特開2016-154739(P2016-154739A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016154739-敷物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-154739(P2016-154739A)
(43)【公開日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】敷物
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20160805BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20160805BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20160805BHJP
【FI】
   A47C27/15 A
   B32B5/24 101
   B32B27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-35446(P2015-35446)
(22)【出願日】2015年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】508103861
【氏名又は名称】辻一株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(74)【代理人】
【識別番号】100117293
【弁理士】
【氏名又は名称】板東 義文
(72)【発明者】
【氏名】辻井 勇人
【テーマコード(参考)】
3B096
4F100
【Fターム(参考)】
3B096AD06
3B096AD07
4F100AK04A
4F100AK12A
4F100AL05A
4F100BA02
4F100DG15B
4F100DJ01A
4F100GB71
4F100JK05A
4F100JK13B
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】軽量でかつ心地よい柔らかさと寝姿勢を正しく保持する硬さを満足させる敷物を提供することを主要な目的とする。
【解決手段】本発明に係る敷物、例えばマットレス1は、支持層2とその上に積層されたソフト層3とを含み、これらを表地4で包み込んでなる。支持層2が、発泡PSビーズ5のそれぞれがポリエチレン樹脂の皮膜6で被覆されてなる発泡PS/PE複合体で形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と、その上に積層されたソフト層とを含み、これらを表地で包み込んでなる敷物において、
前記支持層が、発泡ポリスチレンビーズのそれぞれがポリエチレン樹脂の皮膜で被覆されてなる発泡ポリスチレン/ポリエチレン複合体で形成されていることを特徴とする敷物。
【請求項2】
前記ソフト層が、繊維配向が縦配向にされた不織布で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の敷物。
【請求項3】
前記発泡ポリスチレン/ポリエチレン複合体の圧縮応力(25%圧縮時の応力)は、0.9〜1.2kgf/cm2の範囲に選ばれている、請求項1又は2に記載の敷物。
【請求項4】
当該敷物はマットレスを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の敷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に敷物に関し、より特定的には軽くて取り扱い易く、弾力性に富み、かつ安定的に供給できるように改良された敷物に関する。
【背景技術】
【0002】
敷物の一例であるマットレスには、心地よい柔らかさと寝姿勢を正しく保持する硬さが要求される。この相反する要求を満たすマットレスとして、従来、ヤシの実の殻を構成する繊維を加工しパッド状に成形したコイヤーパッドや、ヤシの繊維に樹脂性接着剤を注入して加工したプレスパームロック等を支持層に用い、その上にウレタンフォームをソフト層として積層し、これらを表地で包み込んだものが知られている。高級品には、ウレタンフォームにポリエステル綿を加えて、よりなめらかな肌触りを作り出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のマットレスは、ソフト層にウレタンフォームなどを用いた場合、マットレスの重量が重くなり、使用後の片付けにも労力を要するという問題点があった。また支持層にヤシの繊維などの天然物を用いた場合、安定供給に支障を来たすことがあった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、軽くて取り扱い易く、かつ安定的に供給できる敷物を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の他の目的は、高圧縮応力を発揮する敷物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、高い耐薬品性を有する敷物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、弾力性に富み、クッション性・体圧分布に優れた敷物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、蒸れにくいマットレスを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、弾力性に富み、クッション性・体圧分布に優れたマットレスを提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0010】
発泡ポリスチレン樹脂は、軽量で、かつ安価である等の優れた特性を有している一方、型崩れし易いという欠点を有し、この欠点が、敷物例えばマットレスの素材としての利用を阻害していた。
【0011】
しかし、発明者らは、発泡ポリスチレン樹脂の持つ復元力、弾力性、衝撃吸収性、断熱性、軽量、安価という特性にかえりみて、鋭意研究した結果、発泡ポリスチレン樹脂を構成する発泡ポリスチレンビーズ(以下「発泡PSビーズ」と略す)のそれぞれを、ポリエチレン樹脂の皮膜で被覆すると、その接着性により、隣り合う発泡PSビーズ同士が結合し、型崩れしにくい発泡ポリスチレン/ポリエチレン複合体(以下「発泡PS/PE複合体」と略す)が得られ、これを利用することにより、軽量で、耐久性のある敷物を与えることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明に係る敷物は、支持層と、その上に積層されたソフト層とを含み、これらを表地で包み込んでなり、上記支持層が、発泡PSビーズのそれぞれがポリエチレン樹脂の皮膜で被覆されてなる発泡PS/PE複合体で形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記発泡PS/PE複合体の発泡倍率は、60倍以上が好ましく、より好ましくは90倍以上である。高倍率にすることにより、使用原料が少なくなり、安価に製造できることになる。それぞれの発泡PSビーズがポリエチレン樹脂の皮膜で被覆されているので、このような高倍率にしても、型崩れしなくなることを見出した。このように構成することにより、発泡PS/PE複合体の圧縮応力(25%圧縮時の応力)を、高倍率で、0.9〜1.2kgf/cm2の範囲に選ぶことができる。
【0014】
上記ソフト層は、繊維配向が縦配向にされた不織布で形成されるのが好ましい。
【0015】
繊維配向が縦配向になると、繊維剛性がそのまま生かされるため、より嵩高な構造が可能であり、特に剛性が比較的高く汎用性のあるポリエステル繊維を使用することで、反毛対比剛性が高くなり、軽量で易リサイクル性に優れるようになる。クッション性、体圧分布に優れるという性能が敷物に与えられる。
【0016】
上記した発泡PSビーズのそれぞれがポリエチレン樹脂の皮膜で被覆されてなる発泡PS/PE複合体を支持層に用い、かつ繊維配向が縦配向にされた不織布をソフト層として積層することにより、心地よい柔らかさと寝姿勢を正しく保持する硬さを満足させるマットレスなどの敷物が得られるのである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る敷物によれば、例えばマットレスの場合、軽量でかつ心地よい柔らかさと寝姿勢を正しく保持する硬さを満足させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)本発明の実施例に係るマットレスの斜視図であり、(B)は図1(A)におけるB−B線に沿う断面図であり、(C)は図1(B)におけるC部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
軽くて取り扱い易く、かつ安定的に供給できる敷物を得るという目的を、支持層を、発泡PSビーズのそれぞれがポリエチレン樹脂の皮膜で被覆されてなる発泡PS/PE複合体で形成することによって実現した。以下、実施例を、図を用いて説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係るマットレスの斜視図である。三つ折れにしたのは、片付けを容易にできるようにするためである。実施例に係るマットレス1は、図1(B)に示すように、支持層2とその上に積層されたソフト層3とを含み、これらを表地4で包み込んでなる。表地4の袋の中に、支持層2とその上に積層されたソフト層3とを収納して、ファスナーで閉じるように構成してもよい。
【0021】
支持層2は、図1(C)に示すように、発泡PSビーズ5のそれぞれがポリエチレン樹脂の皮膜6で被覆されてなる発泡PS/PE複合体で形成されている。隣り合う発泡PSビーズ5が、ポリエチレン樹脂の皮膜6を介して接着し結合しており、型崩れし難いものとなっている。接着は、ホットメルト、ゴム系、溶剤系いずれの方法によっても良い。
【0022】
このような発泡PS/PE複合体として、例えば、NISSIN製のイーフォーム(登録商標)90が好ましく使用される。90倍発泡品で、0.9kgf/cm2の圧縮応力(25%圧縮時の応力:反発力であり数値が高い程戻ろうとする力が強い)を有し、高復元性、高い耐薬品性、帯電防止性を有するとともに、寝姿勢を正しく保持する硬さを有している。密度は約11kg/m3(重量約900g、50mm×910mm×1820mmの場合)である。25%圧縮で復元率99%、75%圧縮で復元率94%の高復元性を示した。
【0023】
なお、上記と同条件で測定した、K社製の発泡PP(ポリプロピレン)(45倍品)の圧縮応力は0.9kgf/cm2であり、K社製の発泡PE(ポリエチレン)(38倍品)の圧縮応力は0.8kgf/cm2であり、A社製の発泡PE(40倍品)の圧縮応力は0.7kgf/cm2であり、A社製の押出発泡PE(35倍品)の圧縮応力は0.6kgf/cm2であり、S社製の発泡PS+PE(60倍品)の圧縮応力は1.2kgf/cm2であることからわかるように、ポリエチレン樹脂の皮膜で被覆されてなる発泡PS/PE複合体の圧縮応力は、高倍率発泡でありながら、発泡PP、発泡PEと同等もしくはそれ以上の高圧縮応力を実現できている。さらに、この発泡PS/PE複合体は、ヒートカット加工、トムソンプレス加工、切削加工、ノコ刃加工、貼り合わせ加工性に優れ、マットレスの支持層として適切に利用できることを見出した。
【0024】
また、この発泡PS/PE複合体は帯電防止性を有するので、塵埃の静電気による付着が防止される。
【0025】
ソフト層3は、繊維配向が、図1(B)に示すように縦配向にされた不織布で形成されている。繊維配向が縦配向のため、繊維剛性がそのまま生かされるため、より嵩高な構造となり、特に剛性が比較的高く汎用性のあるポリエステル繊維を使用することで、反毛対比剛性が高くなり、軽量で易リサイクル性に優れる。繊維配向が縦配向にされた不織布は、ヨコ型不織布を複数積層したものを、縦切りして作られる。
【0026】
このようなソフト層3として、例えば、帝人株式会社製のV−Lap(登録商標)クッション剤が好ましく使用される。従来の硬綿よりもウレタンに近いクッション剤で、体圧分散が良く、軽量であり、屈曲性があり、蒸れにくい。蓄熱性を有し、温かい。なめらかな肌触りを付与する。ポリエステル繊維より構成されているので、燃焼時のシアンガス等の発生がなく、環境にやさしい。上記支持層とのラミネート加工が容易である。
【0027】
このような支持層2とソフト層3を組み合わせることにより、心地よい柔らかさと寝姿勢を正しく保持する硬さを満足させるマットレスが安価に得られるのである。
【0028】
ソフト層には、上記した、繊維配向が縦配向にされた不織布が特に好ましいが、その他にウレタンフォーム、化繊綿、不織布、スモールフェザー、羊毛などを使用しても相当の効果を奏する。
【0029】
なお、上記実施例では、敷物として、マットレスを例示して説明したが、この発明は、これに限られるものでなく、座布団、布団、カーペット、絨毯、車両・乗り物用敷物、背もたれ、寝具、レジャー用敷物、ソファー用部材、各種クッション部材に利用できる。
【0030】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る敷物は、軽量でかつ心地よい柔らかさと寝姿勢を正しく保持する硬さを有するので、マットレスなどに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 マットレス
2 支持層
3 ソフト層
4 表地
5 発泡PSビーズ
6 ポリエチレン樹脂の皮膜
図1