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特開2016-161042回転ユニット、ギヤユニット、及びモータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-161042(P2016-161042A)
(43)【公開日】2016年9月5日
(54)【発明の名称】回転ユニット、ギヤユニット、及びモータ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20160808BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20160808BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   F16H57/04 Q
   H02K7/116
   F16H1/16 Z
   F16H57/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-40175(P2015-40175)
(22)【出願日】2015年3月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】山本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】菊地 悟志
【テーマコード(参考)】
3J009
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J009DA15
3J009DA16
3J009EA06
3J009EA19
3J009EA23
3J009EA32
3J009EA43
3J009EB22
3J063AA02
3J063AB03
3J063AC01
3J063BA11
3J063CA01
3J063CD04
3J063CD06
3J063CD42
3J063XD02
3J063XD33
3J063XD44
3J063XD73
3J063XF03
5H607BB01
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE32
(57)【要約】
【課題】摺動部の摺動面積を減じることなく、摺動部にグリスを効率的に供給することにより、トルク伝達性能及び耐久性能の双方を高めることができる、回転ユニット、ギヤユニット、及びモータ装置を提供する。
【解決手段】回転ユニット(6)は、固定軸(24)が設けられたハウジング(8)と、前記固定軸に摺動回転自在に支持される回転軸(28)を有した回転体(16、48、52、54、58)と、前記固定軸と前記回転軸との間に形成された摺動部(40、42)と、前記固定軸と前記回転軸との間に設けられ、前記摺動部に隣接するグリス溜まり部(44)と、前記グリス溜まり部に充填されたグリス(46)とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸が設けられたハウジングと、
前記固定軸に摺動回転自在に支持される回転軸を有した回転体と、
前記固定軸と前記回転軸との間に形成された摺動部と、
前記固定軸と前記回転軸との間に設けられ、前記摺動部に隣接するグリス溜まり部と、
前記グリス溜まり部に充填されたグリスと
を備える、回転ユニット。
【請求項2】
前記グリス溜まり部は、前記固定軸及び前記回転軸の周方向に延びている、請求項1に記載の回転ユニット。
【請求項3】
前記摺動部は、前記軸線方向に離間して複数形成され、
前記グリス溜まり部は、隣接する前記摺動部間に位置付けられる、請求項2に記載の回転ユニット。
【請求項4】
前記固定軸は、その先端側に形成される小径部と、その根元側に形成され、前記小径部よりも大径の大径部と、前記小径部と前記大径部との間に形成される軸側段差面とを有し、
前記回転軸は、前記小径部に摺動して前記摺動部の1つを形成する小径孔と、前記大径部に摺動して前記摺動部の1つを形成する大径孔と、前記小径孔と前記大径孔との間に形成されるとともに前記軸側段差面と対向する孔側段差面とからなる中空部を有し、
前記グリス溜まり部は、前記軸側段差面と前記孔側段差面とで区画された環状空間をなす、請求項3に記載の回転ユニット。
【請求項5】
前記固定軸又は前記回転軸にはグリス攪拌部が設けられ、前記グリス攪拌部は前記グリス溜まり部に向かって突出してなる、請求項1から4の何れか一項に記載の回転ユニット。
【請求項6】
前記グリス攪拌部は、前記回転軸の回転により前記グリスを前記グリス溜まり部の周方向に流動させる、請求項5に記載の回転ユニット。
【請求項7】
前記グリス攪拌部の外縁は円弧形状をなしている、請求項6に記載の回転ユニット。
【請求項8】
前記グリス攪拌部は、前記グリス溜まり部に向けられた突端から前記固定軸又は前記回転軸側の根元に向けて傾斜する傾斜面を有する、請求項6又は7に記載の回転ユニット。
【請求項9】
前記グリス攪拌部は、前記回転体の回転方向に向けて突出した先端を有する、請求項6から8の何れか一項に記載の回転ユニット。
【請求項10】
前記固定軸は前記ハウジングに一体に樹脂成形され、前記回転軸は前記回転体に一体に樹脂成形されている、請求項1から9の何れか一項に記載の回転ユニット。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載された回転ユニットからなるギヤユニットであって、前記ハウジングは前記ギヤユニットのギヤハウジングであり、前記回転体は前記ギヤハウジングに収容されるギヤである、ギヤユニット。
【請求項12】
請求項11に記載のギヤユニットと、前記ギヤユニットに接続されたモータとを備える、モータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ユニット、ギヤユニット、及びモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはギヤハウジングを備えたウォーム減速機が開示されている。このギヤハウジングにはウォームと噛み合うウォームホイールが収納されており、このウォームホイールはギヤハウジングに設けられたボールベアリングにより支持された回転軸に固定されている。そして、この減速機においてウォームとウォームホイールとの噛み合い部には潤滑性を維持するためにグリスの供給が必要であり、そのため、ギヤハウジングのウォーム噛み合い部近傍にグリス溜め凹部を設けることにより少量のグリスによってウォーム噛み合い部の潤滑性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−167779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術における減速機のウォームホイールの回転支持はボールベアリングによって行われるため、この部分へのグリスの供給は必要ない。しかし、ウォームホイールの回転軸(出力軸)がギヤハウジング内面に立設された固定軸に軸支される、いわゆる固定軸タイプの減速機では、回転軸と固定軸との間に摺動部が形成されるため、この部分へのグリス供給が必要となる。
ところが、この固定軸タイプの減速機に従来技術におけるグリス溜め凹部を形成しただけではウォームとウォームホイールとの噛み合い部へのグリス供給は可能となるが、前記摺動部へのグリス供給は困難である。
【0005】
仮に、この摺動部に、凹部等のグリス溜め部を形成すると、固定軸に対する出力軸の摺動面積が小さくなるため、固定軸に対する出力軸の面圧が上昇する。これにより、ウォームホイールの出力トルクが低下するとともに、摺動部での固定軸及び出力軸の摩耗が極度に進行し、減速機の耐久性能が著しく低下するおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、摺動部の摺動面積を減じることなく、摺動部にグリスを効率的に供給することにより、トルク伝達性能及び耐久性能の双方を高めることができる、回転ユニット、ギヤユニット、及びモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の回転ユニットは、固定軸が設けられたハウジングと、前記固定軸に摺動回転自在に支持される回転軸を有した回転体と、前記固定軸と前記回転軸との間に形成された摺動部と、前記固定軸と前記回転軸との間に設けられ、前記摺動部に隣接するグリス溜まり部と、前記グリス溜まり部に充填されたグリスとを備える。
【0008】
好ましくは、前記グリス溜まり部は、前記固定軸及び前記回転軸の周方向に延びている。
好ましくは、前記摺動部は、前記軸線方向に離間して複数形成され、前記グリス溜まり部は、隣接する前記摺動部間に位置付けられる。
好ましくは、前記固定軸は、その先端側に形成される小径部と、その根元側に形成され、前記小径部よりも大径の大径部と、前記小径部と前記大径部との間に形成される軸側段差面とを有し、前記回転軸は、前記小径部に摺動して前記摺動部の1つを形成する小径孔と、前記大径部に摺動して前記摺動部の1つを形成する大径孔と、前記小径孔と前記大径孔との間に形成されるとともに前記軸側段差面と対向する孔側段差面とからなる中空部を有し、前記グリス溜まり部は、前記軸側段差面と前記孔側段差面とで区画された環状空間をなす。
【0009】
好ましくは、前記固定軸又は前記回転軸にはグリス攪拌部が設けられ、前記グリス攪拌部は前記グリス溜まり部に向かって突出してなる。
好ましくは、前記グリス攪拌部は、前記回転軸の回転により前記グリスを前記グリス溜まり部の周方向に流動させる。
好ましくは、前記グリス攪拌部の外縁は円弧形状をなしている。
【0010】
好ましくは、前記グリス攪拌部は、前記グリス溜まり部に向けられた突端から前記固定軸又は前記回転軸側の根元に向けて傾斜する傾斜面を有する。
好ましくは、前記グリス攪拌部は、前記回転体の回転方向に向けて突出した先端を有する。
好ましくは、前記固定軸は前記ハウジングに一体に樹脂成形され、前記回転軸は前記回転体に一体に樹脂成形されている。
【0011】
本発明のギヤユニットは、上記何れかの回転ユニットからなるギヤユニットであって、前記ハウジングは前記ギヤユニットのギヤハウジングであり、前記回転体は前記ギヤハウジングに収容されるギヤである。
本発明のモータ装置は、前記ギヤユニットと、前記ギヤユニットに接続されたモータとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転ユニット、ギヤユニット、及びモータ装置によれば、摺動部の摺動面積を減じることなく、摺動部にグリスを効率的に供給することにより、トルク伝達性能及び耐久性能の双方を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るモータ装置の斜視図である。
図2図1のギヤユニットの断面図である。
図3図1のウォームホイールをその出力軸側から見た斜視図である。
図4図1のウォームホイールをそのホイール本体の外側端面側から見た斜視図である。
図5図4のウォームホイールを縦断した斜視図である。
図6図2の固定軸と出力軸との間の摺動部を拡大して示す断面図である。
図7図5のウォームホイールの孔側段差面におけるグリスの流動状態を示した斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るウォームホイールをそのホイール本体の外側端面側から見た平面図である。
図9図8の出力軸と固定軸の間の摺動部を拡大して示す断面図である。
図10図8のウォームホイールの孔側段差面におけるグリスの流動状態を示した斜視図である。
図11図8の変形例となるウォームホイールをそのホイール本体の外側端面側から見た平面図である。
図12】本発明の第3実施形態に係るウォームホイールの孔側段差面におけるグリスの流動状態示した斜視図である。
図13】本発明の第4実施形態に係るグリス溜まり部を構成する孔側段差面におけるグリスの流動状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係るモータ装置1の斜視図である。図1に示すように、モータ装置1は、モータ2、給電コネクタ4及びギヤユニット(回転ユニット)6を備えている。ギヤユニット6は例えば減速機であって、モータ装置1は、防水仕様のギヤユニット付き直流モータであり、自動車の窓ガラスを自動的に開閉するパワーウィンドウ、車体の天井部に取り付けられる電動サンルーフ、電動スライドドア等の自動車用電装機器の駆動に用いられる。
【0015】
図2は、図1のギヤユニット6の断面図である。なお、図2の断面の背景は図の分かり易さのため図示を省略している。図2に示すように、ギヤユニット6は、ギヤハウジング(ハウジング)8とギヤハウジング8に収容されるギヤ列10とを備えている。モータ2からはギヤユニット6に向けて駆動軸12が延び、ギヤ列10は、駆動軸12に固定されたウォーム14と、ウォーム14に噛み合わされるウォームホイール16とから構成されている。
【0016】
ギヤハウジング8は、有底円筒形状のハウジング本体18とカバー20とを有している。ハウジング本体18はその内側端面の中央から立設された円筒形状の固定軸24を備え、ハウジング本体18及び固定軸24は一体に樹脂成形されている。固定軸24には、ハウジング本体18の外側端面22aから固定軸24の先端にかけて中空部26が貫通されている。
【0017】
固定軸24は、その先端側から順に、ウォームホイール16の後述する出力軸(回転軸)28から突出した先端部24aと、先端部24aよりも大径の小径部24bと、小径部24bよりも大径の大径部24cと、大径部24cよりも大径の根元部24dとを有している。先端部24aと小径部24bとの間、小径部24bと大径部24cとの間、大径部24cと根元部24dとの間には、それぞれ環状の軸側段差面24e、24f、24gが形成されている。カバー20は、円板形状に形成され、ウォームホイール16の内側端面の凹凸形状に合わせた形状を有する。カバー20の中央には開口部が形成され、この開口部から出力軸(回転軸)28が突出されている。
【0018】
図3はウォームホイール16をその出力軸28側から見た斜視図である。図3に示すように、ウォームホイール16は、その両側端面が外周部を除いて円形に凹んだホイール本体30と、ホイール本体30の内側端面の中央から立設された出力軸28とを備え、ホイール本体30及び出力軸28は一体に樹脂成形されている。
【0019】
図4はウォームホイール16をそのホイール本体30の外側端面30a側から見た斜視図である。図3及び図4に示すように、ホイール本体30の外周面にはウォーム14に噛み合うギヤ30bが形成されている。なお、ギヤ30bの詳細形状の図示は各図において省略されている。
【0020】
出力軸28には、ホイール本体30の外側端面30aから出力軸28の先端にかけて中空部32が貫通されている。この中空部32に、ハウジング本体18の固定軸24を挿入することにより、出力軸28が固定軸24に摺動回転自在に軸支される。従って、ウォームホイール16はハウジング本体18に摺動回転自在に支持される。
【0021】
出力軸28は、ホイール本体30側の根元から段階的に縮径され、これより、出力軸28の先端部は出力軸28にて最も小径となっている。出力軸28の先端部にはその外周にギヤ部28aが形成されている。ギヤ部28aは、モータ装置1の外部に配置され且つ図示しない被駆動装置と連結された回転部材(例えば、ケーブルドラムの軸)のギヤ部と噛み合わされる。
【0022】
こうして、モータ2の回転駆動力は、駆動軸12を介して、ウォーム14、ウォームホイール16、出力軸28を順次経て回転部材、すなわち、外部の被駆動装置に伝達される。なお、ウォームホイール16の回転は図示しない緩衝ラバー等を介して出力軸28に伝達されても良い。
【0023】
図5は、図4のウォームホイールを縦断した斜視図である。図5に示すように、出力軸28の中空部32は段付きの円孔形状をなし、出力軸28の先端側から順に、インナフランジ32dと、小径孔32aと、小径孔32aよりも大径の大径孔32bとを有し、小径孔32aと大径孔32bとの間に環状の孔側段差面32cが形成されている。
【0024】
図2に示すように、固定軸24の先端部24aと出力軸28の小径孔32aとの間にはOリング34が配置され、Oリング34は軸側段差面24eとインナフランジ32dとの間に挟まれている。このOリング34は、出力軸28の摺動回転を許容しながら、固定軸24の先端部24aと出力軸28の小径孔32aとの間を液密にシールし、ギヤユニット6の外部からの異物や水分の侵入を阻止している。
【0025】
また、図2に示すように、ギヤハウジング8のカバー20は、カバー20の中央開口側のOリング36と、カバー20の外周側のOリング38とを介してハウジング本体18に嵌め込まれている。これらOリング36、38は、ウォームホイール16の回転を許容しながら、カバー20とハウジング本体18との間を液密にシールし、ギヤユニット6の外部からの異物や水分の侵入を阻止している。
【0026】
図6は、図2の固定軸24と出力軸28との間の摺動部を拡大して示す断面図である。なお、図6の断面の背景は斜視図として示している。図6に示すように、出力軸28の小径孔32aと固定軸24の小径部24bとは相対的に摺動する先端側摺動部(摺動部)40を形成している。また、出力軸28の大径孔32bと固定軸24の大径部24cとも相対的に摺動する根元側摺動部(摺動部)42を形成している。
【0027】
各摺動部40、42は、固定軸24及び出力軸28の軸線方向Xに離間している。そして、固定軸24と出力軸28との間には、これら摺動部40、42間にグリスを充填するためのグリス溜まり部44が設けられている。グリス溜まり部44は、固定軸24及び出力軸28の全周に亘って延び、小径部24bと大径部24cとの間の軸側段差面24fと、軸側段差面24fと対向する孔側段差面32cとで区画された環状空間として形成されている。すなわち、グリス溜まり部44では、固定軸24及び出力軸28の周方向と交差する、換言すると、固定軸24及び出力軸28の径方向に沿う幅方向に孔側段差面32cが位置付けられている。
【0028】
詳しくは、軸側段差面24fは、根元側摺動部42に連なるとともに軸線方向Xに対して略垂直となる環状の平坦面24f1と、平坦面24f1から先端側摺動部40に連なる環状の湾曲面24f2とから形成されている。一方、孔側段差面32cは、根元側摺動部42に連なるとともに軸線方向Xに対して傾斜した環状の傾斜面32c1と、傾斜面32c1に連なるとともに軸線方向Xに対して略垂直となる環状の平坦面32c2と、平坦面32c2から先端側摺動部40に連なる環状の湾曲面32c3とから形成されている。
【0029】
図7はウォームホイール16の孔側段差面32c上でのグリスの流動状態を示した斜視図である。図7に示すように、グリス(輪郭を破線で示す)46は、ギヤユニット6の組み立て過程にて孔側段差面32cの数箇所(例えば3箇所)に塊状態で自動塗布される。孔側段差面32c上のグリス46は、モータ装置1の作動時、図7のウォームホイール16の矢印方向の回転に伴って、孔側段差面32cと対向する軸側段差面24fに付着し、薄く引き延ばされるとともに、出力軸28の回転運動により、グリス溜まり部44から図7に破線矢印で示す経路を通って各摺動部40、42に流動し、各摺動部40、42を好適に潤滑する。
【0030】
以上のように本実施形態では、固定軸24と出力軸28との間の各摺動部40、42間にグリス溜まり部44を確保した。これにより、固定軸24及び出力軸28の各摺動部40、42の摺動面積を減じることなく、各摺動部40、42にグリスを効率的に供給することができるため、ギヤユニット6ひいてはモータ装置1のトルク伝達性能及び耐久性能の双方を高めることができる。
【0031】
(第2実施形態)
以下の各実施形態に係るウォームホイールは、第1実施形態に係るウォームホイール16に代えて前述したギヤユニット6ひいてはモータ装置1に適用可能である。また、以下の各実施形態の説明において、第1実施形態と同内容については、文中又は図面において同符号を付して説明を省略することがある。
【0032】
図8は第2実施形態に係るウォームホイール48をその外側端面30a側から見た端面図であり、図9は出力軸28と固定軸24との間の各摺動部40、42を拡大して示す断面図である。なお、図9の断面の背景は斜視図として示している。図8に示すように、ウォームホイール48側の孔側段差面32cには、3つのブレード状のリブ(グリス攪拌部)50が形成されている。これらリブ50は、グリス溜まり部44に向かって突出され、孔側段差面32cの周方向で見て略等間隔に配置されている。
【0033】
図9に示すように、本実施形態のリブ50は、孔側段差面32cの幅の略全域に亘って直線状に延び、径方向幅を長手方向とする三角柱形状をなしている。リブ50の突出高さは、孔側段差面32cと対向する軸側段差面24fにリブ50が非接触となる高さに形成され、リブ50によって出力軸28ひいてはウォームホイール48の回転が阻害されることはない。
【0034】
図10はウォームホイール48の孔側段差面32c上でのグリスの流動状態を示した斜視図である。図10に示すように、リブ50には、その三角柱の側面としての傾斜面50aが形成され、この傾斜面50aはグリス溜まり部44に向けられた突端50bから固定軸24側の根元50cに向けて傾斜している。孔側段差面32c上のグリス46は、ウォームホイール48の矢印方向の回転に伴って、孔側段差面32cと対向する軸側段差面24fに付着しながら孔側段差面32c上を徐々に流動した後、傾斜面50aに衝突して突端50b側に導かれ、ひいてはリブ50と軸側段差面24fとの隙間を通過する。
【0035】
この際、リブ50は、グリス46をグリス溜まり部44の周方向に流動させる。また、グリス46は、前記隙間を通過することにより、図7の場合に比して、より一層薄く引き延ばされる。さらには、グリス46は出力軸28の回転運動により、グリス溜まり部44から図10に破線矢印で示す流動経路を通って各摺動部40、42に円滑に誘導され、各摺動部40、42を好適に潤滑する。
【0036】
以上のように本実施形態では、グリス溜まり部44を形成する孔側段差面32cにリブ50を形成したことにより、グリスを引き延ばしてより一層薄くし、その流動性を高めることができる。したがって、各摺動部40、42の摺動面積を減じることなく、各摺動部40、42にグリスをより一層効率的に供給することができるため、ギヤユニット6ひいてはモータ装置1のトルク伝達性能及び耐久性能の双方をさらに高めることができる。
【0037】
図11図8の変形例となるウォームホイール52をその外側端面30a側から見た端面図である。この場合、図11に示すように、6つのリブ50が孔側段差面32cの周方向に略等間隔に配置されている。これにより、各リブ50によってグリスを攪拌してより一層薄く引き延ばすことができ、グリスの流動性を高めることができるため、各摺動部40、42の摺動面積を減じることなく、各摺動部40、42にグリスをより一層効率的に供給することができる。
【0038】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係るウォームホイール54の孔側段差面32c上でのグリスの流動状態を示した斜視図である。図12に示すように、本実施形態のリブ(グリス攪拌部)56は、孔側段差面32cの幅の略全域に亘って直線状に延び、リブ56の外縁は前記幅を弦とした半円形状をなしている。
【0039】
このような半円形状のリブ56の外周には、ウォームホイール54の矢印で示す回転方向で見たときの前後に、孔側段差面32cの周方向に離間した縁を面取りした傾斜面56aがそれぞれ形成されている。各傾斜面56aは、それぞれグリス溜まり部44に向けられた突端56bから固定軸24側の根元56cに向けて傾斜し、孔側段差面32cの周方向から各摺動部40、42にそれぞれ向けられている。
【0040】
孔側段差面32c上のグリス46は、ウォームホイール54の回転に伴って、孔側段差面32cと対向する軸側段差面24fに付着しながら孔側段差面32c上を徐々に流動した後、リブ50と軸側段差面24fとの隙間を通過する。この際、グリス46の一部は、図10の場合と同様に、薄く引き延ばされるとともに、固定軸24及び出力軸28の回転運動により、グリス46の残りの一部は半円形状のリブ56上を孔側段差面32cの幅方向に伝いながら流動した後、リブ56の前側の傾斜面56aにより図12に破線矢印で示す流動経路を経て各摺動部40、42により一層円滑に誘導され、各摺動部40、42を好適に潤滑する。
【0041】
以上のように本実施形態では、グリス溜まり部44を形成する孔側段差面32cに半円形状のリブ56を形成したことにより、グリスの一部を引き延ばしてより一層薄くし、その流動性を高めることができる。さらには、グリスの残りの一部を半円形状のリブ56の両端側に流動させ、リブ56の前側の傾斜面56aにより各摺動部40、42に円滑に誘導可能である。したがって、各摺動部40、42の摺動面積を減じることなく、各摺動部40、42にグリスをより一層効率的に供給することができるため、ギヤユニット6ひいてはモータ装置1のトルク伝達性能及び耐久性能の双方をさらに高めることができる。
【0042】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態に係るウォームホイール58の孔側段差面32c上でのグリスの流動状態を示した斜視図である。図13に示すように、本実施形態のリブ(グリス攪拌部)60は、孔側段差面32cの幅の略全域を占めるような四角錐の形状をなし、ここでの四角錐はその底面の対角線が孔側段差面32cの幅に沿って延びている。
【0043】
詳しくは、四角錐形状のリブ60は、孔側段差面32c上に位置する底面が平行四辺形をなし、ウォームホイール58の矢印で示す回転方向で見て前側の2つの三角側面(傾斜面)60a間には先端60bが形成され、この先端60bは孔側段差面32cの幅の中央に位置付けられている。リブ60の各三角側面60aは、それぞれグリス溜まり部44に向けられた突端60cから固定軸24側の根元60dに向けて傾斜し、孔側段差面32cの周方向では各摺動部40、42に対向するように向けられている。また、先端60bは、各三角側面60aよりもウォームホイール58の回転方向で見て前側に突出している。
【0044】
孔側段差面32c上のグリス46は、ウォームホイール58の回転に伴って軸側段差面24fに付着しながら孔側段差面32c上を徐々に流動した後、リブ60に接触する。この際、グリス46は、出力軸28の回転運動により、グリス46の一部はリブ60の先端60bによって押し分けられた後、各三角側面60aを伝い、そして、図13に破線矢印で示す流動経路を経て各摺動部40、42により一層円滑に誘導され、各摺動部40、42を好適に潤滑する。
【0045】
以上のように本実施形態では、グリス溜まり部44を形成する孔側段差面32cに四角錐形状のリブ60を形成したことにより、グリス溜まり部44のグリスをリブ60の先端60bにより押し分けてリブ60の両側に流動させ、リブ60の前側の各三角側面60aを経て各摺動部40、42により一層円滑に誘導可能である。したがって、各摺動部40、42の摺動面積を減じることなく、各摺動部40、42にグリスをより一層効率的に供給することができるため、ギヤユニット6ひいてはモータ装置1のトルク伝達性能及び耐久性能の双方をさらに高めることができる。
【0046】
本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、各実施形態の固定軸24の外周及び出力軸28の中空部32は段差形状をなし、ギヤユニット6の固定軸24と出力軸28との間には2つの摺動部40、42が形成され、これら2つの摺動部40、42間にグリス溜まり部44が位置付けられている。しかし、グリス溜まり部44が摺動部から固定軸24及び出力軸28の軸線方向Xに隣接されるのであれば、固定軸24と出力軸28との間に形成される摺動部の数は1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
【0047】
また、各実施形態のギヤハウジング8のハウジング本体18には固定軸24が一体に樹脂成形されている。これにより、ギヤユニット6ひいてはモータ装置1の部品点数削減及び組立工程数削減に伴う生産性向上を図ることができるとともに、ギヤユニット6ひいてはモータ装置1の軽量化をも実現することができる。しかし、本発明は、ハウジング本体18と別体に形成して後からハウジング本体18に固定する固定軸にも適用可能であるし、樹脂製に限らず金属製の固定軸にも適用可能である。
【0048】
また、各実施形態のウォームホイールのホイール本体30の外周に形成されるギヤ部30bの形状は、ウォーム14と噛み合いながらウォームホイールが回転できるのであれば特に限定されない。例えば、ウォームホイールはヘリカルギヤ(はすば歯車)であっても良い。
また、各実施形態の孔側段差面32cに形成されるリブの数は、図8又は図11に示すように、3つ又は6つに限定されるものではなく、少なくとも1つ以上のリブを配置すれば、グリス溜まり部44におけるグリスの流動性を高めることが可能である。
【0049】
また、各実施形態の孔側段差面32cに形成されるリブは、固定軸24及び出力軸28の径方向に沿うグリス溜まり部44の幅に沿って延び、内壁に対抗する面に非接触で形成されれば良い。したがって、リブは孔側段差面32cではなく軸側段差面24fに形成しても良いし、孔側段差面32c及び軸側段差面24fの双方に形成しても良い。
また、各実施形態の孔側段差面32cに形成されるリブは、グリス溜まり部44の幅に沿って突出して形成されていれば良いため、前述した各形状に限定されるものではなく、種々の形状が適用可能である。具体的には、第2実施形態の図9に示すリブ50は、三角柱形状ではなく直方体形状であっても良い。また、第3実施形態の図12に示すリブ56の外縁は、半円形状ではなく円弧形状であっても良い。
【0050】
また、第4実施形態の図13に示すリブ60は、四角錐形状ではなく、三角錐形状や五角錐形状等の他の角錐形状や多角形状であっても良い。また、各実施形態の孔側段差面32cに形成されるリブは、孔側段差面32cの幅に直線状に形成するのみならず曲線状等に形成しても良い。
【0051】
また、本発明は、固定軸24と固定軸24に軸支される出力軸28のような回転軸とにより摺動部が形成されるのであれば、減速機に限らないギヤユニット、ギヤユニット6に限らない回転ユニット、モータ装置1に限らない回転ユニットを備えた装置等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 モータ装置
2 モータ
6 ギヤユニット(回転ユニット)
8 ギヤハウジング(ハウジング)
16、48、52、54、58 ウォームホイール(回転体、ギヤ)
24 固定軸
24b 小径部
24c 大径部
24f 軸側段差面
28 回転軸(出力軸)
32 中空部
32a 小径孔
32b 大径孔
32c 孔側段差面
40 先端側摺動部(摺動部)
42 根元側摺動部(摺動部)
44 グリス溜まり部
46 グリス 50、56、60 リブ(グリス攪拌部)
50a 傾斜面
50b 突端
50c 根元
56a 傾斜面
56b 突端
56c 根元
60a 三角側面(傾斜面)
60b 先端
60c 突端
60d 根元
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13