特開2016-158529(P2016-158529A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-158529(P2016-158529A)
(43)【公開日】2016年9月5日
(54)【発明の名称】コーン発酵物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20160808BHJP
   A23L 7/104 20160101ALI20160808BHJP
【FI】
   A23L1/10 H
   A23L1/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-38541(P2015-38541)
(22)【出願日】2015年2月27日
(71)【出願人】
【識別番号】515055845
【氏名又は名称】有限会社カミノ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】神野 三和子
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC09
4B023LE30
4B023LG08
4B023LK18
4B023LP16
(57)【要約】
【課題】 従来の大豆を納豆菌を用いて発酵して製造する納豆の有する機能成分であるナットウキナーゼ及びビタミンKを含有し、しかも、従来の納豆の有する特有の粘りや臭いを軽減し、安価な原材料であるコーンを使用した、誰でもが食しやすいコーン発酵物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 コーンに納豆菌を接種した基質を発酵容器に入れた後、発酵器で発酵させてコーン発酵物を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンに納豆菌を接種した基質を発酵容器に入れた後、発酵器で発酵させたことを特徴とするコーン発酵物の製造方法。
【請求項2】
コーン発酵物を発酵後乾燥器で乾燥した、請求項1記載のコーン発酵物の製造方法。
【請求項3】
コーン発酵物を発酵後乾燥器で乾燥した後、粉末にした、請求項1記載のコーン発酵物の製造方法。
【請求項4】
コーンは高圧蒸気滅菌器にかけた缶詰のスイートコーンである、請求項1から請求項3のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
【請求項5】
納豆菌は宮城野菌である、請求項1から請求項4のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
【請求項6】
基質には、大豆粉が含まれている、請求項1から請求項5のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
【請求項7】
発酵容器はPSP容器、プラスティック製バット、又はステンレス製バットのいずれかである、請求項1から請求項6のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
【請求項8】
基質を発酵容器に入れた後、該基質の表面を、蓋、又はシート状の被膜で覆い発酵させた、請求項1から請求項7のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
【請求項9】
缶汁を濾したコーンを、105℃で10分間高圧蒸気滅菌器にかけ、納豆菌液1mlを300mlの湯で希釈した菌液を、高圧蒸気滅菌後のコーン10kgあたり、希釈菌液5mlの菌を接種し、発酵容器にいれて発酵器で発酵させたコーン発酵物。
【請求項10】
コーン発酵物を、乾燥器で乾燥した後、粉砕機で粉末にした、請求項9記載のコーン発酵物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーン発酵物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
納豆は古くから日本の伝統食品であり、大豆を納豆菌を用いて発酵して製造する。その製造過程で生産されるナットウキナーゼは血栓溶解作用を有し、ビタミンKは骨形成を促進し骨を強化する作用を有する。
【0003】
このように健康に良い食品であることは認識しながらも、一方で、納豆の有する特有の粘りや臭いを敬遠し、食することのできない者もいる。
【0004】
また、原料の大豆の価格は決して安価ではなく、消費者が気軽に購入して健康増進を図るためには、納豆の売価がさらに安くなることが望まれる。
【0005】
下記特許文献1は、とうもろこし発酵食品の製造方法に関するものである。この発明により、とうもろこしを成分分離することなく、丸ごと利用でき、消化性がよく、栄養価の高い食品、および、異臭のない食品用保存剤の製造方法を提供できる。
【0006】
下記特許文献2は、粉末納豆に関するものである。この発明により、納豆を真空乾燥法又は凍結乾燥法で乾燥し、粉末化して、インスタント納豆として即席食品化して「臭い」を消し、調理を簡単化し、粉末化した納豆にうまみを出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−253147号公報(とうもろこし発酵食品の製造方法)
【特許文献2】特開平9−271346号公報(粉末なっとう)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の発明は、とうもろこし種実を発酵させる前に、アルカリ処理を必要とする手間と食品安全上の課題が残る。
【0009】
また、上記特許文献2の発明は、従来の大豆を原料とした納豆を粉末にしたものであるため、粉末にしたとしても、食すれば納豆の臭いと粘りがある、という課題が残る。
【0010】
すなわち本発明は、上記問題を解決するため、従来の大豆を納豆菌を用いて発酵して製造する納豆の有する機能成分であるナットウキナーゼ及びビタミンKを含有し、しかも、従来の納豆の有する特有の粘りや臭いを軽減し、安価な原材料であるコーンを使用した、誰でもが食しやすいコーン発酵物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意努力した結果、コーンを納豆菌で発酵させたコーン発酵物が、ナットウキナーゼ及びビタミンKを含有することを見出した。これらの知見に基づき、更に検討を加えた結果、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]コーンに納豆菌を接種した基質を発酵容器に入れた後、発酵器で発酵させたことを特徴とするコーン発酵物の製造方法。
[2]コーン発酵物を発酵後乾燥器で乾燥した、上記[1]に記載のコーン発酵物の製造方法。
[3]コーン発酵物を発酵後乾燥器で乾燥した後、粉末にした、上記[1]に記載のコーン発酵物の製造方法。
[4]コーンは高圧蒸気滅菌器にかけた缶詰のスイートコーンである、上記[1]から[3]のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
[5]納豆菌は宮城野菌である、上記[1]から[4]のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
[6]基質には、大豆粉が含まれている、上記[1]から[5]のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
[7]発酵容器はPSP容器、プラスティック製バット、又はステンレス製バットのいずれかである、上記[1]から[6]のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
[8]基質を発酵容器に入れた後、該基質の表面を、蓋、又はシート状の被膜で覆い発酵させた、上記[1]から[7]のいずれかに記載のコーン発酵物の製造方法。
[9]缶汁を濾したコーンを105℃で10分間、高圧蒸気滅菌器にかけ、
納豆菌液1mlを300mlの湯で希釈した菌液を、高圧蒸気滅菌後のコーン10kgあたり、希釈菌液5mlの菌を接種し、発酵容器にいれて発酵器で発酵させたコーン発酵物。
[10]コーン発酵物を、乾燥器で乾燥した後、粉砕機で粉末にした、上記[9]記載のコーン発酵物。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いれば、従来の大豆を納豆菌を用いて発酵して製造する納豆の有する機能成分であるナットウキナーゼ及びビタミンKを含有し、しかも、従来の納豆の有する特有の粘りや臭いを軽減し、安価な原材料であるコーンを使用した、誰でもが食しやすいコーン発酵物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれに限定されたものでないことは、言うまでもない。
【0015】
本発明において、「コーン」とは、とうもろこしをいう。コーンには多種類のものがあり、収穫後そのまま、加工・包装工程を経ることにより蒸、茹で、高圧加熱、乾燥、粉末、冷凍、チルド、缶詰等の状態を有する。
【0016】
本発明において、「コーン発酵物」とは、コーンを納豆菌によって発酵させたものをいう。コーン発酵物は、そのままでも利用でき、また、その後の加工工程により、乾燥状態、乾燥粉末状態の形態とすることができる。
【0017】
コーン発酵物の製造方法について以下の通り詳細に記載する。
【0018】
1.コーン発酵物の原料
コーン発酵物の原料には、コーンと納豆菌、水等を用いる。
【0019】
本発明の実施例において「コーン」は、米国産スイートコーン缶詰を用いたが、とうもろこしは缶詰のものとは特に限定されず、生やチルド、冷凍品等のコーンであってもよい。
【0020】
本発明の実施例において納豆菌は、宮城野菌(4×10−3)を用いたが、特に限定されず、他の納豆菌であってもよい。
【0021】
2.コーン発酵物の製造
2−1.コーン発酵物の製造方法の概要
(1)缶汁を濾したコーンを105℃で10分間、高圧蒸気滅菌器にかける。
(2)納豆菌液1mlを300mlの湯で希釈した菌液を、高圧蒸気滅菌後のコーン10kgあたり、希釈菌液5mlスプレーして菌を接種する。
(3)発酵容器に分けて発酵器で発酵させる。
その後、以下の工程を採ってもよい。
(4)発酵したものを、乾燥器で乾燥させる。
(5)乾燥させたものを粉砕機で粉末にする。
【0022】
コーン発酵物の製造方法の概要は、前記(1)〜(3)のとおりであるが、乾燥したコーン発酵物を製造するためには(4)の工程を、乾燥粉末のコーン発酵物を製造するためには(4)及び(5)の工程を必要とする。
【0023】
その後、ナットウキナーゼ活性測定、及びビタミンK測定をする場合には、−20゜で冷凍庫して保存したものを室温で解凍後用いた。
【0024】
2−2.コーン発酵物の製造方法の詳細
【0025】
(1)コーンの下処理
前記2−1.コーン発酵物の製造方法の概要の各工程を、順を追って詳細に説明する。
【0026】
(ア)高圧蒸気滅菌工程
食感の観点から、缶詰製品でも固さの残る米国産コーンを柔らかくする方法を検討した結果、缶汁を濾したコーンを105℃で10分間、高圧蒸気滅菌器にかけることとした。
【0027】
(イ)添加混合物
臭いの観点から、発酵時間の長い生タイプは納豆の臭いがきつく味もよくないため、発酵時間や乾燥方法を変え、また、大豆粉等を混ぜ、味や食感の変化を検討した結果、コーン発酵物のバリエーションとして、コーンに大豆粉を添加混合することとした。本発明の実施例においては、「大豆粉」として入手しやすいきな粉を使用した。
【0028】
本発明の実施例において「大豆粉」として添加混合したきな粉は、特に記載した場合を除いて被添加物50gあたり0.5gである。
【0029】
(2)菌接種工程
この発明において、納豆菌液1mlを300mlの湯で希釈した菌液を、高圧蒸気滅菌後のコーン10kgあたり、希釈菌液5mlスプレーして菌を接種する。
【0030】
この発明において、菌を植えた後のコーンを「基質」という。
【0031】
(3)発酵工程
本発明において、コーン発酵物を製造するための発酵を、下記のとおり行った。
【0032】
(ア)使用容器
発酵容器は、市販の納豆容器として使用されているポリスチレン樹脂を数倍から十数倍に発泡させた発泡スチレンシートから製造するPSP容器、プラスティック製バット、ステンレス製バットを使用した。
【0033】
特に記載した場合を除き本発明において、コーン発酵物を製造する際の基質の量は、PSP容器には50g、プラスティック製バットには500g、ステンレス製バットには500gとした。
【0034】
特に記載した場合を除き本発明において、コーン発酵物を製造するに当たり基質の表面上部に、PSP容器を用いる場合はビニールシートを、プラスティック製バットを用いる場合は蓋を、ステンレス製バットを用いる場合は下記サンプル11及び14を除きラップを、それぞれ被せた。
【0035】
発酵容器、乾燥容器を選択する重要な観点は、大量のコーン発酵物を簡便に作製できることと、発酵器と通風乾燥器を有効に使用できること、である。
【0036】
納豆菌は好気性であり、通常の発酵において酸素を必要とするため、発酵時の基質表面だけでなく、底面や側面にも空気の流通が必要である。市販の納豆が内容量50gまでの容器を使っている理由は、−人一食分の大きさとして適切であるのみならず、空気供給のためであることがわかる。
【0037】
しかし、コーン発酵物を乾燥後、粉末状態のものを大量に作る場合には、適切な大きさとはいえない。そこで、コーン発酵物の製造が可能で、かつ、量産可能な通常のPSP容器の約10倍の容量のステンレスバットを用いた。コーン発酵物の製造には、発酵過程で空気の流通が必要となるため、深さ2.5cmを超える場合は、強制的に空気を対流させる手段が必要となる。たとえば、基質の上下を混ぜることや、発酵器内の空気をファンで対流させること等がある。
【0038】
(イ)発酵温度
コーン発酵物の発酵温度は、40℃から50℃の範囲で検討した。
【0039】
(4)乾燥工程
本発明において、コーン発酵物の乾燥を、下記のとおり行った。
【0040】
コーン発酵物を、納豆菌や混入した菌類の増殖抑制やカビ対策のため、含水分量を2〜4%に保ち、低温で保存する必要がある。
【0041】
コーン発酵物の含水分量を2〜4%にするために、凍結乾燥と通風乾燥を検討した。食味や色の観点においては凍結乾燥が優れているが、72時間の凍結乾燥を行った場合の水分蒸発量は通風乾燥よりも少なく、時間当たりの乾燥度合いが低い。また、コスト面でも、通風乾燥に比して高価である。
【0042】
一方、深さ1.25cmの基質を約24時間発酵したものを通風乾燥する場合、途中で基質を裏返したり、混ぜたり、コーン発酵物を乾燥・粉末後に再度乾燥する必要がある。更に通風乾燥において高温になると、褪色や硬化が起こり、ナットウキナーゼの活性が失活することにも考慮を要する。
【0043】
しかし、凍結乾燥機は高価であること、乾燥時間と乾燥量の生産性等を考慮すると、通風乾燥器を使用することが可能であることが判明した。
【0044】
通風乾燥器での乾燥温度は50℃とした。
【0045】
(5)粉砕工程
通風乾燥により乾燥したコーン発酵物を粉砕機で粉砕したものに比べて、凍結乾燥したものは、簡単に細かく砕くことができる。これは、乾燥前後の容積の変化がないため変形しないこと、タンパク質が変性しないこと等が要因である。
【0046】
しかし、上記のとおり凍結乾燥機は高価であること、乾燥時間と乾燥量の生産性等を考慮すると、通風乾燥器を使用した後、粉砕機で粉砕することとした。
【0047】
3.コーン発酵物の機能性測定
本発明において、コーン発酵物の機能性の測定を、下記のとおり行った。
【0048】
(1)サンプル前処理
検査測定対象物を、メスシリンダーに10gずつ測り取り、蒸留水で50mlにメスアップしたものを粉砕機で15秒間粉砕し、それを1.5mlチューブに入れ、冷凍保存した。検査測定対象物とは、例えば、冷凍しておいたコーン発酵物を室温で解凍したものである。
【0049】
(2)ナットウキナーゼ活性測定
フィブリン平板測定法を用いた。前記のとおり前処理したサンプルを遠心分離機(10000rpm、15分)にかけ、上清を標準フィブリン平板3枚に30μlずつ載せ、発酵器で37℃24時間保温したものを、溶解面積を測定することでナットウキナーゼ活性を検討した。
【0050】
本発明において、「フィブリン溶解面積」とは、上記のフィブリン平板の溶解面積をいう。
【0051】
(3)ビタミンK測定
前記の上漬0.1mlを試験管に取り、0.9mlのイオン交換水を加えて撹枠した後、イソプロピルアルコール1.5mlを加えて撹祥した。さらに5mlのヘキサンを加え撹祥した後、遠心分離機にかけた。このヘキサン層を別の試験管に移し、4mlをナシ型フラスコにとり、蒸発装置で乾固させた残渣をエタノールで溶解したものを、高速液体クロマトグラフィーにかけ測定して、サンプル1gあたりのビタミンK量を算出した。
【実施例】
【0052】
下記実施例1から10において、種々のサンプルを作成して様々な条件の検討を行った。なお、当該サンプル番号と、下記表中の番号は対応している。
【0053】
[実施例1:ナットウキナーゼを含みビタミンKを含まない発酵物の検討]
(サンプル1〜8)
【0054】
1.検討方法
発酵容器はPSP容器、基質表面に被膜としてビニールを被せ、発酵温度40℃とした。これは、一般的な市販の大豆を原料とした納豆と同様の条件である。
【0055】
一般的な大豆を原料とした納豆の場合、発酵開始から8時間付近がナットウキナーゼ産生の始まる時間である。そこで、コーン発酵物のナットウキナーゼ産生が始まる発酵時間を検討するために、サンプル1と5は5時間、サンプル2と6は6時間、サンプル3と7は8時間、サンプル4と8は10時間の発酵時間とした。
【0056】
2.結果
下記表1−1、表1−2、表1−3のとおり、5時間発酵したサンプル1と5と、6時間発酵したサンプル2と6の、いずれもフィブリン溶解はなかったため、ナットウキナーゼ活性はない。したがって、5時間から6時間という発酵時間はコーン発酵物でも大豆を原料とする納豆と同様にナットウキナーゼ産生がないことが検証された。
【0057】
下記表1−1、表1−2、表1−3のとおり、8時間発酵したサンプル3と7、及び、10時間発酵した4と8とは、明らかにフィブリン溶解があり、ビタミンKはほぼ検出されなかった。また、8時間発酵と10時間発酵を比べると、フィブリン溶解面積にほぼ差がないため、ナットウキナーゼ活性が同等であることが検証された。
【0058】
以上より、ナットウキナーゼ活性が同等なら短時間の発酵の方が効率的であるため、サンプル9から22は、8時間発酵とした。
【0059】
3.まとめ
コーン発酵物をPSP容器で製造する場合、8時間発酵とすることが、最も効率的に機能性を有することが検証された。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0060】
[実施例2:容器、発酵温度、添加混合物の検討]
(サンプル9〜22)
【0061】
1.検討方法
サンプル9から22については、発酵容器、発酵温度、添加混合物と、フィブリン溶解面積の変化すなわちナットウキナーゼ活性について検討した。
【0062】
(1)発酵容器の検討(9〜11)
コーン発酵物の発酵容器として、サンプル9はPSP容器、サンプル10はプラスティック製バット、サンプル11はステンレス製バットを用いて製造した。
【0063】
下記表2−1−1、表2−1−2のとおり、フィブリン溶解面積はサンプル9と10で同程度であったが、サンプル11にはなかった。サンプル9と10の違いは発酵容器の容積であるが、容器内側の形状には、側面と底面に空気を通しやすくするために凹凸が多数あるという共通の特徴がある。
【0064】
サンプル11でフィブリン溶解がなかったのは、発酵容器が発酵物内に空気を通しにくい構造をしていたこと、及び、ビニール、ラップ等のシート状の被膜や蓋を被せなかったため発酵器内で発酵物の水分が蒸発し、納豆菌の発酵に適さない条件になったと考えられる。
【表2-1-1】
【表2-1-2】
【0065】
(2)発酵温度の検討(サンプル9〜22)
【0066】
(ア)検討1(9〜14)
サンプルは発酵温度を45℃とした。発酵容器はPSP容器、プラスティック製バット、ステンレス製バットを用い、基質の表面に直接被せる穴の多数あいたビニール又は蓋である被膜を被せた場合と被せない場合の検討をした。また、サンプル12から14は大豆粉をコーンに添加混合してから高圧蒸気滅菌器にかけ、菌を接種した後に発酵させた。
【0067】
(イ)検討2(15〜18)
サンプル15から18は、発酵温度を47℃とした。サンプル17と18は、高圧蒸気滅菌器にかけた後のコーンに大豆粉を添加混合し、その後納豆菌を接種して発酵させた。
【0068】
下記表2−2−1、表2−2−2、表2−3−1、表2−3−2のとおり、フィブリン溶解面積をみると、サンプル15と16では40℃発酵、45℃発酵と違いがないが、サンプル17と18では増大した。
【0069】
サンプル17と18は、高圧蒸気滅菌器にかけた後のコーンに大豆粉を添加混合したため、発酵時に大豆粉がコーンと均一に混合された状態であった。一方、サンプル12と13では高圧蒸気滅菌前に大豆粉を添加したために、大豆粉が容器下部に落ち、発酵時に大豆粉がコーンと均一に混合された状態ではなかった。したがって、発酵開始時において、サンプル17と18の基質は、サンプル12と13の基質に比べて、より多くの大豆粉が均質に混合していた。
【0070】
ここで、大豆粉を添加していない47℃発酵のサンプル15と16は、45℃発酵したものと比べてもフィブリン溶解面積に違いが見られないことから、発酵温度を47℃に上げたことで発酵が促進したということはないといえる。
【0071】
したがって、フィブリン溶解面積を増大させる、すなわち、ナットウキナーゼ活性を向上させるには、基質に大豆粉が均質に混合されている状態で発酵させることが望ましいことが検証された。
【表2-2-1】
【表2-2-2】
【表2-3-1】
【表2-3-2】
【0072】
(ウ)検討3(サンプル19〜22)
サンプル19から22は、発酵温度を50℃とした。サンプル21と22は高圧蒸気滅菌器にかけた後のコーンに大豆粉を添加混合し、その後納豆菌を接種して発酵させた。
【0073】
下記表2−4−1、表2−4−2のとおり、サンプル22は、0.08μg/gのビタミンKを検出した。一般的な大豆を原料とした納豆のビタミンK含有量は約6μg/gであるため、サンプル22のビタミンK含有量は0.01倍であり、極微量といえる。
【0074】
50℃発酵で大豆粉を添加しないものからはビタミンKの検出はなかったが、大豆粉を添加したものからは極少量のビタミンKが検出された。また、50℃発酵のもののフィブリン溶解面積は、40℃発酵、45℃発酵、47℃発酵のものに比べて多いとはいえなかった。
【表2-4-1】
【表2-4-2】
【0075】
(3)添加混合物の検討(12〜14)
サンプル12から14は、風味と色を向上させるために、大豆粉を高圧蒸気滅菌器にかける前に添加混合した。発酵温度を45℃とし、発酵容器はPSP容器、プラスティック製バット、ステンレス製バットを用いた。
【0076】
サンプル12のフィブリン溶解面積は0であった。
【0077】
サンプル14は発酵が芳しくなかった。これは、サンプル11と同様、発酵容器が発酵物内に空気を通しにくい構造をしていたこと、及び、ビニール等の被膜や蓋を被せなかったため発酵器内で発酵物の水分が蒸発し、納豆菌の発酵に適さない条件であったためである。
【0078】
これにより、蓋や被膜の必要性が検証された。以降は、発酵容器にステンレス製バットを使用する場合も、基質の表面を被膜で覆うこととする。
【0079】
大豆粉を添加混合したサンプル12と13は風味の点で大豆納豆に近い。45℃発酵においては、サンプル3と7の40℃発酵のものと同程度の広さのフィブリン溶解面積が認められた。また、風味の点においても同程度であった。
【0080】
2.まとめ
【0081】
(1)発酵容器
フィブリン溶解面積では、一般的な大豆を原料とした納豆で使用されるPSP容器が最も優れており、次にプラスティック製のバットがナットウキナーゼ産生には適していた。ステンレス製バットが最も適していなかった。
【0082】
発酵容器の特徴は、PSP容器は容量が小さいが、容器内側側面や底面の凹凸の形状から基質中に空気が流入し、納豆菌が発酵しやすい。バットは、発酵・乾燥後、更に発酵物を取り出し加工する場合、小さなPSP容器よりもより大きいバットを発酵容器としたほうが作業効率が高い。
【0083】
プラスティック製バットはPSP容器より容量が大きいため、基質内に空気が流入しにくく、発酵が進みにくいが、容器内側に凹凸の形状があるため、PSP容器と同様、ステンレス製バットに比べ基質中に空気は流入しやすい。しかし、その形状から洗浄がしにくく、またその材質により繰り返しの使用には耐えられない。
【0084】
一方、ステンレス製バットは、容器内側側面と底面に凹凸がないため、基質中に空気が流入しにくく、そのために発酵が遅れる傾向が見られた。しかし、凹凸がないために高圧蒸気滅菌後に基質の充填がしやすく、コーン発酵物完成後に乾燥させる場合、そのまま容器ごと通風乾燥器にかけることができる。
【0085】
コーン発酵物を乾燥したものは、容器にこびりつき、洗浄時にこすり取らなければならないため、容器には頑丈さが要求される。ステンレス製バットは、形状がシンプルで、材質が頑丈なため、繰り返しの使用にも耐えられる。
【0086】
(2)発酵温度
発酵温度は40℃から50℃までを検討した。しかし、フィブリン溶解面積、ビタミンK産生量、及び、発酵温度による風味の差異は認められなかった。
【0087】
これにより、以降の発酵温度は40℃から50℃の中間の45℃とした。
【0088】
(3)添加混合物
コーンに大豆の粉を添加混合してコーン発酵物を製造した。コーンの短時間発酵物は風味にクセがなく、甘みが残っていることは長所であるが、大豆粉を添加混合することにより味にコクがでて、重厚になり、香りの面でも大豆を原料とした納豆の香りを得ることができた。
【0089】
[実施例3:風味の検討]
(サンプル23〜27)
【0090】
実施例1及び2では、発酵時間8時間を基準に検討したが、風味の点であっさりとしすぎ、物足りなさがあったため、発酵時間を15時間と延長して風味の向上を検討した。
【0091】
サンプル23から27は、発酵温度は45℃とした。発酵容器はサンプル23と25はPSP容器、サンプル24、26、27はプラスティック製バットを用いた。更に、サンプル25から27では大豆粉を添加混合した。サンプル25の大豆粉量は基準量の被添加物50gあたり0.5g、サンプル26は被添加物50gあたり1g、サンプル27は被添加物50gあたり1.5gである。
【0092】
サンプル25から27の風味は、45℃発酵で大豆粉添加混合したサンプル12及び13と比べて、コクと一般的な大豆を原料とした納豆の臭いの増加がみられた。
【0093】
更に、下記表3−1、表3−2のとおり、ビタミンK産生量は、多くても0.12μg/gであった。これは、一般的な大豆を原料とした納豆の0.01倍の含有量である。
【0094】
以上のとおり、大豆粉を添加混合しないものでも一般的な大豆を原料とした納豆の臭いが増すため、この臭いは人により好みが分かれ、コーン発酵物は8時間発酵が望ましいことが検証された。
【表3-1】
【表3-2】
【0095】
[実施例4:45℃で8時間発酵より短い時間の検討]
(サンプル28〜30)
【0096】
サンプル1と2及びサンプル5と6は、発酵温度40℃とし、発酵時間は5時間又は6時間としたが、発酵温度を45℃では検討していない。
【0097】
そこで、発酵温度45℃、発酵容器をPSP容器として、発酵時間はサンプル28は5時間、サンプル29は6時間、サンプル30は7時間として検討した。
【0098】
下記表4のとおり、フィブリン溶解面積は、発酵温度45℃でも発酵時間5時間、6時間、7時間では、0又は非常に少ないものであった。サンプル30で19.2mmであった。
【表4】
【0099】
以上のとおり、フィブリン溶解面積を測定するためには、45℃でも少なくとも8時間の発酵が必要であることが検証された。
【0100】
[実施例5:生タイプのコーン発酵物の収量増加の検討]
(サンプル31〜36)
【0101】
サンプル31から36は、発酵温度を45℃、発酵時間を8時間とし、発酵容器にステンレス製バットを用いた。
【0102】
サンプル31と34では、1.25cmの深さまで基質を敷き詰めて発酵させた。
【0103】
サンプル32と35では、深さ2.5cmに基質を敷き詰めて発酵させた後、コーン発酵物の上層と下層に分けてサンプリングし、フィブリン溶解面積を測定した。
【0104】
上記サンプル32の、上層のサンプルは32−1と、下層のサンプルは32−2と表記し、また下記サンプル33の最上層のサンプルは33−1、上層のサンプルは33−2、下層のサンプルは33−3、最下層のサンプルは33−4と表記し、以降も同様の表記とする。
【0105】
サンプル33と36では、深さ5.0cmに基質を敷き詰めて発酵させた後、コーン発酵物の最上層、上層、下層、最下層の4層に分けてサンプリングし、フィブリン溶解面積を測定した。
【0106】
下記表5のとおり、サンプル31と34のフィブリン溶解面積は平均103.4mmであった。
【0107】
下記表5のとおり、サンプル32と35のフィブリン溶解面積は、上層は平均53.0mmで、下層は平均19.2mmであった。
【0108】
下記表5のとおり、サンプル33と36のフィブリン溶解面積は、最上層(第一層)は平均22.5mmであり、上層(第二層)は平均0.2mmであり、下層(第三層)は平均12.3mmであり、最下層(第四層)は平均0.5mmであった。
【表5】
【0109】
したがって、基質の深さが深いほど、下層部の発酵が進まないため、フィブリン溶解面積が少ないことが検証された。また、基質の量を増やすと、最上層のフィブリン溶解面積までも少なくなることが検証された。
【0110】
サンプリング時には、コーン発酵の粘りが充分確認されていたため、発酵は起っているが、空気の流通が何らかの原因で不足して、最上層でもナットウキナーゼが産生されなかったか、あるいは遅れたことが一因と考える。
【0111】
また、下層部の基質が、最上層部にも何らかの影響を与えたことが考えられる。これは、下層部の納豆菌が発酵する時に、上層部の酸素を取り入れ、上層部の酸素を消費したために、上層部の発酵が遅れたか、あるいは発酵しなかったと考える。
【0112】
以上のとおり、作業の効率、大量生産の観点から必須であるコーン発酵物の収量を上げるために、発酵容器であるステンレス製バットに入れる基質の量を増やすことを検討したが、基質の水分を失うことなく酸素の循環の良くなる発酵システムが必要であることが検証された。
【0113】
[実施例6:乾燥粉末の検討]
(サンプル37〜48)
【0114】
コーン発酵物の乾燥粉末の製造方法の検討を下記のとおり行った。
【0115】
サンプル37から39は、発酵容器をステンレス製バットとし、発酵時間40℃、発酵時間20時間のコーン発酵物を、通風乾燥器の乾燥温度50℃で24時間以上乾燥させたものを、粉砕機で粉砕して、コーン発酵物の乾燥粉末を製造した。
【0116】
サンプル40から43は発酵時間をそれぞれ、サンプル40は15時間、サンプル41は7時間、サンプル42は8時間、サンプル43は0時間とし、サンプル40と41は発酵容器にPSP容器を用い発酵温度を45℃とし、サンプル42は発酵容器をステンレス製バットとし、発酵温度を47℃として、発酵させた後、各コーン発酵物を、24時間以上通風乾燥器にかけ、上記サンプル37から39と同様に測定した。したがって、サンプル40はサンプル23を乾燥したものであり、サンプル41はサンプル30を乾燥したものである。
【0117】
サンプル40と41はビニール、サンプル37から39、44、45はラップ、サンプル46から28は蓋で基質上部を覆った。
【0118】
サンプル44から48は、発酵温度45℃で24時間発酵後、50℃の通風乾燥機で24時間乾燥した。ただし、サンプル46から48はこれまでの基質ではなく、大豆を用いた基質を発酵させた大豆発酵物である。大豆発酵物は、コーン発酵物との血栓溶解活性とビタミンK含有量の対比例として製造した。
【0119】
下記表6−2のとおり、サンプル37のフィブリン溶解面積は572mmであった。また、サンプル39の血栓溶解面積が一番大きく、812mmであった。これは、サンプル47の0.62倍である。
【0120】
下記表6−2のとおり、サンプル44のフィブリン溶解面積は812mm,ビタミンK含有量は5.75μg/gだった。サンプル45のフィブリン溶解面積は860mm,ビタミンK含有量は6.20μg/gだった。
【0121】
下記表6−2のとおり、サンプル37から39のうち、サンプル37が最もビタミンK含量が高く0.29μg/gであった。これは、サンプル47の0.03倍である。
【0122】
サンプル37については、乾燥粉末としての食品機能性の目標である血栓溶解活性とビタミンK量の両方を満たしているとはいえず、特にビタミンK含量が不充分であることが検証された。
【0123】
これにより、機能性を有するコーン発酵物を製造するためには発酵時間が20時間ではが不充分であり、以降の発酵条件を「発酵温度45℃、発酵時間24時間」と定めた。
【0124】
サンプル40と41はコーン発酵物を乾燥後粉末にしたものであり、いずれもビタミンKが検出された。乾燥中に発酵が進んだと推測する。
【表6-1】
【表6-2】
【0125】
[実施例7:コーン発酵物入りアイスクリームの検討]
(サンプル49、50)
【0126】
サンプル49と50は、コーン発酵物を乾燥後粉末にしたものを市販のバニラアイスクリームに練り込み、凍結させたものである。サンプル49はバニラアイスクリーム100g当たりコーン発酵物を乾燥後粉末にしたものを5g、サンプル50はバニラアイスクリーム100g当たりコーン発酵物を乾燥後粉末にしたものを10g練り込んだものである。
【0127】
下記表7−1、表7−2のとおり、サンプル49のフィブリン溶解面積は81.6mmであり、ビタミンK含有量は0.04μg/gであった。サンプル50のフィブリン溶解面積は423mmであり、ビタミンK含有量は0.13μg/gであった。
【表7-1】
【表7-2】
【0128】
当該アイスクリームの風味は非常に良好であり、バニラアイスクリームの風味とコーン発酵物の風味がよく合い、コーン発酵物粉末のわずかならサクサクとした歯ごたえも快くおいしいものである。
【0129】
[実施例8:乾燥タイプのコーン発酵物の収量増加の検討]
(サンプル53〜56)
【0130】
1.乾燥時の発酵を考慮した収量増加の検討
(サンプル53〜55)
サンプル53から55は、より深い基質での発酵度合いの検討をした。基質の深さを10cmにしてコーン発酵物の乾燥物あるいは乾燥粉末の大量生産を検討した。サンプル53−1から55−4までは、発酵容器として500ml容量ビーカーを用い、基質表面をラップで覆った。
【0131】
サンプル53から55の発酵温度45℃で8時間発酵とした。サンプル53は添加混合物なし、サンプル54では生のコーンの粉を添加混合し、サンプル55ではコーン発酵物の粉末を添加混合物として添加混合した。添加混合時は、いずれも納豆菌接種時とした。基質の深さ10cmを4分割し、発酵後にサンプリングした。
【0132】
添加物なしのサンプル53は、最上層においてさえもほとんど発酵は起きなかった。サンプル54では充分といえないまでも発酵が起き、サンプル55はさらに発酵が進んだ。
【0133】
上記の実施例において、基質の深さを25cm以上にすると、基質下層部の発酵が進まないことは推測できる。しかし、上層部さえ発酵すれば、たとえ基質下層部が発酵しなくても、発酵終了後に撹枠することで最低限のナットウキナーゼ活性は確保できると推測する。
【0134】
また、コーン発酵物を乾燥、あるいは乾燥粉末にすれば、下層部の基質が発酵していなくとも乾燥段階で発酵が進むことがわかったため、発酵器にかけた段階では充分な発酵ではなくても、乾燥中の発酵を考慮に入れれば、最終的な血栓溶解活性は確保できる可能性はある。
【0135】
2.改良した発酵容器による検討
(サンプル56)
【0136】
サンプル56は、発酵用の容器を改良して発酵基質中に空気の流入を起こし、発酵しやすい条件を作った。容器は金属製の網を購入し、上面と下面から型でプレスして製作した。コーン基質の深さは25cmとした。発酵後のサンプリングでは上層(第一層)と下層(第二層)の12.5cmずつに分けた。
【0137】
下記表8のとおり、期待していたほどの発酵は起きず、フィブリン溶解面積はわずかしかなかった。
【表8】
【0138】
以上のとおり、乾燥時の発酵に頼らずに、より多くのナットウキナーゼ活性を求めるならば、基質中に滅菌された空気を通し、納豆菌が発酵を起こすのに必要充分な水分を供給するなどの工夫が必要であることが検証された。
【0139】
[実施例9:凍結乾燥の検討]
(サンプル69〜71)
【0140】
サンプル69と70は基質にコーンを、サンプル71は基質にジヤイアントコーンを用いた。発酵容器にステンレス製バットを用い、サンプル69は8時間発酵、サンプル70は24時間発酵、サンプル71は24時間発酵とし、発酵後の乾燥は、凍結乾燥機に72時間かけた。
【0141】
下記表9−1、表9−2のとおり、サンプル70のフィブリン溶解面積は1104mm,ビタミンK含有量は9.03μg/gであり、いずれも非常に高かった。
【表9-1】
【表9-2】
【0142】
食感はサクサクとして、非常に柔らかく食べやすかった。味は甘さがなく、若干苦みがあった。
【0143】
凍結乾燥機により乾燥したものは、通風乾燥器により乾燥したものと比較して風味が格段に良く、通風乾燥機で乾燥したものとは全く違う食感と風味を持っていた。しかし、凍結乾燥機は機器の価格が高く、通風乾燥機より乾燥に時間を要する。
【0144】
[実施例10:コーン発酵物の乾燥時間の検討]
(サンプル57〜66)
【0145】
コーン発酵物を乾燥したものを量産するための検討を行った。
【0146】
発酵容器にステンレス製バットを用い、基質の深さは1.25cmとした。サンプル66は8時間発酵、サンプル62は24時間発酵、サンプル63は48時間発酵、サンプル64は72時間発酵、サンプル65は96時間発酵とした。その後、通風乾燥器で50℃24時間乾燥した。
【0147】
下記表10−1、表10−2のとおり、フィブリン溶解面積が最も広いものはサンプル65の96時間乾燥のものであった。わずかな差ではあるが、サンプル62の24時間乾燥のものが次に高かった。またビタミンK含有量は、96時間発酵のものが24時間、48時間、96時間の3つの平均値の16倍と、最も多かった。
【0148】
96時間発酵はビタミンK量が最も多かったが、黒色化して風味も悪かった。したがって、ナットウキナーゼ活性、ビタミンK含有量、風味、生産性等を総合的に判断すると、サンプル62の24時間発酵のものが最良であった。
【表10-1】
【表10-2】
【0149】
[実施例総括]
【0150】
ナットウキナーゼ活性は、発酵容器がPSP容器の場合、発酵開始から5、6時間で産生され始め、24時間後までは上昇することが分かった。また、発酵容器がステンレス製バットの場合、発酵開始24時間後までに産生量が増え、72時間後まで少しずつ上昇していく。コーン発酵物を乾燥させたものは、発酵開始から96時間後までナットウキナーゼ産生量が上昇することが検証された。
【0151】
ビタミンKは8時間発酵では少量しか産生されない場合が多いが、更に発酵時間を伸ばした場合、コーン発酵物及び、コーン発酵物を乾燥させたもの共に、発酵開始後96時間まで産生量が上昇することが検証された。
【0152】
コーン発酵物の特性は、
(1)味は、甘みがあり、さっぱりとしており、サラダに加えてそのまま食するとうい用途にも向く。反面、味に特徴やコクがなく、他の食材と合わせたサラダや、ミルクを用いたポタージュなどにも向く。
(2)血栓溶解活性を有するナッウキナーゼやビタミンKを含有し、食品機能性を有する。
【0153】
これに対して、コーン発酵物を乾燥後粉末にしたものは、
(1)味にコクがあり、コーンの本来の風味と納豆菌による発酵により生じた風味がマッチしており、新しくおいしい食品である。
(2)血栓溶解活性有するナットウキナーゼを含有量は、コーン発酵物より強く、ビタミンK量は格段に多く、高い食品機能性を有する。
(2)乾燥粉末のため、腐敗しにくく、菓子やアイスクリーム、餅等他の食品に添加混合することで広く利用することができる。
【0154】
以上のとおり、食品としての機能性を有するだけでなく、その好ましい食味からコーン発酵物及び、コーン発酵物を乾燥後粉末にしたものをそのまま食してもよく、他の食品等と取り合わせたり、混合して、新たな食品等を製造することができる。たとえば、コーン発酵物は、他の素材と取り合わせて、サラダや和え物、煮物、揚げ物、炒めものに、コーン発酵物を乾燥後粉末にしたものは、小麦粉や米粉と混ぜてパンやうどん、餅や団子、菓子、調味料と合わせてドレッシングやたれとすることもできる可能性の広い食材である。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明により、従来の大豆を納豆菌を用いて発酵して製造する納豆の有する機能成分であるナットウキナーゼ及びビタミンKを含有し、しかも、従来の納豆の有する特有の粘りや臭いを軽減し、安価な原材料であるコーンを使用した、誰でもが食しやすいコーン発酵物及びその製造方法を提供できる。これにより、南アフリカのパップ、ジンバブエのサザ、ザンビアのシマ、中南米のタマーレ等において主食とするコーンの粉に、血栓溶解活性やビタミンKという機能性を付加することができるため、本発明により生産したコーン発酵物は世界中に流通する可能性がある。