【解決手段】第1電位同士が互いに時間軸で重ならず、かつ、先方の第2電位の食い間に位置する第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bをそれぞれ第1リセット部11及び第2リセット部12に印加し、それぞれのリセット部から第1出力パルス列C及び第2出力パルス列Dの配列をロジックシステム2で検証し、リセット回路100の自己監視を実行する。
互いに同期し第1電位及び第2電位が交互に切り替わる第1入力パルス列及び第2入力パルス列を有し、前記第1入力パルス列及び前記第2入力パルス列の第1電位が互い相補的な関係を有することを特徴とするリセットパルス列。
前記第1入力パルス列及び前記第2入力パルス列の前記第1電位同士は時間軸で重ならず、かつ、前記第1電位の区間は互いに先方の前記第2電位に位置するように前記第1及び第2の入力パルスのパルス幅と位相が調整されていることを特徴とする請求項1に記載のリセットパルス列。
前記第1入力パルス列及び前記第2入力パルス列は、それぞれ立上りエッジ及び立下りエッジが所定の時間幅をもって繰り返されることで前記第1電位及び前記第2電位が定められ、前記第1入力パルス列の前記第1電位を定める前記立上りエッジ及び前記立下りエッジの両者は時間軸において前記第2入力パルス列の前記第2電位の区間に位置し、前記第2入力パルス列の前記第1電位を定める前記立上りエッジ及び前記立下りエッジは前記第1入力パルス列の前記第2電位の区間に位置することを特徴とする請求項2に記載のリセットパルス列。
前記第1入力パルス列及び前記第2入力パルス列は前記第1入力パルス列及び前記第2入力パルス列とを有する基準入力パルスから所定の間隔で間引きする信号処理回路で生成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリセットパルス列。
前記第1入力パルス列は前記基準入力パルスから前記信号処理回路で前記第2入力パルス列が間引きされ、前記第2入力パルス列は前記基準入力パルスから前記第1入力パルス列が間引きされていることを特徴とする請求項3に記載のリセットパルス列。
前記信号処理回路は前記基準入力パルスを分周するDフリップフロップと前記分周したパルスを演算処理する論理演算回路を有することを特徴とする請求項4に記載のリセットパルス列。
前記基準入力パルスは前記リセットパルス列で生成されるリセット信号で制御される被監視回路で生成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のリセットパルス列。
前記基準入力パルスはウッチドッグタイマで監視され、前記ウッチドッグタイマでの監視結果を示すウォッチドッグタイマ出力と前記第1リセット部から出力される前記第1出力パルス列の第1の論理演算結果と、前記ウォッチドッグタイマ出力と前記第2リセット部から出力される前記第2出力パルス列の第2の論理演算結果の両者に基づき前記ロジックシステムを制御することを特徴とする請求項8に記載のリセット回路。
前記第1リセット部の前記第1の入力端から前記第1の出力端までの電気的特性と、前記第2リセット部の前記第2の入力端から前記第2の出力端までの電気的特性は同じであることを特徴とする請求項8に記載のリセット回路。
前記第1出力端から出力される前記第1出力パルス列と前記第1の入力端から入力される前記第1入力パルス列は同相または逆相であり、前記第2出力端から出力される前記第2出力パルス列と前記第2の入力端から入力される前記第2入力パルス列は同相または逆相であるも、前記第1出力パルス列と前記第1入力パルス列のパルス幅及びパルス周期は同じであり、前記第2出力パルス列のパルス幅及びパルス周期は前記第1出力パルス列のそれらと同じであることを特徴とする請求項8に記載のリセット回路。
被監視回路に供給する電圧を分圧する第1分圧手段及び第2分圧手段と、前記第1分圧手段で生成した電圧を第1参照電圧と比較する第1比較手段と、前記第2分圧手段で生成した電圧を第2参照電圧と比較する第2比較手段と、前記第1入力パルス列で駆動され前記第1分圧手段と前記第1比較手段との接続を切り替える第1スイッチ部と、前記第2入力パルス列で駆動され前記第2分圧手段と前記第2比較手段との接続を切り替える第2スイッチ部とを有し、前記第1比較手段及び前記第2比較手段から各別に出力される第1比較出力信号及び第2比較出力信号の配列に基づき前記被監視回路にリセット信号を出力することを特徴とする請求項8に記載のリセット回路。
被監視回路の温度に感応し所定の温度に達した時にその出力レベルが遷移する第1感温回路及び第2感温回路と、前記第1感温回路及び第2感温回路の前記出力レベルが各別に遷移する第1感温スイッチ及び第2感温スイッチと、前記第1入力パルス列で駆動される第1スイッチ部及び前記第2入力パルス列で駆動される第2スイッチ部とを有し、前記第1スイッチ部及び前記第2スイッチ部は前記所定の温度に達するよりも前であっても各別に前記第1感温回路及び前記第2感温回路の前記出力レベルを遷移させる電流源または電圧源を前記第1感温回路及び前記第2感温回路に各別に供給することを特徴とする請求項12に記載のリセット回路。
前記第1感温スイッチから出力される第1感温出力信号と前記第2感温スイッチから出力される第2感温出力信号との論理演算に基づき前記被監視回路に異常を知らせることを特徴とする請求項13に記載のリセット回路。
前記被監視回路が少なくとも2つの保護回路によってリセットまたは異常検出が実行され、前記少なくとも2つの保護回路には第1リセット手段及び第2リセット手段が用意され、前記第1リセット部及び前記第2リセット部にはそれぞれ前記第1入力パルス列及び前記第2入力パルス列を印加し、前記第1リセット部及び前記第2リセット部からそれぞれ出力される第1出力パルス列及び第2出力パルス列を取り出し、前記取り出した前記第1出力パルス列及び前記第2出力パルス列を第1論理回路及び第2論理回路に各別に供給し、前記第1論理回路及び前記第2論理回路から各別に取り出した第1リセット信号及び第2リセット信号に基づき前記被監視回路の監視と前記保護回路の診断実行することを特徴とする請求項8に記載のリセット回路。
前記第1論理回路及び前記第2論理回路はいずれも論理積回路を含み、前記第1リセット信号及び前記第2リセット信号に基づき前記被監視回路に対してリセットまたは異常検出を実行することを特徴とする請求項15に記載のリセット回路。
【背景技術】
【0002】
異常検出回路装置は、各種電子装置、半導体装置のたとえば初期化するために広く採用され、たとえばリセット回路、ウォッチドッグタイマ、パワーグッド回路、熱保護回路、過電流保護回路、過電圧保護回路等に適用される。
【0003】
たとえば、CPU(中央処理装置)を備えるマイクロコントローラは、CPUがプログラムを正常に実行することを確保する役割を担う。たとえば、CPUに接続されたシステムにおいては、CPUの動作が不安定になった場合にシステムをリセットすることで、CPUを正常状態に復帰させ、システム側に悪影響が残らないようにすることが行われている。
【0004】
図13は、一般的な従来のリセット回路を模式的に示す。
図13(a)は中央処理装置CPUがnチャネル型MOSFETでリセットされる場合を示す。
図13(a)に示すリセット回路RS1はトランジスタQ1、抵抗R1a,R2a、R3a、コンパレータCMP1及び中央処理装置CPU1で構成される。抵抗R3aはトランジスタQ1の負荷抵抗であり、トランジスタQ1と電源電圧VDDとの間に接続される。リセット回路RS1は中央処理装置CPU1に供給される電源電圧VDDの投入、電圧低下を監視する。リセット回路RS1は、電源電圧VDDの大きさが所定の範囲である時には、トランジスタQ1からのリセット信号rs1はたとえばハイレベルHを出力し、中央処理装置CPU1に対するリセット動作は実行されない。電源電圧VDDの投入時や電源電圧VDDが電圧低下すると、抵抗R1aと抵抗R2aで分圧されコンパレータCMP1の反転端子(−)に印加される電圧レベルはコンパレータCMPの非反転端子(+)に与えられた参照電圧Eaよりも低くなり、コンパレータCMP1の出力はハイレベルHとなり、リセット回路RS1の出力段を構成するトランンジスタQ1はオン状態となり、リセット信号rsはローレベルLとなるので、中央処理装置CPU1に対してリセット動作が実行される。リセットが実行されると、中央処理装置CPU1の動作は初期化される。
【0005】
図13(b)は、中央処理装置CPU2がpチャネル型MOSFETを用いてリセットされる場合を示す。
図13(b)に示すリセット回路RS2はトランジスタQ2、抵抗R1b,R2b,抵抗R3b、コンパレータCMP2及び中央処理装置CPU2で構成される。抵抗R3bはトランジスタQ2の負荷抵抗であり、トランジスタQ2と接地電位GNDとの間に接続される。リセット回路RS2は
図13(a)に示したリセット回路RS1とほぼ同じ回路動作を実行する。すなわち、電源電圧VDDの投入時や電源電圧VDDが低下すると、抵抗R1bと抵抗R2bで設定されるコンパレータCMP2の反転端子(−)の電圧レベルがコンパレータCMP2の非反転端子(+)に与えられた参照電圧Ebよりも低くなり、コンパレータCMP2の出力はハイレベルHとなり、リセット回路RS2の出力段を構成するトランンジスタQ2はオフ状態となり、リセット信号rs2はローレベルLとなるので、中央処理装置CPU2に対してリセット動作が実行される。リセットが実行されると、中央処理装置CPU2の動作は初期化される。
【0006】
図13(c)は、中央処理装置CPU3がCMOSインバータでリセットされる場合を模式的に示す。
図13(c)に示すリセット回路RS3はpチャネル型のMOSFETであるトランジスタQ3、nチャネル型のMOSFETであるトランジスタQ4、抵抗R1c,R2c、コンパレータCMP3及び中央処理装置CPU3で構成される。リセット回路RS3は
図13(a),(b)に示したリセット回路RS1,RS2とほぼ同じ回路動作を実行する。すなわち、電源電圧VDDの投入時や電源電圧VDDの電圧低下時には、抵抗R1cと抵抗R2cで設定されコンパレータCMP3の反転端子(−)の電圧レベルがコンパレータCMP3の非反転端子(+)に与えられた参照電圧Ecよりも低くなり、コンパレータCMP3の出力はハイレベルHとなり、リセット回路の出力段であるトランンジスタQ3はオフ状態、トランジスタQ4はオン状態となり、リセット信号rs3はローレベルLとなるので、中央処理装置CPU3に対してリセット動作が実行される。リセットが実行されると、中央処理装置CPU3の動作は初期化される。
【0007】
図13(a)〜(c)に示したリセット回路RS1,RS2及びRS3の出力段は、リセット回路全体の構成や、制御対象となる各種回路装置、ロジックシステムの回路機能、回路構成などによって相違する。
【0008】
また、上記のようなリセット回路は出力段も含めて、さほどの回路素子を必要としないために
図13に示したリセット回路では、中央処理装置CPU1〜CPU3を除く回路部を集積回路ではなく、個別部品で回路構成する場合が少なくない。こうした回路構成では、たとえば
図13(a)に示したリセット回路RS1においては、抵抗R1a,R2a,R3a、コンパレータCMP1、及びトランジスタQ1は個別部品でたとえばプリント基板に実装される。
【0009】
リセット回路RS1を個別部品で構成するならば、リセットの対象となる各種の電子回路装置、電子機器の違いに柔軟に対応できるというメリットが得られる。しかし、プリント基板に実装される電子部品数が増加し配線の信頼性の確保に努めなければならない。たとえば、トランジスタQ1等の電子部品がプリント基板に適切な位置にかつ、電気的に支障なく接続されていることを確認しなければならない。また、各電子部品が、ショートや、オープンという不適切な状態ではなく適切に接続されていることも確認しなければならない。
【0010】
特にリセット回路では電子部品のオープンやショートが正常な回路動作とは判別ができなくなるという不具合が生じる。たとえば、
図13(a)のリセット回路RS1を例にとって説明する。前にも述べたが、リセット回路RS1では、電源電圧VDDが正規な範囲で動作している時は、トランジスタQ1から出力されるリセット信号rs1はたとえば、ハイレベルHに設定されている。ここで、抵抗R3aの両端が仮にショートした場合を想定すると、トランジスタQ1から出力されるリセット信号rsは常時ハイレベルHとなる。したがって、抵抗R3aがショートした異常状態と正常状態との区別ができなくなるという不具合が生じる。また、トランジスタQ1のソースSが接地電位GNDに接続されずにオープン状態に置かれたとすると、トランジスタQ1から出力されるリセット信号rs1はハイレベルHを維持したままとなるので、本来リセットを実行しなければならない状態であるにも関わらず正常状態として処理されるという不具合が生じる。
【0011】
さて、上述の
図13(a)のリセット回路RS1においては、電源電圧VDDが正規な範囲である時はハイレベルHのリセット信号rs1を、電源電圧VDDが正規な範囲から外れた時にはローレベルLの信号を中央処理装置CPU1に供給するようにしたものであった。しかし、当然なことではあるが、この逆のケースも起こる。すなわち、電源電圧VDDが正規な範囲である時はローレベルLのリセット信号rs1を、電源電圧VDDが正規な範囲から外れた時にはハイレベルHの信号を中央処理装置CPU1に供給する場合である。こうした場合にはたとえば抵抗R3aがオープンもしくはトランジスタQ1のドレイン−ソースがショートした時に起こる。こうした時には本来リセット回路RS1自体は不良であるが、リセットは実行されず、中央処理装置CPU1は正常な状態として判定しまうこととなる。
【0012】
上述の不具合は
図13(a)だけではなく、
図13(b),(c)においても同様に生じうる。なお、リセット回路RS1〜RS3を使用する前の初期段階においては、こうした不具合は検査等で確実に排除することができる。しかし、リセット回路がロジックシステム等の電子機器に搭載され、しばらくの使用によって発生しうる回路ショートや回路オープンなどの不具合に対してはリセット回路自体の不具合を発見し、特定することには困難が伴う。
【0013】
リセット回路に関して既に知られた公知文献としては、たとえば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に紹介されている。
【0014】
特許文献1は、ラッチするウォッチドッグフラグを複数有し、一定時間内に複数の機能について異常検出を行うことが出来る回路構成を開示する。
【0015】
特許文献2は、第1異常検出部と第2異常検出部があり、第2異常検出部は、監視要求メッセージ信号に対して一定時間内に監視制御部の返信が無い時、第2異常検出部が異常検出パルスを出力するという監視制御部に正常な動作状態に復帰出来る回路構成を開示する。
【0016】
特許文献3は、リセット動作を止める信号と初期化起動信号の2つを分けて、電源が供給する電圧が低過ぎる時次段の回路動作を止め、供給電圧が正常に回復した後、初期化起動信号を出力する回路構成を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は本発明にかかる第1の実施形態を示すリセットパルス列及びリセット回路を示す。とりわけ本発明にかかるリセットパルス列がロジックシステムのリセット回路に適用される場合の概念図を示す。
【0033】
本発明にかかるリセット回路100は、リセット手段1及びロジックシステム2(被監視回路)を備える。リセット手段1は第1リセット部11及び第2リセット部12を備える。したがって、本発明のリセット回路100の1つの特徴は2つのリセット部を備える。第1リセット部11及び第2リセット部12には電源端子VPPより電源電圧vppが供給される。電源電圧vppはロジックシステム2にも供給されている。ロジックシステム2の一例としてはたとえば中央処理装置(以下CPUと記す)が挙げられる。ロジックシステム2は、リセット手段1の監視対象及び制御対象となる。
【0034】
リセット手段1を構成する第1リセット部11には第1入力端Ti1及び第1出力端To1が設けられ、第2リセット部12には第2入力端Ti2及び第2出力端To2が設けられる。第1リセット部11の第1入力端Ti1から第1出力端To1までの電気的な入出力特性と、第2リセット部12の第2入力端Ti2から第2出力端To2までの電気的な入出力特性はほぼ同じになるように内部の回路構成が成されている。第1リセット部11及び第2リセット部12の回路は端的にいうとスイッチング機能を有している。したがって、第1入力端Ti1及び第2入力端Ti2にそれぞれ入力されるパルス信号は他の信号や電圧と比較され、オンオフを繰り返した後、第1出力端To1及び第2出力端To2にそれぞれ出力される。
【0035】
第1入力端Ti1には第1入力パルス列Aが、第2入力端Ti2には第2入力パルス列Bがそれぞれ入力される。第1入力パルス列Aと第2入力パルス列Bは互いに同期している。
【0036】
第1入力パルス列Aと第2入力パルス列Bの周期、パルス幅、パルス振幅値はほぼ同じ大きさに設定されている。しかし、両者入力パルス列には所定の位相差が与えられている。両者パルス列の好ましい関係は相補的に置くことである。すなわち、一方の入力パルス列がハイレベルHであるときに他方のパルス列はローレベルLに置かれている。好ましくは一方の入力パルス列の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジは、他方の入力パルス列の立下りエッジ及び立ち上がりエッジとはそれぞれ重ならないようにハイレベルHおよびローレベルLを構成することである。なお、本書ではハイレベルHおよびローレベルLとは別に第1電位および第2電位なる語句を用いている。本書で第1電位とは2つのパルス列が互いに重ならないレベルに設定されたハイレベルHまたはローレベルLを指している。こうした関係を
図1に示した第1入力パルス列Aと第2入力パルス列Bについて説明すると、第1電位はハイレベルHということになる。なぜならば、ハイレベルH同士は時間軸で重ならないように構成しているからである。これに対して両者のローレベルL同士には重なったパルス区間が存在している。こうした重なったパルス区間を有するほうが第2電位に相当する。なお、本書での時間軸とは、第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bが形成される時間の進みを言うが、第1電位及び第2電位を維持する時間の区間でもある。
【0037】
第1入力端Ti1に第1入力パルス列Aが入力されると、第1出力端To1には第1入力パルス列Aのパルス周期、パルス幅、パルス振幅値とほぼ同じで極性が反転された第1出力パルス列Cが出力される。また第2入力端Ti2に第2入力パルス列Bが入力されると、第2出力端To2には第2入力パルス列Bのパルス周期、パルス幅、パルス振幅値とが同じで極性が反転された第2出力パルス列Dが出力される。
【0038】
ここで第1出力パルス列Cおよび第2出力パルス列Dと、第1電位および第2電位の関係について述べる。第1出力パルス列Cおよび第2出力パルス列Dをみると両者で重なったパルス区間が存在していないのはローレベルLであり、ハイレベルHは一部の区間で重なっていることが分かる。したがって第1電位にはローレベルLが、第2電位にはハイレベルHがそれぞれ相当することになる。こうしたことは先に述べた第1入力パルス列Aと第2入力パルス列Bとの関係とは逆転していることがわかる。
【0039】
図1に示した一実施形態では第1リセット部11および第2リセット部12の入出力特性が論理を反転させる特性であるために第1電位と第2電位の立場が入れ替わったが、こうした関係は入出特性に応じて変化することになる。いずれにしても本発明の一実施形態ではロジックシステム(被監視回路)2を初期化するのはローレベルLに設定されているので第1出力パルス列Cおよび第2出力パルス列Dの第1電位はローレベルLになるように設定される。本発明の一実施形態では入力パルス列または出力パルス列の第1電位がロジックシステム(被監視回路)2を初期化するときの電位として設定される。
【0040】
第1リセット部11及び第2リセット部12の少なくとも一方を構成する回路素子の一部がオープン状態またはショート状態に陥ると第1出力端To1及び第2出力端To2の少なくとも一方は第1出力パルス列C、第2出力パルス列Dのような正規のパルス列が出力されるのではなく、ハイレベルHまたはローレベルLに固定されたレベルとなるので、両者の出力パルス列の配列をたとえばロジックシステム2で判定することでリセット手段1が正常に動作しているかどうかを知ることができる。たとえば、リセット手段1が正常に作動している場合はたとえばLEDの青ランプが点灯し、異常であると判定された時にはたとえばLEDの赤ランプを点灯せるようにすればロジックシステム2の使用者にリセット回路100の良否を告知することができる。
【0041】
本発明でのリセット手段1は第1リセット部11と第2リセット部12の2つのリセット部で構成する。このことはリセット回路100を構成する電気的素子数をできるだけ抑えるという立場からすると必ずしも好ましいこととは言えない。しかし、集積回路が広く普及し、かつ微細化が大幅に進む昨今では集積度が大幅に増大しない限りコストに大きな影響を与えることはなくなってきている。むしろ、たとえば自動車の機能安全規格としてISO26262(ISO:International Organization for Standardization
:国際標準化機構)で規定されているように、車載電子システム、特に車両に搭載される電子機器、CPUの安全性を確保しなければならない。こうした機能安全性の要求は、今後は他の業界にも拡がっていくことが予測される。本発明にかかるリセットパルス列及びリセット回路はCPUのリセット回路に限らずに広くロジックシステムのリセット回路として有用である。また、本発明にかかるリセットパルス列はリセット回路だけではなく、異常検出回路の入力信号または出力信号として利用することもできるので、その用途は広い。
【0042】
第1入力端Ti1及び第2入力端Ti2に上記した関係の第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bを入力するのは、第1リセット部11を診断している間、第2リセット部12が電源端子VPPの電源電圧vppを監視するためである。
【0043】
まず、リセット手段1を第1リセット部11または第2リセット部12のいずれか一方でのみ構成した場合を想定してみる。第1入力パルス列Aまたは第2入力パルス列Bで診断されている最中に電源電圧vppを監視することができなくなる。電源電圧Vppを監視するリセット回路を示す
図1を用いて、第1リセット部11のみの場合を説明すると、第1入力パルス列Aが第2電位(ローレベルL)に入力した区間では、第1リセット部11が電源電圧Vppの電圧値を監視している。電源電圧Vppが正常の場合、第1リセット部11はハイレベルHを出力し、ロジックシステム2に正常と知らされる。
【0044】
また、前述のように、第1リセット部11自身が故障して、電源電圧Vppが低下しても、ハイレベルHを出力する可能性がある。そこで、第1リセット部11が正常に動作出来るかどうかを診断する必要が生じる。一般的には、監視する対象(
図1では電源電圧Vpp)が正常でも、意図的に第1リセット部11の出力を変化され、すなわち監視用の第2電位と違い第1電位を入力し、第1リセット部11の出力信号Cが正常のハイレベルHから異常のローレベルLに変化することをロジックシステム2で確認することで、第1リセット部11自身が正常と判断出来る。
【0045】
しかし、電源電圧Vppが正常でも、第1リセット部11に意図的に異常信号を出力することで、ロジックシステム2が間違えてシステムに異常あると判断し、システムにリセットあるいは停止されることが出てくる。一般的には、第1リセット部11が第1電位に入力される診断期間中では、該リセット部の出力を遮断する、すなわち診断期間中では第1リセット部11が電源電圧の監視をしないことになる。
【0046】
そこで、本発明では第1電位同士が時間軸で重ならないように構成した2つの入力パルス列で2つのリセット部をそれぞれ駆動するようにしている。
【0047】
また本書では、第1リセット部11または第2リセット部12で診断するために、これらのリセット部に第1電位が入力され、第1リセット部11または第2リセット部12に電源電圧VPPの大きさを監視するために、第2電位が入力される。
【0048】
図2は本発明にかかる第2の実施形態を示す。
図1と同じ箇所には同じ符号を付与している。
図1に示した第1の実施形態との違いは次の2点である。第1にロジックシステム2から基準入力パルスCLKが出力されるようにしていることである。第2に信号処理回路3を設け基準入力パルスCLKを信号処理回路3で所定の処理を施した後、リセット手段1に入力するようにしたことである。基準入力パルス信号CLKを利用してリセット手段1を作動させるのが
図2に示したリセット回路100Aである。ただし、基準入力パルス信号CLKをそのままリセット手段1に印加する方法では本発明の目的を達成することはできないので信号処理回路3を用意し、既に用意されている基準入力パルスCLKを元にしてリセットパルス列を生成する。
【0049】
ロジックシステム2から出力される基準入力パルスCLKは、周期、パルス幅がある大きさに固定された、いわゆる規則性をもったパルス群で構成される。パルスのハイレベルHとローレベルLのパルス幅の比、すなわちパルスデューティ比は、用途、使用条件等に応じて随時設定すればよい。基準入力パルスCLKには説明の便宜上、時間軸に沿って符号p1,p2,p3,p4,p5及びp6をそれぞれ付している。
【0050】
第1入力パルス列Aはパルス列の構成上、基準入力パルスCLKのパルスp1,p3及びp5が抽出されたパルス列と等価である。言い換えれば、基準入力パルスCLKのパルスからパルスp2,p4及びp6が間引きされたパルス列と等価である。第2入力パルス列Bはパルス列の構成上、基準入力パルスCLKのパルスp2,p4及びp6が抽出されたパルス列と等価である。言い換えれば、基準入力パルスCLKからパルスp1,p3及びp5が間引きされたパルス列と等価である。さらに換言すれば第2入力パルス列Bは基準入力パルスCLKから第1入力パルス列が間引きされたパルス列と等価である。
【0051】
第1入力パルス列Aと第2入力パルス列Bの特徴は第1電位たとえばハイレベルH同士が時間軸で重ならないように構成される。すなわち、ハイレベルHは先方の第2電位すなわちローレベルLの区間に置かれるように両者の入力パルス列に所定の位相差が与えられている。なお、
図2には第1入力パルス列Aと第2入力パルス列BのハイレベルH同士が重ならないものを示した。しかし、ハイレベルHとローレベルLとを入れ替え、ローレベルLを第1電位とし、ハイレベルHを第2電位に設定する論理構成の場合には2つのパルス列のローレベルL同士が時間軸で重ならないように構成しなければならない。
【0052】
第1入力端Ti1に第1入力パルス列Aを印加すると、第1出力端To1から第1出力パルス列Cが出力される。第1出力パルス列Cは、第1入力パルス列Aの極性が反転されたパルス波形となる。したがって、本発明に用いた第1リセット部11は実質的にはインバータと同じ機能を有する。なお、第1リセット部11において、第1入力パルス列Aと第1出力パルス列Cとの極性関係は必ずしも反転させる必要はなく同じ極性であってもよい。
【0053】
第2入力端Ti2に第2入力パルス列Bを印加すると、第2出力端To1から第2出力パルス列Dが出力される。第2出力パルス列Dは、第2入力パルス列Bの極性が反転されたパルス波形となる。したがって、本発明に用いた第2リセット部12は実質的にはインバータと同じ機能を有し、第1リセット部11と同じ入出力特性を示す。
【0054】
リセット手段1が正常な動作状態では第1出力パルス列CがローレベルLである時、第2出力パルス列Dは必ずハイレベルHでなければならない。その時、第2出力パルス列DがローレベルLであるとすると、たとえば、第2リセット部12に何らかの異常が発生していること、あるいは電源電圧vppが所定の範囲から逸脱していることがロジックシステム2側で判定することができる。なお、第1リセット部11及び第2リセット部12のいずれか一方または両者が異常に陥ることも想定されるが、その時には互いに監視するパルス列があらかじめ定められたパルスの配列から外れていることにより異常状態であることをロジックシステム2側で判定することができる。
【0055】
図3は
図1、
図2に示したリセット手段1の具体的な回路構成図を示す。リセット手段1は電源端子VPPを共有する第1リセット部11と第2リセット部12を有する。第1リセット部11は第1入力端Ti1及び第1出力端To1を有し、第2リセット部12は第2入力端Ti2及び第2出力端To2を有する。第1リセット部11及び第2リセット部12の内部回路はほぼ同じである。したがって、電気的な入出力特性は同じである。すなわち、第1入力端Ti1から第1出力端To1までの電気的特性と第2入力端Ti2から第2出力端To2までの電気的特性は同じになるように構成される。第1リセット部11及び第2リセット部12は、第1入力端Ti1及び第2入力端Ti2にそれぞれ印加される第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bの第1電位(ハイレベルH)及び第2電位(ローレベルL)に応じて第1電位(ローレベルL)または第2電位(ハイレベルH)を出力する。電源端子VPPに供給される電源電圧vppの大きさが所定の大きさよりも低くなると、第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bの状態に関わらず、第1出力端To1及び第2出力端To2の電圧レベルはローレベルLに固定される。すなわち、第1リセット部11及び第2リセット部12は、いずれもが電源電圧vppの大きさを監視する機能を有する。
図3に示した本発明の一実施の形態では、電源電圧vppの大きさが所定値を下回ると第1出力端To1及び第2出力端To2の電圧レベルはいずれもがローレベルLに固定される。したがって、両出力端の電圧レベルが共にローレベルLを維持している時にロジックシステム2は電源電圧vppが低下していると判定する。
【0056】
第1リセット部11は、スイッチング素子QA、トランジスタQ11、コンパレータCMP11、抵抗R11,R12,R13を有する。スイッチング素子QAはたとえばpチャンネル型MOSFETで構成され、そのゲートGは第1入力端Ti1に接続され第1入力パルス列Aが印加される。スイッチング素子QAのソースSは電源端子VPPに、そのドレインDは抵抗R11の第1端にそれぞれ接続される。抵抗R11の第2端は抵抗R12の第1端に、その第2端は接地電位GNDにそれぞれ接続される。
【0057】
コンパレータCMP11の反転入力端(−)は、抵抗R11と抵抗R12の共通接続点に接続され、その非反転入力端(+)には参照電圧E1が印加される。コンパレータCMP11は電源電圧vppの大きさが所定の範囲であるのか、それとも逸脱しているのかのいずれかを検知する。スイッチング素子QAがオン状態である時、そのドレインDにはほぼ電源電圧vppとほぼ等価な電圧が現われる。その電圧は抵抗R11と抵抗R12で構成される分圧手段で決められた分圧をコンパレータCMP11の反転入力端(−)に印加される。分圧された電圧はコンパレータCMP11の非反転入力端(+)に与えられた参照電圧E1と比較される。両者電圧の比較結果に基づきコンパレータCMP11の出力レベルを遷移させ、コンパレータCMP11の出力に接続されるトランジスタQ11の出力すなわち第1出力端To1に第1出力パルス列Cを出力する。
【0058】
第2リセット部12は、第1リセット部11と同じ回路を採用し、スイッチング素子QB、トランジスタQ12、コンパレータCMP12、抵抗R14,R15及びR16を有する。スイッチング素子QBはトランジスタQAと同じpチャンネル型MOSFETで構成され、そのゲートGは第2入力端Ti2に、そのソースSは電源端子VPPに、そのドレインDは抵抗R14の第1端にそれぞれ接続される。抵抗R14の第2端は抵抗R15の第1端に、その第2端は接地電位GNDにそれぞれ接続される。
【0059】
コンパレータCMP12の反転入力端(−)は、抵抗R14と抵抗R15との共通接続点に接続され、その非反転入力端(+)には参照電圧E2が印加される。コンパレータCMP12は電源電圧vppの大きさが所定の範囲であるのか、それとも逸脱しているのかのいずれかを検知する。スイッチング素子QBがオン状態である時、そのドレインDにはほぼ電源電圧vppとほぼ等価な電圧が現われる。その電圧は抵抗R14と抵抗R15の抵抗比に分圧され、分圧された電圧がコンパレータCMP12で参照電圧E2と比較され、両者の比較結果に基づきコンパレータCMP12の出力レベルを遷移させ、コンパレータCMP12の出力に接続されるトランジスタQ12の出力すなわち第2出力端To2に第2出力パルス列Dを出力する。なお、参照電圧E2は参照電圧E1と別々に用意するのではなく共用してもかまわない。
【0060】
図4は本発明にかかる第3の実施形態を示す。第2の実施形態にかかるリセット回路100Aと同じ箇所には同じ符号を付与した。
図4に示したリセット回路100Bは、リセット回路100Aとは、第1にウォッチドッグタイマ6を用いたこと、第2に論理積回路AND1,AND2を用いたこと、第3にロジックシステム2の具体的な一例としてCPU2aを採用したことで相違する。ウォッチドッグタイマ6はCPU2aから出力される基準入力パルスCLKが正常かどうかを監視するタイマである。なお、第3の実施形態(
図4)では、リセット部1、信号処理回路3、ウォッチドッグタイマ6、論理積回路AND1,AND2、及び中央処理装置2aは1つのICに内蔵する必然性はない。たとえば、これらの回路部をまったく別々に用意することも可能であるし、これらの回路を1〜2のICで構成し、さらに1〜2の個別部品の組み合わせで構成してもよい。
【0061】
ウォッチドッグタイマ6から出力されるウォッチドッグタイマ出力WDTは、本発明の一実施形態では、CPU2aから出力される基準入力パルスCLKが正常である時はハイレベルHを維持し、そうでない時にはローレベルLを一定時間出力するように構成される。
【0062】
論理積回路AND1は第1出力端To1から出力される第1出力パルス列Cとウォッチドッグタイマ出力WDTを論理積演算し、その論理演算結果を第1リセット信号EとしてCPU2aに供給する。ウォッチドッグタイマ6の機能により、基準入力パルスCLKが正常であると判定された時にはウォッチドッグタイマ出力WDTはハイレベルHを出力する。したがって、論理積回路AND1の出力としては第1出力パルスCと同じ極性である第1出力信号Eとして出力される。基準入力パルスCLKが異常であると判断された時にはウォッチドッグタイマ出力WDTはローレベルLとなり、論理積回路AND1から出力される第1リセット信号EはローレベルLとなる。
【0063】
論理積回路AND2は第2出力端To2から出力される第2出力パルス列Dとウォッチドッグタイマ出力WDTを論理積演算し、その論理演算結果を第2リセット信号FとしてCPU2aに供給する。基準入力パルスCLKが正常であると判定された時にはウォッチドッグタイマ出力WDTはハイレベルHを出力する。したがって、論理積回路AND2の出力としては第2出力パルス列Dと同じ極性である第2リセット信号Fとして出力される。基準入力パルスCLKが異常である時にはウォッチドッグタイマ出力WDTはローレベルLとなり、論理積回路AND2から出力される第2リセット信号FはローレベルLとなる。
【0064】
図4において、第1リセット部11及び第2リセット部12の内部回路は
図3に示したものを採用することができる。また、信号処理回路3から出力される第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bは
図2で採用したものと同じであるので説明は省略する。いずれにしても
図4に示すリセット回路100Bは、基準入力パルスCLKを監視するウォッチドッグタイマ6を設け、そのウォッチドッグタイマ出力WDTと第1出力パルス列Cまたは第2出力パルス列Dの組み合わせで被制御対象であるCPU2aを制御するようにしたことで
図1、
図2とは相違する。
【0065】
図5は
図4に示した第3の実施形態の正常動作時のタイムチャートを示す。以下、
図4を参照して
図5(a)〜(g)について説明する。各パルスは
図5を正視して左側から右側にむかって時間が経過するとしている。なお既に述べたがこうした時間の進み(経過)は本発明での時間軸に対応する。
【0066】
図5(a)はCPU2aから出力される基準入力パルスCLKを示す。基準入力パルスCLKは
図2に示した基準入力パルスCLKと同じである。基準入力パルスCLKには説明の便宜上、パルスが発生する順に符号p1,p2,p3,及びp4を付している。また、ハイレベルHのパルス幅は符号W1で、ローレベルLのパルス幅は符号W2でそれぞれ示す。パルス幅は、W1=W2に設定しているが、パルスデューティ比の設定は設計的事項の1つであり、リセット回路100Bの動作スピードなどに基づき決定すればよい。
【0067】
図5(b)は第1入力パルス列Aを示す。第1入力パルス列Aはパルスの構成上、基準入力パルスCLKのパルスp1,p3が抽出されたパルス列と等価であり、第1入力端Ti1に印加される。見方を変えると第1入力パルス列Aは、基準入力パルスCLKのパルスp2,p4が間引きされたパルス列と等価である。第1入力パルス列Aは立上りエッジer1から立下りエッジef1までの区間及び立上りエッジer3から立下りエッジef3までの区間がハイレベルHに、立下りエッジef1から立上りエッジer3までがローレベルLにそれぞれ相当する。
図5(b)に示す第1入力パルス列Aにおいて、ハイレベルHの区間が第1電位に対応し、ローレベルLの区間が第2電位に対応する。したがって、立上りエッジ及び立下りエッジは所定の時間をもって繰り返されることで第1電位及び第2電位が定まる。ハイレベルHの区間のパルス幅W1aは基準入力パルスのパルス幅W1と同じでありパルス幅W2とも同じである。立上りエッジer1から次の立上りエッジer3まで、さらに立上りエッジer3から図示しない次の立上りエッジまでの時間はあらかじめ所定の大きさに設定される。
【0068】
図5(c)は第2入力パルス列Bを示す。第2入力パルス列Bは基準入力パルスCLKのパルスp2,p4が抽出されたパルス列と等価であり、第2入力端Ti2に印加される。見方を変えると第2入力パルス列Bは基準入力パルスCLKのパルスp1,p3が間引きされたパルス列と等価である。第2入力パルス列Bは立上りエッジer2から立下りエッジef2までの区間がハイレベルHに、立下りエッジef2から立上りエッジer4までがローレベルLにそれぞれ相当する。
図5(c)に示す第2入力パルス列Bにおいて、ハイレベルHが第1電位に対応し、ローレベルLが第2電位に対応する。ハイレベルHの区間のパルス幅W1aは基準入力パルスのパルス幅W1と同じでありパルス幅W2とも同じである。
【0069】
ここで
図5(c)に示した第2入力パルス列Bと、
図5(b)に示した第1入力パルス列Aの時間軸での位置関係を比較すると、第2入力パルス列BのハイレベルH(第1電位)は、第1入力パルス列AのローレベルL(第2電位)の区間に位置していることが分かる。すなわち、立上りエッジer2及び立下りエッジef2は第1入力パルス列AのローレベルL(第2電位)の区間に存在する。同様に立上りエッジef4及び立下りエッジef4も第1入力パルス列のローレベルL(第2電位)の区間に位置している。また第1入力パルス列AのハイレベルH(第1電位)は、第2入力パルス列のローレベルL(第2電位)の区間に位置している。すなわち、立上りエッジer1及び立下りエッジef1は第2入力パルス列のローレベルL(第2電位)の区間に位置させていることが分かる。同様に第1入力パルス列Aの立上りエッジef3及び立下りエッジef3も第2入力パルス列のローレベルL(第2電位)の区間に存在させている。
【0070】
なお、リセット手段1の回路構成に応じて第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bにおいて、ハイレベルHとローレベルLを入れ替えた各パルス列を用いることもできる。この場合にはローレベルLが第1電位として、ハイレベルHが第2電位としてそれぞれ対応することになる。
【0071】
図5に示した第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bの第1電位すなわちハイレベルH同士が時間軸で重ならないように構成する。すなわち、これらのハイレベルHは先方のローレベルすなわち第2電位に位置するよう配慮している。
【0072】
図5(d)はウォッチドッグタイマ6から出力されるウォッチドッグタイマ出力WDTを示す。基準入力パルスCLKは
図5(a)に示すように正常に出力されているのでウォッチドッグタイマ出力WDTはハイレベルHを出力する。
【0073】
図5(e)は第1出力端To1から出力される第1出力パルス列C及び第1論理積回路AND1から出力される第1出力信号Eを示す。第1リセット部11が正常に作動している場合は第1出力パルス列C及び第1出力信号Eは、
図5(b)に示した第1入力パルス列Aの極性が反転されたものと等価となる。
【0074】
図5(f)は第2出力端To2から出力される第2出力パルス列D及び第2論理積回路AND2から出力される第2出力信号Fを示す。第2リセット部12が正常に作動している場合は第2出力パルス列D及び第2出力信号Fは、
図5(c)に示した第2入力パルス列Bの極性が反転されたものと等価となる。
【0075】
図5(g)はリセット手段1を含むリセット回路100B全体が正常であるのか異常であるのかを示す総合判定を示す。
図5(e),(f)に示すように第1出力パルス列Cと第2出力パルス列Dは所定の関係をもって出力されているので、リセット回路100Bは正常として判定される。ここで所定の関係とは、第1出力パルス列CがローレベルLである時には第2出力パルス列Dは必ずハイレベルHであり、第2出力パルス列DがローレベルLである時には第1出力パルス列Cは必ずハイレベルHであることを指している。
【0076】
図6は
図4に示す第4の実施形態において、基準入力パルスCLKが信号処理回路3及びウォッチドッグタイマ6に正しく印加されていない場合の、いわゆるCPU2aが異常状態でのタイムチャートを示す。
【0077】
図6(a)はCPU2aに何らかの不具合が生じ基準入力パルスCLKが出力されず、たとえば、時間軸において常時ローレベルLに維持された状態を示す。
【0078】
図6(b)は信号処理回路3から出力される第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bを示す。第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bは、
図6(a)に示す基準入力パルスCLKに不具合が生じているので、たとえば常時ローレベルLの異常状態を維持する。
【0079】
図6(c)はウォッチドッグタイマ6の監視信号WDTを示す。監視信号WDTは時刻t0〜t1ではハイレベルHになるように設定される。時刻t0はウォッチドッグタイマ6のスタート時刻であり、時刻t1はCPU2aから出力される基準入力パルスCLKの到来をウォッチドッグタイマ6が退避している時刻である。すなわち、時刻t0〜t1の区間、ウォッチドッグタイマ6はCPU2aから基準入力信号CLKが正しく出力されているかどうかを待っている時間である。時刻t1に到達しても基準入力パルスCLKがウォッチドッグタイマ6に到来していないことを検知すると、ウォッチドッグタイマ6はたとえばローレベルLを出力し、中央処理装置CPU2aを初期化し、その状態を維持する。時刻t1から所定の時間が経過した時刻t2に到達すると、ウォッチドッグタイマ6はハイレベルHを出力し、中央処理装置CPU2aを再び作動させる。このハイレベルHの区間は時刻t3まで続けられる。すなわち時刻t2〜t3の区間、ウォッチドッグタイマ6はCPU2aから出力される基準入力パルスCLKの到来を待っている。所定の時間が経過した時刻t3でも基準入力パルスCLKが到来されないことを検知すると、ウォッチドッグタイマ6は時刻t1の時と同様にローレベルLを出力し、時刻t4までの区間、再度CPU2aを初期化させる。なお、ウォッチドッグタイマ6が基準入力パルスCLKの到来を待つ時間とその回数、及びCPU2aを初期化させる時間とその回数は設計的事項の1つであり随時設定するとよい。
【0080】
図6(d)は第1リセット部11から出力される第1出力パルス列C及び第2リセット部12から出力される第2出力パルス列Dを示す。第1出力パルス列C及び第2出力パルス列Dは
図6(b)に示す第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bに応動する。電源電圧vppが正常の範囲では、第1リセット部11及び第2リセット部12の入出力特性が同じであり、また、第1入力パルス列A及び第2入力パルス列BはいずれもがローレベルLであるので、第1出力パルス列C及び第2出力パルス列DはいずれもがハイレベルHを出力する。なお、第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bと、第1出力パルス列C及び第2出力パルス列Dとの極性の組み合わせは設計的事項の1つに過ぎない。
【0081】
図6(e)は第1論理積AND1の出力である第1リセット信号E及び第2論理積AND2の出力である第2リセット信号Fを示す。第1リセット信号E及び第2リセット信号Fは、
図6(c)に示す監視信号WDTと
図6(d)に示す第1出力パルス列C及び第2出力パルス列Dとの論理積演算で生成される。結果的には
図6(c)に示す監視信号WDTと同じとなる。
【0082】
図6(f)は、リセット手段1を含むリセット回路100B全体が正常であるのか異常であるのかを示す。総合判定は
図6(e)の信号の配列をCPU2aが検知して判断するが
図5に示す正常状態での配列とは異なり、時刻t1の時点で第1リセット信号Eと第2リセット信号Fが同時にローレベルLになることで異常と判断される。
【0083】
図7は
図4に示す第3の実施形態において第1リセット部11の第1出力端To1が何らかの不具合によりハイレベルHに置かれた第1例の異常状態時でのタイムチャートを示す。この時、説明の便宜上、第2リセット部12は正常状態とする。第1出力端To1がハイレベルHに置かれる要因としては
図3に示す第1リセット部11で抵抗13がショートした場合、トランジスタQ11のドレインD,ゲートG、及びソースSの少なくとも1つが電気的にオープン状態に置かれた場合が想定される。この他にコンパレータCMP11が正常に作動していない場合も想定できる。いずれにしても第1出力端To1がハイレベルHに置かれる異常時では
図7(e)に示す第1出力パルス列C及び第2リセット信号Eは正常時とは異なってくる。
【0084】
図7(a)はCPU2aから出力される基準入力パルスCLKを示す。基準入力信号CLKは正常状態であり、説明の便宜上、パルスが発生する順に、すなわち時間軸に沿って符号p1,p2,p3,及びp4を付している。
【0085】
図7(b)は第1入力パルス列Aを示す。第1入力パルス列Aは基準入力パルスCLKが正常であり、信号処理回路3も正常に作動しているとすると、第1入力パルス列Aは信号処理回路3から正常に出力される。第1入力パルス列Aはパルスの構成上、基準入力パルスCLKのパルスp1,p3が抽出されたパルス列と等価であり、第1入力端Ti1に印加される。見方を変えると第1入力パルス列Aは、基準入力パルスCLKのパルスp2,p4が間引きされたパルス列と等価である。
【0086】
図7(c)は第2入力パルス列Bを示す。第2入力パルス列Bも第1入力パルス列Aと同様に信号処理回路3から正常に出力される。第2入力パルス列Bはパルスの構成上、基準入力パルスCLKのパルスp2,p4が抽出されたパルス列と等価であり、第2入力端Ti2に印加される。見方を変えると第2入力パルス列Bは、基準入力パルスCLKのパルスp1,p3が間引きされたパルス列と等価である。
【0087】
図7(d)はウォッチドッグタイマ6から出力される監視信号WDTを示す。監視信号WDTは
図7(a)に示す基準入力パルスCLKが正常であるかどうかを監視し、正常である場合はたとえばハイレベルHを異常である場合にはローレベルLをそれぞれ出力するよう設定される。
図7(a)に示す基準入力パルスCLKが正常であるので監視信号WDTはハイレベルHとして出力される。
【0088】
図7(e)は第1リセット部11の第1出力パルス列C及び第1リセット信号Eを示す。第1出力パルス列C及び第1リセット信号Eは正常である場合には
図7(b)に示す第1入力パルス列Aの極性が反転されたものと等しいが、第1リセット部11の第1出力端To1がハイレベルHに置かれているので当然、正常時とは異なる信号波形を示す。まず時刻t11〜t12の区間は第1出力端To1がハイレベルHに置かれる前の状態の正常区間であるので、第1出力パルス列C及び第1リセット信号Eは正常に出力される。時刻t13で第1出力端To1がハイレベルHに置かれたとすると時刻t13以降は異常状態となる。正常状態では符号PR1で示すように時刻t14ではローレベルLとなり、このローレベルLは時刻t15まで継続するが、第1出力端To1がハイレベルHに置かれるため時刻t13以降異常状態であるハイレベルHに維持される。
【0089】
図7(f)は第2リセット部12の第2出力パルス列D及び第2リセット信号Fを示す。
図7は、第2リセット部12は正常状態としているので、当然のことながら、第2出力パルス列D及び第2リセット信号Fは正常に出力される。すなわち、第2リセット信号Fは、
図7(c)に示した第2入力パルス列Bの極性が反転されたものと等価になる。
【0090】
図7(g)はリセット手段1を含むリセット回路100B全体が正常であるのか異常であるのかを示す。前述の通り、CPU2aは互いに監視するパルス列があらかじめ定められたパルスの配列から外れた状態を異常と判断する。たとえば、CPU2a内部で、時刻t12から時刻t15の間で、CPU2aが第1リセット信号Eまたは第2リセット信号F電位の切り替えを検知していない場合、CPU2aが異常と判断することができる。すなわち、
図7(e)に示す第1出力パルス列C及び第1リセット信号Eは時刻t14〜t15でローレベルLに切り替わらなかったことから異常と判断される。
【0091】
図8は
図4に示す第4の実施形態において第1リセット部11の第1出力端To1が何らかの不具合によりローレベルLに置かれた第2例での異常状態時でのタイムチャートを示す。この時、第2リセット部12は正常状態とする。なお、記述の
図7は、第1出力端To1がハイレベルHに置かれた場合を想定したが
図8は第1出力端To1がローレベルLに置かれる場合を想定したことで相違する。
【0092】
第1出力端To1がローレベルLに置かれる要因としては
図3に示す第1リセット部11でたとえばトランジスタQ11のドレインDとソースSが何らかの要因でショートした場合や、トランジスタQ11が何らかの要因で常時オン状態に置かれている場合が想定される。この要因としてはたとえばトランジスタQAのソースS、ドレインD及びゲートGの少なくとも1つがオープン状態が推定できる。なお、第1出力端To1がローレベルLに置かれる異常時では
図8(e)に示す第1出力パルス列C及び第1出力信号Eは正常時とは異なるが、
図8(a)〜(d),(f)は
図5に示した
図5(a)〜(d),(f)とそれぞれと同じ、いわゆる正常状態を示す。
【0093】
図8(a)はCPU2aから出力される基準入力パルスCLKを示す。基準入力信号CLKは正常状態であり、説明の便宜上、パルスが発生する順に符号p1,p2,p3,及びp4を付している。
【0094】
図8(b)は第1入力パルス列Aを示す。第1入力パルス列Aも正常状態である。第1入力パルス列Aはパルスの構成上、基準入力パルスCLKのパルスp1,p3が抽出されたパルス列と等価であり、第1入力端Ti1に印加される。見方を変えると第1入力パルス列Aは、基準入力パルスCLKのパルスp2,p4が間引きされたパルス列と等価である。
【0095】
図8(c)は第2入力パルス列Bを示す。第2入力パルス列Bも第1入力パルス列A同様に正常状態である。第2入力パルス列Bはパルスの構成上、基準入力パルスCLKのパルスp2,p4が抽出されたパルス列と等価であり、第2入力端Ti2に印加される。見方を変えると第2入力パルス列Bは、基準入力パルスCLKのパルスp1,p3が間引きされたパルス列と等価である。
【0096】
図8(d)はウォッチドッグタイマ6から出力される監視信号WDTを示す。監視信号WDTは
図8(a)に示す基準入力パルスCLKが正常であるかどうかを監視し、正常である場合はたとえばハイレベルHを異常である場合にはローレベルLをそれぞれ出力するよう設定される。
図7(a)に示す基準入力パルスCLKが正常であるのでウォッチドッグタイマ6は監視信号WDTとしてハイレベルHを出力する。
【0097】
図8(e)は第1リセット部11の第1出力パルス列C及び第1リセット信号Eを示す。第1出力パルス列C及び第1リセット信号Eは正常である場合には
図8(b)に示す第1入力パルス列Aの極性が反転されたものとなるが、第1リセット部11の第1出力端To1がローレベルLに置かれているので当然、正常時とは異なる信号波形となる。まず時刻t21〜t22の区間は第1出力端To1がローレベルLに置かれる前の状態の正常区間であるので、第1出力パルス列C及び第1リセット信号Eは正常に出力される。時刻t23で第1出力端To1がローレベルLに置かれたとすると時刻t23以降は異常状態となる。正常状態時では符号PR2で示すように時刻t24ではローレベルLとなり、このローレベルLは時刻t25まで継続するが、第1出力端To1がローレベルLに置かれるため時刻t23以降は異常状態であるローレベルLを出力する。
【0098】
図8(f)は第2リセット部12の第2出力パルス列D及び第2リセット信号Fを示す。
図8は、第2リセット部12は正常状態としているので、当然のことながら、第2出力パルス列D及び第2リセット信号Fは正常に出力される。すなわち、第2出力パルス列D及び第2リセット信号Fは
図8(c)に示した第2入力パルス列Bの極性が反転されたものと等価になる。
【0099】
図8(g)はリセット手段1を含むリセット回路100B全体が正常であるのか異常であるのかを示す。
図8(e)に示す第1出力パルス列C及び第1リセット信号Eは、時刻t23以前は正常に出力しているにもかかわらず、時刻t23以降は異常であるローレベルLに固定された状態を示している。こうした状態になる原因は、たとえば第1リセット部11が時刻t23で異常を発生している場合、あるいは時刻t23で監視される電源電圧vppが異常になっているにも関わらず、第2リセット部12がそうした異常状態を検知できていない場合が考えられる。いずれにしても、時刻t23〜t24で第1リセット信号Eが正常動作と異なる論理を出力していることや、時刻t26〜t27で第1リセット信号Eと第2リセット信号Fの両方がローレベルLとなっていることなどにより、異常と判断される。
【0100】
図9は
図2、
図4に示した信号処理回路3の具体的な回路構成の一例を示す。信号処理回路3は、DフリップフロップFF1,FF2、論理積回路AND3,AND4、インバータINV1〜5で構成される。
【0101】
信号処理回路3は基準入力パルスCLKを元にして第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bを生成する。
図9に示した信号処理回路3は説明の便宜上シンプルな回路構成を示している。実際の回路構成は、基準入力パルスCLKの周期(周波数)、リセット時間、ウォッチドッグタイマ6での各種設定時間、第1リセット部11及び第2リセット部12の周波数応答特性などにより、特に基準入力パルスCLKを分周するDフリップフロップの段数は変わってくる。
【0102】
信号処理回路3は論理積回路AND3,AND4で構成したが、これらは否定論理積回路NANDや否定論理輪回路NORの組み合わせで構成してもかまわない。
【0103】
図9において、基準入力パルスCLKはDフリップフロップFF1のクロック入力端CPに直接入力される.基準入力パルスCLKはインバータINV1を介してDフリップフロップFF2のクロック入力端CPにも入力される。基準入力パルスCLKは
図2及び
図5(a)に示したものと本質的に同じであるが説明の便宜上、立上りエッジer及び立下りエッジefを付している。
【0104】
DフリップフロップFF1,FF2はクロック入力端CPに入力される基準入力パルスCLKに同期しD入力の値を読み込む。次の基準入力パルスCLKがくるまでの期間、D入力の値を維持、記憶する。こうしたDフリップフロップの特性はよく知られている。
【0105】
DフリップフロップFF1,FF2のそれぞれのQ出力とそれぞれのD入力にはそれぞれインバータINV2及びインバータINV3が接続される。したがって、D入力には一般的にQバー出力が入力される。DフリップフロップにQバー出力が取り出せるものも存在する。こうしたDフリップフロップを用いる場合にはインバータINV2,INV3は不要であり、Q出力とD入力とを直接接続する。
【0106】
DフリップフロップFF1のQ出力には基準入力パルスCLKを2分の1に分周した第1分周パルスXが取り出される。第1分周パルスXは基準入力パルスCLKの立上りエッジerを検知して出力される。DフリップフロップFF2のQ出力には基準入力パルスCLKを2分の1に分周した、第2分周パルスYが取り出される。第2分周パルスYもクロック入力端CPに入力されるパルスの立上りエッジを検知して取り出されるが、インバータINV1によって、基準入力パルスCLKの立上りエッジと立下りエッジが逆転するために、第2分周パルスYは基準入力パルスCLKでの立下りエッジefを基点として出力される。このため、第1分周パルスXと第2分周パルスYとの間にはパルス1つ分のずれが生じる
【0107】
第1論理積回路AND3及び第2論理積回路AND4は第1分周パルスX及び第2分集パルスYを元にしてそれぞれ第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bを生成する。第1論理積回路AND3は第1分周パルスXと、第2分周パルスYをインバータINV4で反転したパルスを論理積演算する。この演算によって第1入力パルス列Aが出力される。
【0108】
第2論理積回路AND4は第2分周パルスYと、第1分周パルスXをインバータINV5で反転したパルスを論理積演算する。この演算によって第2入力パルス列Bが出力される。
【0109】
第1入力パルス列A及び第2入力パルス列BのハイレベルHが第1電位に、ローレベルLが第2電位にそれぞれ対応する。第1入力パルス列Aの第1電位(ハイレベルH)と第2入力パルス列Bの第1電位(ハイレベルH)は時間軸で重ならず、かつ、それらは互いに先方の第2電位(ローレベルL)の区間に位置されるよう両者のパルス列が配置される。
【0110】
第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bのそれぞれの極性を反転させた場合であっても本発明には適用できる。この場合には時間軸で重ならないのは両者ともローレベルLとなり、ローレベルLが第1電位に対応し、ハイレベルHが第2電位に対応する。
【0111】
図10は本発明にかかるリセットパルス列を温度の異常を検出する異常検出回路に用い、延いては温度保護回路に適用する一例を示す。温度保護回路は、たとえば降圧型や昇圧型のスイッチングレギュレータやパワートランジスタが内蔵される各種のリニア回路に付設されることが少なくない。
図10に示すリセット回路は大きく分けると本発明にかかるリセットパルス列を用いたリセット手段と温度の異常を検知する温度検知部で構成される。
【0112】
第1感温回路20は感温素子としてのトランジスタQ21を有する。トランジスタQ21はたとえばバイポーラ型のNPNトランジスタを用いる。
図10には感温素子としてトランジスタQ21の単体を示したが、ダイオードを直列に接続したり、あるいはこうしたダイオードとトランジスタを組み合わせたり、さらには抵抗を組み合わせて構成することができる。本発明の一実施形態では最も簡便な感温素子としてトランジスタQ21を示した。第1感温回路20はトランジスタQ21のベース・エミッタ間の順方向電圧の大きさが温度に依存するという特性を利用し併せてトランジスタのスイッチ特性を利用して所定の温度を検知する。
【0113】
トランジスタQ21のエミッタEは接地電位GNDに接続される。これによって、トランジスタQ21のベースBにはベース・エミッタ間の順方向電圧Vdが直接現れる。順方向電圧は、常温(25℃)では0.7V程度であることが知られている。また、順方向電圧Vdは、マイナス2mV/℃程度で変化することも知られている。したがって、トランジスタQ21が175℃の環境下に置かれると、トランジスタQ21のベースBに0.4Vの電圧が印加されるとトランジスタQ21はオンする。
【0114】
トランジスタQ21のベースBの電位は抵抗R21,R22,R23、トランジスタQ23、及び基準電圧E3によって決められている。トランジスタQ23はトランジスタQ21のオンオフ動作に温度のヒステリシス幅をもたせるために用意される。ここでヒステリシス幅とはトランジスタQ21のオン、オフを同じ温度で行うのではなくオンとオフのタイミングに温度差をもたせるというものである。したがって、温度が常温状態から高温状態に向かって上昇する場合のトランジスタQ21がオンする温度と、高温状態から常温状態に向かって下降する時のトランジスタQ21がオフする温度は同じ175℃ではなく、たとえば150℃に設定するというものである。このためにトランジスタQ21のベース電位、すなわちトランジスタQ21のベース・エミッタ間電圧Vdは175℃を検知する時にはたとえば0.4Vに設定され、150℃を検知する時には0.4Vよりも少し高い0.45Vの2つのレベルが切り替わるようにトランジスタQ23が用意される。
【0115】
リセット手段1bは第1のリセット部11bと第2のリセット部12bを有する。第1のリセット部11bにはスイッチSW21が付設される。スイッチSW21はスイッチ片S1と定電流i1で構成される。スイッチ片S1はたとえばpチャンネル型MOSFETやバイポーラPNPトランジスタで構成される。定電流i1は電源端子VPP側から供給される。定電流i1は、スイッチ片S1と協働し感温素子としてのトランジスタQ21をオンまたはオフさせる。したがって、スイッチSW21は第1感温回路20を常温で作動させることができる。本来トランジスタQ21をオンさせるには第1感温回路20をたとえば175℃の高温に置かなければならないが本発明では常温で第1感温回路20の回路機能を検証することができる。
【0116】
トランジスタQ21のコレクタCには、第1感温回路20のスイッチ出力が取り出される。したがって、トランジスタQ21は感温素子としての回路機能と所定の温度を検知したときに出力されるスイッチング素子としての回路機能を併せもつ。トランジスタQ21のコレクタCには電源端子VPPから定電流i2が供給される。定電流i2はトランジスタQ21の負荷電流である。定電流i2の替わりにたとえば抵抗を用いてもかまわない。
【0117】
トランジスタQ21のコレクタCに出力された感温出力信号はトランジスタQ22のゲートGに加えられる。トランジスタQ22はたとえば、pチャンネル型のMOSFETで構成される。トランジスタQ22のソースSは電源端子VPPに接続され、そのドレインDは抵抗R24を介して接地電位GNDに接続される。
【0118】
インバータINV21の入力はトランジスタQ22のドレインDに接続され、その出力から第1出力パルス列Cbが出力される、なお、インバータINV21の出力はトランジスタQ23のゲートGにも印加される。第1出力パルス列CbがハイレベルHの時にトランジスタQ23はオンし、ノードN2の電位はほぼ接地電位GNDと等しくなる。この時、ノードN1の電位Vn1Lは、Vn1L=E1・R22/(R21+R22)となる。第1出力パルス列CbがローレベルLの時にトランジスタQ23はオフし、この時のノードN1の電位Vn1Hは、V1nH=E1・(R22+R23)/(R21+R22+R23)となり、Vn1H>Vn1Lの関係に置かれる。電位Vn1Lはたとえば175℃に対応する、たとえば0.4Vであり、電位Vn1Hはたとえば150℃に対応する、たとえば0.45Vである。
【0119】
第2の感温回路21の内部回路は第1の感温回路20と同じであるので説明は省略する。また第2のリセット部12bは第1のリセット部11bの内部回路と同じであるので説明は省略する。ただし、第2のリセット部12bは第1入力パルス列Bで駆動されるため、第1入力パルス列Bに対応した第2出力パルス列Dbを出力する。すなわち第2出力パルス列Dbは第1出力パルス列Cbとはたとえば第1電位同士となるロ−レベル同士が時間軸で重ならない位置関係に配列される。
【0120】
本構成により監視の対象となるリニア回路の温度異常を検知(診断)しながら、感温回路21及び22、リセット部11b及び12bが正常動作できるかどうかという自己診断もできる回路を提供する。
【0121】
また、
図3のリセット回路と
図10の感温回路を併用することも可能である。たとえば
図3に示した第1出力パルス列C及び第2出力パルス列Dをインバータを介して
図10のスイッチSW21及びSW22に入力することで、電源電圧vppの異常及び温度異常の両方を検知することができるだけではなく、本発明のポイントとなる自己診断機能も付与することができる。
【0122】
図11は本発明にかかるリセットパルス列を過電圧保護回路に用いる一例を示す。過電圧保護回路はたとえばCPUの電源電圧として供給されるたとえば降圧型や昇圧型のスイッチングレギュレータの出力電圧を監視し、該出力電圧が所定の大きさを超えた時にDC−DCスイッチングレギュレータ全体の回路動作を遮断して、たとえばCPUへの電源電圧の供給を遮断する。なお、過電圧保護回路に用いるリセット手段は
図3に示したリセット手段1と技術的思想が類似する。すなわち、
図3に示すものはたとえばロジックシステム3としてCPUに供給される電源電圧が低下した場合を示すものであった。これに対して、
図11はロジックシステム3の電源電圧が規定の範囲よりも高い方に変動した場合を示しており、いずれもがCPUなどの被監視回路の電圧を監視するものに関するからである。
【0123】
図11に示すリセット手段1dは第1リセット部11d及び第2リセット部12dを有する。第2リセット部12dの内部回路は第1リセット部11と同じであるので説明は省略する。第1リセット部11dはたとえばDC−DCスイッチングレギュレータの出力電圧または該出力電圧に比例した被監視電圧Wを受け入れる。被監視電圧Wは抵抗R41の第1端に印加される。抵抗R41の第2端と抵抗R42の第2端は共通に接続される。抵抗R41と抵抗R42の共通接続点はノードXで示される。抵抗R42の第2端はたとえばpチャンネル型MOSFETで構成されるトランジスタQ41のドレインDに接続される。抵抗R42とトランジスタQ41の共通接続点はノードYで示す。トランジスタQ41のソースSは接地電位GNDに接続される。
【0124】
図11においてトランジスタQ41、インバータINV41、及び第1入力パルス列Aによって本発明のパルス列リセット手段を構成する。リセット手段は被監視対象となる電圧Wと接地電位GNDとの間に直列に接続される。こうした回路構成は記述の
図3に示したトランジスタQA、抵抗R11,R12、及び第1入力パルス列Aによって構成されるリセット手段が電源端子VPP(電源電圧vpp)と接地電位GNDとの間に直列に接続されたものと基本的には同じ回路構成である。
【0125】
図11に示したリセット回路を要約すると次のとおりである。すなわち、CPU等の被監視回路に供給する電圧Wを分圧する第1分圧手段として、抵抗R41,R42が用意される。抵抗R41,R42で生成した電圧Vxは第1比較手段としてのコンパレータCMP41で第1参照電圧としての参照電圧E4と比較される。そして、第1比較手段としてのコンパレータCMP41の出力に接続される第1スイッチ部と、前記第2分圧手段で生成した電圧を第2参照電圧(無符号)と比較する第2比較手段と、前記第2比較手段の出力に接続される第2スイッチ部と、前記第1入力パルス列で駆動され前記第1分圧手段での分圧比を切り替える第1スイッチ部と、前記第2入力パルス列で駆動され前記第2分圧手段での分圧比を切り替える第2スイッチ部とを有する。こうした回路構成によって、第1リセット部11d及び第2リセット部12dは
図10に示したものと同様にそれぞれ第1出力パルス列(Cc)及び第2出力パルス列(Dc)を出力する。なお、第1参照電圧(E4)と第2参照電圧は別々に用意せずに兼用してもかまわない。
【0126】
図12は、リセットまたは異常検出の対象が1つのロジックシステム(被監視回路)2の中に複数存在する場合にリセット及び異常検出をほぼ同時に、かつ、短時間で実行する処理手順を示す。ロジックシステム2がたとえばDC−DCスイッチングレギュレータであるとすると、温度及び過電圧が異常検出の対象となり、リセットの対象となることは既述の
図10〜
図11を用いて説明したとおりである。
【0127】
図12(a)は
図10〜
図11で取り上げた第1出力パルス列Cb,Cc及び第2出力パルス列Db,Dcに基づきほぼ同じタイミングでロジックシステム2を制御する状態を示した模式図である。
【0128】
第1出力パルス列Cbは
図10に示した第1リセット部11bから、同じく第1出力パルス列Ccは
図11に示した第1リセット部11cからそれぞれ出力される。
【0129】
第2出力パルス列Dbは
図10に示した第2リセット部12bから、同じく第2出力パルス列Dcは
図11に示した第2リセット部12cからそれぞれ出力される。
【0130】
第1出力パルス列Cb,Ccは論理積回路AND5に印加される。論理積回路AND5は第1リセット信号Gを出力する。第2出力パルス列Db,Dcは論理積回路AND6に印加される。論理積回路AND6は第2リセット信号Hを出力する
【0131】
第1リセット信号G及び第2リセット信号Hはロジックシステム2に供給される。ロジックシステム2は、第1リセット信号G及び第2リセット信号Hの配列に基づき検証された信号が本来のリセット信号であるか、それとも各被監視回路のリセット部に不具合が生じたのかを判定し、本来のリセット信号であると認定された場合にはリセットの処理を受けつける。もし被監視回路のリセット部に異常が発生したと判定された場合には、たとえばLEDの赤ランプを点灯や音声等で使用者に感温回路20及び21、リセット手段1b及び1cの良否を告知したりすることができる。もちろん、ランプや音声を使わずに所定の時間が経過した後に自動的にリセット動作を実行するようにしてもよい。
【0132】
図12(b)、(c)は
図12(a)に示した第1出力パルス列Cb,Cc及び第2出力パルス列Db,Dcが時間差をもって出力される状態を示す。こうした時間差は第1入力パルス列A及び第2入力パルス列Bに所定のパルス幅と時間差をもたせることでなされる。第1出力パルス列Cbと第2出力パルス列Dbの配列に基づき温度保護回路に対して出力論理の切り替えが実行される。同様に
図11で説明した過電圧保護回路に用いた第1出力パルス列Ccと第2出力パルス列Dcとの配列に基づき過電圧保護回路に対して出力論理の切り替えが実行される。これによって温度保護回路、及び過電圧保護回路の診断を実施しその良否を判定することができる。
【0133】
図12(b)において、第1出力パルス列Cbが正常に出力されると時刻t1〜t2及び時刻t9〜t10の区間でローレベルLを維持し、時刻t2〜t9及び時刻t10以降はハイレベルHを維持する。また、第1出力パルス列Ccが正常に出力されると時刻t5〜t6及び時刻t13〜t14の区間でローレベルLを維持し、時刻t1〜t5、時刻t6〜t13及び時刻t14以降はハイレベルHを維持する。
【0134】
図12(c)には第2出力パルス列の信号Db及びDcを示す。第2出力パルス列Dbが正常に出力されると時刻t3〜t4及び時刻t11〜t12の区間でローレベルLを維持し、時刻t1〜t2、時刻t4〜t11及び時刻t12以降はハイレベルHを維持する。また、第1出力パルス列Ccが正常に出力されると時刻t7〜t8及び時刻t15〜t16の区間でローレベルLを維持し、時刻t1〜t7、時刻t8〜t15及び時刻t16以降はハイレベルHを維持する。
【0135】
図12(d)には論理積回路AND5から出力される第1リセット信号G及び論理積回路AND6から出力される第2リセット信号Hを示す。第1リセット信号Gは第1出力パルス列Cb,Ccによって時刻t1〜t2、時刻t5〜t6、時刻t9〜t10及び時刻t13〜t14でローレベルLを維持し、時刻t2〜t5、時刻t6〜t9、時刻t10〜t13及び時刻t14以降はハイレベルHを維持する。第2リセット信号Hは第2出力パルス列Db,Dcによって時刻t3〜t4、時刻t7〜t8、時刻t11〜t12及び時刻t15〜t16でローレベルLを維持し、時刻t1〜t3、時刻t4〜t7、時刻t8〜t11、時刻t12〜t15及び時刻t16以降はハイレベルHを維持する。
【0136】
第1リセット信号G及び第2リセット信号Hが12(d)に示す信号配列の場合には、温度保護回路、過電圧保護回路の2つの被監視回路はすべて正常であると判定される。時刻t1〜t2、時刻t3〜t4は感温回路が自己診断している時刻であり、時刻t5〜t6、時刻t7〜t8は過電圧保護回路が自己診断している区間である。
【0137】
また、
図12には2つの被監視回路を例示したが、2つ以上の機能診断に適用する場合には
図12に示した回路構成に基づき各被監視回路の機能診断は時間差をもって実行することになる。なお、リセット回路の各部分の自己診断時刻を変動しても構わない。