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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-155639(P2016-155639A)
(43)【公開日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】糸巻取装置及び繊維機械
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/02 20060101AFI20160805BHJP
【FI】
   B65H54/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-33977(P2015-33977)
(22)【出願日】2015年2月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】澤田 映
(72)【発明者】
【氏名】高田 寛
(72)【発明者】
【氏名】村山 賢一
【テーマコード(参考)】
3F056
【Fターム(参考)】
3F056AA05
3F056AB02
3F056CA05
3F056GA03
(57)【要約】
【課題】巻取処理機構が意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータに供給する電流を抑えることができる糸巻取装置及び繊維機械を提供する。
【解決手段】巻取ユニット1は、糸Yを供給可能なボビン支持部2と、ボビン支持部2の糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する巻取装置13と、巻取装置13が糸Yを巻き取るための処理を行う巻取処理機構としての糸継装置10と、糸継装置10を駆動する駆動モータ23と、を備える。巻取ユニット1は、巻取ユニット1の状態が第1状態のときに駆動モータ23に供給する電流を第1値とし、巻取ユニット1の状態が第1状態とは異なる第2状態のときに駆動モータ23に供給する電流を第1値よりも大きい第2値とするモータ電流調整部42を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給可能な給糸部と、
前記給糸部の糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
前記巻取部が糸を巻き取るための処理を行う巻取処理機構と、
前記巻取処理機構を駆動する駆動モータと、を備えた糸巻取装置であって、
前記糸巻取装置の状態が第1状態のときに前記駆動モータに供給する電流を第1値とし、前記糸巻取装置の状態が第1状態とは異なる第2状態のときに前記駆動モータに供給する電流を前記第1値よりも大きい第2値とするモータ電流調整部を備える、糸巻取装置。
【請求項2】
前記第2状態は、前記第1状態に対して前記巻取処理機構の振動が大きい状態、もしくは、前記第1状態に対して前記巻取処理機構の振動が大きいと推定される状態である、請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記巻取処理機構は、糸に作用する糸処理部と、当該糸処理部を所定方向に付勢するバネ部材と、を含み、
前記駆動モータは、前記バネ部材の付勢力に抗する駆動力により、当該糸処理部を可動させ、もしくは、所定位置に保持し、
前記モータ電流調整部は、前記駆動モータに供給する前記第1値及び前記第2値を、前記バネ部材の前記付勢力と前記巻取処理機構の前記振動の大きさとに基づいて切り替える、請求項2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記巻取処理機構の振動を検知するための振動検知部を備え、
前記モータ電流調整部は、前記駆動モータに供給する前記第1値及び前記第2値を、前記振動検知部の検知結果に応じて切り替える、請求項2又は3に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記パッケージに巻き取られた糸の巻取長さ、前記パッケージの直径、及び前記パッケージの重量の少なくとも何れかを計測又は算出するパッケージ状態取得部を備え、
前記モータ電流調整部は、前記駆動モータに供給する前記第1値及び前記第2値を、前記パッケージ状態取得部の計測結果又は算出結果に応じて切り替える、請求項1〜4の何れか一項に記載の糸巻取装置。
【請求項6】
前記パッケージに巻き取られる糸の巻取速度を計測する巻取速度計測部を備え、
前記モータ電流調整部は、前記駆動モータに供給する前記第1値及び前記第2値を、前記巻取速度測定部の測定結果に応じて切り替える、請求項1〜4の何れか一項に記載の糸巻取装置。
【請求項7】
前記パッケージに巻き取られる糸の巻取速度を設定する巻取速度設定部を備え、
前記モータ電流調整部は、前記駆動モータに供給する前記第1値及び前記第2値を、前記巻取速度設定部の設定値に応じて切り替える、請求項1〜4の何れか一項に記載の糸巻取装置。
【請求項8】
前記巻取処理機構は、分断された糸の糸継ぎを行うための糸継装置であり、
前記糸継装置は、糸に作用する糸処理部に前記駆動モータの駆動力を伝えるためのリンク機構を有し、
前記リンク機構は、カムと、前記カムにより駆動されるカムフォロアと、当該糸処理部を所定方向に付勢するバネ部材と、を含み、
前記カムフォロアは、当該バネ部材により前記カムに向けて付勢されている、請求項1〜7の何れか一項に記載の糸巻取装置。
【請求項9】
前記巻取部は、前記パッケージを補助的に支持する補助ローラを有し、
前記巻取処理機構は、前記パッケージを回転自在に支持するクレードルと、前記駆動モータにより前記補助ローラと前記パッケージとの接触圧力を調整する接圧調整機構と、を有する、請求項1〜7の何れか一項に記載の糸巻取装置。
【請求項10】
前記駆動モータは、ステッピングモータである、請求項1〜9の何れか一項に記載の糸巻取装置。
【請求項11】
糸を供給可能な給糸部、及び、前記給糸部の糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部を有する複数の糸巻取装置と、
複数の前記糸巻取装置が並べられた方向に走行可能な走行台車と、
前記走行台車に設けられ、前記複数の糸巻取装置のうち糸継要求のある糸巻取装置において分断された糸を繋ぐ糸継装置を含む巻取処理機構と、
前記糸継装置に設けられ、糸に作用する糸処理部と、
前記走行台車に設けられ、前記糸処理部を駆動する駆動モータと、を備えた繊維機械であって、
前記走行台車の状態が第1状態のときに前記駆動モータに供給する電流を第1値とし、前記走行台車の状態が第1状態とは異なる第2状態のときに前記駆動モータに供給する電流を前記第1値よりも大きい第2値とするモータ電流調整部を備える、繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取装置及び繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の糸巻取装置としては、糸を供給可能な給糸部と、給糸部の糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、巻取部が糸を巻き取るための処理を行う巻取処理機構と、巻取処理機構を駆動する駆動モータと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された糸巻取装置では、歪ゲージによってクレードルの振動を監視し、その振動の強さに応じてパッケージの回転速度を制御することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−208880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、糸巻取装置の状態によっては、巻取処理機構が意図せず変動する場合がある。例えば、巻取処理機構に生じる振動が大きい状態(糸の巻始めや異常紙管時等)では、駆動モータで巻取処理機構を保持する力又は動作させる力よりも当該振動の起振力が大きくなり、巻取処理機構に位置ずれが生じる場合がある。上記従来技術において、このような場合にも対応しようとすると、駆動モータの駆動力(駆動トルク)を強めるために駆動モータに供給する電流を大きくすることが必要になってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、巻取処理機構が意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータに供給する電流を抑えることができる糸巻取装置及び繊維機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の糸巻取装置は、糸を供給可能な給糸部と、給糸部の糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、巻取部が糸を巻き取るための処理を行う巻取処理機構と、巻取処理機構を駆動する駆動モータと、を備えた糸巻取装置であって、糸巻取装置の状態が第1状態のときに駆動モータに供給する電流を第1値とし、糸巻取装置の状態が第1状態とは異なる第2状態のときに駆動モータに供給する電流を第1値よりも大きい第2値とするモータ電流調整部を備える。
【0007】
この糸巻取装置では、糸巻取装置の状態が第1状態のときには駆動モータに供給する電流を第1値とし、第2状態のときには駆動モータに供給する電流を第1値よりも大きい第2値とする。これにより、常に大きな電流を駆動モータに供給するのではなく、例えば、通常時には、第1値の電流を駆動モータに供給し、巻取処理機構が意図せず変動するような糸の巻始め等においては、大きい第2値の電流を駆動モータに供給して、当該変動を抑制することが可能となる。したがって、巻取処理機構が意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータに供給する電流を抑えることが可能となる。
【0008】
本発明の糸巻取装置において、第2状態は、第1状態に対して巻取処理機構の振動が大きい状態、もしくは、第1状態に対して巻取処理機構の振動が大きいと推定される状態であってもよい。この場合、巻取処理機構が振動により意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータに供給する電流を抑えることが可能となる。
【0009】
本発明の糸巻取装置において、巻取処理機構は、糸に作用する糸処理部と、当該糸処理部を所定方向に付勢するバネ部材と、を含み、駆動モータは、バネ部材の付勢力に抗する駆動力により、当該糸処理部を可動させ、もしくは、所定位置に保持し、モータ電流調整部は、駆動モータに供給する第1値及び第2値を、バネ部材の付勢力と巻取処理機構の振動の大きさとに基づいて切り替えてもよい。この構成によれば、ガタの少ない巻取処理機構の駆動を実現できると共に、振動が大きくなっても巻取処理機構が位置ズレするのを抑制することができる。
【0010】
本発明の糸巻取装置は、巻取処理機構の振動を検知するための振動検知部を備え、モータ電流調整部は、駆動モータに供給する第1値及び第2値を、振動検知部の検知結果に応じて切り替えてもよい。この構成によれば、実際の振動を検知して駆動モータに供給する電流を調整することができる。
【0011】
本発明の糸巻取装置は、パッケージに巻き取られた糸の巻取長さ、パッケージの直径、及びパッケージの重量の少なくとも何れかを計測又は算出するパッケージ状態取得部を備え、モータ電流調整部は、駆動モータに供給する第1値及び第2値を、パッケージ状態取得部の計測結果又は算出結果に応じて切り替えてもよい。この場合、巻取長さ、パッケージの直径及びパッケージの重量の少なくとも何れかのパラメータが大きくなると巻取処理機構は意図せず変動し得ることが見出されることから、当該パラメータに応じて第1及び第2値を切り替える。これにより、通常の糸巻取装置に備えられるパッケージ状態取得部を利用して本発明を実現でき、別途の特別なセンサを不要にできる。
【0012】
本発明の糸巻取装置は、パッケージに巻き取られる糸の巻取速度を計測する巻取速度計測部を備え、モータ電流調整部は、駆動モータに供給する第1値及び第2値を、巻取速度測定部の測定結果に応じて切り替えてもよい。この場合、巻取速度が大きくなると巻取処理機構は意図せず変動し得ることが見出されることから、巻取速度に応じて第1値及び第2値を切り替える。これにより、通常の糸巻取装置に備えられる巻取速度計測部を利用して本発明を実現でき、別途の特別なセンサを不要にできる。
【0013】
本発明の糸巻取装置は、パッケージに巻き取られる糸の巻取速度を設定する巻取速度設定部を備え、モータ電流調整部は、駆動モータに供給する第1値及び第2値を、巻取速度設定部の設定値に応じて切り替えてもよい。この場合、巻取速度の設定値が大きくなると巻取処理機構は意図せず変動し得ることが見出されることから、巻取速度の設定値に応じて第1値及び第2値を切り替える。これにより、通常の糸巻取装置に備えられる巻取速度設定部を利用して本発明を実現でき、別途の特別なセンサを不要にできる。
【0014】
本発明の糸巻取装置において、巻取処理機構は、分断された糸の糸継ぎを行うための糸継装置であり、糸継装置は、糸に作用する糸処理部に駆動モータの駆動力を伝えるためのリンク機構を有し、リンク機構は、カムと、カムにより駆動されるカムフォロアと、当該糸処理部を所定方向に付勢するバネ部材と、を含み、カムフォロアは、当該バネ部材によりカムに向けて付勢されていてもよい。この場合、糸継装置において、カムとカムフォロアにより、ガタの少ない動力伝達が可能となる。また、糸巻取装置の状態によってカムが想定外の動作をすることを防止できる。
【0015】
本発明の糸巻取装置において、巻取部は、パッケージを補助的に支持する補助ローラを有し、巻取処理機構は、パッケージを回転自在に支持するクレードルと、駆動モータにより補助ローラとパッケージとの接触圧力を調整する接圧調整機構と、を有してもよい。この場合、パッケージと補助ローラとの接触状態を、糸巻取装置の状態によらずに一定に保つことができる。その結果、一定の巻取品質を確保することが可能となる。
【0016】
本発明の糸巻取装置において、駆動モータは、ステッピングモータであってもよい。駆動モータとしてステッピングモータを用いることにより、例えば、簡単な回路構成で正確な巻取処理機構の位置決め制御を実現することが可能となる。
【0017】
本発明の繊維機械は、糸を供給可能な給糸部、及び、給糸部の糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部を有する複数の糸巻取装置と、複数の糸巻取装置が並べられた方向に走行可能な走行台車と、走行台車に設けられ、複数の糸巻取装置のうち糸継要求のある糸巻取装置において分断された糸を繋ぐ糸継装置を含む巻取処理機構と、糸継装置に設けられ、糸に作用する糸処理部と、走行台車に設けられ、糸処理部を駆動する駆動モータと、を備えた繊維機械であって、走行台車の状態が第1状態のときに駆動モータに供給する電流を第1値とし、走行台車の状態が第1状態とは異なる第2状態のときに駆動モータに供給する電流を第1値よりも大きい第2値とするモータ電流調整部を備える。
【0018】
この繊維機械では、走行台車の状態が第1状態のときには駆動モータに供給する電流を第1値とし、第2状態のときには駆動モータに供給する電流を第1値よりも大きい第2値とする。これにより、常に大きな電流を駆動モータに供給するのではなく、例えば、通常時には、第1値の電流を駆動モータに供給する。一方、巻取処理機構の糸継装置に設けられた糸処理部が意図せず変動するような走行台車の走行時等においては、大きい第2値の電流を駆動モータに供給して、当該変動を抑制することが可能となる。したがって、巻取処理機構が意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータに供給する電流を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、巻取処理機構が意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータに供給する電流を抑えることができる糸巻取装置及び繊維機械を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の巻取ユニットを示す正面図である。
図2図1の巻取ユニットにおける糸継装置を示す斜視図である。
図3図2の糸継装置の動作を説明するための概略平面図である。
図4図2の糸継装置の動作を説明するための図3の続きを示す概略平面図である。
図5図2の糸継装置の動作を説明するための図4の続きを示す概略平面図である。
図6】第2実施形態の巻取ユニットにおける接圧調整機構を示す図である。
図7】第3実施形態の紡績機を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
[第1実施形態]
図1に示されるように、本実施形態の巻取ユニット(糸巻取装置)1は、給糸ボビンBからパッケージPに糸Yを巻き取る。給糸ボビンBは、前工程の精紡機で形成され、例えば、トレーにセットされた状態で精紡機から搬送される。なお、複数の巻取ユニット1が並設されることにより、繊維機械である自動ワインダが構成されている。
【0023】
巻取ユニット1には、ボビン支持部(給糸部)2、糸解舒補助装置3、プレクリアラ4、テンション付与装置5、テンションセンサ6、下糸捕捉装置7、糸継装置10、カッター9、糸監視装置11、上糸捕捉装置12及び巻取装置(巻取部)13が、糸Yの走行経路に沿って上流側(ここでは、下側)からこの順序で設けられている。これらの各構成は、ユニット本体部8に取り付けられている。
【0024】
ボビン支持部2は、給糸ボビンBを直立させた状態で支持し、糸Yを供給可能にする。糸解舒補助装置3は、給糸ボビンBの上方に配置された筒状部材によって、給糸ボビンBから解舒された糸Yのバルーンを制御する。テンション付与装置5は、櫛歯状の固定ゲート及び可動ゲートからなる一対のゲートによって糸Yをジグザグ状に保持することで、走行する糸Yに所定テンションを付与するゲート式テンサである。テンションセンサ6は、テンション付与装置5によって付与された糸Yのテンションを測定する。
【0025】
プレクリアラ4は、糸Yの走行経路を挟んで所定間隔で配置された一対の規制部材によって、規定値よりも大きい絡み糸等の糸欠陥の通過を予め規制する。糸監視装置11は、糸Yの巻取中にスラブ等の糸欠陥を検出する。カッター9は、糸監視装置11によって糸欠陥が検出されたときに、糸Yを切断する。糸継装置10は、分断された糸Yの糸継ぎを行うスプライサ装置である。糸継装置10は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時等に、パッケージP側の糸Yの糸端と給糸ボビンB側の糸Yの糸端とを継ぐ。
【0026】
下糸捕捉装置7は、軸線αを中心として回動可能にユニット本体部8に取り付けられている。下糸捕捉装置7の回動端には、吸引口7aが設けられている。吸引口7aは、糸継装置10の上部とプレクリアラ4の下部との間で回動させられる。下糸捕捉装置7は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時等に、プレクリアラ4の下部側に吸引口7aを回動させて吸引口7aで給糸ボビンB側の糸Yの糸端を吸引し、その後、糸継装置10の上部側に吸引口7aを回動させて給糸ボビンB側の糸Yを糸継装置10に引き渡す。
【0027】
上糸捕捉装置12は、軸線βを中心として回動可能にユニット本体部8に取り付けられている。上糸捕捉装置12の回動端には、吸引口12aが設けられている。吸引口12aは、糸継装置10の下部と巻取装置13との間で回動させられる。上糸捕捉装置12は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時等に、巻取装置13側に吸引口12aを回動させて吸引口12aでパッケージP側の糸Yの糸端を吸引し、その後、糸継装置10の下部側に吸引口12aを回動させてパッケージP側の糸Yを糸継装置10に引き渡す。
【0028】
巻取装置13は、給糸ボビンBから解舒された糸YをパッケージPに巻き取って満巻のパッケージPを形成する。巻取装置13は、ドラム溝14aが形成された巻取ドラム(補助ローラ)14を有している。巻取ドラム14は、パッケージPを補助的に支持する。巻取装置13には、及びパッケージPを回転自在に支持するクレードル15が設けられている。クレードル15は、巻取装置13が糸Yを巻き取るための処理を行う巻取処理機構を構成する。クレードル15は、パッケージPの表面を巻取ドラム14の表面に対して適切な接圧で接触させる。巻取装置13は、モータで巻取ドラム14を駆動回転させてパッケージPを従動回転させることにより、糸Yを所定幅で綾振りしつつ糸YをパッケージPに巻き取っていく。
【0029】
ユニット本体部8には、制御部16、入力部17及び表示部18が設けられている。制御部16は、巻取ユニット1の各構成を制御する。入力部17は、例えば操作ボタン等であり、オペレータが制御部16に対して種々の値を設定する等の際に使用される。表示部18は、巻取ユニット1の動作状況等を表示する。なお、制御部16は、自動ワインダが備える上位制御部との間で、ワインディング動作に関する種々の情報を送受信する。上位制御部は、各巻取ユニット1の制御部16を統制し、自動ワインダの全体を制御する。
【0030】
次に、糸継装置10の構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、パッケージP側を上側(上方)、給糸ボビンB側を下側(下方)、糸継装置10に対して糸Yの走行経路側を前側(前方)、その反対側を後側(後方)という。パッケージP側の糸Yを上糸といい、給糸ボビンB側の糸Yを下糸という。
【0031】
図2に示されるように、糸継装置10は、巻取装置13が糸Yを巻き取るための処理を行う巻取処理機構を構成する。糸継装置10は、糸継部50と、一対の糸寄せレバー(糸処理部)81と、一対の撚り止めレバー(糸処理部)82と、を備えている。糸寄せレバー81は、糸継部50における糸Yの糸端の導入位置を調整するレバー部材である。一対の糸寄せレバー81は、上下に並置され、互いに連動して旋回する。撚り止めレバー82は、糸継部50による糸継時の糸Yを一定の位置に規制するレバー部材である。一対の撚り止めレバー82は、一対の糸寄せレバー81間において上下に並置され、互いに連動して旋回する。糸継装置10は、その各構成を支持するフレーム体20を介して、ユニット本体部8(図1参照)に取り付けられている。
【0032】
糸継部50の上側には、第1ガイド板21が配置されている。糸継部50の下側には、第2ガイド板22が配置されている。第1ガイド板21と第2ガイド板22とは、上下方向において糸継部50を挟んで対向している。第1ガイド板21及び第2ガイド板22には、糸寄せレバー81によって引き寄せられた糸Yが導入されるガイド溝が形成されている。
【0033】
糸継部50は、解撚部(不図示)によって解撚された糸Yの糸端同士を撚り合わせることで、これらの糸端を継ぐ。糸継部50において糸端同士を撚り合わせる際には、糸寄せレバー81によって糸Yの糸端が解撚部から引き出され、撚り止めレバー82によって糸Yの糸端の先端部分が糸継部50の近傍において押さえられる。
【0034】
フレーム体20には、一対の糸寄せレバー81及び一対の撚り止めレバー82を駆動するための駆動源として、駆動モータ23が取り付けられている。駆動モータ23は、例えばステッピングモータである。駆動モータ23は、上下方向を軸方向とする駆動軸24を有している。駆動モータ23は、その駆動軸24を回転させることによって、糸寄せレバー81をリンク機構100を介して駆動制御する。
【0035】
リンク機構100は、駆動モータ23及び糸寄せレバー81(ここでは、上側の糸寄せレバー81)に連結されている。リンク機構100は、駆動軸24に固定されたアーム25と、アーム25に連結された連結部材26と、を駆動側リンク部101として有している。また、リンク機構100は、駆動側リンク部101に従動するものとして、糸寄せレバー81に連続して設けられた従動側リンク部102を備えている。連結部材26は、所定方向に延びる段付き板形状を有している。連結部材26は、その後端部が、上下方向を軸方向とする軸部26xを介してアーム25に取り付けられている。これにより、連結部材26は、アーム25に対して軸部26x回りに回転可能に連結されている。
【0036】
従動側リンク部102は、板形状を有し、糸寄せレバー81の基端部に対し上方視でクランク状に屈曲するように連設されている。従動側リンク部102は、上下方向を軸方向とする軸部26yを介して、連結部材26の前端部に取り付けられている。これにより、従動側リンク部102は、連結部材26に対して軸部26y回りに回転可能に連結されている。従動側リンク部102の前端部(つまり、糸寄せレバー81の基端部)は、フレーム体20に固定された支持軸27に回転可能に支持されている。
【0037】
支持軸27には、一対の撚り止めレバー82が保持部82xを介して回転可能に支持されている。一対の撚り止めレバー82は、支持軸27に回転可能に取り付けられた弾性体としてのねじりコイルばね(バネ部材)28によって、糸継部50側(閉方向)に付勢されている。撚り止めレバー82には、糸寄せレバー81に係合する係合片82yが形成されている。この係合片82yは、ねじりコイルばね28の付勢力でもって糸寄せレバー81を閉方向に付勢する。つまり、糸寄せレバー81については、ねじりコイルばね28によって、撚り止めレバー82を介して閉方向に付勢される。これにより、一対の撚り止めレバー82及び一対の糸寄せレバー81は、閉方向とその反対側の開方向とにおいて、同期して旋回可能とされる。
【0038】
撚り止めレバー82の基端側には、ストッパボルト29が設けられている。ストッパボルト29は、糸継部50で糸継ぎされる糸Yの撚り伝搬を制御するために、撚り止めレバー82を所定位置に停止させるストッパである。ストッパボルト29は、その先端側が露出するように保持部82xに螺合されており、これにより、撚り止めレバー82と一体的に旋回する。ストッパボルト29は、糸寄せレバー81及び撚り止めレバー82を待機位置から閉方向に所定量旋回させた際、その先端部がフレーム体20の一部に接触する。これにより、当該接触後においては、糸寄せレバー81のみが閉方向に旋回させられる。
【0039】
次に、制御部16によって制御される糸継装置10の動作について、図2図5を参照しつつ説明する。図2及び図3に示されるように、一対の糸寄せレバー81及び一対の撚り止めレバー82は、その待機位置に在る状態で、前側から見た場合に第1ガイド板21及び第2ガイド板22よりも外側に位置するように開かれている。
【0040】
一対の糸寄せレバー81及び一対の撚り止めレバー82が待機位置に在る状態(以下、「待機位置状態」という)では、リンク機構100の少なくとも一部が思案点に位置している。具体的には、リンク機構100の駆動側リンク部101(つまり、アーム25及び連結部材26を含んで構成されるクランク)が、待機位置状態で思案点に位置している。このとき、ねじりコイルばね28は、その弾性力を付勢可能に変形され、ねじりモーメントとしてのねじり力が増大した状態となっている。また、駆動モータ23には保持電流が供給され、これにより、一対の糸寄せレバー81及び一対の撚り止めレバー82は、ねじりコイルばね28の付勢力に抗する駆動モータ23の駆動力によって、待機位置(所定位置)に保持されている。
【0041】
「思案点」とは、隣接するリンク要素同士が一直線上に存在する位置であって、従動側から駆動を与えた場合に駆動側が一方及び他方の回転方向のどちらにも動くことができる状態を有する。思案点は死点とも称される。本実施形態の思案点では、駆動軸24の軸方向から見て、駆動軸24と軸部26xとを結ぶ線分と軸部26xと軸部26yとを結ぶ線分とが、一直線上に位置している。本実施形態の思案点は、駆動モータ23に対して作用するねじりコイルばね28の付勢力(図中の矢印S1)のベクトル方向(図中の矢印S2)が、駆動軸24の略中心と交差する状態を有している。当該思案点では、ねじりコイルばね28の付勢力によって連結部材26を介して軸部26xを引っ張る力について、静的に釣り合っている。
【0042】
なお、上記一直線上とは、完全な一直線上に加えて略一直線上を含んでおり、例えば、駆動軸24と軸部26xとを結ぶ線分に対して軸部26xと軸部26yとを結ぶ線分が、30°以下の角度で傾く場合も含んでいる。
【0043】
糸継装置10では、まず、糸欠陥検出時にカッター9によって糸Yが切断されたり、或いは過剰張力によって糸Yの糸切れが発生したりすると、上糸捕捉装置12及び下糸捕捉装置7(図1参照)によって糸継装置10に糸Y(上糸及び下糸)が案内される。その後、駆動モータ23に動作電流が供給され、ねじりコイルばね28の付勢力に抗する駆動力により駆動軸24が所定量回転させられ、リンク機構100を介して一対の糸寄せレバー81が閉方向に旋回(可動)する。これに伴って、ねじりコイルばね28の付勢力により、一対の撚り止めレバー82が一対の糸寄せレバー81と共に閉方向に旋回する。
【0044】
これにより、上糸捕捉装置12及び下糸捕捉装置7によって案内された糸Yは、糸継部50側に引き寄せられ、第1ガイド板21及び第2ガイド板22のガイド溝に導入され、糸継部50の糸継ノズルに導入される。この糸Yは、糸保持部によって保持された状態で、糸切断部によって切断される。解撚部の解撚ノズル内に解撚用エアーが噴射され、糸Yの糸端が解撚部に取り込まれて解撚される。
【0045】
続いて、駆動モータ23に動作電流が引き続き供給されて駆動軸24が更に所定量回転させられると、リンク機構100を介して一対の糸寄せレバー81が閉方向に更に旋回すると共に、ねじりコイルばね28の付勢力により一対の撚り止めレバー82が閉方向に更に旋回した後、ストッパボルト29の先端部がフレーム体20の一部に接触する(図4参照)。従って、その後に駆動モータ23の駆動軸24が矢印R1方向に更に回転されると、一対の撚り止めレバー82の回転がストッパボルト29を介してフレーム体20で阻止されながら、一対の糸寄せレバー81のみが閉方向に更に旋回する(図5参照)。
【0046】
これにより、解撚された糸Yの糸端が解撚部から引き出され、一対の糸寄せレバー81と共に旋回した一対の撚り止めレバー82によって、糸Yの糸端の先端部分が糸継部50近傍において押さえられる。糸継部50において糸継用エアーが噴射され、解撚された糸Yの糸端同士が撚り合わされる。その後、駆動モータ23に動作電流が供給されて駆動軸24が逆方向に回転させられ、一対の糸寄せレバー81及び一対の撚り止めレバー82が待機位置に戻る。これにより、糸端同士と撚り合わされることで継がれた糸Yは、糸継装置10の前側の糸Yの走行経路上に復帰する。
【0047】
ここで、図1に示されるように、本実施形態の巻取ユニット1は、糸継装置10の振動を検知するための振動検知センサ(振動検知部)41と、駆動モータ23に供給する電流を調整して駆動モータ23の駆動力(トルク)を制御するモータ電流調整部42と、を備える。
【0048】
振動検知センサ41は、糸継装置10に設けられている。振動検知センサ41が設けられる箇所及び個数は、特に限定されず、糸継装置10の振動を検知可能な所定箇所及び所定個数であればよい。振動検知センサ41としては、例えば接触式の振動センサを用いることができる。振動検知センサ41は、糸継装置10に設けられた歪ゲージを含み、この歪ゲージにより糸継装置10の変位、速度及び加速度の少なくとも何れかを検出し、当該検出値に基づいて糸継装置10に生じた振動を検知する。
【0049】
振動検知センサ41は、検知結果(例えば検知した振動に関する信号)をモータ電流調整部42に出力する。振動検知センサ41としては、特に限定されず、例えば非接触式の振動センサ等の種々のセンサを用いることができる。糸継装置10の振動には、振動の大きさ(振幅)及び周波数を含んでいる。
【0050】
モータ電流調整部42は、振動検知センサ41の検知結果に基づいて、駆動モータ23に供給する電流を調整する。モータ電流調整部42は、振動検知センサ41で検知した振動の大きさが閾値未満の場合、糸継装置10の振動が小さい通常状態(第1状態)と判断し、第1値の動作電流及び/又は保持電流を駆動モータ23に供給する。これにより、糸寄せレバー81及び撚り止めレバー82は、第1駆動力で可動及び/又は保持される。
【0051】
一方、モータ電流調整部42は、振動検知センサ41で検知した振動の大きさが閾値以上の場合、糸継装置10の振動が大きい状態(第2状態)と判断し、第1値よりも大きい第2値の動作電流及び/又は保持電流を駆動モータ23に供給する。これにより、糸寄せレバー81及び撚り止めレバー82は、第1駆動力よりも大きい第2駆動力で可動及び/又は保持される。
【0052】
駆動モータ23に供給する第1値及び第2値は、ねじりコイルばね28の付勢力と糸継装置10の振動の大きさとに基づいて切り替えられる。例えば、第1値は、0.4Aとされている。第2値は、1.0Aとされている。第2値は、振動が大きいほど大きくなるような振動の関数値であってもよい。第1値及び第2値は、振動検知センサ41で検知した振動の大きさと関連付けられたマップとして、モータ電流調整部42に予め記憶されている。
【0053】
以上、巻取ユニット1では、常に大きな電流を駆動モータ23に供給するのではなく、糸継装置10の振動が小さい通常状態である第1状態の場合には、第1値の電流を駆動モータ23に供給する。一方、糸継装置10が意図せず変動する(糸寄せレバー81及び撚り止めレバー82の位置ズレが生じる)ような糸の巻始め等において、糸継装置10の振動が大きくなる第2状態の場合には、大きい第2値の電流を駆動モータ23に供給する。これにより、当該変動を抑制することが可能となる。したがって、糸継装置10が振動により意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータ23に供給する電流(消費電力)を抑えることが可能となる。すなわち、駆動モータ23に供給する電流をできるだけ抑えながら、例えば巻始めや異常紙管により振動が大きくなる場合等の脱調を抑制することが可能となる。
【0054】
なお、本実施形態では、巻取ユニット1の状態が第1状態のときに駆動モータ23に供給する電流を第1値とし、第1状態と異なる第2状態のときには駆動モータ23に供給する電流を第1値よりも大きい第2値とすればよい。これにより、例えば第2状態が第1状態よりも糸継装置10が意図せずに変動する状態である場合、糸継装置10が意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータ23に供給する電流を抑えることが可能である。なお、巻取ユニット1が第1状態のときとしては、例えば巻取停止時等のときが挙げられ、巻取ユニット1が第2状態のときとしては、例えば加速時、ブレーキ時、巻始め時等のときが挙げられる。
【0055】
巻取ユニット1において、糸継装置10は、糸寄せレバー81及び撚り止めレバー82と、当該糸寄せレバー81及び撚り止めレバー82を所定方向に付勢するねじりコイルばね28と、を含む。駆動モータ23は、ねじりコイルばね28の付勢力に抗する駆動力により、一対の糸寄せレバー81及び一対の撚り止めレバー82を可動する、もしくは待機位置に保持する。モータ電流調整部42は、駆動モータ23に供給する第1値及び第2値を、ねじりコイルばね28の付勢力と糸継装置10の振動の大きさとに基づいて切り替える。これにより、ガタの少ない糸継装置10の駆動を実現できると共に、振動が大きくなっても糸継装置10が位置ズレするのを抑制することができる。
【0056】
巻取ユニット1は、糸継装置10の振動を検知するための振動検知センサ41を備え、モータ電流調整部42は、駆動モータ23に供給する第1値及び第2値を、振動検知センサ41の検知結果に応じて切り替える。これにより、実際の糸継装置10の振動を検知して駆動モータ23に供給する電流を調整することができる。その結果、必要最低限の電流で駆動モータ23の駆動制御を行うことができる。
【0057】
巻取ユニット1では、駆動モータ23にステッピングモータが用いられている。駆動モータ23としてステッピングモータを用いることにより、例えば、簡単な回路構成で正確な糸継装置10の位置決め制御を実現することが可能となる。また、安価なステッピングモータを利用しながら、糸継装置10が意図せずに変動することを防止しつつ供給する電流を抑えるという上記作用効果が奏される。
【0058】
本実施形態では、振動検知センサ41で検知した糸継装置10の振動の大きさが閾値以上の場合に第2値を駆動モータ23に供給したが、例えば以下に例示するように、当該振動が大きいと推定される状態の場合に第2値を駆動モータ23に供給してもよい。
【0059】
例えば、パッケージPに巻き取られた糸の巻取長さ(糸長)、パッケージPの直径、及びパッケージPの重量の少なくとも何れかを計測又は算出するパッケージ状態取得部を備え、モータ電流調整部42は、駆動モータ23に供給する第1値及び第2値を、パッケージ状態取得部の計測結果又は算出結果に応じて切り替えてもよい。モータ電流調整部42は、具体的には、当該パラメータが所定値未満の場合に、糸継装置10の振動が小さいと推定し、駆動モータ23に第1値を供給する。一方、当該パラメータが所定値以上の場合に、糸継装置10の振動が大きいと推定し、駆動モータ23に第2値を供給する。
【0060】
パッケージ状態取得部は、例えば次のように、パッケージPの大きさに関連するパラメータ(巻取長さ、パッケージの直径及びパッケージの重量の少なくとも何れか)を計測又は算出する。すなわち、パッケージ状態取得部は、糸Yの巻取速度(糸速)を検出し、検出した巻取速度を換算することにより、巻き取った糸Yの巻取長さを計測する。パッケージ状態取得部は、クレードル15の角度を検出し、検出したクレードル15の角度に基づいてパッケージPの径を算出する。或いは、パッケージ状態取得部は、糸Yの巻取速度とパッケージPの回転速度とを検出し、検出した糸Yの巻取速度とパッケージPの回転速度とに基づいてパッケージPの径を算出する。パッケージ状態取得部は、取得した糸Yの巻取長さと入力部17で設定された糸Yの番手又は糸種とに基づいて、パッケージPの質量を算出する。
【0061】
この構成によれば、パッケージPの大きさに関連するパラメータが大きくなると糸継装置10は意図せず変動し得ることが見出されることから、パッケージPの大きさに関連するパラメータを基準として制御し、当該パラメータに応じて第1及び第2値を切り替えることができる。これにより、通常備えられるパッケージ状態取得部を利用して巻取ユニット1を実現でき、振動検知センサ41等の別途の特別なセンサを不要にできる。
【0062】
また例えば、クレードル15の角度を計測するクレードル角度センサ等のクレードル角度検出部を備え、モータ電流調整部42は、駆動モータ23に供給する第1値及び第2値を、クレードル角度検出部の検出結果に応じて切り替えてもよい。モータ電流調整部42は、具体的には、クレードル15の角度が所定角度未満の場合に、糸継装置10の振動が小さいと推定し、駆動モータ23に第1値を供給する。一方、クレードル15の角度が所定角度以上の場合に、糸継装置10の振動が大きいと推定し、駆動モータ23に第2値を供給する。
【0063】
この構成によれば、クレードル15の角度が大きくなると糸継装置10は意図せず変動し得ることが見出されることから、検出したクレードル15の角度を基準に制御し、クレードル15の角度に応じて第1値及び第2値を切り替えることができる。これにより、通常備えられるクレードル角度検出部を利用して巻取ユニット1を実現でき、振動検知センサ41等の別途の特別なセンサを不要にできる。
【0064】
また例えば、パッケージPに巻き取られる糸の巻取速度を計測する巻取速度計測部を備え、モータ電流調整部42は、駆動モータ23に供給する第1値及び第2値を、巻取速度測定部の測定結果に応じて切り替えてもよい。モータ電流調整部42は、具体的には、パッケージPの巻取速度が所定速度未満の場合に、糸継装置10の振動が小さいと推定し、駆動モータ23に第1値を供給する。一方、パッケージPの巻取速度が所定速度以上の場合に、糸継装置10の振動が大きいと推定し、駆動モータ23に第2値を供給する。巻取速度計測部としては、例えば非接触の光電式の定長装置である光電式定長装置を用いることができる。
【0065】
この構成によれば、パッケージPの巻取速度が大きくなると糸継装置10は意図せず変動し得ることが見出されることから、測定したパッケージPの巻取速度を基準に制御し、パッケージPの巻取速度に応じて第1値及び第2値を切り替えることができる。これにより、通常備えられる巻取速度計測部を利用して巻取ユニット1を実現でき、振動検知センサ41等の別途の特別なセンサを不要にできる。
【0066】
また例えば、パッケージPに巻き取られる糸Yの巻取速度を設定する巻取速度設定部を備え、モータ電流調整部42は、駆動モータ23に供給する第1値及び第2値を、巻取速度設定部の設定値に応じて切り替えてもよい。モータ電流調整部42は、具体的には、巻取速度の設定値が所定速度未満の場合に、糸継装置10の振動が小さいと推定し、駆動モータ23に第1値を供給する。一方、巻取速度の設定値が所定速度以上の場合に、糸継装置10の振動が大きいと推定し、駆動モータ23に第2値を供給する。巻取速度設定部としては、入力部17を適用することができる。
【0067】
この構成によれば、巻取速度の設定値が大きくなると糸継装置10は意図せず変動し得ることが見出されることから、設定した巻取速度を基準に制御し、巻取速度の設定値に応じて第1値及び第2値を切り替えることができる。これにより、通常備えられる巻取速度設定部を利用して巻取ユニット1を実現でき、振動検知センサ41等の別途の特別なセンサを不要にできる。
【0068】
巻取ユニット1において、糸継装置10は、糸Yに作用する糸処理部に対して駆動モータ23の駆動力を伝えるためのリンク機構を有し、リンク機構は、カムと、カムにより駆動されるカムフォロアと、当該糸処理部を所定方向に付勢するバネ部材と、を含み、カムフォロアは、当該バネ部材によりカムに向けて付勢されていてもよい。例えば、糸継装置10は、駆動モータ23の回転に伴ってカムを回転させ、ねじりコイルばね28で開方向に付勢する糸寄せレバー81及び撚り止めレバー82を、カムフォロアを介して閉方向へ可動してもよい。この場合、糸継装置10では、カム及びカムフォロアによりガタの少ない動力伝達が可能となる。また、巻取ユニット1の状態によってカムが想定外の動作をすることを防止できる。
【0069】
なお、本実施形態では、糸継装置10における糸Yに作用する糸処理部として、糸寄せレバーで引き寄せられた糸Yを保持する糸保持部、及び/又は、糸保持部で保持された糸Yを切断する糸切断部を適用してもよい。この場合、糸保持部及び/又は糸切断部を可動させ、もしくは、所定位置に保持する駆動モータが設けられ、当該駆動モータに供給する電流(動作電流及び/又は保持電流)がモータ電流調整部42により調整される。
【0070】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について説明する。
【0071】
図6に示されるように、本実施形態の巻取ユニット1Bは、巻取ドラム14とパッケージPとの接触圧力を調整する接圧調整機構30を更に備えた点で上記巻取ユニット1と異なる。接圧調整機構30は、巻取装置13が糸Yを巻き取るための処理を行う巻取処理機構を構成する。接圧調整機構30は、パッケージPの軸に対して平行に配置され回転軸31で、クレードル15を旋回可能に支持する。接圧調整機構30は、クレードル15に加わる回転軸31回りのトルクを制御することによって接触圧力を増減する。
【0072】
接圧調整機構30は、回転軸31に相対回動不能に結合された接続板32と、回転軸31に対して同軸に回転可能に支承された歯車33と、を有している。接続板32上には、3つの接続ピン34が設けられ、これら3つの接続ピン34は、三角形を形成するように配置されている。歯車33上には、同様に、3つの接続ピン35が設けられ、これら3つの接続ピン34は、三角形を形成するように配置されている。
【0073】
交互に連続する接続ピン34と接続ピン35との間のそれぞれには、コイルばね等のばね部材36が設けられている。ばね部材36は、隣接する接続ピン34及び接続ピン35を連結する。ばね部材36は、歯車33と接続板32とが互いに反対方向に相対回転した際に変形(伸長又は縮小)される。歯車33は、駆動ピニオン37を介して駆動モータ38によって駆動される。駆動モータ38は、歯車33を駆動するための駆動源である。駆動モータ38は、例えばステッピングモータである。
【0074】
歯車33が回動することによって、接続ピン34,35の間に連続したばね部材36が伸縮する。これにより、接続板32に回転軸31回りのトルクが生じ、ひいてはクレードル15に回転軸31を中心としたトルクが生じる。このトルクの働きによってパッケージPと巻取ドラム14との間の接触圧力が増減される。したがって、駆動モータ38に供給する電流を調整して当該駆動モータ38による歯車33の駆動を制御することで、パッケージPと巻取ドラム14との間の接触圧力が調整される。
【0075】
本実施形態の巻取ユニット1Bは、クレードル15の振動を検知するための振動検知センサ(振動検知部)41Bと、駆動モータ38に供給する電流を調整して駆動モータ38の駆動力(トルク)を制御するモータ電流調整部42Bと、を備える。
【0076】
振動検知センサ41Bは、クレードル15に設けられている。振動検知センサ41Bが設けられる箇所及び個数は、特に限定されず、クレードル15の振動を検知可能な所定箇所及び所定個数であればよい。振動検知センサ41Bとしては、上記振動検知センサ41と同様に、例えば接触式の振動センサを用いることができる。振動検知センサ41Bは、クレードル15に設けられた歪ゲージを含み、この歪ゲージによりクレードル15の変位、速度及び加速度の少なくとも何れかを検出し、当該検出値に基づきクレードル15の振動を検知する。振動検知センサ41Bは、検知結果をモータ電流調整部42Bに出力する。クレードル15の振動には、振動の大きさ(振幅)及び周波数を含んでいる。
【0077】
モータ電流調整部42Bは、振動検知センサ41Bの検知結果に基づいて、駆動モータ38に供給する電流を調整する。例えばモータ電流調整部42Bは、振動検知センサ41Bで検知した振動の大きさが閾値未満の場合、クレードル15の振動が小さい通常状態(第1状態)と判断し、第1値の接圧電流を駆動モータ38に供給する。これにより、パッケージPと巻取ドラム14との間の接触圧力は第1圧力とされる。
【0078】
一方、モータ電流調整部42Bは、振動検知センサ41Bで検知した振動の大きさが閾値以上の場合、クレードル15の振動が大きい状態(第2状態)と判断し、第1値よりも大きい第2値の接圧電流を駆動モータ38に供給する。これにより、パッケージPと巻取ドラム14との間の接触圧力は、第1圧力よりも大きい第2圧力とされる。
【0079】
例えば、第1値は、0.4Aとされている。第2値は、1.0Aとされている。第2値は、振動が大きいほど大きくなるような振動の関数値であってもよい。第1値及び第2値は、振動検知センサ41Bで検知した振動の大きさと関連付けられたマップとして、モータ電流調整部42Bに予め記憶されている。
【0080】
以上、巻取ユニット1Bにおいても、常に大きな電流を駆動モータ38に供給するのではなく、クレードル15の振動が小さい通常状態である第1状態の場合には、第1値の電流を駆動モータ38に供給する。一方、クレードル15が意図せず変動(位置ズレ)するような糸の巻始め等においてクレードル15の振動が大きくなる第2状態の場合には、大きい第2値の電流を駆動モータ38に供給して、当該変動を抑制することが可能となる。したがって、クレードル15が振動により意図せずに変動することを防止し、ひいてはパッケージPと巻取ドラム14との間の接触圧力が変動することを防止しながら、駆動モータ38に供給する電流を抑えることが可能となる。
【0081】
巻取ユニット1Bでは、パッケージPと巻取ドラム14との接触状態を、巻取ユニット1Bの状態(クレードル15の振動状態)によらずに一定に保つことができる。その結果、一定の巻取品質を確保することが可能となる。
【0082】
本実施形態では、振動検知センサ41Bで検知したクレードル15の振動の大きさが閾値以上の場合に第2値を駆動モータ38に供給したが、以下に例示するように、当該振動が大きいと推定される状態の場合に第2値を駆動モータ38に供給し、振動検知センサ41B等の別途の特別なセンサを不要としてもよい。
【0083】
例えば、パッケージPに巻き取られた糸の巻取長さ、パッケージPの直径、及びパッケージPの重量の少なくとも何れかを計測又は算出するパッケージ状態取得部を備え、モータ電流調整部42Bは、駆動モータ38に供給する第1値及び第2値を、パッケージ状態取得部の計測結果又は算出結果に応じて切り替えてもよい。具体的には、パッケージPの大きさに関連するパラメータ(巻取長さ、パッケージの直径及びパッケージの重量の少なくとも何れか)が所定値未満の場合に、クレードル15の振動が小さいと推定し、駆動モータ38に第1値を供給する。一方、当該パラメータが所定値以上の場合に、クレードル15の振動が大きいと推定し、駆動モータ38に第2値を供給する。
【0084】
また例えば、クレードル15の角度を計測するクレードル角度検出部を備え、モータ電流調整部42Bは、駆動モータ38に供給する第1値及び第2値を、クレードル角度検出部の検出結果に応じて切り替えてもよい。具体的には、クレードル15の角度が所定角度未満の場合に、クレードル15の振動が小さいと推定し、駆動モータ38に第1値を供給する。一方、クレードル15の角度が所定角度以上の場合に、クレードル15の振動が大きいと推定し、駆動モータ38に第2値を供給する。
【0085】
また例えば、パッケージPに巻き取られる糸Yの巻取速度を計測する巻取速度計測部を備え、モータ電流調整部42Bは、駆動モータ38に供給する第1値及び第2値を、巻取速度測定部の測定結果に応じて切り替えてもよい。具体的には、パッケージPの巻取速度が所定速度未満の場合に、クレードル15の振動が小さいと推定し、駆動モータ38に第1値を供給する。一方、パッケージPの巻取速度が所定速度以上の場合に、クレードル15の振動が大きいと推定し、駆動モータ38に第2値を供給する。
【0086】
また例えば、パッケージPに巻き取られる糸Yの巻取速度を設定する巻取速度設定部を備え、モータ電流調整部42Bは、駆動モータ38に供給する第1値及び第2値を、巻取速度設定部の設定値に応じて切り替えてもよい。具体的には、巻取速度の設定値が所定速度未満の場合に、クレードル15の振動が小さいと推定し、駆動モータ38に第1値を供給する。一方、巻取速度の設定値が所定速度以上の場合に、クレードル15の振動が大きいと推定し、駆動モータ38に第2値を供給する。
【0087】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。図7に示されるように、本実施形態の紡績機(繊維機械)110は、複数の紡績ユニット(糸巻取装置)1Cと、走行台車113と、第1エンドフレーム114と、第2エンドフレーム115と、を備えている。
【0088】
複数の紡績ユニット1Cは、一列に配列されている。各紡績ユニット1Cは、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。走行台車113は、ある紡績ユニット1Cにて糸Yが切断されたり何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット1Cで糸継動作を行う。第1エンドフレーム114には、紡績ユニット1Cの各部において空気の旋回流等を発生させるための空気供給源及び/又は紡績ユニット1Cの各部において吸引流を発生させるための吸引源等が収容されている。第2エンドフレーム115には、ユニット制御装置C、表示画面D及び入力キーKが設けられている。ユニット制御装置Cは、紡績機110の各部を集中的に管理及び制御する。表示画面Dは、紡績ユニット1Cの設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示する。
【0089】
各紡績ユニット1Cは、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置116と、空気紡績装置117と、糸監視装置118と、テンションセンサ119と、糸貯留装置121と、ワキシング装置122と、巻取装置123と、を備えている。所定数の紡績ユニット1Cごとには、紡績ユニット1Cの動作を制御するユニットコントローラ130が設けられている。
【0090】
ドラフト装置116は、繊維束Sをドラフトする。空気紡績装置117は、ドラフト装置116でドラフトされた繊維束Sに空気の旋回流によって撚りを与えて糸Yを生成する。糸監視装置118は、空気紡績装置117と糸貯留装置121との間において、走行する糸Yの情報を監視し、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置118は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ130に送信する。糸監視装置118は、糸欠陥として、例えば糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置118は、糸切れ等も検出する。
【0091】
テンションセンサ119は、空気紡績装置117と糸貯留装置121との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ130に送信する。糸監視装置118及び/又はテンションセンサ119の検出結果に基づきユニットコントローラ130が異常有りと判断した場合、紡績ユニット1Cにおいて、糸Yが切断される。具体的には、空気紡績装置117への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッターにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0092】
ワキシング装置122は、糸貯留装置121と巻取装置123との間において、糸Yにワックスを付与する。糸貯留装置121は、空気紡績装置117と巻取装置123との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置121は、空気紡績装置117から糸Yを安定して引き出す機能、走行台車113による糸継動作時等に空気紡績装置117から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置121よりも下流側の糸Yのテンションの変動が空気紡績装置117に伝わるのを防止する機能を有している。
【0093】
巻取装置123は、糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置123は、クレードル141と、トラバースガイド143と、を有している。クレードル141は、パッケージPを回転可能に支持する。クレードル141は、揺動可能に支持されており、パッケージPの表面を巻取ドラム(不図示)の表面に適切な圧力で接触させる。第2エンドフレーム115に設けられた駆動モータは、複数の紡績ユニット1Cの巻取ドラムを駆動し、これにより、各紡績ユニット1CにてパッケージPが巻取方向に回転させられる。各紡績ユニット1Cのトラバースガイド143は、複数の紡績ユニット1Cで共有されるシャフト125に設けられている。第2エンドフレーム115の駆動モータがシャフト125を往復駆動することによって、回転するパッケージPに対してトラバースガイド143が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0094】
走行台車113は、作業台車であって、ある紡績ユニット1Cにおいて糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット1Cまで走行して糸継動作を行う。走行台車113には、糸継装置126が設けられている。糸継装置126は、巻取処理機構を構成する。糸継装置126は、空気を用いる糸継装置、種糸を用いるピーサー、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。走行台車113では、サクションパイプ及びサクションマウスによって糸Yの糸端が案内され、糸継装置126によって当該糸Y同士の糸継ぎが行われる。
【0095】
糸継装置126は、解撚された糸Yの糸端同士を撚り合わせて継ぐ糸継部(不図示)を有している。糸継装置126には、糸Yに作用する糸処理部として、糸継部における糸Yの糸端の導入位置を調整する糸寄せレバー、及び、糸継部による糸継時の糸Yを一定の位置に規制する撚り止めレバーが設けられている。
【0096】
本実施形態の走行台車113は、糸継装置126に設けられた糸処理部を駆動する駆動モータ131と、走行台車113の振動を検知するための振動検知センサ41Cと、駆動モータ131に供給する電流を調整して駆動モータ131の駆動力を制御するモータ電流調整部42Cと、を備える。
【0097】
駆動モータ131は、糸継装置126の糸処理部を駆動するための駆動源である。駆動モータ131は、例えばステッピングモータである。駆動モータ131に保持電流を供給することにより、糸継装置126の糸処理部(糸寄せレバー及び撚り止めレバー)は可動しないように待機位置に保持される。
【0098】
振動検知センサ41Cは、走行台車113に設けられている。振動検知センサ41Cが設けられる箇所及び個数は、特に限定されず、走行台車113の振動を検知可能な所定箇所及び所定個数であればよい。振動検知センサ41Cとしては、上記振動検知センサ41と同様に、例えば接触式の振動センサを用いることができる。振動検知センサ41Cは、走行台車113に設けられた歪ゲージを含み、この歪ゲージにより走行台車113の変位、速度及び加速度の少なくとも何れかを検出し、当該検出値に基づき走行台車113の振動を検知する。振動検知センサ41Cは、検知結果をモータ電流調整部42Cに出力する。走行台車113の振動には、振動の大きさ(振幅)、及び周波数を含んでいる。
【0099】
モータ電流調整部42Cは、振動検知センサ41Cの検知結果に基づいて、駆動モータ131に供給する保持電流を調整する。モータ電流調整部42Cは、振動検知センサ41Cで検知した振動の大きさが閾値未満の場合、走行台車113は振動が小さい停止状態(第1状態)と判断し、第1値の電流を駆動モータ131に供給する。一方、モータ電流調整部42Cは、振動検知センサ41Cで検知した振動の大きさが閾値以上の場合、走行台車113は振動が大きい走行状態(第2状態)と判断し、第1値よりも大きい第2値の電流を駆動モータ131に供給する。
【0100】
例えば、第1値は、0.4Aとされている。第2値は、1.0Aとされている。第2値は、走行台車113の振動が大きいほど大きくなるような振動の関数値であってもよい。第1値及び第2値は、振動検知センサ41Cで検知した振動の大きさと関連付けられたマップとして、モータ電流調整部42Cに予め記憶されている。
【0101】
以上、紡績機110では、常に大きな電流を駆動モータ131に供給するのではなく、走行台車113の振動が小さい停止状態の場合には、第1値の保持電流を駆動モータ131に供給する。一方、走行台車113の振動が大きい走行状態の場合には、大きい第2値の保持電流を駆動モータ131に供給する。これにより、走行台車113の走行により発生する振動によって糸継装置126の糸処理部が意図せぬ状態に変動(位置ズレ)するのを防止することができる。したがって、糸継装置126が振動により意図せずに変動することを防止しつつ、駆動モータ131に供給する電流を抑えることが可能となる。
【0102】
本実施形態では、振動検知センサ41Cで検知した走行台車113の振動の大きさが閾値以上の場合に第2値を駆動モータ131に供給したが、以下に例示するように、当該振動が大きいと推定される状態の場合に第2値を駆動モータ131に供給し、振動検知センサ41C等の別途の特別なセンサを不要としてもよい。
【0103】
例えば、走行台車113の速度を計測する速度センサ、及び/又は、加速度を計測する加速度センサを備え、モータ電流調整部42Cは、駆動モータ131に供給する第1値及び第2値を、速度センサ及び/又は加速度センサの計測結果に応じて切り替えてもよい。具体的には、速度センサ及び/又は加速度センサの計測結果が所定値未満の場合に、走行台車113は振動が小さい停止状態と推定し、モータ電流調整部42Cにより駆動モータ131に第1値を供給する。一方、速度センサ及び/又は加速度センサの計測結果が所定値以上の場合に、走行台車113は振動が大きい走行状態と推定し、モータ電流調整部42Cにより駆動モータ131に第2値を供給する。
【0104】
また例えば、パッケージPに巻き取られる糸の巻取速度を計測する巻取速度計測部を備え、モータ電流調整部42Cは、駆動モータ131に供給する第1値及び第2値を、巻取速度測定部の測定結果に応じて切り替えてもよい。具体的には、パッケージPの巻取速度が所定速度未満の場合に、走行台車113は振動が小さい停止状態と推定し、駆動モータ131に第1値を供給する。一方、パッケージPの巻取速度が所定速度以上の場合に、走行台車113は振動が大きい走行状態と推定し、駆動モータ131に第2値を供給する。
【0105】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態において、バネ部材としてねじりコイルばね28を用いたが、可動部の少なくとも一部を付勢するものであれば種々の弾性部材を用いてもよい。
【0106】
上記実施形態のモータ電流調整部42,42B,42Cは、駆動モータ23,38,131に供給する電流を調整して駆動力(トルク)を制御したが、これに代えてもしくは加えて、駆動モータ23,38,131に供給する電圧及び/又は電力を調整して当該駆動力を制御してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1,1B…巻取ユニット(糸巻取装置)、1C…紡績ユニット(糸巻取装置)、2…ボビン支持部(給糸部)、10…糸継装置(巻取処理機構)、13,123…巻取装置(巻取部)、14…巻取ドラム(補助ローラ)、15,141…クレードル(巻取処理機構)、17…入力部(巻取速度設定部)、23,38,131…駆動モータ、28…ねじりコイルばね(バネ部材)、30…接圧調整機構(巻取処理機構)、41,41B,41C…振動検知センサ(振動検知部)、42,42B,42C…モータ電流調整部、81…糸寄せレバー(糸処理部)、82…撚り止めレバー(糸処理部)、110…紡績機(繊維機械)、113…走行台車、126…糸継装置(巻取処理機構)、P…パッケージ、Y…糸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7