【解決手段】本発明に係るプル及び/又はプッシュロッド1は、ロッド長手方向軸線に沿って移動可能であり、制御部材3を案内する制御カム2が設けられており、該制御カム2は、1つ又は複数のピッチ部分4;5;6;7を有する少なくとも部分的に螺旋形の螺条部分8を有している。
プル及び/又はプッシュロッド(1)であって、ロッド長手方向軸線に沿って移動可能であり、制御部材(3)を案内する制御カム(2)が設けられており、該制御カム(2)は、1つ又は複数のピッチ部分(4;5;6;7)を有する少なくとも部分的に螺旋形の螺条部分(8)を有していることを特徴とする、プル及び/又はプッシュロッド(1)。
前記制御カム(2)は、前記螺条部分(8)に接続していてロッド長手方向軸線に対してほぼ半径方向に延びる少なくとも1つの空行程部分(9;10;11)を有している、請求項1記載のプル及び/又はプッシュロッド(1)。
当該プル及び/又はプッシュロッド(1)は少なくとも部分的に中空ロッドとして形成されており、前記制御カム(2)は、前記中空ロッドの内周部(13)に形成されている、請求項1又は2記載のプル及び/又はプッシュロッド(1)。
非円形横断面の延長部(14)又は非円形横断面の内側収容部(15)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載のプル及び/又はプッシュロッド(1)。
前記延長部(14)又は前記内側収容部(15)とは反対の側に、回転可能なキャップ(16)及び/又はスラスト軸受が配置されている、請求項5記載のプル及び/又はプッシュロッド(1)。
請求項1から6までのいずれか1項記載のプル及び/又はプッシュロッド(1)を備えた電気式の解除ユニットであって、少なくとも間接的に前記プル及び/又はプッシュロッド(1)に回動不能に連結された電動機(17)と、ハウジング(18)内において少なくとも軸方向で固定された制御部材(3)とが設けられており、該制御部材(3)は、緊締位置と解除位置との間において前記プル及び/又はプッシュロッド(1)を軸方向移動させるために、前記制御カム(2)に係合していることを特徴とする、電気式の解除ユニット。
前記電動機(17)の被駆動部に、偏心伝動装置が対応配置されており、該偏心伝動装置は少なくとも間接的に回動不能に前記プル及び/又はプッシュロッド(1)に連結されている、請求項7又は8記載の電気式の解除ユニット。
前記電動機(17)の駆動スピンドルに連行フランジ(22)が結合されていて、該連行フランジ(22)は、軸方向に延びる連行カラー(23)を有している、請求項7から9までのいずれか1項記載の電気式の解除ユニット。
前記連行カラー(23)に、前記プル及び/又はプッシュロッド(1)を回転駆動させるために、非円形横断面の駆動フランジ(14)が対応配置されている、請求項10記載の電気式の解除ユニット。
前記連行カラー(23)は、回動不能にセンサスリーブ(24)に連結されており、該センサスリーブ(24)は、ロッド長手方向軸線に対して偏心的に配置された又は周囲ピッチ(26)を備えて形成されたセンサターゲット(27)を有している、請求項10又は11記載の電気式の解除ユニット。
前記センサターゲット(27)に間隔センサ(28)が対応配置されていて、前記センサターゲット(27)に対する前記間隔センサ(28)の間隔は、前記ハウジング(18)の内部における前記プル及び/又はプッシュロッド(1)の軸方向位置に対して比例して形成されている、請求項12記載の電気式の解除ユニット。
前記ハウジング(18)内においてロッド長手方向軸線に対して同軸的に、滑り軸受及び/又は滑りブシュ(29)が配置されている、請求項7から13までのいずれか1項記載の電気式の解除ユニット。
ハウジング(18)内において回動不能ではあるが軸方向移動可能に案内されかつ個別化フィンガ(30)に結合された、請求項1から6までのいずれか1項記載のプル及び/又はプッシュロッド(1)を備えた、電気式の個別化装置であって、少なくとも間接的に回動不能に調節エレメントに連結された電動機(17)と、前記調節エレメント(31)に配置された制御部材(3)とが設けられており、該制御部材(3)は、個別化位置と通過位置との間において前記プル及び/又はプッシュロッド(1)を軸方向移動させるために、前記制御カム(2)に係合していることを特徴とする、電気式の個別化装置。
前記プル及び/又はプッシュロッド(1)に、前記個別化フィンガ(30)に対して軸方向に作用する力を緩衝するために、ばね弾性エレメントが配置されている、請求項15記載の電気式の個別化装置。
電気式のグリップ装置であって、グリッパ長手方向軸線に対して半径方向に移動可能でかつグリッパ溝(33)において案内されたグリッパベースジョー(34)が設けられており、該グリッパベースジョー(34)が、グリッパ長手方向軸線に対して傾けられて延びるキー溝(68)を介して、軸方向移動可能なキーフック(35)又はキー円錐と相互作用するようになっており、該キーフック(35)又はキー円錐が、請求項1から6までのいずれか1項記載のプル及び/又はプッシュロッド(1)に結合されている、グリップ装置において、
少なくとも間接的に回動不能に調節エレメント(31)に連結されている電動機(17)と、前記調節エレメント(31)に配置された制御部材(3)とが設けられており、該制御部材(3)は、閉鎖位置と開放位置との間において前記プル及び/又はプッシュロッド(1)を軸方向移動させるために、前記制御カム(2)に係合していることを特徴とする、電気式のグリップ装置。
前記プル及び/又はプッシュロッド(1)に、前記グリッパベースジョー(34)に対して半径方向に作用する力を緩衝するために、ばね弾性エレメントが配置されている、請求項17記載の電気式のグリップ装置。
前記グリッパベースジョー(34)における解離可能な取付けのための装着ジョー(36)が設けられており、該装着ジョー(36)は、ワークの外側係合のための半径方向内側に位置するグリッパ面(37)及び/又はワークの内側係合のための半径方向外側に位置するグリッパ面(37)を備えている、請求項17又は18記載の電気式のグリップ装置。
少なくとも2つのグリッパアーム(38)を備えていて、該グリッパアーム(38)のうちの少なくとも1つが、請求項1から6までのいずれか1項記載のプル及び/又はプッシュロッド(1)によって操作可能である、電気式の平行グリッパであって、
少なくとも間接的に調節エレメント(31)に回動不能に連結された電動機(17)と、前記調節エレメント(31)に配置された制御部材(3)とが設けられており、該制御部材(3)は、閉鎖位置と開放位置との間における軸方向移動のために、前記プル及び/又はプッシュロッド(1)の前記制御カム(2)に係合していることを特徴とする、電気式の平行グリッパ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゆえに本発明の課題は、上に述べた欠点を排除するプル及び/又はプッシュロッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために本発明の構成では、ロッド長手方向軸線に沿って移動可能なプル及び/又はプッシュロッドにおいて、当該プル及び/又はプッシュロッドが、制御部材を案内する制御カムを有しており、該制御カムは、1つ又は複数のピッチ部分を有する少なくとも部分的に螺旋形の螺条部分を有している。
【0006】
このように構成されていると、プル及び/又はプッシュロッドのロッド長手方向軸線に沿って、ねじ山の代わりに、規則的にガイド溝を有する制御カムが形成されている。制御カムのガイド溝もしくは螺条部分の幅は、アクメねじのねじ山に比べて極めて広幅に形成されているので、制御カムの使用時に、制御カムに係合するエレメントの引っ掛かりがほぼ排除されている。さらに制御カムは、一定のピッチを有するねじ山を備えたねじのように形成される必要がなく、種々異なったピッチを有するピッチ部分をも有することができる、という特殊性を備えている。
【0007】
本発明の好適な態様では、制御カムは、螺条部分に接続していてロッド長手方向軸線に対してほぼ半径方向に延びる少なくとも1つの空行程部分を有している。空行程部分において制御部材は、軸方向移動を生ぜしめないようにプル及び/又はプッシュロッドの制御カムにおいて滑動する。
【0008】
これによって、制御部材が空行程部分内にある場合には、プル及び/又はプッシュロッドはその軸方向位置が固定されているという利点が得られる。
【0009】
プル及び/又はプッシュロッドを特に簡単に製造することができる、特に好適な態様では、制御カムは、プル及び/又はプッシュロッドの外周部に形成されている。好ましくは、プル及び/又はプッシュロッドは追加的に、減摩性のコーティングによって被覆されている。摩耗の少ないシステム全体を得るために、プル及び/又はプッシュロッドのためにはDLC4000コーティング(DCL=Diamond-Like-Carbon; カーボンベース上の硬質組成物層)が考慮される。さらにプル及び/又はプッシュロッドは、焼入れされていてもよく、このとき制御カムの滑り面は綿密に研磨されている。
【0010】
択一的な態様では、プル及び/又はプッシュロッドは少なくとも部分的に中空ロッドとして形成されており、制御カムは、中空ロッドの内周部に形成されている。このように構成されていると、プル及び/又はプッシュロッドの外面をハウジングの内部における滑り表面として使用することができ、プル及び/又はプッシュロッドの回動防止のために外輪郭はまた非円形の形状に形成されている。このとき外面もまた同様に、特別な滑り特性を備えた材料によって処理もしくはコーティングされていてよい。
【0011】
プル及び/又はプッシュロッドを簡単に回転駆動できるようにするために、本発明の好適な態様では、非円形横断面の延長部又は非円形横断面の内側収容部が設けられている。
【0012】
さらに回転運動を遮断するのに好適な態様では、プル及び/又はプッシュロッドにおいて延長部又は内側収容部とは反対の側に、回転可能なキャップ及び/又はスラスト軸受が配置されている。
【0013】
プル及び/又はプッシュロッドは、電気式の解除ユニットにおいて使用することができる。
【0014】
電気式の解除ユニットは、本発明に係るプル及び/又はプッシュロッドと、少なくとも間接的にプル及び/又はプッシュロッドに回動不能に連結された電動機とを備えている。電気式の解除ユニットはさらに、ハウジング内において少なくとも軸方向で固定された制御部材を有しており、該制御部材は、緊締位置と解除位置との間においてプル及び/又はプッシュロッドを軸方向移動させるために、プル及び/又はプッシュロッドの制御カムに係合している。この電気式の解除ユニットにも、緊締位置と解除位置との間において切り換えられる、工具緊締システムを操作する解除ロッドが、ねじ式結合部によってではなく、軸方向に形成された制御カムとこの制御カムに係合する制御部材とによって形成されているという利点がある。
【0015】
両方の位置の間における確実な移動を保証するために、特に好適な態様では、制御部材は、制御ピンとして又は制御球として形成されている。これによって得られる制御部材の対称性は、制御カムもしくはガイド溝の内部における制御部材の簡単な滑動を可能にする。
【0016】
プル及び/又はプッシュロッドに大きなトルクを加えることができるようにするために、好適な態様では、電動機の被駆動部に、偏心伝動装置が対応配置されており、該偏心伝動装置は少なくとも間接的に回動不能にプル及び/又はプッシュロッドに連結されている。この構成に関連して、戻り駆動されない軸伝動装置が特に有利であることが判明しており、このような軸伝動装置は、大きなトルクを得るために比較的大きな減速比を提供することができる。1:60〜1:40の減速比が好適であることが判明しており、好ましくは1:50の減速比が選択される。
【0017】
さらに別の好適な態様では、電動機の駆動スピンドルに連行フランジが結合されていて、該連行フランジは、軸方向に延びる連行カラーを有している。この連行カラーは、回転駆動される他の部材に連結されてよい。
【0018】
回転運動を簡単に伝達するために好適な態様では、連行カラーに、プル及び/又はプッシュロッドを回転駆動させるために、非円形横断面の駆動フランジが対応配置されている。
【0019】
プル及び/又はプッシュロッドの軸方向位置を監視することができるようにするために、好適な態様では、連行カラーは、ロッド長手方向軸線に対して偏心的に配置された又は周囲ピッチを備えて形成されたセンサターゲットを有している。このとき好ましくは、センサターゲットに間隔センサが対応配置されていて、センサターゲットに対する間隔センサの間隔は、ハウジングの内部におけるプル及び/又はプッシュロッドの軸方向位置に対して比例して形成されている。
【0020】
プル及び/又はプッシュロッドを簡単に軸方向移動させることができるようにするため、及び移動時に可能な限り僅かな力しか失わないように、もしくは移動時に可能な限り僅かな力を使用すればよいようにするために、別の好適な態様では、ハウジング内においてロッド長手方向軸線に対して同軸的に、滑り軸受及び/又は滑りブシュが配置されている。
【0021】
本発明に係るプル及び/又はプッシュロッドの別の好適な使用例として、電気式の個別化装置における使用が挙げられる。この電気式の個別化装置は、当該個別化装置が、ハウジング内において回動不能ではあるが軸方向移動可能に案内されかつ個別化フィンガに結合されたプル及び/又はプッシュロッドを備えて形成されているという特徴を有する。この電気式の個別化装置にはさらに、少なくとも間接的に回動不能に調節エレメントに連結された電動機と、調節エレメントに配置された制御部材とが設けられており、該制御部材は、個別化位置と通過位置との間においてプル及び/又はプッシュロッドを軸方向移動させるために、制御カムに係合している。個別化装置においても、ねじ式結合部の引っ掛かりはもはや発生せず、ひいては個別化装置のロック又は損傷が生じることはない。
【0022】
個別化位置は、個々のエレメント(例えばマガジン化されたワーク)が別のエレメント(別のマガジン化されたワーク)から切り離される、個別化装置の設定位置である。通過位置は、エレメントが互いに切り離されずに(個別化されずに)個別化装置を通過することができる、個別化装置の設定位置である。この通過位置は、このときワークがマガジンから妨げられずに進出できることに基づいて、しばしば、空行程位置とも呼ばれる。
【0023】
個別化装置における損傷を回避できるようにするために、好適な態様では、プル及び/又はプッシュロッドに、個別化フィンガに対して軸方向に作用する力を緩衝するために、ばね弾性エレメントもしくはばね又はばねセットが配置されている。
【0024】
本発明に係るプル及び/又はプッシュロッドの別の好適な使用例としては、電気式のグリップ装置における使用が挙げられる。この電気式のグリップ装置は、グリッパ長手方向軸線に対して半径方向に形成されたグリッパ溝において案内されかつ移動可能であるグリッパベースジョーを有していることによって、傑出している。グリッパベースジョーは、グリッパ長手方向軸線に対して傾けられて延びるキー溝を介して、軸方向移動可能なキーフック又はキー円錐と相互作用するようになっており、該キーフック又はキー円錐は、本発明に係るプル及び/又はプッシュロッドに結合されている。さらに、電動機が、少なくとも間接的に回動不能に調節エレメントに連結されていて、該調節エレメントに制御部材が配置されており、この制御部材は、開放位置と緊締位置と閉鎖位置との間においてプル及び/又はプッシュロッドを軸方向移動させるために、制御カムに係合している。緊締位置は、開放位置と閉鎖位置との間に位置し、その位置はこのとき、グリップ装置の該当するアプリケーションに関連している。
【0025】
さらにグリッパベースジョーもしくは電気式のグリップ装置における損傷を回避するために、好適な態様では、この場合においても、グリッパベースジョーに対して半径方向に作用する力を緩衝するために、プル及び/又はプッシュロッドに、ばね弾性エレメントもしくはばね又はばねセットが配置されている。
【0026】
さらに別の好適な態様では、グリッパベースジョーにおける解離可能な取付けのための装着ジョーが設けられており、該装着ジョーは、ワークの外側係合のための半径方向内側に位置するグリッパ面及び/又はワークの内側係合のための半径方向外側に位置するグリッパ面を備えて形成されている。装着ジョーはこのとき、係合するワークに合わせられた形状を有することができるので、ワークを外側及び内側においてしっかりと確実に把持することができる。
【0027】
本発明に係るプル及び/又はプッシュロッドの別の使用例としては、特に請求項20におけるような電気式の平行グリッパにおける使用が挙げられる。
【0028】
このとき、電気式の平行グリッパは、少なくとも2つのグリッパアームを備えていて、該グリッパアームのうちの少なくとも1つが、本発明に係るプル及び/又はプッシュロッドによって操作可能である。そしてさらに、少なくとも間接的に調節エレメントに回動不能に連結された電動機が設けられている。場合によっては複数部分から形成された調節エレメントには、場合によってはプル及び/又はプッシュロッドの数に対応する数の制御部材が配置されており、これらの制御部材は、閉鎖位置と開放位置との間における軸方向移動のために、制御カムに係合している。
【0029】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳説する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1a〜
図1eには、ロッド長手方向軸線に沿って移動可能なプル及び/又はプッシュロッド(すなわちプルロッド又はプッシュロッド又はプル兼プッシュロッド)1が示されている。このプル及び/又はプッシュロッド1は、制御部材3を案内する制御カム2を有しており、この制御カム2は、少なくとも部分的に螺旋形の、1つもしくは複数のピッチ部分4,5,6,7を有する螺条部分8を備えている。
【0032】
制御カム2は、さらに、螺条部分8に接続されていてロッド長手方向軸線に対してほぼ平行に延びかつ好ましくは円弧形状の少なくとも1つの空行程部分9,10を有している。本実施の形態では、正確に2つの空行程部分9,10が設けられており、そのうちの第1の空行程部分9は、螺条部分8の第1の端部に配置されていて、そのうちの第2の空行程部分10は、螺条部分8の、第1の端部とは反対側に位置する第2の端部に配置されている。好ましくは、プル及び/又はプッシュロッド1の空行程部分9,10は、ロッド長手方向軸線に対して半径方向に90°までの長さにわたって延びている。言い換えれば、空行程部分9,10は、つまりこの空行程部分9,10がほぼ常にロッド長手方向軸線に対する垂線に位置するように延びている。
【0033】
図1a〜
図1eからさらに分かるように、制御カム2は、プル及び/又はプッシュロッド1の外周部12に形成されている。さらにプル及び/又はプッシュロッド1は、横断面非円形の延長部14(
図1d)を有している。この延長部14は、軸方向に延びていて、角隅を丸く面取りされて横断面方形に形成されている。延長部14の非円形の形状によって、回転運動をプル及び/又はプッシュロッド1に伝達することができる。
【0034】
図1eには、プル及び/又はプッシュロッド1の螺条特性線39が示されている。この螺条特性線39は、僅かな勾配の第1のピッチ部分4と、僅かな勾配に比べて大きな勾配を有する第2のピッチ部分5とを有している。螺条部分8の第1のピッチ部分4は、ロッド長手方向軸線に対する垂線に対して2°〜6°の角度で傾けられており、第1のピッチ部分4は、好ましくは、ロッド長手方向軸線に対する垂線に対して正確に4°傾けられて配置されている。螺条部分8の第2のピッチ部分5は、ロッド長手方向軸線に対する垂線に対して14°〜22°の角度で傾けられており、第2のピッチ部分5は、好ましくは、ロッド長手方向軸線に対する垂線に対して正確に18°だけ傾けられて配置されている。
【0035】
僅かな勾配を有する第1のピッチ部分4は、つまりプル及び/又はプッシュロッド1の僅かな軸方向行程を導き、このときここでは大きな力を得ることができる(解除行程(Loesehub))。大きな勾配を有する第2のピッチ部分5は、より短時間におけるプル及び/又はプッシュロッド1の軸方向行程を生ぜしめ、その代わりに僅かな力が生ぜしめられる(迅速行程(Eilhub))。
【0036】
螺条特性線39がさらに示すように、螺条部分8の第1のピッチ部分4には、第1の空行程部分9が接続している。さらに、螺条部分8の第2のピッチ部分5に第2の空行程部分10が接続していることが、螺条特性線39に示されている。制御部材3が各空行程部分9,10内に位置している場合には、プル及び/又はプッシュロッド1の軸方向運動はロックされていて、プル及び/又はプッシュロッド1は軸方向におけるその位置を固定されている。
【0037】
図2a及び
図2bには、
図1a〜
図1eに示したプル及び/又はプッシュロッド1を備えた軸方向調節システム40が示されている。このとき制御ピン19として形成された制御部材3が、プル及び/又はプッシュロッド1の制御カム2に係合する。プル及び/又はプッシュロッド1の横断面はこのとき、回転対称に形成されている。制御ピン19はハウジング18内において軸方向固定されている。さらに、電動機17によって回転駆動可能な駆動フランジ24が示されている。この駆動フランジ24は、プル及び/又はプッシュロッド1の延長部14に回動不能に結合されている。この駆動フランジ24は、このときプル及び/又はプッシュロッド1の軸方向における相対運動を可能にする。つまり駆動フランジ24とプル及び/又はプッシュロッド1との間おける結合部は、回動不能であるが軸方向移動可能に構成されている。プル及び/又はプッシュロッド1が駆動フランジ24によって回転させられると、制御ピン19は、制御カム2に沿って滑動し、これによってプル及び/又はプッシュロッド1は軸方向で前方に向かって、つまりハウジング18から外に、もしくは軸方向で後方に向かって、つまりハウジング18内に移動させられる。
【0038】
図3a〜3eには、第2のプル及び/又はプッシュロッド1が示されており、このプル及び/又はプッシュロッド1の基本構造は、
図1a〜
図1eに示したプル及び/又はプッシュロッド1に相当している。
図1a〜
図1eに示したプル及び/又はプッシュロッド1に対する相違点を挙げれば、
図3a〜
図3eに示したプル及び/又はプッシュロッド1は、非円形の延長部14を有しておらず、非円形横断面の内側収容部15を有している。これによって本実施の形態のプル及び/又はプッシュロッド1の構造長は、特に
図1a〜
図1eに示した実施の形態のプル及び/又はプッシュロッド1に比べて、大幅に短く構成されている。外輪郭、特に制御カム2は、螺条部分8において及び空行程部分9,10に関して、
図1a〜
図1eに示したものと同じである。同様に、プル及び/又はプッシュロッド1は、
図1a〜
図1eに示したプル及び/又はプッシュロッド1と同じ螺条特性線39を有している。
【0039】
図3a〜
図3cから分かるように、プル及び/又はプッシュロッド1は、内側収容部15とは反対側の端面において閉鎖されて形成されている。これによって、プル及び/又はプッシュロッド1の回転運動及び/又は軸方向運動を生ぜしめる駆動結合部への汚れの進入を阻止することができるという利点が得られる。さらに
図3dから分かるように、内側収容部15は横断面において多角形に、本実施の形態では四角形に形成されている。
【0040】
図4a及び
図4bに示した、プル及び/又はプッシュロッド1を備えた軸方向調節システム40では、プル及び/又はプッシュロッド1は、制御カム2を有し、この制御カム2には、制御ピン19(ガイドピン)として形成された制御部材3(ガイド部材)が係合している。制御ピン19は、軸方向においてハウジング18内において固定されている。
【0041】
この制御ピン19は、そのピン長手方向軸線を中心にして回転可能にハウジング18に支持されていてもよく、これによってプル及び/又はプッシュロッド1の移動は摩擦を減じるように行われる。さらに、電動機17を用いて回転駆動可能な駆動フランジ24が設けられており、この駆動フランジ24は、プル及び/又はプッシュロッド1の内側収容部15の横断面に対応する横断面を有する調節延長部41を備えている。軸方向調節システム40の本実施の形態の利点は、特に
図2a及び
図2bに示した軸方向調節システム40の実施の形態に比べて短い構造長にある。駆動フランジ24の調節延長部41は、この調節延長部41がプル及び/又はプッシュロッド1との回動不能ではあるが軸方向移動可能な結合部を形成するように、構成されている。プル及び/又はプッシュロッド1が駆動フランジ24によってもしくは調節延長部41によって回転させられると、制御ピン19は制御カム2に沿って滑動し、これによってプル及び/又はプッシュロッド1は、軸方向において前方につまりハウジング18から外に移動させられるか、もしくは後方に向かって、つまりハウジング18内に移動させられる。
【0042】
図5a及び
図5bには、
図4a及び
図4bに対応するシステムが示されている。本実施の形態では、制御ピン19の代わりに、制御球20(ガイド球)として形成された制御部材3が、プル及び/又はプッシュロッド1の制御カム2内に位置決めされている。この制御球20は、ハウジング18における収容ポケット42内において軸方向で固定されていて、制御カム2に沿って滑動することができる。同様に、制御球20が収容ポケット42内においてその固有の軸線を中心にして回転し、これによってシステム全体の摩擦が減じられるような構成が可能である。
【0043】
図6a〜
図6eに示した第3のプル及び/又はプッシュロッド1は、その基本構造において、
図1a〜
図1eに示したプル及び/又はプッシュロッド1の構造に相当している。しかしながら本実施の形態では、螺条特性線39が異なっており、本実施の形態における螺条特性線39では、複数の、本実施の形態では正確に2つの螺条部分8が設けられており、両螺条部分8は1つの空行程部分10によって互いに隔てられている。プル及び/又はプッシュロッド1の外周部12に形成された制御カム2は、相応に第1の空行程部分9を有し、この空行程部分9には第1のピッチ部分4が接続している。解除行程として形成された第1のピッチ部分4には、迅速行程として形成された第2のピッチ部分5が接続している。第1のピッチ部分4と第2のピッチ部分5とから形成された螺条部分8には、第2の空行程部分10が接続している。この第2の空行程部分10には、さらに、別の螺条部分8′の、同様に迅速行程として形成された第3のピッチ部分6が接続しており、この第3のピッチ部分6には、解除行程(力行程)として形成された第4のピッチ部分7が後置されている。この第4のピッチ部分7には次いで、第3の空行程部分11が接続している。
【0044】
図6a〜
図6eに示したプル及び/又はプッシュロッド1(もしくはプル及び/又はプッシュピン)は、同様に、非円形横断面の延長部14を備えて形成されており、この延長部14は回転運動を伝達するために働く。
図1〜
図5に示したプル及び/又はプッシュロッド1のように、
図6a〜
図6eに示したプル及び/又はプッシュロッド1も、制御部材3が制御カム2に係合しかつ制御部材3に対する相対回動を行うと、軸方向移動させられるように形成されている。プル及び/又はプッシュロッド1が逆時計回り方向に回転させられると、プル及び/又はプッシュロッド1は、軸方向で延長部14に向かって移動する。プル及び/又はプッシュロッド1が時計回り方向に回転させられると、プル及び/又はプッシュロッド1は、軸方向で延長部14とは反対の方向に移動する。もちろん、制御カム2の回転方向を逆転することも可能であり、このようにすると、逆時計回り方向におけるプル及び/又はプッシュロッド1の回転時に、延長部14とは反対方向への軸方向移動が行われる。
【0045】
図7a〜
図7e及び
図8a〜
図8eには、ロッド長手方向軸線に沿って移動可能でありかつ制御部材3を案内する制御カム2を有するプル及び/又はプッシュロッド1の別の実施の形態が示されている。ここに示したプル及び/又はプッシュロッド1は、内側凹部43を有している。プル及び/又はプッシュロッド1は、さらに部分的に中空ロッドとして形成されていて、このとき中空ロッドの内周部13には、つまり内側凹部43の壁には、制御カム2が形成されている。ここに示した制御カム2は、1つ又は複数のピッチ部分4,5を有する螺条部分8を有しており、このとき
図7及び
図8に示した実施の形態によれば、さらに、螺条部分8に接続する第1の空行程部分9と、螺条部分8に接続する第2の空行程部分10とが設けられている。さらに、プル及び/又はプッシュロッド1の外輪郭は非円形に形成されているので、プル及び/又はプッシュロッド1は、回動不能ではあるが軸方向移動可能にハウジング18内に固定することができる。これに対して、内側凹部43は円筒形に形成されているので、この内側凹部43には、円形横断面を有する調節エレメント31が係合可能である。
【0046】
図7eに示した螺条特性線39から分かるように、螺条部分8は、僅かな勾配を有する第1のピッチ部分4(力行程もしくは解除行程)と、大きな勾配を有する第2のピッチ部分5(迅速行程)とを有している。
【0047】
図8a〜
図8eに示したプル及び/又はプッシュロッド1の制御カム2は、閉鎖された螺条溝の形で形成されている。
図8eに示した螺条特性線39から分かるように、制御カム2は第1の空行程部分9を有していて、この第1の空行程部分9には第1の螺条部分44が接続している。この第1の螺条部分44には、第2の空行程部分10が続く。この第2の空行程部分10には、さらに第2の螺条部分45が接続しており、この第2の螺条部分45は、内側凹部43の周方向に形成された螺条溝(制御溝)に基づいて、再び第1の空行程部分9に移行する。さらに内側凹部43は連続して構成されているので、プル及び/又はプッシュロッド1は、プッシュスリーブとして形成されている。
【0048】
図8a〜
図8eに示したプル及び/又はプッシュロッド1の螺条特性線39は、その結果、一方の回転方向にだけ回転駆動される制御部材3が、螺条溝内を滑動すると、プル及び/又はプッシュロッド1は、連続的に解除位置と緊締位置との間において切り換えられる。このような態様には、プル及び/又はプッシュロッド1を解除位置と緊締位置との間において切り換えるために、モータの回転方向を切り換える必要がないという利点がある。そしてこれによりシステムの切換え時間が短縮され、プログラミングの手間が減じられる。
【0049】
図9a及び
図9bに示した軸方向調節システム40は、
図7a〜
図7eに示したようなプル及び/又はプッシュロッド1を有している。ハウジング18は、プル及び/又はプッシュロッド1の外輪郭に適合された内輪郭を有しており、これによってプル及び/又はプッシュロッド1は、ハウジング18の内部において回動不能に案内されている。プル及び/又はプッシュロッド1の軸方向における滑動を容易にするために、プル及び/又はプッシュロッド1の外輪郭及び/又はハウジング18の内輪郭は、摩擦を低減させる被覆を備えていてよい。しかしながら択一的に、同様な機能を得るために、ハウジング18とプル及び/又はプッシュロッド1との間に遊びが残されていてもよく、このようになっていると、基本的にプル及び/又はプッシュロッド1の回転運動は阻止されるが、ハウジング18の内部におけるプル及び/又はプッシュロッド1の軸方向運動を可能にする十分なスペースが得られる。システムの駆動フランジ24は、調節エレメント31を有しており、この調節エレメント31は、プル及び/又はプッシュロッド1の、回転対称の、特に円筒形の内側凹部43に係合している。調節エレメント31には、制御半球体46としてもしくは制御球20として形成された制御部材3が配置されている。制御部材3は、好ましくは調節エレメント31に堅固に結合されている。駆動フランジ24が回転駆動されると、調節エレメント31は制御部材3と共に、プル及び/又はプッシュロッド1の内側凹部43の内部において回転する。このとき制御部材3は、螺条溝に沿って滑動し、中空ロッドとして形成されたプル及び/又はプッシュロッド1を軸方向移動させ、この軸方向移動は、ハウジング18の内部におけるプル及び/又はプッシュロッド1の回動不能な支持に基づいて生じる。本実施の形態においても、中空ロッドはポット形をしており、つまり一方の側において閉鎖されて形成されているので、駆動フランジ24とは反対の側には、押圧面もしくは引張り面47が用意されている。
【0050】
図10〜
図12には、電気式の解除ユニットの1つの例が示されており、この解除ユニットは電動機17を用いて作動可能である。電動機17は、好ましくは、回転駆動可能な駆動スピンドルを有している。電気式の解除ユニットはさらにプル及び/又はプッシュロッド1を備えており、このプル及び/又はプッシュロッド1は、ロッド長手方向軸線に沿ってハウジング18の内部において移動可能であり、かつ制御部材3を案内するための制御カム2を有していて、少なくとも部分的に螺旋状の、1つ又は複数のピッチ部分4,5を有する螺条部分8を有している。
【0051】
本実施の形態において制御部材3は、ハウジング18内で軸方向において固定されている。プル及び/又はプッシュロッド1がスピンドル駆動されると、プル及び/又はプッシュロッド1はハウジング18の内部において軸方向移動する。スピンドル運動を遮断するために、電動機17とは反対の側に、回転可能なキャップ16もしくはスラスト軸受が配置されている。プル及び/又はプッシュロッド1は、好ましくは、
図1a〜
図1eに示した実施の形態に相応して形成されていて、第1の空行程部分9を有しており、この第1の空行程部分9は、ロッド長手方向軸線に対してほぼ半径方向に延びていて、螺条部分8に接続している。さらにこの螺条部分8には、第2の空行程部分10が接続され、この第2の空行程部分10もまた同様に、ロッド長手方向軸線に対してほぼ半径方向に形成されている。
【0052】
プル及び/又はプッシュロッド1の、回転可能なキャップ16とは反対の側には、非円形横断面を有する延在する延長部14が設けられており、この延長部14を介して、電動機17の回転運動はプル及び/又はプッシュロッド1に伝達可能である。
【0053】
本実施の形態において、制御カム2に係合する制御部材3は、制御ピン19として形成されており、この制御ピン19は、電気式の解除ユニットのハウジング18内に軸方向において固定されている。このとき、ピンがそのピン長手方向軸線を中心にして回転可能に支持されていることも可能であり、このようになっていると、制御カム2と制御ピン19とのロックもしくは引っ掛かりが追加的に阻止される。
【0054】
図11には、緊締位置における電気式の解除ユニットが示されており、このとき制御ピン19は第2の空行程部分10(上側の端部位置)に位置決めされている。制御ピン19は空行程部分10に位置しているので、プル及び/又はプッシュロッド1は軸方向でハウジング18内においてロックされている。
【0055】
プル及び/又はプッシュロッド1を、
図12に示した解除位置に移動させるために、電動機17が駆動され、この電動機17は、その回転運動を再びプル及び/又はプッシュロッド1の延長部14に伝達する。プル及び/又はプッシュロッド1の回転によって、制御ピン19は、まずロッドの行程運動なしに、空行程部分10に沿って滑動する。つまり電動機17は、制御ピン19が螺条部分8に達する前に、行程なしに、その全トルクもしくは全回転数を形成することができる。螺条部分8における制御ピン19の滑動によって初めて、ハウジング18に対するプル及び/又はプッシュロッド1の行程運動が生ぜしめられる。
【0056】
本実施の形態では、制御ピン19はまず、ロッド長手方向軸線に対する垂線に対して大きな勾配を有する、螺条部分8の第2のピッチ部分5に達し、この第2のピッチ部分5は、迅速行程を提供する。プル及び/又はプッシュロッド1がさらに回転させられると、制御ピン19は、ロッド長手方向軸線に対する垂線に対して僅かな勾配を有する、螺条部分8の第1のピッチ部分4に達し、この第1のピッチ部分4は、力行程を提供する。
【0057】
つまり言い換えれば、ピッチ部分4,5,6,7における大きな勾配の使用は、大きな軸方向行程が僅かな力によって行われることを意味し、このときピッチ部分4,5,6,7の僅かな勾配は、大きな力による僅かな軸方向行程を生ぜしめる。
【0058】
そして制御ピン19が第1のピッチ部分4(力行程)を通過すると、制御ピン19(ガイドピン)は、制御カム2の第1の空行程部分9に達し、これによってプル及び/又はプッシュロッド1は、解除位置においてロックされ、もはや軸方向行程は不可能である(ロッドの後方の端部位置)。
【0059】
電気式の解除ユニットを解除位置から緊締位置に戻し移動させるために、プル及び/又はプッシュロッド1は逆方向に回転させられ、これによってガイドピン19は制御カム2を逆方向において通過し、この動作は、ガイドピン19が再び第2の空行程部分10に達する(ロッドの前方の終端位置)まで続く。
【0060】
延長部14に、もしくはプル及び/又はプッシュロッド1に大きなトルクを伝達できるようにするために、被駆動部つまり電動機17の駆動スピンドルとプル及び/又はプッシュロッド1との間に、偏心伝動装置、好ましくは軸伝動装置が配置されていると、好適であることが判明している。このとき偏心伝動装置は好ましくは、本実施の形態では1:50である、比較的大きな減速比を提供する。
【0061】
本実施の形態の電動機17もしくは駆動スピンドルは、ねじ結合フランジ21を有しており、このねじ結合フランジ21は少なくとも間接的に、プル及び/又はプッシュロッド1と回動不能に連結されている。つまり本実施の形態では駆動スピンドルは、軸伝動装置を介してねじ結合フランジ21に結合され、このねじ結合フランジ21はさらに連行フランジ22に結合されており、この連行フランジ22は、軸方向に延びる連行カラー23を有している。ハウジング18の内部には、電動機17の被駆動部に対して同軸的に配置されたシールリング48もしくは滑りリングが、内室のシールのためもしくは択一的に連行フランジ22の滑り支承のために配置されている。連行カラー23には、非円形横断面の駆動フランジ24が結合されており、この駆動フランジ24は、プル及び/又はプッシュロッド1の延長部14に、回動不能ではあるが軸方向移動可能に連結されている。このとき連行フランジ22、連行カラー23及び駆動フランジ24は個々に形成されていても、又は少なくとも部分的に一体に形成されていてもよい。ねじ結合フランジ21は、通常、電動機17の一部である。
【0062】
ハウジング18の内部におけるプル及び/又はプッシュロッド1の移動が、可能な限り僅かな力しか必要としないようにするために、ハウジング18には、プル及び/又はプッシュロッド1を取り囲む滑りブシュ29が対応配置されている。本実施の形態では、滑りブシュ29は端面側においてハウジング18にねじ結合されている。この滑りブシュ29の内部には、追加的に、掻取りもしくは除去作用を有する(abstreifend)滑りリングパッキン49が、滑りリング収容部内に収容されている。この滑りリング収容部は例えば、自己潤滑式のプラスチックから形成されている。滑りリングパッキン49は、内方に向かってシールし、外部からの汚れの侵入を阻止する(除去する)。重量を低減するためもしくは媒体(流体)を通流させるために、プル及び/又はプッシュロッド1は、長手方向に形成された通路50を有している。
【0063】
図示の電気式の解除ユニットのさらに好適な態様では、連行カラー23がセンサスリーブ25に連結されていて、このセンサスリーブ25は、周囲ピッチ26を備えたセンサターゲット27を有している。センサスリーブ25は、ターゲットホルダ51を含む複数部分から構成されていて、ターゲットホルダ51には、センサターゲット27が解離可能に又は堅固に取り付けられている。
【0064】
このようなセンサターゲット27は、例えば本発明のプル及び/又はプッシュロッド1である1つのエレメントの軸方向位置を測定するセンサシステム52の構成部分である。これによって分離して開放可能なセンサシステム52については、以下において
図25〜
図27を参照しながら詳説する。このようなセンサシステム52は、個別化装置においても、グリップ装置においても、又は平行グリッパにおいても、もしくは回転の正確な検出及び識別が有利なシステムにおいても、使用することができる。
【0065】
センサターゲット27は周囲ピッチ26を有しており、つまりセンサターゲット27は、回転位置及び回転方向に応じて、上昇するもしくは下降する半径によって形成されている。好ましくは、センサターゲット27の外周部における、回転角Aに関連した半径r(A)は、下記の式:半径r(A)=r0+(Y×A/360°)によって表現することができ、式中、Aは回転角、r0は基本半径、Yは半径r0に対する最大の加算値である。これによって、センサターゲット27の回転位置に応じて、定置に、好ましくはハウジング18に配置された間隔センサ53(距離センサ)からの、他の半径方向における間隔66が得られる。同様に、ターゲットの中心点54に対する外側の間隔は、回転角Aに関連している。
【0066】
センサターゲット27は、その端面55に、つまり電動機17とは反対の側に、少なくとも部分的に周囲にわたって延在する隆起部56を有している。この隆起部56は、底面57に対して、好ましくは2〜4mmの値だけ、好ましくは正確に3mmだけ、高く形成されている。端面側には、間隔センサ58が、特に誘導式の接近スイッチが配置されており、この間隔センサ58もしくは接近スイッチは、センサターゲット27の端面55に対する間隔67を検知する。このとき、センサターゲット27が、隆起部56が間隔センサ58に向かい合って位置している回転位置にある場合、間隔67は僅かである。逆に、底面57が間隔センサ58に向かい合って位置している場合に、間隔67はより大きい。
【0067】
これによって、回転運動が空行程に対応しているのか、又は実際の軸方向移動(行程運動)に相当しているのかを、区別することができるという利点が得られる。このとき隆起部56の円弧部分59は、制御カム2の各空行程部分9,10,11がロッド長手方向軸線に対して半径方向にどの程度延在しているのかを、予め設定する。センサターゲット27の中心点54から隆起部56の第1の段部60に延びる直線と、センサターゲット27の中心点54から隆起部56の第2の段部61に延びる直線との開放角Bは、このとき1つもしくは複数の空行程部分9,10,11が延びる開放角と同じである。つまり空行程部分9,10,11が90°にわたって延びている場合、第1の段部60とターゲット27の中心点54とを結ぶ直線と、第2の段部61とターゲット27の中心点54とを結ぶ直線とが成す開放角も、同様に90°である。つまり軸方向行程が行われるか否かを、隆起部56によって端面側において検出することができる。
【0068】
これに対して、軸方向行程がどれだけ行われるかの値は、センサターゲット27と半径方向に配置された間隔センサ58との間における距離によって検出される。センサターゲット27が大きく回転させられればさせられるほど、距離センサとセンサターゲット27との間の間隔66は、周方向に配置された周囲ピッチ26に基づいて小さくなる。軸方向行程の測定は、図示の実施の形態では270°にわたって検出される。270°回転させられたときに初めて、端面側の間隔センサ58に対するセンサターゲット27の端面側の間隔67が再び減少し、これによって、制御部材3が新たに空行程部分9,10,11に達したことが検知される。半径方向の間隔センサ53による間隔測定と軸方向の誘導式の接近スイッチ58による間隔測定との組合せによって、それぞれの終端位置(上側の終端位置又は下側の終端位置)を明瞭に検知することができる。
【0069】
図13〜
図16には電気式の個別化装置が、ハウジング18内において回動不能ではあるが軸方向移動可能に案内されていて個別化フィンガ30に結合されているプル及び/又はプッシュロッド1と共に示されている。このプル及び/又はプッシュロッド1は、ロッド長手方向軸線に沿って移動可能であり、制御部材3を案内する制御カム2を有しており、この制御カム2は、1つ又は複数のピッチ部分4,5を有する少なくとも部分的に螺旋形の螺条部分8を有している。
【0070】
図示の実施の形態では、制御カム2の螺条部分8には、ロッド長手方向軸線に対してほぼ半径方向に延びる空行程部分9,10が接続している。本実施の形態では、2つの空行程部分9,10が設けられており、このとき制御カム2は、螺条溝の形に形成されている。プル及び/又はプッシュロッド1は追加的に、少なくとも部分的に中空ロッドとして形成されており、このとき制御カム2は、中空ロッドの内周部13に形成されている。
【0071】
電気式の個別化装置のプル及び/又はプッシュロッド1は、ほぼ
図8a〜
図8eに示したプル及び/又はプッシュロッド1に相当している。円筒形に形成された内側凹部43には、回転対称の調節エレメント31が係合しており、この調節エレメント31は、電動機17の駆動スピンドルと回動不能に結合されている。この調節エレメント31には、制御半球体46として形成された制御部材3が配置されており、この制御部材3は、個別化位置と通過位置との間においてプル及び/又はプッシュロッド1を軸方向移動させるために、制御カム2に係合している。
【0072】
図13及び
図14では電気式の個別化装置は通過位置において示され、
図15及び
図16では、個別化位置において示されている。プル及び/又はプッシュロッド1は、個別化フィンガ30に結合されていて、かつ同時に回動不能ではあるが軸方向移動可能にハウジング18内において案内されている。本実施の形態では、プル及び/又はプッシュロッド1の外周部12は非円形に、多角形として、特に六角形として形成されている。ハウジング18の内輪郭は、プル及び/又はプッシュロッド1が回動不能ではあるが軸方向移動可能にハウジング18内において案内されるように形成されている。
【0073】
個別化フィンガ30には、追加的に、好ましくはプラスチックから形成された保護キャップ62が装着されている。個別化フィンガ30に対して軸方向に作用する力を緩衝するために、プル及び/又はプッシュロッド1にはばねセットが配置されている。本実施の形態では、ポット形の凹部63がプル及び/又はプッシュロッド1の、電動機17とは反対の側に形成されており、この凹部63内にはばね32が、本実施の形態ではコイルばね(圧縮ばね)が挿入されている。この圧縮ばねは、本実施の形態ではねじによって個別化フィンガ30に解離可能に取り付けられた個別化フィンガ30のカラー64に支持されている。このカラー64は、拡開リングを用いてプル及び/又はプッシュロッド1のばねポット内に固定されている。緊締位置において極めて大きな力が、電動機17の方向で個別化フィンガ30に作用すると、ばね32は圧縮され、カラー64はプル及び/又はプッシュロッド1内に、つまり電動機17の方向に後退する。
【0074】
電動機17が駆動されると、調節エレメント31は回転させられ、これによって制御部材3は制御カム2において、
図15及び
図16に示したポジション(個別化位置)へと滑動する。このポジションにおいて、球として形成された制御部材3は、空行程部分9に位置しているので、プル及び/又はプッシュロッド1は軸方向においてロックされている。個別化フィンガ30の軸方向の運動は、ばね32のばね力に抗して可能である。制御カム2は、螺条溝として形成されているので、電動機17は等しい方向で、つまり回転方向を変える必要なしに、さらに駆動されることができ、これによってプル及び/又はプッシュロッド1は再び
図13及び
図14に示したポジション(通過位置)に戻される。個別化装置の択一的な実施の形態は、ばね32の使用を省く。
【0075】
図17〜
図20には、本発明に係るプル及び/又はプッシュロッド1の別の実施の形態が示されている。これらの図面には、グリッパ長手方向軸線に対して半径方向に移動可能でかつグリッパ溝33において案内されたグリッパベースジョー34を備えた、電気式のグリップ装置が示されており、これらのグリッパベースジョー34は、グリッパ長手方向軸線に対して傾けられて延びるキー溝68を介して、軸方向に移動可能なキーフック35と相互作用する。このキーフック35は、プル及び/又はプッシュロッド1に結合されている。このプル及び/又はプッシュロッド1は、ロッド長手方向軸線に沿って移動可能であり、かつ制御部材3を案内する制御カム2を有しており、この制御カム2は、1つ又は複数のピッチ部分4,5を有する少なくとも部分的に螺旋形の螺条部分8を有している。
【0076】
本実施の形態によれば、プル及び/又はプッシュロッド1は、少なくとも部分的に中空ロッドとして形成されており、このとき制御カム2は、中空ロッドの内周部13に形成されている。択一的にもちろん、制御カム2は、外周部12に形成されていてもよい。プル及び/又はプッシュロッド1は、
図8a〜
図8eに示したプル及び/又はプッシュロッド1にほぼ相当している。本実施の形態では電動機17が設けられており、この電動機17は、制御部材3が配置されている調節エレメント31に回動不能に連結されている。制御部材3は、閉鎖位置と開放位置(及び場合によっては、閉鎖位置と開放位置との間に位置する緊締位置)との間においてプル及び/又はプッシュロッド1を軸方向移動させるために、螺条溝として形成された制御カム2内に係合している。プル及び/又はプッシュロッド1が軸方向で前方に向かって、つまりグリッパ溝33の方向で移動させられると、キーフック35もしくはキー円錐は、グリッパベースジョー34をグリッパ溝33の内部において半径方向外側に向かって強制的に移動させる。これは、
図17〜
図20に示したグリッパでは、緊締位置もしくは閉鎖位置への運動に相当する。この場合制御部材3は、制御カム2の内部において螺条部分8に沿って、螺条部分8に接続していてロッド長手方向軸線に対してほぼ半径方向に延びる第1の空行程部分4に向かって滑動する。この第1の空行程部分4内において、プル及び/又はプッシュロッド1の軸方向運動は阻止されており、ゆえにプル及び/又はプッシュロッド1は軸方向運動をロックされている。調節エレメント31がさらに回転させられると、ガイド部材3は、ガイド溝2の内部において滑動して再び第2の空行程部分5の方向に戻り、これによって
図17〜
図20に示したようにグリッパは、再び開放位置へと開放する。
【0077】
制御部材3が再び第1の空行程部分4に達するや否や、プル及び/又はプッシュロッド1は再び軸方向においてハウジング18内で固定され、つまりロックされる。
【0078】
電気式のグリップ装置の本実施の形態では、プル及び/又はプッシュロッド1内に、グリッパベースジョー34に対して半径方向に作用する力を緩衝するために、ばね32が配置されている。このときばねセットの配置形態は、既に個別化装置において記載した配置形態に相当している。ばねセットの変更された配置形態によって、グリッパは外側係合のために適合される。
【0079】
図21〜
図24には、電気式の平行グリッパとして形成されたグリップ装置が示されている。この平行グリッパは、2つのグリッパアーム38を有しており、両グリッパアーム38は、該グリッパアーム38の数に対応する数のプル及び/又はプッシュロッド1を備えている。各プル及び/又はプッシュロッド1には、本実施の形態では各1つのグリッパアーム38が解離可能に取り付けられている。プル及び/又はプッシュロッド1は、このとき部分的に中空ロッドとして形成されており、この中空ロッドの内周部13には、制御部材3を案内するために、制御カム2が形成されており、この制御カム2は、1つ又は複数のピッチ部分4,5を有する少なくとも部分的に螺旋形の螺条部分8を有している。
【0080】
図22〜
図24から分かるように、プル及び/又はプッシュロッド1は回転対称の内側凹部43を有しており、この内側凹部43には、少なくとも間接的に電動機17と回動不能に結合された調節エレメント31が係合している。2部分から形成された調節エレメント31は、2つの制御部材3を有しており、両制御部材3はそれぞれ、閉鎖位置(
図21及び
図22)もしくは緊締位置と開放位置(
図23及び
図24)との間においてプル及び/又はプッシュロッド1を軸方向移動させるために、プル及び/又はプッシュロッド1の制御カム2のうちの1つに係合している。緊締位置は、好ましくは開放位置と閉鎖位置との間に位置している。閉鎖位置は択一的に、緊締位置に相当していてもよい。
【0081】
本実施の形態では、各中空ロッドに係合する2つの個別の調節エレメント31が設けられている。しかしながらまた、個別の両調節エレメントは一体に成形されていてもよい。これによって、本実施の形態ではトルクモータ65として形成された電動機17から、調節エレメント31への回転運動の伝達は簡単化される。このときプル及び/又はプッシュロッド1はほぼ、
図7a〜
図7eに示したプル及び/又はプッシュロッド1にほぼ相当している。プル及び/又はプッシュロッド1を軸方向移動可能ではあるが回動不能にハウジング18内において支持するために、プル及び/又はプッシュロッド1は同様に非円形横断面の外輪郭、本実施の形態では多角形、特に六角形の外輪郭を有している。制御カム2は、第1の空行程部分9を備えて形成されており、この第1の空行程部分9には、螺条部分8が接続している。螺条部分8の他方の端部には、第2の空行程部分10が配置されており、この第2の空行程部分10は、終端位置(緊締位置)を予め設定する。真ん中に配置されたトルクモータ65が駆動されると、トルクモータ65は調節エレメント31を制御部材3と共に連行する。これによって制御部材3は、制御カム2の内部において滑動しながら、緊締位置と解除位置との間において切り換えられる。
【0082】
択一的な実施の形態において、グリッパアーム38のうちの1つは、位置固定に、つまりハウジング18に対して固定されたグリッパアーム38として形成されている。位置固定のグリッパアーム38は、1つのプル及び/又はプッシュロッド1によって操作され得ない。少なくとも1つの別の、位置固定でない、グリッパアーム38は、しかしながら本発明に係るプル及び/又はプッシュロッド1を用いて操作可能であり、これによって平行グリッパを閉鎖位置場合によっては緊締位置と開放位置との間において切り換えることができる。