は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選択される基を示す。)で示されるN置換ヒドロキシルアミン化合物と、を含有し、前記N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量が、前記フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部である重合禁止剤組成物。
前記N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量が、前記フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.4〜50質量部である請求項1に記載の重合禁止剤組成物。
前記N置換ヒドロキシルアミン化合物が、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、又はN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンである請求項1〜6のいずれか一項に記載の重合禁止剤組成物。
前記N置換ヒドロキシルアミン化合物を、前記フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.4〜50質量部添加する請求項8に記載の重合禁止剤の着色防止方法。
前記N置換ヒドロキシルアミン化合物が、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、又はN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンである請求項8〜13のいずれか一項に記載の重合禁止剤の着色防止方法。
請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合禁止剤組成物を、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物に添加する、材料組成物の着色防止方法。
前記重合性単量体が、アクリル酸、若しくはアクリル酸のエステル、又はメタクリル酸、若しくはメタクリル酸のエステルである請求項17に記載の材料組成物の着色防止方法。
【背景技術】
【0002】
重合性単量体の保管安定性を目的として添加される重合禁止剤(重合抑制剤とも言う。)、或いは酸化防止剤としてハイドロキノン、メトキシフェノール等のフェノール系化合物、フェノチアジン等のアミン系化合物が広く用いられている。しかし、重合禁止剤、或いは酸化防止剤は、その効果を発現する際に着色を伴う場合が多い。この着色が、重合性単量体の着色をしばしば引き起こす。
【0003】
そして、このような重合性単量体の着色は、その重合性単量体を用いて製造される最終製品の用途によっては支障をもたらすことがある。例えば、車両用透明部材、透明シート用部材では、着色されると光の透過性が低下するため好ましくない。また、光学機器部材であるレンズ、プリズム、光ディスク、シート等は、色相安定性を要するため、着色による色相変化は好ましくない。同様に、半導体用部材、電子材料、粘着剤、接着剤、高吸水性樹脂、インク、塗料、樹脂、繊維の改質剤などの原材料についても、その使途によっては透明、或いは白色であることを必要とすることがある。
【0004】
このため、重合性単量体の着色を防止することができる重合禁止剤組成物、及び重合禁止剤の着色防止方法の開発が要望されている。
【0005】
また、近年、各種分野において毒性の低い材料を使用するという要求が高まっている。例えば、α−トコフェロールは、天然物由来の酸化防止機能、重合禁止機能を有することから、今後、広範な用途が期待される。
【0006】
しかしながら、α−トコフェロールは、その使用環境によって変色(以下、「変色」も含めて「着色」と記載する。)を起こす場合がある。特にα−トコフェロールが配合される素材が淡色である場合、着色したα−トコフェロールの色によって、製造された素材が着色される。そのため、素材の用途によっては、このような着色を防止することが要求され、改善が望まれている。
【0007】
このようなα−トコフェロールの着色防止方法としては、例えば、ホスファイトを添加する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、α−トコフェロールを精製することにより、着色の原因となる成分を除去する方法も開示されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0009】
さらに、α−トコフェロールの着色を抑えるために、α−トコフェロールにシロキサン化合物を配合する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
また、α−トコフェロールの着色を防止するために、アリールホスフィン化合物、シラザン化合物、及びシラノール化合物から選択される化合物を配合してなる組成物が開示されている(例えば、特許文献6参照)。この組成物は、短期的にはかなりの着色防止効果を得ることができる。
【0011】
さらに、フェノール、クレゾール等のフェノール類の脱色、着色防止法として、一価のフェノール類にジエチルヒドロキシルアミン、又はその塩を添加することが開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたものである。その課題とするところは、長期間にわたって着色が防止される、重合禁止剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤と、所定のN置換ヒドロキシルアミン化合物と、を含有し、N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量が、重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部であることによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明によれば、以下に示す重合禁止剤組成物、重合禁止剤の着色防止方法、材料組成物、及び材料組成物の着色防止方法が提供される。
【0020】
[1]フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤と、一般式:R
1R
2N−OH(但し、R
1、R
2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選択される基を示す。)で示されるN置換ヒドロキシルアミン化合物と、を含有し、前記N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量が、前記フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部である重合禁止剤組成物。
【0021】
[2]前記N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量が、前記フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.4〜50質量部である前記[1]に記載の重合禁止剤組成物。
【0022】
[3]前記フェノール系重合禁止剤が、二価フェノール化合物である前記[1]または[2]に記載の重合禁止剤組成物。
【0023】
[4]前記二価フェノール化合物が、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、又はα−トコフェロールである前記[3]に記載の重合禁止剤組成物。
【0024】
[5]前記二価フェノール化合物が、α−トコフェロールである前記[3]または[4]に記載の重合禁止剤組成物。
【0025】
[6]前記アミン系重合禁止剤が、フェノチアジンである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の重合禁止剤組成物。
【0026】
[7]前記N置換ヒドロキシルアミン化合物が、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、又はN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の重合禁止剤組成物。
【0027】
[8]フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤に、前記フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部の一般式:R
1R
2N−OH(但し、R
1、R
2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選択される基を示す。)で示されるN置換ヒドロキシルアミン化合物を添加して前記フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤の着色を防止する重合禁止剤の着色防止方法。
【0028】
[9]前記N置換ヒドロキシルアミン化合物を、前記フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.4〜50質量部添加する前記[8]に記載の重合禁止剤の着色防止方法。
【0029】
[10]前記フェノール系重合禁止剤が、二価フェノール化合物である前記[8]または[9]に記載の重合禁止剤の着色防止方法。
【0030】
[11]前記二価フェノール化合物が、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、又はα−トコフェロールである前記[10]に記載の重合禁止剤の着色防止方法。
【0031】
[12]前記二価フェノール化合物が、α−トコフェロールである前記[10]または[11]に記載の重合禁止剤の着色防止方法。
【0032】
[13]前記アミン系重合禁止剤が、フェノチアジンである前記[8]〜[12]のいずれかに記載の重合禁止剤の着色防止方法。
【0033】
[14]前記N置換ヒドロキシルアミン化合物が、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、又はN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンである前記[8]〜[13]のいずれかに記載の重合禁止剤の着色防止方法。
【0034】
[15]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の重合禁止剤組成物と、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物と、を含有する材料組成物。
【0035】
[16]前記重合性単量体が、アクリル酸、若しくはアクリル酸のエステル、又はメタクリル酸、若しくはメタクリル酸のエステルである前記[15]に記載の材料組成物。
【0036】
[17]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の重合禁止剤組成物を、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物に添加する、材料組成物の着色防止方法。
【0037】
[18]前記重合性単量体が、アクリル酸、若しくはアクリル酸のエステル、又はメタクリル酸、若しくはメタクリル酸のエステルである前記[17]に記載の材料組成物の着色防止方法。
【発明の効果】
【0038】
本発明の重合禁止剤組成物は、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤と、所定のN置換ヒドロキシルアミン化合物を所定量で含有するため、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤の着色を長期間にわたって安定して防止することができる。
【0039】
本発明の重合禁止剤の着色防止方法は、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤と、所定のN置換ヒドロキシルアミン化合物を所定量で含有するため、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤の着色を長期間にわたり安定して防止することができる。
【0040】
本発明の材料組成物は、本発明の重合禁止剤組成物と、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物を所定量で含有するため、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物の着色を長期間にわたって安定して防止することができる。
【0041】
本発明の材料組成物の着色防止方法は、本発明の重合禁止剤組成物と、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物を所定量で含有するため、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物の着色を長期間にわたり安定して防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0044】
[1]重合禁止剤組成物:
本発明の重合禁止剤組成物は、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤と、一般式:R
1R
2N−OHで示されるN置換ヒドロキシルアミン化合物と、を含有するものである。但し、上記一般式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選択される基を示す。また、N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量は、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部である。
【0045】
このような重合禁止剤、特にフェノール系重合禁止剤がα−トコフェロールであるα−トコフェロールを含有する重合禁止剤組成物は、所定のN置換ヒドロキシルアミン化合物を所定量で含有するため、長期間にわたって着色が防止される。この理由は、N置換ヒドロキシルアミン化合物が重合禁止剤(特にα−トコフェロール)の酸化による着色を防止しつつ、例えば使用環境によって着色が進行(促進)することを防止するためであると考えられる。
【0046】
[1−1]フェノール系重合禁止剤:
本発明の重合禁止剤組成物に含有されるフェノール系重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、α−トコフェロール、2,6−ジ−ターシャリブチルフェノール(以下、ターシャリブチルをt−ブチルと略記する。)、2,6−ジ−t−ブチル−4−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0047】
また、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールジエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールジエステル等が挙げられる。
【0048】
更に、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−4−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル―オキシエチル}イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6―ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル―ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)等が挙げられる。
【0049】
また、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5―トリアジン、2,2’−チオ−{ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等が挙げられる。
【0050】
フェノール系重合禁止剤は、二価フェノール化合物が、一価のフェノール化合物よりも重合禁止機能に優れるため、特に好ましい。このような二価フェノール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、α−トコフェロール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0051】
これらのフェノール系重合禁止剤の中でも、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、α−トコフェロールが好ましく、特に、α−トコフェロールは、N置換ヒドロキシルアミン化合物と組合せることにより、重合禁止剤組成物に優れた着色防止機能を与えることができる。
【0052】
このα−トコフェロールとしては、ラセミ化合物を用いても良く、光学異性体の一種のみを用いても良い。
【0053】
また、α−トコフェロールは、市販品をそのまま用いても良い。但し、着色を防止するという観点からは、従来公知の方法で精製を行ったα−トコフェロールが好ましい。本発明の重合禁止剤組成物において、精製を行ったα−トコフェロールを用いれば、より一層、着色し難い。
【0054】
[1−2]アミン系重合禁止剤:
本発明の重合禁止剤組成物に含有されるアミン系重合禁止剤としては、例えば、1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン等のナフチルアミン系重合禁止剤;N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジオクチル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系重合禁止剤;ジフェニルアミン、p,p’−ジ−n−ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジ−t−ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジ−t−ペンチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、p,p’−ジノニルジフェニルアミン、p,p’−ジデシルジフェニルアミン、p,p’−ジドデシルジフェニルアミン、p,p’−ジスチリルジフェニルアミン、p,p’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチルベンゾイル)ジフェニルアミン、p−イソプロポキシジフェニルアミン等のジフェニルアミン系重合禁止剤;フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン等のフェノチアジン系重合禁止剤等が挙げられる。
【0055】
本発明においては、N置換ヒドロキシルアミン化合物との組合せから、フェノチアジンが特に好ましく、着色し難い重合禁止剤組成物を得ることができる。なお、このアミン系重合禁止剤は、窒素原子に結合する水酸基を有していないものであり、N置換ヒドロキシルアミン化合物とは、明確に区別される。
【0056】
[1−3]N置換ヒドロキシルアミン化合物:
N置換ヒドロキシルアミン化合物は、一般式:R
1R
2N−OHで示される化合物であり、つまり、窒素原子に結合した2個の水素原子が置換基で置換されたヒドロキシルアミン化合物である。
【0057】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。炭素原子数が1〜10のアルキル基が好ましい。工業上の入手の容易さ等から、炭素原子数が1〜5の低級アルキル基がより好ましい。
【0058】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。炭素原子数が1〜10のアルコキシ基が好ましい。炭素原子数が1〜5の低級アルコキシ基がより好ましい。
【0059】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等を挙げることができ、また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
【0060】
上記N置換ヒドロキシルアミン化合物としては、具体的には、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジプロピルヒドロキシルアミン、N,N−ジブチルヒドロキシルアミン、N,N−メチルエチルヒドロキシルアミン、N,N−エチルプロピルヒドロキシルアミン、N,N−プロピルブチルヒドロキシルアミン、N,N−ジデシルヒドロキシルアミン、N,N−ジフェニルヒドロキシルアミン、及びN,N−ジベンジルヒドロキシルアミン等を挙げることができる。これらの内でも、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミンが好適に使用される。N置換ヒドロキシルアミン化合物が、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、又はN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンであると、優れた着色防止効果が得られる。
【0061】
N置換ヒドロキシルアミン化合物は、付加塩であってもよく、付加塩を構成する化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸等の有機酸を挙げることができる。
【0062】
重合禁止剤組成物がN置換ヒドロキシルアミン化合物を所定量で含有していると、製造時には着色していたとしても、α−トコフェロール(即ち、α−トコフェロール溶液)の色を着色前の色に戻すこと(即ち、着色の程度を低減する)ができる。つまり、本発明の重合禁止剤組成物は、N置換ヒドロキシルアミン化合物を含有することにより、長期間にわたって着色が防止されるだけでなく、長期間の保管中に着色が減退するというものである。この理由は、N置換ヒドロキシルアミン化合物が還元作用を有するためであると考えられる。ここで、市販のα−トコフェロール(α−トコフェロール溶液)は、既に着色してしまっていることが多い。そのため、既に着色してしまっている市販のα−トコフェロールを、使用すると商品的価値が劣るため、その使用が回避されている。しかし、本発明の重合禁止剤組成物は、市販のα−トコフェロールを用いる場合であっても、その保管中に着色の程度を低減させることができる。
【0063】
保管中における着色の程度の低減は、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール等のフェノール系重合禁止剤、フェノチアジン等のアミン系重合禁止剤についても同様に達成することができる。
【0064】
N置換ヒドロキシルアミン化合物は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、ヨウ化エチルによりヒドロキシルアミンをエチル化する方法、塩化ベンジルと塩酸ヒドロキシルアミンを反応させる方法等により製造することができる。
【0065】
[1−4]N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量:
N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量は、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部であり、0.3〜70質量部であることが好ましく、0.4〜50であることが更に好ましい。N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量がこの範囲にあることで、重合禁止剤、特にα−トコフェロールの着色を長期間にわたって防止できる。
【0066】
N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量が0.2質量部未満では、着色を防止する効果が十分に得られない。N置換ヒドロキシルアミン化合物の含有量が100質量部超では、多量に含有させることによる顕著な着色防止効果が得られ難い。そればかりか、重合禁止剤組成物中にN置換ヒドロキシルアミン化合物が多量に含有することから、そのような多量にN置換ヒドロキシルアミン化合物を含有する重合禁止剤組成物は、その用途によっては好ましくなく、使用分野が制限される。
【0067】
[1−5]その他の成分:
本発明の重合禁止剤組成物には、着色防止効果を損なわない範囲でその他の成分を含有させても良い。その他の成分としては、公知の着色防止剤や有機溶剤等を挙げることができる。
【0068】
[1−5−1]着色防止剤:
着色防止剤としては、例えば、モノシクロへキシルジフェニルホスフィン、モノプロピルジフェニルホスフィン、モノブチルジフェニルホスフィン等のモノアリールホスフィン化合物、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリキシリルホスフィン、トリナフチルホスフィン等のトリアリールホスフィン化合物、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,1,3,3,3−へキサメチルジシラザン、ジブチルテトラメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン等のシラザン化合物、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール等のシラノール化合物、2,2,6,6−テトラメチル−2,6−ジシラピペリジン、2,2,5,5−テトラメチル−2,5−ジシラピロリジン等を挙げることができる。
【0069】
[1−5−2]有機溶剤:
有機溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤等を例示することができる。
【0070】
[1−6]重合禁止剤組成物の調製:
本発明の重合禁止剤組成物は、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤に、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部の上記一般式で示されるN置換ヒドロキシルアミン化合物を加え、さらに必要に応じてその他の成分の任意量を加え、その後、均一に混合することにより容易に調製することができる。
【0071】
[2]重合禁止剤の着色防止方法:
本発明の重合禁止剤の着色防止方法は、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤に、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部の一般式:R
1R
2N−OHで示されるN置換ヒドロキシルアミン化合物を添加する方法である。但し、上記一般式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選択される基を示す。
【0072】
このような方法により、長期間にわたって保管しても重合禁止剤、特にα−トコフェロールの着色を良好に防止することができる。即ち、本発明の重合禁止剤、特にα−トコフェロールの着色防止方法は、所定のN置換ヒドロキシルアミン化合物を所定量で添加するため、重合禁止剤、特にα−トコフェロールの着色を長期間にわたり安定して防止することができる。
【0073】
[2−1]フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤:
このフェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤の着色を防止する重合禁止剤の着色防止方法において使用することができるフェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤としては、重合禁止剤組成物において説明したものと同様のフェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤を使用することができる。
【0074】
[2−2]N置換ヒドロキシルアミン化合物:
N置換ヒドロキシルアミン化合物としては、重合禁止剤組成物において説明したものと同様のN置換ヒドロキシルアミン化合物を使用することができる。これらのN置換ヒドロキシルアミン化合物の中でも、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミンが好ましい。
【0075】
さらに、所定のN置換ヒドロキシルアミン化合物の中でも、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミンを用いることにより、既に着色してしまった重合禁止剤、特にα−トコフェロール(即ち、α−トコフェロール溶液)の色を着色前の色に戻すこと(即ち、着色の程度を低減させること)ができる。この理由は、酸化による着色を防止しつつ、着色を促進してしまうような作用が小さいためであると考えられる。ここで、市販のα−トコフェロールは、既に着色してしまっていることが多い。従って、本発明によれば、市販のα−トコフェロールを用いる場合であっても着色の程度を低減させることができるという利点がある。つまり、本発明のα−トコフェロールの着色防止方法によれば、着色してしまった市販のα−トコフェロールの着色の程度を低減させることもできる。
【0076】
保管中における着色の程度の低減は、重合禁止剤組成物と同様に、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール等のフェノール系重合禁止剤、フェノチアジン等のアミン系重合禁止剤についても同様に達成することができる。
【0077】
[2−3]N置換ヒドロキシルアミン化合物の添加量:
N置換ヒドロキシルアミン化合物の添加量は、フェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤100質量部に対して、0.2〜100質量部であり、0.3〜70質量部であることが好ましく、0.4〜50質量部であることが更に好ましい。N置換ヒドロキシルアミン化合物の添加量がこの範囲にあることで、例えば、空気による酸化等に起因する重合禁止剤、特に重合禁止剤としてのα−トコフェロールの着色を防止できる。また、着色した重合禁止剤、特にα−トコフェロールの色を着色前の色に戻すことができる。つまり、既に着色してしまった重合禁止剤、特にα−トコフェロール(α−トコフェロール溶液)の色を着色前の色に戻すこと(即ち、着色を低減させること)ができる。しかも、重合禁止剤、特にα−トコフェロールの重合禁止機能、及び酸化防止機能は維持される。
【0078】
重合禁止剤、特にα−トコフェロール100質量部に対して、N置換ヒドロキシルアミン化合物の添加量を、0.2質量部以上とすると、重合禁止剤、特にα−トコフェロールが着色していたとしても、重合禁止剤、特にα−トコフェロール(即ち、α−トコフェロール溶液)の色を着色前の色に戻すこと(即ち、着色の程度を低減する)ができる。
【0079】
N置換ヒドロキシルアミン化合物の添加量が0.2質量部未満では、着色を防止する効果が十分に得られない。N置換ヒドロキシルアミン化合物の添加量が100質量部超では、多量に添加することによるきわだった着色防止効果が得られない。そればかりか、重合禁止剤中にN置換ヒドロキシルアミン化合物が多量に含有することから、そのような多量にN置換ヒドロキシルアミン化合物を添加する重合禁止剤組成物は、その用途によっては好ましくなく、使用分野が制限される。
【0080】
[2−4]その他の成分:
このフェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤の着色を防止する重合禁止剤の着色防止方法においても、重合禁止剤組成物と同様に、本発明の目的を阻害しない限り、必要に応じてその他の成分を配合しても良い。その他の成分としては、重合禁止剤組成物において説明したものと同じものを使用することができる。また、着色防止剤、有機溶剤も使用することができ、その他の成分と同様に、重合禁止剤組成物において説明したものと同じものを使用することができる。
【0081】
[3]材料組成物:
本発明の材料組成物は、前記した重合禁止剤組成物と、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物と、を含有するものである。この重合禁止剤組成物は、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合性単量体の重合物の重合を有効に防止することができる。しかも、N置換ヒドロキシルアミン化合物が重合禁止剤、特にα−トコフェロールの酸化による着色を防止しつつ、着色を促進してしまうような作用が小さいので、材料組成物の着色を防止することができる。
【0082】
[3−1]重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合物:
重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合物を構成する単量体としては、特に限定されるものではなく、重合物製品に応じて適宣選択することができる。重合性単量体は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、及び酢酸ビニル等からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0083】
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0084】
重合性単量体の部分重合物、若しくは重合物としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、上記重合性単量体が1種類、若しくは2種類以上が、(共)重合した部分重合物、又は重合物がある。
【0085】
なお、本明細書にいう重合物とは、重合性単量体を重合させて得られた重合物そのものに加えて、例えば、ゴム材料のように、得られた重合物を架橋させた架橋生成物のような、得られた重合物に製品の用途に応じて所定の処理を施したものや天然物も含むものである。架橋生成物として、具体的には、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。また、天然物として、具体的には、天然ゴム等が挙げられる。
【0086】
重合禁止剤組成物の含有量は、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合物100質量部に対して、0.0001〜20質量部であることが好ましく、0.001〜10質量部であることが更に好ましく、0.01〜5質量部であることが特に好ましい。重合禁止剤組成物の含有量が0.0001質量部未満であると、重合禁止機能や酸化防止機能の効果が不十分になる場合がある。一方、重合禁止剤組成物の含有量が20質量部超であると、過剰に使用することになり、経済上好ましくない場合がある。
【0087】
[4]材料組成物の着色防止方法:
本発明の材料組成物の着色防止方法は、「[1]重合禁止剤組成物」に記載のフェノール系重合禁止剤、又はアミン系重合禁止剤と、一般式:R
1R
2N−OHで示されるN置換ヒドロキシルアミン化合物と、を含有する重合禁止剤組成物を、「[3−1]重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合物」に記載の重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合物に添加する材料組成物の着色防止方法である。この着色防止方法によれば、重合禁止剤組成物が、所定のN置換ヒドロキシルアミン化合物を所定量で含有し、重合禁止剤、特にα−トコフェロールの着色を長期間にわたり安定して防止することができることから、重合性単量体、又は重合性単量体の部分重合物、若しくは重合物の着色を有効に防止することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」、及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0089】
(実施例1:NOx試験)
まず、α−トコフェロール100部とN,N−ジエチルヒドロキシルアミン(以下の記載、及び各表において、「DEHA」と略記する)11.1部(α−トコフェロールに対するDEHAの含有量10%)とをスクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用いて混合した。このようにして、α−トコフェロールとDEHAを均一に混合し溶解液を調製した。この溶解液について、「NOx試験」を下記のようにして行った。
【0090】
NOx試験は、α−トコフェロールの酸化やNOx着色に対する色相の堅ろう性を見るための促進試験である。
【0091】
まず、溶解液について、JIS K 0071−2(化学製品の色試験方法)に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた(表1において、「NOx処理前のガードナー色数」と記載する。)。本実施例において、NOx処理前のガードナー色数は、表1に示すように「1」であった。
【0092】
また、上記溶解液を10g計量し、バイアル瓶(30ml)に入れ、ゴムキャップとアルミホルダーで密栓した。つぎに、JIS L 0855(酸化窒素ガスに対する染色堅ろう度試験方法)に準じ、酸化窒素ガス発生装置で発生させたNOxガスを、シリンジを使って2ml採取し、上記溶解液を入れたバイアル瓶に注入し、よく振ってNOxガスと溶解液を混合した。混合後、室温にて1時間放置し、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた(表1において、「NOx処理後のガードナー色数」と記載する。)。NOx処理後のガードナー色数は、表1に示すように「1」であった。このように、NOx処理前後のガードナー色数は同じであり、上記処理による着色は見られなかった。
【0093】
【表1】
【0094】
(実施例2〜4:NOx試験)
α−トコフェロールとDEHAを、表1に示すような量としたほかは、実施例1と同様にして溶解液を調製した。これらの溶解液について、実施例1と同様にして、NOx処理前、及びNOx処理後のガードナー色数を求めた。結果を表1に示した。
【0095】
(比較例1:NOx試験)
α−トコフェロール100部のみの、NOx処理前、及びNOx処理後のガードナー色数を実施例1と同様にして求めた。結果を表1に示した。
【0096】
(比較例2〜4:NOx試験)
α−トコフェロールとγ−ブチロラクトン(以下の記載、及び各表において、「GBL」と略記する。)を、表1に示すような量としたほかは、実施例1と同様にして溶解液を調製した。これらの溶解液について、実施例1と同様にして、NOx処理前、及びNOx処理後のガードナー色数を求めた。結果を表1に示した。α−トコフェロールは、溶剤で希釈されると、その希釈濃度により色調が変化する。このことは、着色防止剤を含有することで、溶液の濃度が低下することから、着色防止剤の効果をみるために、GBL(不活性な溶剤)を使用し、α−トコフェロールの濃度を変化させ、NOx処理前、及びNOx処理後のガードナー色数を求めた。
【0097】
(比較例5:NOx試験)
α−トコフェロールとDEHAを、表1に示すような量としたほかは、実施例1と同様にして溶解液を調製した(α−トコフェロールに対するDEHAの含有量0.01%)。この溶解液について、実施例1と同様にして、NOx処理前、及びNOx処理後のガードナー色数を求めた。結果を表1に示した。
【0098】
表1から、NOx試験においては、DEHAの含有量を一定の範囲とすることで、α−トコフェロールの着色を確実に防止できることがわかる(実施例1〜4)。一方、GBLで希釈した同濃度のα−トコフェロール溶液は、DEHAを含有したα−トコフェロール溶液と比較して着色が進行していることがわかる(比較例2〜4)。さらに、DEHAの含有量が所定量よりも少ない場合には、着色を防止する効果が得られないことがわかる(比較例5)。
【0099】
(実施例5:室温試験)
まず、α−トコフェロール100部とDEHA11.1部(α−トコフェロールに対するDEHAの含有量10%)とをスクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用いて混合した。このようにして、α−トコフェロールとDEHAを均一に混合し溶解液を調製した。
【0100】
この溶解直後の溶解液について、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。溶解直後の溶解液のガードナー色数は「2」であった。この溶解液を室温(25℃)で保管した。保管開始から1日経過後、2日経過後、3日経過後、1週間経過後、2週間経過後、3週間経過後、4週間経過後の各溶解液について、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。それらの結果を表2、及び
図1に示した。
【0101】
【表2】
【0102】
(実施例6〜8:室温試験)
DEHAの配合量を、表2に示すような量としたほかは、実施例5と同様にして溶解液を調製した。これらの溶解液について、実施例5と同様にして、室温(25℃)で保管した場合のガードナー色数を求めた。それらの結果を表2、及び
図1に示した。
【0103】
(比較例6:室温試験)
α−トコフェロール100部のみを、室温(25℃)で保管した場合のガードナー色数を実施例5と同様にして求めた。その結果を表2、及び
図1に示した。
【0104】
(比較例7、8:室温試験)
GBLの配合量を、表2に示すような量としたほかは、実施例5と同様にして溶解液を調製した。これらの溶解液について、実施例5と同様にして、室温(25℃)で保管した場合のガードナー色数を求めた。それらの結果を表2、及び
図1に示した。
【0105】
表2、及び
図1から、本発明の重合禁止剤組成物は、室温(25℃)で長期間保管をしても安定した着色防止効果を有することがわかる(実施例5〜8)。一方、GBL(不活性な溶剤)で希釈した同濃度のα−トコフェロール溶液は、着色を抑制する効果が得られないことがわかる(比較例7、8)。
【0106】
(実施例9:加熱試験)
まず、α−トコフェロール100部とDEHA11.1部(α−トコフェロールに対するDEHAの含有量10%)とをスクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用いて混合した。このようにして、α−トコフェロールとDEHAを均一に混合し溶解液を調製した。
【0107】
この溶解直後の溶解液について、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。溶解直後の溶解液のガードナー色数は「2」であった。この溶解液を加熱下(温度40℃)で保管した。保管開始から1日経過後、2日経過後、3日経過後、1週間経過後、2週間経過後、3週間経過後、4週間経過後の各溶解液について、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。それらの結果を表3、及び
図2に示した。
【0108】
【表3】
【0109】
(実施例10〜12:加熱試験)
DEHAの配合量を、表3に示すような量としたほかは、実施例9と同様にして溶解液を調製した。これらの溶解液について、実施例9と同様にして、加熱下(温度40℃)で保管した場合のガードナー色数を求めた。それらの結果を表3、及び
図2に示した。
【0110】
(比較例9:加熱試験)
α−トコフェロール100部のみの、加熱下(温度40℃)で保管した場合のガードナー色数を実施例9と同様にして求めた。その結果を表3、及び
図2に示した。
【0111】
(比較例10、11:加熱試験)
GBLの配合量を、表3に示すような量としたほかは、実施例9と同様にして溶解液を調製した。これらの溶解液について、実施例9と同様にして、加熱下(温度40℃)で保管した場合のガードナー色数を求めた。それらの結果を表3、及び
図2に示した。
【0112】
表3、及び
図2から、本発明の重合禁止剤組成物は、40℃での長期間保管においても、安定した着色防止効果を有することがわかる(実施例9〜12)。一方、GBLで希釈した同濃度のα−トコフェロール溶液は、α−トコフェロールの着色を長期間にわたって防止する効果が得られないことがわかる(比較例10、11)。
【0113】
(実施例13:室温試験)
まず、イオン交換水100部、ハイドロキノン1部、DEHA0.5部(ハイドロキノンに対するDEHAの含有量50%)をスクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用い、イオン交換水、ハイドロキノン、DEHAを均一に混合し溶解液を調製した。
【0114】
この溶解直後の溶解液について、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。溶解直後の溶解液のガードナー色数は「1」であった。この溶解液を室温(25℃)で保管した。保管開始から4週間経過後の溶解液について、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。その結果を表4に示した。
【0115】
【表4】
【0116】
(比較例12:室温試験)
イオン交換水100部にハイドロキノン1部を混合し溶解液を調製した。この溶解直後の溶解液について、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。溶解直後の溶解液のガードナー色数は「1」であった。この溶解液について、実施例13と同様にして、室温(25℃)で4週間保管した場合のガードナー色数を求めた。その結果を表4に示した。
【0117】
(実施例14:室温試験)
まず、テトラエチレングリコールジメチルエーテル75部、フェノチアジン25部、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミン(以下の記載、及び各表において、「DBHA」と略記する)0.1部(フェノチアジンに対するDBHAの含有量0.4%)をスクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用い、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、フェノチアジン、DBHAを均一に溶解し溶解液を調製した。
【0118】
この溶解液を室温(25℃)で保管した。保管開始から4週間経過後の溶解液について、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。その結果を表4に示した。
【0119】
(比較例13:室温試験)
フェノチアジン25部とテトラエチレングリコールジメチルエーテル75部をスクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用い、フェノチアジンとテトラエチレングリコールジメチルエーテルを均一に混合し溶解液を調製した。この溶解液について、実施例14と同様にして、室温下(25℃)で4週間保管した場合のガードナー色数を求めた。その結果を表4に示した。
【0120】
(実施例15:屋外暴露試験)
p−メトキシフェノールを含有する重合禁止剤組成物は、室温保管において着色の進行が緩やかであったため、屋外暴露による促進試験を実施した。まず、p−メトキシフェノール1部、DEHA0.5部(p−メトキシフェノールに対するDEHAの含有量50%)、GBL100部をスクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用い、p−メトキシフェノール、DEHA、GBLを均一に混合し溶解液を調製した。
【0121】
この溶解液について、1週間屋外暴露した後、JIS K 0071−2に準じ、ガードナー比色計で標準液と目視で比色しガードナー色数を求めた。その結果を表4に示した。
【0122】
(比較例14:屋外暴露試験)
p−メトキシフェノール1部とGBL100部を実施例15と同様にして混合し溶解液を調製した。この溶解液を、実施例15と同様にして、1週間屋外暴露し、1週間経過後の溶解液について、ガードナー色数を実施例15と同様にして求めた。その結果を表4に示した。
【0123】
(実施例16、17:着色低減試験)
フェノチアジン25部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル75部をスクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用い、フェノチアジンとテトラエチレングリコールジメチルエーテルを均一に混合し溶解液を調製した。これらの溶解液を室温状態で4週間保管したところ、いずれの溶解液も橙色に着色した。これらの橙色に着色した各溶解液に、DEHAを0.1部(実施例16)、又はDBHAを0.1部(実施例17)加え、スクリュー管に入れ、栓をして、超音波洗浄機を用い、橙色に着色した溶解液とDEHA、橙色に着色した溶解液とDBHAを均一に混合し溶解液を調製した。
【0124】
これらの溶解液について、室温(25℃)で1日経過後の色相の変化を調べたところ、表5に示すように、いずれも橙色から、薄黄色に変化した。実施例16、17は色相の変化が同じであったため、
図3に、実施例17の色相の変化を示した。
【0125】
【表5】
【0126】
図3において、実施例17のフェノチアジンとテトラエチレングリコールジメチルエーテルを均一に混合し溶解液を室温状態で4週間保管後の色相を示す写真を、「DBHA添加前」とし、その溶解液にN,N−ジベンジルヒドロキシルアミンを添加したフェノチアジン含有組成物の、室温(25℃)で1日経過後の色相を示す写真を、「DBHA添加後」とした。