【解決手段】電極形成方法は、半導体層上に、半導体層の表面を露出する開口を備えた、保護膜を形成する工程と、開口及びその周辺を覆い、その外側の保護膜を露出するパターンを有する絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜を選択的に露出するレジストを形成する工程と、レジストをマスクとして、絶縁膜を除去する工程と、絶縁膜の除去によって露出した、開口内の半導体層の表面に電極を形成する工程と、を有する。
前記絶縁膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜又は窒化酸化シリコン膜のいずれかであり、前記絶縁膜を除去する工程は、エッチャントとしてフッ酸、フッ化アンモニウムとフッ酸との混合液、又は、フッ酸と水との混合液のいずれかを用いたエッチング工程である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の電極形成方法。
前記絶縁膜を形成する工程の後、前記レジストを形成する工程の前に、前記絶縁膜の除去によって生じた残渣を除去する工程を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の電極形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、リフトオフ法を用いた電極形成方法の一例として、
図3に示す方法が考えられる。
図3に示されるGaAs基板31には、SiN膜32、SiO
2膜33及びレジスト35が順次積層されている。そして、SiN膜32、SiO
2膜33及びレジスト35の所定の位置(電極の形成が予定される位置)には開口36が形成されている。この状態で電極材料37が蒸着されることで、レジスト35上と開口36とに電極材料37が積層される(
図3(a))。次に、レジスト35を除去することで、レジスト35上に積層された電極材料37が除去される(
図3(b))。そして、フッ酸をエッチャントとしたエッチング処理によってSiO
2膜33を除去し、電極37aが形成される(
図3(c))。このSiO
2膜33を除去する際のエッチング処理においては、エッチャントに含まれるフッ素残渣39が電極37a上面に残留する虞がある。
【0005】
また、リフトオフ法を用いた電極形成方法の他の例として
図4に示す方法が考えられる。この例のGaAs基板41には、SiN膜42、SiO
2膜43が順次積層されており、SiN膜42の所定の位置(電極の形成が予定される位置)に開口42aが形成されている(
図4(a))。まず、SiO
2膜43がエッチングによって除去されることで、SiN膜42の開口42aが露出する。次に、レジスト45を用いて開口42a以外をマスクする(
図4(b))。この状態で電極材料47が蒸着されることで、レジスト45上と開口42aとに電極材料47が積層される。その後、レジスト45を除去することで、レジスト45上に積層された電極材料47が除去され、SiN膜42の開口42a部分に電極47aが形成される(
図4(c))。
図4に示した例では、レジスト45を現像する際に、GaAs基板41における電極47aの形成が予定される位置(SiN膜42の開口42a)に有機物残渣(現像液、レジスト残渣)49が付着する虞がある。
【0006】
図3、
図4のいずれの方法においても、電極37a,47aが形成された後に、全体に別途SiN膜58が形成されてから、電極37a,47a上にAuメッキ50が施される(
図5)。
【0007】
しかしながら、
図3に示した例では、フッ素残渣39を除去するために別途洗浄をすることは、洗浄液によって電極37aが損傷する虞があり、困難となっている。
【0008】
また、
図4に示した例では、有機物残渣49は、一般に一度付着すると、半導体層の表面から除去し難い。そのため、GaAs基板41と電極47aとの間に有機物残渣が残留してしまう。
【0009】
上述のように電極上にフッ素残渣が残留していたり、GaAs基板と電極との間に有機物残渣が残留していたりすると、
図5に示されるように、イオンマイグレーションの発生によって電極37a,47a部分から金属55が析出し、短絡が発生する虞があった。
【0010】
本発明は、イオンマイグレーションの発生が抑制された電極を形成する電極形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態による電極形成方法は、半導体層上に、半導体層の表面を露出する開口を備えた、保護膜を形成する工程と、開口及びその周辺を覆い、その外側の保護膜を露出するパターンを有する絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜を選択的に露出するレジストを形成する工程と、レジストをマスクとして、絶縁膜を除去する工程と、絶縁膜の除去によって露出した、開口内の半導体層の表面に電極を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、イオンマイグレーションの発生が抑制された電極を形成する電極形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る電極形成方法は、半導体層上に、半導体層の表面を露出する開口を備えた、保護膜を形成する工程と、開口及びその周辺を覆い、その外側の保護膜を露出するパターンを有する絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜を選択的に露出するレジストを形成する工程と、レジストをマスクとして、絶縁膜を除去する工程と、絶縁膜の除去によって露出した、開口内の半導体層の表面に電極を形成する工程と、を有する。
【0015】
この電極形成方法によれば、電極が形成されるべき領域、すなわち保護膜の開口内の半導体層表面が、絶縁膜によって保護される。レジストに開口を形成する工程においては、有機物残渣が開口内に付着する。この有機物残渣の除去は非常に困難であるが、本発明の一態様によれば、絶縁膜によって保護されることから、これが半導体層の表面には付着しない。したがって、電極の表面や電極と半導体層との間に、有機物残渣が残留しないので、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0016】
また、絶縁膜を除去する工程の後、電極を形成する工程の前に、開口内の残渣を除去する工程を含んでもよい。この絶縁膜を除去するためのエッチング工程において、開口内にはエッチング残渣が残るが、これは、電極を形成する前に除去されるので、半導体層の表面は清浄に保たれる。したがって、電極の表面や電極と半導体層との間に、エッチャント残渣が残留しないので、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0017】
また、開口内の残渣を除去する工程は、硝酸又は塩酸を含有する溶液による洗浄工程を用いることができる。このような溶液により、絶縁膜を除去する際のエッチング液の残渣を確実に除去することができる。
【0018】
また、電極を形成する工程は、レジストをマスクとして利用した、リフトオフ工程を採用することができる。リフトオフ工程を採用することにより、電極材料や電極厚の自由度が向上する。
【0019】
また、絶縁膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜又は窒化酸化シリコン膜のいずれかであり、絶縁膜を除去する工程は、エッチャントとしてフッ酸、フッ化アンモニウムとフッ酸との混合液、又は、フッ酸と水との混合液のいずれかを用いたエッチング工程を採用することができる。これにより、絶縁膜を確実に除去することができる。
【0020】
また、絶縁膜を形成する工程の後、レジストを形成する工程の前に、絶縁膜の除去によって生じた残渣を除去する工程を採用することができる。絶縁膜のパターンを形成する際、半導体構造の表面には、残渣が残るが、これを電極形成前に除去することで、電極に残渣除去のための処理に由来する損傷が生じることを防止することができる。
【0021】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
図1(a)〜(d)及び
図2(a)〜(c)は、本実施形態に係る半導体装置の電極形成方法の各工程を示した図である。以下の例では、半導体装置の電極形成方法の一例として、電界効果トランジスタ(FET)のソース電極又はドレイン電極としてのオーミック電極を形成する電極形成方法について説明する。
【0023】
図1(a)に示されるように、本実施形態における電極形成方法の工程では、まず、半導体層1に形成されたSiO
2膜上の電極形成位置にレジストを形成する第1の工程が行われる。半導体層1は、例えばGaAs基板であるが、GaN等の他の半導体層であってもよい。この半導体層1上には、後に、オーミック電極7aが形成される位置(電極形成位置)に開口2aを備えたSiN膜(保護膜)2が形成されている。このSiN膜2及び開口2a内に露出した半導体層1の表面を覆うように、SiO
2膜(酸化シリコン層)3からなる絶縁膜が形成されている。なお、図示しない別の工程によって、半導体層1には、SiN膜2及びSiO
2膜3を貫通するようにゲート電極Gが形成されている。このゲート電極Gは、オーミック電極7aが完成した後に、形成することもできる。このような半導体層1において、SiN膜2の開口2aが形成されている位置の上方に相当するSiO
2膜3の上面の所定の範囲に、レジスト(第1のレジスト)5が形成される。このレジスト5は、後の工程においてオーミック電極7aが形成される、開口2aの領域を覆って設けられる。さらに、このレジスト5は、開口2aの周辺、すなわち開口2aの周縁から延在する開口2aの幅よりも広い幅の領域も覆うパターンで形成されることが好ましい。
【0024】
続いて、レジスト5をマスクとしてSiO
2膜3をエッチングにより除去する第2の工程が行われる。
図1(b)に示されるように、レジスト5が形成されている部分のSiO
2膜3aは、レジスト5がマスクとなることで残される。この工程により、SiO
2膜3aは、SiN膜2の開口2a及びその周辺を覆うとともに、この覆われた部分よりも外側のSiN膜2の表面を露出するパターンとなる。SiO
2膜3aのエッチングは、例えば、フッ酸をエッチャントとして行なわれる。このため、この工程が終了した段階では、レジスト5、SiN膜2及びゲート電極Gの上面に、フッ素残渣R1が残留することになる。
【0025】
続いて、レジスト5を除去してから、SiO
2膜3aを選択的に露出するレジスト6を形成する工程、すなわち、残ったSiO
2膜3aが露出する開口を備え、SiO
2膜3aに覆われない領域を覆う、レジスト6を形成する第3の工程が行われる。まず、レジスト5が剥離剤によって剥離(除去)されることで、SiO
2膜3aの上面が露出する。このとき、レジスト5の上面に残留していたフッ素残渣R1も一緒に除去される。続いて、SiN膜2及びゲート電極G上のフッ素残渣R1が除去される。フッ素残渣R1の除去は、例えば硝酸処理によってなされる。続いて、
図1(c)に示されるように、SiO
2膜3a上に開口が形成されるようにレジスト(第2のレジスト)6が形成される。このレジスト6によって形成される開口6aの幅は、SiN膜2に形成された開口2aの幅よりも大きくなっている。第3の工程が終了した段階では、レジスト6が現像される際に除去しきれなかったレジスト残渣又は現像液による有機物残渣R2がSiO
2膜3aの上面に残留している。
【0026】
続いて、露出したSiO
2膜3aをエッチングにより除去する第4の工程が行われる。この工程では、SiO
2膜3aが、例えばフッ酸をエッチャントとしたエッチングによって除去される。これにより、SiO
2膜3aの上面に残留していた有機物残渣R2も除去される。
【0027】
続いて、SiO
2膜3aが除去された半導体層1の表面を洗浄し、電極材料を蒸着する第5の工程が行われる。第4の工程が終了すると、
図1(d)に示されるように、半導体層1の上面における開口2aの位置には、エッチャントの残渣物であるフッ素残渣R3が残留している。まず、このフッ素残渣R3が、硝酸処理によって除去される。続いて、
図2(a)に示されるように、AuGe、Ni、Auの順に電極材料7が蒸着される。一例として、AuGeは約350Å、Niは約80Å、Auは約4000Åである。この工程によって半導体層1の開口2aの位置に蒸着された電極材料7が、本実施形態で形成しようとするオーミック電極7aである。なお、第5の工程が終了した段階では、レジスト6の上面にも電極材料7が蒸着されている。
【0028】
続いて、レジスト6を除去する第6の工程が行われる。この工程では、レジスト6が剥離剤によって剥離されることで除去される。この工程が終了した段階では、
図2(b)に示されるように、半導体層1の上面に形成されたSiN膜2、ゲート電極G及びオーミック電極7aが露出している。この段階で、SiN膜2、ゲート電極G及びオーミック電極7aの上面には、フッ素残渣R1,R3及び有機物残渣R2はない。また、オーミック電極7aと半導体層1との間にも、フッ素残渣R1,R3及び有機物残渣R2はない。
【0029】
続いて、SiN膜2、ゲート電極G及びオーミック電極7aを覆うように、さらにSiN膜8が形成される。続いて、オーミック電極7aの上面に対して、TiWによるバリアメタル9、Auメッキ10が順に形成される。一例として、バリアメタル9は、約1500Åであり、Auメッキ10は約3μmである。以上の工程によって半導体層1にオーミック電極7aが形成される。
【0030】
以上、この電極形成方法によれば、第3の工程においてレジスト6が形成されるときに、レジスト6の開口6aの部分にSiO
2膜3aが残っている。そのため、レジスト6が現像される際の有機物残渣は、後の工程で取り除かれるSiO
2膜3aの上面に付着することになり、半導体層1の電極形成位置に付着することがない。すなわち、一度付着すると除去の困難な有機物残渣が、半導体層1の表面に付着しないため、有機残渣によるイオンマイグレーションが抑制できる。また、半導体層1の表面にオーミック電極7aが蒸着される第5の工程よりも前である第4の工程で、SiO
2膜3aがエッチングされるため、当該エッチングに使用されたフッ素系エッチャントによるフッ素残渣R3がオーミック電極7a上に残留することがない。もちろん、本実施形態に従うと、
図1(d)に示すように、フッ素残渣R3が、開口2a内の半導体層1の表面に付着するが、その除去工程は、オーミック電極7aを形成する前であるので、除去工程によってオーミック電極7aを損傷することがない。このように、本実施形態によれば、有機物残渣R2が半導体層1の表面に付着することが防止できる。また、フッ素残渣R3をオーミック電極7aの表面に付着することが防止できる。したがって、これら残渣によるイオンマイグレーションの発生や、残渣の除去工程によるオーミック電極の損傷を防止することができる。
【0031】
また、第5の工程におけるエッチャントの残渣物であるフッ素残渣R3の除去が、硝酸処理によってなされることで、フッ素残渣R3を確実に除去することができる。
【0032】
また、第5の工程におけるオーミック電極7aの形成は、レジスト6をマスクとして利用した、リフトオフ工程となっている。このように、リフトオフ工程を採用することにより、電極材料や電極厚の設計上の自由度が向上する。
【0033】
また、第4の工程におけるエッチングには、エッチャントとしてフッ酸を用いることで、SiO
2膜3aを確実にエッチングすることができる。
【0034】
また、第2の工程において生じたフッ素残渣R1を除去しておくことで、より高品質なFETを形成することができる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【0036】
例えば、絶縁膜として、SiO
2膜を例示したがこれに限定されない。例えば絶縁膜としてSiN膜やSiON膜を形成してもよい。
【0037】
また、SiO
2膜をエッチングするためのエッチャントとして、フッ酸を用いる例を示したが、これに限定されない。SiO
2膜を選択的にエッチングできるものであれば、例えば、フッ化アンモニウムとフッ酸との混合液、又は、フッ酸と水との混合液が用いられてもよい。
【0038】
フッ素残渣を除去するために硝酸を用いる例を示したが、これに限定されない。半導体デバイスの構造に影響を与えることなくフッ素残渣を除去できればよく、例えば塩酸を用いた洗浄によってなされてもよい。
【0039】
また、第1のレジストを剥離剤によって剥離した後に、SiN膜及びゲート電極上のフッ素残渣が除去される工程を示したが、これに限定されない。フッ素残渣の除去は、SiN膜及びゲート電極が第2のレジストによって被覆される前に行われればよく、例えば、第1のレジストを剥離する前に行われてもよい。