチ機構4の構造が複雑であり部品点数も多いことから、その信頼性が懸念される。
【0009】
特許文献3のクラッチ機構7は、特許文献1のクラッチ作動機構よりも小さなスペースで取り付けが可能である。しかし、特許文献3のクラッチ機構7は、一方向にのみ回転する同期モータ37を使用していることから、クラッチの継状態と断状態とをシーケンスに繰り返すほかなく、クラッチの継断状態が不明であるときに、所望の状態に直接的に切り替えることができない。そのため、特許文献3のクラッチ機構7は、タクトスイッチ71を用いた検出機構40や、ホールIC85を用いた洗濯槽回転検出装置8を別途備え、クラッチのその時々の状態を判別しながら継断を制御している。
【0010】
特許文献3のモータ5は、クラッチ機構7の外部に別体として配置されているが、例えばモータ5をダイレクトドライブモーターとし、内部にクラッチ機構7を収容する構成とする場合、モータ内部の空間はステータなどの部品に割かれることから、クラッチ機構7の配置スペースに対する制約はよりシビアなものとなる。このような狭小な配置スペースにクラッチ機構7を収容する場合には、クラッチ機構7を構成する同期モータ37、減速輪列63、検出機構40、洗濯槽回転検出装置8などのサイズが問題となる。
【0011】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、簡易な構造により狭小な配置スペースにも配置可能なクラッチ機構を内部に収容した洗濯機用モータユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の洗濯機用モータユニットは、円筒状のロータおよびステータを有する第一のモータと、前記第一のモータから洗濯機の回転槽への駆動力の伝達を継断するクラッチ機構と、を備え、前記クラッチ機構は、前記ロータおよびステータの内側に配置されていることを要旨とする。
【0013】
第一のモータの内部にクラッチ装置を収容することにより、クラッチ装置の配置スペースを第一のモータに包含させることができ、濯機用モータユニット全体としてのサイズを縮小することができる。また、洗濯機用モータユニットの洗濯機への取り付け作業も単純化されることが期待される。
【0014】
尚、特許文献1の駆動モータ200もアウターロータ型モータであり、クラッチカプラ310がロータアセンブリ250の内側に配置されているが、クラッチモータ340およびクラッチレバー320を含むクラッチアセンブリ300(クラッチ機構)は駆動モータ200の外部にまで延出している。本発明のクラッチ機構とは、クラッチ機構を駆動するモータも含むクラッチ機構の構成全体が第一のモータのロータおよびステータの内側に配置されることを意味している。
【0015】
また、本発明の洗濯機用モータユニットは、前記第一のモータが、該第一のモータにより回転駆動される第一の回転体を備え、前記クラッチ機構は、前記第一の回転体と同軸上に配置され、該第一の回転体と係合可能な第二の回転体と、前記第二の回転体を軸方向に変位させ、該第二の回転体と前記第一の回転体との係合・離間を切り替えるリフト機構と、を備え、前記リフト機構は、前記第二の回転体を回転可能に支持するフレーム部材と、前記フレーム部材を回動させるフレーム回動機構と、前記フレーム部材の回動方向に応じて、該フレーム部材を軸方向に変位させるカム機構と、を備え、前記フレーム回動機構は、両方向に回転可能な第二のモータと、前記第二のモータの駆動力を前記フレーム部材に伝達する平歯車からなる減速輪列と、を備える構成としても良い。
【0016】
また、本発明の洗濯機用モータユニットは、前記第二のモータがステッピングモータであることが望ましい。
【0017】
ステッピングモータを使用することにより、ステップ数による回転角度の制御が可能となるため、フレーム部材の昇降状態を判別するための機構や、モータ回転数のフィードバック機構を備える必要がなくなり、クラッチ機構の単純化および小型化を図ることができる。さらに、ステッピングモータは摺接部品が少ないことから信頼性が高く、またブラシレスDCモータよりも安価に調達することができる。
【0018】
また、本発明の洗濯機用モータユニットは、前記減速輪列を構成する各歯車が、前記フレーム部材の外周に沿って周方向に並べられることが望ましい。
【0019】
減速輪列をフレーム部材の外周に沿って配置することにより、クラッチ機構の径方向の大きさを抑えることができる。クラッチ機構は第一のモータのロータおよびステータの内側に配置されることから、その配置スペースはロータまたはステータの内周面により区画される略筒状の空間となることが予測される。よって、減速輪列を径方向に長く延出させた場合、かかる減速輪列部分がロータまたはステータに干渉し、第一のモータの設計を工夫しなければクラッチ機構が収容できないおそれがある。本発明によれば、クラッチ機構の径方向の大きさが抑えられることから、クラッチ機構の配置スペースに関する第一のモータの設計要件を緩和することができる。
【0020】
また、本発明の洗濯機用モータユニットは、前記第一の回転体の回転中心には、該第一の回転体と一体に回転する回転軸が立設され、前記回転軸は、外周面にスプライン部が形成された筒状軸に挿通され、前記回転軸の先端部は前記筒状軸から露出し、前記第二の回転体は、前記スプライン部に嵌合されることにより、該スプライン部の軸方向に移動可能であり、かつ、該筒状軸と周方向に一体に回転し、前記第一の回転体と前記第二の回転体の係合時には、前記第一のモータの駆動力により前記回転軸および前記筒状軸が回転し、前記第一の回転体と前記第二の回転体の離間時には、前記第一のモータの駆動力により前記回転軸のみが回転する構成としても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる洗濯機用モータユニットによれば、簡易な構造により狭小な配置スペースにも配置可能なクラッチ機構を内部に収容した洗濯機用モータユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の洗濯機用モータユニットを備える全自動電気洗濯機の概略構成を示す断面図である。
図2】モータユニットの外観斜視図である。
図3】モータユニットおよびクラッチ機構の分解斜視図である。
図4】フレーム回動機構の構成および動作を説明する平面図である。
図5】リフト機構によるフレーム部材の昇降操作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかるクラッチ機構、および該クラッチ機構を備える洗濯機用モータユニットの実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態にかかる洗濯機用モータユニットは渦巻式の全自動電気洗濯機に搭載される駆動源である。クラッチ機構は衣類の洗濯工程に応じて、パルセータのみを回転させる洗濯動作と、パルセータと回転槽の両方を回転させる脱水動作と、を切り替える。尚、本実施形態における「上」および「下」とは図1に示される上下をいう。
【0024】
(全体構成)
図1は本実施形態にかかる全自動電気洗濯機90(以下、単に「洗濯機90」という。)の概略構成を示す断面図である。洗濯機90は上面の開口部に開閉可能なカバー92を備える角筒状の筐体91を有し、筐体91の内部には、洗濯兼脱水槽95を構成する有底筒状の内槽95aおよび外槽95bと、洗濯機用モータユニット10(以下、単に「モータユニット10」という。)が収容されている。外槽95bは、緩衝機構を備える吊り棒93により筐体91に吊り下げられ、その底部には洗濯水を外部に排出する排水パイプ94が連結されている。回転槽である内槽95aは外槽95b内において回転可能に支持され、その底面中央にはパルセータ96が設置されている。
【0025】
パルセータ96および内槽95aは、洗濯兼脱水槽95の下方に配置されたモータユニット10に連結されている。モータユニット10の回転軸20は、その先端部が内槽95aの底面を貫通してパルセータ96に接続されており、パルセータ96は回転軸20と一体に回転する。モータユニット10の筒状軸21は、連結部材22を介して内槽95aの下面に連結されており、内槽95aは筒状軸21と一体に回転する。
【0026】
外槽95bの下面にはモータユニット10の固定部材23が取り付けられている。モータユニット10は第一のモータ30を備え、第一のモータ30のロータ31の内側に、第一の回転体32、回転軸20、筒状軸21、および後述するクラッチ機構40が配置されている。クラッチ機構40は第一のモータ30から筒状軸21への駆動力の伝達を継断することにより内槽95aの回転を制御する。
【0027】
洗濯機90の開口部から衣類が投入され、洗濯機90が洗濯動作を開始すると、図示しない給水管を介して洗濯兼脱水槽95に洗濯水が供給される。その後、第一のモータ30により回転軸20およびパルセータ96が回転駆動され、衣類の洗濯が行われる。この間、筒状軸21および内槽95aへの駆動力の伝達はクラッチ機構40により切断されている。
【0028】
洗濯動作が終了し、洗濯水が外槽95bの排水パイプ94から排出されると、洗濯機90は衣類を脱水する脱水動作に移行する。脱水動作では、第一のモータ30の駆動力はクラッチ機構40により筒状軸21へも伝達され、パルセータ96および内槽95aが一体的に回転する。
【0029】
(モータユニットの構成)
図2はモータユニット10の外観斜視図である。モータユニット10の備える第一のモータ30は円盤形状のアウターロータ型モータである。第一のモータ30が有する円筒状のロータ31およびステータ33の内側に設けられた空間には上述のクラッチ機構40が内蔵されており、第一のモータ30の外部にクラッチ機構40を備える構成に比べ、省スペース化が図られている。尚、本発明における「円筒状」とは、有底筒形状やコップ形状を含む、中空の円筒部を少なくとも一部に有する形状を意味している。また、本実施形態における第一のモータ30にはアウターロータ型モータが採用されているが、第一のモータ30をインナーロータ型モータとした場合でも同様の効果を得ることはできる。
【0030】
固定部材23(透過表示)の軸部内周面と筒状軸21の外周面との間にはベアリング24が配置され、筒状軸21の円滑な回転が確保されている。回転軸20の先端部は筒状軸21の開口から露出しており、かかる露出部がパルセータ96に接続されることにより、回転軸20の回転がパルセータ96に伝達される。また、筒状軸21の外周面には図1に示す連結部材22が装着され、筒状軸21の回転は連結部材22を介して内槽95aに伝達される。尚、連結部材22の形状はモータユニット10を適用する洗濯兼脱水槽95の形状に応じて適宜変更可能である。
【0031】
(クラッチ機構の構成)
図3はモータユニット10およびクラッチ機構40の分解斜視図である。第一のモータ30のロータ31の回転中心には円盤形状の第一の回転体32が固定されており、ロータ31が回転駆動されることにより、第一の回転体32はロータ31と一体に回転する。
【0032】
クラッチ機構40は、上ケース41aおよび下ケース41bからなるケース41を備え、ケース41には、フランジ部を有する略円筒状の部材である第二の回転体42、第二の回転体42をその軸方向に変位させるリフト機構43、および第二の回転体42を常時下方へ付勢するコイルバネ44が配置されている。
【0033】
第一の回転体32、第二の回転体42は軸線L上で同軸に配置されている。第二の回転体42と第一の回転体32との対向面には、径方向に延びる複数の突条が周方向等間隔に配置されたクラッチ歯部42a、32aが形成されている。
【0034】
リフト機構43は、第二の回転体42を回転可能に支持するフレーム部材431と、フレーム部材431を回動させるフレーム回動機構432と、フレーム部材431の回動方向に応じて、フレーム部材431を軸方向に変位させるカム機構433と、からなる。
【0035】
筒状軸21の下端部には、その外周面にスプライン部21aが設けられている。第二の回転体42の内周面42bには、スプライン部21aの突条に対応する縦溝が刻まれている。筒状軸21が第二の回転体42に挿通され、第二の回転体42の内周面42bとスプライン部21aとが噛合することにより、第二の回転体42はスプライン部21aの範囲において筒状軸21を軸方向に摺動でき、また、第二の回転体42と筒状軸21とが周方向に一体に回転するようになる。
【0036】
回転軸20の下端近傍部には、その外周面にセレーション部20aが設けられている。第一の回転体32の軸受32bには、セレーション部20aの突条に対応する縦溝が刻まれている。セレーション部20aが軸受32bに挿通され、セレーション部20aと軸受32bとが噛合することにより、第一の回転体32と回転軸20とは周方向に一体に回転する。
【0037】
(フレーム回動機構の構成および動作)
図4はフレーム回動機構432の構成を示す平面図である。フレーム回動機構432は、第二のモータである小型で安価なステッピングモータ50と、ステッピングモータ50のピニオンと噛合し、ステッピングモータ50の駆動力をフレーム部材431へ伝える減速輪列である歯車51乃至54とにより構成される。
【0038】
歯車51乃至54は二つの平歯車が軸方向に結合された複合歯車である。各歯車は小径歯車から大径歯車へと交互に噛合することによりステッピングモータ50の駆動力を減速する。最終歯車である歯車54は、上部に設けられた歯丈および歯厚の大きい平歯車がフレーム部材431の外周面に設けられた歯部431aと噛合している。
【0039】
これら歯車はフレーム部材431の外周に沿って周方向に並べられている。減速輪列をフレーム部材431の外周に沿って配置することにより、クラッチ機構40の径方向の大きさが抑えられている。クラッチ機構40が配置されるスペースは第一のモータ30のステータ33の内周面により区画された略筒状の空間である。クラッチ機構40は径方向への突出が抑えられていることから、第一のモータ30内部への収納に好適な形状とされている。
【0040】
本実施形態におけるフレーム回動機構432は、図4に示されるように、ステッピングモータ50のピニオンが平面視時計回りに回転することによりフレーム部材431をD方向へ回動させ、同ピニオンが平面視反時計回りに回転することによりフレーム部材431をU方向へと回動させる。フレーム回動機構432の動力源として両方向に回転可能なステッピングモータ50を用いることにより、その回転方向を指定してクラッチ機構40を所望の状態に直接的に切り替えることが可能とされている。
【0041】
また、ステッピングモータ50は、ステップ数により回転角度を制御可能であることから、フレーム部材431の昇降状態を検知するための機構や、モータ回転数のフィードバック機構を別途備える必要がない。これにより部品点数が抑えられ、クラッチ機構40の小型化が図られている。本実施形態におけるクラッチ機構40は第一のモータ30に内蔵されている関係上、故障時の修理や交換が煩雑となるおそれがある。そのため、摺動部品が少なく比較的信頼性の高いステッピングモータ50を用い、さらに部品点数を削減することによりクラッチ機構40の故障率を低減している。かかる効果は、例えばブラシレスDCモータを用いることによっても実現することができるが、本実施形態においてはコスト面を考慮し、ステッピングモータ50を採用している。
【0042】
(カム機構の構成および動作)
図5はカム機構433によるフレーム部材431の昇降操作の説明図である。クラッチ機構40は、第二の回転体42を支持するフレーム部材431を昇降させることで第二の回転体42の軸方向位置を変位させ、第二の回転体42と第一の回転体32のクラッチ歯部42a、32aを係合(継状態)および離間(断状態)させることにより駆動力の継断を行う。
【0043】
フレーム部材431の下端部には、内周面から径方向内側に突出した載置片431bが周方向等間隔に四つ形成されている(図4参照)。第二の回転体42は、そのフランジ部の下面が載置片431bに載置されることによりフレーム部材431に回転可能に支持される。
【0044】
本実施形態におけるカム機構433は、フレーム部材431と上ケース41aに設けられ、平面視時計回りに上方へ傾斜する傾斜面同士を摺接させた傾斜カムからなる。上ケース41aは、開口部から下方へと延びる筒状体41a1を備えており、上記傾斜カムは、かかる筒状体41a1の外周面に形成されたカムと、フレーム部材431(透過表示)の上端部の内周面に形成されたカムフォロアーと、により構成される。カム機構433は上記傾斜カムを周方向等間隔に四対有している。
【0045】
フレーム回動機構432がフレーム部材431をD方向(図4参照)に回動させたときは、フレーム部材431側のカムフォロアーが上ケース41a側のカムを下方へ摺動し、フレーム部材431が下降する(図5(a))。フレーム部材431がU方向(図4参照)に回動されたときは、フレーム部材431側のカムフォロアーが上ケース41a側のカムを上方へ摺動し、フレーム部材431が上昇する(図5(b))。
【0046】
図5(a)は、洗濯機90の洗濯動作時におけるリフト機構43の状態を示している。洗濯動作時におけるクラッチ機構40は断状態にある。クラッチ機構40が断状態のときのリフト機構43は、フレーム部材431が上昇後の位置にあり、第二の回転体42もフレーム部材431により持ち上げられ、第一の回転体32から離間している。よって、第二の回転体42と第一の回転体32のクラッチ歯部42a、32aの噛合は解除され、第一のモータ30の駆動力は第二の回転体42以降へは伝達されない。
【0047】
図5(b)は、洗濯機90の脱水動作時におけるリフト機構43の状態を示している。脱水動作時におけるクラッチ機構40は継状態にある。クラッチ機構40が継状態のときのリフト機構43は、フレーム部材431が下降した位置にあり、第二の回転体42もコイルバネ44により下方へ付勢されてフレーム部材431とともに下降している。これにより、第二の回転体42と第一の回転体32のクラッチ歯部42a、32aは噛合し、第一のモータ30の駆動力が内槽95aへ伝達される。つまり、クラッチ歯部42a、32aが噛合することにより、第一のモータ30の駆動力は、ロータ31、第一の回転体32、第二の回転体42、筒状軸21、連結部材22を介して内槽95aへと伝達され、内槽95aが回転する。
【0048】
尚、回転軸20は第一の回転体32に固定され、第一の回転体32と一体に回転することから、回転軸20に接続されたパルセータ96は、常に第一のモータ30とともに回転する。すなわち、第一のモータ30の駆動力は、クラッチ歯部42a、32aの噛合状態にかかわらず、第一の回転体32、回転軸20を介してパルセータ96に伝達されることから、パルセータ96は洗濯機90の洗濯動作および脱水動作のいずれの場合においても回転する。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 モータユニット
20 回転軸
21 筒状軸
30 第一のモータ
32 第一の回転体
40 クラッチ機構
42 第二の回転体
43 リフト機構
431 フレーム部材
432 フレーム回動機構
433 カム機構
50 ステッピングモータ
51〜54 歯車(減速輪列)
95a 内槽
図1
図2
図3
図4
図5