【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意分析と検討を重ねた結果、下記の化学式1で表される化合物の投与によって皮膚組織の免疫反応を抑制し、皮膚バリア機能の再生と強化に貢献し得ることを見出し、本発明を想到するに至った。
【0014】
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は以下のとおりである。
[1] 炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤であって、下記一般式(1)
【化2】
(式中、R
1およびR
2の少なくとも一方が脱離基を表し、R
1およびR
2の少なくともいずれか一方が一般式(2)〜一般式(6)
【化3】
(式中、R
3が置換基を有していてもよいアリール基、および置換基を有していてもよい複素環残基のいずれかであり、R
4,R
5,R
6,R
7,R
8およびR
9のそれぞれが、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および電子吸引基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基であり、R
4〜R
8の置換基のうち隣接する2つの置換基が互いに結合して環を形成してもよい。)のいずれかを表す。)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、剤。
【0015】
[2] 炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤であって、下記一般式(1)
【化4】
(式中、R
1およびR
2がそれぞれ独立して、一般式(2)または一般式(3)
【化5】
(式中、R
3が置換基を有していてもよいアリール基、および置換基を有していてもよい複素環残基のいずれかであり、R
4、R
5およびR
6のそれぞれが、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および電子吸引基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基であり、R
4、R
5およびR
6の置換基のうち隣接する2つの置換基が互いに結合して環を形成してもよい。)を表し、
前記電子吸引基が、ハロゲン原子、−COOR’、−CONR’
2、−COR’、−OCOR’、−CF
3、−CN、−SR’、−S(O)R’、−SO
2R’、−SO
2NR’
2、−PO(OR’)
2、および−NO
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R’が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表す。)
で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、剤。
【0016】
[3] 一般式(1)
【化6】
R
1がOR
10であり、R
2がOR
11であり、R
10が、置換基を有していてもよいアルキル基、および置換基を有していてもよいアリール基のいずれかであり、R
11が、置換基を有していてもよいアリール基である、上記[2]記載の剤。
[4]前記置換基を有していてもよいアルキル基の置換基が、置換基を有していてもよいフェニル基、窒素を有する複素環残基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アミノ基、グアニジノ基、アルコキシ基、アミド基、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、
前記カルボキシ基およびカルボキシ基の等価体が、−COOR、−CONR
2、−COR、−CN、−NO
2、−NHCOR、−OR、−SR、−OCOR、−SO
3R、および−SO
2NR
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、Rが水素原子およびアルキル基のいずれかである、上記[3]記載の剤。
【0017】
[5] 前記R
10の置換基を有していてもよいアルキル基が、一般式(7)
【化7】
(式中、R
12が、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および水素原子のいずれかを表し、R
13が、水素原子、および一般式(8)
【化8】
(式中、n
1が0−4の整数を、n
2が0および1のいずれかを、n
3が0−4の整数を、X
1がアミド基およびアルケニル基のいずれかを、X
2がカルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体のいずれかを、R
14が水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表す。)のいずれかを表す。)であり、前記カルボキシ基およびカルボキシ基の等価体が、−COOR、−CONR
2、−COR、−CN、−NO
2、−NHCOR、−OR、−SR、−OCOR、−SO
3R、および−SO
2NR
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、Rが水素原子およびアルキル基のいずれかである、上記[3]記載の剤。
【0018】
[6] 前記R
12の置換基を有していてもよいアルキル基の置換基が、置換基を有していてもよいフェニル基、窒素を有する複素環残基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、アミノ基、グアニジノ基、アルコキシ基、およびアミド基からなる群より選択される少なくとも1つの基である、上記[5]記載の剤。
【0019】
[7] 前記置換基を有していてもよいアリール基の置換基が、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体のいずれかにより置換されていてもよいアルキル基、電子吸引基、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、前記電子吸引基が、ハロゲン原子、−COOR’、−CONR’
2、−COR’、−OCOR’、−CF
3、−CN、−SR’、−S(O)R’、−SO
2R’、−SO
2NR’
2、−PO(OR’)
2、および−NO
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R’が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、前記カルボキシ基およびカルボキシ基の等価体が、−COOR”、−CONR”
2、−COR”、−CN、−NO
2、−NHCOR”、−OR”、−SR”、−OCOR”、−SO
3R”、および−SO
2NR”
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R”が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかである、上記[3]記載の剤。
【0020】
[8] 前記置換基を有してもよいアリール基が、置換基を有してもよいフェニル基である、上記[3]記載の剤。
[9] 前記置換基を有してもよいフェニル基が、一般式(9)
【化9】
(式中、Y
1が、−R’、−OR’、および電子吸引基からなる群より選択される1つの基を表し、Y
2が、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体のいずれかで置換されていてもよく、かつ二重結合を有していてもよいアルキル基、水素原子、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体からなる群より選択される1つの基を表し、隣接する2つの置換基Y
1とY
2とが互いに結合して環を形成してもよく、R’が、水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表す。)であり、
前記電子吸引基が、ハロゲン原子、−COOR’、−CONR’
2、−COR’、−OCOR’、−CF
3、−CN、−SR’、−S(O)R’、−SO
2R’、−SO
2NR’
2、−PO(OR’)
2、および−NO
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R’が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、
前記カルボキシ基およびカルボキシ基の等価体が、−COOR”、−CONR”
2、−COR”、−CN、−NO
2、−NHCOR”、−OR”、−SR”、−OCOR”、−SO
3R”、および−SO
2NR”
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R”が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかである、上記[8]記載の剤。
【0021】
[10] 一般式(10)
【化10】
(式中、R
12が置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および水素原子のいずれかを表し、R
14が水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、X
2がカルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体のいずれかを表し、Y
1が−R’、−OR’、および電子吸引基からなる群より選択される1つの基を表し、R’が、水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、およびn
3が0−4の整数を表し、
前記カルボキシ基およびカルボキシ基の等価体が、−COOR、−CONR
2、−COR、−CN、−NO
2、−NHCOR、−OR、−SR、−OCOR、−SO
3R、および−SO
2NR
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、Rが水素原子およびアルキル基のいずれかであり、
前記電子吸引基が、ハロゲン原子、−COOR’、−CONR’
2、−COR’、−OCOR’、−CF
3、−CN、−SR’、−S(O)R’、−SO
2R’、−SO
2NR’
2、−PO(OR’)
2、および−NO
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R’が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表す。)で示される、化合物又はその塩を有効成分として含有する、炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤。
【0022】
[11] 一般式(11)
【化11】
(式中、R
12が置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および水素原子のいずれかを表し、R
14が水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、X
2がカルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体のいずれかを表し、Y
1が−R’、−OR’、および電子吸引基からなる群より選択される1つの基を表し、R’が、水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、n
1が0−4の整数を表し、およびn
3が0−4の整数を表し、
前記カルボキシ基およびカルボキシ基の等価体が、−COOR、−CONR
2、−COR、−CN、−NO
2、−NHCOR、−OR、−SR、−OCOR、−SO
3R、および−SO
2NR
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、Rが水素原子およびアルキル基のいずれかであり、
前記電子吸引基が、ハロゲン原子、−COOR’、−CONR’
2、−COR’、−OCOR’、−CF
3、−CN、−SR’、−S(O)R’、−SO
2R’、−SO
2NR’
2、−PO(OR’)
2、および−NO
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R’が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表す。)で示される、化合物又はその塩を有効成分として含有する、炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤。
【0023】
[12]
一般式(12)
【化12】
(式中、R
15が、メチル基およびエチル基を表し、Wが、一般式(13)−一般式(16)
【化13】
のいずれかを表し、R
16が、水素原子、メチル基およびエチル基のいずれかを表し、Y
1が、−R’、−OR’、および電子吸引基からなる群より選択される1つの基を表し、Y
2が、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体のいずれかで置換されていてもよく、かつ二重結合を有していてもよいアルキル基、水素原子、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体からなる群より選択される1つの基を表し、隣接する2つの置換基Y
1とY
2とが互いに結合して環を形成してもよく、R’が、水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、
前記電子吸引基が、ハロゲン原子、−COOR’、−CONR’
2、−COR’、−OCOR’、−CF
3、−CN、−SR’、−S(O)R’、−SO
2R’、−SO
2NR’
2、−PO(OR’)
2、および−NO
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R’が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、
前記カルボキシ基およびカルボキシ基の等価体が、−COOR”、−CONR”
2、−COR”、−CN、−NO
2、−NHCOR”、−OR”、−SR”、−OCOR”、−SO
3R”、および−SO
2NR”
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R”が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表す。)で示される化合物又はその塩を有効成分として含有する、炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤。
【0024】
[13] 一般式(17)
【化14】
(式中、R
12が置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および水素原子のいずれかを表し、Y
1が、−R’、−OR’、および電子吸引基からなる群より選択される1つの基を表し、R’が、水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、
前記電子吸引基が、ハロゲン原子、−COOR’、−CONR’
2、−COR’、−OCOR’、−CF
3、−CN、−SR’、−S(O)R’、−SO
2R’、−SO
2NR’
2、−PO(OR’)
2、および−NO
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R’が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表す。)で示される化合物又はその塩を有効成分として含有する、炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤。
【0025】
[14] 一般式(18)
【化15】
(式中、Y
1が、−R’、−OR’、および電子吸引基からなる群より選択される1つの基を表し、Y
2が、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体のいずれかで置換されていてもよく、かつ二重結合を有していてもよいアルキル基、水素原子、カルボキシ基、およびカルボキシ基の等価体からなる群より選択される1つの基を表し、隣接する2つの置換基Y
1とY
2とが互いに結合して環を形成してもよく、R’が、水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、
前記電子吸引基が、ハロゲン原子、−COOR’、−CONR’
2、−COR’、−OCOR’、−CF
3、−CN、−SR’、−S(O)R’、−SO
2R’、−SO
2NR’
2、−PO(OR’)
2、および−NO
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R’が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表し、
前記カルボキシ基およびカルボキシ基の等価体が、−COOR”、−CONR”
2、−COR”、−CN、−NO
2、−NHCOR”、−OR”、−SR”、−OCOR”、−SO
3R”、および−SO
2NR”
2からなる群より選択される少なくとも1つの基であり、R”が水素原子、および二重結合を有してもよいアルキル基のいずれかを表す。)で示される化合物又はその塩を有効成分として含有する、炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤。
【0026】
[15]下記の化学式1で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤。
【化16】
【0027】
[16]上記の化学式1で表される化合物の光学異性体のうち、1から4のいずれかの光学異性体のみを有効成分として含有する、炎症性皮膚疾患の予防または治療に用いる製剤。
【0028】
[17]CD45陽性細胞の活性化が抑制される、上記[1]乃至[16]記載の剤。
【0029】
[18]乳剤性基材を用いた製剤である、上記[1]乃至[16]記載の剤。
【0030】
[19]皮膚組織の所属リンパ節のリンパ球数の減少が阻止される、上記[18]記載の剤。
【0031】
[20]所属リンパ節のリンパ球が、CD3陽性CD4陰性T細胞、CD3陽性CD4陽性T細胞、ナイーブCD4陽性T細胞、活性化CD4陽性T細胞、Th1細胞、Th2細胞、Tfh細胞及び制御性T細胞からなる群の少なくとも1つのリンパ球である、上記[19]記載の剤。
【0032】
[21]上記[1]乃至[16]記載の化合物又はその塩を含んでなる、乳剤性基材。
【0033】
[22]皮膚組織の所属リンパ節のリンパ球数の減少が阻止される、上記[21]記載の基材。
【0034】
[23]所属リンパ節のリンパ球が、CD3陽性CD4陰性T細胞、CD3陽性CD4陽性T細胞、ナイーブCD4陽性T細胞、活性化CD4陽性T細胞、Th1細胞、Th2細胞、Tfh細胞及び制御性T細胞からなる群の少なくとも1つのリンパ球である、上記[22]記載の基材。