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特開2016-162878光半導体装置及び光半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-162878(P2016-162878A)
(43)【公開日】2016年9月5日
(54)【発明の名称】光半導体装置及び光半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20160808BHJP
   H01S 5/024 20060101ALI20160808BHJP
   H01S 5/028 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   H01S5/022
   H01S5/024
   H01S5/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-40072(P2015-40072)
(22)【出願日】2015年3月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 孝幸
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA21
5F173AH06
5F173AL03
5F173AL05
5F173AL13
5F173AR68
5F173AR72
5F173MC12
5F173MD07
5F173MD16
5F173MD82
(57)【要約】
【課題】長寿命を有する光半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
光半導体装置1は、半導体レーザ3と、半導体レーザ3を搭載する第1面4a、及び半導体レーザ3の導波路12の一方の端面に対向する第2面4bを有するキャリア2と、端面と第2面4bとの間に設けられ、半導体レーザ3及びキャリア2の両方に接着される接着部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、
前記半導体レーザを搭載する第1面、及び前記半導体レーザの導波路の一方の端面に対向する第2面を有するキャリアと、
前記端面と前記第2面との間に設けられ、前記半導体レーザ及び前記キャリアの両方に接着される接着部と、
を備える光半導体装置。
【請求項2】
前記端面には、順に積層された第1、第2及び第3の絶縁膜を含む反射膜が設けられ、
前記第1の絶縁膜は、前記接着部側に位置しており、
前記第2の絶縁膜の屈折率は、前記第1及び前記第3の絶縁膜の屈折率より高く、
前記第2の絶縁膜の厚さは、前記半導体レーザから発振される光の波長のa/4倍であり、
aは、1以上の奇数である、請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記反射膜は、前記第3の絶縁膜側から順に積層された、第4及び第5の絶縁膜をさらに含み、
前記第4の絶縁膜の屈折率は、前記第1、前記第3及び前記第5の絶縁膜の屈折率より高く、
前記第4の絶縁膜の厚さは、前記半導体レーザから発振される光の波長のb/4倍であり、
bは、aと異なる数であると共に1以上の奇数である、請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記キャリアは、酸化アルミニウム,銅タングステン,窒化アルミニウム,ケイ素及び炭化ケイ素の少なくとも一つを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記キャリアとは独立して設けられるヒートシンクと、
前記ヒートシンクに搭載される集積回路と、
をさらに備え、
前記キャリアは、前記第2面及び前記第2面に交差する頂面が含まれる突出部を有し、
前記突出部の前記頂面には、伝送線路基板が設けられており、
前記半導体レーザは、前記伝送線路基板及びワイヤを介して、前記集積回路に電気的に接続される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記伝送線路基板における前記集積回路側の一端から前記集積回路までの距離は、前記キャリアにおける前記集積回路側の側面から前記集積回路までの距離よりも近い、請求項5に記載の光半導体装置。
【請求項7】
端面、前記端面と異なる面である表面、及び前記端面に設けられた反射膜を有する半導体レーザと、
前記表面に対向する第1面、及び前記端面に対向する第2面を有するキャリアと、
を備える光半導体装置において、
前記キャリアの前記第1面上に第1接着部を形成すると共に、前記キャリアの前記第2面上に第2接着部を形成する工程と、
前記半導体レーザの表面を前記第1接着部に当接させると共に、前記反射膜を前記第2接着部に当接させることによって、前記半導体レーザを前記キャリアに接合する工程と、
を備える光半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置及び光半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信における発光素子として、直接変調型の半導体レーザ素子が用いられている。例えば特許文献1には、電極ストライプ幅及びクラッド層のキャリア濃度を適正に定めることにより、高速動作が可能な直接変調型の半導体レーザ素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−29703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば上述のような直接変調型の半導体レーザ素子では、高出力を得るために、一方の光出射面を含む端面に反射膜を形成することがある。この反射膜が形成された端面近傍は、光吸収により発熱しやすい。この発熱による温度上昇により端面近傍の材料が変質し、その吸収係数が増加すると、端面近傍の温度はさらに上昇していく。結果として、上記半導体レーザ素子では、端面が融解する等の光学損傷(COD:Catastrophic Optical Damage)が発生することがある。半導体レーザ素子において光学損傷が発生すると寿命が劣化してしまう。
【0005】
本発明は、長寿命を有する光半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る光半導体装置は、半導体レーザと、半導体レーザを搭載する第1面、及び半導体レーザの導波路の一方の端面に対向する第2面を有するキャリアと、端面と第2面との間に設けられると共に、半導体レーザ及びキャリアの両方に接着される接着部と、を備える。
【0007】
本発明の他の一形態に係る光半導体装置の製造方法は、端面、端面と異なる面である表面、及び端面に設けられた反射膜を有する半導体レーザと、表面に対向する第1面、及び端面に対向する第2面を有するキャリアと、を備える光半導体装置において、キャリアの第1面上に第1接着部を形成すると共に、キャリアの第2面上に第2接着部を形成する工程と、半導体レーザの表面を第1接着部に当接させると共に、反射膜を第2接着部に当接させることによって、半導体レーザをキャリアに接合する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長寿命を有する光半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、第1実施形態に係る光半導体装置の一部を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線矢視断面図であり、図1(c)は、図1(a)のIc−Ic線矢視断面図である。
図2図2(a)は、図1(c)において反射膜7の一部及びその周辺を拡大した図である。図2(b)は、図2(a)の別の態様を示す拡大図である。
図3図3(a)〜(c)は、第1実施形態に係る光半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
図4図4(a)〜(c)は、第1実施形態に係る光半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
図5図5(a)は、比較例に係る光半導体装置の一部を示す平面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線矢視断面図である。
図6図6(a)は、第1実施形態の第1変形例に係る光半導体装置の一部を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線矢視断面図である。
図7図7(a)は、第1変形例に係る光半導体装置を示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線矢視断面図である。
図8図8は、比較例に係る光半導体装置を示す平面図である。
図9図9(a)は、第1実施形態の第2変形例に係る光半導体装置を示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。本願発明の一実施形態は、半導体レーザと、半導体レーザを搭載する第1面、及び半導体レーザの導波路の一方の端面に対向する第2面を有するキャリアと、端面と第2面との間に設けられると共に、半導体レーザ及びキャリアの両方に接着される接着部と、を備える光半導体装置である。
【0011】
この光半導体装置によれば、半導体レーザの導波路の一方の端面と、キャリアの第2面とは、接着部を介して互いに接合している。この場合、上記端面近傍にて光吸収により発生した熱は、半導体レーザからキャリアの第1面に伝達するだけでなく、半導体レーザの端面から接着部を介してキャリアの第2面に伝達する。これにより、半導体レーザの端面近傍の温度が上昇しにくくなり、光学損傷等の発生が抑制される。したがって、長寿命を有する光半導体装置を提供できる。
【0012】
また、端面には、順に積層された第1、第2及び第3の絶縁膜を含む反射膜が設けられ、第1の絶縁膜は、前記接着部側に位置しており、第2の絶縁膜の屈折率は、第1及び第3の絶縁膜の屈折率より高く、第2の絶縁膜の厚さは、半導体レーザから発振される光の波長のa/4倍であり、aは、1以上の奇数であってもよい。この場合、導波路からキャリアの第2面側に出射する光を、反射膜によって良好に反射できる。
【0013】
また、反射膜は、第3の絶縁膜側から順に積層された、第4及び第5の絶縁膜をさらに含み、第4の絶縁膜の屈折率は、第1、第3及び5の絶縁膜の屈折率より高く、第4の絶縁膜の厚さは、半導体レーザから発振される光の波長のb/4倍であり、bは、aと異なる数であると共に1以上の奇数であってもよい。この場合、導波路からキャリアの第2面側に出射する光を、反射膜によって一層良好に反射できる。
【0014】
また、キャリアは、酸化アルミニウム,銅タングステン,窒化アルミニウム,ケイ素及び炭化ケイ素の少なくとも一つを含んでもよい。この場合、キャリアは熱伝導率の高い材質を含むので、半導体レーザにて発生した熱を良好にキャリアに伝達できる。
【0015】
また、上記光半導体装置は、キャリアとは独立して設けられるヒートシンクと、ヒートシンクに搭載される集積回路と、をさらに備え、キャリアは、第2面及び第2面に交差する頂面が含まれる突出部を有し、突出部の頂面には、伝送線路基板が設けられており、半導体レーザは、伝送線路基板及びワイヤを介して、集積回路に電気的に接続されてもよい。この場合、半導体レーザと集積回路とを互いに電気的に接続するためのワイヤの長さを、伝送線路基板がキャリアに設けられている分短くできる。これにより、光半導体装置のサイズを変更することなく、ワイヤによる信号損失等を抑制できる。
【0016】
また、伝送線路基板における集積回路側の一端から集積回路までの距離は、キャリアにおける集積回路側の側面から集積回路までの距離よりも近くてもよい。この場合、ワイヤの長さをさらに短くすることができ、当該ワイヤによる信号損失等をより抑制できる。
【0017】
本願発明の他の一実施形態は、端面、端面と異なる面である表面、及び端面に設けられた反射膜を有する半導体レーザと、表面に対向する第1面、及び端面に対向する第2面を有するキャリアと、を備える光半導体装置において、キャリアの第1面上に第1接着部を形成すると共に、キャリアの第2面上に第2接着部を形成する工程と、半導体レーザの表面を第1接着部に当接させると共に、反射膜を第2接着部に当接させることによって、半導体レーザをキャリアに接合する工程と、を備える光半導体装置の製造方法である。
【0018】
この光半導体装置の製造方法によれば、半導体レーザの表面を第1接着部に当接させると共に、反射膜を第2接着部に当接させることによって、半導体レーザをキャリアに接合する。この場合、上記端面近傍にて光吸収により発生した熱は、半導体レーザの表面から第1接着部を介してキャリアの第1面に伝達するだけでなく、半導体レーザの端面から反射膜及び第2接着部を介してキャリアの第2面に伝達する。これにより、半導体レーザの端面近傍の温度が上昇しにくくなり、光学損傷等の発生が抑制される。したがって、上記製造方法によれば、長寿命を有する光半導体装置を提供できる。
【0019】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1(a)は、第1実施形態に係る光半導体装置の一部を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線矢視断面図である。図1(c)は、図1(a)のIc−Ic線矢視断面図である。図1(a)〜(c)に示されるように、光半導体装置1は、キャリア2に搭載される半導体レーザ3を有する。以下では、図1(a)の所定方向を方向D1とし、図1(a)の所定方向に交差する方向を方向D2とし、キャリア2の厚さ方向を方向D3と定義する。本実施形態では、方向D1と方向D2とは互いに直交しており、方向D1(又は方向D2)と方向D3とは互いに直交している。
【0021】
キャリア2は、熱伝導率の高い材料から構成される部材である。キャリア2は、例えば酸化アルミニウム(AlOx),銅タングステン(CuW),窒化アルミニウム(AlN),ケイ素(Si)及び炭化ケイ素(SiN)の少なくとも一つを含んでいる。本実施形態に係るキャリア2は、CuWから構成されており、導電性を有する。
【0022】
キャリア2は、略矩形状の基材の一部に段差4が設けられた部材である。この段差4は、例えばキャリア2の一部を除去することにより形成されており、方向D3に交差する方向(方向D1及び方向D2)に沿って延在する第1面4a、及び方向D3に沿って延在する第2面4bを有する。本実施形態では、第1面4aと第2面4bとは、互いに垂直又は略垂直である。第1面4a上には、第1接着部5が設けられている。第1接着部5は、キャリア2と半導体レーザ3とを互いに接合するためのものであり、例えば導電性を有するAuSn、SnIn、SnBi、又はInAgSb等の合金製はんだである。また、第2面4b上には、第2接着部6が設けられている。第2接着部6は、キャリア2と半導体レーザ3とを互いに接合するためのものであり、例えば融点が120℃程度の銀含有エポキシ樹脂(Ag−エポキシ樹脂)、及び融点が200℃程度のアルミニウム含有エポキシ樹脂(Al−エポキシ樹脂)の混合物等が用いられる。
【0023】
キャリア2の段差4が設けられている主面側には、第2面4b及び当該第2面4bに交差する頂面41aを有する突出部41が設けられている。突出部41は、方向D3に沿って第1面4aよりもキャリア2の外側(上方)に突出している。本実施形態では、頂面41aと第2面4bは、互いに垂直又は略垂直である。図1(b)に示されるように、頂面41aは、方向D3において第1面4aよりもキャリア2の外側に位置し、方向D3から見て第1面4aと並んで設けられている。
【0024】
半導体レーザ3は、段差4に搭載される直接変調型のレーザ素子である。図1(a)に示されるように、半導体レーザ3の形状は、方向D3から見て四角形状となっている。半導体レーザ3の方向D1に沿った長さ(素子長)は、例えば200μm〜500μmであり、方向D2に沿った長さ(幅)は、例えば200μm〜500μmである。図1(c)に示されるように、半導体レーザ3は、後述する導波路12に沿った一対の表面3a,3dと、導波路12の共振端面をそれぞれ含む一対の端面3b,3cとを有する。半導体レーザ3の表面3aと、キャリア2の第1面4aとは互いに対向しており、第1接着部5を介して互いに接合している。
【0025】
半導体レーザ3の一対の端面3b,3cは方向D1と交差する。一方の端面3b上には、絶縁性の反射膜7が設けられている。反射膜7は、例えば酸化チタン(TiO)からなる層、酸化シリコン(SiOx)からなる層、酸化アルミニウム(AlOx)からなる層、及び窒化アルミニウム(AlN)からなる層の内、少なくとも2種類以上の層を含む。反射膜7の合計厚さは、例えば750nm〜1460nmである。反射膜7は、例えば全反射条件を満たす厚さを有することが好ましい。
【0026】
図2(a)は、図1(c)において反射膜7の一部及びその周辺を拡大した図である。図2(a)に示されるように、反射膜7は、例えば半導体レーザ3の端面3b側から方向D1に沿って順に積層された、低屈折率膜7a、高屈折率膜7b、低屈折率膜7c、高屈折率膜7d、低屈折率膜7e、高屈折率膜7f、低屈折率膜7gを含む。低屈折率膜7a、高屈折率膜7b、低屈折率膜7c、高屈折率膜7d、低屈折率膜7e、高屈折率膜7f、低屈折率膜7gのそれぞれは、絶縁膜である。高屈折率膜7b、高屈折率膜7d、及び高屈折率膜7fの屈折率は、低屈折率膜7a、低屈折率膜7c、低屈折率膜7e、及び低屈折率膜7gの屈折率よりも高い。高屈折率膜7b、高屈折率膜7d、及び高屈折率膜7fの屈折率は2.3±0.2であり、例えば2.20である。低屈折率膜7a、低屈折率膜7c、低屈折率膜7e、及び低屈折率膜7gの屈折率は、1.5±0.2であり、例えば1.47である。反射膜7の低屈折率膜7gは、第2接着部6と接触する。高屈折率膜7bと、高屈折率膜7dと、低屈折率膜7gに接触する高屈折率膜7fとの厚さは、半導体レーザ3から発振される光の波長の4分の1の奇数倍である。これにより、反射膜7は、良好な反射率を得ることができる。また、高屈折率膜7fの厚さは、高屈折率膜7b及び高屈折率膜7dの厚さと異なる。換言すれば、高屈折率膜7fの厚さは半導体レーザ3から発振される光の波長のa/4倍、高屈折率膜7d,7dの厚さは半導体レーザ3から発振される光の波長のb/4倍であり、a,bは、1以上の奇数であって、互いに異なる数である。具体的には、低屈折率膜7a、低屈折率膜7c、及び低屈折率膜7eは、例えば酸化シリコン膜であり、これらの厚さは270nm±20nmである。高屈折率膜7b及び高屈折率膜7dは、例えば酸化チタン膜であり、これらの厚さは190nm±20nmである。高屈折率膜7fは、例えば酸化チタン膜であり、この厚さは100nm±20nmである。低屈折率膜7gは、例えば酸化シリコン膜であり、この厚さは30nm±10nmである。このような反射膜7における半導体レーザ3から発振される光の波長の反射率は、80%以上である。
【0027】
図2(b)は、図2(a)の別の態様を示す拡大図である。図2(b)に示されるように、例えば半導体レーザ3の端面3b上の反射膜7は、方向D1に沿って順に積層される、低屈折率膜7e、高屈折率膜7f、及び低屈折率膜7gのみを含んでもよい。この場合、低屈折率膜7gは、反射膜7において最も第2接着部6側に位置している。低屈折率膜7e,7gは、例えば酸化シリコン膜であり、これらの厚さは270nm±20nmである。高屈折率膜7fは、例えば酸化チタン膜であり、この厚さは100nm±20nmである。このような反射膜7における半導体レーザ3から発振される光の波長の反射率は、50%以上であり、該反射膜7は十分な光反射性能を有する。
【0028】
第2接着部6の屈折率は、空気の屈折率を1とした場合、例えば1.55〜1.61である。また、第2接着部6の厚さは、例えば数μmである。このような第2接着部6を用いる場合、半導体レーザ3の端面3bから出射される光は、キャリア2に反射したことによる戻り光に影響されにくくなる。なお、第2接着部6の厚さは、第2接着部6が設けられない場合における反射膜7とキャリア2との間の方向D1に沿った距離と異なる厚さとなる。
【0029】
図1に戻って、半導体レーザ3の他方の端面3c上には、無反射膜8が設けられている。無反射膜8は、例えば酸化チタン及び酸化アルミニウムの一方又は双方を含む。ここでの半導体レーザ3から発振される光の波長における無反射膜8の反射率は、1%未満であることが好ましい。
【0030】
半導体レーザ3の端面3bと、キャリア2の第2面4bとは互いに対向しており、端面3bと第2面4bとの間には積層体9が設けられている。積層体9は、上述した反射膜7と第2接着部6とによって形成されている。したがって、半導体レーザ3の端面3bと、キャリア2の第2面4bとは、積層体9を介して互いに接合している。具体的には、反射膜7と第2面4bとが、第2接着部6を介して互いに接合している。この積層体9には、第2接着部6及び反射膜7以外の膜が含まれてもよい。
【0031】
半導体レーザ3は、導波路12、電極13,14、配線15,16、電極パッド17,18、半導体基板21、第1クラッド層22、埋め込み層23、及び絶縁膜24を備えている。半導体基板21は、例えばn型InP基板等であり、その厚さは例えば100μm〜200μmである。第1クラッド層22は、例えばn型InP層である。埋め込み層23は、第1クラッド層22上に設けられており、例えばp型InP層、n型InP層、p型InP層の順に積層された構造、或いは半絶縁性半導体による単層構造を有している。絶縁膜24は、埋め込み層23、並びに後述する溝25,26及びメサ構造30を覆うように設けられており、例えば酸化ケイ素及び窒化ケイ素の一方又は双方を含む。
【0032】
半導体レーザ3は、方向D1に沿って延在する一対の溝25,26を有する。一対の溝25,26は、例えば第1クラッド層22の一部及び埋め込み層23の一部が除去されることによって形成されている。一対の溝25,26の表面は、一部を除いて絶縁膜24によって覆われている。具体的には、溝25の底面25aを覆う絶縁膜24の一部に開口部24aが設けられており、半導体基板21の一部が露出している。この開口部24aを埋設するように電極13が設けられている。電極13は、開口部24aを介して半導体基板21に接続されており、半導体基板21を介して導波路12に電気的に接続されている。電極13は、例えばAuZnの金属層又はこれらの金属を含む合金層である。
【0033】
導波路12は、一対の溝25,26によって挟まれるメサ構造30内に形成されている。図1(c)に示されるように、導波路12は、光出射方向である方向D1に沿って延在するストライプ状の活性層である。メサ構造30は、第1クラッド層31と、第2クラッド層32と、導波路12と、埋め込み層33と、回折格子34とを有している。第1クラッド層31は、第1クラッド層22と同じn型InP層であり、導波路12と半導体基板21との間に設けられる。第2クラッド層32は、導波路12上に設けられており、例えばp型InP層である。埋め込み層33は、埋め込み層23と同じ構造を有している。回折格子34は、方向D3において導波路12と重なるように第1クラッド層31内に設けられており、第1クラッド層31とは異なる屈折率を有する。第1クラッド層31がn型InP層である場合、回折格子34は、例えばInGaAsPを含む。
【0034】
図1(c)に示されるように、導波路12は、一対の共振端面12a、12bを有している。共振端面12aは半導体レーザ3の端面3bに含まれ、共振端面12bは半導体レーザ3の端面3cに含まれる。導波路12は、例えば多重量子井戸(MQW:multi quantum well)構造となるように、複数のInGaAsP層を有している。なお、半導体レーザ3における表面3a,3dは、導波路12に沿って延在する。
【0035】
図1(b)に示されるように、導波路12上の絶縁膜24の一部には開口部24bが設けられており、第2クラッド層32の一部が露出している。この開口部24bを埋設するように電極14が設けられている。電極14は、導波路12に電流を供給する。電極14は、例えばAuZn等の金属層又はこれらの金属を含む合金層である。
【0036】
配線15は、溝25からメサ構造30と反対側に向かって延在している。配線15は、例えば金(Au)からなる金属層である。配線15の一端は、溝25内に設けられている電極13に接続されている。配線15の他端は、電極パッド17に接続されている。電極パッド17の表面には、例えば基準電位を有するワイヤがボンディング接続される。配線16は、メサ構造30から溝26側に向かって延在している。配線16は、例えば金(Au)からなる金属層である。配線16には変調信号及びバイアス電流が供給される。配線16の一端は、メサ構造30上に位置しており、電極14に接続されている。配線16の他端は、電極パッド18に接続されている。電極パッド18の表面には、例えば変調信号が供給されるワイヤと、バイアス電流が供給されるワイヤとがボンディング接続される。
【0037】
次に、第1実施形態に係る光半導体装置1の製造方法について図3及び図4を用いながら説明する。図3(a)〜(c)及び図4(a)〜(c)は、第1実施形態に係る光半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0038】
まず、図3(a)に示されるように、キャリア2を準備する。また、これとは別に、上述した半導体レーザ3(図1(a)〜図1(c)を参照)を準備する。半導体レーザ3の端面3b上には、反射膜7が設けられている。
【0039】
次に、図3(b)に示されるように、キャリア2の一部を除去することにより、第1面4a及び第2面4bを有する段差4をキャリア2に形成する。例えばエッチング、研磨、又は切削加工等の公知の方法によって段差4をキャリア2に形成する。段差4の形成と同時に、第2面4b及び当該第2面4bに交差する頂面41aを有する突出部41をキャリア2に形成する。
【0040】
次に、図3(c)に示されるように、段差4の第1面4a上に、例えば滴下法等によって第1接着部5を形成する。また、図4(a)に示されるように、段差4の第2面4b上に、例えば塗布法又はディスペンサ法等によって第2接着部6を形成する。このとき、第1接着部5及び第2接着部6が共に融解する温度にて、第2接着部6が形成される。なお、第1接着部5及び第2接着部6の形成順序は、特に限定されない。よって、第1接着部5の形成後に第2接着部6を形成してもよいし、第2接着部6の形成後に第1接着部5を形成してもよい。
【0041】
次に、図4(b),(c)に示されるように、半導体レーザ3をキャリア2に搭載する。まず、半導体レーザ3の表面3aを第1面4aに対向させると共に、端面3bを第2面4bに対向させる。そして、表面3aを第1接着部5に当接させると共に、反射膜7を第2接着部6に当接させる。その後、冷却することによって第1接着部5及び第2接着部6を固着させ、半導体レーザ3をキャリア2に接合する。以上の工程を経て、キャリア2に搭載された半導体レーザ3を有する光半導体装置1の一部を形成する。
【0042】
以上に説明した製造方法によって形成される、第1実施形態に係る光半導体装置1によって得られる効果について説明する。図5(a)は、比較例に係る光半導体装置の一部を示す平面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線矢視断面図である。図5(a),(b)に示されるように、光半導体装置101におけるキャリア102には、段差が形成されていない。比較例において、半導体レーザ3は、第1接着部5を介してキャリア102の主面102aに接合されている。この場合、半導体レーザ3の駆動中、反射膜7が形成された端面3b近傍に熱が蓄積されやすく、光学損傷が発生するおそれがある。したがって、比較例に係る光半導体装置101の寿命が劣化することがある。
【0043】
これに対して、第1実施形態に係る製造方法によって製造された光半導体装置1によれば、半導体レーザ3の表面3aとキャリア2の第1面4aとは、第1接着部5を介して互いに接合している。また、半導体レーザ3の端面3bとキャリア2の第2面4bとは、積層体9(第2接着部6及び反射膜7)を介して互いに接合している。この場合、上記端面3b近傍にて光吸収により発生した熱は、半導体レーザ3の表面3aから第1接着部5を介してキャリア2の第1面4aに伝達するだけでなく、半導体レーザ3の端面3bから積層体9を介してキャリア2の第2面4bに伝達する。これにより、半導体レーザ3の端面3b近傍の温度が上昇しにくくなり、光学損傷等の発生が抑制される。したがって、長寿命を有する光半導体装置1を提供できる。
【0044】
また、近年の半導体レーザ等が小型化されているので、当該半導体レーザの共振器長等が短くなっている。このような半導体レーザの放熱経路が限定的になっている場合、第1実施形態に係る光半導体装置1の構造が好適に採用できる。
【0045】
また、端面3bには、順に積層された低屈折率膜7g(第1の絶縁膜)、高屈折率膜7f(第2の絶縁膜)、及び低屈折率膜7e(第3の絶縁膜)を含む反射膜7が設けられ、低屈折率膜7gは、第2接着部6側に位置しており、高屈折率膜7fの屈折率は、低屈折率膜7g及び低屈折率膜7eの屈折率より高く、高屈折率膜7fの厚さは、半導体レーザ3から発振される光の波長のa/4倍であり、aは、1以上の奇数であってもよい。この場合、導波路12からキャリア2の第2面4b側に出射する光を、反射膜7によって良好に反射できる。
【0046】
また、反射膜7は、低屈折率膜7e側から順に積層される、高屈折率膜7d(第4の絶縁膜)及び低屈折率膜7c(第5の絶縁膜)をさらに含み、高屈折率膜7dの屈折率は、低屈折率膜7c、7e、7gの屈折率より高く、高屈折率膜7dの厚さは、半導体レーザ3から発振される光の波長のb/4倍であり、bは、aと異なる数であると共に1以上の奇数であってもよい。この場合、導波路12からキャリア2の第2面4b側に出射する光を、反射膜7によって一層良好に反射できる。
【0047】
また、キャリア2は、酸化アルミニウム,銅タングステン,窒化アルミニウム,ケイ素及び炭化ケイ素の少なくとも一つを含んでもよい。この場合、キャリア2は熱伝導率の高い材質を含むので、半導体レーザ3にて発生した熱を良好にキャリア2に伝達できる。なお、キャリア2が絶縁体である場合、キャリア2と第1接着部5との間に金属又は合金製の導電膜が形成されてもよい。これにより、第1接着部5がキャリア2から剥離することを抑制すると共に、第1接着部5を介した半導体レーザ3への電気伝導が良好になる。
【0048】
(第1変形例)
図6(a)は、第1実施形態の第1変形例に係る光半導体装置の一部を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線矢視断面図である。図6(a),(b)に示されるように、キャリア2における突出部41の頂面41a上には、伝送線路基板42が設けられている。伝送線路基板42は、絶縁基板43と、絶縁基板43上に設けられる導電層(マイクロストリップライン)44〜46とを有している。絶縁基板43は、例えば酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiN)、又は酸化アルミニウム等からなる基板である。導電層44〜46は、例えば金等を含む金属又は合金を含んでいる。導電層44は、例えば基準電位とされる。導電層45には、例えばバイアス電流が供給され、導電層46には、例えば変調電流が供給される。導電層44は、ワイヤW1を介して電極パッド17に接続されている。導電層45はワイヤW2を介して電極パッド18に接続されており、導電層46はワイヤW2よりも短いワイヤW3を介して電極パッド18に接続されている。
【0049】
図7(a)は、第1変形例に係る光半導体装置を示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線矢視断面図である。図7(a),(b)に示されるように、光半導体装置1Aは、半導体レーザ3が搭載されたキャリア2に加えて、集積回路52が搭載されたヒートシンク51を有する。集積回路52からは、3つの配線53〜55がキャリア2に向けて延びている。集積回路52は発熱体となるので、キャリア2とヒートシンク51とは、互いに独立して(離間して)設けられている。
【0050】
集積回路52は、基準電位、変調電流及びバイアス電流等を供給する回路である。配線53は、ワイヤW4を介して導電層44に接続されており、集積回路52からの基準電位を導電層44に提供する。配線54は、ワイヤW5を介して導電層45に接続されており、集積回路52からのバイアス電流を導電層44に提供する。配線55は、ワイヤW6を介して導電層46に接続されており、集積回路52からの変調電流を導電層44に提供する。このように、半導体レーザ3は、伝送線路基板42及びワイヤW1〜W6を介して、集積回路52に接続されている。
【0051】
図8は、比較例に係る光半導体装置を示す平面図である。図8に示されるように、光半導体装置101Aには、伝送線路基板が設けられていない。このような光半導体装置101Aでは、電極パッド17はワイヤW11を介して配線53に接続され、電極パッド18は、ワイヤW12を介して配線54に接続されるとともにワイヤW13を介して配線55に接続される。この場合、キャリア2とヒートシンク51とが互いに独立して(離間して)配置されることにより、ワイヤW11〜W13が長くなり、当該ワイヤW11〜W13による信号損失等が発生する。
【0052】
これに対して、第1変形例に係る光半導体装置1Aでは、半導体レーザ3と集積回路52とを互いに電気的に接続するためのワイヤW1〜W6の長さを、伝送線路基板42がキャリア2に設けられている分短くできる。これにより、光半導体装置1Aのサイズを変更することなく、ワイヤW1〜W6による信号損失等を抑制できる。また、第1変形例に係る光半導体装置1Aにおいても、第1実施形態に係る光半導体装置1と同様の効果が奏される。
【0053】
(第2変形例)
図9(a)は、第1実施形態の第2変形例に係る光半導体装置を示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb線矢視断面図である。図9(a),(b)に示されるように、光半導体装置1Bの伝送線路基板42Aは、集積回路52に向けて延出する延出部47を有している。この延出部47における集積回路52側の一端42bから集積回路52までの距離L1は、キャリア2における集積回路52側の側面2aから集積回路52までの距離L2よりも近い。言い換えれば、延出部47は、方向D3においてキャリア2と重なっていない。また、延出部47上には、他の導電層44,45よりも長い導電層46が形成されている。このように延出部47上に導電層46が形成されることにより、ワイヤW6の長さをさらに短くすることができ、当該ワイヤW6による信号損失等をより抑制できる。加えて、第2変形例に係る光半導体装置1Bにおいても、第1変形例に係る光半導体装置1Aと同様の効果が奏される。
【0054】
本発明による光半導体装置及び光半導体装置の製造方法は、上述した実施形態及び変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態におけるキャリアは、方向D3から見て平行四辺形状でもよく、角が丸まった四角形状でもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B…光半導体装置、2…キャリア、3…半導体レーザ、3a…表面、3b,3c…端面、4…段差、4a…第1面、4b…第2面、5…第1接着部、6…第2接着部、7…反射膜、7a,7c,7e,7g…低屈折率膜、7b,7d,7f…高屈折率膜、9…積層体、12…導波路、12a,12b…共振端面、41…突出部、41a…頂面、42,42A…伝送線路基板、43…絶縁基板、44〜46…導電層、47…延出部、51…ヒートシンク、52…集積回路、D1〜D3…方向、W1〜W6…ワイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9