(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-155059(P2016-155059A)
(43)【公開日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】筒形ケミカルフィルターケース
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20160805BHJP
【FI】
B01D53/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-33669(P2015-33669)
(22)【出願日】2015年2月24日
(71)【出願人】
【識別番号】500054031
【氏名又は名称】株式会社上村工業
(74)【代理人】
【識別番号】100061310
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 郁二
(72)【発明者】
【氏名】上村 佳一
(72)【発明者】
【氏名】清水 義彦
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012CA10
4D012CA20
4D012CB06
4D012CK10
(57)【要約】
【課題】 本発明は、ケミカル物質を除去するケミカルフィルターケースを構成する筒形ケースと後盤との間の隙間をなくして溶接滓等の溜まり四散を防止し、脚付の誘導部材を筒形ケース内に強く押し当て固定して搖動,震動などによる騒音の発生を解消するようにした筒形ケミカルフィルターケースを新規に提供することを課題としている。
【解決手段】 本発明は筒形ケースの後端と後盤間を隙間が生じない平面突合わせ溶接と溶接痕を取除く仕上げ研磨にて接続して、筒形ケースの内面に従来生じていた隙間を解消し、仕上げ研磨にて溶接痕を除去するようにするとともに、脚付の誘導部材の縦横いずれかの一辺を僅かに長く形成して、傾斜させての巧みな嵌入と押し均しにより筒形ケース内の後端に強く押し当て固定してずれ動き,搖動,震動等による騒音の発生を一切生じないようにして課題を解決する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ガスの入口と出口を有す筒形ケースと後盤を平面突合わせとV形カット部の埋め溶接および内外面の溶接痕を除去する仕上げ研磨にて接続し、且つ筒形ケースの出口側に嵌入する脚付の誘導部材を筒形ケースの内径に当て嵌まる四角形の大きさにして且つ縦横いずれかの一辺を僅かに長くして形成し、筒形ケース内に傾斜嵌め入れと押し均しにより長尺辺を筒形ケースに強く押し当てしてずれ動き,搖動,震動等が生じないように固定することを特徴とする筒形ケミカルフィルターケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は窒素ガス,圧縮エアー,ドライエアーなどの供給ガスの供給路中に設置する筒形ケミカルフィルターケースであって、供給ガスの入口と出口を直列に有す筒形ケース内にケミカル物質を高度に浄化するフィルター材を充填して、該供給ガスを筒形ケース内を通すことでケミカル物質を除去して、ケミカル物質を含まないきれいな供給ガスを必要とする部署に供給するようにした供給ガスの筒形ケミカルフィルターケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路、液晶パネル等の製造装置などは塵埃などを除去し浄化したクリーンガスを供給されるクリーンルーム内に設置されているが、通常のエアフィルターでは除去することができないケミカル物質を含むときは、露光装置,検査装置等のレンズ,ミラーにくもり現象が現れるため、ケミカル物質を除去する特殊なフィルター材を内装したケミカルフィルターケースを供給路中に設置してケミカル物質を除去している。そしてケミカルフィルターケースは溶接個所より溶接滓などの四散を完全に解消することが求められている。
【0003】
このケミカルフィルターケースとして、例えば特許文献1に記載されているように筒形ケースの入口側の前盤と出口側の後盤を開閉クランプを被せてネジ止めする構造のもの、このクランプネジ止めよりも構造を簡易に接続するものとして筒形ケースと後盤を凹凸の噛み合わせと噛み合わせ部を外側から溶接により接続し、入口側の前盤をネジ嵌付けするようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−102638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、筒形ケースと後盤を凹凸の噛み合わせにて溶接する接続は
図7に示すように噛み合わせを容易にするために雄側の凸部に先細のテーパーをつけることで筒形ケースとテーパー面との間で隙間Sが生じ、この隙間Sに溶接滓,擦り滓,塵埃等が溜まり、これが四散するという課題がある。また溶接個所に溶接痕が残るときも同様に溶接滓が四散して供給ガスを汚損するという課題があった。
【0006】
また、筒形ケースは入口より広がって流れる供給ガスを出口に寄せて流出させるために脚付の誘導部材を嵌付けているが、嵌付けを容易にするために該部材を筒形ケースより小径に形成していることから、筒形ケース内でずれ動き,搖動,震動などが生じて耳ざわりな騒音を発生しているという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筒形ケースと後盤を平面突合わせ形とし、この突合せ部に外広のV形カット部を設けて、これを埋める溶接とおよび内外面の溶接痕を除去する仕上げ研磨にて接続するようにして、筒形ケース内に凹凸の嵌合によって生じていた隙間の発生と溶接痕を解消し,また出口側に嵌付ける供給ガスの脚付の誘導部材を筒形ケース内に動かないように強固に固定して、該部材のずれ動き,震動等による騒音の発生を解消するようにして課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のケミカルフィルターケースは、筒形ケースの出口側と後盤を平面突合わせ形にしてV形カット部の埋め溶接と仕上げ研磨にて接続するようにしたので、大小径いずれの筒形ケースも後盤との間の接続部分に隙間が生ずることと溶接痕が一切なくなり、隙間と溶接痕の存在によって生じていた溶接滓,擦り傷,塵埃等の四散を完全になくすことができるという効果を生ずる。
【0009】
脚付の誘導部材を筒形ケース内に動かないように強固に固定するので、誘導部材のずれ動き,震動などによって生じていた耳ざわりな騒音を解消するという効果を生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】筒形ケースと前盤および後盤を組付け前の状態にて示す正面図
【
図2】(a)は後盤の短環と筒形ケースの突合わせ前の状態、(b)は同、V形カット部を溶接した状態を示す部分断面図、(c)は同、内外の溶接痕を仕上げ研磨して接続した状態を示す部分断面図
【
図3】脚付の誘導部材の1例を筒形ケースへの嵌入れ前の状態にて示す斜視図
【
図4】(a)乃至(d)は脚付の誘導部材の筒形ケース内への嵌入れと押し当て付け固定する過程を示す説明図
【
図5】筒形ケース内にケミカルフィルター材を充填し、前盤をボルト取付けした状態を示す断面図
【符号の説明】
【0011】
1は筒形ケース
2は後盤
2aは円盤
2bは供給ガスの出口孔
2cは筒部
2dは短環
3は前盤
3aは円盤
3bは供給ガスの入口孔
3cは筒部
3dは供給ガスの拡散部材
4はV形カット部
5aはボルト
5bはナット
6は脚付の誘導部材
6aは主板
6bは脚
6cは誘導孔
7はクリーンルーム
8は供給ガスを供給する装置
Sは隙間
Wは溶接部
W1,W2は平滑面
Fはフィルター材
Yは誘導空間
Kは供給ガス
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、筒形ケースの出口側端と後盤間を隙間が生じない平面突合わせ形にしてそこに形成する外広のV形カット部の埋め溶接と溶接痕を取除く仕上げ研磨とにて接続して、筒形ケースの内面に従来生じていた隙間Sと溶接痕を解消し、溶接滓等の隙間溜まりと溶接痕への付着四散を完全に生じないようにする。
また、脚付の誘導部材は筒形ケースに当て嵌まる大きさの平面視四角形にして且つ縦横いずれかの一辺を僅かに長くするとともに四周等に設ける嵌付け脚の1本に外開き傾斜を附して形成して、該外開き傾斜脚側を前傾して筒形ケース内に嵌付け、終盤の押し均しにより誘導部材を筒形ケースの内壁に強く押し当て付けして固定して動かないようにしてずれ動き,震動等による騒音を一切生じないようにする。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、ステンレス鋼にて入口と出口を直列の両端に有す筒形ケース1と出口側に接続する後盤2と入口側に接続する前盤3を個別に形成する。
後盤2は筒形ケース1の径より大きい円盤2aの中心に供給ガスの出口孔2bを設けた小筒部2cを外側に向けて設け、円盤2aの内側に筒形ケース1に平面突合せする同径の短環2dを設けている。筒形ケース1と短環2dは同径によって突合わされ、
図2に示すように外周に大きく深いV形カット部4を設けて、V形カット部4を埋める溶接Wをして両者を接続し、内外面の溶接痕を仕上げ研磨にて削り落として平滑面W1、W2にする。
【0014】
前盤3は
図1から明らかなように円盤3aの中心に供給ガスKの入口孔3bを設けた筒部3cを外側に突出し、円盤3aと筒形ケース1端のフランジ1aとの間で取外し自在においてボルト5a・ナット5b止め取付けする。3dは供給ガスKを筒体ケース1内に拡散させるカップ形をした多孔の拡散部材であって、円盤3aの内面中心に溶接する。
【0015】
図3は同質製の脚付の誘導部材6を示し、筒形ケース1に当て嵌まる大きさの角取り四角形をして且つ縦横いずれかの一辺を1mm以下にて僅かに長くした主板6aと、その四周に4本の嵌付け脚6bを設け、僅かに長くした側の嵌付け脚の1本を外側に開き傾斜させて対面する脚を内側に閉じ傾斜させて形成している。なお主板6aは誘導孔6cを多数設けている。
【0016】
脚付の誘導部材6は
図4(a)乃至(d)に示すように、前盤3をボルト5a止めする前、即ち筒形ケース1の入口を開放した状態下において外側に開き傾斜した嵌付け脚6b側を前傾させて且つ他側の嵌付け脚6bを内側に弾性曲げして筒形ケース1内に入口側から嵌め入れるのである。傾斜させることによって嵌入することができる嵌入れの最終段階で
図4(c)に示すように先行の嵌付け脚6bが後盤2に当接した時点で主板6aの後端側を押棒などにて押して
図4(d)に示すように主板6aを斜め状態から平らに押し均しする。その過程で主板6aの長尺側は筒形ケース1の内壁に強よく押し当たり固定することとなる。主板6aの強よい押し当たりにて脚付の誘導部材6は筒形ケース1を倒すなどして動かしても一切動かないものとなる。弾性曲げしていた後側の嵌付け脚6bは元形に復帰する。
【0017】
次いで筒形ケース1内に入口側から
図5に示す特殊な繊維からなる高精度のケミカルフィルター材Fを誘導部材6に接面するまで充填する。出口前には供給ガスKの誘導空間Yが形成される。充填後に前盤3をボルト5a・ナット5b止めして筒形ケース1を閉じ、
図6に示すように入口側の短筒3cを例えばクリーンルーム7内の窒素ガス,圧縮エアーなどの供給路に接続し、出口側の筒部2cをクリーンガスを必要とする露光装置,検査装置8などに供給する供給路に接続するのである。
【0018】
筒形ケース1内に入る供給ガスKは拡散部材3dによって筒形ケース1内に広く広がって流れ、誘導部材6によって誘導空間Y内に寄せられて出口より流出することとなる。
このようにして供給される供給ガスKはフィルター材Fによって窒素ガスまたは圧縮エアー,ドライエアーなどの供給ガスKに混在する塩化水素,硫化水素,SOx,NOx,フッ素等の酸性物質,アンモニア,アミン等のアルカリ物質,ボロン,リン等のドーパント物質,DPOなどのシロキサンフタレート類,BHT,HMDS,TMS等の有機物質などのケミカル汚染物質を吸着し、分子汚染物を精度高く除去するので、露光装置・検査装置などのレンズ・ミラーのくもりの防止、露光装置内の循環部内の汚染防止,基盤表面の薄膜密着不良等を防止して、製造歩留り・製品の品質の向上,光学部品・フォトマスク等の汚染防止に効果を奏すこととなる。
【0019】
本発明の筒形ケミカルフィルターケースは後盤との間の接続部分の内側に生じていた隙間をなくしたので溶接滓等の溜まりがなく、さらに仕上げ研磨にて溶接痕も削り取って平滑にするので溶接痕より溶接滓等の四散も防止されることになる。特にケミカルフィルター材によってケミカル物質を含まない高精度に清浄された供給ガスにして各種装置に供給することができることとなる。また脚付の誘導部材は筒形ケース内に強く押し当たり固定することで、ずれ動き,搖動,震動などが全く生じないので耳ざわりな騒音の発生を解消することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の筒形ケミカルフィルターケースは、ケミカル物質を高精度に除去した供給ガスを必要とする各種の製造装置等に設備負担なく供給し得ることで広く利用されるものである。