(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-155355(P2016-155355A)
(43)【公開日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】フィルムの真空ラミネート装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20160805BHJP
【FI】
B29C65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-36655(P2015-36655)
(22)【出願日】2015年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一雄
(72)【発明者】
【氏名】大澤 睦
(72)【発明者】
【氏名】山本 英樹
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AH36
4F211AP05
4F211AP11
4F211AR06
4F211AR12
4F211TA13
4F211TH06
4F211TH19
4F211TJ15
4F211TJ31
4F211TN01
4F211TQ07
(57)【要約】
【課題】例えば、真空度0.5kPa以下といった高真空中でラミネート可能なフィルムの真空ラミネート装置を提供すること。
【解決手段】投入される基板14aの長さに応じて貼り付ける積層フィルム21の長さを変えるために、ラミネート前に基板14aの長さを測定し、ハーフカット位置とラミネーションロール26近傍に設けたナイフエッジ部24との間に、測定した基板14aの長さに応じて積層フィルム21の保持長さを変えるフィルム長さ調整機構23を備え、このフィルム長さ調整機構23により積層フィルム21の保持長さを変えた保護フィルム27を剥離する前の積層フィルム21を、貼り付ける積層フィルム21の長さ位置にてハーフカットし、フィルム搬送手段20、29により積層フィルム21を、保護フィルム27によって連続した状態で、ナイフエッジ部24まで搬送するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空室内で、搬送手段により基板を搬送しながら、フィルムを、フィルムから保護フィルムを剥離して、基板に貼り付けるフィルムの真空ラミネート装置において、投入される基板の長さに応じて貼り付けるフィルムの長さを変えるために、ラミネート前に基板の長さを測定し、ハーフカット位置とラミネーションロール近傍に設けたナイフエッジ部との間に、測定した基板の長さに応じてフィルムの保持長さを変えるフィルム長さ調整機構を備え、該フィルム長さ調整機構によりフィルムの保持長さを変えた保護フィルムを剥離する前のフィルムを、貼り付けるフィルムの長さ位置にてハーフカットし、フィルム搬送手段によりフィルムを、保護フィルムによって連続した状態で、ナイフエッジ部まで搬送するようにしたことを特徴とするフィルムの真空ラミネート装置。
【請求項2】
真空室内を、真空度0.5kPa以下の気密状態にして、フィルムをラミネートすることを特徴とする請求項1記載のフィルムの真空ラミネート装置。
【請求項3】
真空室内に、ラミネート工程の前工程で基板を加熱するための基板加熱機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のフィルムの真空ラミネート装置。
【請求項4】
基板加熱機構の出口で基板の温度を測定し、測定した温度を基板加熱機構の温度制御部にフィードバックして、基板の加熱温度を自動制御するようにしたことを特徴とする請求項3記載のフィルムの真空ラミネート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの真空ラミネート装置に関し、特に、プリント基板の表面にパターン形成用の感光性ドライフィルム等の積層フィルムを真空中で貼り付けるためのフィルムのラミネート真空装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板(本明細書において、単に、「基板」という場合がある。)は、携帯電話等を中心に技術革新が進んでいる状況下にあり、特に、基板の小型・軽量化が重要課題になっている。
基板の小型化に対しては、基板に形成するパターンの微細化と基板の多層化とが進められ、軽量化に対しては、基板の薄型化が進められている。
ここでパターンの形成は、主にフォトリソグラフィ工程と呼ばれるもので、銅張積層板に感光性ドライフィルム等の積層フィルムをラミネートし、その後に、露光、現像、エッチング又はメッキ処理を行い、パターンを形成するものである。
【0003】
感光性ドライフィルム等は、主に3層構造の積層フィルムで構成され、ポリエステルフィルム等からなるベースフィルム上に感光性・熱硬化性を有するレジスト層が塗布され、その上にポリエチレンフィルム等からなる保護フィルムを積層した3層で形成される。
以下、この感光性ドライフィルム等を積層フィルム(本明細書において、単に、「フィルム」という場合がある。)と称する。
【0004】
プリント基板を製造するパターン形成用ラミネート工程では、積層フィルムの保護フィルムを剥して、熱圧着ロールであるラミネーションロールで、ベースフィルム上からレジスト層を加熱・加圧して、銅張積層板に積層フィルムを熱圧着する。
【0005】
真空ラミネート装置の主な用途として、高い信頼性が必要な基板及び微細パターン形成用に積層フィルムを真空ラミネートするものや多層基板の製造工程で基板表面に配線パターン等が形成された凹凸基板表面に感光性ソルダーレジストフィルム(絶縁フィルム)等を真空ラミネートするものがある。
積層フィルムを真空中でラミネートする目的は、ラミネート時に貼り付ける基板表面と積層フィルムの間に、密着不良の原因となる微小な気泡を混入させないためであるが、近年、パターンの微細化に伴い、平坦な銅張積層板にラミネートする場合、基板表面の微細な凹凸に微小気泡(直径10μmレベル以下)が混入することで不良の原因となるため、真空ラミネート装置を用いるようにしている。
【0006】
なお、通常の銅張積層板の表面は、レジストの密着力を向上させるため、ラミネート前の前処理として、深さ10μm以下の粗面加工を行っている。主な粗面加工方法は、酸の薬品等による化学研磨で実施する。
この粗面部の凹部に接着成分を含むレジストが侵入することで、基板との密着力が向上する。これをアンカー効果と称している。
この粗面加工に起因して、大気中でのラミネートは、加圧不均一による粗面凹部へのレジスト押し込み不足や加熱不均一によるレジストの溶融不足等で、粗面凹部に微小気泡が残存する。真空中でのラミネートは、粗面凹部にレジストの侵入を阻む大気がないため、レジストの埋め込み性が大幅に改善するものである。
【0007】
真空下でラミネートする方式は、大気と真空室を仕切る必要があり、入口室、真空室及び出口室から構成された真空ラミネート装置を用いたものが提案されている(特許文献1参照。)。
【0008】
また、別の真空ラミネート方式として、減圧室の外部(大気中)から積層フィルムを減圧室に導入し、基板搬入・搬出は、真空室を密閉シールする圧着ロール(ゴム製)を使用しないことで、基板を清浄な状態で真空ラミネートできるものが提案されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−39038号公報
【特許文献2】特開2001−38806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
真空ラミネートする場合、その品質評価として、微小気泡の有無が重要な課題となる。
微小気泡の有無を左右する要因として、ラミネート時の真空度が大きな要因であることが、評価試験にて解明されつつある。一例として、パターンのライン(導体幅)&スペース(導体間の隙間)25μmレベル以下では、真空度1.3kPa以下が好ましいとされている。
また、今後量産化される、ライン&スペースが10μmレベル以下では、0.5kPa以下の高い真空度が要求されるものと考える。
このため、従来にない高真空下でのラミネート装置が要求されるが、現状、市場に高真空で生産性のよい真空ラミネート装置が見当たらないという課題がある。
【0011】
例えば、特許文献1に示される真空ラミネート方式は、従来の大気ラミネート装置と同じ構造であり、積層フィルムの搬送・保持に吸着保持機構を設けて構成している。この積層フィルムの吸着保持には、試験結果にて積層フィルム幅500mmにおいて、約12kPaの吸着差圧が必要であることが判った。このため、ラミネート装置を設けている真空室は、真空度約12kPa以下では積層フィルムの吸着保持ができない構成であるため、高い真空度に対応できないと考えられる。
【0012】
また、特許文献2に示されるものは、減圧室の外部(大気側)から積層フィルムのベースフィルムを導入し、真空シールで気密にしているが、ベースフィルムの両側でベースフィルムの厚さ分はリークしている構造である。
このため、完全に真空シールしている構造でなく、リーク量を上回る大容量の真空ポンプを使用しないと、真空度0.5kPa以下の真空度を保つことが困難であると考えられる。
また、基板搬入・搬出及び積層フィルム導入の都度に、大容量の減圧室を大気開放及び真空引きを行わなければならず、ラインの処理速度が大幅に低下することが予想される。
【0013】
また、真空中ラミネートの課題として、大気中で前工程の予備加熱装置で加熱した基板を真空室に投入した場合、真空引きで基板周囲の大気がなくなることで、基板表面温度が低下する。特にニーズが多い薄板基板では、放熱による基板温度低下が著しい。その低下温度は、基板厚み等により異なるが、基板厚み0.2mmの基板での試験結果は、約10℃の基板温度低下が発生する。
【0014】
上記より、真空中で積層フィルムをラミネートする場合、ラミネート前の基板温度低下により、レジストの溶融不足から、レジストの密着力が低下する課題がある。
この対策として、真空室入口部で基板温度を測定し、ラミネート速度を低下させて、レジスト加熱時間を長くすることで対応可能であるが、生産性が低下する。
なお、積層フィルムメーカの一般的な推奨条件は、基板の予備加熱温度を、ラミネート前の基板温度で、50〜60℃を推奨しており、また、ラミネート速度は約3m/minを推奨している。
【0015】
大気中で使用するラミネート装置の前に設置する基板予備加熱装置は、カートリッジヒータ又は熱風循環で、炉内の雰囲気温度を一定にする加熱方式とし、加熱炉内の雰囲気温度を測定し、フィードバック制御を行うのが一般的であるが、真空中では大気がないため、加熱炉内の雰囲気温度を測定できない課題がある。
【0016】
本発明は、上記従来のフィルムのラミネート装置の有する問題点に鑑み、例えば、真空度0.5kPa以下といった高真空中でラミネート可能なフィルムの真空ラミネート装置を提供することを第1の目的とする。
【0017】
また、本発明は、同じく、基板温度低下により、ラミネート時にレジスト密着力が低下する課題を解決できるフィルムの真空ラミネート装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記第1の目的を達成するため、本発明のフィルムの真空ラミネート装置は、真空室内で、搬送手段により基板を搬送しながら、フィルムを、フィルムから保護フィルムを剥離して、基板に貼り付けるフィルムの真空ラミネート装置において、投入される基板の長さに応じて貼り付けるフィルムの長さを変えるために、ラミネート前に基板の長さを測定し、ハーフカット位置とラミネーションロール近傍に設けたナイフエッジ部との間に、測定した基板の長さに応じてフィルムの保持長さを変えるフィルム長さ調整機構を備え、該フィルム長さ調整機構によりフィルムの保持長さを変えた保護フィルムを剥離する前のフィルムを、貼り付けるフィルムの長さ位置にてハーフカットし、フィルム搬送手段によりフィルムを、保護フィルムによって連続した状態で、ナイフエッジ部まで搬送するようにすることで、例えば、真空度0.5kPa以下といった高真空中でラミネート可能な真空ラミネート装置を提供するものである。
【0019】
また、上記第2の目的を達成するため、すなわち、大気中から真空室に投入された基板は、真空引きで基板周囲の大気が取り除かれることで、基板温度が低下し、この基板温度低下により、ラミネート時にレジスト密着力が低下する課題に対して、真空室内に、ラミネート工程の前工程で基板を加熱するための基板加熱機構を備えることで、ラミネート前の基板を最適条件に加熱するものである。
【0020】
また、上記の基板予備加熱装置を温度コントロール時に、真空中では大気がないため、加熱炉内の雰囲気温度を測定できない課題に対して、基板加熱機構の出口で基板の温度を測定し、測定した温度を基板加熱機構の温度制御部にフィードバックして、基板の加熱温度を自動制御するようにするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフィルムの真空ラミネート装置は、基板の微細パターン形成用の真空ラミネート工程において、製品の品質向上及びラミネート処理速度を向上することで生産性向上の効果がある。
より具体的には、
1.不良低減及びラミネート処理速度向上で生産性向上
(1)高い真空度(0.5kPa以下)でラミネートするため、不良要因となる微小気泡の混入を防止できる。
(2)真空室に設置の基板加熱機構にて、ラミネート前の基板温度の低下防止及び基板温度を一定化することで、レジストの密着力低下に対するラミネート品質を安定化することができる。また、基板温度の低下防止で、ラミネート速度を向上でき、生産性を向上することができる。
(3)基板加熱機構の出口で、基板温度を測定し、温度測定結果を基板加熱機構にフィードバックすることで、基板温度を安定化しラミネート品質を向上させることができる。
2.その他の効果
(1)真空中で積層フィルムをラミネートする場合、装置駆動部等から発生する浮遊異物を、真空引きにより真空室から除去することができ、積層フィルムと基板の間に混入する浮遊異物がなくなり、製品不良を低減することができる。
(2)真空中でラミネートするため、大気中に含まれる水分もなくなることで、積層フィルムと基板の間に混入する水分もなくなり、レジストの密着力向上と、配線パターンの主な材料である銅の表面の酸化防止効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のフィルムの真空ラミネート装置の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のフィルムの真空ラミネート装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明のフィルムの真空ラミネート装置の一実施例であって、基板の両面に積層フィルムを真空ラミネートする形態を示すもので、真空室2では、ラミネート直前の状態を示す。
このフィルムの真空ラミネート装置は、大気から基板を投入する入口室1と、真空中で基板を予備加熱し、ラミネートする真空室2と、真空室2から大気に基板を搬出する出口室3及びこれらを制御する図示していない制御装置から構成される。なお、真空室2内のフィルムラミネート部は、上下対称のため、下側の符号を省略する。
【0025】
図1において、基板14aは左方向から前工程の搬送コンベア等で搬入され、入口室1にある入口室コンベア部15で基板を搬入する。
真空状態にするため、基板搬入ゲート弁4を閉じ、真空ポンプ8にて真空引きを行い、入口室1を真空状態にする。
入口室1が真空室2とほぼ同じ真空度で、基板入口ゲート弁5を開き、基板を真空室2の基板加熱機構コンベア部16に搬入する。
【0026】
基板加熱機構コンベア部16の上下に設置の基板加熱機構17a,17bで加熱された基板14bは、コンベア移動にて、基板温度検出器18a、18bで、基板の表裏表面温度を測定し、フィードバック制御するため基板加熱機構の温度調節器にデータを送る。
基板投入コンベア部19では、図示していない基板整列装置等により、積層フィルム21のフィルム幅に合わせて基板幅方向が整列される。
【0027】
また、投入された基板14cの基板長さを、図示していない基板位置検出器と、基板投入コンベア部19のローラ送り量にて基板長さを測定する。
また、基板14c先端のラミネート開始位置の停止は、指定された基板貼り付け位置に積層フィルムを貼り付けるために、図示していない制御装置で基板投入コンベア部19の停止位置を制御する。
【0028】
真空室2のラミネート部では、フィルム巻出ユニット(フィルム搬送手段)20から積層フィルム21が保護フィルム送りロール28にて引き出され、保護フィルム27の送りにて積層フィルム21にハーフカット切断された位置が、積層フィルム先端25の位置まで搬送される。
このとき、ハーフカットユニット22は、投入された基板14cの貼り付け長さに応じた位置でハーフカットするため、積層フィルムをフィルム引き出し調整ユニット(フィルム長さ調整機構)23を図示していない駆動装置を用いて移動させる。
【0029】
ハーフカットは、積層フィルム21の保護フィルム27を残してベースフィルム及びレジストを切断する。このように積層フィルム21のすべての厚みを切断するのでなく、ハーフカットユニット22の反対側である保護フィルム27を残して切断することをハーフカットと称する。
【0030】
ナイフエッジ部24では、保護フィルム27を鋭角に折り返すことで、保護フィルム27を剥離した状態で、レジスト面を露出した積層フィルム先端25をナイフエッジ先端から引き出すものである。
【0031】
ラミネート位置に位置決めされた基板14cと積層フィルム先端25をラミネーションロール26上下にて、図示していないクランプ機構にてクランプし、図示していない回転駆動機構にて熱圧着しながらラミネートを行う。このとき、積層フィルム21は、ラミネーションロール26の回転駆動により引き出される。
【0032】
また、フィルム巻出ユニット20は、トルクモータ等でフィルム巻出軸にブレーキトルクを発生させて、ラミネート時の積層フィルム21の保持張力を最適化する。
また、保護フィルム27の巻き取りは、保護フィルム送りロール28にて保護フィルム27を引き出し、保護フィルム巻取ユニット(フィルム搬送手段)29にて巻き取り回収する。この保護フィルム送り速度は、ラミネーションロール26のラミネート速度と同期するように保護フィルム送りロール28の回転をサーボモータ等で制御する。
【0033】
基板搬出コンベア部31では、ラミネート速度に同調した基板搬出コンベア速度で、基板表裏に積層フィルム30を貼り付けた基板14dを受け取る。
このとき、出口室3では基板14dを受け取るため、ラミネート中に大気開放弁12cを閉じて、真空仕切り弁10cを開いて真空引きを行い、真空室2と出口室3の真空度がほぼ同圧にて、真空仕切り弁10cを閉じる。
【0034】
出口室3の真空度を真空計13cで監視し、真空室2とほぼ同じ真空度にて、基板出口ゲート弁6を開いて、基板搬出コンベア部31と出口室3の出口室搬出コンベア部32を同期回転させて、基板14eを出口室3に搬入する。
【0035】
次に、基板出口ゲート弁6を閉じて、大気開放弁12cを開いて、出口室3を大気状態にし、基板搬出ゲート弁7を開いて、積層フィルム30を貼り付けた基板14eを次工程装置に搬出する。
【0036】
以下、このフィルムの真空ラミネート装置の運転方法等の詳細について説明する。
運転準備として、真空室2及び出口室3を真空にするため、真空仕切り弁10b、真空仕切り弁10c及び真空バイパス弁11bを開いて、常時真空状態である真空マニホールド9から真空引きを行う。真空バイパス弁11bを開くのは、基板出口ゲート弁6を開閉するため、真空室2と出口室3の真空度をほぼ同圧にするものである。
【0037】
真空度の設定は、真空計13b及び真空計13cの信号出力にて、真空仕切り弁10b及び10cを閉じ、真空度が微小リーク等により大気側に上昇すると、同じく真空計13b、13cの信号出力にて、真空仕切り弁10b及び10cを開くことで真空引きを開始し、真空度をほぼ一定に保つことが可能である。また別の方法として、図示していないリーク弁等により、真空室2及び出口室3に微小な大気を入れて、リーク弁等を開閉制御することで、真空ポンプ8の真空排気量とのバランスで、真空度を保つ方法がある。
【0038】
前工程から投入された基板14aは、図示していない基板検出器の信号にて、基板搬入を確認し、入口室コンベア部15の搬送を停止する。同時に基板搬入ゲート弁4と大気開放弁12aを閉じ、真空仕切り弁10aを開いて、真空引きを行う。
【0039】
入口室1の真空度は、真空計13aで検知し、設定真空度よりわずか大気側真空度で、真空バイパス弁11aを開いて、入口室1と真空室2をほぼ同じ真空度にする。これは、真空状態の真空室2と大気状態の入口室1とをいきなり真空バイパス弁11aを開いて接続すると、真空室2の真空度が大幅に変化することになり、これを防止するためである。
また、基板入口ゲート弁5の前後真空室で差圧が発生すると、弁で塞ぐ開口面に押し付け力が発生し、ゲート弁の開動作ができないためである。
この真空仕切り弁は、メーカから商品化(商品名「ゲートバルブ」等)されており、開動作時の差圧は少ない方がよく、メーカ推奨として差圧約3.9kPa以下である。
【0040】
入口室1の真空度が設定値に達すると、基板入口ゲート弁5を開いて、基板14aを入口室コンベア部15及び基板加熱機構コンベア部16を同期速度で運転し、真空室2に基板を搬入する。
また、基板加熱機構コンベア部16の図示していない基板位置検出器にて、基板14bを基板加熱機構17a、17b内に停止させる。
【0041】
この基板加熱位置にて、基板加熱機構17a,17bで基板を加熱する。真空中で基板を加熱する方式は、熱を伝える大気がないため、輻射熱を利用する遠赤外線ヒータ等を使用するもので、
図1の基板加熱機構17a、17bに示すように、適用する最大基板サイズを上回る面積で、遠赤外線ヒータ等を配置する。この遠赤外線ヒータ等には、熱電対が埋め込まれており、温度制御するために温度調節器と接続されている。
また、基板の温度分布を均一化するため、ヒータゾーンは、基板流れ方向で上流・中流・下流と3分割し、幅方向で基板両端及び中央の3分割とし、合計9分割のゾーン分割し、温度制御することが好ましい。
【0042】
基板加熱機構17a、17bで加熱された基板14bの表面温度を、基板温度検出器18a、18bで測定し、そのデータにて温度調節器で温度コントロールする。
例として、ライン速度により基板加熱時間を一定化し、事前確認用のサンプル基板の温度測定値を参考に温度調節器の設定値を決めて、実際に流れる基板温度の測定値との偏差をフィードバックして、遠赤外線ヒータ等を温度制御するものである。
【0043】
真空室2内で基板温度を測定する方式として、基板に傷発生又は異物付着を考慮して非接触方式の温度検出器が好ましい。
非接触式方式の温度検出方法の例として、真空室2内に温度検出器用気密ボックスを設置し、その覗き窓からガラス越しに、放射温度計(物体から放射される黒体輻射と呼ばれる赤外線の量を計測し、温度に換算)にて測定するものである。
【0044】
図1は、ラミネート開始時の状態を示す。
ラミネーションロール26の上下ロールを図示しないエアーシリンダ等を用いて、積層フィルム先端25の位置で基板14cを挟んで、ラミネーションロール26をクランプし、クランプした状態でラミネーションロール26を回転駆動する。回転駆動源は、図示していないサーボモータ又は速度コントロールモータ等を使用し、ラミネート動作を開始する。
【0045】
ラミネーションロール26でラミネート済み積層フィルム30を貼り付けて、基板14cの長さより設定された積層フィルム貼り付け長さにより、ラミネート終端位置でラミネーションロール26のクランプを開くことで、ラミネート動作を完了する。
このとき、基板搬出コンベア部31の搬送速度は、ラミネート速度と同期するものである。
【0046】
出口室3は既に真空状態であり、基板出口ゲート弁6は、下降して開状態のため、積層フィルム30を貼り付けた基板14dは、同期速度にて出口室搬出コンベア部32にて、出口室3の基板14eの位置まで連続搬送される。
【0047】
基板14eの図示していない基板位置検出器の搬送完了信号にて、基板出口ゲート弁6を閉じ、大気開放弁12cを開いて、出口室3を大気状態にする。真空計13cにて出口室3が大気状態であることを確認し、基板搬出ゲート弁7を開いて、積層フィルム30を貼り付けた基板14eを出口室搬出コンベア部32を用いて、次工程装置に搬出する。
【0048】
真空室2は、運転中において常時真空状態であり、フィルム巻出ユニット20の積層フィルム残量検知信号にて運転を停止し、真空仕切り弁10a、10b、10cを閉じて、真空バイパス弁11a、11bを開いた後に、大気開放弁12a、12b、12cを開いて大気状態とし、真空室2の図示していない扉を開いて、積層フィルムの交換を実施する。
【0049】
以上、本発明の積層フィルムの真空ラミネート装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のフィルムの真空ラミネート装置は、高真空下で積層フィルムをラミネートするため、微小気泡の混入を防ぐことにより、微細パターン形成の用途に用いることができる。
また、配線パターン形成の最終工程で、配線の表面保護のため感光性ソルダーレジストフィルム(絶縁フィルム)をラミネートする工程があるが、既にパターン形成済みのため、基板表面は、配線パターン高さの凹凸があり、大気中のラミネートでは基板とレジスト間で気泡が残る課題があり、現在真空プレス装置で対応しているが、真空室を基板投入毎に大気開放しているため、処理速度が遅い課題がある。この真空プレス装置の代替え装置として用途がある。
【符号の説明】
【0051】
1 入口室
2 真空室
3 出口室
4 基板搬入ゲート弁
5 基板入口ゲート弁
6 基板出口ゲート弁
7 基板搬出ゲート弁
8 真空ポンプ
9 真空マニホールド
10a、10b、10c 真空仕切り弁
11a、11b 真空バイパス弁
12a、12b、12c 大気開放弁
13a、13b、13c 真空計
14a、14b、14c、14d、14e 基板
15 入口室コンベア部
16 基板加熱機構コンベア部
17a、17b 基板加熱機構
18a、18b 基板温度検出器
19 基板投入コンベア部
20 フィルム巻出ユニット(フィルム搬送手段)
21 積層フィルム
22 ハーフカットユニット
23 フィルム引き出し調整ユニット(フィルム長さ調整機構)
24 ナイフエッジ部
25 積層フィルム先端
26 ラミネーションロール
27 保護フィルム
28 保護フィルム送りロール
29 保護フィルム巻取ユニット(フィルム搬送手段)
30 ラミネート済み積層フィルム
31 基板搬出コンベア部
32 出口室搬出コンベア部