【解決手段】一対の第1クッションユニット1Aと第2クッションユニット1Bとを備えて車両を懸架する懸架装置1であって、前記第1クッションユニットは、その反力により振動を緩衝するバネ(内側スプリング9、外側スプリング10)を有し、前記第2クッションユニットは、その内部に充填された気体と液体とを有すると共に液体の流通により減衰力を発生させる減衰力発生機構を有し、前記第2クッションユニット内の気体が圧縮されることにより生じる反力で前記第1クッションユニットにおける前記バネの反力が補填されて、前記車両を懸架することを特徴とする。
前記ピストンは、前記インナチューブの一端近傍の外周面を取り囲むように当該外周面に取付けられて前記アウタチューブの内周を摺動する円環状の外側ピストンと、前記インナチューブの一端近傍の内周面に取付けられた円板状の内側ピストンとを備え、
前記アウタチューブは、前記第2クッションユニットの伸縮時に前記インナチューブの外周面が摺動する摺動ガイド及び液体シール部材を他端近傍の内側に備え、
前記減衰力発生機構は、
前記外側ピストンと前記摺動ガイドと前記インナチューブの外周面と前記アウタチューブの内周面とで囲まれた液体流動空間と、
前記インナチューブの一端側に形成されて前記液体流動空間と前記インナチューブの内側とに連通する連通孔と、
前記内側ピストンに形成されて前記インナチューブの内側と前記アウタチューブの内側とを連通させる常時連通孔及び第1開閉孔と、前記内側ピストンに設けられて前記第1開閉孔を開閉する第1開閉弁と、
前記外側ピストンに形成されて前記アウタチューブの内側と前記液体流動空間とを連通させる第2開閉孔と、前記外側ピストンに設けられて前記第2開閉孔を開閉する第2開閉弁とを備え、
前記液体流動空間が拡大する圧縮動作時においては、前記第1開閉弁が前記第1開閉孔を閉じるように動作して前記アウタチューブの内側の液体が前記常時連通孔を介して前記インナチューブの内側に流入する際の流路抵抗によって減衰力を発生させ、かつ、前記インナチューブの内側の液体が前記液体流動空間内に流入するとともに、前記第2開閉弁が前記第2開閉孔を開くように動作して前記アウタチューブの内側の液体が当該第2開閉孔を介して前記液体流動空間内に流入し、
前記液体流動空間が縮小する伸長動作時においては、前記第2開閉弁が前記第2開閉孔を閉じるように動作して前記液体流動空間内の液体が前記インナチューブの内側に流入する際の流路抵抗によって減衰力を発生させ、かつ、前記第1開閉弁が前記第1開閉孔を開くように動作して前記インナチューブの内側の液体が前記第1開閉孔及び前記常時連通孔を介して前記アウタチューブの内側に流入するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の懸架装置。
前記アウタチューブの他端側の一端着座部は、前記外側スプリングの一端側の内周面と前記インナチューブの外周面との間に介在して前記外側スプリングの一端側の内周面と前記インナチューブの外周面との接触を防止する接触防止部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の懸架装置。
前記インナチューブ及び前記外側スプリングの外周面を覆うための外側覆筒を備え、当該外側覆筒の他端部が前記他端側取付部に着脱自在に取付けられたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の懸架装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1乃至
図4に基づいて実施形態1の懸架装置について説明する。
尚、本明細書においては、
図1乃至
図4において矢印で示した側を一端側及び他端側と定義して説明する。
【0009】
図1に示すように、懸架装置1は、一対のクッションユニットである第1クッションユニット1Aと第2クッションユニット1Bとを備えた構成である。
懸架装置1は、反力により振動を緩衝する懸架バネとしての固体バネを有した第1クッションユニット1Aと、内部に充填された気体と液体とを有すると共に液体の流通により減衰力を発生させる減衰力発生機構とを有した第2クッションユニット1Bとを備え、懸架装置1の圧縮動作時においては、第2クッションユニット1B内の空気が圧縮されることにより生じる気体ばねの反力で第1クッションユニット1Aの固体バネの反力が補填されるように構成されている。
気体バネは、第2クッションユニット1Bの内部に気体が気密状態に収容されることにより形成される。
減衰力発生機構は、第2クッションユニット1Bの内部に液体が液密状態に収容され、当該液体が第2クッションユニット1Bの内部に形成された流路を第2クッションユニット1Bの伸縮動作時に通過する際の抵抗により減衰力を発生させる構成である。
尚、例えば、気体は空気であり、液体はオイルであり、固体バネは金属やグラスファイバー等により形成される。
【0010】
即ち、懸架装置1は、圧縮動作時において、第1クッションユニット1Aの固体バネによる反力と第2クッションユニット1Bの気体バネの反力とが得られるように構成され、大きなバネ反力が必要な例えば自動二輪車用のリアクッションとして用いられる。
【0011】
図1に示すように、第1クッションユニット1Aは、円筒状に形成されたアウタチューブ2と、一端側取付部3と、円筒状に形成されたインナチューブ4と、他端側取付部5と、円筒状に形成された外側覆筒6と、アウタチューブ2の他端近傍の内側に固定された摺動ガイド7と、インナチューブ4の一端近傍の外側に固定された円環状ピストン8と、固体バネとしての内側スプリング9と、固体バネとしての外側スプリング10とが組み合わされて構成される。
【0012】
アウタチューブ2、インナチューブ4、及び、外側覆筒6は、例えば金属により形成された円筒体により構成される。筒の径の大きさの関係は、外側覆筒6>アウタチューブ2>インナチューブ4である。
【0013】
アウタチューブ2の一端開口11が密封状態に塞がれた状態となるようにアウタチューブ2の一端側が一端側取付部3に固定されるとともに、インナチューブ4の一端開口12側がアウタチューブ2の他端開口13を介してアウタチューブ2の内側に挿入されてインナチューブ4の他端開口14が塞がれた状態となるようにインナチューブ4の他端側が他端側取付部5に固定されている。
【0014】
アウタチューブ2の他端近傍の内周面2bにはアウタチューブ2の他端開口13を介して挿入されたインナチューブ4の外周面4aと摺動する摺動ガイド7が例えば加締め固定されており、アウタチューブ2の他端開口13を介してアウタチューブ2の内側に挿入されたインナチューブ4の一端開口12の近傍の外周面4bにはアウタチューブ2の内周面2aと摺動する円環状ピストン8が例えば加締め固定されている。
【0015】
アウタチューブ2は、他端近傍の内周面2b及び一端近傍の内周面2cの径寸法が、他端近傍の内周面2bと一端近傍の内周面2cとの間の内周面2aの径寸法よりも大きい寸法に形成される。そして、内周面2aと他端近傍の内周面2bとの段差面は、アウタチューブ2の中心線2Cを中心とした円環平面2dに形成される。
【0016】
図2に示すように、摺動ガイド7は、他端部の外周面の径がその他の部分の外周面の径よりも小径に形成された段付き円柱体の中央に当該段付き円柱体の中心線に沿って延長する貫通孔7cが形成された構成である。即ち、摺動ガイド7は、他端部が小外径部7aに形成され、その他の部分が大外径部7bに形成された段付き円柱体の中心に貫通孔7cを備えた構成である。
【0017】
摺動ガイド7は、大外径部7bの外周面とアウタチューブ2の他端近傍の内周面2bとが嵌まり合うように大外径部7bがアウタチューブ2の他端開口13側の内側に嵌め込まれて大外径部7bの一端面7dがアウタチューブ2の円環平面2dに載置された状態で、大外径部7bの他端面7eよりも他端側に突出するアウタチューブ2の他端開口縁部分2tが大外径部7bの他端面7eに密着するように形成されたことで、アウタチューブ2の他端近傍の内側に、アウタチューブ2と同軸状(摺動ガイド7の中心線とアウタチューブ2の中心線2Cとが一致した状態)に固定されている。
この場合、アウタチューブ2の内周面2bの他端開口縁部分2t側と大外径部7bの外周面とが密着し、かつ、アウタチューブ2の他端開口縁部分2tが大外径部7bの外周面と他端面7eとの境界縁部で折曲されて折曲された他端開口縁部分2tと大外径部7bの他端面7eとが密着するように、例えばローリング加締め機でローリング加締め加工されることによって、アウタチューブ2の他端近傍の内側に摺動ガイド7が固定される。
【0018】
図1に示すように、インナチューブ4は、一端近傍の外周面4bの径寸法が、一端近傍の外周面4bと他端近傍の外周面4cとの間の外周面4aの径寸法よりも小さい寸法に形成される。また、他端近傍の外周面4cの径寸法は、外周面4aと同等径に形成され、他端近傍の外周面4cには、後述する他端側取付部5のインナチューブ嵌合部5aの内周面に形成されたねじ部とねじ嵌合されるねじ部が形成されている。そして、外周面4aと一端近傍の外周面4bとの段差面は、インナチューブ4の中心線を中心とした円環平面4dに形成される。
【0019】
図2に示すように、円環状ピストン8は、円柱体の中央に円柱体の中心線に沿って延長する貫通孔8cが形成された構成であり、貫通孔8cの内周面の径寸法がインナチューブ4の一端近傍の外周面4bに嵌まり込む寸法に形成され、外周面8fの径寸法がアウタチューブ2の内周面2aの径寸法に対応した寸法に形成されている。
【0020】
円環状ピストン8は、貫通孔8cの内周面がインナチューブ4の一端近傍の外周面4bに嵌め込まれて他端面8eがインナチューブ4の円環平面4dに載置された状態で、一端面8dよりも一端側に突出するインナチューブ4の一端開口縁部分4tが一端面8dに密着するように形成されたことで、インナチューブ4の一端近傍の外側に、インナチューブ4と同軸状(円環状ピストン8の中心線とインナチューブ4の中心線とが一致した状態)に固定されている。
この場合、インナチューブ4の外周面4bの一端開口縁部分4t側と円環状ピストン8の内周面とが密着し、かつ、インナチューブ4の一端開口縁部分4tが円環状ピストン8の内周面と一端面8dとの境界縁部で折曲されて折曲された一端開口縁部分4tと円環状ピストン8の一端面8dとが密着するように、例えばローリング加締め機でローリング加締め加工されることによって、インナチューブ4の一端近傍の外側に円環状ピストン8が固定される。
【0021】
以上のようにして、第1クッションユニット1Aは、アウタチューブ2の一端とインナチューブ4の一端とが互いに近づく方向にアウタチューブ2とインナチューブ4とが相対的に移動する圧縮動作、及び、アウタチューブ2の一端とインナチューブ4の一端とが互いに離れる方向にアウタチューブ2とインナチューブ4とが相対的に移動する伸長動作とが可能なように構成されている。尚、伸縮動作時におけるインナチューブ4の外周面4aと摺動ガイド7との摺動性能を向上させるために、インナチューブ4の外周面4aの外周面又は摺動ガイド7の貫通孔7cの内周面にはグリスが塗布されている。また、伸縮動作時における円環状ピストン8の外周面8fとアウタチューブ2の内周面2aとの摺動性能を向上させるために、円環状ピストン8の外周面8f又はアウタチューブ2の内周面2aにはグリスが塗布されている。
【0022】
そして、
図1に示すように、内側スプリング9がアウタチューブ2の内側とインナチューブ4の内側とに跨がって配置されて内側スプリング9の一端が一端側取付部3の一端着座部3gに着座するとともに内側スプリング9の他端が他端側取付部5の第1他端着座部としての内側他端着座部5gに着座するように設置され、かつ、外側スプリング10がインナチューブ4の外周面を螺旋状に取り囲んで延長するように配置されて外側スプリング10の一端がアウタチューブ2の他端側の一端着座部2hに着座するとともに外側スプリング10の他端が他端側取付部5の第2他端着座部としての外側他端着座部5hに着座するように設置されたことによって、内側スプリング9及び外側スプリング10が圧縮される第1クッションユニット1Aの圧縮動作時においてこれら内側スプリング9及び外側スプリング10の反力が発生するように構成されている。
【0023】
外側スプリング10の一端側の内周面10aとインナチューブ4の外周面4aとの間に、アウタチューブ2の他端開口13より他端側に突出する摺動ガイド7の小外径部7aが設けられたことにより、外側スプリング10の一端側の内周面10aとインナチューブ4の外周面4aとが離間するように構成されている。即ち、外側スプリング10の一端着座部2hは、外側スプリング10の一端側の内周面10aとインナチューブ4の外周面4aとの間に介在して外側スプリング10の一端側の内周面10aとインナチューブ4の外周面4aとの接触を防止する接触防止部として機能する摺動ガイド7の他端部としての小外径部7aを備えたので、第1クッションユニット1Aの伸縮動作時のインナチューブ4の外周面4aの擦傷発生防止が図れる。
【0024】
一端側取付部3は、アウタチューブ2の一端開口11側の内周面2cに嵌合するアウタチューブ嵌合部3aと、取付対象への取付孔3bを有した取付部3cとを備え、アウタチューブ2の一端開口11側の内周面2cがアウタチューブ嵌合部3aに嵌合された状態で溶接によりアウタチューブ2の一端開口11側が一端側取付部3に固定される。
【0025】
他端側取付部5は、インナチューブ4の他端開口14側の外周面4cとねじ嵌合するインナチューブ嵌合部5aと、取付対象への取付孔5bを有した取付部5cと、外側覆筒6の他端側内周面に嵌合される外側覆筒嵌合部5dとを備え、インナチューブ4の他端開口14側の外周面4cがインナチューブ嵌合部5aにねじ嵌合されたことでインナチューブ4の他端開口14側が他端側取付部5に固定される。
【0026】
外側覆筒6は、他端側取付部5の外側覆筒嵌合部5dに取付けられる取付部6aと、取付部以外の部分であってインナチューブ4の外周面、外側スプリング10の外周面及びインナチューブ4の他端側外周面を覆う覆筒部6bとを備える。
取付部6aは、外側覆筒嵌合部5dの外周面に形成された円環状溝に係合する係合環状部6cを備える。取付部6aは、他端から外側覆筒6の中心線に沿って延長するように形成された図外の切割部を備えており、この切割部を介して取付部6aの内径が拡径するように形成されていることにより、係合環状部6cを外側覆筒嵌合部5dの円環状溝に着脱自在に係合させて取付けることができるようになっているので、外側覆筒6の取付が容易となる。
覆筒部6bの内周面の径寸法は、外側スプリング10の外周面及びインナチューブ4の外周面の径寸法よりも大きい寸法に形成されている。
このように、外側覆筒6の他端側が他端側取付部5に固定され、外側覆筒6が外側スプリング10及びインナチューブ4の外周面4aを覆うように設けられているので、外側スプリング10及びインナチューブ4の表面の擦傷発生防止が図れる。
【0027】
図1に示すように、第2クッションユニット1Bは、円筒状に形成されたアウタチューブ20と、一端側取付部30と、円筒状に形成されたインナチューブ40と、他端側取付部50と、円筒状に形成された外側覆筒60と、アウタチューブ20の他端近傍の内側に固定された摺動ガイド70と、インナチューブ40の一端近傍に固定されたピストン80と、減衰力発生機構とが組み合わされて構成される。
アウタチューブ20、インナチューブ40、及び、外側覆筒60は、例えば金属により形成された円筒体により構成される。筒の径の大きさの関係は、外側覆筒60>アウタチューブ20>インナチューブ40である。
即ち、第2クッションユニット1Bは、アウタチューブ20の一端開口21が密封されて塞がれた状態となるようにアウタチューブ20の一端側が一端側取付部30に固定されるとともに、インナチューブ40の一端開口22側がアウタチューブ20の他端開口23を介してアウタチューブ20の内側に挿入されてインナチューブ40の他端開口24が密封されて塞がれた状態となるようにインナチューブ40の他端側が他端側取付部50に固定されている。
そして、アウタチューブ20の他端近傍の内側にはアウタチューブ20の他端開口23を介して挿入されたインナチューブ40の外周面40aと摺動する摺動ガイド70及びシール部材71が設けられており、アウタチューブ20の他端開口23を介してアウタチューブ20の内側に挿入されたインナチューブ40の一端開口22の近傍にはアウタチューブ20の内周面20aと摺動するピストン80が設けられている。
【0028】
即ち、第2クッションユニット1Bは、アウタチューブ20の一端とインナチューブ40の一端とが互いに近づく方向にアウタチューブ20とインナチューブ40とが相対的に移動する圧縮動作、及び、アウタチューブ20の一端とインナチューブ40の一端とが互いに離れる方向にアウタチューブ20とインナチューブ40とが相対的に移動する伸長動作とが可能に構成されている。
【0029】
一端側取付部30は、アウタチューブ20の一端開口21側の内周面20cに嵌合するアウタチューブ嵌合部30aと、取付対象への取付孔30bを有した取付部30cとを備え、アウタチューブ20の一端開口21側の内周面20cがアウタチューブ嵌合部30aに嵌合された状態で溶接によりアウタチューブ20の一端開口21側が一端側取付部30に固定される。尚、アウタチューブ20の一端開口側の内側には、嵌合部30aと接触するように配置されて、インナチューブ40の一端と一端側取付部30との衝突を防止する緩衝材としてのバンプラバー31を備える。
他端側取付部50は、インナチューブ40の他端開口24側の外周面40cとねじ嵌合するインナチューブ嵌合部50aと、取付対象への取付孔50bを有した取付部50cと、外側覆筒60の他端側内周面に嵌合される外側覆筒嵌合部50dとを備え、インナチューブ40の他端開口24側の外周面40cがインナチューブ嵌合部50aにねじ嵌合されたことでインナチューブ40の他端開口24側が他端側取付部50に固定される。尚、インナチューブ40の他端近傍の外周面はねじが形成されておらず、当該外周面に嵌まり込むインナチューブ嵌合部50a内周面に形成された環状装着溝内にはOリング等のシール部材51が装着されている。
【0030】
第2クッションユニット1Bのアウタチューブ20の内側及びインナチューブ40の内側の一端側には液体としてのオイル41が液密状態に収容され、かつ、インナチューブ40の内側の他端側には気体としての空気42が気密状態に収容されている。
即ち、後述する液体シール部材としてのオイルシール等のシール部材71により、アウタチューブ20内にオイルが液密状態に充填された状態となっており、かつ、Oリング等のシール部材51により、インナチューブ40内に空気42が気密状態に充填されるとともにオイル41が液密状態に充填された状態となっている。
このため、第2クッションユニット1Bは、インナチューブ40とアウタチューブ20との相対的な移動による伸縮動作によって、インナチューブ40内の空気42が圧縮されて空気の反力を生じさせる空気ばねと、オイル41の流動抵抗による減衰力を生じさせる減衰力発生機構と、を備えた構成となっている。
【0031】
外側覆筒60は、他端側取付部50の外側覆筒嵌合部50dに取付けられる取付部60aと、取付部60a以外の部分であってインナチューブ40の外周面40a及びアウタチューブ20の他端側外周面を覆う覆筒部60bとを備える。
取付部60aは、外側覆筒嵌合部50dの外周面に形成された円環状溝に係合する係合環状部60cを備える。取付部60aは、他端から外側覆筒60の中心線に沿って延長するように形成された図外の切割部を備えており、この切割部を介して取付部60aの内径が拡径するように形成されていることにより、係合環状部60cを外側覆筒嵌合部50dの円環状溝に着脱自在に係合させて取付けることができるようになっているので、外側覆筒60の取付が容易となる。
このように、外側覆筒60の他端側が他端側取付部50に固定され、外側覆筒60がインナチューブ40の外周面40aを覆うように設けられているので、インナチューブ40の表面の擦傷発生防止が図れる。
【0032】
即ち、第2クッションユニット1Bのアウタチューブ20、一端側取付部30、インナチューブ40、他端側取付部50、外側覆筒60の外形と、第1クッションユニット1Aのアウタチューブ2、一端側取付部3、インナチューブ4、他端側取付部5、外側覆筒6の外形とが同じ形状に形成されているため、外観上、2つの同じクッションユニットを備えた懸架装置に見え、外観上は従来と同じで、かつ、各クッションユニット1A;1Bの部品点数を抑えることができてコストダウンが図れるとともに、大きなバネ反力を得ることができる懸架装置1を得ることができる。
尚、第1クッションユニット1Aは、アウタチューブ2、インナチューブ4、外側覆筒6、摺動ガイド7、円環状ピストン8が、中心線を同じ2Cとする同軸状に配置されて構成されており、また、第2クッションユニット1Bは、アウタチューブ20、インナチューブ40、外側覆筒60、摺動ガイド70、ピストン80が、中心線を同じ20Cとする同軸状に配置されて構成されている。
【0033】
図1に示すように、アウタチューブ20は、他端近傍の内周面20b及び一端近傍の内周面20cの径寸法が、他端近傍の内周面20bと一端近傍の内周面20cとの間の内周面20aの径寸法よりも大きい寸法に形成される。
そして、
図1;
図3に示すように、内周面20aと他端近傍の内周面20bとの段差面は、アウタチューブ20の中心線20Cを中心とした円環平面20dに形成される。
図3に示すように、摺動ガイド70は、他端部の外周面の径がその他の部分の外周面の径よりも小径に形成された段付き円柱体の中央に段付き円柱体の中心線に沿って延長する貫通孔70cが形成された構成である。即ち、摺動ガイド70は、一端部が小外径部70aに形成され、その他の部分が大外径部70bに形成された段付き円柱体の中心に貫通孔70cを備えた構成である。
【0034】
摺動ガイド70は、大外径部70bの外周面とアウタチューブ20の他端近傍の内周面20bとが嵌まり合うように大外径部70bがアウタチューブ20の他端開口23側の内側に嵌め込まれて大外径部70bの一端面70dがアウタチューブ20の円環平面20dに載置されて、かつ、大外径部70bの他端面70eよりも他端側にインナチューブ40の外周面40aと摺動して当該外周面40aをシールするオイルシール等のシール部材71が配置され、さらに、シール部材71の他端側に円環状のシール部材抑え72が配置された状態で、シール部材抑え72よりも他端側に突出するアウタチューブ20の他端開口縁部分20tがシール部材抑え72の他端面72eに密着するように形成されたことで、アウタチューブ20の他端近傍の内側に、アウタチューブ20と同軸状(摺動ガイド70の中心線とアウタチューブ20の中心線20Cとが一致した状態)に固定されている。
【0035】
即ち、アウタチューブ20は、第2クッションユニット1Bの伸縮時にインナチューブ40の外周面40aが摺動する摺動ガイド70及びインナチューブ40の外周面40aの摺動時の液密を維持するシール部材71を他端近傍の内側に備える。
【0036】
図1に示すように、インナチューブ40は、一端近傍の外周面40bの径寸法が、一端近傍の外周面40bと他端近傍の外周面40cとの間の外周面40aの径寸法よりも小さい寸法に形成される。また、他端近傍の外周面40cの径寸法は、外周面40aと同等径に形成され、他端近傍の外周面40cには、他端側取付部50のインナチューブ嵌合部50aの内周面に形成されたねじ部とねじ嵌合されるねじ部が形成されている。
そして、
図3に示すように、外周面40aと一端近傍の外周面40bとの段差面は、インナチューブ40の中心線を中心とした円環平面40dに形成される。
【0037】
ピストン80は、インナチューブ40の一端近傍の外周面40bを取り囲むように当該外周面40bに取付けられてアウタチューブ20の内周を摺動する円環状の外側ピストンと80Bと、インナチューブ40の一端近傍の内周面40uに取付けられた円板状の内側ピストン80Aとを備える。
【0038】
内側ピストン80Aは、インナチューブ40の内側とアウタチューブ20の内側とを連通させる常時連通孔87及び第1開閉孔88が形成された円板状の流路構成部材83と、当該第1開閉孔88を開閉する第1開閉弁としてのチェックバルブ構成体90とを備える。
【0039】
流路構成部材83は、一端面にチェックバルブ機構84を設置するための設置穴85が形成されるとともに、外周面83aの径寸法がインナチューブ40の内周面40uの径寸法と対応した径寸法に形成された円板状部材の中央に、当該円板状部材の中心線に沿って他端面83bと設置穴85の底面86とに貫通する貫通孔により形成された常時連通孔87と、当該常時連通孔87の周囲を取り囲むように当該常時連通孔87と同軸の環状貫通孔により形成された第1開閉孔88と、を備えた構成である。
【0040】
流路構成部材83は、インナチューブ40の一端近傍の内周面40uに嵌め込まれた状態でインナチューブ40の一端近傍の外周面40bを加締めることにより、インナチューブ40の一端近傍の内周面40uに固定されている。
【0041】
チェックバルブ機構84は、設置穴85に設置されたチェックバルブ構成体90と、チェックバルブ構成体90が設置穴85から脱落しないように所定の状態に維持する円環状のチェックバルブ抑え部材91とを備える。
【0042】
チェックバルブ構成体90は、円環状薄板等により形成されたチェックバルブ90Aとバルブスプリング90Bとが組み合わされて構成される。即ち、チェックバルブ90Aの一端側にバルブスプリング90Bが設けられる。
チェックバルブ90Aはオイルの連通路となる貫通孔90aを中央に備え、バルブスプリング90Bは中央側がオイルの連通路となる連通孔90bとなっている。チェックバルブ90Aの貫通孔90aの径寸法は、常時連通孔87の径寸法よりも大きく、かつ、開閉孔88の内周面の径寸法よりも小さい寸法に形成される。バルブスプリング90Bの連通孔90bの径寸法は、チェックバルブ90Aの貫通孔90aの径寸法よりも大きい寸法に形成される。
チェックバルブ構成体90は、チェックバルブ90A側を設置穴85の穴底に向けて設置された後、設置穴85の内周面に形成された円環状の固定溝92にチェックバルブ抑え部材91の円環状の外周縁部を嵌め込むようにしてチェックバルブ抑え部材91を設置穴85内に固定することで、チェックバルブ90Aの貫通孔90a及びバルブスプリング90Bの連通孔90bの中心線と常時連通孔87の中心線とが一致するように設置穴85に取付けられる。
【0043】
チェックバルブ構成体90は、第2クッションユニット1Bの圧縮動作時にはチェックバルブ90Aが第1開閉孔88の一端開口を塞ぐように動作し(
図3参照)、第2クッションユニット1Bの伸長動作時にはチェックバルブ90Aが第1開閉孔88の一端開口を開くように動作する(
図4参照)。
【0044】
第2クッションユニット1Bは、外側ピストン80Bと摺動ガイド70とインナチューブ40の外周面40aとアウタチューブ20の内周面20aとで囲まれた液体流動空間89を備える。
【0045】
インナチューブ40の一端近傍には、液体流動空間89とインナチューブ40の内側とに連通する連通孔44が形成されている。
【0046】
外側ピストン80Bは、アウタチューブ20の内側と液体流動空間89とを連通させる第2開閉孔98が形成された円環状の流路形成部材80Cと、当該第2開閉孔98を開閉する第2開閉弁としてのチェックバルブ99を備える。
第2開閉孔98は、例えば、円環状の流路形成部材80Cの外周面80dに形成された円環状溝95により形成された中継路に繋がる一端側流路93と他端側流路94とで構成される。当該第2開閉孔98は流路形成部材80Cの外周面の周方向に沿って例えば等間隔で複数個形成されている。
チェックバルブ99は、円環状溝95に収容される円環状溝95の大きさよりも若干小さい寸法の円環状部材としてのピストンリングにより形成される。
【0047】
第2クッションユニット1Bの圧縮動作時には、チェックバルブ99が一端側流路93の出口周りの壁面96から離れて一端側流路93の出口を開いて一端側流路93と他端側流路94とを中継路としての円環状溝95を介して連通させることにより第2開閉孔98を開くように動作し(
図3参照)、第2クッションユニット1Bの伸長動作時にはチェックバルブ99が一端側流路93の出口周りの壁面96に接触して一端側流路93の出口を塞ぐことにより当該第2開閉孔98を閉じるように動作する(
図4参照)。
【0048】
流路形成部材80Cは、円柱体の中央に円柱体の中心線に沿って延長する貫通孔80cが形成された構成であり、貫通孔80cの内周面の径寸法がインナチューブ40の一端近傍の外周面40bに嵌まり込む寸法に形成され、外周面80dの径寸法がアウタチューブ2の内周面20aの径寸法に対応した寸法に形成されている。
【0049】
そして、流路形成部材80Cは、貫通孔80cの内周面がインナチューブ40の一端近傍の外周面40bに嵌め込まれて他端面80eがインナチューブ40の円環平面40dに載置された状態で、一端面80fよりも一端側に突出するインナチューブ40の一端端開口縁部分40tが一端面80fに密着するように形成されたことで、インナチューブ40の一端近傍の内側に、インナチューブ40と同軸状(外側ピストン80Bの中心線とインナチューブ40の中心線とが一致した状態)に固定されている。
この場合、インナチューブ40の外周面40bの一端開口縁部分40t側と流路形成部材80Cの貫通孔80cの内周面とが密着し、かつ、インナチューブ40の一端開口縁部分40tが流路形成部材80Cの内周面80cと一端面80fとの境界縁部で折曲されて折曲された一端開口縁部分40tと流路形成部材80Cの一端面80fとが密着するように、例えばローリング加締め機でローリング加締め加工されることによって、インナチューブ40の一端近傍の内側に流路形成部材80Cが固定される。
【0050】
即ち、減衰力発生機構は、液体流動空間89と、インナチューブ40の一端側に形成された連通孔44と、常時連通孔87及び第1開閉孔88と、第1開閉弁としてのチェックバルブ90Aと、第2開閉孔98と、第2開閉弁としてのチェックバルブ99とを備えて構成される。
【0051】
減衰力発生機構による減衰力発生動作を
図3;
図4を参照して説明する。
インナチューブ4の一端と一端側取付部30とが互いに近づく方向に移動して液体流動空間89が拡大する圧縮動作時においては、
図3に示すように、第1開閉弁としてのチェックバルブ90Aが第1開閉孔88を閉じるように動作してアウタチューブ20の内側のオイルが常時連通孔87を介してインナチューブ40の内側に矢印A1のように流入する際の流路抵抗によって減衰力を発生させ、かつ、インナチューブ40の内側のオイルが液体流動空間89内に矢印A2のように流入するとともに、第2開閉弁としてのチェックバルブ99が第2開閉孔98を開くように動作してアウタチューブ20の内側のオイルが当該第2開閉孔98を介して液体流動空間89内に矢印A3のように流入する。即ち、圧縮動作時においては、オイルが常時連通孔87を通過する際の流路抵抗によって減衰力が発生する。
【0052】
またインナチューブ4の一端と一端側取付部30とが互いに離れる方向に移動して液体流動空間89が縮小する伸長動作時においては、
図4に示すように、チェックバルブ99が第2開閉孔98を閉じるように動作して液体流動空間89内のオイルが矢印B1のように流通孔44を介してインナチューブ40の内側に流入する際の流路抵抗によって減衰力を発生させ、かつ、インナチューブ40内のオイルが第1開閉孔87を塞いでいるチェックバルブ90Aを押圧することによりチェックバルブ90Aがチェックバルブ抑え部材91に近付く方向に押圧されて第1開閉孔88を開くので、インナチューブ40内のオイルが、矢印B2のように常時連通孔87及び第1開閉孔88を通過してアウタチューブ20内に流入する、即ち、伸長動作時においては、オイルが液体流動空間89内から流通孔44を介してインナチューブ40内に流入する際の流路抵抗により減衰力が発生する。
【0053】
図1に示すように、第1クッションユニット1Aの他端側取付部5の取付孔5bが図外の自動二輪車の車体フレームの取付軸55に取付けられ、かつ、一端側取付部3の取付孔3bが図外の自動二輪車の車輪の取付軸35に取付けられるとともに、第2クッションユニット1Bの他端側取付部50の取付孔50bが図外の自動二輪車の車体フレームの取付軸55に取付けられ、かつ、一端側取付部30の取付孔30bが図外の自動二輪車の車輪の取付軸35に取付けられることによって、自動二輪車のリアクッションを構成する懸架装置1となる。
【0054】
実施形態の懸架装置1によれば、各クッションユニット1A;1Bの部品点数を抑えることができてコストダウンを図れるとともに、第1クッションユニット1Aの固定バネによる反力と第2クッションユニット1Bの空気ばねによる反力とによる大きなバネ反力を得ることができる。
【0055】
また、従来、自動二輪車用のリアクッションにおいては、ピストンはロッドの端部に設けられており、ロッドとしては小径のものを用いていたため、ロッドの曲がり変形に対する耐性が低いという問題があった。
実施形態では、円筒形状、即ち、パイプにより形成されたインナチューブ4;40の端部にピストンを設けるようにしたことで、インナチューブ4;40の曲げ強度を向上させた構造とした。
【0056】
尚、本発明の懸架装置1は、自動二輪車以外の車両の懸架装置としても使用可能である。