【解決手段】筒部400を有する電線コネクタ20と、筒部400が挿入される取り付けパネル40の挿入孔410との隙間が、シール材30で封止されるコネクタのシール構造1であって、電線コネクタ20に嵌合する基板コネクタ10は反嵌合方向に基部100を備え、取り付けパネル40の正規組み付け状態で挿入孔410は基板コネクタ10の基部100まで達し、基部100は断続的に周面に沿って環状に延びる挿入孔410の内周面に当接する保持部110を備え、電線コネクタ20は筒部400をはさんだ対応する位置に第1ボルト穴211が形成されたフランジ部210を備え、取り付けパネル40は挿入孔410をはさんだ対応する位置に第2ボルト穴420を備え、電線コネクタ20は第1及び第2ボルト穴を通すボルト50を介して取り付けパネル40に固定される。
筒部を有する電線コネクタと、前記筒部が挿入される取り付けパネルの挿入孔との隙間が、前記筒部の周面に装着された環状のシール材で封止されるコネクタのシール構造であって、
前記電線コネクタの軸方向に沿って嵌合する基板コネクタは反嵌合方向に基部を備え、前記取り付けパネルの前記基板コネクタに対する正規組み付け状態で前記挿入孔は前記基板コネクタの前記基部まで前記軸方向に沿ってとどき、前記基部は連続的に又は断続的に前記周面に沿って環状に延びる前記挿入孔の内周面に当接する保持部を備え、
前記電線コネクタは前記筒部をはさんだ対応する位置に第1ボルト穴が形成されたフランジを備え、前記取り付けパネルは前記挿入孔をはさんだ対応する位置に第2ボルト穴を備え、前記電線コネクタは前記第1ボルト穴及び前記第2ボルト穴を通すボルトを介して正規組み付け状態にある前記取り付けパネルに固定されるところに特徴を有するコネクタのシール構造。
【背景技術】
【0002】
車に搭載される電子機器は気密性が確保されたケースに収容されている。外部との電気的接続は、コネクタを介しておこなわれるのが一般的である。コネクタと、ケースとの組み付け部分の気密性を確保する技術として、特許文献1記載の技術、及び特許文献2記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1記載の技術によれば、コネクタは、ケースの挿入孔に挿入される筒部と、筒部の外周から延出するフランジとを有している。筒部の外周面には、シール材が装着される環状溝が設けられ、フランジは筒部を挟む両側にボルトが通る穴が設けられている。これにより、シール材が筒部と、挿入孔との隙間を埋める状態で、コネクタとケースとがボルトで固く固定されるので、コネクタとケースとの組み付け部分の気密性が確保されるものである。
【0004】
しかしこの技術によれば、フランジの筒部を挟む両側に備わるボルト用の穴でコネクタを固定するものなので、ボルトを締め付けるときの力によって、位置ずれが生じるおそれがある。すなわち、ボルトの締め付けによって生じる回転方向の力がコネクタ全体に伝わり、挿入孔に対する筒部の位置がセット時には正しい位置に合わされていたものが、この回転方向の力が加わることによって、位置ずれが生じることとなる。これにより、コネクタとケースとの組み付け部分の気密性が損なわれることとなる。
【0005】
特許文献2記載の技術は、上記したボルトの締め付け時の回転方向の力によるコネクタの位置ずれを抑制するものである。詳しくは、コネクタとは別部材である取り付け部材を準備し、ボルトを通すボルト穴を取り付け部材に形成することによって、ボルトの締め付け時に生じる回転方向の力が直接コネクタに伝わらないようにしたものである。これにより、コネクタとケースとの組み付け部分の気密性が確保されるものである。
【0006】
しかしこの技術によれば、コネクタとは別部材からなる取り付け部材を、別途準備する必要があるために、部品点数の増加によって生じる作業工程の全般的な効率の低下が予測される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係るコネクタのシール構造について図面にしたがって説明する。
図1は、本実施形態に係るコネクタのシール構造を示す分解斜視図である。
図2は、同シール構造に係る基板コネクタをケースに組み付ける図であって、(1)はケースに蓋を組み付ける前の状態、(2)はケースに取り付けパネルを組み付ける前の状態を示す外観斜視図である。
図3は、
図1のIII−III線に沿った断面図であって、同シール構造に係る基板コネクタと、取り付けパネルとの挿入状態を示す図である。(1)は、挿入前、(2)は挿入完了状態を示す図である。説明中の方向指示は図面の方向指示定義に従う。
【0015】
コネクタのシール構造1は、
図1に示されるように、上方に電線引き出し面、下方に嵌合面を向ける電線コネクタ20、電線コネクタ20のフード部220が挿入される挿入孔410が形成された取り付けパネル40、及び電線コネクタ20と取り付けパネル40間の隙間に装着されるシール材30、さらに電線コネクタ20に嵌合する基板コネクタ10で構成されている。
【0016】
<電線コネクタ> 電線コネクタ20は、図示しない導電性のコンタクトを中に収容し周囲は非導電性のハウジングで覆われている。コンタクトは、導電性耐食性を有する銅合金等の圧延材料から形成され、表面は必要な錫や金でめっき処理されている。ハウジングは、必要な耐熱性耐久性を有するABS樹脂やナイロン等の合成樹脂の射出成形によって所望の形状が得られる。
【0017】
電線コネクタ20は、
図1に示されるように、左右端部にボルト穴211が開けられたフランジ部210を備え、フランジ部210の上面には内部に図示しないコンタクトを保持するための基部200と、さらにフランジ部210の下面には図示しないコンタクトの接触部を収容するフード部220とが備わる。
【0018】
フランジ部210は、
図1に示されるように、上面視略楕円形で電線コネクタ20の取り付けパネル40に対する位置決め機能を備える。フランジ部210は、ボルト50を通して電線コネクタ20を取り付けパネル40に締め付け固定するためのボルト穴211を左右端部に備えている。フランジ部210は、ボルト50による締め付け固定に耐えうるに足る厚みを有し、ボルト穴211はボルト50を通すためのフランジ部210に開けられた貫通孔である。フランジ部210は、不要な拡大を防ぐために、ボルト穴211の周囲の外形に沿った半円形状であって、左右フランジ部210の間は直線で結ばれている。
【0019】
基部200は、
図1に示されるように、上面に電線が延びる電線引き出し面と、内部には、図示しないコンタクトを保持するための図示しないコンタクト保持部とを備えている。基部200は、フランジ部210上面から真直ぐ上方に立ち上がり図示しないコンタクトごとに外観上区画されている。図示しないコンタクトの3個の区画部分は一列状態に並びほぼ同じ形状で構成されている。
【0020】
フード部220は、
図1に示されるように、フランジ部210の下面に備わり、楕円形の筒状で軸方向のほぼ中央部に周方向に延びる溝部221が形成されている。フード部220が、取り付けパネル40の挿入孔410に装着されることによって、フード部220の外周面と、挿入孔410の内周面との間には隙間が生じるが、この隙間は全周に亘りシール材30で連続的に埋められる状態にあるので、その間の気密性はシール材30で十分確保されるものである。そのために、フード部220の外形は、取り付けパネル40の挿入孔410の穴形状に対応している。フード部220は、内部に図示しないコンタクトの接触部を収容している。
【0021】
フード部220は、
図1に示されるように、図示しない比較的長めのコンタクト接触部を内部に収容するものなので、その長さに応じた軸方向の大きさを備えている。フード部220の周面に備わる溝部221は、シール材30の基部35が装着されるところである。溝部221の深さは、基部35の厚みに対応するものであって、やや基部35の上面が溝部221からのぞく程度の厚みを備える。溝部221の幅は、基部35の幅に対応するものであって、ほぼ同じ大きさで形成されている。
【0022】
<取り付けパネル> 取り付けパネル40は、
図1に示されるように、本実施形態の場合、金属の圧延材から絞り加工で筒部が形成されるものであるが、本発明はこのような材料、加工方法で形成されるものに限定的に解釈されるものではなく、所定の厚みを有する
材料から切削加工で挿入孔410が形成されるものであってもよい。材料はアルミニウム合金等の金属材料のほか、非導電性の合成樹脂材料であってもよく、材料、及び加工方法は特に限定を受けるものではない。
【0023】
取り付けパネル40は、
図1に示されるように、矩形の基部45の中央部に楕円形の挿入孔410を有する筒部400が備わる。挿入孔410の内形状は、電線コネクタ20のフード部220の外形状に対応する形状であって、ほぼ楕円形である。筒部400は、ほぼ同じ形状で基部45から真直ぐ下方に延びている。また、挿入孔410の内形状もほぼ同じ大きさで延びている。
【0024】
電線コネクタ20が挿入孔410に挿入された正規挿入状態で、電線コネクタ20のフード部220と、挿入孔410との間には、隙間が生じている。正規挿入状態で、隙間はフード部220の周面に亘ってほぼ均等に生じている。この隙間を封止するためにフード部220の周面に備わるシール材30は、電線コネクタ20の正規嵌合状態で、全周に亘り先端を挿入孔410の内周面に当て、いくらか変形した状態でこの間の気密性を確保している。
【0025】
シール材30は、必要な耐熱性柔軟性を備えたシリコーンゴムの成形品であって、挿入孔410と、フランジ部210と間で生じている隙間を埋めることで、ケース70内部の気密性を確保している。シール材30は、
図1に示されるように、帯状に延びる基部35を備え、基部35の外周面には凸状部300が備わる。シール材30の基部35は、溝部221の外径に比べて小さいために、ゴム弾性を利用して引き伸ばされた状態で溝部221に収まる。
【0026】
筒部400は、
図1、
図2に示されるように、電線コネクタ20のフランジ部210の長さに比べて軸方向(上下方向)に長く延びる一方、取り付けパネル40のケース70に対する正規組み付け状態で、筒部400の先端は、基板コネクタ10の基部100に達している。
【0027】
取り付けパネル40の基部45は、
図1、
図2に示されるように、四隅にボルト穴430が形成されている。ボルト穴430は、取り付けパネル40をケース70の蓋75に取り付けるためのものである。取り付けパネル40の基部45は、
図1に示されるように、挿入孔410の左右周縁部にボルト穴420を備えている。ボルト穴420は、電線コネクタ20を取り付けパネル40にボルト50を介して固定するためのものであって、電線コネクタ20のフランジ部210に備わるボルト穴211に対応する位置に備わる。
【0028】
<基板コネクタ> 基板コネクタ10は、導電性の図示しないコンタクトを中に収めて周囲は非導電性のハウジングで覆われている。コンタクトは、良導電性を有する銅合金等の圧延材料から形成され、表面は必要な錫や金でめっき処理されている。ハウジングは、必要な耐熱性耐久性を有するABS樹脂やナイロン等の合成樹脂の射出成形によって所望の形状が得られる。
【0029】
基板コネクタ10は、
図1、
図2に示されるように、回路基板60にボルト140で固定された状態で、ケース70に収容されている。基板コネクタ10は、
図1に示されるように、上下面が平坦な楕円形の柱状の基部100と、基部100の上面に図示しないコンタクトを内部に収容するカバー部120とを備えている。
【0030】
カバー部120は、
図1に示されるように、軸方向(上下方向)に延びる筒状体を3個一列状態に備えている。各筒状態の内部には図示しないコンタクトが収容されている。カバー部120は、正規嵌合状態で、電線コネクタ20のフード部220に挿入されるとこ
ろである。
【0031】
基部100は、
図1、
図2に示されるように、下面が回路基板60に接する基板コネクタ10に対する接触面である。基部100は、左右端部及び前部から外方向に延びるフランジ部130を備え、フランジ部130に形成されたボルト穴を通してボルト140でケース70に固定される。基部100は、扁平な柱状体で外形はほぼ楕円形である。基部100の周面には保持部110が備わる。
【0032】
保持部110は、
図1に示されるように、基部100の周面の前面後面に各2個、及び左右側面に各1個の合計6個が備わる。保持部110は、基部100周面の上縁近くに備わり、軸方向に沿った断面が台形状の凸状片であって先端部は基端部に比べて狭くなっている。また、保持部110は、嵌合方向の上面にテーパーが備わる。基部100は、取り付けパネル40の正規組み付け位置で、筒部400の先端部に挿入される。
【0033】
<取り付けパネルと基板コネクタ> 基板コネクタ10は、
図2に示されるように、回路基板60に固定された状態でケース70の底面に組み付けられる。ケース70は、基板コネクタ10が組み付けられた後、上面が蓋75で閉じられる。蓋75には中央部に穴77が開けられていて、穴77は組み付けられた基板コネクタ10の基部100よりも大きなものである。
【0034】
蓋75の穴77には、
図2に示されるように、筒部400を下に向けた姿勢で取り付けパネル40が組み付けられる。正規組み付け位置に組み付けられた取り付けパネル40は、四隅に開けられた穴430を通してボルト440で蓋75に固定される。
【0035】
取り付けパネル40が蓋75に取り付けられるとき、取り付けパネル40と、基板コネクタ10との間では、
図3に示されるように、筒部400の先端と基部100との間で機械的接続状態が生じている。筒部400は、取り付けパネル40が正規組み付け位置に組み付けられた状態で、その先端が基板コネクタ10の基部100に達するように形成されている。
【0036】
筒部400の先端は、
図3で示されるように、基部100の周面に備わる保持部110の位置まで達していて、保持部110の先端は、筒部400の内側の挿入孔410の内周面に接している。基部100の周面の前面後面及び左右側面に設けられている保持部110は、ほぼ均等に挿入孔410の内周面に当接している。保持部110の先端はやや変形する程度の押圧を挿入孔410の内周面から受けている。
【0037】
基板コネクタ10は、
図3に示されるように、取り付けパネル40がケース70に取り付けられたとき、取り付けパネル40の筒部400に保持された状態にある。したがって、取り付けパネル40がケース70の蓋75にボルト440で硬く締め付けられた状態で、基板コネクタ10は、取り付けパネル40を介してケース70に硬く固定された状態にある。
【0038】
<電線コネクタの固定> 電線コネクタ20の固定について図面にしたがって説明する。
図4は、同シール構造に係る基板コネクタと電線コネクタとの嵌合状態を示す外観斜視図である。
図5は、
図4のV−V線に沿った断面図である。
図6は、同シール構造に係るコネクタがケースに組み込まれた状態を示す外観斜視図であって、(1)は、嵌合前、(2)は、嵌合完了状態を示す図である。説明中の方向指示は図面の方向指示定義に従う。
【0039】
電線コネクタ20は、
図4に示されるように、取り付けパネル40の挿入孔410に挿入され、挿入方向奥部にある正規嵌合位置で基板コネクタ10に嵌合する。電線コネクタ
20は、正規嵌合位置でフランジ部210の下面が取り付けパネル40の上面に接する。
【0040】
電線コネクタ20が、
図5に示されるように、基板コネクタ10に対する正規嵌合位置にあるとき、フード部220全体が、取り付けパネル40の挿入孔410の内部にある。フード部220の外周面と、挿入孔410の内周面との間には、挿入を容易にするために隙間が設けられており、その隙間を埋めるためにフード部220の周面に形成された溝部221にシール材30が装着されている。
【0041】
フランジ部210が取り付けパネル40に接した状態で、フランジ部210のボルト穴211は、
図6に示されるように、取り付けパネル40のボルト穴420に重ね合わされる位置にある。ボルト50を通して電線コネクタ20は、取り付けパネル40に締め付け固定される。
【0042】
電線コネクタ20のフランジ部210のボルト穴211にボルト50を通して取り付けパネル40に対して締め付けるとき、
図4、
図5に示されるように、電線コネクタ20は取り付けパネル40に対して締め付け方向に回転する力を受ける。2つのボルト50の締め付けによる力は電線コネクタ20自体にとっては偶力であって、電線コネクタ20の回転方向にかかる力は倍加する。
【0043】
電線コネクタ20に対するボルト50の締め付けによる回転方向の力は、電線コネクタ20が取り付けパネル40に対して位置ずれが生じる力として作用するものであるが、電線コネクタ20の嵌合している相手の基板コネクタ10は、
図5、
図6に示されるように、取り付けパネル40の筒部400に対して保持部110を介して固定されている。また、基板コネクタ10は、回路基板60を介してケース70に対しても固定されている。
【0044】
すなわち、電線コネクタ20は、正規嵌合位置で基板コネクタ10を介してケース70に対して固定されている。これにより、ボルト50の締め付けによって生じる取り付けパネル40に対する回転方向の力は、取り付けパネル40がケース70に対して固定されているので、ケース全体に伝わることとなる。これにより、ボルト50の締め付けによる回転方向の力は、取り付けパネル40に対する電線コネクタ20の回転ずれとして生じる割合が減殺されることとなる。
【0045】
これにより、電線コネクタ20のフード部220の溝部221に装着されているシール材30と、対応する取り付けパネル40の挿入孔410の内周面との間で作用する押圧は全周に亘り均等に作用することとなり、変形の偏りが生じることがなく、これによりケース70内の気密性が保たれることとなる。
【0046】
<効果> 本実施形態に係るコネクタのシール構造1によって奏される効果について記す。
本実施形態に係るコネクタのシール構造1は、別部材としてたとえばフランジ部130を電線コネクタ20から分離していないので、部品点数の増加を招かない気密性に優れたシール構造1が得られる。
【0047】
本実施形態に係るコネクタのシール構造1は、基板コネクタ10が正規組み付け位置で取り付けパネル40の筒部400に固定されている。これにより、電線コネクタ20の基板コネクタ10に対する正規嵌合位置で、電線コネクタ20は、取り付けパネル40に対して固定されるものである。したがって、電線コネクタ20のフランジ部210を締め付けボルト50で締め付けたとき、電線コネクタ20の取り付けパネル40に対する回転による位置ずれが抑制されたシール構造1が得られる。
【0048】
本発明は、本実施形態に限定的に解釈されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜構成の変更は可能である。