【課題】狭小な配置スペースであっても配置可能であり、また、クラッチの継断状態を直接的に切り替えることが可能なクラッチ機構、および、かかるクラッチ機構を内部に収容した洗濯機用モータユニットを提供する。
【解決手段】第一のモータにより回転駆動される第一の回転体と同軸上に配置され、該第一の回転体と係合可能な第二の回転体と、前記第二の回転体を軸方向に変位させ、前記第一の回転体との係合および離間を切り替えるリフト機構と、を備え、前記リフト機構は、フレーム部材を回動させるフレーム回動機構を備え、前記フレーム回動機構は、両方向に回転可能な第二のモータと、ウォームギヤと、ウォームホイールと、リードスクリューと、ナットと、備えることを特徴とするクラッチ機構、および該クラッチ機構を備える洗濯機用モータユニットにより解決する。
前記フレーム回動機構はさらに、前記ナットが前記リードスクリューの一端または他端に近接したときに、前記ウォームホイールの回転を係止するストッパー部材を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクラッチ機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のクラッチ機構は、クラッチ14の外部に備えられた作動レバー66を、同じくクラッチ14の外部に備えられたアクチュエータ65により揺動させることから、クラッチ作動機構の取り付けスペースが広く必要となり、また、取り付け作業も煩雑となる。
【0007】
特許文献2のクラッチ機構7は、特許文献1のクラッチ作動機構よりも小さなスペースで取り付けが可能である。しかし、特許文献2のクラッチ機構7は、一方向にのみ回転する同期モータ37を使用していることから、クラッチの継状態と断状態とをシーケンスに繰り返すほかなく、クラッチの継断状態が不明であるときに、所望の状態に直接的に切り替えることができない。そのため、特許文献2のクラッチ機構7は、タクトスイッチ71を用いた検出機構40や、ホールIC85を用いた洗濯槽回転検出装置8を別途備え、クラッチのその時々の状態を判別しながら継断を制御している。
【0008】
特許文献2のモータ5は、クラッチ機構7の外部に別体として配置されているが、例えばモータ5をダイレクトドライブモーターとし、内部にクラッチ機構7を収容する構成とする場合、モータ内部の空間がステータなどの部品に割かれることから、クラッチ機構7の配置スペースに対する制約はよりシビアなものとなる。このような狭小な配置スペースにクラッチ機構7を収容する場合には、クラッチ機構7を構成する同期モータ37、減速輪列63、検出機構40、洗濯槽回転検出装置8などのサイズが問題となる。
【0009】
上記問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、狭小な配置スペースであっても配置可能であり、また、クラッチの継断状態を直接的に切り替えることが可能なクラッチ機構、および、かかるクラッチ機構を内部に収容した洗濯機用モータユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のクラッチ機構は、第一のモータから洗濯機の回転槽への駆動力の伝達を継断するクラッチ機構であって、前記第一のモータにより回転駆動される第一の回転体と同軸上に配置され、該第一の回転体と係合可能な第二の回転体と、前記第二の回転体を軸方向に変位させ、該第二の回転体と前記第一の回転体との係合・離間を切り替えるリフト機構と、前記第二の回転体と前記リフト機構とが収容されるケースと、を備え、前記リフト機構は、前記第二の回転体を回転可能に支持するフレーム部材と、前記フレーム部材を回動させるフレーム回動機構と、前記フレーム部材の回動方向に応じて、該フレーム部材を軸方向に変位させるカム機構と、を備え、前記フレーム回動機構は、両方向に回転可能な第二のモータと、前記第二のモータにより回転駆動されるウォームギヤと、前記ウォームギヤに噛合するウォームホイールと、前記ウォームホイールの回転中心に固定され、該ウォームホイールと一体に回転するリードスクリューと、前記リードスクリューに螺嵌され、前記フレーム部材に連結されるナットと、備えることを要旨とする。
【0011】
フレーム回動機構の動力源として両方向に回転可能な第二のモータを用い、その回転方向を制御することによって、クラッチの継状態および断状態を直接的に切り替えることが可能となる。また、第二のモータの駆動力をフレーム部材に伝達する手段として、ウォームギヤおよびリードスクリューを用いることにより、少ない段数で大きな減速比を得ることができる。さらに、平歯車を平面的に配置する構成に比べて歯車列を立体的に構成することができ、垂直方向の余剰空間を利用して水平方向に広がるスペースを縮小することが可能となる。
【0012】
また、本発明のクラッチ機構は、前記第二のモータがステッピングモータであることが望ましい。
【0013】
ステッピングモータを使用することにより、ステップ数による回転角度の制御が可能となるため、フレーム部材の昇降状態を判別するための機構や、モータ回転数のフィードバック機構を備える必要がなくなり、クラッチ機構の小型化を図ることができる。さらに、ステッピングモータは摺接部品が少ないことから信頼性が高く、またブラシレスDCモータよりも安価に調達することができる。
【0014】
また、本発明のクラッチ機構は、前記フレーム回動機構がさらに、前記ナットが前記リードスクリューの一端または他端に近接したときに、前記ウォームホイールの回転を係止するストッパー部材を備えることが望ましい。
【0015】
ナットがリードスクリューの末端まで移動し、リードスクリューに噛み込んだ場合、逆回転時にナットを引き離すための余計な力が必要になるとともに、ナットやリードスクリューの部品寿命の低下、固着故障を招くおそれがある。ナットがリードスクリューの末端に近接したことを検知し、ナットがウォームギヤの端面やリードスクリューの他端側の固定部に接触する前にウォームギヤの回転を係止することにより、かかる噛み込みを防止することができる。
【0016】
また、本発明のクラッチ機構は、前記ストッパー部材が、前記リードスクリューの軸方向と平行に配置された板状の部材であり、前記ストッパー部材は端面の略中央を支点として前記ケースに回動可能に支持され、前記ストッパー部材の前記リードスクリュー側の端面には、前記ナットが摺接することにより該ストッパー部材を回動させるレール部が形成されていること構成としても良い。
【0017】
また、本発明のクラッチ機構は、前記第二の回転体と同軸上に配置され、前記第一の回転体から離間した前記第二の回転体と係合可能な回転規制部材をさらに備え、前記回転規制部材は前記ケースに回転不能に固定され、前記第二の回転体と前記回転規制部材との対向面には、互いに相補的な形状を有する係合突起が形成され、前記回転規制部材は、付勢部材により前記第二の回転体側に付勢され、少なくとも前記係合突起の高さ分、前記第二の回転体から離間する方向に変位可能であることが望ましい。
【0018】
洗濯機の洗濯動作時においては、摩擦による第二の回転体の連れ回りや洗濯水の水流などにより回転槽が回転してしまうことを防止する必要がある。クラッチ機構が回転規制部材を備えることにより、第一の回転体から離間した第二の回転体は、回転規制部材との対向面に形成された係合突起により回転が係止され、これにより回転槽が固定される。ここで、第二の回転体と回転規制部材の係合突起が互いに噛合わず、その頂点同士が突き当たった状態となった場合、係合突起による回転槽の固定効果を得ることができない。さらには第二の回転体を上昇させる力がリフト機構へのストレスとなり、リフト機構の破損を招くおそれもある。付勢部材により回転規制部材を第二の回転体側に付勢する構成とすることにより、クラッチの断操作時にこれら部材の係合突起の頂点同士が突き当たった場合でも、回転規制部材が一時的に押し下げられることで、第二の回転体は離間時の軸方向位置まで移動することが可能となる。その後、第二の回転体が周方向に僅かに回転し、係合突起の頂点同士が突き当たった状態が解消したときに、回転規制部材は付勢力により本来の位置に戻り、係合突起同士が噛合する。上記構成とすることにより、クラッチの断操作によるリフト機構の破損を回避できるとともに、回転槽の回転を確実に止めることができる。
【0019】
また、本発明の洗濯機用モータユニットは、前記第一のモータと、前記第一の回転体と、をさらに備え、前記第一のモータは円筒状のロータおよびステータを有し、本発明のクラッチ機構が前記ロータおよびステータの内側に配置されていることを要旨とする。
【0020】
本発明のクラッチ装置は上記構成を備えることにより省スペース化を図ることができる。そしてさらに、第一のモータの内部にクラッチ装置を収容することにより、クラッチ装置の配置スペースをさらに縮小することができるとともに、洗濯機用モータユニットの洗濯機への取り付け作業も単純化される。一方、かかる構成においてクラッチ機構が故障した場合、クラッチ機構が第一のモータの内部に収容されていることから、その修理や交換が煩雑となるおそれがある。本発明におけるクラッチ機構は、両方向に回転可能なモータを備えることにより、部品点数が削減され、故障率が抑えられている。そのため、上記の不利な効果が補われ、配置スペースの縮小という有利な効果が顕著となる。
【0021】
また、本発明の洗濯機用モータユニットは、前記第一の回転体の回転中心に、該第一の回転体と一体に回転する回転軸が立設され、前記回転軸は、外周面にスプライン部が形成された筒状軸に挿通され、前記回転軸の先端部は前記筒状軸から露出し、前記第二の回転体は、前記スプライン部に嵌合されることにより、該スプライン部の軸方向に移動可能であり、かつ、該筒状軸と周方向に一体に回転し、前記第一の回転体と前記第二の回転体の係合時には、前記第一のモータの駆動力により前記回転軸および前記筒状軸が回転し、前記第一の回転体と前記第二の回転体の離間時には、前記第一のモータの駆動力により前記回転軸のみが回転する構成としても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるクラッチ機構および洗濯機用モータユニットによれば、狭小な配置スペースであっても配置可能であり、また、クラッチの継断状態を直接的に切り替えることが可能なクラッチ機構、および、かかるクラッチ機構を内部に収容した洗濯機用モータユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかるクラッチ機構、および該クラッチ機構を備える洗濯機用モータユニットの実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態にかかる洗濯機用モータユニットは渦巻式の全自動電気洗濯機に搭載される駆動源である。クラッチ機構は衣類の洗濯工程に応じて、パルセータのみを回転させる洗濯動作と、パルセータと回転槽の両方を回転させる脱水動作と、を切り替える。尚、本実施形態における「上」、「下」、および「垂直方向」とは
図1に示される上下をいい、「水平方向」とはかかる上下方向に直交する方向をいう。
【0025】
(全体構成)
図1は本実施形態にかかる全自動電気洗濯機90(以下、単に「洗濯機90」という。)の概略構成を示す断面図である。洗濯機90は上面の開口部に開閉可能なカバー92を備える角筒状の筐体91を有し、筐体91の内部には、洗濯兼脱水槽95を構成する有底筒状の内槽95aおよび外槽95bと、洗濯機用モータユニット10(以下、単に「モータユニット10」という。)が収容されている。外槽95bは、緩衝機構を備える吊り棒93により筐体91に吊り下げられ、その底部には洗濯水を外部に排出する排水パイプ94が連結されている。回転槽である内槽95aは外槽95b内において回転可能に支持され、その底面中央にはパルセータ96が設置されている。
【0026】
パルセータ96および内槽95aは、洗濯兼脱水槽95の下方に配置されたモータユニット10に連結されている。モータユニット10の回転軸20は、その先端部が内槽95aの底面を貫通してパルセータ96に接続されており、パルセータ96は回転軸20と一体に回転する。モータユニット10の筒状軸21は、連結部材22を介して内槽95aの下面に連結されており、内槽95aは筒状軸21と一体に回転する。
【0027】
外槽95bの下面にはモータユニット10の固定部材23が取り付けられている。モータユニット10は第一のモータ30を備え、第一のモータ30のロータ31の内側に、第一の回転体32、回転軸20、筒状軸21、および後述するクラッチ機構40が配置されている。クラッチ機構40は第一のモータ30から筒状軸21への駆動力の伝達を継断することにより内槽95aの回転を制御する。
【0028】
洗濯機90の開口部から衣類が投入され、洗濯機90が洗濯動作を開始すると、図示しない給水管を介して洗濯兼脱水槽95に洗濯水が供給される。その後、第一のモータ30により回転軸20およびパルセータ96が回転駆動され、衣類の洗濯が行われる。この間、筒状軸21および内槽95aへの駆動力の伝達はクラッチ機構40により切断されている。
【0029】
洗濯動作が終了し、洗濯水が外槽95bの排水パイプ94から排出されると、洗濯機90は衣類を脱水する脱水動作に移行する。脱水動作では、第一のモータ30の駆動力はクラッチ機構40により筒状軸21へも伝達され、パルセータ96および内槽95aが一体的に回転する。
【0030】
(モータユニットの構成)
図2はモータユニット10の外観斜視図である。モータユニット10の備える第一のモータ30は円盤形状のアウターロータ型モータである。第一のモータ30が有する円筒状のロータ31およびステータ33の内側に設けられた空間には上述のクラッチ機構40が内蔵されており、第一のモータ30の外部にクラッチ機構40を備える構成に比べ、省スペース化が図られている。尚、本発明における「円筒状」とは、有底筒形状やコップ形状を含む、中空の円筒部を少なくとも一部に有する形状を意味している。また、本実施形態における第一のモータ30にはアウターロータ型モータが採用されているが、第一のモータ30をインナーロータ型モータとした場合でも同様の効果を得ることはできる。
【0031】
固定部材23(透過表示)の軸部内周面と筒状軸21の外周面との間にはベアリング24が配置され、筒状軸21の円滑な回転が確保されている。回転軸20の先端部は筒状軸21の開口から露出しており、かかる露出部がパルセータ96に接続されることにより、回転軸20の回転がパルセータ96に伝達される。また、筒状軸21の外周面には
図1に示す連結部材22が装着され、筒状軸21の回転は連結部材22を介して内槽95aに伝達される。尚、連結部材22の形状はモータユニット10を適用する洗濯兼脱水槽95の形状に応じて適宜変更可能である。
【0032】
(クラッチ機構の構成)
図3はモータユニット10およびクラッチ機構40の分解斜視図である。第一のモータ30のロータ31の回転中心には円盤形状の第一の回転体32が固定されており、ロータ31が回転駆動されることにより、第一の回転体32はロータ31と一体に回転する。
【0033】
クラッチ機構40は、上ケース41aおよび下ケース41bからなるケース41を備え、ケース41の内部には、フランジ部を有する略円筒状の部材である第二の回転体42、第二の回転体42をその軸方向に変位させるリフト機構43、第二の回転体42を常時下方へ付勢するコイルバネ44、および、上ケース41aに固定され、クラッチ機構40が断状態のときに第二の回転体42と軸方向に接触し、第二の回転体42の回転を係止する回転規制部材45が収容されている。
【0034】
第一の回転体32、第二の回転体42、および回転規制部材45は軸線L上で同軸に配置されている。第二の回転体42と第一の回転体32との対向面には、径方向に延びる複数の突条が周方向等間隔に配置されたクラッチ歯部42a、32aが形成されている。また、第二の回転体42と回転規制部材45の対向面にも同様に、互いに噛合可能な歯部である回転規制歯部42c、45aが形成されている。
【0035】
リフト機構43は、第二の回転体42を回転可能に支持するフレーム部材431と、フレーム部材431を回動させるフレーム回動機構432と、フレーム部材431の回動方向に応じて、フレーム部材431を軸方向に変位させるカム機構433と、からなる。
【0036】
筒状軸21の下端部には、その外周面にスプライン部21aが設けられている。第二の回転体42の内周面42bには、スプライン部21aの突条に対応する縦溝が刻まれている。筒状軸21が第二の回転体42に挿通され、第二の回転体42の内周面42bとスプライン部21aとが噛合することにより、第二の回転体42はスプライン部21aの範囲において筒状軸21を軸方向に摺動でき、また、第二の回転体42と筒状軸21とが周方向に一体に回転するようになる。
【0037】
回転軸20の下端近傍部には、その外周面にセレーション部20aが設けられている。第一の回転体32の軸受32bには、セレーション部20aの突条に対応する縦溝が刻まれている。セレーション部20aが軸受32bに挿通され、セレーション部20aと軸受32bとが噛合することにより、第一の回転体32と回転軸20とは周方向に一体に回転する。
【0038】
(リフト機構の動作)
図4および
図5はリフト機構43によるフレーム部材431の昇降操作の説明図である。尚、
図5は
図2のA−A位置における断面図である。クラッチ機構40による駆動力の継断は、第二の回転体42を支持するフレーム部材431を昇降させることにより、第二の回転体42の軸方向位置を変位させ、第二の回転体42と第一の回転体32のクラッチ歯部42a、32aを係合(継状態)および離間(断状態)させることにより行う。
【0039】
第二の回転体42は、そのフランジ部の下面がフレーム部材431の円形の枠体431bに載置されることにより回転可能に支持されている。フレーム部材431は、その外周面の一部から径方向外側に延出したフォーク状の腕部431aを有しており、腕部431aはフレーム回動機構432の出力部材(後述するナット54の軸部54a)に連結されている。これにより、フレーム部材431はナット54の移動方向に追従して回動することとなる。
【0040】
本実施形態におけるカム機構433は、フレーム部材431の枠体431bの下面、および、かかる下面に対応する下ケース41bの対向面に設けられ、平面視反時計回りに上方へ傾斜する傾斜面同士を摺接させた傾斜カムを、周方向等間隔に四対備えることにより構成されている。これにより、フレーム部材431が平面視反時計回りに回動されたときは、フレーム部材431側のカムフォロアーが下ケース41b側のカムの傾斜面を上方へ摺動し、その結果、フレーム部材431が上昇する(
図4(a)、
図5(a))。フレーム部材431が平面視時計回りに回動されたときは、フレーム部材431側のカムフォロアーが下ケース41b側のカムの傾斜面を下方へ摺動し、その結果、フレーム部材431が下降する(
図4(b)、
図5(b))。
【0041】
図4(a)および
図5(a)は、洗濯機90の洗濯動作時におけるリフト機構43の状態を示している。洗濯動作時におけるクラッチ機構40は断状態にある。クラッチ機構40が断状態のときのリフト機構43は、フレーム部材431が上昇後の位置にあり、第二の回転体42もフレーム部材431により持ち上げられ、第一の回転体32から離間している。よって、第二の回転体42と第一の回転体32のクラッチ歯部42a、32aの噛合は解除され、第一のモータ30の駆動力は第二の回転体42以降へは伝達されない。
【0042】
図4(b)および
図5(b)は、洗濯機90の脱水動作時におけるリフト機構43の状態を示している。脱水動作時におけるクラッチ機構40は継状態にある。クラッチ機構40が継状態のときのリフト機構43は、フレーム部材431が下降した位置にあり、第二の回転体42もコイルバネ44により下方へ付勢されてフレーム部材431とともに下降している。これにより、第二の回転体42と第一の回転体32のクラッチ歯部42a、32aは噛合し、第一のモータ30の駆動力が内槽95aへ伝達される。つまり、クラッチ歯部42a、32aが噛合することにより、第一のモータ30の駆動力は、ロータ31、第一の回転体32、第二の回転体42、筒状軸21、連結部材22を介して内槽95aへと伝達され、内槽95aが回転する。
【0043】
尚、回転軸20は第一の回転体32に固定され、第一の回転体32と一体に回転することから、回転軸20に接続されたパルセータ96は、常に第一のモータ30とともに回転する。すなわち、第一のモータ30の駆動力は、クラッチ歯部42a、32aの噛合状態にかかわらず、第一の回転体32、回転軸20を介してパルセータ96に伝達されることから、パルセータ96は洗濯機90の洗濯動作および脱水動作のいずれの場合においても回転する。
【0044】
(洗濯動作時における内槽固定構造)
以下、
図5を用いて洗濯動作時における内槽固定構造について説明する。第二の回転体42を第一の回転体32から離間したとき(クラッチを断状態としたとき)は、洗濯機90の洗濯動作時においては、摩擦による第二の回転体42の連れ回りや洗濯水の水流などにより内槽95aが回転してしまうことを防止する必要がある。そのため、クラッチ機構40は回転規制部材45を備えており、第二の回転体42が第一の回転体32から離間したときは、回転規制部材45との対向面に形成された回転規制歯部42c、45aを噛合させることにより第二の回転体42の回転を係止し、内槽95aを周方向に固定する。
【0045】
ここで、第二の回転体42と回転規制部材45の回転規制歯部42c、45aが互いに噛合わず、その頂点同士が突き当たった状態となった場合、回転規制部材45による内槽95aの固定効果を得ることができないのみならず、フレーム部材431が上昇できずステッピングモータ50が脱調を起こすおそれがある。特に本実施形態のクラッチ機構40は、フレーム部材431の昇降状態を判別するための機構や、モータ回転数のフィードバック機構を備えておらず、ステッピングモータ50に所定ステップ+α分のパルスを与えることでクラッチの継断操作が完遂されたものと判断していることから、ステッピングモータ50の脱調がモータユニット10の動作不良に直結し得る。さらには第二の回転体42を上昇させる力がリフト機構43へのストレスとなり、リフト機構43の破損を招くおそれがある。
【0046】
本実施形態におけるクラッチ機構40は、付勢部材であるコイルバネ46により回転規制部材45を第二の回転体42側に付勢していることにより、回転規制歯部42c、45aの頂点同士が突き当たった場合でも、回転規制部材45が一時的に上方に持ち上げられることで、第二の回転体42は離間時の位置まで移動することができる。その後、第二の回転体42が周方向に僅かに回転し、回転規制歯部42c、45aの頂点同士が突き当たった状態が解消したときに、回転規制部材45はコイルバネ46の付勢力により本来の位置に戻り、回転規制歯部42c、45aが噛合する。上記構成とすることにより、クラッチ機構を断状態としたときのステッピングモータ50の脱調やリフト機構43の破損を回避できるとともに、内槽95aの回転を確実に止めることが可能とされている。
【0047】
(フレーム回動機構の構成)
図6はフレーム回動機構432の構成を示す斜視図である。フレーム回動機構432は、第二のモータである小型で安価なステッピングモータ50と、ステッピングモータ50により回転駆動されるウォームギヤ51と、ウォームギヤ51に噛合するウォームホイール52と、ウォームホイール52の回転中心に固定され、ウォームホイール52と一体に回転するリードスクリュー53と、リードスクリュー53に螺嵌され、フレーム部材431の腕部431aが連結される軸部54aを有するナット54と、からなり、さらに、ナット54がリードスクリュー53の一端または他端に近接したときにウォームホイール52の回転を係止するストッパー部材55を備える。
【0048】
本実施形態におけるクラッチ機構40では、ナット54がウォームホイール52側に移動することによりクラッチ機構40が継状態となり、その反対側に移動することによりクラッチ機構40が断状態となる。フレーム回動機構432の動力源として両方向に回転可能なステッピングモータ50を用いることにより、その回転方向を指定してクラッチ機構40を所望の状態に直接的に切り替えることが可能とされている。
【0049】
また、ステッピングモータ50は、ステップ数により回転角度を制御可能であることから、フレーム部材431の昇降状態を検知するための機構や、モータ回転数のフィードバック機構を別途備える必要がない。これにより部品点数が抑えられ、クラッチ機構40の小型化が図られている。本実施形態におけるクラッチ機構40は第一のモータ30に内蔵されている関係上、故障時の修理や交換が煩雑となるおそれがある。そのため、摺動部品が少なく比較的信頼性の高いステッピングモータ50を用い、さらに部品点数を削減することによりクラッチ機構40の故障率を低減している。かかる効果は、例えばブラシレスDCモータを用いることによっても実現することができるが、本実施形態においてはコスト面を考慮し、ステッピングモータ50を採用している。
【0050】
ステッピングモータ50の駆動力をフレーム部材431に伝達する手段として、ウォームギヤ51およびリードスクリュー53が用いられていることから、少ない段数で大きな減速比を得ることができる。また、
図6に示されるように、ウォームギヤ51はステッピングモータ50に垂直方向に取り付けられている。このように、垂直方向の余剰空間を利用して歯車列を立体的に構成することにより、平歯車を平面的に配置する構成に比べて、歯車列が水平方向に占めるスペースが縮小されている。
【0051】
ストッパー部材55は、リードスクリュー53の軸方向と平行に配置された板状の部材であり、端面の略中央を支点として下ケース41bに回動可能に支持されている。ストッパー部材55の上面には、ナット54が摺接することによりストッパー部材55を回動させるレール部55aが形成されている。
【0052】
ナット54がリードスクリュー53の末端まで移動し、リードスクリュー53に噛み込んだ場合、逆回転時にナット54を引き離すための余計な力が必要になるとともに、ナット54やリードスクリュー53の部品寿命の低下、固着故障を招くおそれがある。ナット54がリードスクリュー53の末端に近接したことを検知し、ナット54がウォームギヤ51の端面やリードスクリュー53の他端側の固定部に接触する前にウォームギヤ51の回転を係止することにより、かかる噛み込みが防止されている。
【0053】
図7はストッパー部材55の具体的な動作を示す遷移図である。
図7の一点鎖線はリードスクリュー53の配置位置を示す。ナット54はリードスクリュー53の回転方向に応じて上記一点鎖線上を往復する。
【0054】
ナット54が
図7(a)に示す位置にあるときは、クラッチ機構40は継状態にある。このとき、ウォームホイール52の係合部52aがストッパー部材55の係止部55bに当接していることで、ウォームホイール52の回転はロックされている。ウォームホイール52の回転がロックされることによりリードスクリュー53も回転しないことから、ナット54がこれ以上ウォームホイール52に接近することはなく、ナット54とウォームホイール52との接触、およびリードスクリュー53の噛み込みが回避されている。
【0055】
上記状態から、ステッピングモータ50がクラッチ機構40を断状態とする方向へ回転すると、ナット54はリードスクリュー53の他端側への移動を開始する。ナット54がその進行方向にあるストッパー部材55のレール部55aに摺接することにより、ストッパー部材55が回動し、ストッパー部材55の係止部55bがウォームホイール52の係合部52aから離間する。これによりウォームホイール52のロック状態は解除される(
図7(b))。
【0056】
そして、ナット54がリードスクリュー53の他端側に移動し、クラッチ機構40が断状態となる位置には、ストッパー部材55の他端側のレール部55aが進行方向上にせり出している。ナット54がかかるレール部55aに摺接することで、ストッパー部材55は先の回動とは逆方向に回動する。これによりストッパー部材55の係止部55bにウォームホイール52の係合部52aが当接し、ウォームホイール52の回転は再びロックされる(
図7(c))。かかる動作はクラッチ機構40を断状態から継状態に切り替える場合も同様である。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。