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特開2016-155156光学装置、撮像装置、および溶接ロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-155156(P2016-155156A)
(43)【公開日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】光学装置、撮像装置、および溶接ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20160805BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20160805BHJP
【FI】
   B23K9/095 515A
   B23K9/12 331J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-34955(P2015-34955)
(22)【出願日】2015年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 陽平
(72)【発明者】
【氏名】田中 順一
(57)【要約】
【課題】溶接の状態を撮像装置で撮像し、撮像画像に基づいて教示位置の倣い補正を行う場合、溶接スパッタが撮像装置のレンズに付着したり、溶接ヒュームが撮像装置のレンズを曇らせたりするおそれがある。溶接を行う際に用いるシールドガスを利用して、レンズへの溶接スパッタや溶接ヒュームの付着防止を図る従来技術では、シールドガスの影響により溶接不良が生じるおそれがある。
【解決手段】本発明の光学装置は、開口部を有するカバー部材と、カバー部材により覆われるとともに、開口部に対応する一の領域を含み、一の領域を変更可能に構成された1または複数の光学部材とを備える。このように構成した光学装置によって、溶接不良が生じるおそれを低減しつつ撮像装置を保護することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するカバー部材と、
前記カバー部材により覆われるとともに、前記開口部に対応する一の領域を含み、前記一の領域を変更可能に構成された1または複数の光学部材と
を備えた光学装置。
【請求項2】
前記1または複数の光学部材は、複数の光学部材であり、
前記複数の光学部材のうちの1つを、前記開口部に対応する位置に選択的に配置することにより、前記一の領域を変更する
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、円筒部を有し、
前記複数の光学部材は、前記円筒部の内側において周方向に並設された
請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記複数の光学部材を周方向に回転させるモータをさらに備えた
請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、筒部を有し、
前記複数の光学部材は、前記筒部の内側において軸方向に並設された
請求項2に記載の光学装置。
【請求項6】
前記1または複数の光学部材は、単一の光学部材である
請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
前記カバー部材は、円筒部を有し、
前記光学部材は、円筒形状を有する
請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
前記カバー部材により覆われるとともに、前記開口部に対応する位置に配置された反射部材をさらに備えた
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
開口部を有するカバー部材と、
前記カバー部材により覆われるとともに、前記開口部に対応する一の領域を含み、前記一の領域を変更可能に構成された1または複数の光学部材と、
前記光学部材における前記一の領域を介して撮像を行う撮像部と
を備えた撮像装置。
【請求項10】
溶接ロボットと、
前記溶接ロボットの動作を制御する制御装置と、
前記溶接ロボットが溶接する溶接対象を撮像する撮像装置と
を備え、
前記撮像装置は、
開口部を有するカバー部材と、
前記カバー部材により覆われるとともに、前記開口部に対応する一の領域を含み、前記一の領域を変更可能に構成された1または複数の光学部材と、
前記1または複数の光学部材における前記一の領域を介して前記溶接対象を撮像する撮像部と
を有する
溶接ロボットシステム。
【請求項11】
前記撮像装置が撮像した撮像画像に基づいて、前記1または複数の光学部材における前記一の領域を変更させる画像処理装置をさらに備えた
請求項10に記載の溶接ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、撮像装置、および溶接ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アーク溶接を行う場合において、溶接の状態を撮像装置で撮像し、撮像画像に基づいて、溶接条件を変更し、あるいは溶接ロボットの倣い補正を行うことがある。その際、撮像装置は、しばしば、溶接トーチの近くに設置される。そのため、例えば、溶接スパッタが撮像装置のレンズに付着し、あるいは、溶接ヒュームが撮像装置のレンズを曇らせるおそれがある。このような場合には、撮像画像が不鮮明になり、その結果、適切に溶接を制御することができなくなるおそれがある。
【0003】
溶接時における撮像装置のレンズの保護について、様々な技術が開示されている。例えば、特許文献1〜3には、溶接を行う際に用いるシールドガスを利用して、レンズ(フィルタ)への溶接スパッタや溶接ヒュームの付着防止を図る溶接装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−214435号公報
【特許文献2】特開2003−164971号公報
【特許文献3】特開平9−038774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようにシールドガスを利用して、溶接トーチの近くに設置された撮像装置を保護する場合には、このシールドガスの影響により溶接不良が生じるおそれがある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、溶接不良が生じるおそれを低減しつつ撮像装置を保護することができる、光学装置、撮像装置、および溶接ロボットシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学装置は、カバー部材と、1または複数の光学部材とを備えている。カバー部材は、開口部を有するものである。1または複数の光学部材は、カバー部材により覆われるとともに、開口部に対応する一の領域を含み、一の領域を変更可能に構成されたものである。
【0008】
本発明の撮像装置は、カバー部材と、1または複数の光学部材と、撮像部とを備えている。カバー部材は、開口部を有するものである。1または複数の光学部材は、カバー部材により覆われるとともに、開口部に対応する一の領域を含み、一の領域を変更可能に構成されたものである。撮像部は、光学部材における一の領域を介して撮像を行うものである。
【0009】
本発明の溶接ロボットシステムは、溶接ロボットと、制御装置と、撮像装置とを備えている。制御装置は、溶接ロボットの動作を制御するものである。撮像装置は、溶接ロボットが溶接する溶接対象を撮像するものである。上記撮像装置は、カバー部材と、1または複数の光学部材と、撮像部とを有している。カバー部材は、開口部を有するものである。1または複数の光学部材は、カバー部材により覆われるとともに、開口部に対応する一の領域を含み、一の領域を変更可能に構成されたものである。撮像部は、1または複数の光学部材における一の領域を介して溶接対象を撮像するものである。
【0010】
本発明の光学装置、撮像装置、および溶接ロボットシステムでは、カバー部材に開口部が設けられ、1または複数の光学部材のうちの一の領域が、開口部に対応するように配置される。そして、1または複数の光学部材におけるこの一の領域は、変更可能に構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学装置、撮像装置、および溶接ロボットシステムによれば、1または複数の光学部材において、開口部に対応する一の領域を変更可能に構成したので、溶接不良が生じるおそれを低減しつつ撮像装置を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る溶接ロボットシステムの概略構成の一例を表す構成図である。
図2】第1の実施の形態に係る撮像装置の一構成例を表す説明図である。
図3A】第1の実施の形態に係る撮像装置の一構成例を表す斜視図である。
図3B】第1の実施の形態に係る撮像装置の一構成例を表す他の斜視図である。
図4】第1の実施の形態に係る撮像装置の一構成例を表す分解斜視図である。
図5A】第1の実施の形態の変形例に係る撮像装置の一構成例を表す斜視図である。
図5B】第1の実施の形態の変形例に係る撮像装置の一構成例を表す他の斜視図である。
図6A】第2の実施の形態の変形例に係る撮像装置の一構成例を表す斜視図である。
図6B】第2の実施の形態の変形例に係る撮像装置の一構成例を表す他の斜視図である。
図7】第2の実施の形態に係る撮像装置の一構成例を表す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
【0014】
<1.第1の実施の形態>
[構成例]
図1は、第1の実施の形態に係る光学装置が適用された溶接ロボットシステム(溶接ロボットシステム1)の概略構成の一例を表すものである。溶接ロボットシステム1は、プログラム制御された多関節ロボットによってワークWにアーク溶接を行うものである。
【0015】
溶接ロボットシステム1は、マニピュレータ10と、撮像装置20と、ロボット制御装置30と、ティーチペンダント40と、溶接機50と、画像処理装置60とを備えている。溶接ロボットシステム1は、さらに、これらの装置を互いに接続するケーブルL1〜L7を備えている。ケーブルL1は、ロボット制御装置30とマニピュレータ10との間で通信するための通信ケーブルである。ケーブルL2は、ロボット制御装置30とティーチペンダント40との間で通信するための通信ケーブルである。ケーブルL3は、ロボット制御装置30と溶接機50との間で通信するための通信ケーブルである。ケーブルL4は、ロボット制御装置30と画像処理装置60との間で通信するための通信ケーブルである。ケーブルL5,L6は、溶接電極14(後述)とワークWとの間に高電圧の溶接電圧Vsを供給するための電源ケーブルである。ケーブルL5は、溶接機50および作業台15(後述)に接続されており、ケーブルL6は、溶接機50および後述の溶接トーチ13に接続されている。ケーブルL7は、画像処理装置60と撮像装置20との間で通信するための通信ケーブルである。
【0016】
マニピュレータ10は、ロボット制御装置30からの制御信号に基づいて溶接トーチ13を移動させることによって、ワークWに対してアーク溶接を行うものである。マニピュレータ10は、ベース部材11と、多関節アーム部12と、溶接トーチ13と、作業台15とを有している。
【0017】
ベース部材11は、多関節アーム部12および溶接トーチ13を支持するものである。ベース部材11は、例えばフロアに固定されるとともに、多関節アーム部12の一端に連結されている。
【0018】
多関節アーム部12は、一端がベース部材11に連結され、他端が溶接トーチ13に連結されている。多関節アーム部12は、この例では2つのアーム12A,12Bと、アーム12A,12Bを互いに連結する回動可能な関節軸(図示せず)とを有している。多関節アーム部12は、さらに、例えば、アーム12A,12Bをそれぞれ駆動する2つの駆動モータ(図示せず)と、各駆動モータに連結され、アーム12A,12Bの位置を検出するエンコーダ(図示せず)とを有している。各駆動モータには、ロボット制御装置30からケーブルL1を介して制御信号が供給される。この構成により、各駆動モータが制御信号に基づいてアーム12A,12Bを駆動し、溶接トーチ13が上下前後左右に移動する。そして、エンコーダは、アーム12A,12Bの位置を検出し、その検出結果を、ケーブルL1を介してロボット制御装置30に供給するようになっている。
【0019】
溶接トーチ13は、ワークWに対してアーク溶接を行うものである。溶接トーチ13は、多関節アーム部12の他端(先端)に連結されている。溶接トーチ13は、溶接電極14を有している。この溶融電極14には、溶接機50からケーブルL6を介して溶融電圧Vsが供給される。この構成により、溶接トーチ13は、溶接電極14の先端とワークWとの間にアークを発生させ、そのアークの熱でワークWを溶融させることにより、ワークWに対してアーク溶接を行うようになっている。なお、アーク溶接を行う際に、さらに溶加棒を溶融させるようにしてもよい。この場合には、マニピュレータ10は、溶加棒を溶接トーチ13に供給するワイヤ送給装置をさらに有してもよい。
【0020】
作業台15は、フロア等に固定され、ワークWを設置する台座として使用されるものである。作業台15は、ワークWに対するトーチ姿勢を最適に維持するためのポジショナであってもよい。この場合には、ロボット制御装置30によってポジショナの軸が駆動制御される。作業台15は、ケーブルL5を介して溶接機50に接続され、ワークWとケーブルL5とを互いに電気的に接続するように構成されている。
【0021】
撮像装置20は、溶接の状態を撮像するものである。撮像装置20は、溶接トーチ13との関係で不動位置に固定されている。
【0022】
図2は、撮像装置20の一構成例を表すものである。図3Aは、撮像装置20の斜視図を表すものであり、図3Bは、カバー(カバー27)を外した状態での撮像装置20の斜視図を表すものである。図4は、撮像装置20の要部の分解斜視図を表すものである。撮像装置20は、支持部21と、撮像部22と、ミラー23と、保護ガラス支持部24と、モータ25と、保護ガラス26と、カバー27とを有している。
【0023】
支持部21(図2)は、撮像部22、ミラー23、およびモータ25を支持するものである。支持部21の一端は、図示していないが、溶接トーチ13に固定されている
【0024】
撮像部22は、溶接の状態を撮像するものであり、例えば単焦点カメラにより構成されるものである。撮像部22は、ミラー23とともに支持部21に固定されている。ミラー23は、例えば、支持部21に固定され、溶接電極14の先端付近からの光線を撮像部22に導くように構成されている。この構成により、撮像部22は、ケーブルL7を介して画像処理装置60から供給される制御信号に基づいて、ミラー23を介して溶接の状態を撮像し、撮像画像を、ケーブルL7を介して画像処理装置60に供給するようになっている。
【0025】
保護ガラス支持部24は、保護ガラス26を支持するものである。保護ガラス支持部24は、円筒形状を有するとともに、軸Aを中心に回転可能に構成されている。保護ガラス支持部24には、図3B,4に示したように、複数(この例では4つ)の開口部が周方向に並設されている。保護ガラス支持部24は、その開口部に保護ガラス26をそれぞれはめ込むことにより、保護ガラス26を支持するようになっている。
【0026】
モータ25は、保護ガラス支持部24を、軸Aを中心に回転させるものである。モータ25は、この例では、支持部21に固定されるとともに、例えば、図示しないギアを介して、保護ガラス支持部24の内側と結合している。この構成により、モータ25は、ケーブルL7を介して画像処理装置60から供給される制御信号に基づいて、保護ガラス支持部24を回転駆動するようになっている。
【0027】
保護ガラス26は、溶接スパッタや溶接ヒュームから撮像部22を保護する板状のガラスであり、耐熱性を有するものである。撮像装置20は、図4に示したように、この例では、複数(この例では4枚)の保護ガラス26を有している。各保護ガラス26のサイズは、例えば、10mm×10mmである。複数の保護ガラス26は、保護ガラス支持部24において周方向に並設された複数の開口部にはめ込まれており、保護ガラス支持部24から着脱可能に構成されている。なお、これに限定されるものではなく、保護ガラス支持部24自体を撮像装置20から着脱可能に構成してもよい。各保護ガラス26は、この例では、アーク溶接時に発生するアーク光に含まれる高強度の可視光線を減衰させるフィルタ機能を有している。なお、この例では、保護ガラス26がフィルタ機能を有するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、撮像部22とミラー23との間に、このような高強度の可視光線を減衰させるフィルタを設けてもよい。
【0028】
カバー27は、溶接スパッタや溶接ヒュームから撮像装置20を保護するカバーであり、耐熱性を有する材料により構成されるものである。カバー27は、撮像装置20から着脱可能に構成されている。カバー27は、円筒部271と底面部272とを有している。そして、この円筒部271の一部には、開口部28が設けられている。撮像部22は、この開口部28を介して、溶接の状態を撮像するようになっている。
【0029】
この構成により、撮像装置20では、保護ガラス支持部24を回転させ、カバー27の開口部28に対応する位置に複数の保護ガラス26のうちのいずれかを選択的に配置する。これにより、撮像装置20では、例えば、アーク溶接を行うことにより溶接スパッタや溶接ヒュームがその保護ガラス26に付着した場合に、撮像に使用する保護ガラス26を変更できるようになっている。
【0030】
ロボット制御装置30(図1)は、ティーチペンダント40からの指示に従って多関節アーム部12、溶接機50、および画像処理装置60を制御するものである。具体的には、ロボット制御装置30は、いわゆるティーチング&プレイバック方式を用いて、溶接ロボットシステム1を制御する。すなわち、まず、溶接ロボットシステム1では、例えば作業員は、ワークWの溶接位置(開先位置)に沿った溶接トーチ13の座標情報等(教示データ)を、ティーチペンダント40を用いてあらかじめ設定しておく。そして、ロボット制御装置30は、この教示データを利用して、多関節アーム部12、溶接機50、および画像処理装置60を制御することにより、溶接作業を行うようになっている。
【0031】
また、ロボット制御装置30は、溶接を行う際に、いわゆる倣い制御を行う。すなわち、ロボット制御装置30は、ワークWの開先位置が、教示点に基づいて配置した溶接トーチ13の溶接電極14の先端位置からずれている場合に、教示データに対して、そのずれに応じた補正を行うようになっている。これにより、溶接ロボットシステム1では、溶接トーチ13をより正確にワークWの開先位置に沿わせることができるようになっている。
【0032】
ティーチペンダント40は、作業者がマニピュレータ10の動作を教示するものである。
【0033】
溶接機50は、ロボット制御装置30から供給された制御信号に基づいて、溶接電流Isおよび溶接電圧Vs等を制御することにより、溶接電極14の先端とワークWとの間にアークを発生させるものである。
【0034】
画像処理装置60は、撮像装置20に対して制御信号を供給するとともに、撮像装置20から供給された撮像画像を処理するものである。具体的には、画像処理装置60は、例えば、撮像画像に基づいて、溶接トーチ13の位置の補正データを導出し、その補正データをロボット制御部30に対して供給する機能を有している。また、画像処理装置60は、撮像画像が不鮮明である場合には、撮像装置20のモータ25を制御することにより、撮像に使用する保護ガラス26を変更する機能をも有している。
【0035】
ここで、カバー27は、本発明における「カバー部材」の一具体例に対応する。保護ガラス26は、本発明における「光学部材」の一具体例に対応する。
【0036】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の溶接ロボットシステム1の動作および作用について説明する。
【0037】
(全体動作概要)
まず、図1〜4を参照して、溶接ロボットシステム1の全体動作概要を説明する。ロボット制御装置30は、ティーチペンダント40からの指示に従って多関節アーム部12、溶接機50、および画像処理装置60を制御する。多関節アーム部12は、ロボット制御装置30から供給された制御信号に基づいて、溶接トーチ13が上下前後左右に移動させる。溶接機50は、ロボット制御装置30から供給された制御信号に基づいて、溶接電極14の先端とワークWとの間にアークを発生させる。画像処理装置60は、撮像装置20に対して制御信号を供給するとともに、撮像装置20から供給された撮像画像を処理する。具体的には、画像処理装置60は、例えば、撮像画像に基づいて、溶接トーチ13の位置の補正データを導出し、その補正データをロボット制御部30に対して供給する。ロボット制御部30は、この補正データに基づいて、いわゆる倣い制御を行う。また、画像処理装置60は、撮像画像が不鮮明である場合には、撮像装置20のモータ25を制御することにより、撮像に使用する保護ガラス26を変更する。
【0038】
(作用)
溶接ロボットシステム1では、撮像装置20に、着脱可能な保護ガラス26を設けるようにしたので、シンプルな構成で、溶接スパッタや溶接ヒュームから撮像部22を保護することができる。特に、溶接ロボットシステム1では、特許文献1〜3に記載の溶接装置とは異なり、撮像部22を保護するためにシールドガスを利用しないため、溶接不良が生じるおそれを低減しつつ、撮像部22を保護することができる。さらに、シールドガスの使用量を抑えることができる。
【0039】
また、溶接ロボットシステム1では、複数(この例では4枚)の保護ガラス26を、保護ガラス支持部24の周方向に並設するようにしたので、保護ガラス支持部24を回転させることにより、使用する保護ガラス26を変更することができる。これにより、溶接作業により、溶接スパッタや溶接ヒュームが付着してしまった場合でも、使用する保護ガラス26を容易に変更することができる。その結果、鮮明な撮像画像を得ることができるため、例えば、倣い制御を効果的に行うことができ、溶接不良が生じるおそれを低減することができる。すなわち、例えば、保護ガラスを容易に変更できない場合には、保護ガラスに溶接スパッタや溶接ヒュームが多く付着してしまい、撮像画像が不鮮明になってしまう。この場合、画像処理装置では、例えば、被写体の位置を精度よく取得できないため、エラーが発生し、倣い制御に用いる補正データを求めることができなくなるおそれがある。その結果、溶接ロボットシステムでは、倣い制御を行うことができなくなるため、溶接不良が生じるおそれがある。一方、溶接ロボットシステム1では、使用する保護ガラス26を容易に変更することができるため、使用する保護ガラス26をきれいな状態に保つことができる。その結果、溶接ロボットシステム1では、鮮明な撮像画像を得ることができるので、溶接不良が生じるおそれを低減することができる。
【0040】
また、溶接ロボットシステム1では、複数の保護ガラス26を設け、カバー27の開口部28に対応する位置に、複数の保護ガラス26のうちの1枚を配置するようにした。これにより、撮像に使用していない保護ガラス26はカバー27により保護されるため、これらの保護ガラス26に溶接スパッタや溶接ヒュームが付着するおそれを低減することができ、まだ使用していない保護ガラス26をきれいな状態に保つことができる。
【0041】
また、溶接ロボットシステム1では、画像処理装置60が、撮像画像が不鮮明である場合に、撮像装置20のモータ25を制御することにより、使用する保護ガラス26を変更するようにしたので、作業者の負担を軽減することができる。
【0042】
[効果]
以上のように本実施の形態では、着脱可能な保護ガラスを設けるようにしたので、シンプルな構成で、撮像部を保護することができる。特に、シールドガスを用いないため、溶接不良が生じるおそれを低減しつつ、撮像部を保護することができる。
【0043】
本実施の形態では、複数の保護ガラスを、円筒部の周方向に並設するようにしたので、使用する保護ガラスを容易に変更することができる。その結果、鮮明な撮像画像を得ることができるため、溶接不良が生じるおそれを低減することができる。
【0044】
本実施の形態では、開口部に対応する位置に、複数の保護ガラスのうちの1つを配置するようにしたので、まだ使用していない保護ガラスをきれいな状態に保つことができる。
【0045】
[変形例1−1]
上記実施の形態では、画像処理装置60は、撮像画像が不鮮明である場合に、撮像装置20のモータ25を制御することにより、使用する保護ガラス26を変更したが、これに限定されるものではない。例えば、作業者が、例えばティーチペンダント40を操作して、モータ25を動作させることにより、使用する保護ガラス26を変更してもよい。また、作業者が、直接、撮像装置20の保護ガラス支持部24を回転させてもよい。
【0046】
[変形例1−2]
上記実施の形態では、複数の保護ガラス26を、保護ガラス支持部24の周方向に並設したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図5A,5Bに示す撮像装置20Aのように、複数の保護ガラス26を軸方向に並設してもよい。図5Aは、撮像装置20Aの斜視図を表すものであり、図5Bは、カバー(カバー27A)を外した撮像装置20Aの斜視図を表すものである。撮像装置20Aは、カバー27Aと、保護ガラス支持部24Aとを有している。複数(この例では2枚)の保護ガラス26は、保護ガラス支持部24Aの軸方向に並設されている。この場合、保護ガラス支持部24Aを軸方向に移動させることにより、使用する保護ガラス26を変更することができる。なお、この例では、円筒形状の保護ガラス支持部24Aを用いたが、断面形状は円に限定されるものではなく、例えば、断面形状を矩形にしてもよい。
【0047】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0048】
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る溶接ロボットシステム2について説明する。本実施の形態は、撮像装置の構成が、上記第1の実施の形態と異なるものである。その他の構成は、上記第1の実施の形態(図1)と同様である。なお、上記第1の実施の形態に係る溶接ロボットシステム1と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
図1に示したように、溶接ロボットシステム2は、撮像装置80を有している。
【0050】
図6Aは、撮像装置80の斜視図を表すものであり、図6Bは、カバー27を外した状態での撮像装置80の斜視図を表すものである。図7は、撮像装置80の要部の分解斜視図を表すものである。撮像装置80は、保護ガラス支持部84と、保護ガラス86とを有している。
【0051】
保護ガラス支持部84は、保護ガラス86を支持するものであり、第1の実施の形態に係る保護ガラス支持部24(図2など)と同様に、軸Aを中心に回転可能に構成されている。保護ガラス支持部84は、保護ガラス86と接続するための、図示しない接続部を有している。
【0052】
保護ガラス86は、溶接スパッタや溶接ヒュームから撮像部22を保護するものであり、耐熱性を有するものである。この保護ガラス86は、円筒形状を有している。すなわち、第1の実施の形態に係る撮像装置20では、保護ガラス支持部24の周方向に並設した複数の保護ガラス26を用いたが、本実施の形態に係る撮像装置80では、1部品として保護ガラス86を構成している。保護ガラス86は、保護ガラス支持部84から着脱可能に構成されている。なお、これに限定されるものではなく、保護ガラス支持部84自体を撮像装置80から着脱可能に構成してもよい。
【0053】
この構成により、撮像装置80では、保護ガラス支持部84を回転させることにより、撮像で使用する保護ガラス86の領域を変更することができる。その際、変更前において使用した領域の領域と、変更後において使用する領域とが、互いに重ならないようにしてもよい。
【0054】
また、変更前において使用した領域の一部と、変更後において使用する領域の一部とが互いに重なるようにしてもよい。具体的には、アーク溶接を行うことにより、溶接スパッタが、保護ガラス86のうちの開口部28に対応する領域のうちの一部に付着した場合には、その付着した部分がカバー27により隠れる程度に、保護ガラス支持部84を回転させてもよい。
【0055】
溶接ロボットシステム2では、撮像装置80に、円筒形状を有する保護ガラス86を用いるようにしたので、アーク溶接中に、撮像で使用する保護ガラス86の領域を変更することができる。すなわち、例えば、第1の実施の形態に係る溶接ロボットシステム1では、複数枚の保護ガラス26を用いているため、アーク溶接中に、使用する保護ガラス26を変更しようとすると、溶接状態を撮像できない期間が生じてしまう。一方、本実施の形態に係る溶接ロボットシステム2では、円筒形状を有する保護ガラス86を用いるようにしたので、アーク溶接中に、使用する保護ガラス86の領域を変更しても、溶接状態を撮像し続けることができる。
【0056】
以上のように本実施の形態では、円筒形状を有する保護ガラスを用いるようにしたので、アーク溶接中に、使用する保護ガラスの領域を変更することができる。その他の効果は、上記第1の実施の形態の場合と同様である。
【0057】
[変形例2−1]
上記実施の形態では、円筒形状の保護ガラス86を用いたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、半円筒形状の保護ガラスを用いてもよい。
【0058】
[変形例2−2]
例えば、第2の実施の形態に係る撮像装置80において、カバー27の内側にブラシを設け、保護ガラス86が回転する際に、そのブラシが保護ガラス86に付着したスパッタなどを取り除くようにしてもよい。
【0059】
[変形例2−3]
上記実施の形態では、撮像装置80では、保護ガラス支持部84を回転させることにより、撮像で使用する保護ガラス86の領域を変更するようにしたが、その際、例えば、保護ガラス支持部84が回転し続けるようにしてもよい。
【0060】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0061】
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0062】
例えば、上記の各実施の形態では、撮像部22は、ミラー23を介して撮像するようにしたが、これに限定されるものではなく、撮像部22が、ミラーを介さずに、溶接状態を直接撮像するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,2…溶接ロボットシステム、10…マニピュレータ、11…ベース部材、12…多関節アーム部、12A,12B…アーム、13…溶接トーチ、14…溶接電極、15…作業代、20,20A,80…撮像装置、21…支持部、22…撮像部、23…ミラー、24,24A,84…保護ガラス支持部、25…モータ、26,86…保護ガラス、27,27A…カバー、271…円筒部、272…底面部、28…開口部、30…ロボット制御装置、40…ティーチペンダント、50…溶接機、60…画像処理装置、A…軸、L1〜L7…ケーブル。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7