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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-156583(P2016-156583A)
(43)【公開日】2016年9月1日
(54)【発明の名称】電池式加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/04 20060101AFI20160805BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20160805BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160805BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20160805BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20160805BHJP
   F24C 15/00 20060101ALI20160805BHJP
【FI】
   F24C7/04 301A
   F23N5/24 110Z
   H02J7/00 302B
   H02J7/00 302D
   H01M10/48 P
   H01M10/44 P
   F24C15/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-35381(P2015-35381)
(22)【出願日】2015年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】安福 洋伸
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝平
(72)【発明者】
【氏名】前田 博司
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 佳則
【テーマコード(参考)】
3L087
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
3L087AA03
3L087AA20
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA13
5G503DA17
5G503EA06
5G503FA16
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS00
5H030BB21
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】複数の負荷を備えた電池式加熱装置の電池の交換時期を延長すること。
【解決手段】電池加熱装置は、電池と、電池の出力電圧を検出する電圧検出部と、電池を電源として作動する複数の負荷と、電圧検出部が検出した出力電圧が基準電圧よりも低下した場合に複数の負荷の作動を禁止する制御部と、複数の負荷の各負荷の作動時における出力電圧の降下電圧を予め記憶するための記憶部とを備える。制御部は、複数の負荷のうち、作動対象の負荷が複数である場合に、出力電圧から作動対象の負荷のそれぞれの降下電圧の和を差し引いた予測電圧が基準電圧以上のときに作動対象の負荷の作動を許可する一方で、予測電圧が基準電圧よりも低いときには、作動対象の負荷の少なくとも一部の作動を制限または禁止する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池の出力電圧を検出する電圧検出部と、
前記電池を電源として作動する複数の負荷と、
前記電圧検出部が検出した前記出力電圧が基準電圧よりも低下した場合に前記複数の負荷の作動を禁止する制御部と、
前記複数の負荷の各負荷の作動時における前記出力電圧の降下電圧を予め記憶するための記憶部とを備え、
前記制御部は、前記複数の負荷のうち、作動対象の負荷が複数である場合に、前記出力電圧から前記作動対象の負荷のそれぞれの前記降下電圧の和を差し引いた予測電圧が前記基準電圧以上のときに前記作動対象の負荷の作動を許可する一方で、前記予測電圧が前記基準電圧よりも低いときには、前記作動対象の負荷の少なくとも一部の作動を制限または禁止する、電池式加熱装置。
【請求項2】
前記作動対象の負荷は、作動状態に応じて前記降下電圧が変化する動的負荷を含み、
前記制御部は、
前記動的負荷の前記作動状態を調整して前記予測電圧を前記基準電圧以上とすることができる場合には、前記動的負荷の前記作動状態を調整して前記予測電圧を前記基準電圧以上として前記作動対象の負荷を作動させ、
前記動的負荷の前記作動状態を調整して前記予測電圧を前記基準電圧以上とすることができない場合には、前記作動対象の負荷の少なくとも一部の作動を禁止する、請求項1記載の電池式加熱装置。
【請求項3】
前記動的負荷は、音声を出力するスピーカであり、
前記作動状態は、前記スピーカから出力される音量である、請求項2記載の電池式加熱装置。
【請求項4】
前記動的負荷は、発光ダイオードであり、
前記作動状態は、前記発光ダイオードを通過する電流値である、請求項2記載の電池式加熱装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記予測電圧が前記基準電圧よりも低いときには、前記作動対象の負荷のうちの一部の作動が終了した後に、前記作動対象の負荷のうちの残りを作動させる、請求項1記載の電池式加熱装置。
【請求項6】
前記電池式加熱装置は、コンロである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池式加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池式加熱装置に関し、より特定的には、電池によって駆動される複数の電気負荷を備える電池式加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱装置の一態様として、電池を電源として、電気的な負荷である電気駆動式の各種構成要素(以下、単に「負荷」とも称する。)を作動させる、いわゆる電池式加熱装置が用いられている。電池式加熱装置では、経年劣化によって電池電圧が低下したときに、負荷が正常に作動できなくなることが懸念される。したがって、特許第3343844号公報(特許文献1)および特許第3588245号公報(特許文献2)にも記載されているように、電池の出力電圧が基準電圧を下回ると作動している全ての負荷を停止させる制御が公知である。
【0003】
一方で、電池の出力電圧の低下によって全ての負荷が突然停止すると、例えば調理が突然中断されてしまい、ユーザの利便性が低下する。したがって、特許第3343844号公報(特許文献1)および特許第3588245号公報(特許文献2)には、電池の出力電圧が上記の基準電圧に近づくと電池交換を促す報知を行なう制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3343844号公報
【特許文献2】特許第3588245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池の出力電圧には負荷の作動に伴って電圧降下が発生する。特に、負荷の作動開始時に電圧降下量が大きくなることが懸念される。したがって、電池式加熱装置において、複数の負荷を同時に作動させる場面では、電池の降下量が大きくなることによって、電池交換が必要と判断されるレベル、または、負荷の作動が禁止されるレベルまで電池の出力電圧が低下する虞がある。これにより、電池の交換時期が早まってしまう。
【0006】
しかしながら、このような問題点に対して、特許第3343844号公報(特許文献1)および特許第3588245号公報(特許文献2)に記載された、電池の交換時期が近づいていることをユーザに報知する制御では十分に対応することができない。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、複数の負荷を備えた電池式加熱装置の電池の交換時期を延長することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電池式加熱装置は、電池と、電池の出力電圧を検出する電圧検出部と、電池を電源として作動する複数の負荷と、電圧検出部が検出した出力電圧が基準電圧よりも低下した場合に複数の負荷の作動を禁止する制御部と、複数の負荷の各負荷の作動時における電池の出力電圧の降下電圧を予め記憶するための記憶部とを備え、制御部は、複数の負荷のうち、作動対象の負荷が複数である場合に、出力電圧から作動対象の負荷のそれぞれの降下電圧の和を差し引いた予測電圧が基準電圧以上のときに作動対象の負荷の作動を許可する一方で、予測電圧が基準電圧よりも低いときには、作動対象の負荷の少なくとも一部の作動を制限または禁止する。
【0009】
上記電池加熱装置によれば、作動対象の負荷を全て作動させた場合の電池の出力電圧、すなわち予測電圧を予め把握できる。予測電圧が基準電圧を下回る場合には、作動対象の負荷の少なくとも一部の作動を制限または禁止することにより、電池の出力電圧が基準電圧を下回ることをできるだけ防止し、複数の負荷を備えた電池式加熱装置の電池の交換時期を延長することができる。
【0010】
なお、上記において「作動対象の負荷」には、現に作動している負荷、および現時点では未だ作動していないが制御部による作動の対象となった負荷の双方が含まれる。
【0011】
好ましくは、作動対象の負荷は、作動状態に応じて降下電圧が変化する動的負荷を含み、制御部は、動的負荷の作動状態を調整して予測電圧を基準電圧以上とすることができる場合には、動的負荷の作動状態を調整して予測電圧を基準電圧以上として作動対象の負荷を作動させ、動的負荷の作動状態を調整して予測電圧を基準電圧以上とすることができない場合には、作動対象の負荷の少なくとも一部の作動を禁止する。
【0012】
動的負荷の作動状態を調整し、作動対象の負荷を全て作動させた場合の電池の出力電圧の電圧降下を低減することにより、作動対象の負荷を全て作動させた場合の電池の出力電圧が基準電圧をできるだけ下回らないようにし、複数の負荷を備えた電池式加熱装置の電池の交換時期を延長することができる。
【0013】
動的負荷としては、音声を出力するスピーカを適用することができる。スピーカの作動状態は、スピーカから出力される音量である。
【0014】
また、動的負荷としては、発光ダイオードを適用することもできる。発光ダイオードの作動状態は、発光ダイオードを通過する電流値である。
【0015】
発光ダイオードの作動状態としての電流値には、発光ダイオードを通過する電流平均値、または電流最大値を適用することができる。
【0016】
好ましくは、制御部は、予測電圧が基準電圧よりも低いときには、作動対象の負荷のうちの一部の作動が終了した後に、作動対象の負荷のうちの残りを作動させる。
【0017】
作動対象の負荷の一部が作動するタイミングを遅延させることにより、予測電圧が基準電圧を下回らないように作動対象の全ての負荷を連続的に作動させて、複数の負荷を備えた電池式加熱装置の電池の交換時期を延長することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電池式加熱装置によれば、複数の負荷を備えた電池式加熱装置の電池の交換時期を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に従う電池式加熱装置の一例として示されるコンロの概略構成図である。
図2】コントローラの機能構成図である。
図3】記憶部における記憶内容を概念的に説明する図である。
図4】第1の実施の形態に従うコンロの制御部が負荷を作動させる場合に行なう処理を説明するためのフローチャートである。
図5】第1の実施の形態に従うコンロの制御部が行なうステップS12の詳細を説明するためのフローチャートである。
図6】第1の実施の形態に従うコンロの制御部が行なう動的負荷の作動状態を調整する制御を説明するための概念図である。
図7】第2の実施の形態に従うコンロの制御部が行なうステップS12の詳細を説明するためのフローチャートである。
図8】第2の実施の形態に従うコンロの制御部が行なう複数の負荷の作動タイミングを調整する制御を説明するための概念図である。
図9】LEDを通過する電流が時間経過に伴って周期的に矩形波状に変化する様子を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0021】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に従う電池式加熱装置の一例として示されるコンロ100の概略構成図である。
【0022】
図1を参照して、コンロ100は、キッチンカウンターに組み込まれるビルトインタイプである。コンロ100は、バーナー1,2,3と、バーナー1の点火スイッチ41と、バーナー2の点火スイッチ42と、バーナー3の点火スイッチ43と、バーナー1の操作パネル51と、バーナー2の操作パネル52と、バーナー3の操作パネル53と、グリル6と、グリル6の操作パネル61と、グリル排気口62と、コントローラ7と、天板10とを備える。
【0023】
コンロ100の上面を覆っている天板10の左側にはバーナー1が配置されている。天板10の右側にはバーナー2が配置されている。天板10の中央の奥にはバーナー3が配置されている。バーナー1は五徳12と温度センサ13とを含む。温度センサ13は五徳12の上に鍋のような調理機器が載置されたか否かを検知するとともに当該調理機器の温度を検出する。同様に、バーナー2は五徳22と温度センサ23とを含み、バーナー3は五徳32と温度センサ33とを含む。コンロ100の前面において、バーナーの点火スイッチ41,42,43は、右側の上部に配置されている。操作パネル51,52,53は右側の下部に配置されている。
【0024】
グリル6は、コンロ100の前面の中央において引出可能に配置されている。コンロ100の前面の他方の側(図1においては左側)にはグリル6の操作パネル61が配置されている。グリル排気口62は、天板10に配置されている。
【0025】
コントローラ7は、コンロ100の内部に設けられている。コントローラ7は、コンロ100の各負荷を制御する。コントローラ7の実体は、CPU,半導体メモリ,DC/DCコンバータのような電子素子が実装された電子回路基板である。
【0026】
図2は、コントローラ7の機能構成図である。図2において実線は電池8から供給される電力の流れを表し、破線は信号の流れを表す。
【0027】
図2を参照して、コントローラ7は、記憶部71と、制御部72と、電圧検出部73とを備える。記憶部71は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリのような不揮発性の半導体メモリを含み、制御部72で実行されるプログラム、および当該プログラムによって必要とされるデータを記憶する。制御部72は、CPU(Central Processing Unit)と、SRAM(Static Random Access Memory)またはDRAM(Dynamic Random Access Memory)のような記憶素子とを備え、コンロ100を統合的に制御する。電圧検出部73は、例えば電圧センサであり、電池8の電圧を検出して制御部72に送信する。
【0028】
電池8は、コンロ100を構成する負荷に電力を供給する。図2においては、電池8は、バーナー1,2,3、温度センサ13,23,33、ステッピングモータ14,24,34、点火スイッチ41,42,43、操作パネル51,52,53、コントローラ7、スピーカ9に電力を供給しているが、これらは電池8が電力を供給する負荷の一部の例示に過ぎない。
【0029】
制御部72は、例えば、温度センサ13,23,33からの信号、点火スイッチ41,42,43からの信号、操作パネル51,52,53からの信号、および電圧検出部73からの信号に基づいて、スピーカ9,ステッピングモータ14,24,34のようなコンロ100を構成する各負荷を制御する。例えば、鍋が五徳12に置かれていないにも関わらずユーザが点火スイッチ41を押した場合には、温度センサ13からの信号により、制御部72はスピーカ9を制御して、「鍋をおいてください」との注意喚起の音声を出力する。また、ユーザにより操作パネル52において火力を自動調節しながら麺をゆでるモード(以下では「麺ゆでモード」ともいう。)が選択された場合には、ステッピングモータ24を制御しながらバーナー2に供給するガス量を調節する。
【0030】
例えば、バーナー2において麺ゆでモードが実行されている最中に、五徳12に鍋が置かれていないにも関わらず点火スイッチ41が押されたとする。この場合、ステッピングモータ24の作動とスピーカ9の作動が重なるときがあり得る。このときに、作動対象となる負荷にステッピングモータ24とスピーカ9とが含まれることにより、作動対象の負荷が複数になる。
【0031】
電池8が経年劣化している状態でステッピングモータ24とスピーカ9を同時に作動させると、電池の出力電圧がコンロ100の正常な作動を保証できる所定の基準電圧(以下では「終止電圧」ともいう。)を下回る場合がある。この場合に、作動している全ての負荷を停止させてしまうと、麺ゆでモードが途中であるにも関わらずコンロ100が突然停止する虞がある。
【0032】
以下で説明する実施の形態においては、各負荷が作動した場合の電池の出力電圧の降下電圧(以下では、「ドロップ電圧」ともいう。)を予め記憶部71に記憶する。作動対象の負荷が複数である場合には、電池の出力電圧から作動対象となっているそれぞれの負荷のドロップ電圧の和を差し引いた予測電圧を予め算出する。予測電圧が終止電圧を下回っていた場合には、作動対象の負荷の少なくとも一部の作動を制限または禁止することにより、予測電圧が終止電圧を下回ることを防止するようにした。
【0033】
図3は、記憶部71における記憶内容を概念的に説明する図である。図3を参照して、記憶部71は、終止電圧V0を記憶している。記憶部71は、各負荷のドロップ電圧を各負荷と対応させて記憶している。例えばステッピングモータ14のドロップ電圧としてV1を記憶している。スピーカ9は音量に応じてドロップ電圧が異なるため、発声可能な音量(大・中・小)に応じて3種類のドロップ電圧V101,V102,V103(V101>V102>V103)を記憶している。スピーカ9のドロップ電圧の初期値はV101である。記憶部71が記憶する終止電圧および各負荷のドロップ電圧は、実機実験またはシミュレーションによって予め求めることができる。
【0034】
以下では、作動状態に応じてドロップ電圧が変化する負荷を「動的負荷」とも称する。第1の実施の形態における動的負荷としては例えばスピーカ9を挙げることができ、スピーカ9の作動状態は、出力される音量であり、音量が小さくなるほどスピーカ9のドロップ電圧は小さくなる。
【0035】
図4は、第1の実施の形態に従うコンロ100の制御部72が負荷を作動させる場合に行なう処理を説明するためのフローチャートである。例えば、ユーザによる点火スイッチの押下、ユーザによる操作パネルの操作、または麺ゆでモードのような予めプログラムされている自動調理の開始に応じて、制御部72により単数または複数の負荷が作動される。
【0036】
図4を参照して、制御部72は、ステップS10において作動対象の負荷のドロップ電圧の和Dsを算出し、処理をステップS11に進める。制御部72は、ステップS11において、作動対象の負荷が複数であるか否か判定する。
【0037】
なお、ステップS11においては、作動している負荷がない状態で複数の負荷が同時に制御部72による作動の対象となった場合、あるいは或る負荷が現に作動している状態で別の負荷が制御部72による作動の対象となった場合のいずれについても作動対象の負荷が複数である場合として判定される。
【0038】
作動対象の負荷が複数である場合(S11にてYES)、制御部72は、ステップS12に処理を進める。制御部72は、ステップS12において作動対象の複数の負荷の作動を許可するか否かを判定し、その後ステップS13に処理を進める。ステップS12において、作動が禁止される負荷は作動対象から除外される。ステップS12の詳細については後述する。
【0039】
作動対象の負荷が複数ではない場合(S11にてNO)、制御部72はステップS13に処理を進める。制御部72は、ステップS13において作動対象の負荷を作動させて、ステップS14に処理を進める。制御部72は、ステップS14において電池の出力電圧Vbが終止電圧以上であるか否かを判定する。電池の出力電圧Vbが終止電圧以上である場合(S14にてYES)、制御部72は処理を終了する。電池の出力電圧Vbが終止電圧以上でない場合(S14にてNO)、制御部72は、ステップS15において、作動している全ての負荷を停止する。その後、ステップS16においてユーザに電池交換を促す報知を行なって処理を終了する。ユーザに電池交換を促す報知の方法としては、例えばスピーカからの音声発信、ディスプレイへのメッセージ表示、あるいは所定のLEDランプの点滅を挙げることができる。
【0040】
以下では、第1の実施の形態において特徴的な、図4におけるステップS12の詳細を説明する。図5は、第1の実施の形態に従うコンロ100の制御部72が行なうステップS12の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0041】
図5を参照して、制御部72は、ステップS121において電池の出力電圧Vbから作動対象の複数の負荷のドロップ電圧の和Dsを引いて予測電圧を算出し、ステップS122に処理を進める。制御部72はステップS122において予測電圧が終止電圧以上であるか否かを判定する。予測電圧が終止電圧以上である場合(S122にてYES)、制御部72は処理を図4のステップS13に進める。
【0042】
予測電圧が終止電圧以上でない場合(S122にてNO)、制御部72は処理をステップS123に進める。制御部72は、ステップS123において、作動対象の複数の負荷の中に動的負荷が含まれているか否かを判定する。作動対象の複数の負荷の中にスピーカ9のような動的負荷が含まれている場合(S123にてYES)、制御部72はステップS124に処理を進める。作動対象の複数の負荷の中に動的負荷が含まれている場合としては、現に作動している負荷の中にスピーカ9が含まれる場合、および作動してはいないが制御部72による作動の対象となった負荷の中にスピーカ9が含まれている場合を挙げることができる。作動対象の複数の負荷の中に動的負荷が含まれていない場合(S123にてNO)、制御部72はステップS126に処理を進める。
【0043】
制御部72は、ステップS124において、作動対象の動的負荷の音量を小さく調整することにより当該動的負荷の作動を制限して予測電圧を終止電圧以上とできるか否かを判定する。動的負荷の音量を小さく調整して予測電圧を終止電圧以上とできる場合(S124にてYES)、制御部72は、ステップS125に処理を進めて動的負荷の音量を小さく調整して処理を終了する。
【0044】
動的負荷の音量を調整しても予測電圧を終止電圧以上にできない場合(S124にてNO)、制御部72は、ステップS126に処理を進めて、作動対象の負荷のうち未作動の負荷を作動対象から除外することにより当該負荷の作動を禁止する。その後、制御部72は処理を図4のステップS13に進める。
【0045】
図6は、第1の実施の形態に従うコンロ100の制御部72が行なう動的負荷の作動状態を調整する制御を説明するための概念図である。図6(a)は、作動対象の複数の負荷の中に動的負荷が含まれる場合に、動的負荷の作動状態を調整しない場合の終止電圧と予測電圧の大小関係を表す図である。図6(b)は、作動対象の複数の負荷の中に動的負荷が含まれる場合に、動的負荷の作動状態を調整した場合の終止電圧と予測電圧の大小関係を表す図である。具体的には、図6はステッピングモータ14とスピーカ9が作動対象である場合を表す。図6(a)はスピーカ9の音量を調整していない場合の終止電圧と予測電圧の大小関係を表す。図6(b)はスピーカ9の音量を小に調整した場合の終止電圧と予測電圧の大小関係を表す。
【0046】
図6(a)を参照して、電池の出力電圧Vbに対して、ステッピングモータ14のドロップ電圧はV1、スピーカ9のドロップ電圧の初期値はV101であるから(図3参照)、予測電圧はVb−(V1+V101)となる。図6(a)においては、当該予測電圧が終止電圧V0を下回っているため、制御部72がステッピングモータ14とスピーカ9を時刻tにおいて同時に作動させると、作動している全ての負荷が停止してしまい、制御部72が電池8の交換をユーザに促す報知を行なうことになってしまう。
【0047】
スピーカ9の音量が小である場合のドロップ電圧はV103であり(図3参照)、V103はV101より小さい。図6(b)を参照して、スピーカ9の音量を小に調整してドロップ電圧をV103とすると、予測電圧はVb−(V1+V103)となり、終止電圧V0以上となる。したがって、制御部72は、電池の交換をユーザに促す報知を行なうことなく、時刻tにおいてステッピングモータ14とスピーカ9を同時に作動させることができる。
【0048】
以上のように、第1の実施の形態に従うコンロによれば、予測電圧が終止電圧を下回っていた場合に、制御部72が作動対象に含まれる動的負荷の音声を小さく調整することにより当該動的負荷の作動を制限してドロップ電圧を低く変化させるか、あるいは作動対象の負荷のうち未作動の負荷の作動を禁止することにより、複数の負荷を備えたコンロ100の電池8の交換時期を延長することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態においては、動的負荷の作動状態を調整し、作動対象の負荷を全て作動させた場合のドロップ電圧の和Dsの低減を図った。第2の実施の形態においては、作動対象の負荷の作動するタイミングを調整することにより、各負荷が作動する各タイミングでのドロップ電圧の和Dsの低減を図る。
【0050】
第2の実施の形態において第1の実施の形態と異なるのは、図4におけるステップS12である。すなわち、第2の実施の形態においては、ステップS12は図5に示されるものから図7に示されるものに替わる。一方で、コンロ100の概略構成(図1参照)、コントローラ7の機能構成(図2参照)、記憶部71における記憶内容(図3参照)、および制御部72が負荷を作動させる場合に行う処理(図4参照)は第1の実施の形態と同じである。
【0051】
以下では、第2の実施の形態において特徴的な、図4におけるステップS12の詳細を説明する。図7は、第2の実施の形態に従うコンロ100の制御部72が行なうステップS12の詳細を説明するためのフローチャートである。ステップS223,S224以外の処理は第1の実施の形態と同様であるため説明を繰り返さない。
【0052】
図7を参照して、制御部72は、ステップS223において、作動対象の負荷の一部が作動を終了したか否かを判定する。作動対象の負荷の一部が作動を終了した場合(S223においてYES)、制御部72は処理を図4のステップS13に進める。作動対象の負荷の一部が作動を終了していない場合(S223においてNO)、制御部72はステップS224に処理を進める。制御部72は、ステップS224においてS223を最初に実行してから一定時間が経過したか否かを判定する。S223を実行してから一定時間が経過した場合(S224においてYES)、制御部72はステップS126に処理を進める。S223を実行してから一定時間が経過していない場合(S224においてNO)の場合、制御部72は処理をステップS223に戻す。
【0053】
図8は、第2の実施の形態に従うコンロ100の制御部72が行なう複数の負荷の作動タイミングを調整する制御を説明するための概念図である。図8(a)は、作動対象の負荷を同時に作動させた場合の終止電圧と予測電圧の大小関係を表す図である。図8(b)は、作動対象の負荷を異なる時刻に作動させた場合の終止電圧と予測電圧の大小関係を表す図である。具体的には、図8はステッピングモータ14とスピーカ9が作動対象である場合を表している。図8(a)はステッピングモータ14とスピーカ9を時刻t1に同時に作動させた場合の終止電圧と予測電圧の大小関係を表す。図8(b)はステッピングモータ14を時刻t1に作動させ、ステッピングモータ14の作動が終了した後の時刻t2にスピーカ9を作動させた場合の、時刻t1,t2のそれぞれにおける終止電圧と予測電圧の大小関係を表す。
【0054】
図8(a)を参照して、電池の出力電圧Vbに対して、ステッピングモータ14のドロップ電圧はV1、スピーカ9のドロップ電圧はV101であるから(図3参照)、予測電圧はVb−(V1+V101)となる。図8(a)においては、当該予測電圧が終止電圧V0を下回っているため、制御部72がステッピングモータ14とスピーカ9を時刻t1において同時に作動させると、作動している全ての負荷が停止してしまい、制御部72が電池8の交換をユーザに促す報知を行なうことになってしまう。
【0055】
一方、図8(b)を参照して、時刻t1における予測電圧はVb−V1であり、時刻t2における予測電圧はVb−V101であり、いずれの時刻においても予測電圧は終止電圧以上である。したがって、ステッピングモータ14を時刻t1に作動させ、スピーカ9を時刻t2に作動させることにより、電池の交換をユーザに促す報知を行なうことなく両者を作動させることができる。
【0056】
以上のように、第2の実施の形態に従うコンロ100によれば、予測電圧が終止電圧を下回っていた場合に、作動対象の負荷のうちの一部が終了した後に作動対象の負荷のうちの残りを作動させるか、あるいは作動対象のうちの未作動の負荷の作動を禁止することにより、複数の負荷を備えたコンロ100の電池8の交換時期を延長することができる。
【0057】
上記した実施の形態においては、記憶部71はドロップ電圧の値そのものを記憶していたが、ドロップ電圧を算出可能な式を記憶していても構わない。
【0058】
また、上記した実施の形態においては動的負荷がスピーカである場合を説明したが、動的負荷はスピーカに限られない。他の動的負荷としては例えば、コンロ100において、温度、タイマーその他の表示を行なうために操作パネル51,52,53に含まれる発光ダイオード(LED)を適用することができる。LEDは、明るさによってドロップ電圧が変わる。そして、その明るさはLEDを通過する電流値によって変わる。そこで、LEDにおける作動状態は、LEDを通過する電流値とすることができ、具体的には、電流平均値または電流最大値とすることができる。図9は、LEDを通過する電流が時間経過に伴って周期的に矩形波状に変化する様子を表す図である。LEDを通過する電流の最大値をImax、電流平均値をIavとする。
【0059】
図9(a),(b)を参照して、デューティ比は図9(b)の場合よりも図9(a)の場合の方が大きい。その結果、両者の電流最大値Imaxは同じであるものの、電流平均値Iavは図9(a)の方が大きくなる。このようにLEDにおいてはデューティ比を変えることによってもLEDを通過する電流平均値を調整することができる。
【0060】
LEDのドロップ電圧はLEDを通過する電流平均値が大きくなるほど大きくなる。また、デューティ比が一定の場合、LEDのドロップ電圧は電流最大値が大きくなるほど大きくなる。
【0061】
さらに、上記した実施の形態においては、電池の出力電圧Vbから作動対象の負荷のドロップ電圧の和Dsを引いた値が終止電圧V0以上か否かで作動対象の負荷の作動判定を行なっていたが、作動判定の方法は当該方法に限られない。終止電圧V0に作動対象の負荷のドロップ電圧の和Dsを足した値が電池の出力電圧以下であるか否かで作動対象の負荷の作動判定を行なっても構わない。また、電池の出力電圧Vbから終止電圧V0を引いた値が作動対象の負荷のドロップ電圧の和Ds以上であるか否かで負荷の作動判定を行なっても構わない。これらの判定方法は、同一の不等式に由来するものであって、本質的には同一の判定方法であるから、判定結果に違いは生じない。
【0062】
なお、本実施の形態では、電池の交換時期を延長するための制御が適用される電池式加熱装置の一例としてコンロを示したが、本発明の適用はコンロに限定されるものではなく、電池によって駆動される複数の電気負荷を備える電池式加熱装置に対して共通に本発明を適用することができる。
【0063】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3 バーナー、6 グリル、7 コントローラ、8 電池、9 スピーカ、10 天板、12,22,32 五徳、13,23,33 温度センサ、14,24,34 ステッピングモータ、41,42,43 点火スイッチ、51,52,53,61 操作パネル、62 グリル排気口、71 記憶部、72 制御部、73 電圧検出部、100 コンロ、Ds 和、Iav 電流平均値、Imax 電流最大値、V0 終止電圧、V101,V102,V103 ドロップ電圧、Vb 出力電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9