【解決手段】実施形態に係る放射線検出器は、アレイ基板に設けられた複数の光電変換部を覆う第1のシンチレータを有する第1の検出部と、アレイ基板に設けられた複数の光電変換部を覆う第2のシンチレータを有し、前記第1の検出部の前記第1のシンチレータが設けられた側に対峙させて設けられた第2の検出部と、を備えている。
前記第1の検出部と、前記第2の検出部と、の間に設けられ、前記第2のシンチレータからの蛍光が透過するのを抑制し、前記第2の検出部を透過した放射線を透過させる遮光部をさらに備えた請求項1記載の放射線検出器。
一端側が前記制御部と電気的に接続され、他端側が前記第1の検出部のアレイ基板に設けられた制御ライン、および前記第2の検出部のアレイ基板に設けられた制御ラインに電気的に接続された接続配線部をさらに備えた請求項5記載の放射線検出器。
前記第2の検出部のアレイ基板に設けられた複数の光電変換部のピッチ寸法は、前記第1の検出部のアレイ基板に設けられた複数の光電変換部のピッチ寸法よりも短い請求項1〜6のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器の一種にX線検出器がある。現在実用化されているX線検出器の多くは、間接変換方式を採用している。間接変換方式のX線検出器は、人体等の被写体を透過し入射したX線をシンチレータにより蛍光(可視光)に変換し、蛍光をフォトダイオードなどの光電変換素子により信号電荷に変換する。信号電荷は、蓄積キャパシタに蓄積される。蓄積された信号電荷は、スイッチング素子(薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor))により外部に出力される。光電変換素子、蓄積キャパシタ、およびスイッチング素子は、マトリクス状に複数組設けられている。一組の光電変換素子、蓄積キャパシタ、およびスイッチング素子は、一つの画素(pixel)に対応する。
【0003】
X線検出器は、被写体内部の組織や構造におけるX線透過率の違いを利用して被写体内部を画像化する。
また、X線検出器による撮影では、エネルギーサブトラクションと称される撮影手法が用いられることがある。
エネルギーサブトラクション撮影では、同一の被写体に対して複数回の撮影が行われる。
例えば、まず、被写体を固定した状態において、X線源であるX線管に低い管電圧を印加して、X線のエネルギースペクトルがエネルギーの低い側に位置するようにしてX線を発生させ、被写体を透過したX線をX線検出器を用いて画像化する。
次に、被写体を固定した状態において、X線源であるX線管に高い管電圧を印加して、X線のエネルギースペクトルがエネルギーの高い側に位置するようにしてX線を発生させ、被写体を透過したX線をX線検出器を用いて画像化する。
この場合、照射されたX線の線質により、被写体内部の組成が異なる部位におけるX線吸収率は異なるものとなる。そのため、最初の撮影により得られたX線画像と、次の撮影により得られたX線画像との差から所望の部位を選択的に抽出することができる。
エネルギーサブトラクション撮影を行えば、例えば、脂肪や血液などの軽元素を主成分とする部位を選択的に抽出したり、骨などの比較的重元素を多く含む部位を選択的に抽出したりすることができる。
【0004】
ここで、ジェネレータによりX線管の管電圧を変更するのには数秒の時間を要する。また、X線検出器におけるX線画像の生成には数秒の時間を要する。
そのため、エネルギーサブトラクション撮影においては、最初の撮影およびX線画像の生成が完了するまでに数秒以上の時間を要することになり、次の撮影までの間、被写体を固定した状態にする必要がある。
しかしながら、被写体が人間などの場合には、呼吸などの動きがあるため、数秒以上の間被写体を固定した状態にするのは困難である。
エネルギーサブトラクション撮影中に被写体が動いた場合には、抽出された部位のX線画像の品質が低くなるおそれがある。
【0005】
この場合、X線管の管電圧を変更するのに要する時間を短縮すれば、被写体が動くことによる影響を少なくすることができる。
しかしながら、一般的なジェネレータでは、短時間でX線管の管電圧を変更することは難しい。そのため、エネルギーサブトラクション撮影のために、特殊なジェネレータが必要となる。その結果、撮影システムのコストが増加することになる。
そこで、一般的なジェネレータを用いる場合であっても品質の高いエネルギーサブトラクション撮影を行うことができる放射線検出器の開発が望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る放射線検出器は、X線のほかにもγ線などの各種放射線に適用させることができる。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
また、放射線検出器であるX線検出器1は、例えば、一般医療用途などに用いることができるが、用途に限定はない。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るX線検出器1を例示するための模式図である。
なお、
図1においては煩雑となるのを避けるために、接続配線部2e1、2e2などを省いて描いている。
図2は、X線検出器1を例示するための模式斜視図である。
なお、
図2においては煩雑となるのを避けるために、検出部22や遮光部23などを省いて描いている。
図3は、アレイ基板2の回路図である。
図4は、X線検出器1のブロック図である。
なお、
図4においては煩雑となるのを避けるために、検出部22を省いて描いている。
【0012】
図1および
図2に示すように、X線検出器1には、検出部21(第1の検出部の一例に相当する)、検出部22(第2の検出部の一例に相当する)、遮光部23、信号処理部3、および画像生成部4が設けられている。
検出部21には、アレイ基板2、およびシンチレータ5(第1のシンチレータの一例に相当する)が設けられている。
アレイ基板2は、シンチレータ5によりX線102から変換された可視光、すなわち蛍光を信号電荷に変換する。
アレイ基板2は、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、データライン(又はシグナルライン)2c2、およびバイアスライン2c3を有する。
【0013】
基板2aは、板状を呈し、ガラスなどの透光性材料から形成されている。
光電変換部2bは、基板2aの一方の表面に複数設けられている。
光電変換部2bは、矩形状を呈し、制御ライン2c1とデータライン2c2とで画された領域に設けられている。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。
なお、一つの光電変換部2bは、一つの画素に対応する。
【0014】
複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ2b2が設けられている。
また、
図3に示すように、光電変換素子2b1において変換した信号電荷を蓄積する蓄積キャパシタ2b3を設けることができる。蓄積キャパシタ2b3は、例えば、矩形平板状を呈し、薄膜トランジスタ2b2の下に設けることができる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタ2b3を兼ねることができる。
【0015】
光電変換素子2b1は、例えば、フォトダイオードなどとすることができる。
薄膜トランジスタ2b2は、蛍光が光電変換素子2b1に入射することで生じた電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う。薄膜トランジスタ2b2は、アモルファスシリコン(a−Si)やポリシリコン(P−Si)などの半導体材料を含むものとすることができる。
図3に示すように、薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極2b2a、ソース電極2b2b及びドレイン電極2b2cを有している。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極2b2aは、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2bは、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極2b2cは、対応する光電変換素子2b1と蓄積キャパシタ2b3とに電気的に接続される。
【0016】
制御ライン2c1は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。制御ライン2c1は、例えば、行方向に延びている。
複数の制御ライン2c1は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のそれぞれと電気的に接続されている。複数の配線パッド2d1には、接続配線部2e1に設けられた複数の配線の一方の端部側がそれぞれ電気的に接続されている。接続配線部2e1に設けられた複数の配線の他方の端部側は、信号処理部3に設けられた制御部31とそれぞれ電気的に接続されている。
接続配線部2e1は、例えば、フレキシブルプリント基板などとすることができる。
【0017】
データライン2c2は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。データライン2c2は、例えば、列方向に延びている。
複数のデータライン2c2は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2とそれぞれ電気的に接続されている。複数の配線パッド2d2には、接続配線部2e2に設けられた複数の配線の一方の端部側がそれぞれ電気的に接続されている。接続配線部2e2に設けられた複数の配線の他方の端部側は、信号処理部3に設けられた増幅・変換回路32とそれぞれ電気的に接続されている。
接続配線部2e2は、例えば、フレキシブルプリント基板などとすることができる。
【0018】
バイアスライン2c3は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。バイアスライン2c3は、データライン2c2と同じ方向に延びている。バイアスライン2c3は、対応する光電変換素子2b1と蓄積キャパシタ2b3とに電気的に接続されている。複数のバイアスライン2c3は、図示しないバイアス電源とそれぞれ電気的に接続されている。
制御ライン2c1、データライン2c2、およびバイアスライン2c3は、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成することができる。
なお、接続配線部2e1、2e2の配設形態に関する詳細は後述する。
【0019】
また、光電変換部2b、制御ライン2c1、データライン2c2、およびバイアスライン2c3を覆う図示しない保護層を設けることができる。
保護層は、例えば、窒化ケイ素(SiN)やアクリル系樹脂などの絶縁性材料から形成することができる。
【0020】
シンチレータ5は、複数の光電変換部2bの上に設けられ、検出部22と遮光部23を透過して入射するX線102を可視光すなわち蛍光に変換する。シンチレータ5は、基板2a上の複数の光電変換部2bが設けられた領域を覆うように設けられている。
シンチレータ5は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、あるいはヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)などを用いて形成することができる。この場合、真空蒸着法などを用いて、柱状結晶の集合体が形成されるようにすることができる。柱状結晶の集合体を形成すれば、発生した蛍光が散乱するのを抑制することができる。発生した蛍光が散乱するのを抑制することができれば、発生した蛍光が隣接する光電変換部2bに入射するのを抑制することができるので解像度の向上を図ることができる。
【0021】
また、シンチレータ5は、例えば、酸硫化ガドリニウム(Gd
2O
2S)などを用いて形成することもできる。酸硫化ガドリニウムなどからなるシンチレータ5は、粒状(柱状)を呈し、複数の光電変換部2bごとに設けることができる。
酸硫化ガドリニウムなどからなり、粒状体(柱状体)の集合体となっているシンチレータ5とすれば、感度特性の向上と生産性の向上を図ることができる。
【0022】
その他、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために、シンチレータ5の表面側(X線102の入射面側)を覆うように図示しない反射層を設けることができる。
また、空気中に含まれる水蒸気により、シンチレータ5と図示しない反射層の特性が劣化するのを抑制するために、シンチレータ5と図示しない反射層を覆う図示しない防湿体を設けることができる。
【0023】
検出部22は、検出部21のシンチレータ5が設けられた側に対峙させて設けられている。検出部22は、検出部21のX線102が入射する側に設けられている。
この場合、検出部22は、シンチレータ15(第2のシンチレータの一例に相当する)が検出部21側とは反対の側(X線管100側)になるように設けることができる。
検出部22には、前述したアレイ基板2、およびシンチレータ15が設けられている。 シンチレータ15は、複数の光電変換部2bの上に設けられ、入射するX線102を蛍光に変換する。シンチレータ15は、基板2a上の複数の光電変換部2bが設けられた領域を覆うように設けられている。
シンチレータ15の厚み寸法H2は、シンチレータ5の厚み寸法H1より短くなっている。
なお、シンチレータ5の厚み寸法H1とシンチレータ15の厚み寸法H2に関する詳細は後述する。
【0024】
シンチレータ15の材料や構成は、前述したシンチレータ5の材料や構成と同様とすることができるが、次のようにすることが好ましい。
厚みの薄いシンチレータ15においては、発生した蛍光の散乱が生じにくい。そのため、シンチレータ15は、前述した酸硫化ガドリニウムなどからなり、粒状体を含むものとすることができる。この様にすれば、検出部22における感度特性の向上と生産性の向上を図ることができる。
厚みの厚いシンチレータ5においては、発生した蛍光の散乱が生じやすい。そのため、シンチレータ5は、前述した柱状結晶の集合体を含むものとすることができる。この様にすれば、検出部21における解像度の向上を図ることができる。
【0025】
遮光部23は、シンチレータ15において発生した蛍光が基板2aを透過して検出部21に入射するのを抑制する。
遮光部23は、シンチレータ15からの蛍光が透過するのを抑制し、検出部22を透過したX線102を透過させる。
また、遮光部23は、シンチレータ5からの蛍光が検出部22側に透過するのを抑制することもできる。
遮光部23は、検出部21と検出部22との間に設けられている。
遮光部23は、板状を呈するものとすることができる。
遮光部23の材料は、X線102を透過させ、蛍光の透過を抑制できるものであれば特に限定はない。遮光部23の材料は、例えば、不透明な樹脂や、アルミニウムなどの金属などとすることができる。
【0026】
遮光部23の厚み寸法と材料は、X線102の透過性と蛍光の遮光性を考慮して適宜設定することができる。例えば、実験やシミュレーションを行って、所望のX線の透過性と蛍光の遮光性が得られるように、遮光部23の厚み寸法と材料を決定することができる。
【0027】
また、
図1に示すように遮光部23と検出部22との間には隙間があってもよいし、
図9に示すように遮光部23と検出部22とが密着していてもよい。
図1に示すように遮光部23と検出部21との間には隙間があってもよいし、
図9に示すように遮光部23と検出部21とが密着していてもよい。ただし、遮光部23と検出部21との間に隙間を設けるようにすれば、外部からの振動が遮光部23を介してシンチレータ5やアレイ基板2の光電変換部2bが設けられた側に伝わるのを抑制することができる。
【0028】
信号処理部3は、検出部21のX線102が入射する側とは反対側に設けられている。
図4に示すように、信号処理部3には、制御部31と、増幅・変換回路32とが設けられている。
制御部31は、接続配線部2e1および接続配線部2e2を介して、検出部21および検出部22と電気的に接続されている。
【0029】
制御部31は、複数の制御ライン2c1を介して、複数の光電変換部2bに選択的に制御信号S1を印加する。
制御部31は、複数のゲートドライバ31aと行選択部31bとを有する。
ゲートドライバ31aは、対応する制御ライン2c1に制御信号S1を印加する。
行選択部31bは、X線画像の走査方向に従って、対応するゲートドライバ31aに制御信号S1を送る。
例えば、制御部31は、接続配線部2e1と制御ライン2c1とを介して、制御信号S1を各制御ライン2c1毎に順次印加する。制御ライン2c1に印加された制御信号S1により薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、光電変換素子2b1からの信号電荷(画像データ信号S2)が受信できるようになる。(
図2を参照)
増幅・変換回路32は、複数の積分増幅器32aと、複数のA/D変換器32bを有する。
積分増幅器32aは、データライン2c2と接続配線部2e2とを介して、複数の光電変換素子2b1のそれぞれからの画像データ信号S2を受信し、受信した画像データ信号S2を増幅して出力する。積分増幅器32aから出力された画像データ信号S2は、並列/直列変換されてA/D変換器32bに入力される。
A/D変換器32bは、入力された画像データ信号S2(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。
【0030】
画像生成部4は、配線4aを介して、信号処理部3と電気的に接続されている。
画像生成部4は、複数のA/D変換器32bによりデジタル信号に変換された画像データ信号S2に基づいて、X線画像を生成する。画像生成部41は、例えば、マトリクス状に配置された複数の光電変換部2bの行と列にしたがって、画像データ信号S2を順次処理することで、X線画像を生成する。
また、画像生成部4は、X線画像を生成する際に所定の補正(例えば、オフセット補正、ゲイン補正、欠陥補正など)を行うこともできる。
生成されたX線画像は、画像生成部4から外部に向けて出力される。
【0031】
次に、シンチレータ5の厚み寸法H1とシンチレータ15の厚み寸法H2についてさらに説明する。
図1に示すように、ジェネレータ101は、所定の管電圧をX線管100に印加する。X線管100は、印加された管電圧に応じて所定の強度とエネルギー(所定のエネルギースペクトル)を有するX線102を放射する。
X線管100から放射されたX線102は、被写体300を透過する際に一部が吸収され、吸収されなかったX線102が被写体300を透過してX線検出器1に入射する。
【0032】
ここで、X線管100から放射されるX線102には、低エネルギー成分102aと高エネルギー成分102bとが含まれている。
そのため、被写体300を透過したX線102にも低エネルギー成分102aと高エネルギー成分102bとが含まれている。
そして、被写体300の組成が異なる部位におけるX線吸収率はX線の線質、すなわち、低エネルギー成分102aと高エネルギー成分102bとでは異なるものとなる。
そのため、検出部22が主にX線102の低エネルギー成分102aを用いてX線画像を生成し、検出部21が主にX線102の高エネルギー成分102bを用いてX線画像を生成するようにすれば、一度のX線102照射でエネルギーサブトラクション撮影を行うことができる。
【0033】
X線102の低エネルギー成分102aは、高エネルギー成分102bに比べて吸収されやすい(透過力が弱い)。そのため、X線管100の近くにある検出部22のシンチレータ15は、主にX線102の低エネルギー成分102aを蛍光に変換する。吸収されやすい低エネルギー成分102aは、シンチレータ15により蛍光に変換されるので検出部21には到達しない。一方、吸収されにくい高エネルギー成分102bは、一部がシンチレータ15に吸収されるが大部分は検出部22を透過して検出部21に到達する。そのため、検出部21のシンチレータ5は、主にX線102の高エネルギー成分102bを蛍光に変換する。
【0034】
この場合、シンチレータ15において高エネルギー成分102bの吸収量(変換量)が多くなると、検出部21によるX線画像の生成が困難となるおそれがある。
シンチレータ15における高エネルギー成分102bの吸収量(変換量)を少なくするためには、シンチレータ15の厚み寸法H2を短くすればよい。
また、シンチレータ15の厚み寸法H2を短くしても、低エネルギー成分102aは、高エネルギー成分102bに比べて吸収されやすいので、充分な蛍光を得ることができる。
【0035】
一方、X線102の高エネルギー成分102bは、低エネルギー成分102aに比べて吸収されにくいので、充分な蛍光を得るためにシンチレータ5の厚み寸法H1は長くすることが好ましい。
そのため、シンチレータ15の厚み寸法H2は、シンチレータ5の厚み寸法H1より短くなっている。
【0036】
この様にすれば、検出部22が主にX線102の低エネルギー成分102aを用いてX線画像を生成し、検出部21が主にX線102の高エネルギー成分102bを用いてX線画像を生成することができる。
【0037】
シンチレータ5の厚み寸法H1とシンチレータ15の厚み寸法H2は、シンチレータ5およびシンチレータ15の材料、低エネルギー成分102aと高エネルギー成分102bの割合や強度、遮光部23における高エネルギー成分102bの透過率などを考慮して適宜決定することができる。
例えば、これらの要因を考慮した実験やシミュレーションを行って、シンチレータ5の厚み寸法H1とシンチレータ15の厚み寸法H2を適宜決定することができる。
【0038】
次に、X線検出器1の作用について説明する。
X線検出器1の外部に設けられたX線管100から、X線102が放射される。
例えば、ジェネレータ101は、所定の管電圧をX線管100に印加する。X線管100は、印加された管電圧に応じて所定の強度とエネルギーを有するX線102を放射する。
X線管100から放射されたX線102は、被写体300を透過する際に一部が吸収され、吸収されなかったX線102が被写体300を透過してX線検出器1に入射する。
【0039】
X線検出器1に入射したX線102の低エネルギー成分102aは、検出部22のシンチレータ15により蛍光に変換される。蛍光の強度は、入射したX線102の低エネルギー成分102aの強度に比例する。シンチレータ15の内部で発生した蛍光の一部は、対応する光電変換素子2b1に入射する。
光電変換素子2b1に入射した蛍光は、光電変換素子2b1の内部において、電子とホールからなる電荷に変換される。変換された電荷は、蓄積キャパシタ2b3に蓄積される。
【0040】
制御部31は、複数の光電変換部2bに選択的に制御信号S1を印加する。選択された光電変換部2bの薄膜トランジスタ2b2はオン状態となり、蓄積された電荷は蓄積キャパシタ2b3から画像データ信号S2として出力される。
積分増幅器32aは、複数の光電変換素子2b1のそれぞれからの画像データ信号S2を受信し、受信した画像データ信号S2を増幅して出力する。積分増幅器32aから出力された画像データ信号S2は、並列/直列変換されてA/D変換器32bに入力される。 A/D変換器32bは、入力された画像データ信号S2(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。
【0041】
画像生成部4は、複数のA/D変換器32bによりデジタル信号に変換された画像データ信号S2に基づいて、低エネルギー成分102aによる第1のX線画像を生成する。画像生成部41は、例えば、マトリクス状に配置された複数の光電変換部2bの行と列にしたがって、画像データ信号S2を順次処理することで、第1のX線画像を生成する。
【0042】
X線検出器1に入射したX線102の高エネルギー成分102bは、検出部22および遮光部23を透過して検出部21のシンチレータ5に入射する。
シンチレータ15の内部で発生した蛍光の一部は、アレイ基板2を透過して検出部21に向かうが、遮光部23によりシンチレータ5への入射が抑制される。
シンチレータ5に入射したX線102の高エネルギー成分102bは、シンチレータ5により蛍光に変換される。以降、前述したものと同様にして高エネルギー成分102bによる第2のX線画像を生成する。
この様に、X線検出器1は、一度のX線102照射によりエネルギーサブトラクション撮影を行うことができる。
生成された第1のX線画像と第2のX線画像は、画像生成部4から外部に向けて出力される。
【0043】
被写体300の組成が異なる部位におけるX線吸収率は、低エネルギー成分102aと高エネルギー成分102bとでは異なるものとなる。
そのため、第1のX線画像と、第2のX線画像との差から所望の部位を選択的に抽出することができる。
例えば、脂肪や血液などの軽元素を主成分とする部位を選択的に抽出したり、骨などの比較的重元素を多く含む部位を選択的に抽出したりすることができる。
【0044】
本実施の形態に係るX線検出器1は、一度のX線102照射によりエネルギーサブトラクション撮影を行うことができるので、エネルギーサブトラクション撮影における撮影時間を短縮することができる。そのため、動きのある被写体300であっても高品質のX線画像を得ることができる。
すなわち、本実施の形態に係るX線検出器1は、品質の高いエネルギーサブトラクション撮影を行うことができる。
また、一度のX線102照射を行えばよいので、すなわちX線管100に所定の管電圧を印加すればよいので、撮影中にX線管100に印加する管電圧を変更する必要がない。
そのため、短時間でX線管100の管電圧を変更することができる特殊なジェネレータを用いる必要がないので、撮影システムのコストが増加することがない。
【0045】
図5は、他の実施形態に係る検出部21および検出部22の配置を例示するための模式図である。
図5に示すように、検出部22は、検出部21のX線102が入射する側に設けられている。
【0046】
ただし、検出部22は、シンチレータ15が検出部21側(X線管100側とは反対側)になるように設けられている。
すなわち、検出部22は、シンチレータ15をシンチレータ5と対峙させて設けられている。
そのため、検出部22が備えるアレイ基板2の光電変換部2bが設けられる側の面と、検出部21が備えるアレイ基板2の光電変換部2bが設けられる側の面とが対峙することになる。
【0047】
ここで、検出部22が備える光電変換部2bと、検出部21が備える光電変換部2bとの間の距離が長くなると、画素ずれが生じ易くなる。また、画素ずれは、X線102が斜め方向から入射するアレイ基板2の周縁領域で顕著になる。画素ずれは、解像度の劣化の要因となる。
【0048】
本実施の形態においては、アレイ基板2の光電変換部2bが設けられる側の面同士を対峙させているので、検出部22が備える光電変換部2bと、検出部21が備える光電変換部2bとの間の距離を短くすることができる。
そのため、画素ずれを低減させることができるので、解像度の向上を図ることができる。
【0049】
図6は、他の実施形態に係る検出部21aを例示するための模式図である。
図6に示すように、検出部21aには、アレイ基板12a、およびシンチレータ5が設けられている。
検出部22aには、アレイ基板12b、およびシンチレータ15が設けられている。
アレイ基板12bに設けられた光電変換部2bのピッチ寸法Pbは、アレイ基板12aに設けられた光電変換部2bのピッチ寸法Paよりも短くなっている。
ピッチ寸法Paとピッチ寸法Pbは、X線102の放射角度θを考慮したものとなっている。
【0050】
ここで、前述したように、画素ずれは、X線102が斜め方向から入射するアレイ基板12a、12bの周縁領域で顕著になる。
本実施の形態においては、ピッチ寸法Pbをピッチ寸法Paよりも短くし、ピッチ寸法Paとピッチ寸法PbをX線102の放射角度θを考慮したものとしているので、アレイ基板12a、12bの周縁領域における画素ずれを低減させることができる。そのため、解像度の向上を図ることができる。
【0051】
次に、接続配線部2e1、2e2の配設形態についてさらに説明する。
図7は、接続配線部2e1、2e2の配設形態を例示するための模式斜視図である。
なお、
図7においては煩雑となるのを避けるために、接続配線部2e1、2e2、アレイ基板2、検出部21、検出部22、および信号処理部3以外の要素を省いて描いている。
図7に示すように、検出部21に設けられた接続配線部2e1は、検出部22に設けられた接続配線部2e1と対峙するようにして設けることができる。
検出部21に設けられた接続配線部2e2は、検出部22に設けられた接続配線部2e2と対峙するようにして設けることができる。
この様にすれば、検出部21および検出部22をそれぞれ信号処理部3に接続することができる。そのため、検出部21および検出部22を別々に制御することができる。
【0052】
図8は、他の実施形態に係る接続配線部2e1、2e2の配設形態を例示するための模式斜視図である。
図9は、
図8に例示をしたX線検出器1を筐体6に格納した状態を例示するための模式断面図である。
【0053】
前述したように、接続配線部2e1は、制御部31と制御ライン2c1とを電気的に接続している。
ここで、制御部31は、複数の光電変換部2bに選択的に制御信号S1を印加する。制御信号S1は、所望の光電変換部2bから画像データ信号S2を出力させるための信号である。そのため、検出部21に設けられた光電変換部2bと、検出部22に設けられた光電変換部2bとに同一のタイミングで制御信号S1を印加することができる。
すなわち、制御部31は、検出部21のアレイ基板2に設けられた制御ライン2c1と、検出部22のアレイ基板2に設けられた制御ライン2c1と、に同一のタイミングで制御信号S1を印加してもよい。
【0054】
本実施の形態においては、検出部21および検出部22に対して接続配線部2e1を共通化している。
すなわち、接続配線部2e1の一端側は、制御部31と電気的に接続されている。接続配線部2e1の他端側は、検出部21のアレイ基板2に設けられた制御ライン2c1、および検出部22のアレイ基板2に設けられた制御ライン2c1に電気的に接続されている。
そのため、配線を簡素化することができるので、配線作業の容易化、ひいてはX線検出器1の生産性を向上させることができる。
また、制御部31において、制御信号S1を出力する回路を共通化することができるので、制御部31の簡素化、ひいては制御部31の製造コストを低減させることができる。
【0055】
図9に示すように、筐体6は箱状を呈し、内部にX線検出器1が格納されている。
筐体6の内部には、支持板6bが設けられ、支持板6bの一方の面には検出部21、遮光部23、および検出部22が設けられている。支持板6bの他方の面には信号処理部3が設けられている。筐体6の側面には、コネクタ6aが設けられ、信号処理部3と画像生成部4が電気的に接続できるようになっている。
図8に示すように、検出部21および検出部22に対して接続配線部2e1を共通化すれば、検出部21および検出部22の一辺側を接続配線部2e1が設けられていないスペースとすることができる。そのため、信号処理部3とコネクタ6aとを電気的に接続する配線6cをこのスペースに設けることができる。そのため、筐体6の内部における配線作業の容易化、ひいてはX線検出器1の生産性を向上させることができる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。