【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【課題】安価に大量合成が可能なヒドロゲル素材として有用なDNAを含む複合体、並びに該複合体を含むゲル及びゾルゲル可逆性組成物を提供する。さらに、上記複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】水酸基含有化合物とDNAとから構成され、該水酸基含有化合物の水酸基にDNAが結合している複合体であって、該水酸基含有化合物は、分子内に2個以上の水酸基を有する、ポリエーテル、多糖、又はヒドロキシエチルメタクリレートの重合体若しくは共重合体であり、該水酸基含有化合物には2個以上の同一又は異なるDNAが結合してなる、複合体、当該複合体を含むゲル、当該複合体を含むゾルゲル可逆性組成物、及び液相合成系により、分子内に2個以上の水酸基を有する水酸基含有化合物の水酸基を介して、2個以上のDNAを伸長する工程を含む、当該複合体の製造方法。
液相合成系により、分子内に2個以上の水酸基を有する水酸基含有化合物の水酸基を介して、2個以上のDNAを伸長する工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述するように、従来のDNAを含む(ヒドロ)ゲル素材は、安価に大量に製造することが困難であった。
【0011】
また、特許文献1及び非特許文献4−6では、DNAの液相合成法によりPEGの一方の末端に1個のDNA鎖を合成したことしか記載されておらず、作製されたPEG-DNA複合体をゲルに応用することも開示されていない。
【0012】
そこで、本発明は、安価に大量合成が可能なゲル素材として有用なDNAを含む複合体、並びに該複合体を含むゲル及びゾルゲル可逆性組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記複合体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記複合体を含むゲルの製造方法、及び上記複合体を含むゲルの製造用又は保存用の水溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、液相合成法を利用してPEGの両端の水酸基を介してDNAを伸長させることにより安価且つ大量に製造することができるDNA-PEG-DNA複合体がゲル素材として有用であるという知見を得た。
【0014】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の複合体、ゲル、ゾルゲル可逆性組成物、当該複合体の製造方法等を提供するものである。
【0015】
項1.水酸基含有化合物とDNAとから構成され、該水酸基含有化合物の水酸基にDNAが結合している複合体であって、
該水酸基含有化合物は、分子内に2個以上の水酸基を有する、ポリエーテル、多糖、又はヒドロキシエチルメタクリレートの重合体若しくは共重合体であり、
該水酸基含有化合物には2個以上の同一又は異なるDNAが結合してなる、
複合体。
項2.前記水酸基含有化合物の平均分子量が、1,000〜100,000である、項1に記載の複合体。
項3.前記水酸基含有化合物が、直鎖又は分岐鎖型のポリエチレングリコールである、項1又は2に記載の複合体。
項4.前記DNAの長さが、3〜20塩基である、項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
項5.前記DNAが、2本又はそれ以上の本数の鎖間で高次構造を形成できる塩基配列を含む、項1〜4のいずれか一項に記載の複合体。
項6.前記DNAが、GGG、GGGG、及びCCCCCからなる群から選択される少なくとも1種の塩基配列を含む、項1〜5のいずれか一項に記載の複合体。
項7.前記DNAが、GGG及び/又はGGGGの塩基配列を含む、項1〜6のいずれか一項に記載の複合体。
項8.項1〜7のいずれか一項に記載の複合体を含むゲル。
項9.金属カチオンを更に含む、項8に記載のゲル。
項10.項1〜7のいずれか一項に記載の複合体を含むゾルゲル可逆性組成物。
項11.項8又は9に記載のゲルを含む医薬組成物、食品組成物又は化粧料。
項12.液相合成系により、分子内に2個以上の水酸基を有する水酸基含有化合物の水酸基を介して、2個以上のDNAを伸長する工程を含む、項1〜7のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
項13.以下の(A)〜(E)工程を含む、前記DNAの長さがn塩基である、項1〜7のいずれか一項に記載の複合体の製造方法:
(A)溶媒中、活性化剤の存在下で水酸基含有化合物とデオキシヌクレオシドホスホロアミダイトとをカップリングする工程、
(B)溶媒中、酸化剤の存在下で(A)工程で得られたカップリング化物のリン原子を酸化する工程、
(C)溶媒中、(B)工程で得られた酸化されたカップリング化物を、脱保護剤と反応させて、該カップリング化物の5'末端にある保護基を除去する工程、
(D)上記(A)、(B)及び(C)工程をn-2回繰り返し、その後(A)工程及び(B)工程を経る工程、並びに
(E)(D)工程で得られた反応生成物を、脱保護剤と反応させて、核酸塩基及びリン酸ジエステルの保護基を除去する工程。
項14.項1〜7のいずれか一項に記載の複合体を含む溶液を、水溶性高分子を含む水溶液に添加する工程を含む、ゲルの製造方法。
項15.水溶性高分子を含む、項1〜7のいずれか一項に記載の複合体を含むゲルの製造用の水溶液。
項16.水溶性高分子を含む、項1〜7のいずれか一項に記載の複合体を含むゲルの保存用の水溶液。
【発明の効果】
【0016】
本発明の複合体は、主成分としてPEGを始めとする2個以上の水酸基を有する高分子を利用し、ゲルの網目構造を形成するための架橋点形成にDNAを利用したゲル素材であり、安価に大量合成が可能である。
【0017】
また、本発明の複合体は、架橋点にDNAを利用することにより、ゲルの形成−分解を可逆的にすることが可能である。さらに、本発明の複合体を使用することで、ゲルを安定的に調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「からなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0021】
本発明の複合体は、水酸基含有化合物とDNAとから構成され、該水酸基含有化合物の水酸基にDNAが結合している複合体であって、該水酸基含有化合物は、分子内に2個以上の水酸基を有する、ポリエーテル、多糖、又はヒドロキシエチルメタクリレートの重合体若しくは共重合体であり、該水酸基含有化合物には2個以上の同一又は異なるDNAが結合してなることを特徴とする。
【0022】
このように、本発明の複合体には2個以上のDNAが結合していることから、当該DNAを利用して架橋点を形成することによりゲルの網目構造を形成することが可能である。
【0023】
上記水酸基含有化合物とは、本発明の複合体の主要な成分となる、分子内に水酸基を有する重合体である。また、上記水酸基含有化合物は、天然の重合体、又は人工的に合成された重合体のいずれであってもよい。本発明において水酸基含有化合物の水酸基は、-OHの構造を有しない、DNAが結合した状態のものも含む意味である。
【0024】
上記水酸基含有化合物は、分子内に2個以上、好ましくは2〜1500個、より好ましくは2〜8個の水酸基を有する。
【0025】
上記水酸基含有化合物に結合するDNAの数は、2個以上、好ましくは2〜1500個、より好ましくは2〜8個である。
【0026】
上記水酸基含有化合物の平均分子量は、本発明の効果が得られる限り特に制限されない。平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜40,000、更に好ましくは4,000〜30,000である。ここでの平均分子量とは、数平均分子量又は重量平均分子量のいずれであってもよく、これらの平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等により測定できる。
【0027】
ポリエーテルとしては、分子内に2個以上の水酸基を有し、且つ主鎖中にエーテル結合(-O-)を有する重合体であれば特に制限なく使用できる。ポリエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0028】
多糖としては、分子内に2個以上の水酸基を有し、且つ単糖がポリグリコシル化した高分子化合物であれば特に制限なく使用できる。多糖としては、例えば、デンプン、セルロース、へパリン、キチン、アガロース、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン、ポリシアル酸などが挙げられる。
【0029】
ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethyl methacrylate)の重合体とは、ヒドロキシエチルメタクリレートの単量体を実質的に単独の構成成分とする重合体を意味する。
【0030】
ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体とは、ヒドロキシエチルメタクリレートの単量体及びヒドロキシエチルメタクリレート以外の単量体を構成成分として含む共重合体を意味し、ヒドロキシエチルメタクリレート以外の単量体としては、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル、より好ましくは(メタ)アクリル酸メチルである。(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。
【0031】
上記水酸基含有化合物としては、分子内に2個以上の水酸基を有するポリエーテルが好ましく、直鎖又は分岐鎖型のポリエチレングリコールHO(-CH
2CH
2O-)
mHがより好ましい。ポリエチレングリコールは両末端が水酸基であるので、当該水酸基を利用してDNAを結合させることが可能である。
【0032】
分岐鎖型のポリエチレングリコールの分岐の数としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されない。分岐の数としては、例えば3〜32、好ましくは4〜8である。
【0033】
上記水酸基含有化合物は、市販品を入手すること、又は常法により合成することが可能である。
【0034】
上記DNA (デオキシリボ核酸)は、架橋点を形成するためのものであり、2個以上のDNAで高次構造を形成することにより、本発明の複合体が網目構造を形成することができる。
【0035】
上記DNAは、原則として一本鎖のものであり、塩基の種類としては、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、及びチミン(T)が挙げられる。
【0036】
上記DNAが結合するのは、上記水酸基含有化合物の水酸基の全て又は一部のいずれであってもよい。上記DNAは、上記水酸基含有化合物の水酸基と直接結合していてもよく、又は適当な架橋剤を介して結合していてもよい。架橋剤としては、上記DNAと水酸基含有化合物とを結合できる少なくとも2価の架橋剤であれば特に限定されない。
【0037】
上記DNAの長さは、架橋点の形成が可能であれば特に制限されない。上記DNAの長さは、好ましくは3〜20塩基、より好ましくは3〜8塩基、更に好ましくは3〜4塩基である。
【0038】
上記DNAの塩基配列は、2本又はそれ以上の本数の鎖間で高次構造を形成できる塩基配列を含むものであれば制限なく使用できる。上記DNAの塩基配列としては、例えば、GGG、GGGG、CCCCC等の塩基配列を含むものが挙げられ、GGG又はGGGGの塩基配列を含むものが望ましい。本発明の複合体に結合するDNAの塩基配列は、1種単独又は2種類以上の組み合わせのいずれであってもよい。
GGG又はGGGGの塩基配列を有する場合は、Na
+、K
+、NH
4+などのカチオンの存在下で4つのグアニンが互いの水素結合によって平面構造(グアニンカルテット)を形成するので、本発明の複合体が4個会合することになる。
【0039】
CCCCCの塩基配列を有する場合は、pHに応答してi-motifと呼ばれる四重鎖を形成するので、本発明の複合体が4個会合することになる。
【0040】
上記DNAは、公知の固相合成法、液相合成法等や、公知のDNA合成装置等を用いて化学的に合成することができる。また、当該技術分野においてよく知られる他の方法を用いて合成することもできる。
【0041】
本発明の複合体は、液相合成系により、分子内に2個以上の水酸基を有する水酸基含有化合物の水酸基を介して、2個以上のDNAを伸長する工程を含む方法により製造することができる。
【0042】
前述するように、PEGを担体として用いたDNAの液相合成系については、特許文献1及び非特許文献4−6により報告されているので、本発明の複合体は、これらの文献の記載を参照することにより製造することができる。しかしながら、特許文献1及び非特許文献4−6には、PEGの一方の末端に1個のDNA鎖を合成したことしか記載されていないため、2個以上の水酸基を利用して2個以上のDNA鎖を合成する点は変更する必要がある。
【0043】
また、特許文献1及び非特許文献4−6は、PEGを有しないDNA鎖のみを得ることを目的としているため、PEGとDNA鎖の間に後から切断できるエステル結合を介する。本発明の複合体は、PEGとDNA鎖を一体として利用するため、エステル結合を介さずにDNA鎖を合成することが望ましい。
【0044】
本発明の複合体は、上記のように液相合成系を利用して製造することで、固相合成系で製造する場合と比べて、安価で且つ大量に合成することができる。そのため、本発明の複合体は、バルク材料としての応用が可能である。
【0045】
上記の本発明の複合体の液相合成系による製造方法は、より詳細には以下の(A)〜(E)工程を含む方法である。なお、以下の製造方法では、得られる本発明の複合体のDNAの長さをn塩基とする(nは正の整数であり、好ましくは3〜20である)。
【0046】
(A)カップリング工程
本工程では、アセトニトリル等の溶媒中、1H-テトラゾール、エチルチオテトラゾール等のテトラゾール誘導体、ジシアノイミダゾール等の活性化剤の存在下で水酸基含有化合物と所望のデオキシヌクレオシドホスホロアミダイト(deoxynucleoside phosporamidite)(ホスホロアミダイト試薬)をカップリングして、水酸基含有化合物の水酸基に所望のヌクレオシドが一塩基ずつ結合した中間体(1)(カップリング化物)を得る。当該デオキシヌクレオシドホスホロアミダイトは、5'炭素原子上の水酸基がジメトキシトリチル等の保護基により保護されており、核酸塩基も必要により保護基により保護されている。反応後には、反応液を濃縮した後に、tert-ブチルメチルエーテル等を貧溶媒として用いて、反応生成物を沈殿させることにより精製することができる。
【0047】
本工程は、通常、16〜34℃で行うことができ、反応時間は、通常0.5〜16時間程度である。
【0048】
(B)酸化工程
本工程では、アセトニトリル等の溶媒中、tert-ブチルヒドロペルオキシドやヨウ素等の酸化剤の存在下で(A)工程で得られた中間体(1)を酸化して、リン原子が酸化された中間体(2)(酸化されたカップリング化物)を得る。反応後には、反応液を濃縮した後に、tert-ブチルメチルエーテル等を貧溶媒として用いて、反応生成物を沈殿させることにより精製することができる。
【0049】
本工程は、通常、16〜40℃で行うことができ、反応時間は、通常0.5〜2時間程度である。
【0050】
(C)脱トリチル化工程
本工程では、ジクロロメタン等の溶媒中、(B)工程で得られた中間体(2)を、トリクロロ酢酸等の脱保護剤と反応させて、ジメトキシトリチル基等の5'末端の保護基が除去された中間体(3)を得る。反応後には、反応液を濃縮した後に、tert-ブチルメチルエーテル等を貧溶媒として用いて、反応生成物を沈殿させることにより精製することができる。
【0051】
本工程は、通常、16〜40℃で行うことができ、反応時間は、通常0.5〜16時間程度である。
【0052】
(D)繰り返し工程
本工程では、上記(A)、(B)及び(C)工程をn-2回繰り返し、その後(A)工程及び(B)工程を経ることにより、水酸基含有化合物の水酸基に所望の塩基配列(n塩基)を有するDNAが結合した中間体(4)(反応生成物)を得る。
【0053】
(E)脱保護工程
本工程では、(D)工程で得られた中間体(4)を、濃アンモニア水等の脱保護剤と反応させることにより、核酸塩基及びリン酸ジエステルの保護基を除去する。この反応は、通常、16〜60℃で行うことができ、反応時間は、通常0.5〜24時間程度である。
【0054】
(E)工程の前又は後に、得られた反応物について、トリフルオロ酢酸等の脱保護剤と反応させて、ジメチルトリチル基等の5'末端の保護基の除去を行い、最終的な目的物である本発明の複合体を得る。
【0055】
上記の製造方法は、(F)キャッピング工程として、カップリング工程において反応しなかったヌクレオチドの5'末端の水酸基を、例えば無水酢酸によりアセチル化(すなわち、キャッピング)する工程を更に含んでいてもよい。本工程により、カップリングが行われなかった化合物を更なる反応から排除することができる。
【0056】
上記の方法により得られた本発明の複合体は、濃縮、減圧濃縮、蒸留、溶媒抽出、結晶化、再結晶化、クロマトグラフィーなどの公知の手段により単離、精製することができる。
【0057】
本発明のゲルは、上記複合体を含むことを特徴とする。
【0058】
上記複合体は、結合するDNAを利用して架橋点を形成することにより、ゲルを形成することができる。また、架橋点にDNAを利用することにより、ゲルの形成−分解を可逆的に行うことが可能となる。このようなゲル化−ゾル化の条件としては、例えば、カチオンの有無、pH、温度、光反応、相補的塩基対形成などが挙げられる。
【0059】
上記複合体に結合するDNAがGGG又はGGGGの塩基配列を有する場合は、Na
+、K
+、NH
4+などのカチオンの存在下でグアニンカルテットを形成するので、当該複合体を含む溶液にカチオンを添加することでゲル化させることができる。ここでカチオンとしては、好ましくは金属カチオン、より好ましくはアルカリ金属のカチオン、特に好ましくはNa
+及びK
+である。本発明のゲル中のカチオンの濃度は、好ましくは0.001〜3 M、より好ましくは0.01〜1 Mである。
【0060】
上記複合体に結合するDNAがCCCCCの塩基配列を有する場合は、pHに応答してi-motifと呼ばれる四重鎖を形成するので、当該複合体を含む溶液のpHを3〜5の範囲に調整することでゲル化させることができる。
【0061】
上記複合体に結合するDNAがGGG又はGGGGの塩基配列を有する場合はまた、カチオンの存在下でゲル化した状態であっても、実施例で示しているように温度を上昇させることによりゾル化させることが可能であり、温度変化によりゲル化又はゾル化させることができる。
【0062】
本発明のゲルの分散媒としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合液を挙げることができ、本発明のゲルはヒドロゲル又はオルガノゲルのいずれであってもよい。
【0063】
このように、上記複合体を含む溶液は、可逆的にゲルの形成−分解を行うことが可能であるので、上記複合体を含む溶液をゾルゲル可逆性組成物と称することもできる。
【0064】
本発明のゲル又はゾルゲル可逆性組成物における上記複合体の含有量は、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
【0065】
本発明のゲル又はゾルゲル可逆性組成物には、上記複合体以外の他の添加剤が含まれていてもよく、そのような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、殺菌剤、安定剤、界面活性剤、香料などが挙げられる。
【0066】
また、上記複合体を含む溶液を、水溶性高分子を含む水溶液に添加することにより、各種形状のゲルを製造できる。
【0067】
当該ゲルの製造方法によれば、実施例で示しているように、水溶性高分子の存在により、ゲルの形成が可能となる上に、ゲルが溶解せずに安定的にゲルを保存することが可能となる。そのため、水溶性高分子を含む水溶液は、ゲルの製造用又は保存用の水溶液として使用することができる。
【0068】
上記水溶性高分子(water-soluble polymer)としては、水に溶ける高分子であって、ゲルの形成とゲルの安定的な保存を可能とするものであれば公知の水溶性高分子を広く使用できる。水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリ(2−ヒドロキシ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン)(PHP)、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(PMPC)などの合成高分子、タンパク質、多糖(デキストラン、デンプンなど)の天然高分子が挙げられる。
【0069】
上記水溶性高分子の平均分子量としては、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜40,000、更に好ましくは4,000〜30,000である。ここでの平均分子量とは、数平均分子量又は重量平均分子量のいずれであってもよく、これらの平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等により測定できる。上記水溶液中の水溶性高分子の濃度は、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%である。
【0070】
上記水溶性高分子を含む水溶液は、上記複合体に結合するDNAが架橋点を形成してゲルの形成が可能となる条件を有していればよい。例えば、上記複合体に結合するDNAがGGG又はGGGGの塩基配列を有する場合は、Na
+、K
+、NH
4+などのカチオンの存在下でゲル化するので、上記水溶液には水溶性高分子に加えてカチオンが更に含まれることになる。ここでカチオンとしては、好ましくは金属カチオン、より好ましくはアルカリ金属のカチオン、特に好ましくはNa
+及びK
+である。上記水溶性高分子を含む水溶液中のカチオンの濃度は、好ましくは0.001〜3 M、より好ましくは0.01〜2 Mである。
【0071】
上記水溶性高分子を含む水溶液には、水溶性高分子以外の他の添加剤が含まれていてもよく、そのような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、殺菌剤、安定剤、界面活性剤、香料などが挙げられる。水溶液としては、例えば、培養液(例えば、DMEM、EMEM、RPMI-1640、Ham's F-12など)、緩衝液(例えば、PBS、TBS、リン酸バッファー、クエン酸バッファー、TEバッファー、TAEバッファー、TBEバッファー、Tris-HClバッファーなど)などが挙げられ、これらに対して、必要により水溶性高分子やカチオン等を添加し、ゲル製造用又はゲルの保存用の水溶液として使用し得る。
【0072】
上記複合体を含む溶液には、複合体以外の他の添加剤が含まれていてもよく、そのような添加剤としては、例えば、緩衝剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、殺菌剤、安定剤、界面活性剤、香料などが挙げられる。また、当該溶液には、ゲル中に取り込ませることを目的とする物(例えば、薬剤など)が含まれていてもよい。当該溶液に使用する溶媒としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合液を挙げることができる。
【0073】
上記複合体を含む溶液の複合体の濃度は、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%である。
【0074】
上記複合体を含む溶液を、水溶性高分子を含む水溶液に添加することにより、作製できるゲルの形状としては、例えば、ビーズ状(球状)、チューブ状、シート状、フィルム状、糸状、棒状などが挙げられる。これらの形状のゲルについては、添加する方法や使用する水溶性高分子の種類を調整することで作製することができる。例えば、上記複合体を含む溶液を、水溶性高分子を含む水溶液に滴下することでゲルビーズを作製することができる。実施例で示しているように、このように製造されたゲルは、ホスホジエステラーゼなどのDNAを分解する酵素に対して耐性を有し得る。
【0075】
本発明のゲルは、医薬、食品、化粧品等の分野において応用することができ、例えば、薬剤や食品のカプセル、保湿剤、生分解性のゲル玉、細胞塊作製用の培養基材、ドラッグデリバリーシステムなどへの応用などが考えられる。
【0076】
本発明の複合体中のDNAは生分解性物質であり安全性は確認されており、同様にPEG等も既に安全な添加物として広く利用されているものである。そのため、本発明の複合体をゲル素材として、医薬、食品、化粧品等へ応用した場合、安全上の問題はない。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0078】
実施例1:両末端にGGGを有するPEGの合成
両末端OHのPEGを担体として、DNAの液相大量合成によりデオキシグアノシンを3残基導入する一例を示す(
図1)。
【0079】
1.1 カップリング
密閉した3つ首の丸底フラスコ中にPEG (SIGMA-Aldrich, Mw = 4,600) 7.31 g (1.59 mmol)を加え、系を窒素置換した。脱水アセトニトリル(AN, Glen Research 40-4050-50)で3回共沸乾燥を行った後、内容物を脱水AN 20 mLに再溶解した。ここに、脱水AN 20 mLに溶かしたデオキシグアノシンのホスホロアミダイトモノマー(Glen Research 10-1020-20)4.0 gと、脱水AN 25 mLに溶かした1H-テトラゾール(東京化成工業) 1.34 gを同時にシリンジで加え、室温で1時間撹拌した。反応後の溶液をロータリーエバポレーター(SHIBATA, Rotavapor R-114)で減圧濃縮し、tert-ブチルメチルエーテル(TBME,和光純薬工業)を貧溶媒に用いて再沈殿を行うことで、PEGの両端にホスホロアミダイトモノマーが1塩基ずつカップリングした中間体1を得た。
【0080】
1.2 酸化
1を100 mLナスフラスコに移し、脱水AN 20 mLに溶解させた。冷却したtert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP,東京化成工業) 4 mlを滴下し、室温で溶液を30分間撹拌した。反応後の溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、TBMEを貧溶媒に用いて再沈殿を行うことで、リン原子が酸化された中間体1'を得た(粗収量11.34 g)。
【0081】
1.3脱トリチル化
1'を100 mLナスフラスコに移し、3%トリクロロ酢酸/ジクロロメタン(TCA / DCM)混合溶液(Glen Research, 40-4140-62) 160 mLを氷冷下で滴下した。ついで、溶液を30分間室温で撹拌した。反応後の溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、TBMEを貧溶媒に用いて再沈殿を行うことで、末端のジメトキシトリチル(DMTr)基が除去された中間体1''を得た。
【0082】
引き続き、最後の脱トリチル化を除いて上記の手順を2回繰り返すことで、両末端にDMTr基を有し、デオキシグアノシンがそれぞれ三残基ずつ伸長された中間体2を得た(11.45 g, 1.43 mmol, 全体収率90%)。
【0083】
中間体2の
1H-NMRスペクトル(CDCl
3中)を
図2に示す。
【0084】
1.4脱保護および逆相カラム精製
得られた中間体2 (200 mg)を40%メチルアミン水溶液/濃アンモニア水1:1混合液(東京化成工業) 10 mLに溶かし、室温で2時間静置することにより、核酸塩基、及びリン酸ジエステルの保護基を脱保護した。反応液に100 mg/mLのNaCl水溶液10 mLを加え、Glen Research社製DNA簡易精製カラムGLEN-PAK (60-5300-01) 3 gの所定の手順でDMTr基の除去及び脱塩精製を行った。10 mLで3回溶出した50%アセトニトリル溶液をロータリーエバポレーターで減圧乾燥することで、157 mg (収率96%)の最終目的物3を得た。
【0085】
目的物3の
1H-NMRスペクトル(D
2O中)を
図3に示す。
【0086】
PEGは直鎖状のものだけでなく、4分岐PEG (4-arm PEG)、8分岐PEG (8-arm PEG)なども、ほぼ同様の手順で使用できる。4-arm PEG (日油株式会社, MW = 20,000) 3.96gを使用してGGGを導入した場合、カラム精製前の段階で3.34 g (粗収率62%)の産物を得ることができた。
【0087】
また、塩基配列がCCCCCであるDNAを両末端に有するマクロモノマーも、ホスホロアミダイトモノマーをCのモノマー(Glen Research, 10-1015-20)に変更することで、高収率に合成することができる。1.75 gのPEG (Mw = 4,600)から合成を開始して、2.65 gの保護されたdCCCCC-PEG-dCCCCCを得ることができた(収率77%)。
【0088】
実施例2:K+添加によるヒドロゲルの調製
得られた目的物3を35.3 mgサンプル管に量り取り、pH 7.0に調整した0.1 Mリン酸緩衝液200 mLを加えた。ボルテックスで約1分間激しく震盪し、バス型ソニケーターで3分間超音波照射することで、サンプル濃度15wt%の溶液を得た。ここに2.8 M KCl水溶液を7.14μL加えてボルテックスすると(K
+の最終濃度 0.1 M)、溶液は数秒以内にゲル化し、サンプル管を逆さまにしても流動しなかった。ゲル化前後の写真を
図4に示す。レオメーター(Thermo Scientific, RS 6000)による測定結果では、貯蔵弾性率(G')がおよそ1.0 kPa、損失弾性率(G'')がおよそ0.1 kPaであった。
【0089】
0.1 MのK
+添加で形成したゲルの温度依存性を様々なサンプル濃度で調べた結果を
図5に示す。いずれのゲルも高温で溶解した。室温でゲル化するためには、およそ10wt%のサンプル濃度が必要となった。また、サンプル濃度が20wt%以上では37℃以上でもゲル状態を維持できることがわかった。K
+濃度を1.0 Mまで増加させると、相転移温度が5〜20℃上昇した。
【0090】
実施例3:円偏光二色性(CD)スペクトル
得られた目的物3の25μMリン酸緩衝液(0.1 M, pH 7.0)溶液のCDスペクトル(日本分光, J-1500)を測定した結果を
図6に示す。
図6によれば、K
+添加後には260 nmの正のコットン効果及び240 nmの負のコットン効果が顕著に増大した。このことは、目的物3中のDNA部がパラレル型の四重鎖を形成していることを示す。
【0091】
実施例4:酵素分解
15wt%で調整したヒドロゲルは、10 Uのホスホジエステラーゼを含む0.1 Mリン酸緩衝液(pH 7.0)を100μL加えて37℃で静置すると、およそ1時間でゾル化した(
図7)。このことは、ゲルの網目構造はDNAが架橋部となって維持されていることを示す。
【0092】
実施例5:pH変化によるヒドロゲルの調製
実施例1で得られたdCCCCC-PEG-dCCCCCを85.6 mgサンプル管に量り取り、pH 8.0に調整した0.1 M MES緩衝液200 mL(NaCl 140 mM含有)を加えた。ボルテックスで約1分間激しく震盪し、バス型ソニケーターで3分間超音波照射することで、サンプル濃度30wt%の溶液を得た。このときのpHは、2.6であった。ここに1.0 M NaOH水溶液を37.5μL加えてボルテックスすると、溶液のpHは4.2に変化し、溶液は1〜2分間でゲル化し、サンプル管を逆さまにしても流動しなかった。
【0093】
種々pHでゾル-ゲル転移を調べて作成した相図を
図8に示す。
図8によれば、サンプル濃度25wt%ではpH 4.2〜4.3の範囲内で、サンプル濃度30wt%ではpH 4.0〜5.0の範囲内でゲル化が観察された。
【0094】
実施例6:ゲルビーズの調製(1)
<実験方法>
・複合体溶液10μL (15wt%)
複合体:dG
4-PEG
4.6k-dG
4 17.6 mg dG
4-PEG
4.6k-dG
4は、PEG (Mw=4,600)の両端にGGGGの塩基配列を有するDNAが結合した複合体を意味する。
溶媒:0.1 M Tris/HCl 1000μL
蛍光物質:FLUORESBRITE PLAIN RED 0.5U 20μL
・外液1 mL
水溶性高分子又は低分子:以下に記載されているものを使用
溶媒:4 M KCl
aq250μL
0.1 Mリン酸バッファー 750μL
複合体溶液(dG
4-PEG
4-dG
4, 15wt%) 10μLを、水溶性高分子又は低分子を溶解した外液(0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.4, 1.0 M KCl))に滴下し,ゲルビーズを調製した。
【0095】
<結果>
・外液が合成高分子を含む場合(
図9)
PEG
2k、PEG
4.6k、PEG
10k、4-arm PEG
5k、又は4-arm PEG
20kを20wt%含む外液を使用してゲルビーズの調製を行った場合の結果を
図9に示す。全ての外液においてゲルビーズを調製することができ、ゲルビーズは9日後にも溶解しなかった。
【0096】
・外液が低分子を含む場合(
図10)
エチレングリコール、グリセリン、又はアクリルアミドを20wt%含む外液を使用してゲルビーズの調製を行った場合の結果を
図10に示す。全ての外液で、完全なゲルビーズは調製できなかった。6時間後には全て溶解した。
【0097】
・外液が天然高分子、PEG以外の合成高分子を含む場合(
図11)
デキストラン(Mw 40,000)、又はポリビニルアルコールを20wt%含む外液を使用してゲルビーズの調製を行った場合の結果を
図11に示す。両方の外液で、ゲルビーズを調製することができた。ゲルビーズは8日後にも溶解しなかった。
【0098】
・外液が0〜15wt%のPEG
4.6kを含む場合(
図12)
PEG
4.6kを0wt%、5wt%、10wt%、又は15wt%含む外液を使用してゲルビーズの調製を行った場合の結果を
図12に示す。0wt%ではゲルビーズが72時間後には溶解した。5wt%、10wt%、15wt%では完全な形ではないもののゲルビーズが調製でき、8日後にも溶解しなかった。
【0099】
実施例7:ゲルビーズの調製(2)
<実験方法>
・複合体溶液10μL (15wt%)
複合体:dG
4-PEG
4.6k-dG
4 17.6 mg
溶媒:0.1 M Tris/HCl 1000μL
蛍光物質:FLUORESBRITE PLAIN RED 0.5U 100μL
・外液1 mL
水溶性高分子又は低分子:以下に記載されているものを使用
溶媒:4 M KCl
aq250μL
0.1 Mリン酸バッファー 750μL
複合体溶液(dG
4-PEG
4-dG
4, 15wt%) 10μLを、水溶性高分子又は低分子を溶解した外液(0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.4 ,1.0 M KCl))に滴下し、ゲルビーズを調製した。
【0100】
<結果>
・外液が分子量が低い合成高分子を含む場合
PEG1000、又はPEG1540を20wt%含む外液を使用した場合、両方の系でゲルビーズを調製することができた。また、ゲルビーズは溶解しなかった。
【0101】
・外液がアニオン性高分子を含む場合
アニオン性高分子であるポリアクリル酸(Mw 25,000)を20wt%含む外液を使用した場合、ゲルビーズを調製することができた。
【0102】
実施例8:ゲルビーズの調製(3)
<実験方法>
・複合体溶液10μL (15wt%)
複合体:dG
4-PEG
4.6k-dG
4 17.6 mg
溶媒:0.1 M Tris/HCl 1000μL
蛍光物質:POLYBEAD FLUORESCENT YG MICROSPHERES 0.05μm、0.1μm、又は0.5μm 100μL
・外液1 mL (20wt%)
水溶性高分子:PEG
4.6k 200 mg
溶媒:4 M KCl
aq 250μL
0.1 Mリン酸バッファー 750μL
複合体溶液(dG
4-PEG
4-dG
4, 15wt%) 10μLを、水溶性高分子を溶解した外液(0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.4,1.0 M KCl))に滴下し、ゲルビーズを調製した。
【0103】
<結果>
蛍光物質のサイズが0.05μmと0.1μmの系では蛍光物質のピークが見られ、0.05μmでより大きなピークが見られた。0.5μmの系ではピークに大きな変化は見られなかった。このことから0.05μmと0.1μmの系では蛍光物質がゲルビーズから溶出し、0.5μmの系ではゲルビーズから溶出していないことが分かる。
【0104】
実施例9:相補鎖によるゲルビーズ分解試験
<実験方法>
濃度が20wt%になるように0.1 M Tris/HCl (pH 7.0, 0.5μm蛍光ポリスチレンビーズ含有)に溶解した4-arm PEG
20k-DNA溶液10μLを、0.1 Mリン酸バッファー(10wt% PEG
4.6k, pH 7.0, 1.0 M KCl)に滴下しゲルビーズを調製した。2つの0.1 M Tris/HClバッファー(20wt% PEG, 1.0 M KCl)を用意した。調製したゲルビーズの体積から求めたDNAセグメントのmol数と等量になるように一方のバッファーに相補鎖を加えてボルテックスで撹拌した。次に調製したゲルビーズを相補鎖を含む又は含まないTris/HClバッファーに加えて室温下で静置し、観測を行った。
4-arm PEG
20k-DNAのDNA配列:5'-ACGCAGGG-3'
相補鎖のDNA配列:5'-CCCTGCGT-3'
<結果>
結果を
図13及び14に示す。ゲルビーズに相補鎖を加えた場合は、ゲルビーズはDNAに応答して72時間後には分解した。
【0105】
実施例10:酵素によるゲルビーズ分解試験
<実験方法>
(1) ホスホジエステラーゼI
濃度が20wt%になるように0.1 M Tris/HCl (pH 7.0, 0.5μm蛍光ポリスチレンビーズ含有)に溶解したdG
4-PEG
4.6k-dG
4溶液10μLを、0.1 Mリン酸バッファー(10wt% PEG
4.6k, pH 7.0, 1.0 M KCl)に滴下しゲルビーズを調製した。これを1.0 mLの0.1 Mリン酸バッファー(20wt% PEG, pH 7.0, 15 mM Mg
2+, 1.0 M KCl, 50UホスホジエステラーゼI)のサンプル管No.02に移し、37℃の温浴でインキュベートした。
【0106】
(2) ホスホジエステラーゼII
濃度が20wt%になるように0.1 M Tris/HCl (pH7.0, 0.5μm蛍光ポリスチレンビーズ含有)に溶解したdG
4-PEG
4.6k-dG
4溶液10μLを、0.1 Mリン酸バッファー(10wt% PEG
4.6k, pH 7.0, 1.0 M KCl)に滴下しゲルビーズを調製した。これを0.1 mLの0.1 Mリン酸バッファー(20wt% PEG, pH 7.0, 1.0 M KCl, 5UホスホジエステラーゼII)の入ったエッペンチューブに移し、37℃の温浴でインキュベートした。
【0107】
(3) DNaseI
濃度が20wt%になるように0.1 M Tris/HCl (pH7.0, 0.5μm蛍光ポリスチレンビーズ含有)に溶解したdG
4-PEG
4.6k-dG
4溶液10μLを0.1 Mリン酸バッファー(10wt% PEG
4.6k, pH 7.0, 1.0 M KCl)に滴下しゲルビーズを調製した。これを0.1 mLの0.1 Mリン酸バッファー(20wt% PEG, pH 7.0, 1.0 M KCl, 50U DNaseI)の入ったエッペンチューブに移し、37℃℃の温浴でインキュベートした。
【0108】
<結果>
(1)〜(3)の結果をそれぞれ
図15〜17に示す。酵素分解を始めてから48時間後のサンプルは、どれも目視ではゲルビーズの分解は観察されなかった。