【解決手段】このレーザ樹脂溶着装置は、波長0.4〜1.1μmのレーザビームLBを発振出力するレーザ発振部10と、レーザビームLBを加工ステージ12上のワーク(被加工物)Wに集光照射するためのレーザ光学系14と、装置内の各部を制御する制御部16と、樹脂溶着の加工状況ないし加工品質を非接触・非破壊式でモニタするためのモニタ部18とを備えている。モニタ部18の放射温度計26は、レーザビームLBの照射中にワークWの被溶着部W
前記被溶着部の測定温度が所定の基準温度に一致または近似するように、前記レーザビームの出力をオン・オフ制御方式で制御する第4の工程を更に有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザ樹脂溶着方法。
0.4〜1.1μmの範囲内の波長を有するレーザビームを透過させる第1の樹脂と前記レーザビームを吸収する第2の樹脂とを重ね合わせて溶着するためのレーザ樹脂溶着装置であって、
前記レーザビームを発振出力するレーザ発振部と、
前記第1の樹脂と対向して前記レーザビームの光路上に配置され、前記レーザ発振部からの前記レーザビームを前記第1の樹脂と前記第2の樹脂との接触界面に設定された被溶着部に集光させる集光レンズと、
前記集光レンズの光軸上に配置され、前記被溶着部より放射される1.8〜2.5μmの範囲内の波長を有する近赤外線を受光して、前記近赤外線の光強度から前記被溶着部の温度を測定する放射温度計と
を有するレーザ樹脂溶着装置。
前記放射温度計により求められる測定温度が所定の基準温度に一致または近似するように、前記レーザビームの出力をオン・オフ制御方式で制御する制御部を更に有する、請求項5に記載のレーザ樹脂溶着装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ樹脂溶着法は、接着剤を不要とし、さらには振動溶着法や超音波溶着法と比べても、バリや騒音・粉塵が発生しないことや、局所的な急熱急冷により周辺部への熱影響が少ないこと等の優位性を有している。
【0007】
しかしながら、従来のレーザ樹脂溶着方法においては、製品の外観が綺麗である反面、溶着部が製品の内部(樹脂境界面)に隠れるため、破壊検査を用いて樹脂溶着加工の品質管理を行っている。非接触・非破壊式で樹脂溶着の加工状況ないし加工品質をモニタする技術が確立されていない。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、非接触・非破壊式で樹脂溶着の加工状況ないし加工品質をモニタできるようにしたレーザ樹脂溶着法およびレーザ樹脂溶着装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーザ樹脂溶着方法は、0.4〜1.1μmの範囲内の波長を有するレーザビームを透過させる第1の樹脂と前記レーザビームを吸収する第2の樹脂とを重ね合わせる第1の工程と、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂との接触界面に設定された被溶着部に前記第1の樹脂側から集光レンズを介して前記レーザビームを集光照射する第2の工程と、前記被溶着部より放射される1.8〜2.5μmの範囲内の波長を有する近赤外線を前記集光レンズの光軸上で受光して、前記近赤外線の光強度から前記被溶着部の温度を測定する第3の工程とを有する。
【0010】
本発明のレーザ樹脂溶着装置は、0.4〜1.1μmの範囲内の波長を有するレーザビームを透過させる第1の樹脂と前記レーザビームを吸収する第2の樹脂とを重ね合わせて溶着するためのレーザ樹脂溶着装置であって、前記レーザビームを発振出力するレーザ発振部と、前記第1の樹脂と対向して前記レーザビームの光路上に配置され、前記レーザ発振部からの前記レーザビームを前記第1の樹脂と前記第2の樹脂との接触界面に設定された被溶着部に集光させる集光レンズと、前記集光レンズの光軸上に配置され、前記被溶着部より放射される1.8〜2.5μmの範囲内の波長を有する近赤外線を受光して、前記近赤外線の光強度から前記被溶着部の温度を測定する放射温度計とを有する。
【0011】
本発明のレーザ樹脂溶着方法または装置においては、ワーク(重ね合わせられた第1および第2の樹脂)の被溶着部にレーザビームが集光照射されると、ワーク内部の被溶着部からその発熱温度に応じた光強度を有する赤外線が四方に放射される。この赤外線の中には、1.8〜2.5μmの範囲内の測定波長を有する近赤外線も含まれている。このワーク内部の被溶着部から放射された測定波長の近赤外線の一部は、光透過性樹脂を透過し、集光レンズを通って放射温度計の受光部に入射する。放射温度計は、測定波長の近赤外線の光強度から被溶着部の温度を測定する。現場関係者は、放射温度計より得られた被溶着部の測定温度から、被溶着部の溶け込み具合(加工状況)を推定または評価し、ひいては溶融池が凝固した後の溶着強度(加工品質)を推定または評価することができる。
【0012】
本発明の好適な一態様においては、集光レンズのガラス材料にBK7が用いられる。また、被溶着部の測定温度が所定の基準温度に一致または近似するように、レーザビームの出力がオン・オフ制御方式で制御される。また、放射温度計は、その受光部が集光レンズの中心軸線上に位置するように、集光レンズの光軸上に配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレーザ樹脂溶着方法またはレーザ樹脂溶着装置によれば、上記のような構成および作用により、接触・非破壊式で樹脂溶着の加工状況ないし加工品質をモニタすることが可能であり、レーザ樹脂溶着加工の品質および信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[実施形態における装置構成]
【0016】
図1に、本発明の一実施形態におけるレーザ樹脂溶着装置の全体の構成を示す。
【0017】
図1に示すように、このレーザ樹脂溶着装置は、樹脂溶着に適した波長のレーザビームLBを発振出力するレーザ発振部10と、このレーザ発振部10より発振出力されたレーザビームLBを加工ステージ12上のワーク(被加工物)Wに照射するためのレーザ光学系14と、装置内の各部を制御する制御部16と、樹脂溶着の加工状況ないし加工品質を非接触・非破壊式でモニタするためのモニタ部18とを備えている。
【0018】
レーザ発振部10は、0.4〜1.1μm(400〜1100nm)の範囲内の波長を有するレーザビームLBを生成するレーザ発振素子または発振器と、このレーザ発振素子または発振器に励起用の電力を供給するレーザ電源回路とを有している。該レーザ発振素子または発振器としては、たとえば、発振波長400nmの青色発光ダイオード、発振波長900〜980nmの半導体レーザ、発振波長1064nmのYAGレーザ、発振波長1030〜1070nmのファイバレーザ等を用いることができる。
【0019】
レーザ光学系14は、レーザ発振部10からのレーザビームLBを加工ステージ12上のワークWに向けて所定の角度で折り返すためのベントミラー20と、このベントミラー20とワークWとの間のレーザ光路上に配置される集光レンズ22とを有する。ベントミラー20は、たとえばダイクロイックミラーであり、0.4〜1.1μmの範囲内の波長に対して高い反射性を示す膜と1.8〜2.5μmの範囲内の波長に対して高い透過性を示す膜とをコーティングしている。
【0020】
別の実施例として、ダイクロイックミラーに代えて、同様の機能を有する波長選択フィルタをベントミラー20に用いることも可能である。また、ベントミラー20として、0.4〜1.1μmの範囲内の波長に対してのみ高い反射性を示す膜と、その範囲外の波長をすべて透過させる膜とをコーティングしているミラーを使用し、このミラーと後述するモニタ部18(放射温度計26)との間に1.8〜2.5μmの範囲内の波長のみを選択的に透過させる光学フィルタを配置する構成も可能である。
【0021】
集光レンズ22は、加工ステージ12と平行に向かい合い、上方のベントミラー20でステージ12側(垂直下方)に折り返したレーザビームLBをワークWの被溶着部W
TSに集光させるように適度の高さ位置に配置される。
【0022】
この実施形態では、ベントミラー20および集光レンズ22の基材またはガラス材料にBK7を用いる。BK7は、ガラス材料として、安価なだけでなく、後述するように1.8〜2.5μmの波長領域に対する透過率が合成石英よりも安定している。
【0023】
制御部16は、好ましくはマイクロコンピュータを含んで構成され、この実施形態におけるレーザ樹脂溶着方法を実施するのに必要な制御プログラム、条件設定値、換算表またはテーブル等を内部または外部のメモリ(図示せず)に格納している。
【0024】
ワークWは、レーザビームLBの波長(0.4〜1.1μmの範囲内)に対して透過性の光透過性樹脂TPと吸収性の光吸収性樹脂APとからなり、板状の重ね継手を形成する。図示のように、ワークWは、光吸収性樹脂APの上に光透過性樹脂TPを重ね合わせて(光透過性樹脂TPを集光レンズ22側に向けて)ステージ12上に配置される。ワークWの被溶着部W
TSは、板面方向では任意の位置に設定され、板厚方向では両樹脂TP,APの接触界面およびその近傍に設定される。好ましくは、レーザビームLBの照射中に板厚方向の加圧力を両樹脂TP,APに加える加圧装置(図示せず)が用いられる。
【0025】
一般に、光透過性樹脂TPは無着色であり、光吸収性樹脂APは着色している。しかし、着色材料やフィラーに応じて、光吸収性樹脂APが着色している場合や、光吸収性樹脂TPが着色していない場合もある。
【0026】
モニタ部18は、レーザ樹脂溶着の加工状況ないし品質を非接触・非破壊式でモニタリングするためのツールとして放射温度計26を有している。この放射温度計26は、レーザビームLBの照射中にワークWの被溶着部W
TSから放射される1.8〜2.5μmの範囲内の波長を有する近赤外線NIRを受光して、その近赤外線NIRの光強度から被溶着部W
TSの温度を計測するように構成されている。
【0027】
より詳細には、放射温度計26は、1.8〜2.5μmの範囲内の波長に感度を有する光電変換素子または近赤外線センサ(フォトダイオード)と、この光電変換素子の出力信号に基づいて測定対象つまり被溶着部W
TSの温度を求める演算回路あるいはテーブル等を有しており、ワークWからの近赤外線NIRを精度よく安定に受光できるように集光レンズ22の光軸上に配置される。
【0028】
図1の構成例において、放射温度計26は、その受光部26aが集光レンズ22の中心軸線上に位置するように、集光レンズ22の真上に配置される。受光部26aの内側または手前には、ワークWから集光レンズ22およびベントミラー20を通ってくる放射光(特に1.8〜2.5μmの範囲内の波長を有する近赤外線NIRを光電変換素子に集光入射させるための集光(入射)レンズ28が配置される。好ましくは、この集光(入射)レンズ28のガラス材料にもBK7が用いられる。
[実施形態における作用]
【0029】
上記構成のレーザ樹脂溶着装置において、ステージ12上のワークWに対してレーザ樹脂溶着の加工を実施する場合は、水平方向(XY方向)においてワークWの被溶着部W
TSを集光レンズ22の光軸上に位置決めし、鉛直方向(Z方向)において集光レンズ22の焦点がワークWの被溶着部W
TS付近に位置するように焦点合わせ(高さ調整)を行ってから、制御部16の制御の下でレーザ発振部10がレーザ発振動作を行う。
【0030】
レーザ発振部10より所望のレーザ出力で発振出力されたレーザビームLBは、レーザ光学系14のベントミラー20および集光レンズ22を通って、ステージ12上のワークWに入射する。ワークWの中で、レーザビームLBは、上層の光透過性樹脂TPを透過し、下層の光吸収性樹脂APに入射して吸収される。光吸収性樹脂APは、レーザビームLBを吸収することにより、発熱して溶融する。そして、光吸収性樹脂APの発した熱が光透過性樹脂TPに伝わり、光透過性樹脂TPも溶融する。こうして、両樹脂TP,APの接触境界面付近つまり被溶着部W
TSに溶融池が形成される。一定時間の経過後にレーザビームLBの発振出力または照射が止むと、この溶融池は凝固する。こうして、ワークWにおいて両樹脂TP,APが被溶着部W
TSにて溶着される。
【0031】
上記のようにワークWの被溶着部W
TSにレーザビームLBが集光照射されている時は、被溶着部W
TSからその発熱温度に応じた光強度を有する赤外線が四方に放射される。この赤外線のスペクトルはおおよそ1〜10μmの広い範囲にわたっており、1.8〜2.5μmの範囲内の測定波長を有する近赤外線NIRもその中に含まれている。そして、ワークW内部の被溶着部W
TSから垂直上方に放射される測定波長(1.8〜2.5μm)の近赤外線NIRは、光透過性樹脂TPを透過し、集光レンズ22、ベントミラー20および集光レンズ28を通って放射温度計26の受光部26aに入射する。
【0032】
放射温度計26は、測定波長の近赤外線NIRを受光すると、光電変換素子より得られる光電変換信号に基づいて近赤外線NIRの光強度を表す光強度測定値を演算により求める。さらに、近赤外線NIRの光強度測定値から、近赤外線NIRの放出源であるワークWの被溶着部W
TSの温度をテーブルまたは所定の換算(演算)処理により求める。放射温度計26より得られた被溶着部W
TSの温度測定値は、制御部16に取り込まれ、当該レーザ樹脂溶着の加工状況ないし加工品質を表すモニタ値として表示部24に表示される。
【0033】
現場作業員等の関係者は、モニタ情報として提供されるワーク測定温度から、被溶着部W
TSの溶け込み具合(加工状況)を推定または評価し、ひいては溶融池が凝固した後の溶着強度(加工品質)を推定または評価することができる。制御部16は、被溶着部W
TSの測定温度の表示に加えて、その測定温度を所定の監視値またはウィンドウと比較して当該樹脂溶着加工の良否判定を行い、その良否判定の結果を表示部24上で表示することもできる。
【0034】
さらに、制御部16は、レーザ樹脂溶着の加工中に、放射温度計26より得られる温度測定値が予め設定した基準値に一致または近似するように、レーザ発振部10を通じてレーザビームLBのレーザ出力をオン・オフ制御方式で制御することもできる。一般に、この種の温度制御にはPID(比例積分微分)制御方式が用いられている。しかしながら、PID制御方式は、ワークWの種類や特性(特に熱容量やレーザ光吸収特性)に応じて制御量ないし操作量を調整する必要がある。その点、オン・オフ制御方式は、ワークWの種類や特性が変わっても特に調整の必要はない。この実施形態においては、レーザ樹脂溶着加工の品質および信頼性を向上させることができる。
【0035】
上記のように、この実施形態においては、レーザ樹脂溶着の加工状況ないし品質を非接触・非破壊式でモニタリングするために、集光レンズ22の光軸上に放射温度計26を設け、ワークWの被溶着部W
TSから放射される1.8〜2.5μmの範囲内の波長を有する近赤外線NIRの光強度を測定し、その光強度測定値から被溶着部W
TSの温度を表す温度測定値をモニタ値として求めるようにしている。
【0036】
ここで、この実施形態において測定波長を1.8〜2.5μmの範囲に限定するのは、次のような理由に基づいている。
【0037】
第1に、上記のように、レーザビーム照射中は、ワークW内部の被溶着部W
TSよりスペクトルが約1〜10μmの広い範囲に分布する赤外線が放射される。しかし、被溶着部W
TSより放射される赤外線の光強度はレーザビームLBに比べて相当低いうえ、大部分のスペクトルが光透過性樹脂TPに吸収されて測定不能なレベルまで減衰してしまう。ところが、
図2に示すように、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、PE(ポリエチレン)、ABS樹脂、PP(ポリプロピレン)など多くの樹脂が1.8〜2.5μm(1800〜2500nm)の範囲内の波長に対しては低い吸収係数を示す。
図2では省略しているが、2.5μm(2500nm)以上の波長に対しては、一般的に樹脂等の有機物は高い吸収性を示す。なお、
図2のスペクトルは、1300nmにて正規化している。
【0038】
したがって、測定対象の赤外線を1.8〜2.5μmの範囲内の波長に限定することで、ワークW内部の被溶着部W
TSから光透過性樹脂TPの外に放出される赤外線の光強度を高感度で測定し、ひいてはワークWの被溶着部W
TSの温度を高精度に測定することができる。
【0039】
第2に、放射温度計は、受光した赤外線の光強度を一定の相関関係に基づいてその放射源の温度に換算するようにしている。ところが、この種のレーザ樹脂溶着加工においては、ワークWの被溶着部W
TSが不定のプロファイルで溶けるため、特定方向(垂直上方)に放射される赤外線の光強度または光量がばらつきやすい。
【0040】
一方で、
図3に示すように、発熱体の温度と該発熱体から放射される赤外線の光強度との相関関係は赤外線の波長によって異なり、一般的なレーザ樹脂溶着の加工温度である300℃以下の比較的低い温度領域では1μm、2μm、3μm、6μmと波長が長いほど、光強度の変化に対する温度の変化(特性曲線の傾き)は大きい。なお、
図3において、横軸は発熱体の温度を示し、縦軸は該発熱体から放射される赤外線の光強度を示す。
【0041】
つまり、ワークWの被溶着部W
TSから放射される赤外線の光強度のばらつきの影響(相関関係から導出される温度測定値の誤差)は、波長が短いほど小さく、波長が長いほど大きい。もっとも、測定用の赤外線波長を1μmまたはその近くに選ぶと、加工用のレーザビームLBの波長と抵触(干渉)するおそれがあるだけでなく、光強度(光量)の絶対量が著しく低くなる。このことから、この実施形態では、測定波長を1.8〜2.5μmの範囲内に設定する。
【0042】
なお、
図4に示すように、高温の領域、特に約650℃以上では、赤外線の光強度と温度の相関関係は波長によってさほど違わなくなる。
図4においても、横軸は発熱体の温度を示し、縦軸は該発熱体から放射される赤外線の光強度を示す。
【0043】
この実施形態では、上記のようにワークWより放出された測定波長の近赤外線NIRが放射温度計26まで伝播する途中に通過する集光レンズ22、ベントミラー20および集光レンズ28のガラス材料にBK7を用いていることも重要である。すなわち、
図5に示すように、1.8〜2.5μmの波長領域では、合成石英の透過率は2.2μm近辺で急峻に落ち込むのに対して、BK7の透過率は単調に減少するだけであり、測定波長の近赤外線NIRを透過させるガラス材料としてBK7のほうが合成石英よりも安定している。もちろん、コスト的にもBK7は合成石英より有利である。
【0044】
もっとも、1.8〜2.5μmの波長領域では波長が長くなるほど上記のようにBK7の透過率が単調に減少する。したがって、測定波長の上限を下げるのも好ましく、たとえば1.8〜2.3μmの範囲内としてもよい。
[他の実施形態または変形例]
【0045】
上記実施形態では、レーザビームLBが集光レンズ22の光軸上を通り、ワークWの被溶着部W
TSは集光レンズ22の光軸上に設定された。しかし、レーザ光学系14にガルバノ・スキャナや3次元スキャナを搭載する構成も可能である。集光レンズ22はfθレンズであってもよい。
【0046】
また、モニタ部18において、放射温度計26は、集光レンズ28の光軸上で測定波長の近赤外線NIRを受光すればよく、必ずしも空間的に集光レンズ22と同軸である必要はない。たとえば、
図6に示すように、集光レンズ22の真上に折り返しミラー30を配置して、折り返しミラー30で水平方向に折り返された測定波長の近赤外線NIRを受光するように放射温度計26を横向きに配置してもよい。
【0047】
ベントミラー20に関する別の実施例として、ダイクロイックミラーに代えて、同様の機能を有する波長選択フィルタを用いることも可能である。また、ベントミラー20として、0.4〜1.1μmの範囲内の波長に対してのみ高い反射性を示す膜と、その範囲外の波長をすべて透過させる膜とをコーティングしているミラーを用いてもよい。この場合、ベントミラー20とモニタ部18の放射温度計26との間の光路上に、あるいは放射温度計26の中に、1.8〜2.5μmの範囲内の波長を選択的に透過させる光学フィルタを設けてよい。
【0048】
上記実施例では、上記のように測定波長の近赤外線NIRを通す光学部品20,22,28のガラス材料にBK7を用いたが、それらの一部または全部に合成石英を用いることも可能であり、さらには製造コストの増大を招くが、無水合成石英を用いてもよい。
【0049】
本発明におけるレーザ樹脂溶着の形態は、スボット溶着に限定されず、シーム溶着等も可能である。