【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例として、さば加工品の例を説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
<実施例1.しめさばのたて塩漬け>
下記の手順にて製造する。
(1−1) 食塩と粉末水飴を1対1の割合で混合し、混合食用粉末とする。
(1−2) 混合食用粉末を平らに広げ、その上にキッチンペーパー(大王製紙(株)製 エリエール超吸収(登録商標))を広げる。
(1−3) 広げたキッチンペーパーの上半分に、さばフィレを載せる。このとき、肉面を下、皮面を上にして載せる。
【0040】
(1−4) キッチンペーパーの下半分を折りたたむようにして、さばフィレの皮面に張り付ける。さばフィレは乾燥しておらず、全体に水気を有する(濡れがある)ため、キッチンペーパーはさばフィレの皮面に接触させて軽く押さえるだけで、容易に張り付く。そして、さばフィレの皮面からの水分がキッチンペーパーへと浸透し、表側まで到達し、表側も水気を有する(濡れた)状態となる。
【0041】
(1−5) キッチンペーパーに挟んだまま、さばフィレを裏返しにして、広げた混合食用粉末上に置く。上述の通り、皮面に張り付いたキッチンペーパーには皮面からの水分が浸透し、それがキッチンペーパーの表側まで到達するため、表側も水気を有する(濡れた)状態となっている。この状態で混合食用粉末上に置かれるため、キッチンペーパーの表側には混合食用粉末が吸着される。吸着された混合食用粉末は、キッチンペーパー上の水分に溶けて濃厚溶液の状態となってキッチンペーパー内に浸透し、さばフィレ皮面に接する側に到達し、さばフィレ皮面に浸透する。このようにして、「皮面に混合食用粉末が付けられる」という状態が形成される。
【0042】
なお、(3)記載の通り、さばフィレの肉面は下に向けて広げられたキッチンペーパーの上に置かれるが、肉面も当然ながら水気を有する(濡れがある)ため、肉面からの水分が下に敷かれたキッチンペーパーへと浸透し、ペーパーの裏側(下側)まで到達し、下側も水気を有する(濡れた)状態となる。そして、この状態で混合食用粉末上に置かれているため、キッチンペーパーの下側には混合食用粉末が吸着される。吸着された混合食用粉末は、キッチンペーパー上の水分に溶けて濃厚溶液の状態となってキッチンペーパー内に浸透し、さばフィレ肉面に接する側に到達し、さばフィレ肉面に浸透する。このようにして、「肉面に混合食用粉末が付けられる」という状態が形成される。
【0043】
(1−6) このようにして、さばフィレの両面に「混合食用粉末が付けられる」という状態が形成され終わったら、すなわちこれは調味処理体であるが、これを別容器に移す。複数のさばフィレを収容しても、もちろんよい。複数収容する場合は、並べればよい。
(1−2)〜(1−6)の作業は、初心者であっても数秒間で行うことが可能である。
(1−7) 調味処理体の表面が乾かないように、乾燥防止可能なシートあるいはフィルムで調味処理体を覆う。プラスチック製のシート、あるいはラップ等で十分である。
(1−8) 1晩、そのままの状態で保存する。なお、温度管理は特に必要ない。つまり冷蔵は不要であり、室温での保存でもよい。なおまた、保存時間は適宜に短縮・延長し得る。
【0044】
(1−9) 調味処理体を被覆している乾燥防止可能なシート等を除去し、キッチンペーパーを剥がして、さばフィレをそのまま調味酢に漬け込む。なお、調味酢につける時間は、たとえば1〜4時間であるが、任意である。
(1−10) 調味酢からさばフィレを取り出し、水切りをした後、皮を剥いで、しめさば製品とする。
完成したしめさばは、本来のしめさばの香味が職人の技量を全く要することなく再現されていた。つまり、従来の大量生産しめさばとは異なり、本来の味を損なうことなく、より旨みが引き立った優れたものだった。
【0045】
以上の手順はしめさば製造方法であるが、塩による材料の処理方法として、下記のとおり、動物性材料・植物性材料・菌類材料に亘る加工食品全般に適用可能なものとして一般化できる。
(1a) 食塩あるいはその他の塩と、粉末水飴とを少なくとも含む、混合食用粉末を調製する。
(1b) 混合食用粉末を広げ、その上にキッチンペーパー等の吸水性媒体を広げる。
(1c) 広げた吸水性媒体に、材料を載せる。
(1d) 吸水性媒体の一部を折って、材料のオモテ面に張り付ける。
(1e) 吸水性媒体に挟んだまま、材料を裏返しにして、広げた混合食用粉末上に置く。
【0046】
(1f) このようにして得られた調味処理体の表面が乾かないよう、乾燥防止可能なシートあるいはフィルムで調味処理体を覆う。
(1g) その状態で所定の時間、保存する。
(1h) 乾燥防止可能なシート等を除去し、吸水性媒体を剥がすか、または付けたままで、加工食品の完成とするか、または後処理過程に供する。
(1i) なお、後処理過程の一例としては、酢漬けがある。
【0047】
<実施例2.焼きさばの下味漬け>
下記の手順にて製造する。
(2−1) 食塩、粉末水飴、化学調味料、ブラックペッパー粉末、ホワイトペッパー粉末、にんにく粉末をブレンドし、混合食用粉末とする。
(2−2) しめさばの工程(1−2)〜(1−8)と同じ作業を行う。
(2−3) ジェットオーブンにて焼く。たとえば、260℃で6分15秒を目安とすることができるが、これに限定されず、焙焼の方法も含め、適宜の条件にて可能である。
【0048】
完成した焼きさばは、さば本来の味を損なうことなく、旨みが引き立った優れたものだった。なお、粉末水飴の作用でメイラード反応(糖アミノ反応)が起こり、表面の焦げ目が好ましい呈色の黄金色になる。従来の焼きさば製法では通常、さばの表面にキシロースを塗布し、この反応を起こさせている。しかし本発明では、添加物としてのキシロースを必要としない、という利点がある。
【0049】
以上の手順は焼きさば製造方法であるが、焙焼処理による加工食品製造方法として、下記のとおり、動物性材料・植物性材料・菌類材料に亘る加工食品全般に適用可能なものとして一般化できる。
(2a) 食塩あるいはその他の塩、粉末水飴、および一または二種類以上の調味用食用粉末をブレンドし、混合食用粉末とする。
(2b) 塩による材料の処理方法の工程(1b)〜(1h)と同じ作業を行う。
(2c) 後処理過程として、焙焼処理を行う。
【0050】
<実施例3.さばの燻製>
下記の手順にて製造する。
(3−1) 焼きさば用に使用した混合食用粉末に燻製製剤の粉末を添加してブレンドする。たとえば、元の混合食用粉末に対して5%程度の添加量であるが、これに限定されない。
(3−2) さば表面の除菌のため、数秒間の酢洗いを行う。
(3−3) しめさばの工程(1b)〜(1h)と同じ作業を行う。
(3−4) さば表面の皮を炙る。これにより、燻製らしい外観と香味が加わり、製品が完成する。完成したさばの燻製は、さば本来の味を損なうことなく、燻製の香味と旨みが引き立った優れたものだった。
【0051】
以上の手順はさば燻製製造方法であるが、焙焼処理による燻製食品製造方法として、下記のとおり、動物性材料・植物性材料・菌類材料に亘る加工食品全般に適用可能なものとして一般化できる。
(3a) 食塩あるいはその他の塩、粉末水飴、および燻製製剤の粉末を少なくとも用いてこれらをブレンドし、混合食用粉末とする。なお、さらに一または二種類以上の別の調味用食用粉末を加えてもよい。
(3b) 必要な場合は、除菌のため、酢洗いを行う。
(3c) 塩による材料の処理方法の工程(1b)〜(1h)と同じ作業を行う。
(3d) 後処理過程として、焙焼処理を行う。
【0052】
<実施例4.生風味さば(刺身風さば)>
下記の手順にて製造する。
(4−1) しめさばで使用した混合食用粉末に昆布粉末を添加し、ブレンドする。たとえば、元の混合食用粉末に対して5%程度の添加量であるが、これに限定されない。
(4−2) さば表面の除菌のため、数秒間の酢洗いを行う。
(4−3) しめさばの工程1b)〜(1h)と同じ作業を行う。
(4−4) 皮を剥いて、生食可能の刺身風さばとする。
完成した刺身風さばは、さば本来の味を損なうことなく、刺身のような食感と旨みが引き立った優れたものだった。
【0053】
以上の手順は生風味さば(刺身風さば)製造方法であるが、生食食品製造方法として、下記のとおり、動物性材料・植物性材料・菌類材料に亘る加工食品全般に適用可能なものとして一般化できる。
(4a) 食塩あるいはその他の塩、粉末水飴、および昆布粉末を少なくとも用いてこれらをブレンドし、混合食用粉末とする。なお、さらに一または二種類以上の別の調味用食用粉末を加えてもよい。
(4b) 必要な場合は、除菌のため、酢洗いを行う。
(4c) 塩による材料の処理方法の工程(1b)〜(1h)と同じ作業を行う。
(4−4) 必要な場合は皮を剥くなどの後処理過程をする。