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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-162875(P2016-162875A)
(43)【公開日】2016年9月5日
(54)【発明の名称】光増幅器
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20160808BHJP
【FI】
   H01S3/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-39928(P2015-39928)
(22)【出願日】2015年3月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】SEIオプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】上原 史也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敏行
(72)【発明者】
【氏名】津崎 哲文
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AF03
5F172AM08
5F172BB34
5F172BB35
5F172BB37
5F172BB44
5F172BB48
5F172BB58
5F172BB60
5F172BB65
5F172ZA02
(57)【要約】
【課題】増幅対象の信号光をモニタする光検出回路の一部を構成するPDの暗電流が増加した場合でも通常時と同等の増幅動作を可能にする光増幅器を提供する。
【解決手段】検知制御部480は、PDを含む受光部品420から出力される電圧信号の信号成分と、該信号成分に含まれる高周波領域の電圧成分との時間変動量の差に基づいてPDの暗電流増加に起因した光検出回路の異常判定を行う。増幅制御部250は、この判定結果に基づいて励起光光源230に対する駆動電流制御の適切な切り替えが可能になる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光が入力される入力端子と、
前記信号光が出力される出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に配置され、前記信号光が伝搬する伝送路と、
前記伝送路上に配置されるとともに、前記信号光を増幅するための増幅用伝送媒体と、前記増幅用伝送媒体に励起光を供給するための励起光光源と、を有する光増幅部と、
少なくとも前記励起光光源を制御するための増幅制御部と、
前記入力端子と前記光増幅部で挟まれた前記伝送路上の区間、および、前記光増幅部と前記出力端子とで挟まれた前記伝送路上の区間の少なくとも何れかの区間に配置された光検出回路と、を備えた光増幅器であって、
前記光検出回路は、
前記信号光の一部を分岐光として前記伝送路から取り出すための光分岐部品と、
光電変換素子を含み、前記光電変換素子により受光された前記分岐光の光量に応じた電圧信号を出力するための受光部品と、
前記受光部品から出力される電圧信号から、前記信号光の電圧成分に含まれる高周波領域の電圧成分を抽出する抽出部品と、
前記受光部品から出力される電圧信号を検出する信号成分検出部と、
前記抽出部品から出力される電圧信号を検出する高周波成分検出部と、
前記信号成分検出部および前記高周波成分検出部それぞれの検出結果に基づき、少なくとも、前記受光部品に含まれる前記光電変換素子の暗電流増加の有無を検知するための検知制御部と、を有することを特徴とする光増幅器。
【請求項2】
前記光検出回路は、前記光分岐部品として機能する第1光分岐要素と、受光部品として機能する第1受光要素と、前記抽出部品として機能する第1抽出要素と、前記信号成分検出部として機能する第1信号成分検出要素と、前記高周波成分検出部として機能する第1高周波成分検出要素と、前記検知制御部として機能する第1検知制御要素と、を有する第1光検出回路を含み、
前記第1光分岐要素は、前記光増幅部と前記入力端子で挟まれた前記伝送路上の区間に配置され、前記光増幅部から前記出力端子に向かって出力された増幅信号光の一部を分岐光成分として前記伝送路から取り出し、
前記第1信号成分検出要素から出力された電圧値をE1(t)、前記第1高周波成分検出要素から出力された電圧値をE1(t)、時間t0から時間t1までの前記E1(t)の時間変動をΔE1(=E1(t0)―E1(t1))、時間t0から時間t1までの前記E1(t)の時間変動をΔE1(=E1(t0)―E1(t1))とするとき、前記第1検知制御要素は、
ΔE1/E1(t0):ΔE1/E1(t0)=1:T1
なる式からΔE1/E1(t0)とΔE1/E1(t0)の比T1を算出し、算出された前記比T1が所定の閾値T1thを上回り、かつ、ΔE1の絶対値が所定の閾値ΔE1thを上回ったことを条件に、前記第1受光要素に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該第1光検出回路の回路異常と判定することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項3】
前記第1光検出回路の前記第1検知制御要素は、当該第1光検出回路の回路異常を知らせるアラーム信号を前記増幅制御部へ通知し、
前記増幅制御部は、前記第1光検出回路からのアラーム信号を受信した後、前記励起光光源に対する駆動電流の制御方法を、光出力一定制御または利得一定制御から前記励起光光源への駆動電流一定制御に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の光増幅器。
【請求項4】
前記光検出回路は、前記光分岐部品として機能する第2光分岐要素と、受光部品として機能する第2受光要素と、前記抽出部品として機能する第2抽出要素と、前記信号成分検出部として機能する第2信号成分検出要素と、前記高周波成分検出部として機能する第2高周波成分検出要素と、前記検知制御部として機能する第2検知制御要素と、を有する第2光検出回路を含み、
前記第2光分岐要素は、前記入力端子と前記光増幅部で挟まれた前記伝送路上の区間に配置され、前記入力端子から前記光増幅部に向かって伝搬する入力信号光の一部を分岐光成分として前記伝送路から取り出し、
前記第2信号成分検出要素から出力された電圧値をE2(t)、前記第2高周波成分検出要素から出力された電圧値をE2(t)、時間t0から時間t1までの前記E2(t)の時間変動をΔE2(=E2(t0)―E2(t1))、時間t0から時間t1までの前記E2(t)の時間変動をΔE2(=E2(t0)―E2(t1))とするとき、前記第2検知制御要素は、
ΔE2/E2(t0):ΔE2/E2(t0)=1:T2
なる式からΔE2/E2(t0)とΔE2/E2(t0)の比T2を算出し、算出された前記比T2が所定の閾値T2thを上回り、かつ、ΔE2の絶対値が所定の閾値ΔE2thを上回ったことを条件に、前記第2受光要素に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該第2光検出回路の回路異常と判定することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項5】
前記光検出回路は、前記光分岐部品として機能する第3光分岐要素と、受光部品として機能する第3受光要素と、前記抽出部品として機能する第3抽出要素と、前記信号成分検出部として機能する第3信号成分検出要素と、前記高周波成分検出部として機能する第3高周波成分検出要素と、前記検知制御部として機能する第3検知制御要素と、を有する第3光検出回路を含み、
前記第3光分岐要素は、前記光増幅部と前記出力端子で挟まれた前記伝送路上の区間に配置され、前記出力端子から前記光増幅部に向かって伝搬する反射信号光の一部を分岐光成分として前記伝送路から取り出し、
前記第3信号成分検出要素から出力された電圧値をE3(t)、前記第3高周波成分検出要素から出力された電圧値をE3(t)、時間t0から時間t1までの前記E3(t)の時間変動をΔE3(=E3(t0)―E3(t1))、時間t0から時間t1までの前記E3(t)の時間変動をΔE3(=E3(t0)―E3(t1))とするとき、前記第3検知制御要素は、
ΔE3/E3(t0):ΔE3/E3(t0)=1:T3
なる式からΔE3/E3(t0)とΔE3/E3(t0)の比T3を算出し、算出された前記比T3が所定の閾値T3thを上回り、かつ、ΔE3の絶対値が所定の閾値ΔE3thを上回ったことを条件に、前記第3受光要素に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該第3光検出回路の回路異常と判定することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項6】
前記第3光検出回路の前記第3検知制御要素は、当該第3光検出回路の回路異常を知らせるアラーム信号を前記増幅制御部へ通知した後、前記アラーム信号の通知動作を強制的に停止することを特徴とする請求項5に記載の光増幅器。
【請求項7】
前記光検出回路は、前記光分岐部品として機能する第1光分岐要素と、受光部品として機能する第1受光要素と、前記抽出部品として機能する第1抽出要素と、前記信号成分検出部として機能する第1信号成分検出要素と、前記高周波成分検出部として機能する第1高周波成分検出要素と、前記検知制御部として機能する第1検知制御要素と、を有する第1光検出回路を含み、
前記第1光分岐要素は、前記光増幅部と前記入力端子で挟まれた前記伝送路上の区間に配置され、前記光増幅部から前記出力端子に向かって出力された増幅信号光の一部を分岐光成分として前記伝送路から取り出し、
前記第1信号成分検出要素から出力された電圧値をE1(t)、前記第1高周波成分検出要素から出力された電圧値をE1(t)、時間t0から時間t1までの前記E1(t)の時間変動をΔE1(=E1(t0)―E1(t1))、時間t0から時間t1までの前記E1(t)の時間変動をΔE1(=E1(t0)―E1(t1))とするとき、前記第1検知制御要素は、
ΔE1/E1(t0):ΔE1/E1(t0)=1:T1
なる式で表される、ΔE1/E1(t0)とΔE1/E1(t0)の比T1の、任意時点で算出された値を初期値T10として設定した状態で、前記初期値T10の設定後に算出された前記比T1が所定の閾値T1thを上回り、かつ、ΔE1の絶対値が所定の閾値ΔE1thを上回ったことを条件に、前記第1受光要素に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該第1光検出回路の回路異常と判定し、前記E1(t)から前記比T1と前記初期値T10に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、前記第1信号成分検出要素から出力されるべき電圧値の真値E1(t)を算出することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項8】
前記光検出回路は、前記光分岐部品として機能する第2光分岐要素と、受光部品として機能する第2受光要素と、前記抽出部品として機能する第2抽出要素と、前記信号成分検出部として機能する第2信号成分検出要素と、前記高周波成分検出部として機能する第2高周波成分検出要素と、前記検知制御部として機能する第2検知制御要素と、を有する第2光検出回路を含み、
前記第2光分岐要素は、前記入力端子と前記光増幅部で挟まれた前記伝送路上の区間に配置され、前記入力端子から前記光増幅部に向かって伝搬する入力信号光の一部を分岐光成分として前記伝送路から取り出し、
前記第2信号成分検出要素から出力された電圧値をE2(t)、前記第2高周波成分検出要素から出力された電圧値をE2(t)、時間t0から時間t1までの前記E2(t)の時間変動をΔE2(=E2(t0)―E2(t1))、時間t0から時間t1までの前記E2(t)の時間変動をΔE2(=E2(t0)―E2(t1))とするとき、前記第2検知制御要素は、
ΔE2/E2(t0):ΔE2/E2(t0)=1:T2
なる式で表される、ΔE2/E2(t0)とΔE2/E2(t0)の比T2の、任意時点で算出された値を初期値T20として設定した状態で、前記初期値T20の設定後に算出された前記比T2が所定の閾値T2thを上回り、かつ、ΔE2の絶対値が所定の閾値ΔE2thを上回ったことを条件に、前記第2受光要素に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該第2光検出回路の回路異常と判定し、前記E2(t)から前記比T2と前記初期値T20に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、前記第2信号成分検出要素から出力されるべき電圧値の真値E2(t)を算出することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【請求項9】
前記光検出回路は、前記光分岐部品として機能する第3光分岐要素と、受光部品として機能する第3受光要素と、前記抽出部品として機能する第3抽出要素と、前記信号成分検出部として機能する第3信号成分検出要素と、前記高周波成分検出部として機能する第3高周波成分検出要素と、前記検知制御部として機能する第3検知制御要素と、を有する第3光検出回路を含み、
前記第3光分岐要素は、前記光増幅部と前記出力端子で挟まれた前記伝送路上の区間に配置され、前記出力端子から前記光増幅部に向かって伝搬する反射信号光の一部を分岐光成分として前記伝送路から取り出し、
前記第3信号成分検出要素から出力された電圧値をE3(t)、前記第3高周波成分検出要素から出力された電圧値をE3(t)、時間t0から時間t1までの前記E3(t)の時間変動をΔE3(=E3(t0)―E3(t1))、時間t0から時間t1までの前記E3(t)の時間変動をΔE3(=E3(t0)―E3(t1))とするとき、前記第3検知制御要素は、
ΔE3/E3(t0):ΔE3/E3(t0)=1:T3
なる式で表される、ΔE3/E3(t0)とΔE3/E3(t0)の比T3の、任意時点で算出される値を初期値T30として設定した状態で、前記初期値T30の設定後に算出された前記比T3が所定の閾値T3thを上回り、かつ、ΔE3の絶対値が所定の閾値ΔE3thを上回ったことを条件に、前記第3受光要素に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該第3光検出回路の回路異常と判定し、前記E3(t)から前記比T3と前記初期値T30に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、前記第3信号成分検出要素から出力されるべき電圧値の真値E3(t)を算出することを特徴とする請求項1に記載の光増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅媒体として光ファイバを含む光増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信における長距離伝送では、伝送路伝搬中の損失によって信号光の光量が低下してしまうため、その損失分を補填するよう信号光を増幅中継する必要がある。この中継に用いられる装置として光増幅器が知られている。
【0003】
光増幅器としては、増幅媒体として希土類光ファイバが適用された光ファイバ増幅器、半導体が適用された半導体光アンプ、光ファイバの誘導ラマン散乱を利用したラマン増幅器などがある。
【0004】
一般的に、光増幅器において光出力(増幅後の信号光の光量)あるいは増幅利得を制御するためには、出力信号光(増幅後の信号光)、入力信号光(増幅前の信号光)のそれぞれをモニタする必要がある。また、光ファイバの断線に起因する信号光の光量低下および反射された信号光の光量増加、その他異常を検知するためにも、光増幅器における各部の信号光をモニタする種々の光検出回路が利用されている。
【0005】
例えば、以下の非特許文献1には、光増幅器の一種であるEr添加光ファイバアンプ(EDFA)の基本的な構成が示されている。具体的にEDFAは、増幅用伝送媒体であるEr添加光ファイバ(EDF)と、EDFを励起するための励起光を供給する励起光光源と、励起光と信号光を合波するためのWDMカプラと、増幅された信号光が当該EDF内に戻ることによりEDFが発振状態になることを防ぐ光アイソレータと、により構成されている。
【0006】
上述のようなEDFAにおいて利得一定制御を行う場合、タップカプラによって取り出された入力信号光および出力信号光の一部を、それぞれフォトダイオード(以下、PDという)によって電気信号に変換し、得られた電気信号間の比較結果を励起光光源の駆動電流制御へフィードバックする。また、上述のようなEDFAにおいて光出力一定制御を行う場合、タップカプラによって取り出された出力信号光の一部を、PDによって電気信号に順次変換し、順次得られた電気信号同士の比較結果を励起光光源の駆動電流制御へフィードバックする。なお、PDは、受光面に到達した光の光量に応じた電流信号を出力する光電変換素子であり、電気回路上は電流源として考えられる。そのため、受光量に応じた電圧信号を利用する場合には、電流電圧変換回路が必要になる。電流電圧変換回路の最も簡単な例は、PDと抵抗を並列接続することで受光量に応じた電圧信号が得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】須藤昭一,「エルビウム添加光ファイバ増幅器」(第1版第2刷), オプトロニクス社, pp.96-98,平成13年4月20日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは、従来の光増幅器について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、光増幅器では、増幅後の信号光(増幅信号光)の光量あるいは増幅利得を制御するため、さらには、光ファイバの断線、その他異常を検知するため、当該光増幅器における各部の信号光をモニタする種々の光検出回路が用いられるのが一般的である。このような光検出回路では、モニタされるべき信号光の一部を電気信号に変換するPDが利用されるが、PDにおける暗電流の増加は当該光検出回路の出力増加(見かけ上の受光量増加)として発現するため、励起光光源に対する駆動電流制御の誤動作の原因となる。
【0009】
すなわち、従来の光増幅器では、光検出回路の出力増加が信号光の光量増加に起因するものか、または、PDにおける暗電流増加に起因するものかの区別ができないため、光検出回路の故障(PDの故障)に起因した、励起光光源に対する駆動電流制御の誤動作を回避することは困難であった。
【0010】
上述のように、何らかの原因によりPDの暗電流が増加するとPDにおける見かけ上の受光量が増加するため、光出力一定制御や利得一定制御を使用する場合、光増幅器内に設けられた光検出回路では以下の状態になると考えられる。
【0011】
例えば増幅信号光をモニタする増幅信号光検出回路においてPDの暗電流が増加(増幅信号光の見かけ上の受光量増加)すると、当該増幅信号光検出回路からの出力も増加する。従来の光増幅器では当該増幅信号光検出回路自体の回路異常(PDの暗電流増加)は検知できないため、励起光光源に対する駆動電流制御では、見かけ上、増幅利得が増加したように判断される。この場合、駆動電流制御は励起光駆動電流を低下させるよう動作するため、増幅信号光の実際の光量は低下してしまう。
【0012】
増幅前の信号光(入力信号光)をモニタする入力信号光検出回路においてPDの暗電流が増加(入力信号光の見かけ上の受光量増加)すると、当該入力信号光検出回路からの出力も増加する。通常、入力信号光のモニタ動作では、入力信号光の光量低下に対して閾値を設けて異常(断線等)を検知する。そのため、当該入力信号光検出回路では、PDの暗電流増加を異常として検知することはできない。
【0013】
なお、光増幅器の下流側で反射された信号光(反射信号光)をモニタする反射信号光検出回路では、PDの暗電流が増加(反射信号光の見かけ上の受光量増加)した場合、この反射信号光の光量増加に対して閾値を設けて異常(断線等)を検知するため、暗電流増加は異常として検知される。ただし、通常の異常処理では、下流側で断線した場合に当該光増幅器の動作を強制終了させる措置をとる場合があり、PDの暗電流増加に対しても光増幅器の動作が強制終了してしまう可能性がある。
【0014】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、増幅対象の信号光をモニタする種々の光検出回路の一部を構成する、該信号光の一部を受光する光電変換素子の暗電流増加の検知を可能にするための構造を備えた光増幅器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するため、実施形態に係る光増幅器は、信号光が入力される入力端子と、信号光が出力される出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置され、信号光が伝搬する伝送路と、伝送路上に配置された光増幅部と、少なくとも光増幅部を制御する増幅制御部と、入力端子と光増幅部で挟まれた伝送路上の区間、および、光増幅部と出力端子とで挟まれた伝送路上の区間の少なくとも何れかの区間に配置された光検出回路と、を備える。また、光増幅部は、信号光を増幅するための増幅用伝送媒体と、増幅用伝送媒体に励起光を供給するための励起光光源と、を有し、増幅制御部は、少なくとも励起光光源を制御する。特に、光検出回路は、変調された信号光の高周波成分を利用して、PDなどの光電変換素子における暗電流増加に起因した当該光検出回路の異常判定を可能にするため、光分岐部品と、受光部品と、抽出部品と、信号成分検出部と、高周波成分検出部と、検知制御部と、を有する。光分岐部品は、信号光の一部を分岐光として伝送路から取り出す。受光部品は、光電変換素子を含み、該光電変換素子により受光された分岐光の光量に応じた電圧信号を出力する。抽出部品は、受光部品から出力される電圧信号から、信号光の電圧成分に含まれる高周波領域の電圧成分を抽出する。信号成分検出部は、受光部品から出力される電圧信号を検出する。高周波成分検出部は、抽出部品から出力される電圧信号を検出する。検知制御部は、信号成分検出部および高周波成分検出部それぞれの検出結果に基づき、少なくとも、受光部品における暗電流増加の有無を検知する。
【0016】
また、上述のように光検出回路は、入力端子と光増幅部で挟まれた伝送路上の区間、および、光増幅部と出力端子とで挟まれた伝送路上の区間の少なくとも何れかの区間に配置される。したがって、本実施形態では、1またはそれ以上の光検出回路のそれぞれが伝送路の所定位置に配置され得る。例えば、入力端子を介して入力された信号光(入力信号光)の一部を分岐するよう光分岐部品が入力端子と光増幅部で挟まれた伝送路上の区間に配置された構成では、当該光検出回路は入力信号光検出回路として機能する。光増幅部により増幅された信号光(増幅信号光)の一部を分岐するよう光分岐部品が光増幅部と出力端子とで挟まれた伝送路上の区間に配置された構成では、当該光検出回路は増幅信号光検出回路として機能する。さらに、出力端子を介して光増幅部側に戻ってきた信号光(反射信号光)の一部を分岐するよう光分岐部品が光増幅部と出力端子とで挟まれた伝送路上の区間に配置された構成では、当該光検出回路は反射信号光検出回路として機能する。
【発明の効果】
【0017】
本実施形態によれば、増幅対象の信号光をモニタする光検出回路において、受光部品から出力される電圧信号の信号成分と、該信号成分に含まれる高周波領域の電圧成分それぞれの時間変動量の差に基づいて、該受光部品に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した回路異常を検知制御部が判定する。増幅制御部は、この判定結果に基づいて励起光光源に対する駆動電流制御の適切な切り替えが可能になるため、当該光検出回路の受光部品に含まれる光電変換素子の暗電流が増加した場合でも通常時と同等な光増幅動作の継続が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本実施形態に係る光増幅器の概略構成を示す図であり、(b)は一般的な光検出回路の構成を示す図である。
図2】一般的な光検出回路における受光部品において、暗電流増加に伴う出力電圧の変化を説明するためのグラフである。
図3】一般的な光検出回路における受光部品の出力電圧(電圧モニタ値)の、暗電流増加前後の変化を示すグラフである。
図4】一般的な光検出回路における受光部品の出力電圧について、全信号成分を含む電圧成分および高周波成分のみを含む電圧成分それぞれの、暗電流増加の影響を説明するためのグラフである。
図5】本実施形態に適用可能な種々の光検出回路の基本構成を示す図である。
図6】本実施形態に係る光増幅器の具体的な構成例を示す図である。
図7図6に示された種々の光検出回路における回路異常の判定動作を説明するためのフローチャートである。
図8図6に示された増幅信号光検出回路における検知処理の例を説明するためのフローチャートである。
図9】本実施形態の増幅制御の一例として、増幅信号光検出回路における受光部品の出力電圧(電圧モニタ値)の、暗電流増加前後の変化を示すグラフである。
図10図6に示された入力信号光検出回路における検知処理の例を説明するためのフローチャートである。
図11図6に示された反射信号光検出回路における検知処理の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
【0020】
(1)本実施形態に係る光増幅器は、信号光が入力される入力端子と、信号光が出力される出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置され、信号光が伝搬する伝送路と、伝送路上に配置された光増幅部と、少なくとも光増幅部を制御する増幅制御部と、入力端子と光増幅部で挟まれた伝送路上の区間、および、光増幅部と出力端子とで挟まれた伝送路上の区間の少なくとも何れかの区間に配置された1またはそれ以上の光検出回路と、を備える。光増幅部は、信号光を増幅するための増幅用伝送媒体と、増幅用伝送媒体に励起光を供給するための励起光光源と、を有する。増幅制御部は、増幅制御として、利得一定制御、出力一定制御、駆動電流一定制御などの励起光光源の駆動電流制御を行う。特に、第1の態様として、光検出回路には、種々の光検出回路が適用であり、増幅前の信号光(入力信号光)の光量変化をモニタするための入力信号光検出回路、増幅後の信号光(増幅信号光)の光量変化をモニタするための増幅信号光検出回路、当該光増幅器の下流側で反射された信号光(反射信号光)の光量変化をモニタするための反射信号光検出回路が含まれる。なお、これら各種光検出回路は単独で当該光増幅器に適用されてもよく、また、これら各種光検出回路のうち2種類以上の光検出回路が当該光増幅器に適用されてもよい。また、当該光増幅器に適用される光検出回路は、変調された信号光の高周波成分をモニタすることで、光電変換素子の暗電流増加に起因した当該光検出回路の異常判定を可能にする構造を備える。具体的に光検出回路は、光分岐部品と、受光部品と、抽出部品と、信号成分検出部と、高周波成分検出部と、検知制御部と、を有する。光分岐部品は、信号光の一部を分岐光として伝送路から取り出す。受光部品は、光電変換素子を含み、該光電変換素子により受光された分岐光の光量に応じた電圧信号を出力する。抽出部品は、受光部品から出力される電圧信号から、信号光の電圧成分に含まれる高周波領域の電圧成分を抽出する。なお、本明細書において、「高周波領域」とは、受光部品から出力された電圧信号の周波数領域のうち1MHz以上の周波数領域を意味するものとする。信号成分検出部は、受光部品から出力される電圧信号を検出する。信号成分検出部で検出される電圧信号は、直流成分(周波数0HzのDC成分)の一部が含まれればよく、全信号成分の電圧成分を含む必要はない。また、信号成分検出部で検出される電圧信号は、連続した周波数領域の電圧信号である必要もない。高周波成分検出部は、抽出部品から出力される電圧信号を検出する。同様に、高周波成分検出部で検出される電圧信号も、信号光の電圧成分の一部が含まれていればよい。検知制御部は、信号成分検出部および高周波成分検出部それぞれの検出結果に基づき、少なくとも、受光部品に含まれる光電変換素子の暗電流増加の有無(当該光検出回路の回路異常)を検知する。
【0021】
(2)上記第1の態様に適用可能な第2の態様として、当該光増幅器に適用される光検出回路が増幅信号光検出回路である場合、当該増幅信号光検出回路は、受光部品に含まれる光電変換素子の異常を検知するため、例えば図7および図8(a)に示されたフローチャートに従って検知処理を行う。具体的に増幅信号光検出回路では、光分岐部品が、光増幅部と入力端子で挟まれた伝送路上の区間に配置され、光増幅部から出力端子に向かって出力された増幅信号光の一部を分岐光成分として伝送路から取り出す。検知制御部は、検出結果として受光部品からの電圧信号を増幅制御部へ送信するモニタ処理が行われているが、算出された比T1が所定の閾値T1thを上回り、かつ、ΔE1の絶対値が所定の閾値ΔE1thを上回ったことを条件に、光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該増幅信号光検出回路の回路異常と判定し、所定のアラーム処理を行う。
【0022】
(3)上記第2の態様に適用可能な第3の態様として、増幅信号光検出回路におけるアラーム処理では、当該増幅信号光検出回路の回路異常を知らせるアラーム信号が増幅制御部へ通知される。一方、増幅制御部では、アラーム信号の受信後、励起光光源に対する駆動電流の制御方法が、光出力一定制御または利得一定制御から励起光光源への駆動電流一定制御に切り替えられる。この構成により、増幅信号光検出回路において、受光部品に含まれる光電変換素子の異常によって発生する電圧信号または増幅利得の低下を防ぐことが可能になる。
【0023】
(4)上記第1〜第3の態様のうち少なくとも何れかの態様に適用可能な第4の態様として、当該光増幅器に適用される光検出回路が入力信号光検出回路である場合、当該入力信号光検出回路は、受光部品に含まれる光電変換素子の異常を検知するため、例えば図7および図10(a)に示されたフローチャートに従って検知処理を行う。具体的に入力信号光検出回路では、光分岐部品が、入力端子と光増幅部で挟まれた伝送路上の区間に配置され、入力端子から光増幅部に向かって伝搬する入力信号光の一部を分岐光成分として伝送路から取り出す。検知制御部は、検出結果として受光部品からの電圧信号を増幅制御部へ送信するモニタ処理が行われているが、算出された比T2が所定の閾値T2thを上回り、かつ、ΔE2の絶対値が所定の閾値ΔE2thを上回ったことを条件に、光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該入力信号光検出回路の回路異常と判定し、所定のアラーム処理が行われる。
【0024】
(5)上記第1〜第4の態様のうち少なくとも何れかの態様に適用可能な第5の態様として、当該光増幅器に適用される光検出回路が反射信号光検出回路である場合、当該反射信号光検出回路は、受光部品に含まれる光電変換素子の異常を検知するため、例えば図7および図11(a)に示されたフローチャートに従って検知処理を行う。具体的に反射信号光検出回路では、光分岐部品が、光増幅部と出力端子で挟まれた伝送路上の区間に配置され、出力端子から光増幅部に向かって伝搬する反射信号光の一部を分岐光成分として伝送路から取り出す。検知制御部は、検出結果として受光部品からの電圧信号の変化を確認するモニタ処理が行われているが、比T3が所定の閾値T3thを上回り、かつ、ΔE3の絶対値が所定の閾値ΔE3thを上回ったことを条件に、光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該反射信号光検出回路の回路異常と判定し、アラーム処理を行う。
【0025】
(6)上記第5の態様に適用可能な第6の態様として、反射信号光検出回路におけるアラーム処理では、当該反射信号光検出回路の回路異常を知らせるアラーム信号が増幅制御部へ通知され、その後、アラーム信号の通知動作が強制的に停止される。このように、反射信号光の高周波成分の時間変動から当該反射信号光検出回路の回路異常を検知した後に増幅制御部へのアラーム信号の通知を解除することで、当該光増幅器のシャットダウンを回避することが可能になる。
【0026】
(7)上記第1〜第6の態様のうち少なくとも何れかの態様に適用可能な第7の態様として、当該光増幅器に適用される光検出回路が増幅信号光検出回路である場合、図7図8(a)の一部、および図8(b)に示されたフローチャートに従った検知処理を行うことで、受光部品に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した回路異常の発生後もモニタ処理を続行することも可能である。すなわち、当該増幅信号光検出回路において、増幅信号光の電圧成分の真値を算出することで、光電変換素子の暗電流増加に起因した出力異常が発生していない状況と同等の動作(モニタ処理)が可能になる。具体的に検知制御部は、任意時点(例えば1回目の算出動作)で得られた比T1の値を初期値T10として設定した状態で、該初期値T10の設定後に算出された比T1が所定の閾値T1thを上回り、かつ、ΔE1の絶対値が所定の閾値ΔE1thを上回ったことを条件に、光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該増幅信号光検出回路の回路異常と判定する。その際、モニタ処理において、E1(t)から比T1と初期値T10に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、信号成分検出部から出力されるべき電圧値の真値E1(t)を算出する。
【0027】
(8)上記第1〜第7の態様のうち少なくとも何れかの態様に適用可能な第8の態様として、当該光増幅器に適用される光検出回路が入力信号光検出回路である場合、図7図10(a)の一部、および図10(b)に示されたフローチャートに従った検知処理を行うことで、当受光部品に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した回路異常の発生後もモニタ処理を続行することも可能である。すなわち、当該入力信号光検出回路において、入力信号光の電圧成分の真値を算出することで、光電変換素子の暗電流増加に起因した出力異常が発生していない状況と同等の動作(モニタ処理)が可能になる。具体的に検知制御部は、任意時点(例えば1回目の算出動作)で得られた比T2の値を初期値T20として設定した状態で、該初期値T20の設定後に算出された比T2が所定の閾値T2thを上回り、かつ、ΔE2の絶対値が所定の閾値ΔE2thを上回ったことを条件に、光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該入力信号光検出回路の回路異常と判定する。その際、モニタ処理において、E2(t)から比T2と初期値T20に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、信号成分検出部から出力されるべき電圧値の真値E2(t)を算出する。
【0028】
(9)上記第1〜第8の態様のうち少なくとも何れかの態様に適用可能な第9の態様として、当該光増幅器に適用される光検出回路が反射信号光検出回路である場合、図7図11(a)の一部、および図11(b)に示されたフローチャートに従った検知処理を行うことで、受光部品に含まれる光電変換素子の暗電流増加に起因した回路異常の発生後もモニタ処理を続行することも可能である。すなわち、当該反射信号光検出回路において、反射信号光の電圧成分の真値を算出することで、光電変換素子の暗電流増加に起因した出力異常が発生していない状況と同等の動作(モニタ処理)が可能になる。具体的に検知制御部は、任意時点(例えば1回目の算出動作)で得られた比T3の値を初期値T30として設定した状態で、該初期値T30の設定後に算出された比T3が所定の閾値T3thを上回り、かつ、ΔE3の絶対値が所定の閾値ΔE3thを上回ったことを条件に、光電変換素子の暗電流増加に起因した、当該反射信号光検出回路の回路異常と判定する。その際、モニタ処理において、E3(t)から比T3と初期値T30に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、信号成分検出部から出力されるべき電圧値の真値E3(t)を算出する。
【0029】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本実施形態に係る光増幅器の具体な構造を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0030】
図1(a)は、本実施形態に係る光増幅器の概略構成を示す図である。図1(a)の光増幅器1は、信号光を取り込むための入力コネクタ(入力端子)100Aと、信号光を出力コネクタ(出力端子)100Bと、入力コネクタ100Aと出力コネクタ100Bの間に配置された伝送路100と、伝送路100上に配置された光増幅部200と、入力コネクタ100Aから光増幅部200へ向かう光を通過させる一方、光増幅部200から入力コネクタ100Aに向かう光を遮断するアイソレータ300A、光増幅部200から出力コネクタ100Bに向かう光を通過させる一方、出力コネクタ100Bから光増幅部200へ向かう光を遮断するアイソレータ300B、光増幅部200に含まれる励起光光源の駆動電流を制御するための増幅制御部250を備える。また、光増幅器1は、増幅制御部250の駆動電流制御や、上流側および/または下流側の断線等の異常監視のため、伝送路100上の各部位における信号光をモニタするための種々の光検出回路を備える。図1(a)の例では、伝送路100上のA点には、光増幅部200により増幅された信号光(増幅信号光)をモニタするための増幅信号光検出回路が配置され、伝送路100上のB点には、入力コネクタ100Aから光増幅部200へ向かう増幅前の信号光(入力信号光)をモニタするための入力信号光検出回路が配置され、伝送路100上のC点には、当該光増幅器1の下流側で反射された信号光であって出力コネクタ100Bから光増幅部200へ向かう信号光(反射信号光)をモニタするための反射信号光検出回路が配置されている。なお、上述の光検出回路は、目的に応じて、単独で配置されてもよく、また、2種類以上を組み合わせて配置されてもよい。
【0031】
一般的な光検出回路であれば、例えば図1(b)に示されたように、伝送路100上の所定箇所における信号光をモニタするため、伝送路100を伝搬する信号光の一部を取り出すための光分岐部品(カプラ)110と、光分岐部品110により取り出された分岐光の光量に応じた電流を出力するPDと、電流電圧変換回路とを含み、該PD電圧信号に変換するための受光部品120、受光部品120からの出力電圧をアナログ信号からディジタル信号に変換するためのA/D変換器130(図中、A/Dで表す)を備える。なお、受光部品120における電流電圧変換回路の最も簡単な例では、PDに対して並列接続された抵抗により実現される。
【0032】
上述のような一般的な光検出回路が適用された光増幅器では、光電変換素子としてPDが利用される。PDは受光量に応じた電流を出力する電流源と考えられ、PDへの入射光量をPin(W)、PDの光電変換効率をη(A/W)とすると、PDの出力電流Iout(A)と入射光量をPin(W)との間には、Iout=Pin・ηという関係が成り立つ。ここで、PDに光が入射されていない場合に生じる電流成分は暗電流と呼ばれ、信号光検出においてはノイズ源となる。
【0033】
図2には、一般的な光検出回路における受光部品(図1(a)の受光部品120)において、暗電流増加に伴う出力電圧の変化を説明するためのグラフが示されている。図2(a)の上段には、受光部品120から出力された電圧信号に含まれる周波数成分の電圧値(全信号成分のパワー)が示されており、図2(a)の下段には、1MHz以上の高周波成分の電圧値(高周波成分のパワー)が示されている。通常、受光部品120に含まれるPDの受光量が増加すると、図2(b)に示されたように、全信号成分(図2(b)の上段)、高周波成分(図2(b)の下段)の双方とも、実践で示されたような波形となる。なお、図2(b)中の破線は図2(a)の波形を示し、斜線部分は受光量増加に伴うノイズ成分である。また、PDの暗電流が増加した場合、図2(c)に示されたように、受光部品120の電圧出力は、全信号成分(図2(c)の上段)、高周波成分(図2(c)の下段)の双方とも、ノイズ成分(斜線部分)が増加する。
【0034】
特に、増幅信号光検出回路では、図2(c)に示されたようにPDの暗電流が増加すると、見かけ上の光量(増幅信号光の光量)が増加することによって見かけ上の増幅利得も増加しているように誤って判断される。そのため、増幅制御によって励起光光源へ供給される駆動電流が低下することで、実際の光出力(増幅後の信号光の光量)は低下してしまう。このような状況を図3に示す。すなわち、図3において、グラフG310は、受光部品120から出力された電圧信号(電圧モニタ値)を示し、PDの暗電流増加のタイミングで電圧モニタ値が増加している。一方、グラフG320は、実際の増幅信号光の光量に相当する電圧モニタ値であり、PDの暗電流増加のタイミングで駆動電流が低下するため、該電圧モニタ値も低下することになる。
【0035】
しかしながら、発明者らの知見によれば、PDの暗電流増加による出力電圧の変化量は、図4に示されたように、全信号成分の電圧成分と、高周波成分の電圧成分とでは大きく異なっている。すなわち、図4(a)は、全信号成分の電圧成分の時間変化を示し、PDの暗電流増加の前後で電圧モニタ値がGだけ変化している。一方、図4(b)は、高周波数成分の電圧成分の時間変化を示し、PDの暗電流増加の前後で電圧モニタ値がG(>>G)と大きく変化している。全信号成分の電圧成分は、その大部分が直流成分(周波数0HzのDC成分)で占められている注目すると、全信号成分と高周波成分の時間変化量の比率が、PDの暗電流が増加した場合と受光量が増加した場合とで大きく異なることが分かる。よって、全信号成分と高周波成分の時間変化量の比率をモニタすれば、その比率が一定の値からずれた場合をPDの暗電流増加と判断できる。
【0036】
上述の知見に基づき、本実施形態では、光増幅器1に適用される光検出回路として、図5に示された構造を有する光検出回路が適用される。なお、図5に示された光検出回路は、増幅信号光検出回路、入力信号光検出回路、反射信号光検出回路の何れにも適用可能である。
【0037】
図5に示された本実施形態の光検出回路は、信号成分検出部140、高周波成分の抽出部品であるバンドパスフィルタ(以下、BPFという)150、A/D変換器(図中、A/Dで表す)160、当該光検出回路の回路異常を判定するための検知制御部180をさらに備えた点で、図1に示された一般的な光検出回路とは異なる。なお、本実施形態の光検出回路では、信号成分検出部140と高周波成分検出部170は何れも受光部品120の出力電気信号を利用するため、受光部品120からの電気信号が入力されるBPF150は、受光部品120からA/D変換器130までの主配線に対して並列接続される。また、A/D変換器130とBPF150に同レベルの電気信号を供給するためには、受光部品120からは受光量に応じた電圧信号が出力される必要がある。そのため、受光部品120には、電流源であるPDとともに、電流電圧変換回路が含まれる。
【0038】
信号成分検出部140は、受光部品120から出力された電圧信号を、A/D変換器130を介して検出する。なお、信号成分検出部140で検出される電圧信号は、直流成分(周波数0HzのDC成分)の一部が含まれればよく、全信号成分の電圧成分を含む必要はない。また、信号成分検出部140で検出される電圧信号は、連続した周波数領域の電圧信号である必要もない。BPF150は、受光部品120から出力される電圧信号から、信号光の電圧成分に含まれる1MHz以上の高周波領域の電圧成分を抽出する。高周波成分検出部170は、BPF150から出力される電圧信号を、A/D変換器160を介して検出する。なお、高周波成分検出部170で検出される電圧信号も、信号光の電圧成分の一部が含まれていればよい。検知制御部180は、信号成分検出部140および高周波成分検出部170それぞれの検出結果に基づき、少なくとも、受光部品120に含まれるPDの暗電流増加の有無(当該光検出回路の回路異常)を検知する。
【0039】
図6は、本実施形態に係る光増幅器の具体的な構成例を示す図である。すなわち、図6に示された光増幅器1Aは、信号光を取り込むための入力コネクタ(入力端子)100Aと、信号光を出力コネクタ(出力端子)100Bと、入力コネクタ100Aと出力コネクタ100Bの間に配置された伝送路100と、伝送路100上に配置された光増幅部200と、入力コネクタ100Aから光増幅部200へ向かう光を通過させる一方、光増幅部200から入力コネクタ100Aに向かう光を遮断するアイソレータ300A、光増幅部200から出力コネクタ100Bに向かう光を通過させる一方、出力コネクタ100Bから光増幅部200へ向かう光を遮断するアイソレータ300B、光増幅部200に含まれる励起光光源の駆動電流を制御するための増幅制御部250を備える。また、光増幅器1Aは、増幅制御部250の駆動電流制御や、上流側および/または下流側の断線等の異常監視のため、伝送路100上の各部位における信号光をモニタする光検出回路として、増幅信号光検出回路400、入力信号光検出回路500、反射信号光検出回路600を備える。
【0040】
光増幅部200は、増幅用伝送媒体として例えばEr添加光ファイバなどが適用可能な増幅用光ファイバ210と、増幅対象である信号光と励起光とを合波する合波器220と、励起光を供給する励起光光源としてLD230を備える。増幅制御部250は、LD230に供給される駆動電流をA/D変換器240(図中、A/Dで表される)を介して制御する(増幅制御)。
【0041】
増幅信号光検出回路400は、増幅後の信号光(増幅信号光)をモニタするための第1光検出回路であって、光分岐部品(第1光分岐要素)410と、PDおよび電流電圧変換回路を含む受光部品(第1受光要素)420と、高周波成分を抽出する抽出部品(第1抽出要素)450と、A/D変換器430、460(図中、A/Dで表される)と、信号成分検出部(第1信号成分検出要素)440と、高周波成分検出部(第1高周波成分検出要素)470と、検知制御部(第1検知制御要素)480と、を有する。また、光分岐部品410は、光増幅部200と入力コネクタ100Aで挟まれた伝送路100上の区間に配置され、光増幅部200から出力コネクタ100Bに向かって出力された増幅信号光の一部を分岐光成分として伝送路100から取り出す。なお、光分岐部品410、受光部品420、抽出部品450、A/D変換器430、460、信号成分検出部440、高周波成分検出部470、検知制御部480のそれぞれは、対応する図5の構成要素と同じ構成および機能を有する。
【0042】
入力信号光検出回路500は、入力コネクタ100Aから取り込まれた増幅前の信号光(入力信号光)をモニタするための第2光検出回路であって、光分岐部品(第2光分岐要素)510と、PDおよび電流電圧変換回路を含む受光部品(第2受光要素)420と、抽出部品(第2抽出要素)550と、A/D変換器530、560(図中、A/Dで表される)と、信号成分検出部(第2信号成分検出要素)540と、高周波成分検出部(第2高周波成分検出要素)570と、検知制御部(第2検知制御要素)580と、を有する。また、光分岐部品510は、入力コネクタ100Aと光増幅部200で挟まれた伝送路100上の区間に配置され、入力コネクタ100Aから光増幅部200に向かう入力信号光の一部を分岐光成分として伝送路100から取り出す。なお、光分岐部品510、受光部品520、抽出部品550、A/D変換器530、560、信号成分検出部540、高周波成分検出部570、検知制御部580のそれぞれは、対応する図5の構成要素と同じ構成および機能を有する。
【0043】
反射信号光検出回路600は、当該光増幅器1Aの下流側で反射された信号光(反射信号光)をモニタするための第3光検出回路であって、光分岐部品(第3光分岐要素)610と、PDおよび電流電圧変換回路を含む受光部品(第3受光要素)520と、抽出部品(第3抽出要素)650と、A/D変換器630、660(図中、A/Dで表される)と、信号成分検出部(第3信号成分検出要素)640と、高周波成分検出部(第3高周波成分検出要素)670と、検知制御部(第3検知制御要素)680と、を有する。また、光分岐部品610は、光増幅部200と出力コネクタ100Bで挟まれた伝送路100上の区間に配置され、出力コネクタ100Bから光増幅部200に向かう反射信号光の一部を分岐光成分として伝送路100から取り出す。なお、光分岐部品610、受光部品620、抽出部品650、A/D変換器630、660、信号成分検出部640、高周波成分検出部670、検知制御部680のそれぞれは、対応する図5の構成要素と同じ構成および機能を有する。
【0044】
また、当該光増幅器1Aは、共通の制御基板700を備え、増幅信号光検出回路400における信号成分検出部440、高周波成分検出部470および検知制御部480と、入力信号光検出回路500における信号成分検出部540、高周波成分検出部570および検知制御部580と、反射信号光検出回路600における信号成分検出部640、高周波成分検出部670および検知制御部680とが、この制御基板700上に構築されている。当該光増幅器1Aの増幅動作中、増幅信号光検出回路400の検知制御部480からは、増幅信号光の光量情報である検出信号400Aと回路異常を通知するアラーム信号400Bが増幅制御部250に送信される。入力信号光検出回路500の検知制御部580からは、入力信号光の光量情報である検出信号500Aと回路異常を通知するアラーム信号500Bが増幅制御部250に送信される。反射信号光検出回路600の検知制御部680からは、当該光増幅器1Aの下流側の異常(断線等)を通知するアラーム信号600Bが増幅制御部250に送信される。
【0045】
次に、上述の増幅信号光検出回路400における検知制御部480、入力信号光検出回路500における検知制御部580、反射信号光検出回路600における検知制御部680それぞれにおける回路異常の判定動作を図7図11を用いて詳細に説明する。図7は、検知制御部480、580、680のそれぞれに共通する、回路異常の判定動作を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明において、各パラメータの添え字nは検知制御部480、580、680それぞれが個別に取得するパラメータを指示しており、具体的にn=1は検知制御部480が取得するパラメータ、n=2は検知制御部580が取得するパラメータ、n=3は検知制御部680が取得するパラメータを指示するものとする。
【0046】
各検知制御部では、時間管理のためタイマがセットされ(ステップST710)、各光検出回路は、信号成分検出部からに出力された電圧値として、時間t0におけるEn(t0)と、高周波成分検出部からで出力された電圧値として、時間t0におけるEn(t0)を取得する(ステップST720)。さらに、時間t1において(ステップST730)、各光検出回路は、信号成分検出部からに出力された電圧値として、時間t1におけるEn(t1)と、高周波成分検出部からで出力された電圧値として、時間t1におけるEn(t1)を取得する(ステップST740)。以上のように信号成分検出部および高周波成分検出部からそれぞれ取得したパラメータを利用して、各検知制御部がPDの暗電流増加に起因した回路異常の検知処理を行う(ステップST750)。
【0047】
図8は、増幅信号光検出回路400における検知制御部480の検知処理(ステップST750)の例を説明するためのフローチャートであり、図8(a)は検知制御部480の第1検知処理の例、図8(b)は検知制御部480の第2検知処理の例を説明するためのフローチャートである。
【0048】
まず、図8(a)の第1検知処理では、既にステップST710〜ステップST740で取得されたパラメータE1(t0)、E1(t0)、E1(t1)、E1(t1)を利用して判定値演算が行われる(ステップST810)。この判定値演算では、時間t0から時間t1までのE1(t)の時間変動ΔE1(=E1(t0)―E1(t1))、時間t0から時間t1までのE1(t)の時間変動ΔE1(=E1(t0)―E1(t1))とするとき、
ΔE1/E1(t0):ΔE1/E1(t0)=1:T1
なる式からΔE1/E1(t0)とΔE1/E1(t0)の比T1が算出される。そして、算出された比T1と所定の閾値T1thが比較され(ステップST820)、比T1が閾値T1thを上回っている場合には、ΔE1の絶対値|ΔE1|と所定の閾値ΔE1thがさらに比較される(ステップST830)。その結果、絶対値|ΔE1|が閾値ΔE1thを上回っていた場合、検知制御部480は、受光部品420におけるPDの暗電流増加に起因した、当該増幅信号光検出回路400の回路異常と判定し、アラーム処理が行われる(ステップST850)。一方、ステップST820およびステップST830の何れかのステップにおいて比T1または絶対値|ΔE1|が閾値以下である場合、増幅制御や断線監視等の通常のモニタ処理が続行される(ステップST840)。なお、ステップST840のモニタ処理では、増幅信号光の光量情報である検出信号400Aが、検知制御部480から増幅制御部250へ送信される。ステップST850のアラーム処理では、検知制御部480から増幅制御部250に、必要に応じてアラーム信号400Bが通知される。さらに、アラーム信号400Bが通知された増幅制御部250では、LD230に対する駆動電流の制御方法が、光出力一定制御または利得一定制御からLD230への駆動電流一定制御に切り替えられる。この構成により、増幅信号光検出回路400において、受光部品420に含まれるPDの異常によって発生する電圧信号または増幅利得の低下を防ぐことが可能になる。
【0049】
図9は、上述のような増幅制御部250により駆動電流制御方法が切り替えた場合の、受光部品420の出力電圧(電圧モニタ値)のグラフである。上述のようにLD230に供給される駆動電流が一定なるよう制御された場合、実際の増幅信号光の光量低下は回避される。すなわち、図9において、グラフG910は、受光部品420から出力された電圧信号(電圧モニタ値)を示し、PDの暗電流増加のタイミングで一旦電圧モニタ値は増加するが駆動電流の一定制御により安定する。一方、グラフG920は、実際の増幅信号光の光量に相当する電圧モニタ値であり、PDの暗電流増加のタイミングで駆動電流が安定するため、該電圧モニタ値も暗電流増加のタイミングで一旦低下するが、時間経過とともに上昇している。
【0050】
一方、図8(b)の第2検知処理では、判定動作が上述の第1検知処理と異なっている。すなわち、この第2検知処理では、ステップST810の判定値演算により得られた比T1の、任意時点(ステップST860)で算出された値が初期値T10として設定される(ステップST870)。なお、図8(b)の例では、1回目の算出動作で得られた比T1が初期値T10として設定される。また、初期値T10の設定後に算出された比T1が所定の閾値T1thと比較され(ステップST820)、比T1が閾値T1thを上回っている場合には、ΔE1の絶対値|ΔE1|と所定の閾値ΔE1thがさらに比較される(ステップST830)。その結果、絶対値|ΔE1|が閾値ΔE1thを上回っていた場合、検知制御部480は、受光部品420におけるPDの暗電流増加に起因した、当該増幅信号光検出回路400の回路異常と判定し、真値算出が行われる(ステップST880)。このステップST880では、E1(t)から比T1と初期値T10に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、信号成分検出部440から出力されるべき電圧値の真値E1(t)が算出される。一方、ステップST820およびステップST830の何れかのステップにおいて比T1または絶対値|ΔE1|が閾値以下である場合、増幅制御や断線監視等の通常のモニタ処理が続行される(ステップST840)。また、ステップST850のアラーム処理では、アラーム信号400Bとともに、検出信号400Aとして、ステップST880で算出された真値E1(t)が、増幅制御部250に通知される。
【0051】
図10は、入力信号光検出回路500における検知制御部580の検知処理(ステップST750)の例を説明するためのフローチャートであり、図10(a)は検知制御部580の第1検知処理の例、図10(b)は検知制御部580の第2検知処理の例を説明するためのフローチャートである。
【0052】
まず、図10(a)の第1検知処理では、既にステップST710〜ステップST740で取得されたパラメータE2(t0)、E2(t0)、E2(t1)、E2(t1)を利用して判定値演算が行われる(ステップST1010)。この判定値演算では、時間t0から時間t1までのE2(t)の時間変動ΔE2(=E2(t0)―E2(t1))、時間t0から時間t1までのE2(t)の時間変動ΔE2(=E2(t0)―E2(t1))とするとき、
ΔE2/E2(t0):ΔE2/E2(t0)=1:T2
なる式からΔE2/E2(t0)とΔE2/E2(t0)の比T2が算出される。そして、算出された比T2と所定の閾値T2thが比較され(ステップST1020)、比T2が閾値T2thを上回っている場合には、ΔE2の絶対値|ΔE2|と所定の閾値ΔE2thがさらに比較される(ステップST1030)。その結果、絶対値|ΔE2|が閾値ΔE2thを上回っていた場合、検知制御部580は、受光部品520におけるPDの暗電流増加に起因した、当該入力信号光検出回路500の回路異常と判定し、アラーム処理が行われる(ステップST1050)。一方、ステップST1020およびステップST1030の何れかのステップにおいて比T2または絶対値|ΔE2|が閾値以下である場合、増幅制御や断線監視等の通常のモニタ処理が続行される(ステップST1040)。なお、ステップST1040のモニタ処理では、増幅信号光の光量情報である検出信号500Aが、検知制御部580から増幅制御部250へ送信される。ステップST1050のアラーム処理では、検知制御部580から増幅制御部250に、必要に応じてアラーム信号500Bが通知される。
【0053】
一方、図10(b)の第2検知処理では、判定動作が上述の第1検知処理と異なっている。すなわち、この第2検知処理では、ステップST1010の判定値演算により得られた比T2の、任意時点(ステップST1060)で算出された値が初期値T20として設定される(ステップST1070)。なお、図10(b)の例では、1回目の算出動作で得られた比T2が初期値T20として設定される。また、初期値T20の設定後に算出された比T2が所定の閾値T2thと比較され(ステップST1020)、比T2が閾値T2thを上回っている場合には、ΔE2の絶対値|ΔE2|と所定の閾値ΔE2thがさらに比較される(ステップST1030)。その結果、絶対値|ΔE2|が閾値ΔE2thを上回っていた場合、検知制御部580は、受光部品520におけるPDの暗電流増加に起因した、当該入力信号光検出回路500の回路異常と判定し、真値算出が行われる(ステップST1080)。このステップST1080では、E2(t)から比T2と初期値T20に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、信号成分検出部540から出力されるべき電圧値の真値E2(t)が算出される。一方、ステップST1020およびステップST1030の何れかのステップにおいて比T2または絶対値|ΔE2|が閾値以下である場合、増幅制御や断線監視等の通常のモニタ処理が続行される(ステップST1040)。また、ステップST1050のアラーム処理では、アラーム信号500Bとともに、検出信号500Aとして、ステップST1080で算出された真値E2(t)が、増幅制御部250に通知される。
【0054】
図11は、反射信号光検出回路600における検知制御部680の検知処理(ステップST750)の例を説明するためのフローチャートであり、図11(a)は検知制御部680の第1検知処理の例、図11(b)は検知制御部680の第2検知処理の例を説明するためのフローチャートである。
【0055】
まず、図11(a)の第1検知処理では、既にステップST710〜ステップST740で取得されたパラメータE3(t0)、E3(t0)、E3(t1)、E3(t1)を利用して判定値演算が行われる(ステップST1110)。この判定値演算では、時間t0から時間t1までのE3(t)の時間変動ΔE3(=E3(t0)―E3(t1))、時間t0から時間t1までのE3(t)の時間変動ΔE3(=E3(t0)―E3(t1))とするとき、
ΔE3/E3(t0):ΔE3/E3(t0)=1:T3
なる式からΔE3/E3(t0)とΔE3/E3(t0)の比T3が算出される。そして、算出された比T3と所定の閾値T3thが比較され(ステップST1120)、比T3が閾値T3thを上回っている場合には、ΔE3の絶対値|ΔE3|と所定の閾値ΔE3thがさらに比較される(ステップST1130)。その結果、絶対値|ΔE3|が閾値ΔE3thを上回っていた場合、検知制御部680は、受光部品620におけるPDの暗電流増加に起因した、当該反射信号光検出回路600の回路異常と判定し、アラーム処理が行われる(ステップST1140)。一方、ステップST1120およびステップST1130の何れかのステップST1140のアラーム処理は行われない。なお、ステップST1040のアラーム処理では、検知制御部680から増幅制御部250に、アラーム信号600Bが通知される。その後、当該反射信号光検出回路600では、アラーム信号600Bの通知動作が強制的に停止される。このように、反射信号光の高周波成分の時間変動から当該反射信号光検出回路600の回路異常を検知した後に増幅制御部250へのアラーム信号600Bの通知を解除することで、当該光増幅器1Aのシャットダウンを回避することが可能になる。
【0056】
一方、図11(b)の第2検知処理では、判定動作が上述の第1検知処理と異なっている。すなわち、この第2検知処理では、ステップST1110の判定値演算により得られた比T3の、任意時点(ステップST1160)で算出された値が初期値T30として設定される(ステップST1170)。なお、図11(b)の例では、1回目の算出動作で得られた比T3が初期値T30として設定される。また、初期値T30の設定後に算出された比T3が所定の閾値T3thと比較され(ステップST1120)、比T3が閾値T3thを上回っている場合には、ΔE3の絶対値|ΔE3|と所定の閾値ΔE3thがさらに比較される(ステップST1130)。その結果、絶対値|ΔE3|が閾値ΔE3thを上回っていた場合、検知制御部680は、受光部品620におけるPDの暗電流増加に起因した、当該反射信号光検出回路600の回路異常と判定し、真値算出が行われる(ステップST1180)。このステップST1180では、E3(t)から比T3と初期値T30に基づいて算出された雑音成分の電圧値を取り除くことにより、信号成分検出部640から出力されるべき電圧値の真値E3(t)が算出される。ステップST1140のアラーム処理では、アラーム信号600Bが、増幅制御部250に通知される。なお、このアラーム処理において、算出された真値E1(t)が増幅制御部250に通知されてもよい。
【0057】
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1、1A…光増幅器、100…伝送路、100A…入力コネクタ(入力端子)、100B…出力コネクタ(出力端子)、200…光増幅部、250…増幅制御部、400…増幅信号光検出回路(第1光検出回路)、500…入力信号光検出回路(第2光検出回路)、600…反射信号光検出回路(第3光検出回路)、410、510、610…光分岐部品、420、520、620…受光部品(PDと電流電圧変換回路を含む)、440、540、640…信号成分検出部、450、550、650…抽出部品、470、570、670…高周波成分検出部、480、580、680…検知制御部。
図1
図2
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図5
図6
図7
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図9
図10
図11