【解決手段】プレス加工がなされたワーク11について、目標厚みより薄くなったネック12を検出する欠陥検出装置10において、ワーク11を加熱する加熱手段13と、加熱されたワーク11の温度分布を得る温度計測機14と、ワーク11の温度分布から、所定範囲の温度を有するワーク11の領域を抽出して、異常候補領域22を特定し、異常候補領域22が、予め定めた大きさの範囲Pか否かを基準にして、ネック12を検出する解析手段15とを備える。
請求項1記載の欠陥検出装置において、前記解析手段は、前記所定範囲の温度を有する前記ワークの領域を、該領域の形状を基に、複数の前記異常候補領域に分割することを特徴とする欠陥検出装置。
請求項1又は2記載の欠陥検出装置において、前記解析手段は、前記異常候補領域の大きさに加え、該異常候補領域の細長度を基準にして、前記ネックを検出することを特徴とする欠陥検出装置。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の欠陥検出装置において、前記解析手段は、更に、検出された前記ネックの温度情報を基に、該ネックの薄さレベルを算出することを特徴とする欠陥検出装置。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の欠陥検出装置において、前記解析手段は、前記異常候補領域が、予め定めた大きさの範囲Qか否かによって、該異常候補領域にしわが存在するか否かを判定することを特徴とする欠陥検出装置。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の欠陥検出装置において、前記所定範囲の温度を有する前記ワークの領域の前記解析手段による抽出は、前記ワークの温度分布を二値化したデータを基に行われることを特徴とする欠陥検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワークは、領域ごとに目標厚みが相異することから、各領域において温度上昇速度は異なっている。このため、例えば、周囲の領域に比べ早く温度上昇する領域は、ネックが無いにもかかわらず、ネックが存在しているという判定がなされ、ネックを安定的に検出できないという問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、ネックを安定的に検出可能な欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る欠陥検出装置は、プレス加工がなされたワークについて、目標厚みより薄くなったネックを検出する欠陥検出装置において、前記ワークを加熱する加熱手段と、加熱された前記ワークの温度分布を得る温度計測機と、前記ワークの温度分布から、所定範囲の温度を有する該ワークの領域を抽出して、異常候補領域を特定し、該異常候補領域が、予め定めた大きさの範囲Pか否かを基準にして、前記ネックを検出する解析手段とを備える。
【0006】
本発明に係る欠陥検出装置において、前記解析手段は、前記所定範囲の温度を有する前記ワークの領域を、該領域の形状を基に、複数の前記異常候補領域に分割することができる。
【0007】
本発明に係る欠陥検出装置において、前記解析手段は、前記異常候補領域の大きさに加え、該異常候補領域の細長度を基準にして、前記ネックを検出することができる。
【0008】
本発明に係る欠陥検出装置において、前記解析手段は、更に、検出された前記ネックの温度情報を基に、該ネックの薄さレベルを算出するのが好ましい。
【0009】
本発明に係る欠陥検出装置において、前記解析手段は、前記異常候補領域が、予め定めた大きさの範囲Qか否かによって、該異常候補領域にしわが存在するか否かを判定するのが好ましい。
【0010】
本発明に係る欠陥検出装置において、前記所定範囲の温度を有する前記ワークの領域の前記解析手段による抽出は、前記ワークの温度分布を二値化したデータを基に行われるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る欠陥検出装置は、ワークを加熱し、加熱したワークの温度分布から、所定範囲の温度を有するワークの領域を抽出して、異常候補領域を特定し、異常候補領域が、予め定めた大きさの範囲か否かを基準に、ネックを検出するので、安定的にネックを検出することができる。これは、加熱したワークにおいて、所定範囲の温度の領域で、かつ、所定の大きさの範囲に属する領域を、ネックであると判定することにより、安定的にネックを検出できることを検証した結果によるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る欠陥検出装置10は、プレス加工がなされたワーク11について、目標厚みより薄くなったネック12を検出する装置であり、ワーク11を加熱する加熱手段13と、加熱されたワーク11の温度分布を得る温度計測機14と、ワーク11の温度分布からネック12の有無を検知する解析手段15とを備えている。以下、詳細に説明する。
【0014】
ネック12の有無が検査されるワーク11は、金属製の部材をプレス加工した成形品であり、ワーク11の各領域(各部)には、目標厚みが定められている。ネック12は、
図2に示すように、プレス加工の際に形成され、局部的に目標厚みDより薄く(例えば、30%以上薄く)なった領域を意味する。また、ワーク11には、目標厚みDより薄いが、ネック12よりは厚みのあるしわ16が生じることもある。しわ16は、複数のしわ16が、集合して形成される傾向がある。
なお、ネックとしわの切り分けは、ワークが何であるか等によって異なるため、目標厚みに対して何%未満の厚みがネックで、何%以上の厚みがしわであるかは、一律に定義できるものではない。
【0015】
本実施の形態では、加熱手段13が、
図1に示すように、チャンバー内に収容したワーク11を温風によって加熱するものであり、温度計測機14は、ワーク11から放出される赤外線放射エネルギーを基に、ワーク11の温度分布を検出するサーモグラフィであるが、加熱手段13及び温度計測機14は、これらに限定されない。
解析手段15として、周知のコンピュータを採用することができ、解析手段15は、各種プログラムを格納する記憶媒体、CPU、入力用のデバイス、及び、出力用のデバイスを備え、温度計測機14に接続されている。
【0016】
加熱手段13は、解析手段15に、制御機の一例であるプログラマブルロジックコントローラ17を介して接続されている。プログラマブルロジックコントローラ17は、解析手段15から入力された制御内容に従って、加熱手段13の制御を行う。
温度計測機14は、ワーク11の温度分布を画像データとして、解析手段15に送ることができる。温度計測機14から送られる画像データは、ワーク11の各領域を、温度の高低に応じて異なる色で示す。例えば、温度が高い順に、赤、オレンジ、黄、緑、青で示される。
【0017】
解析手段15は、
図1に示すように、温度計測機14から得た温度分布の画像データを、白と黒の二階調に二値化した
図4(A)に示す二値化画像データ(二値化したデータ)21に変換する画像処理部18、二値化画像データ21から、所定の温度範囲に属する領域(以下、「異常候補領域」とも言う)を特定する抽出部19、及び、
図4(B)に示す異常候補領域22の大きさを基に、異常候補領域22がネック12であるか否かを判定する判定部20とを備えている。画像処理部18、抽出部19及び判定部20はそれぞれ、主として、解析手段15の記憶媒体に格納されたプログラムによって構成されている。
【0018】
次に、欠陥検出装置10によるネック12の検出手順について説明する。
ネック12の検出手順においては、
図3に示すように、まず、加熱手段13がワーク11を加熱する(ステップS1)。加熱されたワーク11は、加熱手段13から取り出された後、温度計測機14によって撮像されて温度が計測され(ステップS2)、計測された温度は、温度分布の画像データとして、温度計測機14から解析手段15に送られる。
【0019】
画像処理部18は、解析手段15に送られた温度分布の画像データを、256階調のグレースケールに変換し、グレースケール化された画像データを、指定された閾値を基に、二値化する(ステップS3)。
ここで、ワーク11に割れがある場合、ワーク11の温度分布の画像データを二値化することなく、温度分布の画像データから、割れを検出可能である。割れがある部分は、他の部分と異なり、加熱手段13で加熱される対象がなく、割れのない部分と明らかに異なる温度になるためである。また、温度分布の画像データに、背景部分(即ち、ワーク11が存在していない部分)が撮像されている場合、その部分は、ワーク11がある部分と温度が大きく異なることから、背景部分は、ステップS3以降の処理を行う対象から除くようにマスクしてもよい。
【0020】
二値化して得られる二値化画像データ21においては、
図4(A)に示すように、所定温度以上の部分が白、所定温度未満の部分が黒でそれぞれ表示されるように、画像が処理されている。二値化画像データ21にて、白で表示する温度は、二値化する閾値を変えることによって調整でき、本実施の形態では、二値化の閾値の低下(検出感度の上昇)に伴い、二値化画像データ21中の白の領域が増加する。二値化の閾値は、要求される検出精度や、ワーク11の種類等に応じて、適宜、決定される。
【0021】
抽出部19は、二値化画像データ21において、黒の領域に囲まれた白の領域(即ち、所定範囲の温度を有するワークの領域)を抽出する。抽出された白の領域は、周囲より温度が高く、ネック12が存在している可能性があることを意味する。
ここで、本実施の形態では、周囲より温度が高い領域にネック12が存在している可能性があるという判定基準を採用しているが、ワーク11が加熱されてから温度計測がなされるまでの時間の経過等によっては、ネック12がネック12の周辺より低温であることも考えられる。ネック12がネック12の周辺より低温になった状態でワーク11が温度を計測される環境においては、ネック12の周辺よりネック12が低温であるという判定基準が採用される。
【0022】
抽出部19は、
図3に示すように、白の領域を抽出した後、白の領域ごとに、その白の領域を分割するか否かを決定する(ステップS4)。抽出部19による白の領域の抽出においては、ネック12が存在する領域と、その領域に近接するネック12やしわ16のない正常な領域の2つの別個の領域が、連結して、一つの白の領域として抽出されることがある。
白の領域の分割は、その2つ(3つ以上の場合もある)の別個の領域を、2つの白の領域として扱うための処理である。
【0023】
白の領域を分割するか否かは、該当する白の領域の形状を基に決定でき、分割する場合、白の領域は、その白の領域の形状を基に、
図5に示すように、複数の領域に分割される(ステップS5)。
本実施の形態では、分割手法として、ウォータシェッド手法を採用しているが、分割手法は、ウォータシェッド手法に限定されない。
【0024】
抽出部19は、複数の領域に分割されなかった白の領域を、一つの異常候補領域22として特定し、
図5に示すように、複数の領域に分割された白の領域については、分割された複数の領域それぞれを異常候補領域22として特定する。
ここで、白の領域を分割するか否かの判定は、設定により省略可能であり、省略した場合、一つの白の領域は、そのまま、一つの異常候補領域22として扱われる。
【0025】
判定部20は、
図3に示すように、抽出部19によって抽出された異常候補領域22それぞれについて、異常候補領域22が、予め定めた大きさの範囲P(以下、単に「範囲P」とも言う)か否かを基準に、ネック12か否かを判定して(ステップS6)、ネック12を検出する。本願の発明者らは、検証を重ねた結果、所定範囲の温度を有する領域がネック12か否かを、その領域の大きさを基に切り分けることで、ネック12の存在を安定的に検出できるとの知見を得た。
そこで、本実施の形態では、ステップS6において、面積フィルタ(大きさを基に選別するフィルタ)を用いて、異常候補領域22の面積が、所定の下限値以上、所定の上限値以下であるか否かを、ネック12に該当するか否かの判定基準とした。
【0026】
図4(A)に示す二値化画像データ21では、破線で囲んだT1内に、範囲Pの大きさの異常候補領域22がなく、ネック12もしわ16も存在しない。
これに対し、
図4(A)に示す二値化画像データ21において、破線で囲んだT2には、
図4(B)に示すように、範囲Pの大きさに該当する異常候補領域22が存在する。
【0027】
また、判定部20は、異常候補領域22の大きさに加え、異常候補領域22の細長度(一方向の長さが他方向に比べて長くなっているレベル)を基準にして、異常候補領域22がネック12に該当するか否かを検出することも可能である。これは、検証の結果、ネック12が、真円状や、正方形状ではなく、細長い形状に形成されることが解明されたためである。
本実施の形態では、解析手段15の入力用デバイス(例えば、キーボード)からの入力によって、異常候補領域22の細長度を算出するか否かを選択可能である。
【0028】
異常候補領域22の細長度を算出することが決定された場合(ステップS7)、
図6(A)、(B)に示すように、判定部20は、異常候補領域22の長軸23及び短軸24の長さを比較して、細長度を算出する(ステップS8)。具体的には、短軸24の長軸23に対する長さ比が、所定の値(本実施の形態では、0.1〜0.5の範囲、好ましくは0.2〜0.4の範囲)以下であれば、異常候補領域22がネック12であると判定され、短軸24の長軸23に対する長さ比が、所定の値を超える場合、異常候補領域22はネック12でないと判定される。
図6(A)に示す異常候補領域22は、ネック12でないと判定される一例であり、
図6(B)に示す異常候補領域22は、ネック12であると判定される一例である。
【0029】
そして、面積フィルタによる判定でネック12であると認定され、かつ、細長度の判定でもネック12であると認定された異常候補領域22が、最終的に、ネック12であると判定される(ステップS9)。
一方、面積フィルタによる判定、又は、細長度による判定のいずれかで、ネック12でないと識別された場合、ステップS9において、その異常候補領域22は、ネック12でないと判定される。
【0030】
そして、細長度の判定を行わないことが、ステップS7で選択された際には、面積フィルタの判定のみによって、ステップS9で、異常候補領域22がネック12であるか否かが判定される。
ステップS4〜S9は、異常候補領域22それぞれに対して行われ、それぞれに対する検出結果は、解析手段15の出力用デバイス(例えば、画面)に出力される(ステップS10)。
【0031】
また、判定部20は、ステップS6において、異常候補領域22が予め定めた大きさの範囲Q(以下、単に「範囲Q」とも言う)か否かによって、異常候補領域22にしわ16が存在するか否かを判定することもできる。範囲Qは、範囲Pとは、異なる大きさの範囲であり、本実施の形態では、範囲Qが範囲Pより小さい。
ネック12に加えて、しわ16も判定するようにしているのは、しわ16が、ネック12に対して異なる大きさに形成されることを、知得したためである。
【0032】
本実施の形態では、正常領域、ネック12の領域、及び、しわ16の領域の各領域が、
図7に示すように、面積の大小において、正常領域<しわ16の領域<ネック12の領域<正常領域の関係にあり、しわ16の領域より面積が小さい正常領域が他の領域に比べ、最も多く検出された。
ここで、しわ16の形成位置は、ネック12の形成位置に比べて、目標厚みに対する厚み差が小さく、正常領域に対する温度差が小さいため、ネック12に加えて、しわ16の検出も行う場合、ステップS3における二値化処理の閾値を低くする(即ち、検出感度を上げる)必要がある。
【0033】
更に、判定部20は、検出されたネック12及びしわ16について、温度計測機14が検出したワーク11の温度分布を基に、ネック12及びしわ16それぞれの温度情報を得て、該当部分の温度情報を基に、ネック12及びしわ16それぞれの目標厚みに対する厚みの割合(即ち、薄さレベル)を算出可能である。
これは、目標厚みに対する薄さレベルによって、ネック12及びしわ16の温度が異なる点に着目したものである。
【0034】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、二値化された画像データにおいて、白と黒を反転させ、所定温度以上の部分を黒、所定温度未満の部分を白で表示してもよい。
また、画像処理部は、温度分布の画像データを必ずしも二値化する必要はなく、3以上の階調に変換してもよい。例えば、3階調に変換された場合、変換後の画像データにおいて、特定の階調に変換された部分を異常候補領域として扱うことができる。但し、画像データを二値化した場合、その後の処理を簡素にすることが可能である。
そして、判定部は、しわの有無の判定は行わなくてもよい。